特開2015-199700(P2015-199700A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-199700(P2015-199700A)
(43)【公開日】2015年11月12日
(54)【発明の名称】中性脂肪吸収抑制組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/715 20060101AFI20151016BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20151016BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20151016BHJP
【FI】
   A61K31/715
   A61P3/06
   A61K9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-37298(P2015-37298)
(22)【出願日】2015年2月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-73871(P2014-73871)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(74)【代理人】
【識別番号】100161698
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 知子
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐大
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 晃
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠
(72)【発明者】
【氏名】神谷 智康
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC21
4C076DD41
4C076DD43
4C076DD63
4C076EE32
4C076EE53
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA20
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZC33
(57)【要約】
【課題】胆汁酸ミセルの粒径低下抑制に高い作用を有し、体内への中性脂肪の吸収を抑制しうる中性脂肪吸収抑制組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の中性脂肪吸収抑制組成物は、ポリデキストロースを含むことにより、胆汁酸ミセルの粒径低下を効果的に抑制することができる。本発明の組成物は、ポリデキストロース源として、ポリデキストロース及びその原料となる重合性単量体を1種又は2種以上含む混合物であって、25℃での50質量/体積%水溶液の粘度が15mPa・s以上である該混合物を用いることが好ましい。また、ポリデキストロース源として、食物繊維を50質量%以上含む前記の混合物を用いることも好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリデキストロースを含む、中性脂肪吸収抑制組成物。
【請求項2】
前記中性脂肪吸収抑制が、胆汁酸ミセルの粒径低下抑制によるものであることを特徴とする、請求項1に記載の中性脂肪吸収抑制組成物。
【請求項3】
前記ポリデキストロース源として、ポリデキストロース及びその原料となる重合性単量体を1種又は2種以上含む混合物であって、25℃での50質量/体積%水溶液の粘度が15mPa・s以上である該混合物を用いる、請求項1又は2に記載の中性脂肪吸収抑制組成物。
【請求項4】
前記ポリデキストロース源として、ポリデキストロース及びその原料となる重合性単量体を1種又は2種以上含む混合物であって、食物繊維量が50質量%以上である該混合物を用いる、請求項1〜3の何れか1項記載の中性脂肪吸収抑制組成物。
【請求項5】
固形物であって、20質量/体積%濃度の水溶液としたときの25℃のpHが2.0より高く、8.0より低い、請求項1〜4の何れか1項記載の中性脂肪吸収抑制組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性脂肪吸収抑制組成物、特に胆汁酸ミセルの粒径低下抑制により中性脂肪の体内吸収を抑制する中性脂肪吸収抑制組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の中性脂肪吸収抑制技術は、リパーゼ阻害作用によるものが主であった。リパーゼは、消化管内に分泌される膵液に含まれており、トリグリセリドを吸収されやすい分子である脂肪酸とモノグリセリドに分解する重要な消化酵素である。このリパーゼの活性を阻害することでトリグリセリドの消化を阻害し、吸収を抑制することができる。例えば、リパーゼ阻害を作用機序とした脂肪吸収阻害を示す薬剤としてオルリスタットがある。
【0003】
しかしながら、リパーゼ阻害薬は副作用として脂肪便が出ることが課題となっている。リパーゼが阻害された場合、食事から摂取した脂肪が消化されずにそのまま便として排泄されるため、放屁などの際に肛門から油が出てしまうなどQOLが著しく低下することが問題となっている。
【0004】
胆汁酸ミセルの粒径制御による脂肪吸収抑制は、リパーゼのはたらきを阻害せず、脂肪は脂肪酸とモノグリセリドに分解されるため、脂肪便のように未消化の油が排泄される副作用はない。一方で、胆汁酸ミセル粒径を制御し、その粒径の低下を抑制することで、胆汁酸ミセルを介した脂肪の吸収を遅延させることができる。すなわち胆汁酸ミセルの粒径を制御し、その低下を抑制することによって、リパーゼ阻害薬の副作用である脂肪便を抑制し、脂肪吸収を抑制することができる。
【0005】
ミセル(micelle)とは、界面活性剤などの両親媒性分子の極性親水性部分が外側に伸び、無極性疎水性部分が内側に伸びている状態で複数の該分子が集まって形成された球状構造をいう。例えば、水と油を界面活性剤と共に混合すると、界面活性剤の親油性部分が油と共に内部に、親水性部分が水との界面に向くように配向し、ミセル構造が形成される。ミセルのうち、胆汁酸ミセルは、胆汁酸の存在下で形成されるミセルであり、通常、生体内において、胆汁酸、脂肪酸及びモノグリセリドなどにより形成されている。この胆汁酸ミセルは、例えば生体内において、以下のようにして脂質の消化吸収過程に関与することが知られている。
【0006】
食品に含まれる脂肪の多くは、化学的に安定した中性脂肪、つまりトリグリセリドである。食事として体内に摂取された中性脂肪は、以下のように消化吸収されることが知られている。まず、中性脂肪は、十二指腸で胆汁により乳化される。次に膵液中に含まれる膵リパーゼの働きで、モノグリセリドと脂肪酸に分解される。モノグリセリドと脂肪酸は、腸内に分泌された胆汁酸と接することにより胆汁酸ミセルを形成し、この胆汁酸ミセルを介して吸収される。胆汁酸ミセルは、その粒径が小さいほど、吸収されやすいことが知られている。したがって、胆汁酸ミセルの粒径を制御し、粒径の低下を抑制する組成物は、脂肪吸収を抑制できると考えられる。
【0007】
これまでに、水溶性食物繊維の一種である難消化性デキストリンが、胆汁酸ミセルの粒径低下を抑制し、脂肪吸収を抑制することが報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of Health Science、55(5)、838-844(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、難消化性デキストリンによる胆汁酸ミセルの粒径低下抑制作用は十分なものとは言い難い。
本発明の課題は、胆汁酸ミセルの粒径低下抑制について、難消化性デキストリンよりも更に高い作用を有し、脂肪の吸収を遅延することにより、体内への中性脂肪の吸収を効果的に抑制しうる中性脂肪吸収抑制組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、有効成分としてポリデキストロースを含む、中性脂肪吸収抑制組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の組成物によれば、胆汁酸ミセルの粒径低下を効果的に抑制させることができ、脂肪の吸収を遅延することにより、体内への中性脂肪の吸収抑制に有効でありうる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例及び比較例における胆汁酸ミセルの粒径低下抑制試験の結果を示すグラフである。
図2図2は、実施例において、食物繊維量を変化させた場合における胆汁酸ミセルの粒径低下抑制試験の結果を示すグラフである。
図3図3は、実施例において、ポリデキストロース混合物の50質量/体積%水溶液の粘度を変化させた場合における胆汁酸ミセルの粒径低下抑制試験の結果を示すグラフである。
図4図4は、実施例において、本発明の組成物のpHを変化させた場合における胆汁酸ミセルの粒径低下抑制試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の中性脂肪吸収抑制組成物について、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明は、胆汁酸ミセルの粒径低下抑制により、脂肪吸収抑制を図るものであり、胆汁酸ミセルの粒径低下抑制組成物としても用いられる。また、本発明は、胆汁酸ミセルの粒径低下抑制により、脂質の体外への排出促進を図るものである。以下、これらの組成物を単に本発明の組成物ともいう。
【0014】
本発明の組成物は、ポリデキストロースを含むことにより、胆汁酸ミセルの粒径低下を効果的に抑制する。
【0015】
ポリデキストロースは、グルコースがα-又はβ-型の1-2、1-3、1-4、又は1-6結合で分岐状に多数重合した構造を有する、水溶性かつ難消化性の多糖類であり、その一部は食物繊維としてはたらく。ポリデキストロースは、例えば、グルコース、ソルビトール、クエン酸を凡そ89:10:1、またはグルコース、ソルビトール、リン酸を凡そ90:10:0.1の質量比で混合後、高温条件下で重合させることによって製造される。また、ポリデキストロース量は米国のFederal Chemicals Codexや平成18年7月21日食安発第0721001号の別紙記載の方法によって測定される。
【0016】
本発明においては、ポリデキストロース源として、ポリデキストロースと、その原料となる重合性単量体の1種又は2種以上を不純物として含む混合物(以下、ポリデキストロース混合物ともいう)を用いてもよいし、不純物を除去したポリデキストロースのみを用いてもよい。このポリデキストロース混合物に含まれる重合性単量体としてはポリデキストロース製造の原料である前述のグルコースや、ソルビトールを挙げることができる。つまり、前記のポリデキストロース混合物は、例えばポリデキストロース、グルコース及びソルビトールからなるものであってもよい。ポリデキストロース混合物は、通常固形状である。ポリデキストロース混合物は、水分量が例えば5質量%以下、特に4質量%以下であることが好ましい。
【0017】
ポリデキストロース混合物中のグルコース及びソルビトールの合計量は、10質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましい。ポリデキストロース混合物中のグルコース及びソルビトールの合計量は少なければ少ないほどよいが、1質量%以上であると、ポリデキストロースの製造コストの観点から好ましい。グルコース及びソルビトールの含有量は、既知の各種定量法により測定できる。
【0018】
また、ポリデキストロース混合物は、該混合物中における後述する(A)食物繊維と、(B)グルコース及びソルビトールの合計量の比(A)/(B)が、8.3以上、特に12.5以上であることが好ましい。
【0019】
ポリデキストロース及びポリデキストロース混合物は、食物繊維を含有する。食物繊維とは、食物に含まれている成分のうち、ヒトの消化酵素で消化されない難消化性成分である。ポリデキストロースは、上述したように、グルコース等の単糖が重合した多糖類であり、このうち、ある程度以上の分子量のものが、食物繊維に該当すると考えられる。
【0020】
本発明において、前述したポリデキストロース混合物を用いる場合、該ポリデキストロース混合物における食物繊維量が50質量%以上であることが、原料由来の不純物による甘味や雑味を低減でき、またミセルの粒径低下を効果的に抑制する観点から好ましい。前記混合物中の食物繊維量は、60質量%以上であることが更に好ましく、65質量%以上であることが更に一層好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。また、前記混合物中の食物繊維量は、高ければ高いほど好ましいが、例えば95質量%以下であると、製造コストの点で有利である。
【0021】
本発明において、ポリデキストロース混合物に含まれる食物繊維量を前記の範囲とするためには、前述した方法でポリデキストロースを製造した後、該重合により得られた反応物を公知の方法で精製等すればよい。
【0022】
なお、ポリデキストロース混合物中に含まれる食物繊維量は酵素-HPLC法(「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」、平成11年4月26日衛新第13号、8食物繊維)に準じ、測定する。具体的には以下のように行う。
【0023】
まず、サンプル500mgを精密に測り、0.08mol/lリン酸緩衝液(pH6.0±0.5)50mlを加える。これに熱安定性α-アミラーゼ(Sigma社:EC3.2.1.1 Bacillus licheniformis由来)溶液0.1mlを加え、沸騰水中に入れ、10分ごとに撹拌しながら30分間放置する。冷却後、0.275mol/l水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを7.5±0.1に調整する。プロテアーゼ(Sigma社:EC3.4.21.62 Bacillus licheniformis由来)溶液0.1mlを加えて、60±2℃の水浴中で振とうしながら30分間反応させる。冷却後、0.325mol/l塩酸を加え、pHを4.3±0.3に調整する。アミログルコシダーゼ(Sigma社:EC3.2.13 Aspergillus niger由来)溶液0.1mlを加え、60±2℃の水浴中で振とうしながら30分間反応させる。以上の酵素処理終了後、直ちに沸騰水浴中で10分間加熱した後、冷却し、50ml遠沈菅に分注し、10分間遠心分離した後、上清を回収する。残渣に純水10mlを加えよく攪拌し再度遠心分離して上清を回収し、これらを酵素処理液とする。酵素処理液全量をイオン交換樹脂(OH型:H型=1:1)50mlを充填したカラム(ガラス管20mm×300mm)に通液速度80ml/hrで通液し、さらに純水を通して流出液の全量を約250mlとする。この溶液をロータリー・エバポレーターで濃縮し、全量を純水で50mlとする。孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、検液とする。またグリセリンを純水で5mg/ml、10mg/ml、15mg/mlに調製し標準溶液とする。
【0024】
次に、検液および標準溶液20μlにつき、液体クロマトグラフィーを行い、検液の食物繊維画分および標準溶液のグリセリンのピーク面積値を測定する。
【0025】
液体クロマトグラフィーの分析条件は以下の通りである。
検出器:示差屈折計
カラム:ULTRON PS-80N(φ8.0×300 mm、島津ジーエルシー)
カラム温度:50℃
移動相:超純水
流速:0.5ml/min
【0026】
食物繊維量は、標準溶液濃度および面積より検量線を作成し、その検量線からグリセロール当量を求め、以下の式から算出する。
食物繊維量(%)=[グリセロール当量(mg/ml)/試料採取量(mg)]×f1×50(ml)×100
(上記式中、f1はグリセリンとブドウ糖のピーク面積の感度比(0.82)である。)
【0027】
本発明において、ポリデキストロース源として、ポリデキストロースと、その原料となる重合性単量体の1種又は2種以上とを含む混合物であって、25℃における特定濃度の水溶液の粘度が特定値以上である該混合物を用いると、本発明の組成物により胆汁酸ミセルの粒径低下を一層効果的に抑制できることを本発明者らは発見した。具体的には、ポリデキストロース混合物は、この温度における50質量/体積%水溶液の粘度が、15mPa・s以上であることが好ましい。
また、ポリデキストロース混合物における50質量/体積%水溶液の粘度は、高ければ高いほど良いが、25mPa・s以下であるとポリデキストロース混合物の製造コスト等の面からは好ましい。
ここで、ポリデキストロース混合物の水溶液の濃度が「X質量/体積%」であるとは、該水溶液100ml中に含まれているポリデキストロース混合物の質量がXgであることを意味する。
【0028】
前記の水溶液の粘度は、LVT RVT HAT HBTアナロク粘度計(ブルックフィールド社製)を用い、具体的には、以下の手順により、測定できる。
一例としては、No.1のスピンドルを本体に設置し、調製した80 mLの50質量/体積%のサンプルにスピンドルを一定の位置まで浸す。回転スピードを50rpmに設定し、指針が目盛の0mPa・sを指していることを確認し、モータースイッチを入れる。スピンドル回転開始から1分後の指針の指す数値から粘度を算出して記録する。
【0029】
前記の水溶液の粘度が前記特定範囲であるポリデキストロース混合物を得るためには、用いるポリデキストロースの分子量や重合度を分画や重合の条件により調整したり、既知の方法により精製したりすればよい。
【0030】
更に、本発明の組成物は、固形物であって、20質量/体積%濃度の水溶液としたときの25℃のpHが特定範囲であることが、本発明の組成物により胆汁酸ミセルの粒径低下を効果的に抑制できるため好ましい。具体的には、本発明の組成物は、20質量/体積%濃度の水溶液としたときに、上記温度におけるpHが2.0より高く、8.0より低いことが好ましく、2.1以上7.9以下であることがより好ましく、2.5以上7.5以下であることが更に好ましく、3.0以上7.0以下であることが最も好ましい。このようなポリデキストロース混合物は、例えば、上述のグルコース及びソルビトールの重合物を既知の方法で精製すること等によって得ることができる。
また、本発明では、ポリデキストロース源として、20質量/体積%水溶液としたときの25℃におけるpHが前記範囲であるポリデキストロース混合物を用いることも好ましい。
更に、本発明の組成物が、25℃におけるpHを前記の範囲に調整した、液状の組成物であることも胆汁酸ミセルの粒径低下を効果的に抑制できる観点から好ましい。本発明の組成物が液状である場合のpHを前記の範囲に調整するためには、ポリデキストロース又はポリデキストロース混合物として、水に溶解乃至分散させたときのpHが前記範囲であるものを用いたり、pH調整剤などを添加すればよい。ここでいう液状の組成物とは、水にポリデキストロース又はポリデキストロース混合物を溶解乃至分散させたものであることが好ましい。液状の組成物は必要に応じてその他の任意成分を含有する。
本発明の組成物及びポリデキストロース混合物の水溶液のpH並びに液状の組成物のpHは、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0031】
なお、ポリデキストロースとしては、上記の方法で製造されたポリデキストロースに加えて、該ポリデキストロースの誘導体も含めることができる。そのような誘導体としては、上記の方法で製造されたポリデキストロースを水素添加して得られる水素添加又は還元ポリデキストロースを挙げることができる。また、上記の方法で製造されたポリデキストロースを水酸化カリウム等の塩基で中和したものもポリデキストロースに含まれる。
【0032】
本発明の組成物は経口摂取することが可能であり、その場合、該組成物の剤形としては、例えば、粉末状、粒状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、液状、飴状、ペースト状、クリーム状、ハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状、カプレット状、タブレット状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、クッキー状、チュアブル状、シロップ状、スティック状等の各形態が挙げられる。
【0033】
本発明の組成物は、ポリデキストロース又はポリデキストロース混合物のみからなるものであってもよいし、これらに加えてその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、ビタミン類、タンパク質、ポリデキストロース以外の水溶性食物繊維、オリゴ糖、ミネラル類、ムコ多糖類、乳製品、豆乳製品、植物又は植物加工品、乳酸菌、納豆菌、酪酸菌、麹菌、酵母などの微生物を配合することができる。更に必要に応じて通常食品分野で用いられる、糖類、甘味料、酸味料、着色料、増粘剤、光沢剤、製造用剤、酸化防止剤、pH調整剤等を挙げることができる。その他の成分としては、これら以外にも、種々の賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、希釈剤、増量剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などを挙げることができる。その他の成分の含有量は、本発明の組成物の形態等に応じて適宜選択することができる。
【0034】
本発明の組成物におけるポリデキストロースの含有量は該組成物の用途や剤形、求められる効果のレベル等によっても異なるが、一般に、本発明の組成物の固形分中、ポリデキストロースの割合が3.0質量%以上100質量%以下であることが好ましく、3.3質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
また、本発明の組成物が液体にポリデキストロースを溶解したものである場合、該組成物中のポリデキストロースの濃度は、10g/L以上900g/L以下であることが好ましく、10g/L以上800g/L以下であることが更に好ましい。
【0036】
また、本発明の組成物が、水等の液体にポリデキストロース混合物を溶解したものである場合、該組成物中のポリデキストロース混合物の濃度は、0.1質量/体積%以上50質量/体積%以下であることが好ましく、0.5質量/体積%以上40質量/体積%以下であることがより好ましく、1質量/体積%以上30質量/体積%以下であることが更に好ましくい。
【0037】
また、本発明の組成物におけるポリデキストロースの摂取量としては、ポリデキストロースの量として、1食あたり、1g以上30g以下であることが好ましく、2g以上20g以下であることが更に好ましく、3g以上12g以下であることがより好ましい。
【0038】
本発明の組成物は、経口摂取した場合、消化管内において胆汁酸ミセルの粒径低下を抑制することができる。
【0039】
胆汁酸ミセルとは、具体的には、胆汁酸存在下で脂肪の分解物が形成するミセルをいう。胆汁酸とは、哺乳類の胆汁中に広く見出されるステロイド誘導体でコラン酸骨格を有する化合物の総称である。胆汁酸の例としては、COOH型の胆汁酸、抱合胆汁酸、及びそれらの塩等が挙げられる。COOH型の胆汁酸の例としては、コール酸、ケノデオキシコール酸、ヒオコール酸、5α-シプリノール、デオキシコール酸、リトコール酸、ウルソデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸等が挙げられる。また抱合胆汁酸の例としては、COOH型の胆汁酸のカルボキシル基がタウリンやグリシンとアミド結合したものが挙げられ、例えば、グリココール酸、タウロコール酸等が挙げられる。また、上述したCOOH型の胆汁酸及び抱合胆汁酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。本発明において、胆汁酸は、抱合胆汁酸又はその塩を含むことが好ましい。また、胆汁酸ミセルは、脂肪酸及びモノグリセリドを含むことが好ましく、脂肪酸及び2−モノグリセリドを含むことが特に好ましい。前記の脂肪酸は、飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸でもあってもよい。
【0040】
このような本発明の組成物は、消化管内の胆汁酸ミセルの粒径低下を抑制することにより、小腸上皮における脂肪酸やモノグリセリドの吸収を遅延させ、有効に抑制し得る。また、消化管内の胆汁酸ミセルの粒径低下を抑制することにより、脂質の体外への排出を促進し得る。したがって、本発明の組成物は中性脂肪の吸収を抑制する用途に有効である。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。しかし本発明の範囲はかかる実施例に限定されない。以下、特に断らない場合「%」は質量%、「部」は質量部を表す。
尚、以下の食物繊維量及び粘度は上述した方法で測定した。
【0042】
〔実施例1〕
ポリデキストロースとして、以下のポリデキストロース混合物Aを蒸留水に溶解し、20質量/体積%の水溶液サンプルとした。
ポリデキストロース混合物A:
50質量/体積%水溶液の25℃での粘度が20mPa・s、食物繊維量が80.16質量%、(A)食物繊維量と、(B)グルコース及びソルビトールの合計量の比(A)/(B)が18.6。
【0043】
〔比較例1〕
ポリデキストロース混合物の水溶液の代わりに、難消化性デキストリン含有物(難消化性デキストリン量が94.4質量%)を蒸留水に溶解し、20質量/体積%の水溶液サンプルとした。
【0044】
前記で得られた実施例1及び比較例1の水溶液サンプルを、以下の<ミセル形成試験>に供した。また、水溶液サンプルの代わりに蒸留水を用い、参考例1(陰性コントロール)として、同様の<ミセル形成試験>を行った。
【0045】
<ミセル形成試験>
タウロコール酸ナトリウム0.0125g及び2−モノオレイン0.0195gを1.5mLエッペンチューブに量り入れた。
この1.5mLエッペンチューブに、前記の水溶液サンプル(実施例1若しくは比較例1)又は蒸留水(参考例1)を500μL、及び、オレイン酸34.25μLを加え、ボルテックスで10秒撹拌した。得られた混合物を室温下、ホモジナイザー(マイクロテック・ニチオン社製、ヒストコロンNS−310EII)で3分間、均一化した。ここでホモジナイザーの強度は4に設定した。均一化処理の30秒後、エッペンチューブの底から2μLサンプリングし、あらかじめ(1時間以上)37℃に加温しておいた1mLの0.15%SDS溶液に加えて希釈した。希釈後、この希釈液のミセルの平均直径を、Malvern社製「ゼータサイザーNano s」を用いて測定し、「均一化処理0分後の平均直径」とした。測定温度は37℃とした。前記の均一化処理の60、120、180分後においても、前記で均一化した液からそれぞれ同様のサンプリング及び希釈を行い、ミセルの平均直径を測定し、それぞれ「均一化後60、120、180分後の平均直径」とした。均一化した液及びその希釈液は、いずれも180分後の測定が終了するまで37℃で静置させた。均一化後60、120、180分後の平均直径の平均値それぞれについて、均一化後0分後の平均直径の平均値を100としたときの割合を算出した。その結果を図1に示す。
【0046】
図1に示すように、ポリデキストロースを用いた実施例1においては、難消化性デキストリンを用いた比較例1及び陰性コントロールである参考例1に比べて、胆汁酸ミセルの平均粒子径の低下が抑制された。したがって、ポリデキストロースを用いた本発明の組成物が、胆汁酸ミセルの粒径低下を効果的に抑制することが判る。
【0047】
〔実施例2〜4〕
実施例1で用いたポリデキストロース混合物Aと製造条件が異なるポリデキストロース混合物3種を製造した。これらポリデキストロース混合物について上記の方法で測定した食物繊維量は表1の通りである。得られたポリデキストロース混合物を蒸留水に溶解し、20質量/体積%の水溶液サンプルとした。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例2〜4のサンプルを上記の<ミセル形成試験>に供した結果を、図2に示す。図2には、図1と同様に、蒸留水を陰性コントロールとして用いた結果を参考例2として併せて示している。
【0050】
〔実施例5〜8〕
実施例1で用いたポリデキストロース混合物と製造条件が異なるポリデキストロース混合物を4種製造した。これらポリデキストロース混合物について50質量/体積%の水溶液の粘度(mPa・s)を上記の方法で測定した。その結果は表2の通りである。表2における参考例3は、蒸留水である。
【0051】
【表2】
【0052】
実施例5〜8で用いた各ポリデキストロース混合物を、20質量/体積%の水溶液サンプルとし、これらを上記の<ミセル形成試験>に供した。実施例5〜8で用いた各ポリデキストロース混合物について、50質量/体積%の水溶液の粘度(mPa・s)を横軸に、20質量/体積%の水溶液サンプルを<ミセル形成試験>に供して得られた平均粒径(均一化後0分後の平均粒径を100とした時の均一化後180分後の平均粒径の割合、%)を縦軸にプロットしたグラフを図3に示す。図3には、陰性コントロールとして用いた蒸留水(参考例3)の粘度及び該蒸留水を<ミセル形成試験>に供して得られた平均粒径も併せて示している。
【0053】
図2に示す結果から、食物繊維量が50質量%以上であるポリデキストロース混合物を用いると、胆汁酸ミセルの粒径の低下がより一層効果的に抑制されることが判る。また、図3に示す結果から、50質量/体積%の水溶液の粘度が15mPa・s以上であるポリデキストロース混合物を用いても、胆汁酸ミセルの粒径の低下がより一層効果的に抑制されることが判る。
【0054】
〔実施例9〕
ポリデキストロース混合物(食物繊維量70%)を蒸留水に溶解して、液状の組成物(ポリデキストロース混合物濃度:20質量/体積%)とした。このとき液状の組成物のpHはクエン酸を用いて2.0に調整した。pHは以下方法で測定した。
【0055】
<pHの測定方法>
pHメーターとしてメトラートレド社製「セブンイージー」を使用して25℃で測定した。
【0056】
〔実施例10〕
pHを3.0に調整した以外は、実施例9と同様にして、液状の組成物(ポリデキストロース混合物濃度:20質量/体積%、pH3.0)を得た。
【0057】
〔実施例11〕
ポリデキストロース混合物(食物繊維量70%)を蒸留水に溶解して、液状の組成物(ポリデキストロース混合物濃度:20質量/体積%)とした。この液状の組成物のpHを、上記のようにして測定したところ、pH5.36であった。
【0058】
〔実施例12〕
水酸化ナトリウムを用いてpHを7.0に調整した以外は、実施例9と同様にして、液状の組成物(ポリデキストロース混合物濃度:20質量/体積%、pH7.0)を得た。
【0059】
〔実施例13〕
水酸化ナトリウムを用いてpHを8.0に調整した以外は、実施例10と同様にして、液状の組成物(ポリデキストロース混合物濃度:20質量/体積%、pH8.0)を得た。
【0060】
実施例9〜13で得られた液状の組成物それぞれを水溶液サンプルとして、上記の<ミセル形成試験>に供して平均粒径(均一化後0分後の平均粒径を100とした時の均一化後180分後の平均粒径の割合、%)を得た。液状の組成物のpHを横軸とし、縦軸を、当該平均粒径としてプロットしたグラフを図4に示す。
【0061】
図4に示す結果から、ポリデキストロース混合物及び固形状の組成物として、20質量/体積%濃度の水溶液のpHが2.0超8.0未満のものを用いると、胆汁酸ミセルの粒径の低下が効果的に抑制されることが判る。また、pHが2.0超8.0未満である実施例10、11及び12の液状の組成物を用いると、pHが2.0以下の実施例9及びpHが8.0以上の実施例13の組成物に比べて、胆汁酸ミセルの粒径の低下がより一層効果的に抑制されることが判る。
【0062】
(配合例1:散剤)
ポリデキストロース(食物繊維量80%)に対して製造上必要な賦形剤を添加して、ポリデキストロースが95%となる散剤の態様で本発明の組成物を調製した。
【0063】
(配合例2:錠剤)
全体を100部として、ポリデキストロース(食物繊維量50%)5部、ビタミンB1 5部、ビタミンB6 12部、ステアリン酸カルシウム 4部、麦芽糖30部及びヒドロキシプロピルセルロース 残部を混合及び打錠することにより、錠剤の態様で本発明の組成物を調製した。
【0064】
(配合例3:顆粒剤)
全体を100部として、ポリデキストロース(食物繊維量 70%) 90部、茶抽出物 5部、香料 若干量、ステアリン酸カルシウム 残部を混合及び顆粒化することにより、顆粒剤の態様で本発明の組成物を調製した。
【0065】
(配合例4:カプセル剤)
全体を100部として、ポリデキストロース(食物繊維量 50%)40部、レシチン 8部及びオリーブ油 残部を混合して調製したものを内容液として、これをカプセル殻に内包することにより、カプセル剤の態様で本発明の組成物を調製した。
【0066】
(配合例5:液剤)
全体を100部として、ポリデキストロース(食物繊維量 75%) 1部、ビタミンB1 1部、果糖ブドウ糖液糖 10部、クエン酸 1部、安息香酸ナトリウム 0.02部、香料製剤 2部、スクラロース 0.05部、アセスルファムカリウム 0.03部、及び精製水 残部を混合して、液剤の態様で本発明の組成物を調製した。
図1
図2
図3
図4