【解決手段】懸濁水処理装置は、容器11と、その中に設けられた、水平方向に対して角度α(0度<α<90度)傾斜した複数の板が互いに間隔を空けて積層された積層傾斜板12、13を有する沈降層と、その下方に設けられた粒子圧密装置14、15とを有する。粒子圧密装置14、15は、鉛直方向に対して角度β(0度≦β≦10度)をなす面内に延在する複数の管路付きろ過膜16が、それらのろ過膜18が互いに対向するように互いに間隔を空けて水平方向に配列されたものを有する。管路付きろ過膜16のろ過膜18は管路19の側壁の一部を構成する。ろ過膜18の間隔をD、ろ過膜18により除去しようとする懸濁水中の粒子の半径をaとしたとき、Dが2a<D≦20aまたは10mm≦D≦50mmを満足するように選ばれる。
上記管路付きろ過膜は波板の両主面にろ過膜が貼られた構造を有し、上記波板と上記ろ過膜との間の空間が管路を構成することを特徴とする請求項1または2項記載の懸濁水処理装置。
懸濁水の処理時に上記管路付きろ過膜の上記ろ過膜を透過して上記管路に流れ込んだ水を上記管路を通して外部に排出する排出装置を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の懸濁水処理装置。
上記積層傾斜板の上記一方の側面と上記容器の内壁との間に上記処理すべき懸濁水が当たるように設けられた仕切り板を有することを特徴とする請求項10記載の懸濁水処理装置。
上記沈降層は、少なくとも上下二段に設けられた二つの上記積層傾斜板を有し、下段の上記積層傾斜板を構成する上記板の傾斜方向と上段の上記積層傾斜板を構成する上記板の傾斜方向とが互いに異なることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項記載の懸濁水処理装置。
上記分級層は、水平方向に対して角度Ψ傾斜した複数の筒状の孔を有する構造体または水平方向に対して角度Ψ傾斜した複数の板が互いに間隔を空けて積層された積層傾斜板からなる請求項15記載の洗浄、分級および処理システム。
上記整流層と上記分級層との間に設けられた、上記整流層を通過した上記固液混相流を層流にするための層流層をさらに有する請求項15または16記載の洗浄、分級および処理システム。
上記第一の容器と上記第二の容器とを互いに連結するように設けられた、水平方向または上記第二の容器側が低くなるように水平方向に対して角度Ω(0度<Ω≦10度)傾斜した複数の管路を有する凝集促進層をさらに有し、
上記分級層を通過した上記固液混相流は上記凝集促進層の一端に供給され、他端から出て上記第二の容器に供給される請求項15〜18のいずれか一項記載の洗浄、分級および処理システム。
上記凝集促進層は、水平方向の複数の板が互いに間隔を空けて積層された積層板、上記第二の容器側が低くなるように水平方向に対して角度Ω(0度<Ω≦10度)傾斜した複数の板が互いに間隔を空けて積層された積層傾斜板、水平方向の複数の筒状の孔を有する構造体または上記第二の容器側が低くなるように水平方向に対して角度Ω傾斜した複数の筒状の孔を有する構造体からなる請求項19記載の洗浄、分級および処理システム。
上記凝集促進層は、上記凝集促進層の中心軸の方向の最頂部から両側に向かって下向きに水平方向に対して角度Φ(0度<Φ<90度)傾斜した切妻屋根状の複数の板が互いに間隔を空けて積層された積層傾斜板または上記凝集促進層の中心軸の方向の最頂部から両側に向かって下向きに水平方向に対して角度Φ(0度<Φ<90度)傾斜し、かつ上記第二の容器側が低くなるように水平方向に対して角度Ω(0度<Ω≦10度)傾斜した切妻屋根状の複数の板が互いに間隔を空けて積層された積層傾斜板からなる請求項19記載の洗浄、分級および処理システム。
上記凝集促進層の上記管路の底部の上記板上に、上記凝集促進層の中心軸と直交する方向に延在する、上記管路の高さの途中の高さの縦板が上記凝集促進層の中心軸の方向に周期的または非周期的に設けられている請求項20または21記載の洗浄、分級および処理システム。
上記分級層と上記沈降装置との間または上記分級層と上記凝集促進層との間に、波状スタティックミキサーからなる整流層をさらに有する請求項15〜22のいずれか一項記載の洗浄、分級および処理システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のことから、除染によって放射能汚染物質を完全に取り除くことは困難であること、また、除染後も風雨によって再汚染されることを考慮した最適な泥水処理が望まれているが、これまではそのような泥水処理が可能な泥水処理装置は提案されていない。
【0007】
一方、上述のように、篩を用いて土壌を分級する従来の分級装置あるいは土壌洗浄装置では、篩の目詰まりが生じたり、分級の閾値が75μmに制約されてしまったり、装置の小型化ができないといった問題があった。
【0008】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、湿式処理により泥水、より一般的には各種の懸濁水を効率的に処理して懸濁粒子を除去することができる懸濁水処理装置を提供することである。
【0009】
この発明が解決しようとする他の課題は、粒径分布を有する混合粒子の攪拌および分級を一つの容器内で行うことができることによりシステムの小型化を図ることができ、しかも分級の閾値を連続的に調整することができ、さらに分級後の懸濁水を効率的に処理して懸濁粒子を取り除くことができる洗浄、分級および処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は、
容器と、
上記容器内に設けられた、水平方向に対して角度α(0度<α<90度)傾斜した複数の板が互いに間隔を空けて積層された積層傾斜板を有する沈降層と、
上記容器内の上記沈降層の下方に設けられた粒子圧密装置とを有し、
上記粒子圧密装置は、
鉛直方向に対して角度β(0度≦β≦10度)をなす面内に延在する複数の管路付きろ過膜が、それらのろ過膜が互いに対向するように互いに間隔を空けて水平方向に配列されたものを有し、
上記管路付きろ過膜のろ過膜は管路の側壁の一部を構成し、
上記ろ過膜の間隔をD、上記ろ過膜により除去しようとする懸濁水中の粒子の半径をaとしたとき、Dが2a<D≦20aを満足するように選ばれている
ことを特徴とする懸濁水処理装置である。
【0011】
ここで、管路付きろ過膜とは、ろ過膜を透過した水を収容して輸送するための管路がろ過膜に一体的に設けられたものを意味する。ろ過膜は、懸濁水中の水は透過し、かつ懸濁水中の除去しようとする粒子は透過しないものであれば、基本的にはどのようなものであってもよく、材質や厚さなどは必要に応じて選ばれる。ろ過膜としては、具体的には、例えば、不織布、多孔質膜、ろ紙などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。不織布の原材料としては、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維などが挙げられ、具体例を挙げると、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、レーヨン、ナイロン、アクリル、ビニロンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。多孔質膜の原材料としては、例えば、有機高分子などが挙げられるが、これに限定されるものではない。管路付きろ過膜が延在する面の鉛直方向に対する角度βは0度≦β≦10度の範囲内で必要に応じて選ばれるが、ろ過しようとする粒子が互いに対向するろ過膜の間を通り抜ける間にろ過膜に捕捉される確率の向上を図る観点から、好適には0度≦β≦5度に選ばれ、より好適には0度≦β≦3度に選ばれ、さらに好適には0度≦β≦1度に選ばれ、典型的にはβ=0度(鉛直方向)に選ばれる。管路付きろ過膜の管路は、一般的には、水平方向に対して角度γ(0度≦γ<90度)をなす方向に延在し、典型的には、ほぼ水平方向(γ≒0度)に延在する。管路付きろ過膜は、典型的な例では、波板の両主面にろ過膜が貼られた構造を有するが、波板の一方の主面だけにろ過膜が貼られた構造を有するものであってもよい。これらの場合、波板とろ過膜との間の空間が管路を構成する。複数の管路付きろ過膜は、典型的な例では、互いに平行にかつ等間隔で配列される。これらの複数の管路付きろ過膜のろ過膜の全表面積は、懸濁水中の粒子の圧密の効率の向上を図るためには、他に支障のない限り、可能な限り大きくすることが望ましい。互いに対向するろ過膜の間隔Dは2a<D≦20aの範囲内で必要に応じて選ばれる。間隔Dの下限を2aとしたのは、2a≧Dであれば、ろ過しようとする粒子が互いに対向するろ過膜の間に入り込めないためである。また、間隔Dの上限を20aとしたのは、間隔Dが大き過ぎると、ろ過しようとする粒子の大多数が互いに対向するろ過膜の間を素通りしてしまうことによりろ過膜に捕捉される確率が小さくなり過ぎて圧密の効果がほとんど得られないが、D≦20a、言い換えるとDが粒子の粒径(2a)の10倍程度であれば一定の確率でろ過しようとする粒子をろ過膜で捕捉することができ、一定の圧密の効果を得ることができるためである。粒子をろ過膜でより効率的に捕捉することができるようにするためには、好適には2a<D≦10aに選ばれ、より好適には2a<D≦8aに選ばれ、さらに好適には3a<D≦6aに選ばれるが、これに限定されるものではない。一方、別の観点から考えると、懸濁水の処理が進んでろ過膜の表面に粒子が付着することにより形成される粒子層、特に粘土層の厚さは、管路付きろ過膜の管路内を減圧して吸引により脱水する際の効率を考慮すると、およそ5mmが限界であり、したがって間隔Dは、好適には10mm以上に選ばれ、余裕を持たせる場合は11mm以上に選ばれる。間隔Dをこのように選ぶことで、管路付きろ過膜の間の空間が粒子層で閉塞されるのを防止することができる。管路付きろ過膜のろ過膜は、付着した粒子層、例えば粘土層を剥離しやすくするために、好適には疎水性素材からなる。管路付きろ過膜のろ過膜の表面に圧密された粒子層は、そのまま放置しておくと、粒子層がバリアとなってろ過膜を水が透過しにくくなるので、好適には、定期的にあるいは不定期に粒子層の少なくとも一部を剥離除去するようにする。このために、懸濁水処理装置は、例えば、少なくとも一つ、好適には大多数、最も好適には全部の管路付きろ過膜を膜面に垂直な方向に振動させる振動装置を有する。振動装置により管路付きろ過膜を膜面に垂直な方向に振動させることでろ過膜の表面から粒子層の少なくとも一部を強制的に剥離除去することができる。管路付きろ過膜の管路およびろ過膜とも伸縮可能な材料で構成し、管路付きろ過膜を伸縮させることにより、ろ過膜の表面から粒子層の少なくとも一部を強制的に剥離除去するようにしてもよい。懸濁水処理装置は、好適には、懸濁水の処理時に管路付きろ過膜のろ過膜を透過して管路に流れ込んだ水をこの管路を通して外部に排出する排出装置を有する。排出装置は、管路付きろ過膜の管路の一端から水を吸引することができるように管路の一端を負圧に設定することができるように構成する。懸濁水処理装置は、必要に応じて、管路付きろ過膜の管路に外部から水を流し込んで逆洗を行うことが可能に、すなわち管路側からろ過膜に水を流し、ろ過膜を透過する水の圧力でろ過膜を洗浄することが可能に構成される。振動装置による管路付きろ過膜の振動あるいは管路付きろ過膜の伸縮とろ過膜の逆洗とを組み合わせることにより、ろ過膜の表面の粒子層を効果的に剥離除去することができ、取り分け、管路付きろ過膜の振動あるいは伸縮を行った後に逆洗を行うことにより最も効果的にろ過膜の表面の粒子層を剥離除去することができる。
【0012】
懸濁水処理装置は、典型的には、沈降層の積層傾斜板の一方の側面に処理すべき懸濁水が流入するように構成される。この場合、好適には、積層傾斜板の上記の一方の側面と容器の内壁との間に処理すべき懸濁水が当たるように設けられた仕切り板が設けられる。このように仕切り板を設けることにより、この仕切り板の背後(懸濁水が流入する側と反対側)の懸濁水の濃度を小さく保つことができ、かつ、懸濁水をこの仕切り板に沿って容器底部に導入することができる。この仕切り板は、例えば、鉛直方向に対して角度θ(例えば、−20度≦θ≦20度、典型的には−10度≦θ≦10度、より典型的には−5度≦θ≦5度)をなす面内に設けられるが、これに限定されるものではない。また、この仕切り板と処理すべき懸濁水が流入する側の容器の内壁との間隔をd
1 、この仕切り板と容器の、処理すべき懸濁水が流入する側と反対側の内壁との間隔をd
2 としたとき、d
2 /d
1 は、好適には、可能な範囲で大きく選ばれ、具体的には例えばd
2 /d
1 ≧10を満足するように選ばれる。こうすることで、仕切り板の下方を通り、仕切り板の背後に回って上昇する上昇流の流速を十分に小さくすることができ、それによって積層傾斜板による粒子の沈降を効率的に行うことができる。好適には、沈降層は、少なくとも上下二段に設けられた二つの積層傾斜板を有する。これらの積層傾斜板を構成する板の傾斜方向は必要に応じて選ばれ、下段の積層傾斜板を構成する板の傾斜方向と上段の上記積層傾斜板を構成する板の傾斜方向とが互いに異なるようにしてもよいし、互いに同じでもよいが、前者のようにすると、積層傾斜板を通って懸濁水が上昇する際に循環流が強くならないようにすることができ、ひいては積層傾斜板による粒子の沈降を効率的に行うことができる。例えば、懸濁水が泥水である場合、積層傾斜板の高さは、積層傾斜板を構成する板の間の間隙における粘土フロックの沈降に伴う上昇流がフロックを巻き上げないようにするために、好適には30cm以下に選ばれるが、これに限定されるものではない。
【0013】
ろ過膜により除去しようとする懸濁水中の粒子の半径aは、懸濁水中の粒子は必ずしも球形ではないため、一般的には粒子の平均半径を意味するものとする。平均半径は、いくつかの定義が考えられるが、一つの例を挙げると、粒子の最大径と最小径とから、平均半径=[(最大径/2)+(最小径/2)]/2と定義することができる。粒子は言うまでもなく立体的形状を有するが、粒子を三次元的に見たときの最大径と最小径とを求めることは簡単ではないので、粒子を撮影した写真あるいは画像から求められる二次元面内での粒子の最大径と最小径とを用いるのが簡便である。また、懸濁水中の粒子の半径は分布を有するのが一般的であるが、この場合、粒子の半径aとしては懸濁水中の粒子の平均半径のうち最大のものを用いることができる。こうすることで、懸濁水中の粒子の全てを管路付きろ過膜のろ過膜に吸着する確率が高くなる。あるいは、懸濁水中の粒子は必ずしも球形ではなく、粒子の半径も分布を有するのが一般的であるため、粒子の体積に等しい体積を有する球の半径の度数分布の中央値を半径aとすることも考えられる。この場合、aより小さい半径を有する粒子もろ過膜に吸着した粒子の表面に付着して捕捉されると考えられる。
【0014】
懸濁水は、基本的にはどのようなものであってもよいが、具体的には、例えば、泥水や藻類を含む水などである。懸濁水中の粒子は、放射性物質が吸着したものであることもある。
【0015】
藻類は、酸素発生型光合成を行う生物のうち、主に地上に生息するコケ植物、シダ植物および種子植物を除いたものの総称であり、真性細菌であるシアノバクテリア(藍藻)から、真核生物で単細胞生物であるもの(珪藻、黄緑藻、渦鞭毛藻など)および多細胞生物であるもの(珪藻、黄緑藻、渦鞭毛藻など)などを含む。藻類の中でも微細藻類は、高等植物の10倍以上の二酸化炭素(CO
2 )固定能力を有していることから、工場の煙道ガス中のCO
2 排出量を削減しながらバイオ燃料を生産することができるシステムの構築を可能にするものとして最近、注目を集めている。微細藻類は数千種あり、そのサイズは3μmから30μmに及ぶ。微細藻類のうち最も注目を集めているものはボトリオコッカス(Botryococcus)属の藻類であり、取り分けボトリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)である。これらの藻類は湖沼や池に豊富に生息するが、これらの藻類からバイオ燃料を生産する際のコスト削減には、燃料集約的な収穫および抽出プロセスの省エネ化が課題とされている。例えば、遠心分離器を使って水と藻類とを分離することは、遠心分離器を稼働させる際の電力消費を考慮すると、燃料の生産コストに見合わない方法である。さらに、泡末浮上分離も微細気泡の生成に動力を要するため、効率的な方法とは言えない。低コストで藻類を水から分離する方法として凝集沈澱法があるが、分離後の水を再利用することを考慮すると、藻類に悪影響を与える凝集剤を用いることはできない。このような状況の中で、この懸濁水処理装置は、低コストで水から藻類を分離することを可能にし、バイオ燃料の生産コストの大幅な低減を可能にするものである。
【0016】
また、この発明は、
互いに並列配置された分級装置および懸濁水処理装置を有し、
上記分級装置は、
第一の容器と、
上記第一の容器内に設けられた、粒径分布を有する混合粒子および洗浄水が供給され、上記混合粒子および上記洗浄水を攪拌して上記混合粒子および上記洗浄水が混合した固液混相流を生成するための攪拌層と、
上記攪拌層の上段に設けられた、上記攪拌層から供給される上記固液混相流を一様流にするための、波状スタティックミキサーからなる整流層と、
上記整流層の上段に設けられた、上記整流層を通過した上記固液混相流が供給され、上記混合粒子を分級するための、水平方向に対して角度Ψ(0度<Ψ<90度)傾斜した複数の管路を有する分級層とを有し、
上記懸濁水処理装置は、
第二の容器と、
上記第二の容器内に設けられた、水平方向に対して角度α(0度<α<90度)傾斜した複数の板が互いに間隔を空けて積層された積層傾斜板を有する沈降層と、
上記第二の容器内の上記沈降層の下方に設けられた粒子圧密装置とを有し、
上記粒子圧密装置は、
鉛直方向に対して角度β(0度≦β≦10度)をなす面内に延在する複数の管路付きろ過膜が、それらのろ過膜が互いに対向するように互いに間隔を空けて水平方向に配列されたものを有し、
上記管路付きろ過膜のろ過膜は管路の側壁の一部を構成し、
上記ろ過膜の間隔をD、上記ろ過膜により除去しようとする懸濁水中の粒子の半径をaとしたとき、Dが2a<D≦20aを満足するように選ばれている
ことを特徴とする洗浄、分級および処理システムである。
【0017】
この洗浄、分級および処理システムの懸濁水処理装置については、上記の懸濁水処理装置の発明に関連して説明したことが成立する。
【0018】
分級装置の攪拌層には、洗浄および分級を行う、粒径分布を有する混合粒子および洗浄水が外部から供給され、これらの混合粒子および洗浄水の攪拌混合が行われる。攪拌層においては、攪拌用のポンプを設けて混合粒子および洗浄水を攪拌してもよいし、高圧ジェットによる水流の力で混合粒子を攪拌してもよいし、これらを併用してもよい。混合粒子の洗浄は主としてこの攪拌層における攪拌混合の過程で行われる。また、攪拌層においては、粒径分布を有する混合粒子のうちの分級により残された粒径が大きい粒子が底部に沈降して堆積するが、こうして堆積した粒子を攪拌層から第一の容器外に取り出し、回収するようにしてもよい。こうして回収した粒子は、再度洗浄を行うために、再び攪拌層に供給するようにしてもよい。
【0019】
攪拌層から供給される固液混相流は上昇流となって波状スタティックミキサーからなる整流層に供給され、この整流層を通過する過程で固液混相流が繰返し混合されることで整流され、一様流に変換される。ここで、波状スタティックミキサーは、波状の板により構成されたスタティックミキサーである。混合粒子の洗浄はこの整流層における整流の過程でも行われる。
【0020】
分級層は、典型的には、水平方向に対して角度Ψ傾斜した複数の筒状の孔を有する構造体または水平方向に対して角度Ψ傾斜した複数の板が互いに間隔を空けて積層された積層傾斜板からなる。筒状の孔を有する構造体においては、筒状の孔が管路を構成する。筒状の孔の断面形状は、必要に応じて選ばれが、具体的には、例えば円、楕円、三角形、四角形、五角形、六角形などであり、これらの中でも、筒状の孔を最密充填配置で配列させることができる三角形、四角形または六角形が好適である。管路内の流速が小さい方が分級を容易に行うことができるため、好適には、筒状の孔と孔との間の隔壁の厚さは十分に小さくする。また、積層傾斜板においては、互いに隣接する板の間の空間が、断面形状が矩形の管路を構成する。この場合も、好適には、隔壁となる板の厚さは十分に小さくする。Ψおよびこれらの管路の長さは、分級の閾値、言い換えるとこれらの管路を通過させない粒子の粒径に応じて適宜選択される。分級層の管路の傾斜方向は特に限定されず、必要に応じて選択されるが、例えば、懸濁水処理装置側が高くなるように水平方向に対して角度Ψ傾斜したり、あるいは、懸濁水処理装置と反対側が高くなるように水平方向に対して角度Ψ傾斜したりする。
【0021】
分級層に供給される固液混相流において粒子の乱流拡散が起きると分級の効率が低下することから、これを防止して分級層による分級を効率的に行うため、洗浄、分級および処理システムは、好適には、整流層と分級層との間に設けられた、整流層を通過した固液混相流を層流にするための層流層をさらに有する。この層流層は、典型的には、鉛直方向の複数の筒状の孔を有する構造体からなる。この構造体においては、筒状の孔が管路を構成する。また、この層流層により粒径が大きい粒子を取り除くことができるため、粒径が大きい粒子による分級層の管路の閉塞を防止することができる。
【0022】
分級層を通過した固液混相流を分級層を通過する前の固液混相流と区別して懸濁水と言うものとする。分級層を通過した固液混相流、すなわち懸濁水には、混合粒子のうちの粒径が小さい粒子が残存しているが、分級装置の後段に設置された懸濁水処理装置の沈降層においてこれらの粒子を効率的に沈降させるためには、分級層を通過した懸濁水が沈降層に供給される前に可能な限りこれらの粒子の凝集を促進させて粒径を大きくすることが望ましい。そこで、洗浄、分級および処理システムは、好適には、第一の容器と第二の容器とを互いに連結するように設けられた凝集促進層をさらに有する。この凝集促進層は、水平方向または第二の容器側が低くなるように水平方向に対して角度Ω(0度<Ω≦10度)傾斜した複数の管路を有する。この場合、分級層を通過した懸濁水は、この凝集促進層の一端に供給され、他方の側面から出て第二の容器に供給される。凝集促進層は、具体的には、例えば、水平方向の複数の板が互いに間隔を空けて積層された積層板、第二の容器側が低くなるように水平方向に対して角度Ω(0度<Ω≦10度)傾斜した複数の板が互いに間隔を空けて積層された積層傾斜板、水平方向の複数の筒状の孔を有する構造体または第二の容器側が低くなるように水平方向に対して角度Ω傾斜した複数の筒状の孔を有する構造体からなる。あるいは、凝集促進層は、例えば、この凝集促進層の中心軸の方向の最頂部から両側に向かって下向きに水平方向に対して角度Φ(0度<Φ<90度)傾斜した切妻屋根状の複数の板が互いに間隔を空けて積層された積層傾斜板または凝集促進層の中心軸の方向の最頂部から両側に向かって下向きに水平方向に対して角度Φ(0度<Φ<90度)傾斜し、かつ第二の容器側が低くなるように水平方向に対して角度Ω(0度<Ω≦10度)傾斜した切妻屋根状の複数の板が互いに間隔を空けて積層された積層傾斜板からなる。必要に応じて、管路の底部の板上に、凝集促進層の中心軸と直交する方向に延在する、管路の高さの途中の高さの縦板を凝集促進層の中心軸の方向に周期的または非周期的に設けてもよく、こうすることで縦板と縦板との間の領域に粒子を捕獲することができ、粒子の沈降を促進し、ひいては凝集を促進することができる。
【0023】
分級層を通過した懸濁水は、懸濁水処理装置に供給される時点では、必ずしも一様流となっていない。そこで、洗浄、分級および処理システムは、好適には、分級層と懸濁水処理装置との間、または、凝集促進層を設ける場合には分級層と凝集促進層との間に、波状スタティックミキサーからなる整流層をさらに有する。こうすることで、分級層から懸濁水処理装置に供給される固液混相流を一様流とすることができ、粒子の沈降を効率的に行うことができる。
【0024】
粒径分布を有する混合粒子は、基本的にはどのようなものであってもよく、材質も問わないが、具体的には、例えば、土壌、土壌以外の各種材質の粒子からなる混合粒子、土壌と土壌以外の各種材質の粒子とからなる混合粒子などである。土壌以外の各種材質の粒子からなる混合粒子の一例を挙げると、粒径が小さいカーボン粒子とこのカーボン粒子より粒径が大きい石膏粒子とからなる混合粒子あるいはサイズの異なる藻類である。
【0025】
また、この発明は、
容器と、
上記容器内に設けられた、水平方向に対して角度α(0度<α<90度)傾斜した複数の板が互いに間隔を空けて積層された積層傾斜板を有する沈降層と、
上記容器内の上記沈降層の下方に設けられた粒子圧密装置とを有し、
上記粒子圧密装置は、
鉛直方向に対して角度β(0度≦β≦10度)をなす面内に延在する複数の管路付きろ過膜が、それらのろ過膜が互いに対向するように互いに間隔を空けて水平方向に配列されたものを有し、
上記管路付きろ過膜のろ過膜は管路の側壁の一部を構成し、
上記ろ過膜の間隔をDとしたとき、10mm≦D≦50mmを満足するように選ばれている
ことを特徴とする懸濁水処理装置である。
【0026】
この懸濁水処理装置の発明においては、その性質に反しない限り、冒頭に記載した懸濁水処理装置の発明に関連して説明したことが成立する。
【0027】
また、この発明は、
互いに並列配置された分級装置および懸濁水処理装置を有し、
上記分級装置は、
第一の容器と、
上記第一の容器内に設けられた、粒径分布を有する混合粒子および洗浄水が供給され、上記混合粒子および上記洗浄水を攪拌して上記混合粒子および上記洗浄水が混合した固液混相流を生成するための攪拌層と、
上記攪拌層の上段に設けられた、上記攪拌層から供給される上記固液混相流を一様流にするための、波状スタティックミキサーからなる整流層と、
上記整流層の上段に設けられた、上記整流層を通過した上記固液混相流が供給され、上記混合粒子を分級するための、水平方向に対して角度Ψ(0度<Ψ<90度)傾斜した複数の管路を有する分級層とを有し、
上記懸濁水処理装置は、
第二の容器と、
上記第二の容器内に設けられた、水平方向に対して角度α(0度<α<90度)傾斜した複数の板が互いに間隔を空けて積層された積層傾斜板を有する沈降層と、
上記第二の容器内の上記沈降層の下方に設けられた粒子圧密装置とを有し、
上記粒子圧密装置は、
鉛直方向に対して角度β(0度≦β≦10度)をなす面内に延在する複数の管路付きろ過膜が、それらのろ過膜が互いに対向するように互いに間隔を空けて水平方向に配列されたものを有し、
上記管路付きろ過膜のろ過膜は管路の側壁の一部を構成し、
上記ろ過膜の間隔をDとしたとき、10mm≦D≦50mmを満足するように選ばれている
ことを特徴とする洗浄、分級および処理システムである。
【0028】
この洗浄、分級および処理システムの発明においては、その性質に反しない限り、冒頭に記載した懸濁水処理装置ならびにこの懸濁水処理装置を用いた洗浄、分級および処理システムの各発明に関連して説明したことが成立する。
【0029】
一方、上記の懸濁水処理装置の発明において、沈降層に設けられる積層傾斜板は、粒子圧密装置の上方に、処理すべき懸濁水が当たるように仕切り板を設ければ、必ずしも設けなくてもよい。
【0030】
そこで、この発明は、
容器と、
上記容器内に設けられた粒子圧密装置と、
上記容器内の上記粒子圧密装置の上方に、処理すべき懸濁水が当たるように設けられた仕切り板とを有し、
上記粒子圧密装置は、
鉛直方向に対して角度β(0度≦β≦10度)をなす面内に延在する複数の管路付きろ過膜が、それらのろ過膜が互いに対向するように互いに間隔を空けて水平方向に配列されたものを有し、
上記管路付きろ過膜のろ過膜は管路の側壁の一部を構成し、
上記ろ過膜の間隔をDとしたとき、10mm≦D≦50mmを満足するように選ばれている
ことを特徴とする懸濁水処理装置である。
【0031】
この懸濁水処理装置の発明においては、その性質に反しない限り、冒頭に記載した懸濁水処理装置の発明に関連して説明したことが成立する。なお、10mm≦D≦50mmの代わりに、冒頭に記載した懸濁水処理装置の発明における2a<D≦20aを用いてもよい。
【0032】
また、この発明は、
互いに並列配置された分級装置および懸濁水処理装置を有し、
上記分級装置は、
第一の容器と、
上記第一の容器内に設けられた、粒径分布を有する混合粒子および洗浄水が供給され、上記混合粒子および上記洗浄水を攪拌して上記混合粒子および上記洗浄水が混合した固液混相流を生成するための攪拌層と、
上記攪拌層の上段に設けられた、上記攪拌層から供給される上記固液混相流を一様流にするための、波状スタティックミキサーからなる整流層と、
上記整流層の上段に設けられた、上記整流層を通過した上記固液混相流が供給され、上記混合粒子を分級するための、水平方向に対して角度Ψ(0度<Ψ<90度)傾斜した複数の管路を有する分級層とを有し、
上記懸濁水処理装置は、
第二の容器と、
上記第二の容器内に設けられた粒子圧密装置と、
上記第二の容器内の上記粒子圧密装置の上方に、処理すべき懸濁水が当たるように設けられた仕切り板とを有し、
上記粒子圧密装置は、
鉛直方向に対して角度β(0度≦β≦10度)をなす面内に延在する複数の管路付きろ過膜が、それらのろ過膜が互いに対向するように互いに間隔を空けて水平方向に配列されたものを有し、
上記管路付きろ過膜のろ過膜は管路の側壁の一部を構成し、
上記ろ過膜の間隔をDとしたとき、10mm≦D≦50mmを満足するように選ばれている
ことを特徴とする洗浄、分級および処理システムである。
【0033】
この洗浄、分級および処理システムの発明においては、その性質に反しない限り、冒頭に記載した懸濁水処理装置ならびにこの懸濁水処理装置を用いた洗浄、分級および処理システムの各発明に関連して説明したことが成立する。なお、10mm≦D≦50mmの代わりに、冒頭に記載した懸濁水処理装置の発明における2a<D≦20aを用いてもよい。
【0034】
上記の懸濁水処理装置ならびに洗浄、分級および処理システムは、例えば、浄水製造装置として用いることもできる。すなわち、泥水などの懸濁水を上記の懸濁水処理装置または洗浄、分級および処理システムで処理することにより、懸濁水中の粒子を除去することができるため、粒子が除去された水を得ることができ、必要に応じて浄水を得るための従来公知の方法を用いてさらに浄化することにより、浄水を得ることができる。
【発明の効果】
【0035】
この発明によれば、湿式処理により泥水、より一般的には各種の懸濁水を効率的に処理して懸濁粒子を除去することができる懸濁水処理装置を提供することができる。また、粒径分布を有する混合粒子の攪拌および分級を一つの容器内で行うことができることによりシステムの小型化を図ることができ、しかも分級の閾値を連続的に調整することができ、さらに分級後の懸濁水を効率的に処理して懸濁粒子を取り除くことができる洗浄、分級および処理システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」という。)について図面を参照しながら説明する。
【0038】
〈第一の実施の形態〉
[懸濁水処理装置]
図1に第一の実施の形態による懸濁水処理装置を示す。
図1に示すように、懸濁水処理装置1は、上部が開口した容器11と、容器11の内部に上下二段設けられた積層傾斜板12、13からなる沈降層と、容器11の内部の沈降層の下方に上下二段設けられた粒子圧密装置14、15とを有する。容器11の形状は必要に応じて選ばれ、
図1に示す容器11の形状は一例に過ぎない。また、容器11の内部に設ける積層傾斜板および粒子圧密装置の段数は特に限定されず、一段あるいは三段以上設けてもよい。
【0039】
積層傾斜板12、13を構成する傾斜板は、水平方向に対して角度α(0度<α<90度)傾斜している。これらの容器11および積層傾斜板12、13の大きさは特に限定されず、必要に応じて選択される。積層傾斜板12、13の大きさは必要に応じて選ばれるが、一例を挙げると、高さは20〜40cm、好適には20〜30cm、幅および奥行は15〜35cmである。積層傾斜板12と積層傾斜板13との間には隙間を設けてもよいし、設けなくてもよい。積層傾斜板12、13は、互いに間隔を空けて積層された複数の傾斜板からなる。積層傾斜板12、13を構成する傾斜板の傾斜方向は必要に応じて選ばれ、積層傾斜板12と積層傾斜板13との傾斜板の傾斜方向が互いに異なるようにしてもよいし、互いに同じでもよいが、ここでは、積層傾斜板12の傾斜板は
図1の手前側が高くなるように傾斜し、積層傾斜板13の傾斜板は
図1の手前側が低くなるように傾斜している。こうすることで、積層傾斜板12、13の傾斜板に沿って滑り落ちる粒子が容器11の一方の壁面に偏らないようにすることができる。処理を行う懸濁水は、上段の積層傾斜板13の一方の側面からその内部に入るようになっている。
図2AおよびBは積層傾斜板12、13の正面図および側面図である。
図2AおよびBに示すように、積層傾斜板12を構成する傾斜板12aおよび積層傾斜板13を構成する傾斜板13aは、水平方向に対して角度α(0度<α<90度)傾斜している。αは、好適には50〜70度、より好適には55〜65度、例えば約60度に選ばれる。処理を行う懸濁水は、最初に、上段の積層傾斜板13の傾斜板13aと傾斜板13aとの間の隙間13bを傾斜板13aに沿って流れ、続いて下段の積層傾斜板12の傾斜板12aと傾斜板12aとの間の隙間12bを傾斜板12aに沿って流れ、その過程で傾斜板13a、12a上に粒子が沈降して堆積し、傾斜板13a、12aを滑り落ちて最終的に積層傾斜板12から出て行く。必要に応じて、積層傾斜板12、13を構成する傾斜板12a、13aの少なくとも一つの少なくとも一部、例えば傾斜板12a、13aの表面を磁石で構成してもよい。このように傾斜板12a、13aの少なくとも一部を磁石で構成することにより、粒子が常磁性を示す場合、この粒子は磁石による磁界により磁化するため、粒子は磁力により傾斜板12a、13aに引き付けられる。このため、粒子は傾斜板12a、13aに沈降しやすくなる。こうして傾斜板12a、13aに沈降した粒子は凝集し、傾斜板12a、13aを滑り落ちる。この手法は、例えば、放射能汚染土壌に含まれるセシウムイオンを含む粘土は常磁性を示すことが知られており、このような粘土を除去するときに有効である。特に、最初に固液混相流が流入する上段の積層傾斜板13の傾斜板13a、取り分け上部の傾斜板13aを磁石で構成することが望ましい。積層傾斜板12を通過した粒子は粒子圧密装置15、14を順次通り、圧密される。粒子圧密装置14、15で圧密された粒子は、最終的に、粒子圧密装置14の下方に沈降し、容器11の底部に設けられた排出口11aから外部に取り出す。
【0040】
粒子圧密装置14、15は同様に構成されているので、以下においては粒子圧密装置14についてのみ説明する。
図3は粒子圧密装置14を示す。
図3に示すように、粒子圧密装置14は、鉛直方向に対して角度β(0度≦β≦10度)をなす長方形の形状を有する複数の管路付きろ過膜16が、それらのろ過膜が互いに対向するように互いに間隔を空けて水平方向に配列されたものを有する。この管路付きろ過膜16の集合体は、全体として直方体の形状を有する。これらの管路付きろ過膜16は、最も好適には、β=0度、すなわち鉛直方向に延在する。また、これらの管路付きろ過膜16は、典型的には、互いに平行にかつ等間隔で配列される。
【0041】
管路付きろ過膜16は、
図4Aに示すような矩形波状の凹凸形状を有する長方形の波板17の両主面に、
図4Bに示すようにろ過膜18が平坦に貼られたものであり、この例では、ろ過膜18が波板17の全体を包むように貼られている。管路付きろ過膜16のろ過膜18としては、例えば、不織布、多孔質膜、ろ紙などが用いられ、必要に応じて選ばれる。波板17の凹部あるいは凸部の延在する方向は粒子圧密装置14の長手方向に平行であり、この例では水平方向である。
図4Cに示すように、波板17とろ過膜18との間の空間が管路19を構成する。管路19は管路付きろ過膜16の長手方向の一端から他端にわたって延在している。管路付きろ過膜16は、必要に応じて、その膜面に垂直な方向に振動させることができるように構成される。具体的には、例えば、管路付きろ過膜16の一端にバイブレーター(振動装置)が取り付けられる。
【0042】
粒子圧密装置14の長手方向の両端にはそれぞれ平板20、21が互いに平行に取り付けられている。平板20には縦長の長方形の孔が互いに平行に設けられており、この孔に管路付きろ過膜16の一端が嵌め込まれていて管路19の一端が平板20の外部に露出している。平板20の外面には、平板20の外部に露出した管路付きろ過膜16を取り巻くようにO−リング22が長方形の形状に取り付けられている。O−リング22は平板20の外面に形成された溝に埋め込まれており、この溝に位置決めされている。管路付きろ過膜16の他端は平板21と密着しており、管路19の他端はこの平板21により塞がれている。
【0043】
粒子圧密装置14、15の一端に設けられた平板20は容器11の内壁に固定されている。平板20が容器11の内壁に固定された部分の詳細を
図5に示す。
図5に示すように、平板20の外面に設けられたO−リング22が容器11の内壁に押し付けられることにより容器11の内壁とO−リング22と平板20とにより囲まれた空間23が容器11の内部の空間と分離されている。容器11の側壁にはこの空間23と連通するように孔11aが設けられており、この孔11aに配管24が接続されている。
【0044】
図1に示すように、配管24は貯水タンク25に接続されている。貯水タンク25は配管を介して真空ポンプ26と接続されており、この真空ポンプ26により貯水タンク25の内部、従って配管24を介して貯水タンク25と接続されている容器11の内壁とO−リング22と平板20とにより囲まれた空間23を減圧して負圧に設定することができるようになっている。このため、粒子圧密装置14、15の管路付きろ過膜18の管路19の内部を負圧にすることができ、この管路19を通して水を平板20に向かって吸引することができる。これによって、管路19内に平板20に向かう方向の水流を作ることができ、管路19の一端から空間23および配管24を介して貯水タンク25内に水を排出し、水27を貯めるようになっている。真空ポンプ26は必ずしも常時運転する必要はなく、貯水タンク25の内部の圧力が一定以下になった時点で運転を停止してもよい。貯水タンク25の下部には配管28が接続されており、この配管28の途中にポンプ29が接続されている。貯水タンク25内に溜まった水27はこのポンプ29により配管29を通して、容器11の上部の側壁に設けられた受液槽30に送出されるようになっており、これによって懸濁水処理装置全体を水が循環するようになっている。
【0045】
[懸濁水処理装置の動作方法]
次に、上述のように構成されたこの懸濁水処理装置の動作方法について説明する。
【0046】
まず、
図1に示すように、容器11内には上段の積層傾斜板13が水没する深さまで水が入っているものとする。粒子を除去する処理を行う懸濁水を容器11の上部から上段の積層傾斜板13の一方の側面に供給する。具体的には、懸濁水を、傾斜板13aと傾斜板13aとの間の隙間13bに、傾斜板13aの傾斜方向と直交する方向から供給する。処理を行う懸濁水が泥水である場合には、あらかじめ凝集剤を添加してフロック(粒子が凝集したもので、内部に不動水を持ち、有効密度は水に近い)を生成しておく。この場合、処理の対象は、フロックを含む懸濁水である。上述のように傾斜板13aの傾斜方向と直交する方向から積層傾斜板13の側面に懸濁水が供給されることにより、積層傾斜板13が流れを阻害せず、乱れも小さくなる。こうして積層傾斜板13の傾斜板13aと傾斜板13aとの間の隙間13aに供給された懸濁水は傾斜板13aに沿って流れ、その過程で懸濁水中の粒子が傾斜板13a上に沈降堆積し、最終的に積層傾斜板13の下部から落下する。積層傾斜板13の下部から出て行く懸濁水は、下段の積層傾斜板12の傾斜板12aと傾斜板12aとの間の隙間12bに入り、傾斜板12aに沿って流れ、その過程で懸濁水中の粒子が傾斜板12a上に沈降堆積し、最終的に積層傾斜板12の下部から落下する。こうして積層傾斜板12の下部から落下した粒子は上段の粒子圧密装置15の管路付きろ過膜16の間に入り、徐々に沈降していく。この際、既に述べたように、管路付きろ過膜16の管路19は負圧になっているため、
図4Cに示すように、ろ過膜18を通って水が管路19内に吸引される。管路19内に吸引された水は管路19内を平板20に向かって流れて空間23(
図5参照。)に入り、さらに配管24を通って貯水タンク25に放出される。管路付きろ過膜16の間の水中を落下する粒子のうち、ろ過膜18に接触したものはろ過膜18に付着する。この際、懸濁水がろ過膜18側に吸引されることから、ろ過膜18への粒子の付着が促進される。こうして粒子がろ過膜18に付着すると、時間の経過とともに粒子が堆積して粒子層が形成され、その厚さが次第に増加する。上段の粒子圧密装置15の管路付きろ過膜16のろ過膜18に付着しないで素通りした粒子は、下段の粒子圧密装置14の管路付きろ過膜16の間に入り、その一部がろ過膜18に付着し、上述と同様にろ過膜18に粒子層が形成される。こうしてろ過膜18に粒子層が形成されることにより、粒子が圧密される。粒子の圧密がある程度行われた時点で、粒子圧密装置14、15の管路付きろ過膜16の管路19に上記の水の吸引方向と逆方向に水を流し(逆洗)、管路19に面したろ過膜18に裏側から圧力を掛けることにより、ろ過膜18の表面に形成された粒子層の一部または全部を剥離除去し、容器11の底部の排出口11aから外部に取り出す。また、必要に応じて、
図3の矢印で示すように、バイブレーターにより平板21側の管路付きろ過膜16を膜面に垂直方向に例えば数百Hzで加振することにより、ろ過膜18に形成された粒子層をろ過膜18から剥離除去する。
【0047】
以上により、懸濁水中の粒子が除去され、目的とする懸濁水の処理が行われる。この処理は、必要に応じて、複数回、繰り返し行ってもよい。
【0048】
図1に、懸濁水が、所定の分級を行った後の泥水である場合について、砂・シルト・粘土の流れを太い破線の矢印で模式的に示す。
【0049】
[懸濁水処理装置による懸濁水処理実験]
次に、この懸濁水処理装置の試作機を用いて泥水処理実験を行った結果について説明する。
【0050】
積層傾斜板12、13の高さは20cm、幅および奥行は15cm、傾斜板12a、13aの間隔は2cm、傾斜板12a、13aの傾斜角αは60度である。また、粒子圧密装置14、15の管路付きろ過膜16の高さは100mm、幅は200mmであり、この管路付きろ過膜16が7枚、水平方向に互いに平行に配列されていて管路付きろ過膜16の間隔Dは約20mmである。平板20、21の大きさは高さ150mm、幅300mmである。管路付きろ過膜16のろ過膜18としてはポリプロピレン製の不織布を用いた。管路付きろ過膜16の波板17としては、矩形波状の断面形状を有する100mm×200mmの長方形のポリカーボネート製波板(全体の厚さは約3mm、波のピッチは約3mm、板の厚さは0.5mm)を用いた。
【0051】
フロックの沈降および圧密について基礎的な実験を行った。処理を行う泥水としては、分級槽を通して分離された泥水を用いた。この泥水に凝集剤としてポリ塩化アルミニウム(PAC)を添加し、フロックを生成した。
図6Aに、フロックの一例として、試験管に入れたカオリン水溶液にPACを添加して生成したフロックの写真を示す。
図6Bは、
図6Aの一部を拡大した写真である。カオリン水溶液中のカオリナイトの粒径は数μmである。
図6AおよびBに示すように、フロック同士が接触してネットワーク構造を形成し、フロックが沈降するにしたがってネットワーク構造が変形しながら圧密が行われる。
図6AおよびBより、フロックは不定形の形状を有するものの、平均半径は概ね数mm程度であることが分かる。
【0052】
図7AおよびBは、幅40cm、奥行20cmのタンクにおいてカオリン水溶液にPACを添加して生成したフロックの沈降実験を行った結果を示し、フロックが生成されてから次第に沈降していく様子を30秒間隔で撮影した写真である。
図7Aの左から右に、続いて
図7Bの左から右に30秒ずつ経過している。カオリンの体積比は0.01程度である。
図7AおよびBより、フロックの表層はほぼ一定速度で沈降しているため、この領域は沈降ゾーンに分類される。沈降速度が一定であり、フロックはゲル化せずに沈降していると考えられる。沈降速度はほぼ一定であるため、ネットワーク構造の変形抵抗は無視できると考えられる。
【0053】
図1に示す懸濁水処理装置の試作機に流量20L/minで水を循環させ、30秒毎に50gのカオリンを投入し、泥水の流入流出および沈降実験を行った。その結果を
図8に示す。
図8では、左から容器内にフロックが流入し、右上から処理水が流出する。積層傾斜板の傾斜板によりフロックが分離され、容器内の粒子圧密装置を設置した層にネットワーク構造を有するフロックが堆積していることが分かる。比較のために、積層傾斜板を設置しないで同様な実験を行ったときに容器の上部を撮影した写真を
図9に示す。
図9を図
図8と比べると、積層傾斜板によるフロックの沈降効果が著しいことが分かる。積層傾斜板の各傾斜板は、フロックが沈降しやすいように流れを整流するとともに、フロックの沈降および成長を促進する。したがって、粒子圧密装置は、積層傾斜板の直下に設置することで、沈降フロックを吸着しやすくなることが分かる。
【0054】
図10Aは粒子圧密装置の吸引部を示す写真である。
図10BおよびCは、フロックの圧密実験を行った後の粒子圧密装置をそれぞれ斜め方向および上方から撮影した写真である。
図10BおよびCより、不織布からなるろ過膜18の表面に粘土が付着しているのが分かる。ろ過膜18の表面に付着した粘土層の厚さは数mmであり、厚くなるにつれて透水性が低下する。そこで、管路付きろ過膜16の管路19に平板20側から水を流して逆洗を行うことにより、この粘土層をろ過膜18の表面から剥離除去する。ここで、管路付きろ過膜16の管路19の吸引圧力(サクション圧)は、例えば、ゲージ圧で−80kPa程度である。
【0055】
泥水中の固体成分の減容化の度合いを見るために、容器11内に堆積したフロックおよびろ過膜18に付着した粘土の含水比を測定した。測定結果を表1に示す。表1より、含水比は、自由落下で自重のみの圧縮では700%程度と大きいが、粒子圧密装置による圧密では100%程度まで低下していることが分かる。
【0057】
以上のことから、粒子圧密装置14、15による減容化は泥水処理の効率を上げる上で有効であることが分かる。
【0058】
次に、圧密粘土の剥離および沈降について説明する。粒子圧密装置14、15の性能を維持するためには、粒子圧密装置14、15の管路付きろ過膜16のろ過膜18の表面に付着した圧密粘土を定期的あるいは不定期に剥離除去する必要がある。この剥離が有効でないと、ろ過膜18による泥水のサクション(吸引)量が減り、フロックの圧密処理量が低減するため、この懸濁水処理装置を連続的に稼働させることができない。
【0059】
図11Aは、ろ過膜18を構成する不織布の表面にサクションにより粘土層が付着した様子を示す写真、
図11Bは、表面に粘土層が付着した不織布を逆洗した後の様子を示す写真である。この不織布表面の粘土層は、逆洗のみでは、亀裂やホール(孔)が生じ、局部的に除去されるのみであり、再びサクションを掛けると、直ぐにフロックで塞がってしまう。そこで、管路付きろ過膜16の一端にバイブレーターを固定し、数百Hzで管路付きろ過膜16の膜面に垂直方向に加振した。
図11Cは、加振後の管路付きろ過膜16の不織布の表面を示す写真である。
図11Cより、加振によって、サクションにより不織布表面に付着していた粘土層が不織布表面から浮き上がることが分かった。
【0060】
図12Aは、ろ過膜18を構成する不織布の表面にサクションにより粘土層が付着した様子を示す写真、
図12Bは、数百Hzでの加振後の不織布表面の様子を示す写真、
図12Cは、加振後に逆洗を行ったときの不織布表面の様子を示す写真、
図12Dは、加振後に逆洗を行ったときの不織布表面を膜面にほぼ平行な方向から撮影した写真である。
図12Dには、管路付きろ過膜の一端側に設置されたバイブレーターが示されている。
図12CおよびDより、加振によって不織布と粘土層との間に隙間が生じ、逆洗で粘土層が剥離し落下したことにより、不織布表面の粘土層のかなりの部分が剥離除去されていることが分かる。すなわち、加振後に逆洗を行うことにより、逆洗の効果が著しく現れることが分かる。
【0061】
図13は、泥水処理を行う場合に用いて好適な粒子圧密装置の一例を示す。管路付きろ過膜16は、間隔を狭くして多数配置し、ろ過膜18の全表面積が大きくなるようにすることが好ましい。この例では、管路付きろ過膜16の高さは98mm、厚さは3mm、ピッチは10mm、個数は16、互いに対向するろ過膜18の間隔は7mmである。管路付きろ過膜16の両端の平板20、21は幅が200mm、高さが140mmである。
【0062】
ここで、ろ過膜18の設計方法について説明する。容器11内に設置する粒子圧密装置14、15のろ過膜18の全表面積S
T は、ろ過膜18を通過する水の流速をU
S とおくと、U
S S
T がQ/n(ただし、Qは泥水の処理流量、nは積層傾斜板通過後の泥水の濃縮割合)に等しくなるように選ぶ必要がある。すなわち、S
T =Q/(nU
S )となる。U
S はろ過膜18に粘土が付着すると低下し、粘土層の厚さおよび含水比に依存する。1/nは、泥水に凝集剤を加えることで生成したフロックが積層傾斜板の傾斜板で沈降した後のネットワーク構造を有するフロックの初期泥水に対する比率である。例えば、懸濁物質(浮遊物質)(SS(suspended solid)) の量、すなわちSS量が10000の泥水にPACを添加し(含水比は990/10×100%)、沈降したフロックの含水比が700%のとき、n=990/70となる。一方、粘土が付着したろ過膜18の浸透流速は、
【数1】
となる。式(1)の右辺のΔh/Δxは動水勾配であり、Δxは距離、Δhは水頭差である。粘土の透水係数は、含水比にも依存するがk〜10
-7cm/sとし、Δh〜10m、Δx〜2mmとすると、U
S 〜10
-3cm/s程度である。また、本実験の処理流量をQ=20L/minとすると、S
T 〜1.5×1.5m
2 となる。以上のことから、沈降フロックを全て圧密するためには、ろ過膜18の全表面積をかなり大きくする必要があることが分かる。
【0063】
また、管路付きろ過膜16のろ過膜18の間隔Dは、既に述べたように2a<D≦20aを満足するように選ばれるが、この範囲内で、フロックが管路付きろ過膜16の間を通過する間にトラップされる条件から決定する。まず、フロックの半径(平均半径)をa、密度をρ
S とすると、単一フロックの沈降速度は、ストークス則を使って、
【数2】
となる。フロックは、径が大きいが密度は小さく、また、これらを求めることは難しいため、沈降速度U
V は実験から数cm/s程度であるとする。したがって、一般にU
V ≫U
S であるから、鉛直配置のろ過膜18では、フロックを引き付けることはできない。すなわち、ろ過膜18は、極近傍を落下するフロックのみをトラップすることになる。したがって、フロックがろ過膜18の表面に接触する機会を増やすためには、管路付きろ過膜16の間隔、したがって互いに対向するろ過膜18の間隔Dは狭い程良い。例えば、互いに対向するろ過膜18の間隔Dがフロックの半径aの数倍程度であれば、沈降するフロックがろ過膜18の表面に接触することにより沈降速度が遅くなり、トラップされやすいと考えられる。
【0064】
ろ過膜18の加振振動数および粘土層の剥がれについて考察する。ろ過膜18を加振すると、ろ過膜18の表面に付着した粘土層とろ過膜18とが振動するが、粘土層の固有振動数とろ過膜18の固有振動数とが互いに異なるため、ろ過膜18からの粘土の剥離が生じると考えられる。
【0065】
まず、ろ過膜18の固有振動数を大まかに見積もる。ろ過膜18の単位幅当たりの張力をT、単位面積当たりの密度をρとすると、ろ過膜18上の変位の伝播速度cは、
【数3】
となる。したがって、基本振動数fは次式となる。
【数4】
ここで、l(筆記体のエル)は波板17の両面のろ過膜18の間隔である。仮に波速cをx(m/s)とすると、l=y(mm)でf=500x/y(Hz)となる。ろ過膜18として不織布を用いるとすると、特に、伸長せずに接着した不織布の場合は張力が小さいため、波速cは非常に小さくなり、不織布を伝播する波速cはメートル毎秒のオーダー以下であると考えられる。
図13に示す粒子圧密装置の場合、l=3mmであり、不織布の固有振動数は100〜1000Hzのオーダーとなる。管路付きろ過膜16の作製の際に不織布の張力が0に近いとすれば、固有振動数はさらに低下する。
【0066】
次に、粘土層の固有振動数を求める。粘土層を伝わる波動には、P波(縦波)とS波(横波)とがあり、これらの波の速度は粘土の含水比などに依存する。以下では、平均的な値として、P波、S波の速度をそれぞれ、代表的な値としてC
P =100m/s、C
S =200m/sとし、また、粘土層の密度を1500kg/m
3 とする。
【0067】
水中に置かれた粘土層を表面法線方向に加振すると、粘土層は水から圧力を受けるため、振動数は低下する。この際の粘土層の振動数と波長との関係(分散関係式)は、次式で与えられる(S.V.Sorokin and C.J.Chapman:Asymptotic analysis of nonlinear vibration of an elastic plate under heavy fluid loading,J.Sound and Vibration 284(2005)1131-1144)。
【数5】
ただし、
【数6】
である。ここで、ρ
c は粘土の密度、hは粘土層の厚さ、ωおよびkは粘土層の振動各周波数および波数、ρ
flは水の密度、C
flは水中音速である。式(5)の左辺の最終項は、粘土層が水から受ける圧力に起因する。
【0068】
図14AおよびBは、式(5)から計算した粘土層を伝搬する横波の波長Lと加振振動数fとの関係を示す。例えば、
図14Aによれば、粘土層の厚さhが4mmのとき、200Hzで加振すると波長Lは30cm程度であり、波長Lを10cmにするには1kHzで加振する必要がある。
図14Bは、加振振動数を固定したとき、薄い粘土層ほど波長が短いことを示す。粒子圧密装置の他端を加振して粘土層を剥離するには、ろ過膜18上の粘土層が伸縮される方が良いので、1kHz程度の高周波振動を与える方が効率的に粘土層を剥離することができると考えられる。
【0069】
例えば、
図10A、BおよびCに示す粒子圧密装置の長さは20cmであり、粘土層の厚さを4mm、加振振動数を200Hzとすると波長Lは30cmとなり、0.6波長が粘土層に非一様性を付加することになる。ろ過膜18上の波数が大きいほど、粘土層には多くの亀裂が入るため、加振振動数は高い程良い。ただ、粒子圧密装置のバイブレーターの入力エネルギーを一定とすると、振動数と振幅とが逆比例するので、実際に使用する装置では、振動数と振幅とのいずれを優先するかは、加振実験などで調べる必要がある。
【0070】
以上のことから、水中で不織布表面に付着した粘土を加振によって効率的に剥離するためには、式(5)にしたがってろ過膜18の長さより短い波長の波を発生させるような振動数で加振すればよい。また、不織布と粘土層との固有振動数に差異があるほど、剥離しやすいと考えられるため、不織布を張力が働かない程度に接着する方が良い。極端な場合は、不織布を波板17の周囲のみで接着し、その他の部分では接着しない方が、不織布の変形が大きくなるため、剥離に有利である。ただ、剥離には、粘土層の加速度、加振により誘起される水流も存在するため、より詳細な検討を行うことが望ましい。
【0071】
最後に、より厳密な議論は、不織布・粘土・水の層状構造を界面の応力が連続する条件で解析し、界面に滑りや剥離が生じる条件を求めることで可能となる。
図15AおよびBに不織布の表面の粘土層が振動する様子を示す。ただ、粘土層の破壊や音響流で誘起される水の流れによる粘土の侵食の影響なども実際は関与しており、実験的研究を進める必要がある。また、ろ過膜18に用いる膜は、粘土が剥がれやすいように、不織布よりも多孔質膜の方が良い。さらに、粘土を吸着したろ過膜18を容器11から取り出し、空気中でさらに吸引脱水し、粘土を剥離回収することも考えられる。
【0072】
粒子圧密装置14、15の管路付きろ過膜16を膜面に垂直方向に振動させる代わりに、
図16に示すように、管路付きろ過膜16を伸縮可能に構成し、平板20、21を水平方向に振動させることにより管路付きろ過膜16を伸縮させるようにしてもよい。管路付きろ過膜16を伸縮させることにより、ろ過膜18に付着した粒子層を効果的に剥離除去することが可能である。ろ過膜18は疎水性素材のものを用いるのが好ましい。
【0073】
以上のように、第一の実施の形態によれば、泥水などの懸濁水を積層傾斜板12、13に通すことにより懸濁水中の粒子を沈降成長させた後、粒子圧密装置14、15に通すことにより粒子を効率的に圧密することができる。これによって、懸濁水中の粒子を減容化することができる。
【0074】
〈第二の実施の形態〉
[洗浄、分級および処理システム]
図17および
図18に第二の実施の形態による洗浄、分級および処理システムを示す。ここで、
図17は断面図、
図18は斜視図である。
図17および
図18に示すように、この洗浄、分級および処理システムは、互いに並列配置された分級装置110および懸濁水処理装置1を有する。
【0075】
分級装置110は、上部が開口した容器111と、容器111の底部に設けられた攪拌層112と、攪拌層112の上段に設けられた整流層113と、整流層113の上段に設けられた層流層114と、層流層114の上段に設けられた分級層115とを有する。容器111の形状は特に限定されないが、典型的にはほぼ直方体の形状を有する。これらの容器111、攪拌層112、整流層113、層流層114および分級層115の大きさは特に限定されず、必要に応じて選択される。これらの大きさの一例を挙げると、容器111、攪拌層112、整流層113、層流層114および分級層115の幅および奥行はいずれも20〜40cm、容器111の高さは60〜100cm、攪拌層112の高さは10〜20cm、整流層113の高さは20〜40cm、層流層114の高さは5〜10cm、分級層115の高さは10〜20cmである。
【0076】
攪拌層112は、洗浄および分級の対象である、粒径分布を有する混合粒子、例えば土壌や藻類などと洗浄水とを攪拌混合し、混合粒子および洗浄水が混合した固液混相流を生成するためものである。攪拌層112には、容器111の外部から混合粒子および洗浄水を供給することができるようになっている。具体的には、例えば、この攪拌層112の周囲の部分の容器111の側壁に設けられた開口(図示せず)を通じて洗浄物導入管(図示せず)が接続され、この洗浄物導入管の一端に設けられた洗浄物投入口(図示せず)に投入される混合粒子を洗浄物導入管から攪拌層112内に供給することができるようになっている。また、例えば、攪拌層112の周囲の部分の容器111の側壁に洗浄水導入管(図示せず)が接続され、この洗浄水導入管から攪拌層112の内部に洗浄水を供給することができるようになっている。あるいは、例えば、容器111の手前で洗浄水導入管に上方から洗浄物導入管を接続し、洗浄水導入管から洗浄水の高圧ジェットを供給し、それによって洗浄物導入管から混合粒子を吸い込み、これらの混合粒子および洗浄水を攪拌層112の内部に供給するようにしてもよい。こうして攪拌層112内に供給された混合粒子および洗浄水は、例えば、この攪拌層112の内部に設けられた攪拌用ポンプ(図示せず)により攪拌混合され、混合粒子および洗浄水からなる固液混相流が生成される。容器111の手前で洗浄水導入管に上方から洗浄物導入管を接続し、洗浄水導入管から洗浄水の高圧ジェットを供給する場合は、攪拌層112の内部に攪拌用ポンプを設けても設けなくてもよく、いずれにしても混合粒子および洗浄水を攪拌層112内で攪拌混合することができる。攪拌層112の底部には分級層114による分級により残された粒子が沈降して堆積するが、こうして堆積した粒子は、この攪拌層112の底部に設けられた堆積物取り出し用の取り出し口(図示せず)から外部に取り出すことができるようになっている。
【0077】
整流層113は、攪拌層112で攪拌混合されて鉛直方向に吐出される固液混相流を水平面内で一様にするためのものであり、波状スタティックミキサーからなる。この固液混相流は、波状スタティックミキサーを下から上に通過する間に繰り返し攪拌され、その過程で整流され、通過後には一様流に変換されるようになっている。整流層113を構成する波状スタティックミキサーの一例について説明する。
図19Aは波板116の一例を示す。
図19Aに示すように、この波板116から一点鎖線で示す四角形の部分を切り出す。この四角形の波板116の各辺は波の山および谷が延びる方向に対して45度傾斜している。
図19Bに示すように、こうして切り出した四角形の波板116を複数、波の山および谷が延びる方向が互いに直交するように重ね合わせる。重ね合わせる波板116の大きさおよび枚数は、容器111の大きさなどに応じて適宜決められる。そして、
図19Cに示すように、こうして波板116を重ね合わせた直方体状の波板積層体113a、113b、113cを並列配置して整流層113とする。ただし、整流層113を構成する波板積層体の数は1個または2個あるいは4個以上であってもよい。波板116の大きさ、全体の厚さおよび波のピッチは必要に応じて選ばれるが、一例を挙げると、大きさは20cm×20cm、全体の厚さは9mm、波のピッチは32mmである。波板116を構成する板材の厚さの一例を挙げると0.7mmである。
【0078】
層流層114は、整流層113から鉛直上方に吐出される一様な固液混相流を鉛直方向の層流にするためのものである。層流層114は、固液混相流が低レイノルズ数流れとなるように設計され、乱流拡散がなく粒子が拡散しないように複数の鉛直方向の筒状の孔からなる管路を有する構造体により構成される。
図20Aに層流層114の断面構造の一例を示す。
図20Aに示すように、層流層114は、隔壁114aで隔てられた鉛直方向の筒状の孔114bからなる管路が二次元面内に複数配置された構造体からなる。
図20B、CおよびDに層流層114の平面図の例を示す。
図20Bに示す例では、隔壁114aで隔てられた断面形状が正三角形の筒状の孔114bからなる管路が二次元面内に設けられている。
図20Cに示す例では、隔壁114aで隔てられた断面形状が正方形の筒状の孔114bからなる管路が二次元面内に設けられている。
図20Dに示す例では、隔壁114aで隔てられた断面形状が六角形の筒状の孔114bからなる管路が二次元面内に設けられている。
【0079】
層流層114では、具体的には、例えば、筒状の孔114b内の流れのレイノルズ数Reは円管流が層流になる条件であるRe<2300を満たすように設計される。流量をQ、容器111および孔114bの内径(等価直径)をそれぞれh
A 、h
a とすると、容器111内のレイノルズ数Re
A および孔114b内のレイノルズ数Re
a はそれぞれ
【数7】
となる。ここで、孔114bの仕切りの隔壁114aの断面積は孔114bの断面積に比べて無視できるとし、h
A 2 =Nh
a 2 (Nは孔114bの数)とした。したがって、孔114bを通過する流れのレイノルズ数Re
a は、容器111を通過する流れのレイノルズ数Re
A のN
-1/2倍となり、層流化が可能となる。例えば、h
A =1m、h
a =4mmとすれば、Re
a はRe
A の4mm/1m=0.004倍となる。また、孔114bを通過する流れのレイノルズ数Re
a の下限値を2000とおくと、容器111を通過する流れのレイノルズ数Re
A は2000×(1m/4mm)=500000となるから、これより処理流量の上限値が決定される。
【0080】
分級層115は、層流層114から鉛直上方に吐出される一様な層流の固液混相流の混合粒子を分級するためのものであり、良く知られた以下の原理に基づいて設計される。すなわち、洗浄水の比重より比重が大きい粒子(例えば、比重が1より大きい粒子)の沈降時間は沈降距離が小さいほど短くなるため、洗浄水中での粒子の沈殿は傾斜管路を設置することで促進される。したがって、洗浄水中に空間的に密に傾斜管路を設置すると効果的に沈降粒子を捕獲することができる。
図21Aに分級層115の断面構造の一例を示す。
図21Aに示すように、分級層115は、隔壁115aで隔てられた水平方向に対して傾斜した筒状の孔115bからなる傾斜管路が二次元面内に複数配置された構造体からなる。
図21B、CおよびDに分級層115の平面図の例を示す。
図21Bに示す例では、隔壁115aで隔てられた断面形状が正三角形の筒状の孔115bからなる管路が二次元面内に設けられている。
図21Cに示す例では、隔壁115aで隔てられた断面形状が正方形の筒状の孔115bからなる管路が二次元面内に設けられている。
図21Dに示す例では、隔壁115aで隔てられた断面形状が六角形の筒状の孔115bからなる管路が二次元面内に設けられている。また、
図22Aに分級層115の断面構造の他の例を示す。
図22Aに示すように、分級層116は、隔壁115aで隔てられた水平方向に対して傾斜した断面形状が長方形の筒状の孔115bからなる傾斜管路が二次元面内に複数配置された構造体からなる。
図22Bにこの分級層115の平面図を示す。水平方向に対するこれらの傾斜管路の傾斜角度はΨ(0度<Ψ<90度)である。これらの傾斜管路の傾斜方向は必要に応じて選択されるが、例えば、懸濁水処理装置1側が高くなるように水平方向に対して角度Ψ傾斜させ、あるいは、懸濁水処理装置1と反対側が高くなるように水平方向に対して角度Ψ傾斜させる。
【0081】
分級層115による分級の原理を
図23を用いて詳細に説明する。
図23は、水平方向に対して傾斜した孔からなる傾斜管路内の上昇流により、洗浄水の比重より比重が大きい粒子が流れにより上方に移流する様子を示す。
図23に示すように、傾斜管路の入口の下端を原点とし、時間をtで表して傾斜管路に沿う方向の座標軸X(t)、傾斜管路に垂直な方向の座標軸Z(t)を取って傾斜管路内の粒子の位置を(X(t),Z(t))と表す。傾斜管路の管路長はlである。粒子には重力mg(mは粒子の質量、gは重力加速度)が鉛直方向に働く。粒子は傾斜管路に沿って距離Lだけ遡上すると傾斜管路の底面に沈降する。沈降した粒子は傾斜管路の底面に沿って滑動し、下端の入口から排出される。粒子のレイノルズ数が1に比べて十分小さい場合には、ストークスの抵抗則にしたがって粒子軌跡を次式のように予測することができる。
【数8】
ここで、γは粒子の比重、φは粒径(粒子の外径)、νは流体の動粘性係数、U
m は平均流速、cは粒子の体積比である。また、f(c)は粒子濃度の増加に伴う沈降速度の低減割合であり、1個の粒子が周りの粒子の影響を受けずに沈降するときにはf(c)=1、周りの粒子の影響を受けて沈降するときはf(c)<1となる。粒子が傾斜管路の底面に沈降するまでの距離(遡上長さ)Lは式(8)を用いて求めることができる。すなわち、式(8)を解いて、Z(t)=0 のときのX(t)=Lを求めると
【数9】
となる。ここで、Ψは傾斜管路の水平方向からの傾斜角(0度<Ψ<90度)、hは管路の高さ、nは二次元ポアズイユ流れでは6、円管ポアズイユ流では8となる。式(9)から、傾斜管路を通過させない粒子の最大粒径が、管路高さhおよび遡上長さLの関数として決定される。この原理にしたがえば、傾斜管路の傾斜角Ψを可変にすることで、分級する粒子の閾値、言い換えると分級可能な粒径下限値を容易にしかも連続的に調整することができる。
【0082】
図24、
図25および
図26は予測式(9)から計算した遡上長さLである。ただし、U
m =0.52cm/s、γ=2.7、ν=0.01cm
2 /s、c=0、f(c)=1、容器111の等価直径h
A =40cmとした。
図24より、例えば、管路の高さ(h)が2.54mm、長さ(L)が10cmの傾斜管路において、流量Qが50L/minの場合、粒径φが30μmの粒子を通過させないためには傾斜角Ψをおよそ80度以下、粒径φが20μmの粒子では63度以下にする必要がある。また、
図25より、例えば、管路の高さ(h)が2.54mm、長さ(L)が10cmの傾斜管路において、流量Qが180L/minの場合、粒径φが50μmの粒子を通過させないためには傾斜角Ψをおよそ77度以下、粒径φが30μmの粒子では52度以下にする必要がある。また、
図26より、例えば、管路の高さ(h)が3mm、長さ(L)が10cmの傾斜管路において、流量Qが180L/minの場合、粒径φが50μmの粒子を通過させないためには傾斜角Ψをおよそ72度以下にする必要がある。一方で、傾斜管路の傾斜角Ψについては、傾斜管路の底面に沈降した粒子が底面を滑動して管路入口から排出されるためには、底面と粒子との摩擦係数μがμ<tanΨを満たす必要がある。ただし、摩擦係数μに関しては、ポンプなどの機械振動により値の低下が期待できる。
【0083】
ところで、傾斜管路を通過する流れのレイノルズ数をReとすると、Re=Uh/ν=(h/h
A )Re
A である。
図27は、臨界レイノルズ数Re
c を1000としたとき、傾斜管路を通過する流れのレイノルズ数ReがRe
c になるときのhを流量Qに対して求めたものである。
図27より、傾斜管路を通過する流れのレイノルズ数ReがRe
c になるときのhは流量Qが大きくなるほど小さくなることが分かる。
【0084】
また、
図28は、粒径がφ=5μmまたは10μmであるときの予測式(9)から計算したL/hである。ただし、U
m =0.52cm/s、γ=2.7、ν=0.01cm
2 /s、c=0、f(c)=1、容器111の等価直径h
A =40cm、流量Qが50L/minとした。
図28より、例えば、φ=5μmの粒子を通過させないためには、Ψ=40度のとき、L/hを約400程度以上とする必要があることが分かる。例えば、分級で土壌から粘度成分のみを分離する場合を考えると、分級の閾値をシルトの最小径である5μm程度とする必要があるため、このような場合に有効である。
【0085】
懸濁水処理装置1は、第一の実施の形態による懸濁水処理装置1と基本的に同様な構成を有するが、分級装置110と接続されることにより容器11の形状などが異なる。懸濁水処理装置1の動作方法も第一の実施の形態による懸濁水処理装置1と基本的に同様である。容器111と容器11との互いに接する側壁には、例えば長方形の開口部31が設けられている。開口部31の下辺は少なくとも分級層115以上の高さにある。分級層115から供給される分級後の懸濁水は上段の積層傾斜板13の側面からその内部に入るようになっている。積層傾斜板12、13を通過した粒子は、粒子圧密装置14、15で圧密される。懸濁水は、容器11と積層傾斜板12、13との間に設けられた隙間を通って上昇し、積層傾斜板13を越えた時点で、
図17に示すように、容器121の壁面に設けられた堰状の排出口32を越えて外部に流出する。
【0086】
[洗浄、分級および処理システムの動作方法]
次に、上述のように構成されたこの洗浄、分級および処理システムの動作方法について説明する。
【0087】
まず、分級装置110の容器111の外部から攪拌層112に粒径分布を有する混合粒子および洗浄水を供給し、これらの混合粒子および洗浄水を攪拌混合し、これらの混合粒子および洗浄水からなる固液混相流を生成する。この固液混相流は乱流状態となっている。混合粒子の洗浄は主としてこの攪拌層112における攪拌混合の過程で行われる。この固液混相流は洗浄水により上流に運ばれて波状スタティックミキサーからなる整流層113に供給され、この整流層113を通過する過程で一様流に変換される。混合粒子の洗浄はこの整流層113における整流の過程でも行われる。こうして一様流とされた固液混相流は層流層114に供給され、この層流層114を通過する過程で層流となり、沈降速度の大きな粒子が分級され、一般的には粒径が大きい粒子成分が取り除かれる。層流層114で層流とされた固液混相流は分級層115に供給され、この分級層115を通過する過程で所定の粒子成分を分級する。この分級層115による分級の閾値は、この分級層115の管路の高さh、言い換えると孔115bの径(等価直径)および長さlにより調整することができる。
【0088】
分級層115で分級された懸濁水は容器111、11の側壁に設けられた開口31を通って懸濁水処理装置1の容器11内に入り、
図2AおよびBに示すように、積層傾斜板13の一方の側面の傾斜板13aと傾斜板13aとの間の隙間13bに、傾斜板13aの傾斜方向と直交する方向、すなわち水平方向から供給される。このように傾斜板13aの傾斜方向と直交する方向から積層傾斜板13の側面に懸濁水が供給されることにより、積層傾斜板13が流れを阻害せず、乱れも小さくなる。こうして積層傾斜板13の傾斜板13aと傾斜板13aとの間の隙間13aに供給された懸濁水は傾斜板13aに沿って流れ、その過程で懸濁水中の粒子が傾斜板13a上に沈降堆積し、最終的に積層傾斜板13の下部から落下する。積層傾斜板13の下部から出て行く懸濁水は、下段の積層傾斜板12の傾斜板12aと傾斜板12aとの間の隙間12bに入り、傾斜板12aに沿って流れ、その過程で懸濁水中の粒子が傾斜板12a上に沈降堆積し、最終的に積層傾斜板12の下部から落下する。積層傾斜板12の下部から落下した粒子は、粒子圧密装置15、14を順次通って圧密される。その後、粒子圧密装置15、14で圧密された粒子層はろ過膜18から剥離除去されて容器11の底部に落下し、排出口11aから外部に取り出される。一方、積層傾斜板13、12を通過した懸濁水は、これらの積層傾斜板12、13と容器11との間の隙間を通って上昇し、容器11の側壁に設けられた排出口32から外部に越流する。こうして容器11の外に越流した懸濁水は、例えば、配管を介して攪拌層112に戻され、洗浄水として使用される。
【0089】
[洗浄、分級および処理システムの具体的な構成例]
次に、この洗浄、分級および処理システムの具体的な構成例について説明する。
【0090】
図29は第一の構成例を示す。
図29に示すように、この第一の構成例では、容器111の底部が下に先すぼまりの四角錐状の形状を有しており、その内部に攪拌層112が設けられている。攪拌層112の側壁には洗浄物を攪拌層112に導入するための導入管141が接続されている。導入管141の上端には洗浄物を投入するための投入口142が設けられている。攪拌層112の側壁にはまた、洗浄水を攪拌層112に導入するための導入管143が接続されている。また、攪拌層112の内部には攪拌ポンプ144が設置されており、この攪拌ポンプ144により攪拌層112の内部に供給された混合粒子および洗浄水を攪拌混合することができるようになっている。導入管143は高圧ポンプ145を介して直方体状の受液槽146の底部に接続されている。受液槽146は容器11の側壁上部の排出口32の前方下部に取り付けられており、排出口32を越えて外に越流した懸濁水を受け入れることができるようになっている。
【0091】
懸濁水処理装置1については基本的には第一の実施の形態と同様である。
【0092】
一例として、粒径分布を有する混合粒子が土壌(土砂、細粒砂)である場合についてこの第一の構成例による洗浄、分級および処理システムの動作を説明する。
【0093】
まず、攪拌用ポンプ144としての攪拌用水中ポンプおよび高圧ポンプ145を稼働させた状態で投入口142に洗浄および分級しようとする土壌を投入する。投入された土壌は導入管141を通って攪拌層112に導入される。こうして攪拌層112に導入された土壌は、高圧ポンプ145により導入管143から攪拌層112に導入された高速ジェット水流により攪拌混合されるとともに、攪拌用ポンプ144でさらに攪拌混合される。こうして攪拌層112内に土壌および水からなる非一様流の固液混相流(泥水)が生成される。この固液混相流は、高速ジェット水流により上流に運ばれる。そして、まず、波状スタティックミキサーからなる整流層113を通過することにより、非一様流の固液混相流は一様流に変換される。次に、この固液混相流の一様流は層流層114を通る過程で層流とされ、沈降速度の大きな粒子が取り除かれる。層流層114で層流とされた固液混相流は分級層115に入り、この分級層115を通過する過程で粒径が数十μm以上のシルトが分級される。攪拌層112の底部に形成された堆積物は、必要に応じて、土砂取り出し口から取り出される。
【0094】
分級装置110を通過した懸濁水中の主としてシルトあるいはシルトおよび粘土は、懸濁水処理装置1の上段の積層傾斜板13の側面の傾斜板13aと傾斜板13aとの間の隙間に入り、傾斜板13aに沿って沈降し、さらに下段の積層傾斜板12の傾斜板12aと傾斜板12aとの間の隙間に入り、傾斜板12aに沿って沈降する。積層傾斜板12から沈降した粒子は粒子圧密装置14、15により圧密される。粒子圧密装置14、15の管路付きろ過膜16のろ過膜18に付着した粒子層は最終的には剥離除去され、容器11の底部に溜まり、排出口11aから外部に取り出される。
【0095】
懸濁水処理装置1の容器11の排出口32から越流した水は受液槽146の中に入り、導入管143から高圧ポンプ145により攪拌層112に戻される。
【0096】
図29に、固液混相流(泥水)の流れを細い破線の矢印で、砂・シルト・粘土の流れを太い破線の矢印で模式的に示す。
【0097】
図30は第二の構成例を示す。
図30に示すように、この第二の構成例では、容器111の底部が下に先すぼまりの四角錐状の形状を有しており、その内部に攪拌層112が設けられている。導入管141は上方から導入管143と接続されている。この場合、攪拌層112の内部には攪拌ポンプ144が設置されていない。この第二の構成例のその他の構成は第一の構成例と同様である。
【0098】
一例として、粒径分布を有する混合粒子が土壌である場合についてこの第二の構成例による洗浄、分級および処理システムの動作を説明する。
【0099】
まず、高圧ポンプ145を稼働させた状態で投入口142に洗浄および分級しようとする土壌を投入する。
図31に示すように、投入された土壌は導入管141を通って導入管141と導入管143との合流部に到達し、導入管143から供給される高速ジェット水流により導入管143内に吸い込まれる。こうして土壌および水が攪拌層112に導入され、高速ジェット水流により攪拌混合される。こうして攪拌層112内に土壌および水からなる固液混相流(泥水)が生成される。この後の動作は第一の構成例と同様である。
【0100】
図30に、固液混相流(泥水)の流れを細い破線の矢印で、砂・シルト・粘土の流れを太い破線の矢印で模式的に示す。
【0101】
図32は第三の構成例を示す。
図32に示すように、この第三の構成例では、懸濁水処理装置1は第一の構成例と同様に構成されている。第二の構成例と同様に、導入管141は上方から導入管143と接続され、攪拌層112の内部には攪拌ポンプ144が設置されていない。攪拌層112の底部には攪拌層112の底に沈降した堆積物を外部に取り出すための排出管147が接続されている。この排出管147の途中にはサンドポンプ148が接続され、排出管147から回収された土砂をこのサンドポンプ148で上方に移送し、回収口149から洗浄土砂回収装置150に回収するようになっている。回収口149の側壁には導入管151が接続されており、この導入管151から泥水が投入口142に供給されるようになっている。この第三の構成例のその他の構成は第一の構成例と同様である。
【0102】
一例として、粒径分布を有する混合粒子が土壌である場合についてこの第三の構成例による洗浄、分級および処理システムの動作を説明する。
【0103】
まず、高圧ポンプ145およびサンドポンプ148を稼働させた状態で投入口142に洗浄および分級しようとする土壌を投入する。投入された土壌は導入管141を通って導入管141と導入管143との合流部に到達し、導入管143から供給される高速ジェット水流により導入管143内に吸い込まれる。こうして土壌および水が攪拌層112に導入され、高速ジェット水流により攪拌混合され、土壌および水からなる固液混相流(泥水)が生成される。この後の動作は第一の構成例と同様である。一方、攪拌層112の底部から水を含んだ土砂が導入管147内に取り出され、サンドポンプ148により回収口149に戻される。回収口149に戻った水を含んだ土砂から土砂成分が洗浄土砂回収装置150に回収されるとともに、泥水が投入口142に投入される。
【0104】
一方、懸濁水処理装置1においては、第一の構成例と同様に粒子圧密装置14、15により圧密が行われ、ろ過膜18に付着した粒子層は最終的に剥離除去されて、容器11の排出口11aから外部に取り出される。
【0105】
図32に、固液混相流(泥水)の流れを細い破線の矢印で、砂・シルト・粘土の流れを太い破線の矢印で模式的に示す。
【0106】
[分級装置110を構成する各層の機能の検証実験]
分級装置110を構成する各層の機能を検証するために実験を行った。そのために、
図33に示すような分級装置を製作した。整流層113としては、一辺が20cmの正方形のポリカーボネート製の波板(全体の厚さは9mm、波のピッチは32mm、板の厚さは0.7mm)を44段重ねた高さ20cm、幅40cm、奥行40cmの大きさの直方体状のものを2段重ねて合計40cmの厚さとしたものを用いた。層流層114としては、
図20Dに示すように、断面形状が六角形の直径1cmの筒状の孔114bが蜂の巣状に配列した高さ5cm、幅40cm、奥行40cmの大きさの直方体状の構造体を用いた。分級層115としては、
図20Dに示すように、断面形状が六角形の直径3mmの筒状の孔115bが蜂の巣状に配列した高さ10cm、幅40cm、奥行40cmの大きさの直方体状の構造体を水平方向から27度程度傾斜させたものを用いた。この場合、孔115bの水平方向に対する傾斜角Ψは63度程度である。
図33には示されていないが、整流層の下には攪拌用水中ポンプを含む攪拌層112が設けられており、この攪拌層112に外部から土壌および水が供給されるようになっている。流量Qは50L/minとした。本実験の目的は、篩を使用せずに細粒砂を分級することなので、土壌洗浄の際に発生した沈降細粒砂を原砂として使用した。D
50(原砂の粒径分布において割合が50%になるときの粒径)=132μmで、原砂は粒径51μm以下の細粒分が16%程度含まれている。
【0107】
図33に示すように、整流層の下の攪拌層では強い乱流状態となっている。整流層は、攪拌層で生じた大規模渦を分断し平均流が鉛直上向きに一様になるように設計されている。さらに層流層では、乱流拡散で分散しているシルトや砂が重力と流体抗力の作用で沈降もしくは上昇する。この層流層を通過する土粒子の最大径は筒状の孔の径(管路)の孔経にほぼ依らず、流量のみに依存すると考えられる。最後に、分級層の筒状の孔(管路)を通過できなかった土粒子は、分級層の下部からプルームとなって沈降する。また、本実験における分級層の筒状の孔(管路)の傾斜角Ψは上述のように63度程度であり、筒状の孔(管路)を通過する粒子の最大粒径は式(9)によれば20μmとなる。
【0108】
図34は分級時の各層通過後の流体を容器の側壁に取り付けたバルブから採取した試料をカメラで撮影した写真である。層流層通過後の試料と分級層通過後の試料とを比較すると、固液混相流(泥水)の濁度に明瞭に差が表れており、層流層通過後の試料に比べて分級層通過後の試料の濁度は大幅に低下している。分級層通過後、さらに孔径1〜2μmのろ布(フィルター膜)を通過させた後の試料の濁度はさらに低下している。
【0109】
図35は分級層下部の写真である。
図35に示すように、分級層の傾斜した筒状の孔(管路)を通過できない土粒子が筒状の孔の底面に沿って排出され、分級層の底部に沿って細粒砂プルームとして落下する様子が観察された。
【0110】
[洗浄、分級および処理システムによる土壌洗浄実験]
次に、この洗浄、分級および処理システムを用いて土壌洗浄実験を行った結果について説明する。
【0111】
洗浄、分級および処理システムの分級装置110および懸濁水処理装置1における各層の効果を検証するために、
図36に示すような土壌洗浄、分級および処理システムの試作機を製作し、土壌の洗浄および分級の実験を行った。ただし、この試作機においては、懸濁水処理装置1の粒子圧密装置14、15は設けられていない。実験流量Q=91L/min、分級装置110および懸濁水処理装置1の槽内の全水量は315Lであり、濁水は大凡3〜4分で1回循環する。
図36中の各測点で試料を採取し、SS量を計測した。測点1は攪拌層にありSS量が最大となる。測点2は層流層通過直後、測点3は分級層通過直後、測点4は排出口であり、ここを通過した水が再び攪拌槽(測点1)に戻る。測点5は懸濁水処理装置1の沈降層を構成する上段の積層傾斜板通過直後、測点6は懸濁水処理装置1の底部である。
【0112】
図37Aは、粒子圧密装置14、15が設けられていない懸濁水処理装置1が設置された
図36に示す試作機におけるSS量の測定結果を示す。
図37Aより、分級層通過後(測点3)にSS量が大幅に低下し、沈降層(測点4)ではさらに低下していることが分かる。測点6では、沈殿した粒子によりSS量が大きくなっている。一方、
図37Bは、
図36に示す試作機において懸濁水処理装置1を設置しなかった場合のSS量の測定結果を示す。
図37Bを
図37Aと比較すると、懸濁水処理装置1がない場合は、時間経過後もSS量の低下が少ないことから、濁水が沈降することなく試作機内を循環していると考えられる。
【0113】
図38は層流層通過前後(測点1、2)の粒径分布を示し、図の曲線の下の面積がSS量を表す。層流層通過後の固液混相流中の粒子は粒径100μm以下の粒子がほとんどを占めている。理論上は、流量が91L/minのときは、層流層(孔径3/16インチ)では粒径約140μm以上の粒子は通過することができないということと合致する。また、懸濁水処理装置1を設置することで、層流層下流のSS量が低下していることが分かる。
【0114】
図39は、攪拌層に設けられた攪拌用水中ポンプを30分間稼動し、土壌の撹拌、分級および沈殿を行った後の分級装置および懸濁水処理装置1に堆積した土砂の粒径分布(確率分布関数(probability distribution function))を示す。篩による計測のため51μm以下の粒径分布は測定することができなかった。分級層(孔径1/8インチ)では理論上は粒径25μm以上の粒子が通過することができないが、粒径50μm程度の粒子も通過している。原因として考えられるのは、分級層の傾斜した筒状の孔(管路)底部に沈降した粒子により管路断面積が小さくなり流速が増大したこと、固液混相流の固体成分の濃度増加による沈降速度の減少、乱流拡散などが考えられる。
【0115】
この試作機は分級の閾値を制御することができ、分級層の筒状の孔(管路)の孔径の凡そ百分の一以上の粒子を分級することができる。また、本実験で用いた傾斜した筒状の孔(管路)はL/h=50程度であり、分級の閾値が数十μmと大きいため、シルトもこの傾斜した筒状の孔(管路)を通過した。ただ、本懸濁水処理装置1においては、準備の都合上、両端に傾斜板のない大きな空間が存在したが、懸濁水処理装置1のSS量を半減させる程の効果があった。排出口に向かう流れの流速をできる限り一様とし、流速を小さくすることが重要なため、傾斜板を排出口に向かって平行に配置した。
【0116】
例えば、分級で土壌から粘土成分のみを分離することにより除染効果が上がるとすれば、分級の閾値をシルトの最小径である5μm程度とする必要がある。この場合には、分級層の筒状の孔(管路)の傾斜角Ψが40度のとき、筒状の孔(管路)の孔経の400倍の長さが必要となる(
図28参照)。
【0117】
[洗浄、分級および処理システムによる放射能汚染土壌の洗浄実験]
次に、
図36に示す土壌洗浄、分級および処理システムの試作機を用いて、放射能汚染土壌の洗浄(除染)および分級を行った結果について説明する。本実験の目的は、篩を使用せずに細粒砂を分級することなので、土壌洗浄の際に発生した沈降細粒砂を原砂として使用した。原砂の粒度分布を
図40に示す。
図40に示すように、原砂は粒径51μm以下の細粒分が38%程度含まれている。原砂に含まれる放射性物質の放射能は表1に示す通りである。
【0119】
放射能汚染土壌中に含まれる粘土の層状構造を酸により破壊すれば、粘土内部に取り込まれているセシウムイオンを粘土から脱離させることができることが知られている。酸としては、原子力発電所の配管洗浄で用いられているシュウ酸が利用されている。シュウ酸はステンレス鋼表面に酸化皮膜を生成し、ステンレス鋼の腐食を防止する機能があり、ポンプを腐食しないこと、および、後処理が容易なことが利点として挙げられている。そこで、除染にはシュウ酸を用いた。
【0120】
実験手順は以下の通りである。
(1)原砂1.5kgを分級装置の攪拌層に投入し、分級装置の固液混相流を、沈降装置を通して15分間循環し、粘土やシルトを分級する。
(2)シュウ酸水和物1.5kg(0.08mol/Lの酸)を分級装置の攪拌層に投入し、分級装置のみで固液混相流を20分間循環し、洗浄を行う。
(3)分級装置の固液混相流を、沈降装置を通して10分間循環し、粘土やシルトを分級する。この際、各層通過後の固液混相流を採取する。
(4)分級装置の攪拌層の攪拌用水中ポンプを停止し、撹拌層の底部に沈降している細粒土を採取し、粒径分布および放射線量の計測を行う。
【0121】
実験結果は以下の通りである。
図41は各層通過後の流体を容器の側壁に取り付けたバルブから採取した試料をカメラで撮影した写真である。層流層通過後の試料と分級層通過後の試料とを比較すると、濁度に明瞭に差が表れている。ここで、ろ布通過後の試料は、孔径1〜2μmのろ布を通過した試料である。
【0122】
実験手順(4)のシュウ酸洗浄および分級終了後の細粒土について、粒径分布および放射線量を計測した。粒径分布を
図40に示す。
図40に示すように、原砂に比べて、粒径51μm以下のものが減少し、粒径51〜106μmのものの割合が増加している。表2に原砂およびシュウ酸洗浄砂の放射線量の計測値を示す。洗浄後の放射線密度(Bq/kg)の低減は、51μm以下の表面積が大きい土粒子成分の減少とシュウ酸によるセシウムの土粒子からの脱離とにより、本実験では両者を判別することはできない。これらを明確にするには、粒度分布のより精密な計測およびシュウ酸の効果を別途検証する必要がある。
【0123】
以上のように、放射能汚染土壌のシュウ酸による洗浄効果および傾斜管路による分級効果を実験的に調べた。シュウ酸による洗浄では、除染率を少なくとも50%以上にするためには、高濃度の酸(1mol/L以上)を使用せざるを得ないことが判明した。また、分級装置は分級の閾値を制御することができ、傾斜管路の孔径の凡そ百分の一以上の粒径の粒子を分級することができる。ただ、本実験で用いた分級層の傾斜管路はL/h=50程度であり、分級の閾値が数十μmと大きいため、粘土粒子以外のシルトも分級層を通過した。
【0124】
例えば、分級で放射能汚染土壌から粘土成分のみを分離することにより除染効率が上がるとすれば、分級の閾値をシルトの最小径である5μm程度とする必要がある。既に述べたように、この場合には、傾斜管路の傾斜角Ψが40度のとき、傾斜管路の長さとしてその孔径の400倍の長さが必要となる(
図28参照)。
【0125】
以上のように、第二の実施の形態によれば、粒径分布を有する混合粒子、例えば土壌の攪拌(分散)および分級を分級装置110の容器111内で行うことができることにより、分級装置110および懸濁水処理装置1により洗浄、分級および処理システムを構築することができるため、洗浄、分級および処理システムの小型化を図ることができる。また、この洗浄、分級および処理システムは、分級装置110の分級層115の傾斜管路の管路の高さおよび長さを調整することにより、分級の閾値を連続的に調整することができる。さらに、懸濁水処理装置1では、粒子圧密装置14、15により懸濁水中の粒子の圧密を行うことができるため、懸濁水の減容化を図ることができる。
【0126】
〈第三の実施の形態〉
[洗浄、分級および処理システム]
図42に第三の実施の形態による洗浄および分級システムを示す。
図42に示すように、この洗浄、分級および処理システムにおいては、分級装置110と懸濁水処理装置1との間に波状スタティックミキサーからなる整流層161が設けられている。より詳細には、分級装置110の容器111および懸濁水処理装置1の容器11の側壁に設けられた開口部31に整流層161が設けられている。この場合、分級装置110による分級後の懸濁水は整流層161に水平方向から入り、整流されて一様流となった後に懸濁水処理装置1の積層傾斜板13の側面に供給される。
【0127】
この洗浄、分級および処理システムの上記以外のことは第二の実施の形態と同様である。また、この洗浄、分級および処理システムの動作は、分級装置110による分級後の固液混相流が整流層161により整流されて一様流となった後に懸濁水処理装置1の積層傾斜板13の側面に供給されることを除いて、第二の実施の形態と同様である。
【0128】
この第三の実施の形態によれば、第二の実施の形態と同様な利点に加えて、整流層161により整流されて一様流となった固液混相流を懸濁水処理装置1の積層傾斜板13の側面に供給することができるので、積層傾斜板13による粒子の沈降をより効率的に行うことができるという利点を得ることができる。
【0129】
〈第四の実施の形態〉
[洗浄、分級および処理システム]
図43に第四の実施の形態による洗浄、分級および処理システムを示す。
図43に示すように、この洗浄、分級および処理システムにおいては、第二の実施の形態による洗浄、分級および処理システムを土壌の洗浄、分級および処理に使用する場合に、分級装置110による分級後の、粘土およびシルトを含む懸濁水を懸濁水処理装置1(
図43においては図示せず)に供給し、凝集沈澱させ、水は再使用し、沈澱した土壌は分級装置110の攪拌層112に戻すようにする。そして、分級装置110の攪拌層112の底部に溜まった土砂成分(砂および細粒分)を取り出し、分級装置110と直列に接続された、分級装置110と同様な構成を有する分級装置165の攪拌層に供給し、分級装置165において薬品洗浄および分級を行う。こうして薬品洗浄および分級を行った固液混相流(低濃度のシルトと薬品とを含む)を分級装置165から取り出し、フィルター膜でろ過を行う。ろ過されたシルトはフィルター膜に残され、フィルター膜を透過した薬品は再使用することができる。
【0130】
この第四の実施の形態によれば、第二の実施の形態と同様な利点に加えて、洗浄に用いる水、薬品および土壌の有効利用を図ることができるという利点を得ることができる。
【0131】
〈第五の実施の形態〉
[洗浄、分級および処理システム]
図44に第五の実施の形態による洗浄、分級および処理システムを示す。
図44に示すように、この洗浄、分級および処理システムにおいては、分級装置110と懸濁水処理装置1との間に凝集促進層171が設けられている。より詳細には、分級装置110の容器111と懸濁水処理装置1の容器11とが開口部31に設けられた凝集促進層171を介して連結されている。凝集促進層171は、分級装置110の分級層115による分級後の固液混相流から可能な限り粒子を沈降堆積させて粒径を大きくすることにより、懸濁水処理装置1の積層傾斜板12、13による粒子の沈降の効率の向上を図るためのものである。凝集促進層171の大きさは特に限定されず、必要に応じて選ばれが、例えば、凝集促進層171の中心軸の方向の長さは10〜20cm、幅は20〜40cm、高さは20〜30cmである。
【0132】
図45は凝集促進層171の具体的な構成例を示す。
図45に示すように、この例では、凝集促進層171は、鉛直方向に互いに間隔を空けて積層された水平面に平行な複数の隔壁171aを有し、隔壁171aと隔壁171aとの間に断面形状が細長い長方形の孔171b(管路)が形成されている。隔壁171aの厚さは、隔壁171aと隔壁171aとの間の距離、言い換えると各管路の高さに比べて十分に小さくするのが好ましい。この凝集促進層171においては、隔壁171aと隔壁171aとの間の管路の高さを利用して粒子の沈降距離を小さくする。すなわち、
図45に示すように、分級装置110から入ってくる懸濁水中の粒子は、一定の距離移動した後に管路の底部の隔壁171a上に沈降し、堆積することで凝集する。管路の底部の隔壁171a上に凝集した粒子は流れのせん断力により懸濁水処理装置1にフラッシュされ、積層傾斜板13の側面に入る。また、管路の底部の隔壁171a上に沈降堆積した粒子により管路が閉塞されると流速が大きくなるため、隔壁171a上に沈降堆積した粒子はフラッシュされやすくなる。
【0133】
図46は凝集促進層171の他の構成例を示す。
図46に示すように、この例では、凝集促進層171は、懸濁水処理装置1側が分級装置110側に比べて低くなるように水平方向に対して角度Ω傾斜している。Ωは例えば0度<Ω≦10度、好適には0度<Ω≦5度である。この例では、凝集促進層171が、懸濁水処理装置1側が分級装置110側に比べて低くなるように水平方向に対して角度Ω傾斜しているので、管路の底部の隔壁171a上に沈降し、凝集した粒子を凝集促進層171の外部に排出しやすくなる。
【0134】
図47A〜Dは凝集促進層171のさらに他の構成例を示す。ここで、
図47Aは平面図、
図47Bは凝集促進層171の中心軸を含む鉛直断面図、
図47Cは
図47Aの縦板171cと縦板171cとの間の部分の隔壁171aに平行な方向の断面図、
図47Dは
図47Bの縦板171cと縦板171cとの間の領域(一点鎖線で囲んだ領域)に粒子が捕獲される様子を示す拡大断面図である。
図47A〜Dに示すように、この凝集促進層171は、鉛直方向に互いに間隔を空けて積層された水平面に平行な複数の隔壁171aを有し、隔壁171aと隔壁171aとの間に断面形状が細長い長方形の孔171b(管路)が形成されている。隔壁171aの厚さは隔壁171aと隔壁171aとの間の距離、言い換えると各流路の高さに比べて十分に小さくするのが好ましい。各管路の底部の隔壁171aには、分級装置110と懸濁水処理装置1とを結ぶ方向、言い換えると凝集促進層171の中心軸と直交する方向に延在する縦板171cが凝集促進層171の中心軸の方向に等間隔で設けられている。各管路内の流れを妨げないように、縦板171cの高さは各管路の高さより小さく、縦板171cと管路の天井部の隔壁171aとの間の間隔が十分に大きくなるようにする。この場合、
図47Dに示すように、各管路においては、縦板171cと縦板171cとの間の矩形の領域内の流速は非常に小さくなるため、この矩形の領域内に捕獲された粒子は容易に沈降集積する。また、
図47Cに示すように、隔壁171aは切妻屋根の形状を有し、管路に直交する方向の最頂部から両側に向かって二つの傾斜面が本を伏せたような山形の形状を有するため、縦板171cと縦板171cとの間の矩形の領域内に捕獲された粒子は両側に向かって排出されやすくなっている。ただし、隔壁171aは切妻屋根の形状ではなく、水平に形成してもよい。
【0135】
[洗浄、分級および処理システムの具体的な構成例]
次に、洗浄、分級および処理システムの具体的な構成例について説明する。
図48は第四の構成例を示す。
図48に示すように、この第四の構成例では、
図29に示す第一の構成例において、分級装置110と懸濁水処理装置1との間に凝集促進層171が設けられている。その他のことは第一の構成例と同様である。
【0136】
一例として、粒径分布を有する混合粒子が土壌である場合についてこの第四の構成例による洗浄、分級および処理システムの動作を説明する。
【0137】
まず、攪拌用ポンプ144としての攪拌用水中ポンプおよび高圧ポンプ145を稼働させた状態で投入口142に洗浄および分級しようとする土壌を投入する。投入された土壌は導入管141を通って攪拌層112に導入される。こうして攪拌層112に導入された土壌は、高圧ポンプ145により導入管143から攪拌層112に導入された高速ジェット水流により攪拌混合されるとともに、攪拌用ポンプ144でさらに攪拌混合される。こうして攪拌層112内に土壌と水とからなる固液混相流(泥水)が生成される。この固液混相流は、高速ジェット水流により上流に運ばれる。そして、まず、波状スタティックミキサーからなる整流層113を通過することにより固液混相流は一様流に変換される。次に、この固液混相流の一様流は層流層114を通る過程で層流とされ、沈降速度の大きな粒子が分級される。層流層114で層流とされた固液混相流は分級層115に入り、この分級層115を通る過程で粒径が数十μm以上のシルトが分級される。
【0138】
分級装置110を通過した土壌成分(シルトおよび粘土)は、凝集促進層171に入り、シルトが可能な限り凝集され、せん断流によりフラッシュされて懸濁水処理装置1に入る。こうして懸濁水処理装置1に入った懸濁水は懸濁水処理装置1の上段の積層傾斜板13の側面の傾斜板13aと傾斜板13aとの間の隙間に入り、傾斜板13aに沿って沈降し、さらに下段の積層傾斜板12の傾斜板12aと傾斜板12aとの間の隙間に入り、傾斜板12aに沿って沈降する。積層傾斜板12から沈降する粒子は粒子圧密装置14、15で圧密される。最終的に、粒子圧密装置14、15のろ過膜18に付着した粒子層は剥離除去され、容器11の底部の排出口11aから外部に取り出される。分級装置110の容器111の排出口32から越流した固液混相流は受液槽146の中に入り、導入管143から高圧ポンプ145により攪拌層112に戻され、洗浄水として用いられる。
【0139】
図48に、固液混相流(泥水)の流れを細い破線の矢印で、砂・シルト・粘土の流れを太い破線の矢印で模式的に示す。
【0140】
図49は第五の構成例を示す。
図49に示すように、この第五の構成例では、
図30に示す第二の構成例において、分級装置10と懸濁水処理装置1との間に凝集促進層171が設けられている。その他のことは第二の構成例と同様である。
【0141】
一例として、粒径分布を有する混合粒子が土壌が水である場合についてこの第五の構成例による洗浄、分級および処理システムの動作を説明する。
【0142】
まず、高圧ポンプ145を稼働させた状態で投入口142に洗浄および分級しようとする土壌を投入する。
図49に示すように、投入された土壌は導入管141を通って導入管141と導入管143との合流部に到達し、導入管143から供給される高速ジェット水流により導入管143内に吸い込まれる。こうして土壌および水が攪拌層112に導入され、高速ジェット水流により攪拌混合される。こうして攪拌層112内に土壌と水とからなる固液混相流(泥水)が生成される。この後の動作は第四の構成例と同様である。
【0143】
図49に、固液混相流(泥水)の流れを細い破線の矢印で、砂・シルト・粘土の流れを太い破線の矢印で模式的に示す。
【0144】
図50は第六の構成例を示す。
図50に示すように、この第六の構成例では、
図32に示す第三の構成例において、分級装置10と懸濁水処理装置1との間に凝集促進層171が設けられている。その他のことは第三の構成例と同様である。
【0145】
一例として、粒径分布を有する混合粒子が土壌である場合についてこの第六の構成例による洗浄、分級および処理システムの動作を説明する。
【0146】
まず、高圧ポンプ145およびサンドポンプ148を稼働させた状態で投入口142に洗浄および分級しようとする土壌を投入する。投入された土壌は導入管141を通って導入管141と導入管143との合流部に到達し、導入管143から供給される高速ジェット水流により導入管143内に吸い込まれる。こうして土壌および水が攪拌層112に導入され、高速ジェット水流により攪拌混合される。こうして攪拌層112内に土壌と水とからなる固液混相流(泥水)が生成される。この後の動作は第四の構成例と同様である。一方、攪拌層112の底部から水を含んだ土砂が導入管147内に取り出され、サンドポンプ148により回収口149に戻される。回収口149に戻った水を含んだ土砂から土砂成分が洗浄土砂回収装置150に回収されるとともに、泥水が投入口142に投入される。
【0147】
一方、懸濁水処理装置1においては、積層傾斜板12、13により沈降した粒子が粒子圧密装置14、15で圧密される。最終的に、粒子圧密装置14、15のろ過膜18に付着した粒子層は剥離除去されて容器11の底部の排出口11aから外部に取り出される。
【0148】
図50に、固液混相流(泥水)の流れを細い破線の矢印で、砂・シルト・粘土の流れを太い破線の矢印で模式的に示す。
【0149】
この洗浄、分級および処理システムの実施例について説明する。
図51は実施例による洗浄、分級および処理システムを示す。
図51に示すように、この洗浄、分級および処理システムにおいては、容器111の底部が下に先すぼまりの四角錐状の形状を有しており、その内部に攪拌層112が設けられている。攪拌層112の側壁には洗浄水を攪拌層112に導入するための導入管143が接続されている。導入管143は高圧ポンプ145を介して直方体状の受液槽146の底部に接続されている。受液槽146は容器11の側壁上部の排出口32の前方下部に取り付けられており、排出口32を越えて外に越流した固液混相流を受け入れることができるようになっている。
【0150】
懸濁水処理装置1の容器11内には、二段の積層傾斜板12、13が設けられ、その下方に粒子圧密装置14、15が設置されている。
【0151】
分級装置10と懸濁水処理装置1との間に凝集促進層171が設けられている。
【0152】
凝集促進層171としては、
図52または
図53に示すものを用いた。
図52に示す凝集促進層171は、隔壁171aが切妻屋根の形状ではなく、水平であることを除いて、
図47A〜Dに示すものと同様である。
図52に示すように、凝集促進層171の全長は150mm、隔壁171aと隔壁171aとの間の間隔(管路の高さ)は24mm、縦板171cの間隔は10mmである。また、
図53に示す凝集促進層171は、
図45に示すものと同様である。
図53に示すように、凝集促進層171の全長は100mm、隔壁171aと隔壁171aとの間の間隔(管路の高さ)は5mmである。
【0153】
分級装置110と懸濁水処理装置1との全体に水を循環させながら、カオリン100gを受液槽146に投入し、凝集促進層171の入口(測点1)と出口(測点2)とで7分間の積算濃度(SS)を測定した。
図54に測定結果を示す。
図54に示すように、いずれも、カオリンの沈降効果があり、凝集促進層171の入口に入ってくる流れの流速(u)(
図52および
図53参照)の増加に伴って沈降効果は低減すること、および、測点1と測点2とのSS量は大差がないことが分かった。
【0154】
この第五の実施の形態によれば、第二の実施の形態と同様な利点に加えて、分級装置110と懸濁水処理装置1との間に凝集促進層171が設けられていることにより、分級装置110からの固液混相流に含まれる粒径の小さい粒子をこの凝集促進層171で可能な限り凝集させて粒径を大きくすることができ、それによって懸濁水処理装置1の積層傾斜板12、13による粒子の沈降を効率的に行うことができるという利点を得ることができる。
【0155】
〈第六の実施の形態〉
[洗浄、分級および処理システム]
図55に、第六の実施の形態による洗浄、分級および処理システムを示す。
図55に示すように、この洗浄、分級および処理システムにおいては、分級装置110と懸濁水処理装置1との間に、分級装置110から懸濁水処理装置1に向かって順に波状スタティックミキサーからなる整流層161および凝集促進層171が設けられている。その他のことは第にの実施の形態と同様である。
【0156】
この第六の実施の形態によれば、第三および第五の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0157】
〈第七の実施の形態〉
[懸濁水処理装置]
図56に第七の実施の形態による懸濁水処理装置を示す。
図56に示すように、懸濁水処理装置1は、上部が開口した容器11と、容器11の内部に上下二段に設けられた積層傾斜板12、13からなる沈降層と、容器11の内部の沈降層の下方に設けられた粒子圧密装置14とを有する。容器11の形状は必要に応じて選ばれるが、
図56においては、容器11の上部が直方体、下部が逆四面体の形状を有する場合が示されている。積層傾斜板12、13は全体として直方体の形状を有し、それらの外周の四面が容器11の各側面とほぼ平行になるように容器11内に設置されている。積層傾斜板12、13の一方の側面と容器11の内壁との間には後述の仕切り板205が設置されるため、この一方の側面と容器11の内壁との間には隙間を設ける必要があるが、積層傾斜板12、13の他方の側面と容器11の内壁との間には隙間を設けても設けなくてもよい。一方、積層傾斜板12、13の前後の面と容器11の内壁との間には、フロックおよび分離された水が上下に移動できるように隙間(一般的には4〜6mm、例えば5mm程度)を設ける。容器11の内部の沈降層に設ける積層傾斜板の段数は特に限定されず、一段あるいは三段以上設けてもよい。同様に、容器11の内部に設ける粒子圧密装置の段数も特に限定されず、二段以上設けてもよい。積層傾斜板の高さは、傾斜板間の隙間における粒子、例えば粘土フロックの沈降に伴う上昇流が粒子を巻き上げないようにするために、好適には30cm以下にするが、これに限定されるものではない。積層傾斜板12、13および粒子圧密装置14の詳細については第一の実施の形態と同様である。容器11の上部の、積層傾斜板13の一方の側面に対向する側壁には例えば長方形または正方形の開口201が設けられており、この開口201を覆うように容器11の側壁に、処理すべき懸濁水を外部から流入させるための流路202が取り付けられている。流路202の断面形状は、典型的には長方形または正方形であるが、これに限定されるものではない。また、容器11の側壁上部のうち開口201に対向する部分に例えば長方形または正方形の排出口203が設けられており、この排出口203を覆うように容器11の側壁に、排出口203を越えて外に越流した懸濁水を受け入れるための受液槽204が取り付けられている。
【0158】
この懸濁水処理装置1においては、容器11内に、流路202が取り付けられている側の容器11の内壁とこの内壁と対向する積層傾斜板12、13の一方の側面との間に仕切り板205が設けられている。この仕切り板205は、鉛直方向に対して角度θ(例えば、−20度≦θ≦20度)をなす面内に存在し、典型的には鉛直面内に存在する。また、この仕切り板205は、好適には、積層傾斜板12、13の一方の側面とほぼ平行に設けられる。また、好適には、この仕切り板205は、積層傾斜板12、13の一方の側面の近くに、最も好適にはほぼ接触して設けられるが、これに限定されるものではない。この仕切り板205は、積層傾斜板12、13の一方の側面のうち、少なくとも流路202から流出する懸濁水が当たる部分を遮蔽することができる大きさを有していればよいが、好適には、例えば、上段の積層傾斜板13の一方の側面の最上部から下段の積層傾斜板12の一方の側面の最下部のうち、上から40〜70%程度の範囲を遮蔽するように設けられる。
図56においては、一例として、仕切り板205が、積層傾斜板13の一方の側面の最上部から下段の積層傾斜板12の側面の上半分を遮蔽することができる大きさを有する場合が示されている。
【0159】
仕切り板205の役割について説明する。
図57AおよびBはそれぞれ仕切り板205がない場合および仕切り板205がある場合を示し、いずれも容器11の内部の概略を示したものである。
図57Aに示すように、仕切り板205がない場合は、流路202から流出する懸濁水は、積層傾斜板12、13の側面に直接供給され、懸濁水中の粒子、例えばフロックが沈降層の上部に拡散することで、上部の濁水濃度が大きくなる。そして、この上部の濁水濃度の上昇によって、容器11内に流入する濁水は、さらに上部を流れ、容器11の外部に流出する。このとき、容器11内の沈降層の上部では流速が速いため、懸濁水中の粒子は沈降し難く、したがって沈降の効率が必ずしも高くない。これに対し、
図57Bに示すように、仕切り板205がある場合は、流路202から流出する懸濁水は、この仕切り板205に当たった後、この仕切り板205と容器11の内壁との間をこの仕切り板205に沿って下方に流れ、さらに仕切り板205の下方を通って仕切り板205の背後に回り込み、上昇する。仕切り板205の背後では懸濁水の流速が小さいため、上部の濁水濃度が小さくなる。そして、この上部の濁水濃度の低下によって、粒子を含む濁水は、密度差により上部に浸入し難くなる。同時に、濁水を沈降層の底部に導くことができる。このとき、容器11内の上部では流速が遅いため、懸濁水中の粒子は沈降しやすく、したがって沈降の効率が高い。
【0160】
次に、容器11内の仕切り板205の設置位置について説明する。
図58に示すように、仕切り板205と容器11の、懸濁水の流入側の内壁との間の距離をd
1 、仕切り板205と容器11の、懸濁水の流入側と反対側の内壁との間の距離をd
2 、容器11内への流入懸濁水層の厚さをdとする。d
1 は、懸濁水の沈降層流入時の抵抗を小さくするために、好適には、流入懸濁水層の厚さd程度とする。また、d
2 は、上昇流の流速が十分に小さくなるようにするために、可能な範囲で大きく取り、好適には少なくともd
2 /d
1 ≧10とする。
【0161】
第一の実施の形態と同様に、粒子圧密装置14により粒子が除去されたろ過水は、配管24(
図56においては図示せず)を通って貯水タンク25に蓄積されるようになっている。貯水タンク25、真空ポンプ26、配管28およびポンプ29については第一の実施の形態と同様である。ただし、この場合、ポンプ29により配管28を通して送られる水27は、容器11内の仕切り板205の背後に戻されるようになっている。このようにすることにより、仕切り板205の背後の濁水濃度を低く保つことができ、沈降の効率の向上を図ることができる。
【0162】
[懸濁水処理装置の動作方法]
次に、上述のように構成されたこの懸濁水処理装置の動作方法について説明する。
【0163】
まず、
図56に示すように、容器11内には上段の積層傾斜板13が水没する深さまで水が入っているものとする。粒子を除去する処理を行う懸濁水を流路202から容器11の沈降層内に流入させる。処理を行う懸濁水が泥水である場合には、あらかじめ凝集剤を添加してフロックを生成しておく。この場合、処理の対象は、フロックを含む懸濁水である。沈降層内に流入した懸濁水は仕切り板205に当たった後、仕切り板205と容器11の内壁との間を仕切り板205に沿って下方に流れ、さらに仕切り板204の下方を通って仕切り板204の背後に回り込み、積層傾斜板12、13を順次通って上昇する。積層傾斜板12、13では、次のようにして粒子の沈降が起きる。ここでは、積層傾斜板12について説明するが、積層傾斜板13についても同様である。
図59に示すように、積層傾斜板12を構成する傾斜板12a間の隙間12bに下方から懸濁水が流入すると、懸濁水中の粒子は下側の傾斜板12a上に沈降し、その後、傾斜板12a上を滑って下方に向かい、積層傾斜板12から離れて下方に沈降する。一方、粒子(フロック)が分離した低濃度懸濁水は傾斜板12a間の隙間12bを上昇する。最終的に積層傾斜板12の下部から落下した粒子(フロック)は容器11の底部に沈澱し、沈澱層を形成する。粒子圧密装置14は常時運転してもよいが、ある程度の厚さの沈澱層が形成された時点で粒子圧密装置14を運転するだけでも十分である。粒子圧密装置14を運転すると、既に述べたように、管路付きろ過膜16の管路19は負圧になるため、ろ過膜18を通って水が管路19内に吸引される。管路19内に吸引された水は管路19内を平板20に向かって流れて空間23(
図5参照。)に入り、さらに配管24を通って貯水タンク25に放出される。管路付きろ過膜16の間の水中を落下する粒子のうち、ろ過膜18に接触したものはろ過膜18に付着する。この際、懸濁水がろ過膜18側に吸引されることから、ろ過膜18への粒子の付着が促進される。こうして粒子がろ過膜18に付着すると、時間の経過とともに粒子が堆積して粒子層が形成され、その厚さが次第に増加する。こうしてろ過膜18に粒子層が形成されることにより、粒子が圧密される。
図56においては、ろ過膜18に粒子層206が付着した様子が示されている。粒子の圧密がある程度行われた時点で、粒子圧密装置14の管路付きろ過膜16の管路19に上記の水の吸引方向と逆方向に水を流し(逆洗)、管路19に面したろ過膜18に裏側から圧力を掛けることにより、ろ過膜18の表面に形成された粒子層の一部または全部を剥離除去し、容器11の底部の排出口11aから外部に取り出す。また、必要に応じて、
図3の矢印で示すように、バイブレーターにより平板21側の管路付きろ過膜16を膜面に垂直方向に例えば数百Hzで加振することにより、ろ過膜18に形成された粒子層をろ過膜18から剥離除去する。粒子圧密装置14で圧密された粒子は、最終的に、粒子圧密装置14の下方に沈降し、容器11の底部に設けられた排出口11aから外部に取り出す。
【0164】
以上により、懸濁水中の粒子が除去され、目的とする懸濁水の処理が行われる。この処理は、必要に応じて、複数回、繰り返し行ってもよい。
【0165】
図56に、懸濁水が、所定の分級を行った後の泥水である場合について、砂・シルト・粘土の流れを太い破線の矢印で模式的に示す。
図56中、左下に向かう矢印は、懸濁水から粒子が放出される様子を模式的に示したものである。
【0166】
[懸濁水処理装置による懸濁水処理実験]
次に、この懸濁水処理装置の試作機を用いて懸濁水処理実験を行った結果について説明する。
【0167】
図60にこの試作機の一例を示す。この試作機においては、容器内において、積層傾斜板は三段設けられており、二段目および三段目の積層傾斜板はフロックの流出を抑えるために容器11の流出側の内壁に密着するように設置され、一段目の積層傾斜板は二段目および三段目の積層傾斜板から右側に少しずれた位置に設けられている。容器は直方体の形状を有し、高さ約70cm、幅約40cm、奥行約40cmである。各積層傾斜板の高さは20cm、幅および奥行は15cm、傾斜板の間隔は7mm、傾斜板の傾斜角αは60度である。また、粒子圧密装置の管路付きろ過膜の高さは100mm、幅は200mmであり、この管路付きろ過膜が7枚、水平方向に互いに平行に配列されていて管路付きろ過膜の間隔Dは約12mmである。平板の大きさは高さ150mm、幅300mmである。管路付きろ過膜のろ過膜としてはポリプロピレン製の不織布を用いた。管路付きろ過膜の波板としては、矩形波状の断面形状を有する100mm×200mmの長方形のポリカーボネート製波板(全体の厚さは約3mm、波のピッチは約3mm、板の厚さは0.5mm)を用いた。
【0168】
仕切り板の効果を確認するために仕切り板の長さ(高さ)を変えて基礎的な実験を行った。
【0169】
図61および
図62にその結果を示す。
図61に示す例では、二段目および三段目の積層傾斜板の側面全体を遮蔽するように仕切り板が設置されており、
図62に示す例では、三段目、すなわち最上段の積層傾斜板の側面だけを遮蔽するように仕切り板が設置されている。これらの仕切り板は、ほぼ鉛直面内に、かつ積層傾斜板の一方の側面に平行に設置されている。この場合、
図58に示すd
1 =8mm、d
2 =32mmである。また、積層傾斜板の幅は仕切り板と容器の内壁との間の間隔とほぼ同一である。また、二段目の積層傾斜板と三段目の積層傾斜板との傾斜板の傾斜方向は互いに同一であり、α=60度である。処理を行う懸濁水としては、カオリン水溶液に凝集剤としてPACを添加し、フロックを生成した懸濁水を用いた。
図61に示す例では、仕切り板の背後において上昇流が強くなり、フロックが巻き上げられ、容器外に流出する。これに対し、
図62に示す例では、仕切り板の背後において上昇流が弱く、フロックの巻き上がりが小さくなる。
【0170】
図63は、二段の積層傾斜板を用い、一段目の積層傾斜板の幅を約30cm、二段目の積層傾斜板の幅を約15cmとし、一段目の積層傾斜板と二段目の積層傾斜板との傾斜板の傾斜方向は互いに逆とし、α=60度として実験を行った結果を示す。この例では、二段目の積層傾斜板の側面の上半分だけ遮蔽するように仕切り板が設置されている。この場合、仕切り板は、鉛直方向に対して時計方向に約θ=5度傾斜している。処理を行う懸濁水としては、土壌水に凝集剤としてPACを添加し、フロックを生成した懸濁水を用いた。この
図63に示す例では、二段目の積層傾斜板の一方の側面と仕切り板との間の空間で静水域が形成されるため、積層傾斜板が存在しなくても上昇流が抑えられている。ただし、仕切り板の背後全領域に積層傾斜板を設置するのが有効である。
【0171】
図64AおよびBは、二段の積層傾斜板を用い、いずれの積層傾斜板も幅を約30cmとし、一段目の積層傾斜板と二段目の積層傾斜板との傾斜板の傾斜方向は互いに逆とし、α=60度として実験を行った結果を示し、
図64Bは
図64Aから一定時間経過した後の写真である。仕切り板は二段目の積層傾斜板の側面および一段目の積層傾斜板の側面の上半分を遮蔽するように、かつ鉛直方向に対して時計方向に約θ=5度傾斜して設置されている。処理を行う懸濁水としては、カオリン水溶液に凝集剤としてPACを添加し、フロックを生成した懸濁水を用いた。流入懸濁水のSS量は10000、流出懸濁水のSS量は100であった。
図64AおよびBに示す例では、いずれも仕切り板の背後において上昇流が弱く、フロックの上昇がブロックされていることが分かる。
【0172】
次に、積層傾斜板を用いる場合と用いない場合とについて仕切り板の効果を検証するために行った沈降実験の結果について説明する。このために、SS量が10000の粘土濁水の沈降実験を行った。その結果を
図65AおよびB、
図66および
図67に示す。ここで、
図65AおよびBは、処理を行う懸濁水としてカオリン水溶液に凝集剤としてPACを添加したものを用い、仕切り板を用いず、流量を20L/minとした場合を示し、
図65Aは積層傾斜板を用いない場合、
図65Bは積層傾斜板を用いた場合を示す。また、
図66は、処理を行う懸濁水として名古屋粘土の粘土水を用い、仕切り板および積層傾斜板とも用い、流量を20L/minとした場合を示す。
図67は、処理を行う懸濁水としてカオリン水溶液に凝集剤としてPACを添加したものを用い、粒子圧密装置により吸引を行い、仕切り板および積層傾斜板とも用い、流量を15L/minとした場合を示す。
【0173】
図65AおよびBから分かるように、積層傾斜板を用いない場合は処理用の容器に対する流入前と流入後とでSS量はあまり変わらず、フロックの沈降効果はほとんど得られていないのに対し、積層傾斜板を用いた場合は流入前に比べて流入後のSS量は約1/4と大幅に減少している。また、
図66から分かるように、積層傾斜板、仕切り板とも用いた場合は、沈降層に入る前のSS量は3000〜4500であったが、沈降層を通った後のSS量は数百以下に激減している。また、
図67から分かるように、積層傾斜板、仕切り板とも用いた場合は、沈降層に入る前のSS量は4500〜6500であったが、沈降層を通った後のSS量は数百以下に激減している。これらの結果は、仕切り板により粘土フロックの容器外への流出が大幅に抑えられていることを示す。
【0174】
この第七の実施の形態によれば、第一の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0175】
〈第八の実施の形態〉
[懸濁水処理装置]
図68に第八の実施の形態による懸濁水処理装置を示す。
図68に示すように、この懸濁水処理装置1においては、容器11内の沈降層を構成する積層傾斜板が上下に多段に配置された複数の積層傾斜板301〜304からなり、これらの積層傾斜板301〜304のそれぞれの高さは30cm以下、例えば20〜30cmに選ばれている。また、これらの積層傾斜板301〜304を構成する傾斜板の傾斜方向は交互に互いに反対になっている。このように高さが30cm以下と低い積層傾斜板を複数、多段に配置することにより、上昇流を分散させることができる。また、傾斜板の傾斜角αは、好適には50〜70度、より好適には55〜65度、例えば60度に選ばれる。傾斜板の間隔は、好適には5〜9mm、より好適には6〜8mm、例えば7mmに選ばれる。積層傾斜板の段数は必要に応じて選ばれ、特に限定されないが、例えば三段から十段であり、
図68においては四段の場合が示されている。この懸濁水処理装置1のその他のことは第一の実施の形態による懸濁水処理装置1と同様である。
【0176】
この第八の実施の形態によれば、第七の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0177】
〈第九の実施の形態〉
[懸濁水処理装置]
図69に第九の実施の形態による懸濁水処理装置を示す。
図69に示すように、この懸濁水処理装置1においては、第七の実施の形態と同様に容器11内に仕切り板205が設けられているが、積層傾斜板が設けられていないことが第七の実施の形態と異なる。この懸濁水処理装置1のその他のことは第七の実施の形態による懸濁水処理装置1と同様である。
【0178】
この懸濁水処理装置1においては、外部から容器11に流入する懸濁水は仕切り板205に当たり、この仕切り板205と容器11の内壁との間を通り、仕切り板205に沿って下方に流れ、仕切り板205の下方を通ってから上昇する。このとき、仕切り板205の背後は流速が小さいため、上部の懸濁水の濃度が小さくなる。上部の懸濁水の濃度の低下によって、フロックを含む懸濁水は、密度差により上部に浸入し難くなる。同時に、懸濁水を容器11の底部に導く。このように、この懸濁水処理装置1においては、仕切り板205の背後の上部における流速が小さいため、積層傾斜板が設けられていなくても、フロックが効率的に沈降する。
図69中、容器11内に示した水平な破線は、フロックとその上の水層との界面を示したものである。
【0179】
この第九の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0180】
〈第十の実施の形態〉
[洗浄、分級および処理システム]
この第十の実施の形態による洗浄、分級および処理システムにおいては、第二〜第六のいずれかの実施の形態による洗浄、分級および処理システムにおいて、懸濁水処理装置として第七〜第九の実施の形態のいずれかによる懸濁水処理装置を用いることを除いて、第二〜第六のいずれかの実施の形態による洗浄、分級および処理システムと同様である。
【0181】
この第十の実施の形態によれば、第二〜第六のいずれかの実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0182】
〈第十一の実施の形態〉
[浄水製造装置]
第十一の実施の形態においては、浄水製造装置について説明する。
第一〜第十の実施の形態による懸濁水処理装置あるいは洗浄、分級および処理システムにおいては、懸濁水処理装置11の粒子圧密装置13、15でろ過された水27が貯水タンク25に蓄えられる。この浄水製造装置においては、この貯水タンク25内の水27を浄水として利用する。この貯水タンク25内の水27をそのまま浄水として利用することも可能であるが、好適には、貯水タンク25とは別の浄水タンクを用意し、貯水タンク25の水27をこの浄水タンクに移して利用される。貯水タンク25の水27を浄水タンクに移す場合には、その途中あるいは浄水タンクに設置される蛇口などに従来公知の各種の浄水フィルター(中空糸フィルターなど)を設置し、この浄水フィルターにより水27中に残存する各種の物質を除去するようにしてもよい。特に、フロック形成のために懸濁水にPACなどの凝集剤を添加する場合は、この凝集剤も吸着除去可能な浄水フィルターが用いられる。浄水タンクには、必要に応じて濁度計を設置し、濁度管理を行う。
【0183】
この第十一の実施の形態によれば、泥水などの懸濁水から浄水を容易に製造することができるため、例えば、浄水の入手は困難であるが、泥水は容易に得られる地域にこの浄水製造装置を設置し、この浄水製造装置に泥水を投入するだけで必要に応じて浄水を容易に製造することが可能である。
【0184】
以上、この発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0185】
例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、形状、構造、配置などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じて、これらと異なる数値、形状、構造、配置などを用いてもよい。