【課題】段差追従性及び耐湿熱白化性に優れるとともに、ガス浮き防止性に優れている粘着剤層を形成することができる粘着剤組成物、及び該粘着剤層を有する粘着シートを提供する。
【解決手段】本発明における粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体と、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、5質量部超40質量部未満の、アルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートと、架橋剤と、を含み、単官能(メタ)アクリレートの含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、10質量部未満である。
前記アルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートは、アルキレンオキシド変性2官能(メタ)アクリレートである請求項1または請求項2に記載の粘着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質を複数種併用する場合には、特に断らない限り、その成分に該当する複数種の物質の合計量を意味する。
更に(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリレートに類する(メタ)アクリル系共重合体等の語句も同様の意味である。
【0016】
〔粘着剤組成物〕
本発明における粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体と、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、5質量部超40質量部未満の、アルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートと、架橋剤と、を含み、単官能(メタ)アクリレートの含有量が、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、10質量部未満である。
【0017】
本発明における粘着剤組成物の用途としては、例えば、タッチパネル用が挙げられ、ガラス基板、透明導電性フィルム、意匠フィルムなどの複数の部材を貼着してタッチパネルを構成する際に用いられる。
【0018】
本発明における粘着剤組成物は、熱硬化するアクリル系共重合体と、紫外線硬化する所定量の特定の単量体を含んでいる。そのため、剥離シート上の粘着剤組成物を熱硬化するのみでは紫外線硬化する特定の単量体が硬化せず、柔らかい粘着剤層を形成することができる。粘着剤層が柔らかいため、段差を有する部材に粘着剤層を転写した際に、段差に追従できるため、段差追従性を確保することができる。転写後、粘着剤層に紫外線を照射して硬化することで、硬化した粘着剤層が高弾性を示すため、ガス浮き防止性に優れた粘着剤層を形成することができる。
【0019】
また、本発明における粘着剤組成物では、アルキレンオキシド変性された親水性が高い変性多官能(メタ)アクリレートを使用している。そのため、粘着剤層を高温高湿環境下にさらした場合に、水分が親水性の高い樹脂と相溶するため、粘着剤層が白化せず、耐湿熱白化性に優れる。さらに、この変性多官能(メタ)アクリレートは、紫外線を照射して硬化すると高弾性を示し、凝集力に優れている。そのため、紫外線照射後の粘着剤層は、アウトガスの発生を抑制し、ガス浮き防止性に優れる。さらに、単官能(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して10質量部未満であるため、粘着剤層は高弾性を示し、ガス浮き防止性が向上する。
【0020】
((メタ)アクリル系共重合体)
本発明における粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体を含む。ここで(メタ)アクリル系共重合体とは、共重合体を構成する全単量体成分の50質量%以上、好ましくは90質量%以上が(メタ)アクリル単量体である共重合体をいう。
【0021】
水酸基を有する単量体としては、例えば、水酸基及びエチレン性不飽和結合基を有する単量体を挙げることができる。水酸基を有する単量体として具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基を有する(メタ)アクリルアミド化合物;アリルアルコール、メタリルアルコール等の不飽和アルコール;などを挙げることができる。
【0022】
中でも、その他の単量体との相溶性及び共重合性が良好である点、並びに架橋剤との架橋反応が良好である点から、水酸基を有する単量体としては、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートまたは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートであることが特に好ましい。
【0023】
(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体以外の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。水酸基を有する単量体以外の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートとして具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜18の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート及びこれらの誘導体で水酸基を有さないものを挙げることができる。中でも、疎水性モノマーを含むことで樹脂内部への水分流入を防げることで湿熱白化性が良化する観点から、炭素数8〜18の直鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことが好ましく、n−ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)に由来する構成単位を含むことがさらに好ましい。
【0024】
また、水酸基を有する単量体以外の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート以外に、以下に記載のものが挙げられる。つまり、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の環状基を有する(メタ)アクリレート;飽和脂肪酸ビニルエステル、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、「バーサチック酸ビニル」(商品名、ネオデカン酸ビニル)等の脂肪族ビニル単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノビニル単量体;ジメチルマレート、ジ−n−ブチルマレート、ジ−2−エチルヘキシルマレート、ジ−n−オクチルマレート、ジメチルフマレート、ジ−n−ブチルフマレート、ジ−2−エチルヘキシルフマレート、ジ−n−オクチルフマレート等のマレイン酸若しくはフマル酸のジエステル単量体;などを挙げることができる。
【0025】
(メタ)アクリル系共重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、(メタ)アクリル系共重合体全質量に対して、5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、15質量%以上35質量%以下であることが好ましく、20質量%であることがもっとも好ましい。水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率を増加させることで、耐湿熱白化性を向上させることができる。
また、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率を40質量%以下にすることで、形成される粘着剤層の親水性が高くなりすぎず、高湿環境下における粘着剤層の水分吸収が抑制される。これにより、透明導電性フィルムに印刷された電極や、他の金属製部材の腐食が抑制されるため、本発明における粘着剤組成物をタッチパネル用に好適に用いることができる。
【0026】
また、本発明の(メタ)アクリル系共重合体は、酸性成分を含まないか、実質的に含まないことが好ましい。酸性成分を含まないか、実質的に含まないことで、透明導電性フィルムに印刷された電極や、他の金属製部材の腐食が抑制されるため、本発明における粘着剤組成物をタッチパネル用に好適に用いることができる。なお、実質的に含まないとは、不可避的に混入する酸性成分の存在を許容することを意味する。
【0027】
本発明における粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、20万以上100万以下であることが好ましく、30万以上80万以下であることがより好ましく、40万以上60万以下であることがもっとも好ましい。(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量がこの数値範囲に含まれることがガス浮き防止性、段差追従性の観点から好ましい。
【0028】
また、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)は、20以下であることが好ましく、3以上15以下の範囲であることがより好ましく、5以上8以下であることがもっとも好ましい。分散度(Mw/Mn)の値がこの数値範囲に含まれることがガス浮き防止性、段差追従性の観点から好ましい。
【0029】
なお、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、下記の(1)〜(3)に従って方法により測定される値である。
【0030】
(1)(メタ)アクリル系共重合体の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で2分間乾燥し、フィルム状の(メタ)アクリル系共重合体を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の(メタ)アクリル系共重合体とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレン換算値として、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定する。
【0031】
(条件)
GPC :HLC−8220 GPC〔東ソー(株)製〕
カラム :TSK−GEL GMHXL 4本使用
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流速 :0.6mL/分
カラム温度:40℃
【0032】
(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)としては、−60℃以上−20℃以下の範囲が好ましく、−50℃以上−25℃以下の範囲がより好ましい。Tgが−60℃以上であると、最適な弾性率に調整することができ、耐久性に優れる。また、Tgが−20℃以下であると、粘性を極端に損なうことなくタック性、貼合適正に優れる。
さらに、Tgが−45℃以上−25℃以下の範囲であると、ガス浮き防止性に優れるので、特に好ましい。
【0033】
[ガラス転移温度(Tg)の算出]
本明細書において、(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、以下の計算により求められるモル平均ガラス転移温度(molTg)である。
下記式中のTg
1、Tg
2、・・・・・及びTg
nは、単量体1、単量体2、・・・・・及び単量体nそれぞれの単独重合体のガラス転移温度であり、絶対温度(K)に換算し算出する。m
1、m
2、・・・・・及びm
nは、それぞれの単量体のモル分率である。
【0035】
なお、ここでいう「単独重合体のガラス転移温度(Tg)」は、その単量体の単独重合体を、示差走査熱量測定装置(DSC)(セイコーインスツルメンツ社製、EXSTAR6000)を用い、窒素気流中、測定試料10mmg、昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られたDSCカーブの変曲点をTgとしたものである。
【0036】
代表的な単量体の「単独重合体のガラス転移温度(Tg)」は、メチルアクリレート5℃、エチルアクリレート−27℃、n−ブチルアクリレート−57℃、2−エチルヘキシルアクリレート−76℃、2−ヒドロキシエチルアクリレート−15℃、t−ブチルアクリレート31℃、ラウリルアクリレート15℃である。
【0037】
粘着剤組成物における(メタ)アクリル系共重合体の含有率は、目的等に応じて適宜選択することができる。(メタ)アクリル系共重合体の含有率は、粘着剤組成物の固形分総質量中に、60質量%以上90質量%以下であることが好ましく、70質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、75質量%以上85質量%以下であることが更に好ましい。なお、固形分総質量とは粘着剤組成物から、溶剤等の揮発性成分を除いた残渣の総質量を意味する。
【0038】
(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル系共重合体の構成単位を形成可能な単量体を重合することで製造することができる。上記共重合体の重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法などの公知の方法から適宜選択することができる。重合により得られた共重合体を用いて本発明の粘着剤組成物を製造するに当り、製造が比較的簡単に行えることから、(メタ)アクリル系共重合体は溶液重合法により重合することが好ましい。
【0039】
溶液重合法は、一般に、重合槽内に所定の有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中、有機溶剤の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させることにより行なうなどの公知の方法を使用することができる。
【0040】
なお、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量及び分散度は、重合温度、時間、溶剤量、重合開始剤の種類及び量により容易に調節することができる。
【0041】
(メタ)アクリル系共重合体の重合に用いられる重合用の有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、テトラリン、デカリン、芳香族ナフサ等の芳香族炭化水素化合物;n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、テレピン油等の脂肪系もしくは脂環族系炭化水素化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸2−ヒドロキシエチル、酢酸2−ブトキシエチル、酢酸3−メトキシブチル、安息香酸メチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン化合物;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル化合物;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール化合物;などを挙げることができる。これらの有機溶剤はそれぞれ1種単独でも、2種以上混合して用いることができる。
【0042】
重合開始剤としては、通常の溶液重合法で使用できる有機過酸化物、アゾ化合物などを使用することが可能である。有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシビバレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−α−クミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンなどが挙げられる。アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルなどが挙げられる。
【0043】
また、(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、連鎖移動剤を必要に応じて使用してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸;シアノ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル化合物;ブロモ酢酸;ブロモ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル化合物;アントラセン、フェナントレン、フルオレン、9−フェニルフルオレン等の芳香族化合物;p−ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p−ニトロ安息香酸、p−ニトロフェノール、p−ニトロトルエン等の芳香族ニトロ化合物;ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラメチル−p−ベンゾキノン等のベンゾキノン誘導体;トリブチルボラン等のボラン誘導体;四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2−テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、3−クロロ−1−プロペン等のハロゲン化炭化水素化合物;クロラール、フラルデヒド等のアルデヒド化合物:炭素数1〜18のアルキルメルカプタン化合物;チオフェノール、トルエンメルカプタン等の芳香族メルカプタン化合物;メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1〜10のアルキルエステル化合物;炭素数1〜12のヒドロキシアルキルメルカプタン化合物;ピネン、テルピノレン等のテルペン化合物;などが挙げられる。
【0044】
重合温度としては、一般に約30℃〜180℃の範囲である。
(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、重合反応で得られた重合物を精製する精製工程を設けてもよい。これにより、溶液重合法などで得られた重合物中に未反応の単量体が含まれる場合は、この単量体を除くことができる。精製工程としては通常用いられる精製方法から適宜選択することができる。例えば、メタノールなどによる再沈澱法で精製することが可能である。
【0045】
(アルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレート)
本発明における粘着剤組成物は、アルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートを含む。本発明における粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、5質量部超40質量部未満のアルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートを含む。
また、本発明における粘着剤組成物は、所定量のアルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートを含むため、段差追従性、ガス浮き防止性に優れる。
また、本発明における粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、40質量部未満のアルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートを含んでいるため、紫外線照射後の粘着力を維持、または向上させることができ、タッチパネルの部材同士が剥がれないように強固に貼着することができる。
【0046】
アルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートとしては、1分子中に重合性不飽和基を2つ以上有するものであればよく、例えば、アルキレンオキシド変性2官能(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド変性3官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。特に、アルキレンオキシド変性2官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。アルキレンオキシド変性2官能(メタ)アクリレートを用いることにより、本発明における粘着剤組成物は、ガス浮き防止性により優れる粘着剤層を形成することができる。
【0047】
アルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、7質量部以上35質量部以下含まれることが好ましく、10質量部以上30質量部以下含まれることがより好ましく、15質量部以上25質量部以下含まれることがさらに好ましく、20質量部含まれることがもっとも好ましい。
【0048】
アルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートのアルキレンオキシド付加モル数は、1モル以上8モル以下であることが好ましく、3モル以上8モル以下であることがより好ましく、4モル以上5モル以下であることがさらに好ましい。付加モル数が3モル以上であると、親水性がより向上し、耐湿熱白化性に優れる。付加モル数が8モル以下であると、(メタ)アクリル系共重合体との相溶性がよく、耐湿熱白化性に優れる。
【0049】
アルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートとしては、以下の一般式(I)で表される化合物であることが好ましい。
【0051】
(前記一般式(I)において、R
1及びR
2は、各々独立して、メチル基または水素原子を表し、R
3は、炭素数が2〜6の直鎖または分岐のアルキレン基を表し、nは1以上8以下である。)
【0052】
アルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートが、上記一般式(I)で表される化合物である場合、親水性が高く、耐湿熱白化性に優れる。また、アルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートが、上記一般式(I)で表される化合物である場合、紫外線硬化後の粘着力を向上することができるため、タッチパネルの部材同士が剥がれないように強固に貼着することができる。
【0053】
前記一般式(I)において、R
1及びR
2は、各々独立して、メチル基または水素原子を表す。中でも、R
1及びR
2としては、ともに水素原子であることが好ましい。R
3は、炭素数が2〜6の直鎖または分岐のアルキレン基を表し、例えば、エチレン基、メチルエチレン基、プロピレン基、メチルプロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などが挙げられる。中でも、R
3としては、エチレン基またはメチルエチレン基であることが好ましい。
【0054】
前記一般式(I)で表されるアルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートは、nは3以上8以下であることが好ましく、4以上5以下であることがさらに好ましい。nが3以上であることにより、親水性が高く、また、nが8以下であることにより、(メタ)アクリル系共重合体との相溶性が高く、その結果、耐湿熱白化性により優れる。
【0055】
さらに、アルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートとしては、以下の一般式(II)で表される化合物であることがより好ましい。
【0057】
(前記一般式(II)において、R
1及びR
2は、各々独立して、メチル基または水素原子を表し、R
4は、炭素数が1〜3の直鎖もしくは分岐のアルキル基または水素原子を表し、nは1以上8以下である。)
【0058】
アルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートが、上記一般式(II)で表される化合物である場合、親水性がより高く、耐湿熱白化性により優れる。また、特に上記一般式(II)で表される化合物は、紫外線硬化後の粘着力をより向上することができ、タッチパネルの部材同士が剥がれないようにより強固に貼着することができる。
【0059】
前記一般式(II)において、R
1及びR
2は、各々独立して、メチル基または水素原子を表す。中でも、R
1及びR
2としては、ともに水素原子であることが好ましい。また、R
4は、炭素数が1〜3の直鎖もしくは分岐のアルキル基または水素原子を表す。中でも、R
4としては、メチル基または水素原子であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
【0060】
前記一般式(II)で表されるアルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートは、nは3以上8以下であることが好ましく、4以上5以下であることがさらに好ましい。nが3以上であることにより、親水性がより高く、また、nが8以下であることにより、(メタ)アクリル系共重合体との相溶性がより高く、その結果、耐湿熱白化性にさらに優れる。
【0061】
アルキレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートとしては、エチレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレート及びプロピレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートの少なくとも一方であることが粘着剤層の凝集力の観点及びガス浮き防止性の観点から好ましい。
【0062】
エチレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートとしては、エチレンオキシド変性2官能(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性3官能(メタ)アクリレートなどが挙げられ、プロピレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレートとしては、プロピレンオキシド変性2官能(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性3官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。特に、エチレンオキシド変性2官能(メタ)アクリレートまたはプロピレンオキシド変性2官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。これらの変性2官能(メタ)アクリレートを用いることにより、本発明における粘着剤組成物は、ガス浮き防止性により優れる粘着剤層を形成することができる。
【0063】
エチレンオキシド変性2官能(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールEO変性ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジ(トリ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレートなどが好ましい。
【0064】
エチレンオキシド変性3官能(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレートなどが好ましい。
【0065】
プロピレンオキシド変性2官能(メタ)アクリレートとしては、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレートなどが好ましい。
【0066】
プロピレンオキシド変性3官能(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパンPO付加トリ(メタ)アクリレートなどが好ましい。
【0067】
4官能以上の変性多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、ペンタエリスリトールEO変性テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールPO変性テトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0068】
(単官能(メタ)アクリレート)
本発明における粘着剤組成物では、単官能(メタ)アクリレートの含有量は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、10質量部未満である。
【0069】
単官能(メタ)アクリレートとしては、1分子中に重合性不飽和基を1つ有するものであれば限定されず、公知の単官能(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0070】
単官能(メタ)アクリレートとしては、25℃における蒸気圧が300Pa以下であるものが好ましく、200Pa以下であるものがより好ましく、100Pa以下であるものがさらに好ましい。なお、単官能(メタ)アクリレートの蒸気圧は、JIS K2258−1「原油及び石油製品−蒸気圧の求め方」により測定できる。
【0071】
さらに、単官能(メタ)アクリレートは、融点が25℃以下であることが好ましい。これにより、本発明における粘着剤組成物を用いて形成される粘着剤層の透明性が向上する。
【0072】
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜18の直鎖または分枝のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート及びこれらの誘導体が挙げられ、特にイソボルニル(メタ)アクリレートが粘着剤層の凝集力の観点及びガス浮き防止性の観点から好ましい。
【0073】
単官能(メタ)アクリレートは、ガス浮き防止性を良好にするために、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、8質量部以下含まれることが好ましく、6質量部以下含まれることがより好ましく、5質量部以下含まれることがさらに好ましい。また、単官能(メタ)アクリレートは、粘着剤組成物に含まれない(含有量が0質量部である)ことがもっとも好ましい。
【0074】
(架橋剤)
本発明における粘着剤組成物は、架橋剤を含む。架橋剤としては、特に限定されず、ポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリアジリジン化合物、メラミンホルムアルデヒド縮合物、金属塩、金属キレート化合物等を挙げることができる。これら架橋剤は、それぞれ1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0075】
これら架橋剤のうち、架橋反応の反応性の観点及び架橋後の環境変化に対する安定性の観点から、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0076】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物等の脂肪族または脂環族ポリイソシアネート化合物;それらポリイソシアネート化合物の2量体もしくは3量体;これらポリイソシアネート化合物と、トリメチロールプロパンなどのポリオール化合物とのアダクト体などを挙げることができる。この中では、ヘキサメチレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートの2量体、3量体並びにアダクト体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体が特に好ましい。これらのポリイソシアネート化合物は、1種単独でまたは2種類以上混合して使用することができる。
【0077】
ポリイソシアネート化合物は、例えば、「コロネートHX」、「コロネートHL−S」、「コロネート2234」「アクアネート200」、「アクアネート210」〔以上、日本ポリウレタン株式会社製〕、「デスモジュールN3300」、「デスモジュールN3400」〔以上、住友バイエルウレタン株式会社製〕、「デュラネートE−405−80T」、「デュラネート24A−100」、「デュラネートTSE−100」〔以上、旭化成工業株式会社製〕、「タケネートD−110N」、「タケネートD−120N」、「タケネートM−631N」「MT−オレスターNP1200」〔以上、三井武田ケミカル株式会社製〕などの商品名により市販されているものを好適に使用することができる。
【0078】
架橋剤は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.05質量部以上1.0質量部以下含まれることが、ガス浮き防止性及び段差追従性の観点から好ましく、0.1質量部以上0.5質量部以下含まれることがより好ましく、0.15質量部以上0.3質量部以下含まれることがさらに好ましい。
【0079】
本発明における粘着剤組成物は、架橋剤の他に、初期硬化速度を早くする観点から架橋触媒をさらに含むことが好ましい。架橋触媒としては、例えばジブチル錫ラウリレート、ジオクチル錫ラウリレート等の有機錫化合物、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)等の有機ジルコニウム化合物等を挙げることができる。
【0080】
本発明における粘着剤組成物が架橋触媒を含む場合は、さらにキレート剤を含むことが好ましい。キレート剤として例えば、β−ジケトン類やβ−ケトエステル類等を挙げることができる。β−ジケトン類やβ−ケトエステル類としては例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル等を挙げることができる。これらのキレート剤のうち、粘着剤組成物のポットライフと反応速度のバランスが良好なことから、アセチルアセトンが好ましい。
【0081】
(光重合開始剤)
本発明における粘着剤組成物は、光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、紫外線の照射により変性多官能(メタ)アクリレートの重合反応を開始させ得るものであれば特に限定されない。
【0082】
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤、アミン系開始剤などが挙げられる。アセトフェノン系開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。ベンゾインエーテル系開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルなどが挙げられる。ベンゾフェノン系開始剤としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチルなどが挙げられる。ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンなどが挙げられる。チオキサントン系開始剤としては、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントンなどが挙げられる。アミン系開始剤としては、トリエタノールアミン、4−ジメチル安息香酸エチルなどが挙げられる。光重合開始剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
光重合開始剤の含有率は、ガス浮き防止性の観点から、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下含まれることが好ましく、0.2質量部以上10質量部以下含まれることがより好ましく、0.3質量部以上5質量部以下がさらに好ましい。
【0084】
また、本発明における粘着剤組成物は、ガラス基板、透明導電性フィルム、意匠フィルムなどに対する塗布性向上のために溶剤が添加されていてもよい。
【0085】
溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素類、ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパンなどのハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸エチルなどのエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのポリオール類、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
【0086】
(その他の成分)
本発明における粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体、変性多官能(メタ)アクリレート、単官能(メタ)アクリレート、光重合開始剤及び架橋剤の他に、必要に応じて、耐候性安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、剥離助剤、染料、顔料、無機充填剤、界面活性剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物などの光安定剤等を適宜含有してもよい。
【0087】
〔粘着シート〕
本発明における粘着シートは、上述した粘着剤組成物に熱硬化した粘着剤層を有する。粘着シートとしては、使用時に剥離される保護用シート(剥離シート)上に粘着剤層が形成されたもの、粘着剤層の両面が保護用シートに挟持されたものなどが挙げられる。
【0088】
保護用シートとしては、粘着剤層を支持し、かつ粘着剤層との剥離が行なえる構成であれば特に限定されない。保護用シートとしては、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、トリアセチルセルロースなどのプラスチックフィルムが挙げられる。この中でも、ポリエステルのフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートのフィルムがより好ましい。さらに、保護用シートは、粘着剤層との間の剥離が容易に行なえるように、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン等の離型剤で離型処理が施されていてもよい。
【0089】
粘着シートは、本発明の粘着剤組成物を保護用シート上に付与し、乾燥させた後、粘着剤組成物からなる粘着剤層を架橋反応することで得られる。粘着剤組成物を保護用シートに付与する方法としては、液体の粘着剤組成物を用いた浸漬法、塗布法、インクジェット法などが挙げられる。中でも、塗布法によることが好ましい。上述したように、粘着剤層の保護用シートが設けられていない面に、別の保護用シートを貼り付けて、粘着剤層の両面が保護用シートに挟持された粘着シートとしてもよい。
【0090】
保護用シート(剥離シート)上に付与された粘着剤組成物は、乾燥させて液体成分を除去した後、所定の温度湿度環境下で養生すればよい。これにより、粘着剤組成物からなる粘着剤層が硬化(熱硬化)され、本発明における粘着シートが得られる。養生の条件としては、例えば架橋剤としてポリイソシアネート化合物を使用した場合、温度20〜45℃/相対湿度40〜60%、3〜5日間である。
【0091】
本発明における粘着剤組成物には、変性多官能(メタ)アクリレートが含まれており、さらに、光重合開始剤が含まれている場合がある。このとき、粘着剤組成物を保護用シートに付与した後、粘着剤組成物を熱硬化させて粘着剤層を形成しても、光重合開始剤による変性多官能(メタ)アクリレートの重合反応は進行しない、あるいは、わずかしか進行しない。したがって、硬化された粘着剤層には、光重合開始剤及び変性多官能(メタ)アクリレートが残存しており、さらに紫外線を照射することにより、粘着剤層をさらに硬化(紫外線硬化)させることができる。
【0092】
紫外線照射による硬化前では、熱硬化された粘着剤層は、所定量の変性多官能(メタ)アクリレートを含んでいるため、保護用シート上に柔らかい粘着剤層を形成できる。また、粘着剤層が柔らかいため、段差を有するフィルムや部材に粘着剤層を転写しても、その段差に追従することができる。さらに、粘着剤層の転写後、粘着剤層に紫外線を照射して硬化させた場合、粘着剤層は高弾性を示すため、優れたガス浮き防止性が得られる。
【0093】
また、熱硬化された粘着剤層には、単官能(メタ)アクリレートが含まれているが、その含有量は少量である。したがって、この粘着剤層を紫外線照射で硬化しても、単官能(メタ)アクリレートをより多く含む粘着剤層と比較して粘着剤層が高い弾性を示し、ガス浮き防止性に優れている。
【0094】
また、本発明における粘着剤組成物は変性多官能(メタ)アクリレートを含んでいるため、加熱後に紫外線を照射して硬化した粘着剤層は、加熱して硬化した粘着剤層の粘着力を維持する、あるいは、それよりも粘着力が高くなる。つまり、変性多官能(メタ)アクリレートを含む粘着剤層は、紫外線を照射して硬化することにより、粘着力を維持、または向上させることができる。すなわち、タッチパネルの部材同士が剥がれないように強固に貼着することができる。
【0095】
粘着剤層の厚さとしては、特に制限されるものではなく、例えば20μm〜300μmの範囲で用途に応じて選択される。
【0096】
(ゲル分率)
熱硬化及び紫外線硬化後の粘着剤層のゲル分率(架橋度)は、段差追従性とガス浮き防止性の観点から、50質量%以上99質量%以下であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。ゲル分率がこの範囲にあることにより、粘着剤層の凝集力が高くなり、ガス浮き防止性に優れる。本明細書において、ゲル分率とは、熱硬化及び紫外線硬化後の試料(粘着剤層)を特定の溶剤で溶かしたときに、溶けずに残存しているゲル部分の質量と、溶剤で溶かす前の質量との比(百分率)をいう。
【0097】
(ゲル分率の測定方法)
ゲル分率は、下記(1)〜(5)に示す方法により測定するものである。
(1)粘着剤組成物の溶液を剥離紙上に塗布し、室温で風乾30分後、100℃で5分間本乾燥し、フィルム状の粘着剤層を形成する。
(2)上記粘着剤層を、所定の温度湿度環境下で養生(架橋剤がポリイソシアネート化合物の場合、粘着剤層を23℃、相対湿度50%の環境下で4日間養生)して熱硬化が十分に進行した後、粘着剤層に500mJ/cm
2の紫外線を照射する。なお、熱硬化が十分に進行したかどうかは、ゲル分の経時変化がなくなった否かで判断することができ、例えば、養生4日目のゲル分と、5日目のゲル分と、が同じ値(例えば60%)であった場合、養生4日目までに十分に熱硬化が進んだと判断することができる。
(3)精密天秤にて質量を秤量した250メッシュ、100mm×100mmの金網に、75mm×75mmにカットした上記フィルム状の粘着剤層を貼付し、デシケーター内で1時間乾燥する。その後、精密天秤にて質量を秤量する。
(4)秤量した試料を、粘着剤層が溶剤浸漬時に漏れ出ないように金網で包み込み、溶剤(酢酸エチル)に72時間静置浸漬する。
(5)溶剤浸漬後、金網を乾燥させ、精密天秤にて質量を秤量した。浸漬前と浸漬後の質量変化から下式によりゲル分率を算出する。
ゲル分率[質量%] = 100−[(A−B)/(C−B)]×100
式中、Aは溶剤浸漬後の金網と粘着剤層の合計質量(g)を表し、Bは金網の質量(g)を表し、Cは溶剤浸漬前の金網と粘着剤層の合計質量(g)を表す。
【0098】
加熱して硬化した後の粘着剤層に紫外線を照射して、粘着剤層をさらに硬化させてもよい。粘着剤層をさらに硬化する際は、例えば、粘着剤層に500mJ/cm
2の紫外線を照射すればよい。
【実施例】
【0099】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0100】
〔製造例1〕
−アクリル系共重合体の調製−
攪拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応装置に、酢酸エチル350部(重合用有機溶剤)を仕込んだ。次いで、別の容器に、ラウリルアクリレート(LA)225質量部(アクリル系共重合体全質量に対して15質量%)、n−ブチルアクリレート(BA)570質量部(同じく38質量%)、メチルアクリレート(MA)405質量部(同じく27質量%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)300質量部(同じく20質量%)からなる単量体混合物1500質量部を用意し、このうち300質量部(単量体混合物の20質量%)を反応装置に仕込み、加熱し、還流温度で10分間還流を行った。
次いで、還流温度条件下で、上記単量体混合物の残り1200部(単量体混合物の80質量%)と酢酸エチル32部と2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.12部とを、120分間にわたって逐次滴下し、更に30分間重合反応を行った。
その後、酢酸エチル15部とt−ブチルパーオキシピバレート0.13部の混合液を、40分間にわたって逐次滴下し、更に150分間重合反応を行った。
反応終了後、酢酸エチルにて固形分42%に希釈し、アクリル系共重合体の溶液(製造例1)を得た。
【0101】
得られたアクリル系共重合体において、重量平均分子量は50万、モル平均ガラス転移温度(molTg)は−30℃であった。なお、重量平均分子量及びモル平均ガラス転移温度は、既述の方法により測定した。
【0102】
〔実施例1〕
−粘着剤組成物の調製−
製造例1のアクリル系共重合体(Mw=50万、Tg=−30℃)の溶液238.1質量部(固形分として100質量部)に対して、変性多官能(メタ)アクリレートとしてビスコート♯335HP(テトラエチレングリコールジアクリレート(4EGDA)、大阪有機化学工業株式会社製)を固形分として10質量部、架橋剤としてD−110N(三井武田ケミカル株式会社製)を固形分として0.2質量部、光重合開始剤としてイルガキュア184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、BASF社製)を固形分として0.3質量部加えて混合し、粘着剤組成物を調製した。
【0103】
−粘着シートの作製−
調製した粘着剤組成物をPETフィルムに塗布した後、100℃×2分間の乾燥条件で乾燥し、温度23℃/相対湿度50%の環境下で4日間養生して粘着シートを作製した。加熱処理後の粘着剤層の厚さは50μmであった。
【0104】
−評価結果−
以下、粘着シート上に形成された粘着剤層のゲル分率、耐湿熱白化性、段差追従性、ガス浮き防止性及び粘着力を評価した。結果は表2に示すとおりである。
【0105】
(ゲル分率)
ゲル分率は、下記(1)〜(5)に示す方法により測定した。
(1)粘着剤組成物の溶液を剥離紙上に塗布し、室温で風乾30分後、100℃で5分間本乾燥し、フィルム状の粘着剤層を形成する。
(2)上記粘着剤層を23℃、相対湿度50%の環境下で4日間養生する。その後、粘着剤層に500mJ/cm
2の紫外線を照射する。
(3)精密天秤にて質量を秤量した250メッシュ、100mm×100mmの金網に、75mm×75mmにカットした上記フィルム状の粘着剤層を貼付し、デシケーター内で1時間乾燥する。その後、精密天秤にて質量を秤量する。
(4)秤量した試料を、粘着剤層が溶剤浸漬時に漏れ出ないように金網で包み込み、溶剤(酢酸エチル)に72時間静置浸漬する。
(5)溶剤浸漬後、金網を乾燥させ、精密天秤にて質量を秤量した。浸漬前と浸漬後の質量変化から下式によりゲル分率を算出する。
ゲル分率[質量%] = 100−[(A−B)/(C−B)]×100
式中、Aは溶剤浸漬後の金網と粘着剤層の合計質量(g)を表し、Bは金網の質量(g)を表し、Cは溶剤浸漬前の金網と粘着剤層の合計質量(g)を表す。
【0106】
(耐湿熱白化性)
作製した粘着シートから幅80mm×長さ60mmのサイズに切り取り試験用粘着シートとした。次いで、500mJ/cm
2の条件で紫外線を照射して粘着剤層を硬化させた後、粘着剤層を厚さ1.8mmのガラス板(松浪硝子工業社製、光学ソーダガラス)に重ね、卓上ラミネート機を用いて圧着し、試験用試料とし試験投入前HAZEを測定した。その後、85℃−90%RHの環境下で250時間放置し、23℃−50%RHにて10分間冷却した後HAZE(試験投入後HAZE)を測定した。なお、HAZEは日本電色株式会社製のNDH 5000SPを用いて測定した。試験投入後HAZEより試験投入前HAZEを引いた値(ΔH)を求め、下記評価基準に従って耐湿熱白化性を評価した。
<評価基準>
A:ΔH=1.0未満 B:ΔH=1.0以上2.0未満 C:ΔH=2.0以上
【0107】
(段差追従性)
30μmの段差を有する部材(PETフィルムに、インクをスクリーン印刷し、膜厚30μmの段差を形成したもの)に対して、膜厚50μmの粘着剤層を有する粘着シートを貼り合せた。そして、粘着シートを貼り合わせた部材にオートクレーブ処理(5気圧、50℃/20分)を行なった後、500mJ/cm
2の条件で紫外線を照射して粘着剤層を硬化させた。次に、部材を85℃の熱風乾燥機に1時間投入し、気泡の連なる距離を測定し、段差追従性の値を求めた。評価基準は以下の通りである。
<評価基準>
A:10mm未満 B:10mm以上15mm未満 C:15mm以上
【0108】
(ガス浮き防止性)
作製した粘着シートの粘着剤層をPC(ポリカーボネート基材)に貼り付け、オートクレーブ処理(5気圧、40℃/20分)を行なった後、段差追従性と同様の条件で紫外線を照射して粘着剤層を硬化させた。次に、粘着剤層を貼り付けたPCを85℃の熱風乾燥機に24時間投入した。その後、PETフィルム側から目視にて粘着剤層を観察し、粘着剤層に認められた気泡の個数を数え、下記評価基準に従ってガス浮き防止性を評価した。
<評価基準>
A:気泡0個 B:気泡1〜3個 C:気泡4個以上
【0109】
(粘着力)
UV硬化前(加熱処理後)の粘着剤層の粘着力、及び、UV硬化後の粘着剤層の粘着力を評価した。まず、作製した粘着シートの粘着剤層を易接着処理が行われている100μmPETフィルムに貼り合わせを行った。この粘着シートを25mm×150mmにカットし、シートをガラス板表面にJIS Z−0237の方法に従って圧着して試験サンプルとした。この試験サンプルを23℃、50%RHの条件下で24時間放置した後、180゜剥離における粘着力を剥離速度300mm/minでUV硬化前の粘着剤層の剥離強度(N/inch)を測定した。
【0110】
また、作製した粘着シートの粘着剤層に500mJ/cm
2の条件で紫外線を照射して粘着剤層を硬化させた。その後、易接着処理が行われている100μmPETフィルムに貼り合わせを行った。この粘着シートを25mm×150mmにカットし、シートをガラス板表面にJIS Z−0237の方法に従って圧着して試験サンプルとした。このサンプルを23℃、50%RHの条件下で24時間放置した後、180゜剥離における接着力を剥離速度300mm/minで紫外線硬化後の粘着剤層の剥離強度(N/inch)を測定し、下記評価基準に従ってUV硬化後の粘着力を評価した。
<評価基準>
A:粘着力20N/inch以上 B:粘着力15N/inch以上20N/inch未満 C:粘着力15N/inch未満
【0111】
〔実施例2〜6〕
表2に示すように、粘着剤組成物の成分を変更した以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物の調製、及び粘着シートの作製を行ない、粘着シート上に形成された粘着剤層のゲル分率、耐湿熱白化性、段差追従性、ガス浮き防止性及び粘着力を評価した。結果は表2に示すとおりである。
【0112】
〔実施例7〕
表2に示すように、粘着剤組成物に含まれる変性多官能(メタ)アクリレートをプロピレンオキシド変性多官能(メタ)アクリレート(3PGDA)に変更した以外は、実施例2と同様にして、粘着剤組成物の調製、及び粘着シートの作製を行ない、各評価を行なった。結果は表2に示すとおりである。
【0113】
〔実施例8〜10〕
実施例8〜10では、粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系共重合体を変更した以外は、実施例2と同様にして、粘着剤組成物の調製、及び粘着シートの作製を行なった。各実施例の(メタ)アクリル系共重合体の組成は表1に示すとおりである。また、各評価の結果は、表2に示すとおりである。
【0114】
【表1】
【0115】
〔比較例1〜7〕
表2に示すように、粘着剤組成物の成分を変更した以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物の調製、及び粘着シートの作製を行ない、粘着シート上に形成された粘着剤層のゲル分率、耐湿熱白化性、段差追従性、ガス浮き防止性及び粘着力を評価した。結果は表2に示すとおりである。
【0116】
【表2】
【0117】
なお、表2に示す多官能アクリレートは以下の通りである。
IBXA:イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、EOモル数0、官能基数1)
4EGDA:テトラエチレングリコールジアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、EOモル数4、官能基数2)
3EGDA:トリエチレングリコールジアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、EOモル数3、官能基数2)
TMP6EOA:トリメチロールプロパンEO(6)付加トリアクリレート(共栄社化学株式会社製、EOモル数6、官能基数3)
1、6HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学株式会社製、EOモル数0、官能基数2)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学株式会社製、EOモル数0、官能基数3)
PETIA:ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学株式会社製、EOモル数0、官能基数3)
3PGDA:ポリプロピレングリコールジアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、POモル数3、官能基数2)
【0118】
実施例2、実施例6及び比較例2から、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、単官能(メタ)アクリレートが10質量部未満であれば、ガス浮き防止性に優れていることがわかる。
また、実施例1〜10、比較例1及び比較例6から、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、変性多官能(メタ)アクリレートが5質量部超であれば、段差追従性に優れていることがわかる。
また、実施例1〜10、比較例7から、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、変性多官能(メタ)アクリレートが40質量部未満であれば、ガス浮き防止性及び粘着力に優れていることがわかる。
さらに、実施例1〜10、比較例3〜5から、変性多官能(メタ)アクリレートを用いた場合には、変性していない多官能(メタ)アクリレートを用いた場合よりも耐湿熱白化性に優れていることがわかる。
【0119】
実施例1〜10の結果から、UV硬化前とUV硬化後との粘着剤層の粘着力を比較すると、UV硬化を行なうことにより、粘着力を維持あるいは向上させることがわかる。
また、実施例1、実施例8〜10の結果から、(メタ)アクリル系共重合体の水酸基を有する単量体の比率を増加させて、耐湿熱白化性を向上させることが可能である。