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特開2015-199970銀被覆球状樹脂粒子及びその製造方法並びに銀被覆球状樹脂粒子を用いた導電性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-199970(P2015-199970A)
(43)【公開日】2015年11月12日
(54)【発明の名称】銀被覆球状樹脂粒子及びその製造方法並びに銀被覆球状樹脂粒子を用いた導電性組成物
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/44 20060101AFI20151016BHJP
   C23C 18/22 20060101ALI20151016BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20151016BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20151016BHJP
【FI】
   C23C18/44
   C23C18/22
   H01B5/00 C
   H01B13/00 501Z
   H01B13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-77428(P2014-77428)
(22)【出願日】2014年4月4日
(71)【出願人】
【識別番号】597065282
【氏名又は名称】三菱マテリアル電子化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085372
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 正義
(72)【発明者】
【氏名】影山 謙介
【テーマコード(参考)】
4K022
5G307
【Fターム(参考)】
4K022AA21
4K022AA23
4K022AA24
4K022AA35
4K022BA01
4K022BA21
4K022BA31
4K022BA36
4K022CA02
4K022CA12
4K022DA01
4K022DA03
5G307AA02
(57)【要約】
【課題】球状樹脂粒子と銀の被覆の密着性をより高めて導電性を向上した銀被覆球状樹脂粒子及びその製造方法並びに銀被覆球状樹脂粒子を用いた導電性組成物を提供する。
【解決手段】アクリル系、フェノール系、又は、スチレン系の球状樹脂粒子と、この球状樹脂粒子表面に形成された銀粒子の集合体からなる銀被覆層とを備え、銀被覆層に含まれる銀の量が銀被覆球状樹脂粒子100質量部に対して2〜80質量部である銀被覆球状樹脂粒子である。球状樹脂粒子は粗面化された表面を備え、銀被覆層のうち球状樹脂粒子の表面に接する銀被覆層を構成する銀粒子が球状樹脂粒子の粗面化された表面に入り込んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系、フェノール系、又は、スチレン系の球状樹脂粒子と、この球状樹脂粒子表面に形成された銀粒子の集合体からなる銀被覆層とを備え、
前記銀被覆層に含まれる銀の量が銀被覆球状樹脂粒子100質量部に対して2〜80質量部である銀被覆球状樹脂粒子において、
前記球状樹脂粒子は粗面化された表面を備え、
前記銀被覆層のうち前記球状樹脂粒子の表面に接する銀被覆層を構成する銀粒子が前記球状樹脂粒子の粗面化された表面に入り込んでいることを特徴とする銀被覆球状樹脂粒子。
【請求項2】
前記球状樹脂粒子の表面に入り込む銀粒子の平均粒子径は10〜50nmの範囲にあり、
前記球状樹脂粒子の表面に入り込まない銀粒子の平均粒子径は100〜1000nmの範囲にある請求項1記載の銀被覆球状樹脂粒子。
【請求項3】
アクリル系、フェノール系、又は、スチレン系の球状樹脂粒子を25〜45℃に保温された錫化合物の水溶液に添加する添加工程と、前記錫化合物の水溶液に対して還元剤を用いて無電解めっきを行う工程と、前記錫の無電解めっきの後で銀の無電解めっきを行う工程とを含む銀被覆球状樹脂粒子の製造方法において、
前記添加工程の前に前記球状樹脂粒子の粒子表面を粗面化する粗面化処理工程を有することを特徴とする銀被覆球状樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
前記粗面化処理が前記球状樹脂粒子をプラズマ処理、オゾン処理又は80〜200℃の温度での熱処理である請求項3記載の銀被覆球状樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の銀被覆球状樹脂粒子或いは請求項3又は4記載の方法で製造された銀被覆球状樹脂粒子とバインダーとを混合することにより異方性導電性ペーストを製造する方法。
【請求項6】
請求項1又は2記載の銀被覆球状樹脂粒子或いは請求項3又は4記載の方法で製造された銀被覆球状樹脂粒子とバインダーとを混合することにより異方性導電性フィルム接着剤を製造する方法。
【請求項7】
請求項1又は2記載の銀被覆球状樹脂粒子或いは請求項3又は4記載の方法で製造された銀被覆球状樹脂粒子とバインダーとを混合することにより等方性導電性ペーストを製造する方法。
【請求項8】
請求項1又は2記載の銀被覆球状樹脂粒子或いは請求項3又は4記載の方法で製造された銀被覆球状樹脂粒子とバインダーとを混合することにより等方性導電性フィルム接着剤を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状樹脂粒子と銀の被覆との密着性をより高めて導電性を向上した銀被覆球状樹脂粒子及びその製造方法並びに銀被覆球状樹脂粒子を用いた導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛はんだの各種代替材料として導電性接着剤が検討されている。導電性接着剤は樹脂と金属の導電性粒子が混合したもので、代表的なものとして導電性フィルム及び導電性ペーストがある。導電性フィルム及び導電性ペーストは、応力吸収、低温実装、微小ピッチの導電、絶縁及びフラックスを使用しない等の作業性に優れ、液晶ディスプレイ、タッチパネル基板、キーボード等の電極接続に使用されてきた。このような導電性フィルム、導電性ペーストを更に使いやすくするために、導電性粒子として樹脂粒子に金属を被覆した金属被覆樹脂粒子が開発されている。こうした金属被覆樹脂粒子は製造コストや重量を低減する特長がある。金属被覆樹脂粒子として、樹脂粒子にニッケルを無電解めっきし、その上面に金を被覆した導電性無電解めっき粉体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この導電性無電解めっき粉体は、基材である樹脂粒子にめっき層であるNi又はNi−Au被膜が強固に密着して高い導電性能性を付与するとされている。その一方、樹脂粒子に、錫で触媒化処理(前処理)を行い、次いで銀の無電解めっきを施し密着性を高めた導電性粒子が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−311655号公報(請求項1、段落[0015]、[0016])
【特許文献2】国際公開第2012/023566号(段落[0010]、[0020])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、樹脂粒子にNi−Au複層被膜を形成する場合、樹脂粒子にニッケルの無電解めっきをした後で金の無電解めっきをすることで樹脂粒子と金との密着性を向上させている。しかしこの方法ではニッケルめっき、金めっきをそれぞれしなければならずめっき処理が煩雑である上、材料、基材、時間を要していた。一方、特許文献2の方法では、錫で前処理をして球状樹脂の表面に錫吸着層を設けた後、銀の無電解めっきを施して銀の被覆の密着性を高めているけれども、その密着性が十分でなかった。例えば導電性ペーストを作製するために、ペーストに高いせん断力をかけると、銀めっきが剥がれて導電性の低下を招くおそれがあった。また、異方性接着剤の場合は剥がれためっき片が異物となり、本来絶縁されるべき隙間に入り込み誤動作を起こすおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、球状樹脂粒子と銀の被覆の密着性をより高めて導電性を向上した銀被覆球状樹脂粒子及びその製造方法並びに銀被覆球状樹脂粒子を用いた導電性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、球状樹脂粒子の表面を粗面化し、錫吸着層を形成した後で、銀の無電解めっきを行うと、小径の銀の結晶粒子(以下、単に粒子という。)が粗面化した球状樹脂粒子表面の凹みに入り込んで1層目の被覆が形成され、続いて更に成長した大径の粒子が1層目の被覆の上に積層されて2層目の被覆が形成され、こうした銀被覆に特徴のある銀被覆球状樹脂粒子を作製できることを見出し本発明を完成した。
【0007】
図1に基づいて従来例と比較して、本発明の密着性をより高めたメカニズムについて説明する。図1(b)は、従来の銀被覆球状樹脂粒子200を模式的に示した図である。球状樹脂粒子201の表面はなめらかであり、その表面には凹みを生じない。無電解めっきによって最初に小径の銀の粒子が球状樹脂粒子201の表面に成長する。続いて小径の銀の粒子からなる1層目の銀の層202の上面に無電解めっきで大径の銀の粒子が成長して2層目の銀の層203が形成される。
【0008】
図1(a)は、本発明の銀被覆球状樹脂粒子100を模式的に示した図である。本発明では、球状樹脂粒子の表面を粗面化して凹みを作り、銀を無電解めっきすることで、銀の無電解めっきの初期に結晶する小径の銀の粒子が凹みに入り込んで成長し1層目の銀の層102が形成される。この銀の層102の上面には、球状樹脂粒子の粗面化した表面の凹みより若干浅い凹みが形成される。続いてこの凹みに相応したサイズの銀の粒子が積層される。その後、無電解めっきを続けることで、凹みは平坦化され、凹みのサイズより大きな大径の銀の粒子が積層され、2層目の銀の層103が形成される。上記従来の1層目の銀の層202は球状樹脂粒子201のなめらかな表面に形成されるのに対して、本発明の1層目の銀の層102は球状樹脂粒子101の粗面化された表面に形成される凹みに入り込むため、より密着性に優れ、更に大径の粒子からなる2層目の銀の層103によって隠蔽性が高まり、導電性が向上する。
【0009】
本発明の第1の観点は、アクリル系、フェノール系、又は、スチレン系の球状樹脂粒子と、この球状樹脂粒子表面に形成された銀粒子の集合体からなる銀被覆層とを備え、銀被覆層に含まれる銀の量が銀被覆球状樹脂粒子100質量部に対して2〜80質量部である銀被覆球状樹脂粒子において、球状樹脂粒子は粗面化された表面を備え、銀被覆層のうち球状樹脂粒子の表面に接する銀被覆層を構成する銀粒子が球状樹脂粒子の粗面化された表面に入り込んでいることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、球状樹脂粒子の粗面化された表面に入り込む銀粒子の平均粒子径は10〜50nmの範囲にあり、球状樹脂粒子の粗面化された表面に入り込まない銀粒子の平均粒子径は100〜1000nmの範囲にある銀被覆球状樹脂粒子である。
【0011】
本発明の第3の観点は、アクリル系、フェノール系、又は、スチレン系の球状樹脂粒子を25〜45℃に保温された錫化合物の水溶液に添加する添加工程と、錫化合物の水溶液に対して還元剤を用いて無電解めっきを行う工程と、前記錫の無電解めっきの後で銀の無電解めっきを行う工程とを含む銀被覆球状樹脂粒子の製造方法において、添加工程の前に球状樹脂粒子の粒子表面を粗面化する粗面化処理工程を有する銀被覆球状樹脂粒子の製造方法である。
【0012】
本発明の第4の観点は、第3の観点に基づく発明であって粗面化処理が球状樹脂粒子をプラズマ処理、オゾン処理又は80〜200℃の温度での熱処理である銀被覆球状樹脂粒子の製造方法である。
【0013】
本発明の第5の観点は、第1又は第2の観点に基づく銀被覆球状樹脂粒子或いは第3又は第4の観点に基づく方法で製造された銀被覆球状樹脂粒子とバインダーとを混合することにより異方性導電性ペーストを製造する方法である。
【0014】
本発明の第6の観点は、第1又は第2の観点に基づく銀被覆球状樹脂粒子或いは第3又は第4の観点に基づく方法で製造された銀被覆球状樹脂粒子とバインダーとを混合することにより異方性導電性フィルム接着剤を製造する方法である。
【0015】
本発明の第7の観点は、第1又は第2の観点に基づく銀被覆球状樹脂粒子或いは第3又は第4の観点に基づく方法で製造された銀被覆球状樹脂粒子とバインダーとを混合することにより等方性導電性ペーストを製造する方法である。
【0016】
本発明の第8の観点は、第1又は第2の観点に基づく銀被覆球状樹脂粒子或いは第3又は第4の観点に基づく方法で製造された銀被覆球状樹脂粒子とバインダーとを混合することにより等方性導電性フィルム接着剤を製造する方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の観点の銀被覆球状樹脂粒子では、球状樹脂粒子が粗面化された表面を備え、銀被覆層のうち球状樹脂粒子の表面に接する銀被覆層を構成する銀粒子が球状樹脂粒子の粗面化された表面に入り込んでいるため、銀被覆層の密着性、隠蔽性がより高まり、導電性が向上する。また、銀被覆層の厚さを薄くできるので、製造コストを下げることができる。
【0018】
本発明の第2の観点の銀被覆球状樹脂粒子では、球状樹脂粒子の粗面化された表面に入り込む銀粒子の平均粒子径は10〜50nmの範囲にあり、球状樹脂粒子の粗面化された表面に入り込まない銀粒子の平均粒子径は100〜1000nmの範囲にある。これにより、1層目の銀の層は粗面化により形成された球状樹脂粒子表面の凹みに入り込むため、銀被覆層の密着性がより高まり、2層目の銀の層は表面の隠蔽性に優れることから導電性が向上する。
【0019】
本発明の第3の観点の銀被覆球状樹脂粒子の製造方法では、アクリル系、フェノール系、又は、スチレン系の球状樹脂粒子を25〜45℃に保温された錫化合物の水溶液に添加する添加工程の前に、球状樹脂粒子の粒子表面を粗面化する粗面化処理工程を有するので、銀被覆球状樹脂粒子の製造方法により、銀被覆層の密着性がより高まり、導電性が向上した銀被覆球状樹脂粒子を得ることができる。
【0020】
本発明の第4の観点では粗面化処理が球状樹脂粒子をプラズマ処理、オゾン処理又は80〜200℃の温度での熱処理である銀被覆球状樹脂粒子の製造方法によって球状樹脂粒子の表面を確実に粗面化でき、銀被覆層の密着性がより高まり、導電性が向上した銀被覆球状樹脂粒子を得ることができる。
【0021】
本発明の第5の観点に基づく方法で製造された異方性導電性ペーストは導電性に優れる。
【0022】
本発明の第6の観点に基づく方法で製造された異方性導電性フィルム接着剤は導電性に優れる。
【0023】
本発明の第7の観点に基づく方法で製造された等方性導電性ペーストは導電性に優れる。
【0024】
本発明の第8の観点に基づく方法で製造された等方性導電性フィルム接着剤は導電性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1(a)は本発明の球状樹脂粒子の表面に形成された銀被覆層を、図1(b)は従来の球状樹脂粒子の表面に形成された銀被覆層をそれぞれ模式的に示す図である。
図2図2(a)はスケール50nmで、図2(b)はスケール20nmで実施例の球状樹脂粒子の表面に形成された銀被覆層をそれぞれ示す銀被覆球状樹脂粒子の断面の透過型電子顕微鏡写真図である。
図3図3(a)はスケール50nmで、図3(b)はスケール20nmで比較例の球状樹脂粒子の表面に形成された銀被覆層をそれぞれ示す銀被覆球状樹脂粒子の断面の透過型電子顕微鏡写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に本発明を実施するための形態を説明する。
【0027】
まず、本実施形態の銀被覆球状樹脂粒子について説明する。本実施形態の銀被覆球状樹脂粒子は、球状樹脂粒子と、球状樹脂粒子には粗面化された表面と、粗面化された表面に入り込む銀粒子で被覆された内層の銀被覆層と、外層の銀被覆層と、内層と外層の銀被覆層を具備する。銀被覆球状樹脂粒子100質量部に対して銀は2〜80質量部含まれる。銀粒子は、内層と外層の間に中間層が存在することもある。この場合、内層、中間層、外層の平均粒子径はそれぞれ10〜50nm、50〜100nm、100〜1000nmである。なお、製造過程の錫吸着処理で球状樹脂粒子の表面に錫を吸着させる。吸着した錫の層は無電解めっきをする初期の段階で錫と銀の置換反応が起き置換反応終了後、還元剤による無電解めっき反応により銀が被覆される。従って、ほとんど全ての錫は銀と置換され銀被覆球状樹脂粒子には残らない。
【0028】
球状樹脂粒子は球形に近いほど好ましいが、楕円形の粒子や粒子の表面に粗面化の凹みより大きな若干の凹凸があってもかまわない。ただし鋭利な突起がある場合には、めっきした場合にめっき被覆の密着性の低下、樹脂であるバインダーと混合した場合にバインダー内での分散性の低下によって銀被覆球状樹脂粒子を等方性導電ペースト、異方性導電ペーストとして用いるときの導電性付与、絶縁性の再現を損ねる原因となるため好ましくない。球状樹脂粒子の長径と短径の比は、1〜1.5の範囲が好ましく、1〜1.3の範囲がより好ましく、1〜1.1の範囲が更に好ましい。
【0029】
銀被覆球状樹脂粒子が異方性導電性フィルム接着剤や異方性導電性ペースト等で使用される際に要求される特性である、球状樹脂粒子に加重による負荷を与えたときの球状樹脂粒子の潰れ方及び加重を除荷したときの回復率の観点から球状樹脂粒子の樹脂はアクリル系、フェノール系又はスチレン系からなることが好ましい。アクリル系の樹脂としてメタクリル酸メチル樹脂(PMMA樹脂)、変性アクリル樹脂等、フェノール系の樹脂としてフェノール樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、フェノール・フルフラール樹脂等、スチレン系の樹脂としてポリスチレン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂等が挙げられる。
【0030】
球状樹脂粒子の平均粒径は、0.5〜40μmの範囲内であることが望ましい。また、球状樹脂粒子の粒径の変動係数は、6.0%以下であり、粒径が揃っていることが好ましい。球状樹脂粒子の平均粒径が0.5μmより小さいと球状樹脂粒子の表面積が大きくなり、導電性粒子として必要な導電性を得るための銀を多くする必要がある。球状樹脂粒子の平均粒径が40μmより大きいと銀被覆球状樹脂粒子を微細パターンに適用することが困難になる。また、粒径が揃っていないと導電性粒子として用いるときの導電性付与の再現性を損ねる原因になり得る。このため、銀被覆球状樹脂粒子の粒径の変動係数が6.0%以下であり、粒径が揃っていることがより好ましい。
【0031】
前述した錫吸着処理で球状樹脂粒子の表面には錫の2価のイオンが吸着する。錫の2価のイオンが4価のイオンとなって溶解し2価の電子を放出する。そして、銀のイオンが電子を受け取り金属として球状樹脂粒子の錫が吸着していた部分に析出する。その後、すべての錫の2価のイオンが4価のイオンとなって水溶液中に溶解すると錫と銀の置換反応は終了し、還元剤によって触媒が酸化され電子が放出し溶液中の銀イオンがその電子を受け取り銀が析出する。上記の置換反応と還元反応によって、銀被覆層が形成される。
【0032】
銀粒子の平均粒子径は透過型電子顕微鏡にて断面形状を観察し、複数のサンプルの球状樹脂粒子の表面2000nmの範囲で、球状樹脂粒子の表面から銀被覆層の表面までの間の銀粒子の粒子径を目視で測定した。サンプル毎に粒子径が変化する層間で粒子径の平均値を算出した。
【0033】
銀の被覆量(含有量)は樹脂の平均粒径と必要な導電性により決まる。銀被覆球状樹脂粒子100質量部に対して、銀の含有量が2質量部より少ないと導電性粒子として銀被覆球状樹脂粒子が分散したときに、銀同士の接点が取り難く十分な導電性を付与できない。一方、銀の含有量が80質量部より大きいと比重が大きくなりコストも高くなるとともに導電性が飽和してしまう。この銀の含有量は好ましくは28〜70質量部、より好ましくは28〜60質量部である。
【0034】
本実施形態の銀被覆球状樹脂粒子の導電性は粉体体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下あることが好ましく3×10-3Ω・cm以下であることがより好ましい。粉体体積抵抗率が1×10-2Ω・cmよりも高いと材料の電圧降下による損失が大きくなるため導電性材料としては不適である。粉体体積抵抗率は、試料粉末である銀被覆球状樹脂粒子を圧力容器に入れて9.8MPaで圧縮した圧粉体の抵抗値を抵抗率計で測定する。
【0035】
次いで、銀被覆球状樹脂粒子(導電性粒子、フィラー)とバインダー(接着剤)を混合した導電性接着剤について説明する。導電性接着剤には、等方性導電性接着剤(ICA:Isotropic Conductive Adhesive)と異方性導電性接着剤(ACA:Anisotropic Conductive Adhesive)がある。また、バインダーの形態によってペースト(Paste)状、フィルム(Film)状、インク(Ink)状にしたものがある。等方性導電性接着剤は、バインダー硬化時にバインダーが収縮することで、フィラーがお互いに接触し又接続したい導電物とフィラーが接触して導電性が得られる。等方性導電性接着剤にてシートを形成することも可能である。異方性導電性接着剤は、バインダー中にフィラーが分散していて接続したい導電物同士の間に異方性導電性接着剤をはさんで加圧することで、接続したい導電物の間のフィラーと接続したい導電物が接触し導電性が得られる。一方、加圧されていない部分は絶縁物のバインダーを介してフィラー同士が分散して接触しないので導電性は得られない。
【0036】
上記異方性導電性ペースト接着剤、異方性導電性フィルム接着剤は、本実施形態の銀被覆球状樹脂粒子とバインダーを混合してバインダー100質量部に対して銀被覆球状樹脂粒子を0.5〜5質量部含有して作製する。また、上記等方性導電性ペースト接着剤、等方性導電性フィルム接着剤は、本実施形態の銀被覆球状樹脂粒子とバインダーを混合してバインダー100質量部に対して銀被覆球状樹脂粒子を150〜250質量部含有して作製する。
【0037】
上記バインダーとしてエポキシ樹脂系のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂に熱硬化性の硬化剤としてアミン系のジシアンジアミド、イソミダール類を添加して使用する。その他、インク、ペースト用に使用されるバインダーとして、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、アクリレート樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、グリシジル基を有するモノマーやオリゴマーとイソシアネートなどの硬化剤を含有する樹脂組成物などの硬化性樹脂組成物が挙げられる。フィルム用に使用されるバインダーは上記エポキシ樹脂系のフェノキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を主成分として含む樹脂組成物が挙げられる。
【0038】
次に、銀被覆球状樹脂粒子の製造方法について説明する。球状樹脂粒子の表面を粗面化し次いでその表面に錫を吸着処理する。次いで無電解銀めっきを行い銀被覆球状樹脂粒子を作製する。
【0039】
最初に、球状樹脂粒子に粗面化処理をする。球状樹脂粒子として、アクリル、フェノール、スチレンの球状樹脂粒子を使用する。その他、例えば、スチレン、シリコーン、ウレタン、エポキシ、テフロン(商標)、メラミン等の球状樹脂粒子を使用することも可能である。
【0040】
上記の球状樹脂粒子に、表面を粗面化する処理として酸素の雰囲気でのプラズマ処理、オゾン処理、温度を80〜200℃の雰囲気で加熱処理を行う。この処理によって球状樹脂粒子の表面は酸化されると考えられる。その他、加湿処理や真空中での熱処理、加圧、加湿条件下での熱処理、酸化剤による湿式処理などにより表面を粗面化する。酸化剤としては過酸化水素水、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸などが挙げられる。また、酸化剤による湿式処理は、プラズマ処理、オゾン処理、加熱処理、加湿処理に組み合わせてもよい。なお、酸化による処理のみならず、物理的な処理によって、例えば、真空の雰囲気、あるいは大気雰囲気でのプラズマ処理、ボールミルなどによる粉砕処理など処理の如何に関わらず球状樹脂粒子の表面を粗面化する処理であればよい。上記粗面化処理によって粗面化された面に次の錫吸着処理で錫を入り込ませる。次いで銀の無電解めっきを行って錫と銀を置換することにより最終的に高いせん断力をかけても剥がれのない銀の被覆層をめっきすることができる。これにより、本発明の銀被覆球状樹脂粒子を例えば異方性導電性接着剤に用いた場合、異方導電の短絡を回避でき、信頼性が向上する。
【0041】
次いで、錫吸着処理を行う。錫吸着処理は、錫化合物の水溶液に球状樹脂粒子を添加し、撹拌する。そして、球状樹脂粒子を濾別して水洗する。撹拌時間は、以下の錫化合物の水溶液の温度及び錫化合物の含有量によって適宜決定されるが、好ましくは、0.5〜24時間である。錫化合物の水溶液の温度は25〜45℃の範囲で行う。好ましくは25〜40℃、最も好ましく27〜40℃である。錫化合物の水溶液の温度が45℃より高い場合に、錫化合物が酸化するため水溶液が不安定となり球状樹脂粒子に錫化合物が十分に付着しない。この錫吸着処理を25〜45℃の水溶液で実施することによって銀を還元剤だけで無電解めっきする方法では密着性の悪かったアクリル系樹脂、フェノール系樹脂、スチレン系樹脂等の樹脂の微粒子に対しても次に説明する無電解めっき処理に初期に十分に吸着した錫と銀が置換されるため、置換した銀が密着して樹脂の表面に密着することができる。
【0042】
錫吸着処理で使用する錫化合物として、塩化第一錫、フッ化第一錫、臭化第一錫、ヨウ化第一錫等が挙げられる。塩化第一錫を用いる場合、錫化合物の水溶液中の塩化第一錫の含有量は30〜100g/dmが好ましい。塩化第一錫の含有量が30g/dm以上であれば球状樹脂粒子の表面に均一な錫の被覆が形成できる。また塩化第一錫の含有量が100g/dm以下であると塩化第一錫中の不可避不純物の量を抑制しやすい。なお、塩化第一錫は飽和になるまで錫化合物の水溶液に含有することができる。
【0043】
錫化合物の水溶液は塩化第一錫を1gに対して塩酸が0.5〜2cm含有することが好ましい。塩酸の量が0.5cm以上であると塩化第一錫溶解性が向上するとともに錫の加水分解を抑制することができる。塩酸の量が2cm以下であると錫化合物の水溶液のpHが低くなりすぎないので錫を球状樹脂粒子に効率良く吸着させることができる。
【0044】
次に、銀の無電解めっき処理をする。無電解めっき法として以下の3つの方法のいずれかの方法をも適用できる。
(1)錯化剤、還元剤を含む水溶液中に粗面化処理、錫吸着処理後の球状樹脂粒子を浸漬し銀塩水溶液を滴下する方法。
(2)銀塩、錯化剤を含む水溶液中に粗面化処理、錫吸着処理後の球状樹脂粒子を浸漬し還元剤水溶液を滴下する方法。
(3)銀塩、錯化剤、還元剤を含む水溶液中に粗面化処理、錫吸着処理後の球状樹脂粒子を浸漬し苛性アルカリ水溶液を滴下する方法。
【0045】
銀塩として硝酸銀、又は銀を硝酸に溶解したもの等を用いることができる。錯化剤としてアンモニア、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、ニトロ三酢酸、トリエチレンテトラアンミン六酢酸等の塩類を用いることができる。還元剤としてホルマリン、ブドウ糖、ロッシェル塩(酒石酸ナトリウムカリウム)、ヒドラジン及びその誘導体などを用いることができる。特に、ホルマリンの水溶液であるホルムアルデヒドが好ましく、少なくともホルムアルデヒドを含む2種類以上の還元剤の混合物がより好ましく、更には、ホルムアルデヒドとブドウ糖を含む還元剤の混合物が最も好ましい。
【実施例】
【0046】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0047】
<実施例1>
錫吸着処理用として、塩化第一錫15g、35%塩酸15cmを容量1dmのメスフラスコを用いて水で1dmに稀釈(メスアップ)した水溶液を27℃に保存した。
【0048】
無電解めっき処理用として、2dmの水に、228gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(錯化剤)、53gの水酸化ナトリウム、105cmのホルマリンを溶解し、錯化剤及び還元剤を含む水溶液を作製した。また、35gの硝酸銀、53cmの25%アンモニア水、175cmの水を混合し硝酸銀を含む水溶液を作製した。
【0049】
球状樹脂粒子の表面の粗面化処理として粒子径20μmのアクリル樹脂(PMMA架橋ビーズ)からなる球状樹脂粒子にオゾン発生器(型式オゾンスーパーエース、日本オゾン発生器株式会社製)によりガス濃度2vol%のオゾンガスにより30分間吹き込みオゾン処理を行った。冷却後、錫吸着処理用の上記水溶液に粗面化処理後の球状樹脂粒子41gを添加し30℃の温度で1時間撹拌した。その後、球状樹脂粒子を濾別して水洗した。次いで、錯化剤及び還元剤を含む上記水溶液中に、錫吸着処理を行った球状樹脂粒子を浸漬させ水溶液を撹拌しながら硝酸銀を含む上記水溶液を滴下し球状樹脂粒子に銀を被覆して銀被覆球状樹脂粒子を得た。この銀の被覆量は銀被覆球状樹脂粒子100質量部に対して35質量部であった。
【0050】
<実施例2>
錫吸着処理用として、塩化第一錫15g、35%塩酸15cmを容量1dmのメスフラスコを用いて水で1dmに稀釈(メスアップ)した水溶液を27℃に保存した。
【0051】
無電解めっき処理用として、2dmの水に、228gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(錯化剤)、53gの水酸化ナトリウム、105cmのホルマリンを溶解し、錯化剤及び還元剤を含む水溶液を作製した。また、35gの硝酸銀、53cmの25%アンモニア水、175cmの水を混合し硝酸銀を含む水溶液を作製した。
【0052】
球状樹脂粒子の表面の粗面化処理として粒子径15μmのアクリル樹脂(PMMA架橋ビーズ)からなる球状樹脂粒子にプラズマ発生器(型式YHS−G型、魁半導体株式会社製)の反応室に装填し反応室内の真空度を20Paとした。次いで、反応室内に酸素ガスを毎分15cmの一定量で送り込み、20Wの電力を印加し30分間プラズマを発生させた。冷却後、錫吸着処理用の上記水溶液に粗面化処理後の球状樹脂粒子41gを添加し35℃の温度で1時間撹拌した。その後、球状樹脂粒子を濾別して水洗した。次いで、錯化剤及び還元剤を含む上記水溶液中に、錫吸着処理を行った球状樹脂粒子を浸漬させ水溶液を撹拌しながら硝酸銀を含む上記水溶液を滴下し球状樹脂粒子に銀を被覆して銀被覆球状樹脂粒子を得た。この銀の被覆量は銀被覆球状樹脂粒子100質量部に対して35質量部であった。
【0053】
<実施例3>
錫吸着処理用として、塩化第一錫15g、35%塩酸15cmを容量1dmのメスフラスコを用いて水で1dmに稀釈(メスアップ)した水溶液を27℃に保存した。
【0054】
無電解めっき処理用として、2dmの水に、293gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(錯化剤)、68gの水酸化ナトリウム、135cmのホルマリンを溶解し、錯化剤及び還元剤を含む水溶液を作製した。また、45gの硝酸銀、68cmの25%アンモニア水、225cmの水を混合し硝酸銀を含む水溶液を作製した。
【0055】
球状樹脂粒子の表面の粗面化処理として粒子径10μmのアクリル樹脂(PMMA架橋ビーズ)からなる球状樹脂粒子にオゾン発生器(型式オゾンスーパーエース、日本オゾン発生器株式会社製)によりガス濃度2vol%でオゾンガスを30分間吹き込みオゾン処理を行った。冷却後、錫吸着処理用の上記水溶液に粗面化処理後の球状樹脂粒子を35g添加し30℃で1時間撹拌した。その後、球状樹脂粒子を濾別して水洗した。次いで、錯化剤及び還元剤を含む上記水溶液中に、錫吸着処理を行った球状樹脂粒子を浸漬させ水溶液を撹拌しながら硝酸銀を含む上記水溶液を滴下し球状樹脂粒子に銀を被覆して銀被覆球状樹脂粒子を得た。この銀の被覆量は銀被覆球状樹脂粒子100質量部に対して45質量部であった。
【0056】
<実施例4>
錫吸着処理用として、塩化第一錫15g、35%塩酸15cmを容量1dmのメスフラスコを用いて水で1dmに稀釈(メスアップ)した水溶液を27℃に保存した。
【0057】
無電解めっき処理用として、2dmの水に、10.7gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(錯化剤)、2.5gの水酸化ナトリウム、5cmのホルマリンを溶解し、錯化剤及び還元剤を含む水溶液を作製した。また、1.7gの硝酸銀、2cmの25%アンモニア水、10cmの水を混合し硝酸銀を含む水溶液を作製した。
【0058】
球状樹脂粒子の表面の粗面化処理として粒子径35μmのアクリル樹脂(架橋PMMAビーズ)からなる球状樹脂粒子にプラズマ発生器(ガラスベルジャー型)の反応室に装填し反応室内の真空度を20Paとした。次いで、反応室内に酸素ガスを毎分15cmの一定量で送り込み、10Wの電力を印加し30分間プラズマを発生させた。冷却後、錫吸着処理用の上記水溶液に粗面化処理後の球状樹脂粒子50gを添加し27℃で1時間撹拌した。その後、球状樹脂粒子を濾別して水洗した。次いで、錯化剤及び還元剤を含む上記水溶液中に、錫吸着処理を行った球状樹脂粒子を浸漬させ水溶液を撹拌しながら硝酸銀を含む上記水溶液を滴下し球状樹脂粒子に銀を被覆して銀被覆球状樹脂粒子を得た。この銀の被覆量は銀被覆球状樹脂粒子100質量部に対して2質量部であった。
【0059】
<実施例5>
錫吸着処理用として、塩化第一錫15g、35%塩酸15cmを容量1dmのメスフラスコを用いて水で1dmに稀釈(メスアップ)した水溶液を27℃に保存した。
【0060】
無電解めっき処理用として、2dmの水に、312gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(錯化剤)、72gの水酸化ナトリウム、144cmのホルマリンを溶解し、錯化剤及び還元剤を含む水溶液を作製した。また、47gの硝酸銀、60cmの25%アンモニア水、240cmの水を混合し硝酸銀を含む水溶液を作製した。
【0061】
球状樹脂粒子の表面の粗面化処理として粒子径5μmのアクリル樹脂(架橋PMMA樹脂)からなる球状樹脂粒子に熱風乾燥機(型式DX400、ヤマト化学株式会社製)に装填し80℃の大気雰囲気で2時間保持した。冷却後、錫吸着処理用の上記水溶液に粗面化処理後の球状樹脂粒子20gを添加し30℃で1時間撹拌した。その後、球状樹脂粒子を濾別して水洗した。次いで、錯化剤及び還元剤を含む上記水溶液中に、錫吸着処理を行った球状樹脂粒子を浸漬させ水溶液を撹拌しながら硝酸銀を含む上記水溶液を滴下し球状樹脂粒子に銀を被覆して銀被覆球状樹脂粒子を得た。この銀の被覆量は銀被覆球状樹脂粒子100質量部に対して60質量部であった。
【0062】
<実施例6>
錫吸着処理用として、塩化第一錫20g、35%塩酸20cmを容量1dmのメスフラスコを用いて水で1dmに稀釈(メスアップ)した水溶液を25℃に保存した。
【0063】
無電解めっき処理用として、2dmの水に、416gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(錯化剤)、96gの水酸化ナトリウム、192cmのホルマリンを溶解し、錯化剤及び還元剤を含む水溶液を作製した。また、63gの硝酸銀、80cmの25%アンモニア水、320cmの水を混合し硝酸銀を含む水溶液を作製した。
【0064】
球状樹脂粒子の表面の粗面化処理として粒子径1μmのアクリル樹脂(架橋PMMA樹脂)からなる球状樹脂粒子にプラズマ発生器(ガラスベルジャー型)の反応室に装填し反応室内の真空度を10Paとした。次いで、反応室内に酸素ガスを毎分15cmの一定量で送り込み、20Wの電力を印加し30分間プラズマを発生させた。冷却後、錫吸着処理用の上記水溶液に粗面化処理後の球状樹脂粒子10gを添加し40℃で2時間撹拌した。その後、球状樹脂粒子を濾別して水洗した。次いで、錯化剤及び還元剤を含む上記水溶液中に、錫吸着処理を行った球状樹脂粒子を浸漬させ水溶液を撹拌しながら硝酸銀を含む上記水溶液を滴下し球状樹脂粒子に銀を被覆して銀被覆球状樹脂粒子を得た。この銀の被覆量は銀被覆球状樹脂粒子100質量部に対して80質量部であった。
【0065】
<実施例7>
錫吸着処理用として、塩化第一錫15g、35%塩酸15cmを容量1dmのメスフラスコを用いて水で1dmに稀釈(メスアップ)した水溶液を27℃に保存した。
【0066】
無電解めっき処理用として、2dmの水に、416gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(錯化剤)、108gの水酸化ナトリウム、216cmのホルマリンを溶解し、錯化剤及び還元剤を含む水溶液を作製した。また、71gの硝酸銀、902cmの25%アンモニア水、360cmの水を混合し硝酸銀を含む水溶液を作製した。
【0067】
球状樹脂粒子の表面の粗面化処理として粒子径10μmのスチレン樹脂(球状加工ポリスチレン樹脂)からなる球状樹脂粒子にオゾン発生器(型式オゾンスーパーエース、日本オゾン発生器株式会社製)によりガス濃度2vol%でオゾンガスを30分間吹き込みオゾン処理を行った。冷却後、錫吸着処理用の上記水溶液に粗面化処理後の球状樹脂粒子55g添加し35℃で1時間撹拌した。その後、球状樹脂粒子を濾別して水洗した。次いで、錯化剤及び還元剤を含む上記水溶液中に、錫吸着処理を行った球状樹脂粒子を浸漬させ水溶液を撹拌しながら硝酸銀を含む上記水溶液を滴下し球状樹脂粒子に銀を被覆して銀被覆球状樹脂粒子を得た。この銀の被覆量は銀被覆球状樹脂粒子100質量部に対して45質量部であった。
【0068】
<実施例8>
錫吸着処理用として、塩化第一錫20g、35%塩酸20cmを容量1dmのメスフラスコを用いて水で1dmに稀釈(メスアップ)した水溶液を45℃に保存した。
【0069】
無電解めっき処理用として、2dmの水に、325gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(錯化剤)、75gの水酸化ナトリウム、150cmのホルマリンを溶解し、錯化剤及び還元剤を含む水溶液を作製した。また、50gの硝酸銀、75cmの25%アンモニア水、250cmの水を混合し硝酸銀を含む水溶液を作製した。
【0070】
球状樹脂粒子の表面の粗面化処理として粒子径10μmのフェノール樹脂(球状フェノール樹脂)からなる球状樹脂粒子にプラズマ発生器(型式YHS−G型、魁半導体株式会社製)の反応室に装填し反応室内の真空度を20Paとした。次いで、反応室内に酸素ガスを毎分15cmの一定量で送り込み、20Wの電力を印加し30分間プラズマを発生させた。冷却後、錫吸着処理用の上記水溶液に粗面化処理後の球状樹脂粒子を32g添加し27℃で1時間撹拌した。その後、球状樹脂粒子を濾別して水洗した。次いで、錯化剤及び還元剤を含む上記水溶液中に、錫吸着処理を行った球状樹脂粒子を浸漬させ水溶液を撹拌しながら硝酸銀を含む上記水溶液を滴下し球状樹脂粒子に銀を被覆して銀被覆球状樹脂粒子を得た。この銀の被覆量は銀被覆球状樹脂粒子100質量部に対して50質量部であった。
【0071】
<実施例9>
錫吸着処理用として、塩化第一錫15g、35%塩酸15cmを容量1dmのメスフラスコを用いて水で1dmに稀釈(メスアップ)した水溶液を27℃に保存した。
【0072】
無電解めっき処理用として、2dmの水に、728gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(錯化剤)、168gの水酸化ナトリウム、336cmのホルマリンを溶解し、錯化剤及び還元剤を含む水溶液を作製した。また、110gの硝酸銀、1402cmの25%アンモニア水、560cmの水を混合し硝酸銀を含む水溶液を作製した。
【0073】
球状樹脂粒子の表面の粗面化処理として粒子径3μmのフェノール樹脂(球状フェノール樹脂)からなる球状樹脂粒子に熱風乾燥機(型式DX400、ヤマト化学株式会社製)に装填し200℃の大気雰囲気で2時間保持した。冷却後、錫吸着処理用の上記水溶液に粗面化処理後の球状樹脂粒子を30g添加し35℃で1時間撹拌した。その後、球状樹脂粒子を濾別して水洗した。次いで、錯化剤及び還元剤を含む上記水溶液中に、錫吸着処理を行った球状樹脂粒子を浸漬させ水溶液を撹拌しながら硝酸銀を含む上記水溶液を滴下し球状樹脂粒子に銀を被覆して銀被覆球状樹脂粒子を得た。この銀の被覆量は銀被覆球状樹脂粒子100質量部に対して70質量部であった。
【0074】
<実施例10>
錫吸着処理用として、塩化第一錫15g、35%塩酸15cmを容量1dmのメスフラスコを用いて水で1dmに稀釈(メスアップ)した水溶液を27℃に保存した。
【0075】
無電解めっき処理用として、2dmの水に、178gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(錯化剤)、41gの水酸化ナトリウム、82cmのホルマリンを溶解し、錯化剤及び還元剤を含む水溶液を作製した。また、27gの硝酸銀、41cmの25%アンモニア水、137cmの水を混合し硝酸銀を含む水溶液を作製した。
【0076】
球状樹脂粒子の表面の粗面化処理として粒子径20μmのアクリル樹脂(架橋PMMA樹脂)からなる球状樹脂粒子に熱風乾燥機(型式DX400、ヤマト化学株式会社製)に装填し80℃の大気雰囲気で2時間保持した。冷却後、錫吸着処理用の上記水溶液に粗面化処理後の球状樹脂粒子40gを添加し30℃で1時間撹拌した。その後、球状樹脂粒子を濾別して水洗した。次いで、錯化剤及び還元剤を含む上記水溶液中に、錫吸着処理を行った球状樹脂粒子を浸漬させ水溶液を撹拌しながら硝酸銀を含む上記水溶液を滴下し球状樹脂粒子に銀を被覆して銀被覆球状樹脂粒子を得た。この銀の被覆量は銀被覆球状樹脂粒子100質量部に対して28質量部であった。
【0077】
<比較例1>
錫吸着処理用として、塩化第一錫15g、35%塩酸15cmを容量1dmのメスフラスコを用いて水で1dmに稀釈(メスアップ)した水溶液を27℃に保存した。
【0078】
無電解めっき処理用として、2dmの水に、288gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(錯化剤)、53gの水酸化ナトリウム、105cmのホルマリンを溶解し、錯化剤及び還元剤を含む水溶液を作製した。また、35gの硝酸銀、53cmの25%アンモニア水、175cmの水を混合し硝酸銀を含む水溶液を作製した。
【0079】
球状樹脂粒子の表面の粗面化処理を行わず、粒子径20μmのアクリル樹脂(PMMA架橋ビーズ)からなる球状樹脂粒子を錫吸着処理用の上記水溶液に球状樹脂粒子41gを添加し30℃で1時間撹拌した。その後、球状樹脂粒子を濾別して水洗した。次いで、錯化剤及び還元剤を含む上記水溶液中に、錫吸着処理を行った球状樹脂粒子を浸漬させ水溶液を撹拌しながら硝酸銀を含む上記水溶液を滴下し球状樹脂粒子に銀を被覆して銀被覆球状樹脂粒子を得た。この銀の被覆量は銀被覆球状樹脂粒子100質量部に対して35質量部であった。
【0080】
<比較例2>
錫吸着処理用として、塩化第一錫15g、35%塩酸15cmを容量1dmのメスフラスコを用いて水で1dmに稀釈(メスアップ)した水溶液を27℃に保存した。
【0081】
無電解めっき処理用として、2dmの水に、288gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(錯化剤)、53gの水酸化ナトリウム、105cmのホルマリンを溶解し、錯化剤及び還元剤を含む水溶液を作製した。また、35gの硝酸銀、53cmの25%アンモニア水、175cmの水を混合し硝酸銀を含む水溶液を作製した。
【0082】
球状樹脂粒子の表面の粗面化処理を行わず、粒子径15μmのアクリル樹脂(PMMA架橋ビーズ)からなる球状樹脂粒子を錫吸着処理用の上記水溶液に球状樹脂粒子41gを添加し1時間撹拌した。その後、球状樹脂粒子を濾別して水洗した。次いで、錯化剤及び還元剤を含む上記水溶液中に、錫吸着処理を行った球状樹脂粒子を浸漬させ水溶液を撹拌しながら硝酸銀を含む上記水溶液を滴下し球状樹脂粒子に銀を被覆して銀被覆球状樹脂粒子を得た。この銀の被覆量は銀被覆球状樹脂粒子100質量部に対して45質量部であった。
【0083】
<比較例3>
錫吸着処理用として、塩化第一錫15g、35%塩酸15cmを容量1dmのメスフラスコを用いて水で1dmに稀釈(メスアップ)した水溶液を27℃に保存した。
【0084】
無電解めっき処理用として、2dmの水に、293gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(錯化剤)、68gの水酸化ナトリウム、135cmのホルマリンを溶解し、錯化剤及び還元剤を含む水溶液を作製した。また、45gの硝酸銀、68cmの25%アンモニア水、225cmの水を混合し硝酸銀を含む水溶液を作製した。
【0085】
球状樹脂粒子の表面の粗面化処理を行わず、粒子径10μmのアクリル樹脂(PMMA架橋ビーズ)からなる球状樹脂粒子を錫吸着処理用の上記水溶液に球状樹脂粒子35gを添加し30℃で1時間撹拌した。その後、球状樹脂粒子を濾別して水洗した。次いで、錯化剤及び還元剤を含む上記水溶液中に、錫吸着処理を行った球状樹脂粒子を浸漬させ水溶液を撹拌しながら硝酸銀を含む上記水溶液を滴下し球状樹脂粒子に銀を被覆して銀被覆球状樹脂粒子を得た。この銀の被覆量は銀被覆球状樹脂粒子100質量部に対して45質量部であった。
【0086】
<比較試験及び結果、評価>
〔被覆した銀の粒子径の測定〕
実施例1〜10、比較例1〜3の銀被覆球状樹脂粒子の断面の写真を透過型電子顕微鏡(型式JEM−2−1−F、日本電子株式会社製)により撮影し、球状樹脂粒子の表面に形成された銀被覆層の球状樹脂粒子の樹脂側と外側の銀の粒子径を目視により観察、測定した。図2に実施例1、図3に比較例1の銀被覆球状樹脂粒子の断面の写真を示す。図2の左下が樹脂(球状樹脂粒子)で、右上が銀被覆層である。図2(a)、(b)より、実施例1では、樹脂の粗面化された表面全体に10〜50nmの銀の粒子が入り込んでいる様子が観察された。また、図2(a)より、樹脂側から150nm近辺まで、10〜50nmの銀の粒子、150〜300nm近辺では50〜100nmの銀の粒子、100nm以上では、100〜400nmの銀の粒子がそれぞれ観察され、図2(a)に示す以外に外側では最大1000nmの銀の粒子が観測された。図3(a)、(b)より、比較例1では、樹脂の表面には10nm程度の銀の粒子が少し入り込んでいる様子が観察された。また、図2(b)より、樹脂の表面には50nm前後の銀の粒子が散見されその上方に400nm前後の銀の粒子がそれぞれ観察され、図2(b)に示す以外に外側では最大1000nmの銀の粒子が観測された。表1に実施例1〜10及び比較例1〜3の樹脂側と外側の銀の平均粒子径の測定結果(粒子20個の平均値)を示す。銀の平均粒子径は実施例1〜10では樹脂側が10〜50nm、外側が100〜1000nm、比較例1〜3では樹脂側が200〜300nm、外側が800〜1000nmであった。
【0087】
〔圧粉体積抵抗値の測定〕
銀被覆球状樹脂粒子2.5gを直径25mmの型に入れて加圧時の粉体体積抵抗率を抵抗率計(型式MCP−T610、三菱化学株式会社製)を用いて測定した。実施例3では3.5×10-4Ω・cm、比較例3では7.5×10-3Ω・cmであった。
【0088】
〔密着性の測定〕
作製した銀被覆球状樹脂粒子をエポキシ樹脂、アミン系硬化剤とともに容器に入れ、遊星混合機(型名AR100、株式会社シンキー製)によって30分間混合した。その後、3本ロールで練り込みを行った。練られたペーストを走査型電子顕微鏡(型式SU−1500、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で観察し、銀被覆球状樹脂粒子に銀のめっき膜が密着しているかを目視確認した。銀めっき膜が銀被覆球状樹脂粒子の表面を90%以上被覆している場合を「良好」とし、90%未満被覆している場合を「不良」とした。実施例1〜10では、すべて90%以上被覆しており、良好であった。一方、比較例1〜3では、80%以下の被覆であり、不良であった。上記ペーストをPET(Polyethylene Terephthalate)フィルム上にアプリケータを使用して成膜し、80℃で1時間乾燥し、膜厚100μmの膜を得た。得られた体積抵抗率は、実施例1〜10のペーストによる膜では5.0×10-4Ω・cmであったのに対して、比較例1〜3のペーストによる膜では1.8×10-2Ω・cmであった。これらの体積抵抗率の結果と実施例1〜10では、めっき膜が剥がれていないことから、比較例1〜3と比べて導電性が向上していることが分かった。
【0089】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の銀被覆球状樹脂粒子は、導電性接着剤の導電性粒子、詳しくは、インク状、ペースト状又はフィルム状の等方性接着剤の導電性粒子、或いはペースト状又はフィルム状の異方性接着剤の導電性粒子に利用できる。
【符号の説明】
【0091】
100 銀被覆球状樹脂粒子
101 球状樹脂粒子
図1
図2
図3