【課題】二重ニット製品は外生地、内生地とも筒状に形成される。また、ポケット付ニット製品は、ポケット用別布を用意し、別工程で製品本体へ取り付けていたため工程数が多く、取り付け作業が面倒であった。そこで本願では丸編み機を使用して二重編成部や収納ポケットとなる、所望形状、大きさの内生地を外生地と同時に形成、連結して製造効率を高めるのである。
【解決手段】ダイヤルの針がシリンダの針とは個別に編目を作るように編目の形成がコントロールされている丸編み機を使用し、シリンダ針で製品本体、ダイヤル針で内生地を同時に編成、連結するのである。二重編成部となる内生地を作成するタイミング、編目数、編目の増減をコントロールして、使用用途に応じた場所、数、大きさ及び形状の二重編成部や、当該二重編成部の一部を開口した収納ポケットを各種丸編みニット製品に形成するのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ダブル編み用丸編み機を使用して編成される二重ニット製品は外側生地と内側生地とも相似形の筒状に編成されており、一部分を二重生地に編成することはできず、内生地の形状等は限定されたものであった。また、内側生地と外側生地を編成と同時に連結させる二重ニット製品は接結部分が編地表面に表出して見栄えや表面平滑性を損なうなどの問題があった。
【0007】
また、ポケット等の収納部を有する筒状ニット製品はポケットを形成する別布を別途作成後本体へ取り付ける工程を必要とした。
【0008】
このような収納部を本体の編成と同時に編成する発明が提案されている。
【0009】
特許文献2記載のニット製品は、丸編み機を使用して製品本体を筒状に編成する途中で連続して開口部を有する袋を形成して成るが、当該袋は製品本体から飛び出したような形状に形成され、周縁部は製品本体とは連結されていない。さらに、袋の開口部が外部から認識されるので袋に所定の収納部品を収納後に開口部を縫合する手間を要する。またこの袋は、製品本体の内側に垂れ下がった状態にあるため収納物と共に袋が移動し、装着感が損なわれるだけでなく所定の効果(必要個所の保護、保温等)を奏することができない。さらに、開口部を縫合してクッション等の保護材をいったん収納すると出し入れが不可能となり、洗濯、乾燥が容易ではなく、収納物の損傷を招くおそれがある。また、好みや症状に応じた収納物を随時選択、変更することができない。
【0010】
特許文献3記載のソックスは、本体が二重編地に限定されているので応用範囲が狭く、帯状の編地部分を袋部とするための縫合工程が必要となる。
【0011】
また、シリンダを往復回転させて踵部等を編成しているときは、ダイヤル針を不作動状態にして内生地の編成を停止していてもダイヤルがシリンダと同一軸で連結されているため往復回転を繰り返す結果、内生地が影響を受けて不具合が発生するため、シリンダが往復回転を始める前に内生地の編成をいったん終了せざるを得なかった。従って、踵編成の前後で内生地が分断され連続した二重編成部を形成することができなかった。
【0012】
そこで、本願では丸編み機を使用して外側生地を編成するとともに外側生地の一部分を二重に構成する内側生地を編成し、外側生地と内側生地の周縁部の連結を同時に行うのである。また当該二重編成部となる内側生地の一部を開口して収納部とするのである。さらに、シリンダの往復回転時にはクラッチ操作によってダイヤルの回転を停止させて内生地を保持することで連続した二重編成部を形成するのである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために本発明では次の手段を講じた。
【0014】
即ち、シリンダ針を上下動自在に保持した円筒形のシリンダと、このシリンダの上部に設けられてダイヤル針を径方向に沿って摺動自在に保持した円盤状のダイヤルとが同一軸で一体回転可能に設けられた丸編み機であって、ダイヤルの針がシリンダの針とは個別に編目を作るように編目の形成がコントロールされている丸編み機を使用する。
シリンダ針で外側生地となるニット製品本体を編成し、ダイヤル針の一部を使用して内側生地を編成、内側生地の周縁部はシリンダ針とダイヤル針を交差させてニッティングを行い外側生地と内側生地の編成と同時に連結させるのである。
【0015】
このようにして丸編み機の編成作業のみで、筒状ニット製品の内側の一部に二重編成部を形成し、また、当該二重編成部の一部又は複数個所を開口して収納部とするのである。
【0016】
さらに回転軸のクラッチ操作によってシリンダの往復回転時にダイヤルの回転を停止させて二重編成部を途切れさせることなく形成するのである。
【発明の効果】
【0017】
シリンダ針とダイヤル針が個別に生地を編成するので、所望の大きさ、形状の内生地を外側生地の内側の所望場所に所望個数形成することができる。
【0018】
内生地と外生地の連結は、単発的にどちらかの針を動かして結節しているのではなく
、通常のシリンダ針とダイヤル針、両方の針の交差によるニッティング動作によって編成しているので連結部分が表面にストライプや点となって表出することがなく、見栄えが良く、内側にも縫合箇所等が存在しないため装着性に優れる。
【0019】
このように二重編成部の編成及び連結が製品本体の編成と同時に行われるので、製造効率を高め、製品本体と二重編成部の一体性が図られより高い装着感を獲得できる。
【0020】
また、踵部を有するサポータや靴下であっても踵部編成の前後で連続した二重編成部を形成できるので装着感に優れ、収納物の保持機能が高い。
【0021】
手首用サポータ等に形成する収納ポケットはサイズが小さく、別工程での取り付け作業は非常に手間がかかっていたが、本願では本体の編成と同時にポケットを連結するため小さな収納部も形成容易である。
【0022】
収納ポケットが弾性糸を使用したメッシュ状であるため収納物の出し入れが容易で、製品自体の編目の伸縮に影響を与えず、外観は通常のサポータと変わらない。従って、収納物を収納していないときでもサポータ、靴下などの製品本体としても違和感なく使用可能である。また、収納物品を確実に保持しながら身体へ装着するため所望の効果(必要個所の保護、保温、冷却等)を奏することができる。 細くて軽い伸縮性糸を使用して編成された、筒状ネット包帯の二重編成部を制菌加工した糸で編成することで患部を衛生的に保護できる。また、この収納部に薬剤を含浸したガーゼ、保冷剤、携帯懐炉等を収納して患部の治療に役立てることができる。
【0023】
外反母趾矯正靴下の一部を弾性糸で二重に編成することで部分的に圧迫個所を形成し足指を効果的に広げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
具体的な実施例の説明をする前に本願の二重編成部を有するニット製品の編成方法について説明する。
【0027】
本発明で使用する丸編み機は、回転駆動可能に設けられた円筒形のシリンダと、このシリンダの上部でシリンダと一体回転可能に設けられた円盤状のダイヤルとを有し、ダイヤル針とキャスティングオフシンカーを有する。ダイヤル上にはリング又はカバーが設けられている。シリンダの外周面にはその全周を取り囲んでシリンダ針が上下動自在に設けられ、またダイヤルにはその上面に、シリンダの各シリンダ針に対応した状態でダイヤル針が横向きに出退自在に設けられている。
【0028】
シリンダ及びダイヤルを取り囲む複数位置に給糸口が分散して配置され、ダイヤル針に供給する糸を切断するカッターがダイヤルの適当位置に固定されている。
【0029】
本願に係るニット製品の外生地はシリンダ針によって筒状に編成される。この外生地が製品、すなわちサポータや靴下、ネット包帯本体となる。
【0030】
一方、ダイヤル針はシリンダ針とは別個に編み目を形成するようにコントロールされており、ダイヤル針の一部を使用して内生地を編成する。従って、内生地の形状や大きさ、個数は自在に変更可能である。この内生地が外生地の内側に形成される二重編成部或いは
収納部となる。
【0031】
生地を二重にする場所のダイヤル針だけを作動させて内生地が編成されるが、シリンダの針を不作動にしてダイヤルの往復回転で編成するのではなく、シリンダと共にダイヤルも同軸で駆動回転するため、外生地と内生地は同時に編成される。従って、内生地の編成糸はコースごとの編み終わりにカットされ、編み始め部分になると再び給糸され、所望大きさ、形状の内側生地が編成される。
【0032】
さらに、内生地の周縁部に該当するときのみダイヤル針がシリンダ針と交差するように制御されているため両方の針が協働して、シングルシリンダ丸編み機による通常の編成作業が行われる。その結果内生地と外生地との連結が両生地の編成と同時に行われ、連結点が表出することがない。
【0033】
続いて本願の二重編成部を有するニット製品の具体例について図を参照しながら説明する。
【0034】
図1ないし
図3が二重編成部2を有する筒型サポータ1をあらわす図面であり、このサポータ1は足指の付け根から足首までの長さを有し、つま先側開口部4及び足首側開口部3はゴム編みで編成されており、シリンダ針の目増し、目減らししながらの往復回転によって踵部2が形成される。
【0035】
図1がサポータ1を足に装着した状態を示す説明図、
図2が裏返した状態を示す斜視図、
図3が当該サポータ1の展開略図である。
【0036】
外生地7に使用される糸は、羊毛、木綿等の天然繊維或いは、レーヨン、ナイロン、ポリウレタン繊維等の合繊繊維或いはこれらの混紡繊維であって、弾性を有する。一方、内生地8に使用される糸は外生地同様、各種天然繊維或いは合繊繊維であって、伸縮性を有するが、外生地に使用される糸よりも細い番手で編成する。
【0037】
外生地7はシリンダ針の正回転(左回り)によって矢印の14方向に編成され、着用時に上部となる口編み部3及び下部となる口編み部4、踵部2、足首部5及び足底部6から成る。下部口編み部4からシリンダ針のみ作動させて外生地7を筒状に編成していく。足底部6の所定位置9まで外生地7が編成されると不作動状態にあったダイヤル針が内生地8の編成を開始する。シリンダによって編成される外生地7と同様に、同一軸で回転するダイヤルによって内生地8も矢印14方向に編み立てられていく。
【0038】
内生地8は外生地7に接続された中央部11によって左右に区切られ、下端8a及び8bを開口部とした、細長い挿入口を有する、二つの収納部12、13を構成している(
図3)。
【0039】
本願発明では、シリンダ針とは関係なくダイヤル針を作動させて編み目を形成して外生地7と内生地8を同時に編成していく。
【0040】
一方、収納部12、13を左右に区切っている、中央部11はシリンダ針との協働によってゴム編みされて一重生地を形成し、また、内生地8の両側縁8c、8dもダイヤル針とシリンダ針とのニッティングポイントとなって外生地7に接続されている。それ以外は外生地7と内生地8は乖離した状態にあって二重生地を構成している。
【0041】
内生地8はダイヤル針の正逆往復回転ではなくあくまでシリンダの回転と同期して編成されるのでコースごとの編み始め8cで糸が給糸され、編み終わり8dで糸が切断される。
編成点近傍で切断された糸は、内生地8の両側縁8c、8dに沿って帯状の切り残し15,16となるが製品内側となるので気になることはない。また、これらを短く整える後処理を行っても良い。
【0042】
外生地7及び内生地8を踵部2まで編成した後、シリンダ軸と連結したダイヤル回転軸のクラッチ操作によりシリンダ軸とダイヤル回転軸の連結を解除する。ダイヤル針は内生地の編み目を保持しつつダイヤルの回転が停止する。一方、外生地7はシリンダの往復回転によって目増やし、目減らしを行って踵部2−2を編成する。本願では踵はY字型に形成されているが、袋形状であってもよい。
【0043】
外生地の踵部2−2編成終了後、クラッチを戻してシリンダの回転とダイヤルの回転を同期させるとともに、シリンダで足首部5を編成する一方、ダイヤル針を編成状態に戻してコースごとに目を増やしながら、収納部12、13の上部へ向けて内生地8を形成する。
【0044】
内生地の上部分8e、数コースは編成箇所8fと非編成箇所8gとを交互に形成しながら、内生地8と外生地7の連結を行う。非編成箇所8gは穴目となって表出している。内生地と外生地をゆるやかに連結して、収納部を伸長させやすく保持すると共に収納部の耐久性を高めるためである。
【0045】
この実施例では踵の上下にわたる大きな収納部を形成している。回転軸のクラッチ操作でダイヤルの回転を停止させ、シリンダの正逆回転の影響を受けないように内生地を保持するため、踵編成の前後で内生地の編成を終了、再開させる手間が省け、分断されない一連の二重編成部の形成が可能となったのである。
【0046】
収納部12、13の開口部8a、8bは下向きに開口しているが、収納部に使用された弾性糸と収納部の形状によって開口部を閉じる手段を講じなくても良い。収納部に挿入したポリウレタンフォーム等からなる保護材等は収納部によって確実に保持され予期せぬ脱落を起こすことが無い。
【0047】
内生地8の編成終了後はシリンダ針のみを作動させてサポータ本体1の残り部分を編成する。
図1および
図2に示すようにゴム編みされた中央部11が足甲部に当接し、中央部11の左右に収納部12,13が配設される。このサポータ1を装着すると踝を中心とした足首及び足先が両側から保持、保護されるのである。
【0048】
収納ポケットの開口部8a、8bは、足先側に位置するので足首用サポータ1を装着するときに上部開口部3から足を挿入しても収納ポケットの開口部に誤って足先を差し入れることがなく、サポータの装着がスムーズである。一方、収納ポケットの開口部8a、8bが下方を向いていても当該部分は弾性の高い糸を使用して編成されているため収容物が落下することはない。
【0049】
収納ポケットに挿入する保護パッド10は踝を大きく覆うように略しゃもじ型となっているため、まず、二つ折りにして収納ポケット12,13へ挿入し、挿入後に先端部を広げてポケット内に配置する。収納ポケットは伸縮性の高い弾性糸で編成されているため良く伸張して保護パッド10を確実に保持するのである。
【0050】
上述のような筒状ニット製品の一部に二重編成部を形成する編成方法はサポータのみに限定されずに爪先を有する、即ち収納ポケット付靴下にも適用することができる。爪先部を形成して靴下にすることで、収納ポケットに挿入したサポート部材が位置ずれを起こさずより確実に所望の効果を奏することができる。
【0051】
このように本願の二重編成部を有するニット製品には、ダイヤル針とシリンダ針のニッティングによる一重編みとなる部分と、シリンダ針とダイヤル針とが別々に編成を行って成る、二重編成部が一又は複数形成されるのである。二重編成部は周縁部を残して内生地と外生地が乖離した状態で存在している。
【0052】
続いて本願発明を膝用サポータに応用した実施例について説明する。
【0053】
図4は、足甲部の内側に二重編成部から成る収納部を有する足首用サポータ17の斜視図である。足首用サポータ17はフット部18、踵部19及びレッグ部20を有し、履き口21及び爪先部22の開口部は、ずれ防止のためにゴム糸を挿入して編成する。このサポータ17は収納ポケット23が足甲部24の裏側に位置し、収納部へ保護クッションを挿入して、足甲部の保温と共に落下物等からの保護を図ることを目的とする。
【0054】
サポータ本体17の編成方法は通常の足首用サポータと同様であり、フット部18及びレッグ部20は、丸編み機におけるシリンダの全周を編成範囲として使用し、複数のコースを順次繰り返すことにより編成される。このレッグ部20の編成に連続して踵部19の編成を行う。
【0055】
踵部19は、シリンダの略半周分の編み針を使用し、このシリンダの編成範囲以外にある長バットニードルを非編成レベルに上げると共に、前記シリンダの編成範囲にある短バットニードルにてシリンダの正逆復回転により針上げピッカー及び針下げによる目減らしと目増やしを行って前記レッグ部20の筒状体の一側に袋状の編地を編成して踵部19を形成する。 この実施例では、目減らしと目増やし工程を交互に二回行うことでY字状のゴアラインが形成され、踵部19の編地面積が広くより立体的な踵袋となって踵によくフィットし、サポータ17のずれ防止効果を奏する。
【0056】
前述の収納部を二か所に有するサポータ1と同様、サポータ本体の編成と同時に収納ポケット23の編成も行われるが、踵部19を編成中は、サポータ本体の筒状部の編成を休止するだけでなく、収納ポケット23を編成するダイヤル針も非編成レベルに保持しながら、回転軸のクラッチ操作によってダイヤル自体の回転を停止させるのでレッグ部からフット部まで連続する収納ポケット23を容易に形成することができる。
【0057】
収納ポケット23がレッグ部とフット部で分割されず一つの大きな収納部を形成するので、一枚の保護部材を収納でき、足甲回りをより強力に保護することができる。
収納ポケットの形成位置を足裏に配置し押圧部材を収納することで足裏を刺激するように作用させることも可能である。 続いて膝用サポータ25の実施例について説明する。
【0058】
図5が膝用サポータ25の斜視図、
図6が同、膝用サポータ25を裏返した状態で収納ポケット26に保護用クッション30を挿入する状態を示す説明図である。
【0059】
膝用サポータ25は
、外周面に複数の針床を設けた円筒状のシリンダとシリンダの上に配置されて、シリンダと共に回転する円盤形の針床(ダイヤル)などを備えた丸編み機であって、ダイヤル本体に設けられた半径方向の複数の溝内に水平に配置された操作部材を有し、ダイヤルの針がシリンダの針とは個別に編目を作るように編目の形成がコントロールされている丸編み機を使用して編成される。この機械を使用すると本体とは別に編目を形成して編成した異なる編地を、本体と同時に編成すると共に本体への連結も同時に行うことができるのである。
【0060】
膝用サポータ25は、膝関節全周を覆う円筒形状のサポータであり、長さを膝上からふ
くらはぎの最大部の位置までとし、膝蓋骨を覆う膝当て部25aから左右両側部25bを経て膝裏側へと続き、膝当て部25aの内側に保護部材としてのクッション30を収納する収納ポケット26が形成されており、膝裏に当接する側25cは汗等による蒸れを低減するために粗い編目で編成する。
この膝用サポータ25を装着すると、クッション30が内装された膝当て部25aが膝蓋骨を覆って外部からの衝撃を吸収、軽減することができる。
【0061】
膝用サポータ25はまず、シリンダを正回転させて編み込む正転編により足挿入口部27を編成する。膝上からのズレを防止するべく足挿入口部27にはゴム糸等の弾性糸を挿入して編成する。足挿入口部27に連続して本体部28を正転編により所定コース編成し、最後に下部29を足挿入口部27と同様ゴム糸を挿入して編成する。サポータ本体にも製品としての機能上、伸縮性を有する各種糸が使用されており肌あたりが良く装着性に優れる。
【0062】
膝用サポータ本体と同時に収納ポケット26を構成する編目がダイヤル針によって形成されてサポータ本体と同時に編成され、収納部の両側縁部26bはシリンダ針とダイヤル針とを交差させて編成することで収納ポケット26とサポータ25が連結される。収納ポケット26の編成に使用される糸はコースごとに編み始めポイントで供給され、編み終わりポイントでカットされる。
【0063】
収納ポケット26の上部は
図6に示すように、動作させるダイヤル針数を減らして開口部26aに近づくに従って先細りに形成される。開口部26aには、収納ポケット26本体に使用される糸よりもより伸縮性が高く丈夫なゴム糸でされるため収納物の出し入れを容易にするとともに脱落を防止する。
【0064】
収納ポケット26はサポータ本体25よりもさらに伸縮性を有する細い糸を使用して粗い編目(たとえばメッシュ状)に編成され、内容物を確実に保持しつつ、二重生地でありながらサポータ内部で収納物がだぶつくこともなく且つ、軽く、薄く仕上がるので高い通気性を有する完成品となり快適な装着感を得ることができるのである。 収納ポケット26がサポータ本体25へ編成と同時に連結されるため、別工程でポケットを取り付けるときに生じる縫い目が生じず、外観は通常のサポータと同一である。従って、収納部品を収納せずにサポータのみとして装着する場合でも違和感なく使用することができる。この膝用サポータ25は内装されたクッションによる膝の保護だけでなく、膝周辺部の保温効果も奏する。
【0065】
この膝用サポータは同一形状をサイズダウンすることでひじ用サポータに容易に応用可能である。
【0066】
本発明では、縫製ではなく編みの段階でポケットを付けるため、ポケット用別布を用意して本体に取り付ける工程を不要とし、取り付け個所もスムーズで装着感に優れる。
収納ポケット用編目を作るタイミングや使用する糸によって編成場所や数を選択でき、編目数や編目の増減によって各種収納部品に最適な形状、大きさ、強度のポケットを形成することができ、クッション材としての低反発ウレタンフォームに限らずカイロやレガース等様々なものを挿入することができる。
【0067】
例えば、強度に優れた収納ポケットを膝の内外側副靭帯に沿ってそれぞれ形成し、硬質の保護部材を収納して靭帯を保護すると共に、膝蓋骨を左右から支えて膝関節を安定させ、膝への負担を軽減する機能を付与したサポータを製造することも可能である。
【0068】
収納ポケットに収納する物品は、各種保護材としては、スポンジ、低反発クッション、
ゲル状物質、パウダービーズ等を充填した袋体等の柔らかなもの、逆に板状樹脂等から成る硬質のレガース等のプロテクタが考えられる。適度な形態安定性と変形性を併せ持つ保護材は、関節の動きや表面形状に添った形状に変化し、違和感なく局所に密着して機能を発現でき、プロテクタ等は本体と一体形成された収納ポケットで確実に保持することで、装着中に移動やずれを生じることなく外から受ける衝撃から局部を効果的に守るのである。
【0069】
本願発明に係るニット製品は、関節等の保温、保護が不可欠な高齢者に適した製品となりまた、クッションの大きさ、保温力を変えたものを取り替え自在にポケットに収容することができるため保護力及び保温力も任意に調節可能である。収納物の取り出しが自在であるため洗濯容易で乾燥時間も短くて済み、衛生的な状態を保持できる。 その他の収納部品としては、保温或いは冷却を目的として携帯用カイロや各種冷却材等があり、また筋肉やツボを押圧する押圧部材、コリをほぐす磁石、抗菌剤、防臭剤、香料等が考えられる。
【0070】
続いて手首用サポータ35について図面7を参照しながら説明する。 この実施例のように指袋32,33を有する手袋型サポータは身体への密着度が高く、装着したままで様々な作業を行ってもサポータ本体のずれを生じさせることがない。この指袋はいったん筒型に編成した本体の先端部を切り開いた後、縫製により形成する方法もあるし、また、筒型サポータ本体の編成から連続して指袋32,33を一体編成することも可能である。また、手首のみならず、手指の付け根、手のひらの保護及び保温効果も奏するのである。 履き口34や指用開口部32,33にはゴム糸等の弾性糸を使用してサポータ本体より高い伸縮性を付与している。
【0071】
収納ポケット31の製造方法は前述のとおりであるが、先端部を先細りに延長形成することで指の付け根周辺まで保護することができる。収納ポケット31に保護パッド等のクッション材を挿入することで、手を保温するだけでなく転倒時に手をついても指や指の付け根への衝撃を低減して骨折を未然に防止することができる。収納ポケット31は使用用途に応じて手の甲側、手のひら側のいずれか或いはその両方に形成する。柔軟性及び弾力性に優れた低反発性の薄手保護パッドを使用すると手及び指の動きを過度に制約することなく、長時間装着した状態でも日常生活に支障をきたすことがない。
【0072】
また、転倒時の腰への衝撃の低減を目的として、ガードル等の下着の腰部に二重編成部を形成しても良い。二重編成部そのものがクッションとして機能し、また、開口部を設けて収納ポケットにすることで各種保護部材を内装できる。 手首用サポータ等のような製品自体が小さいものは内部に形成するポケットとなる部材も小さいものとなって取り付け作業が細かく、面倒であったが、本願ではサポータの編成と同時に二重編成部が収納部として形成されるので作業効率が良い。
【0073】
最後に本体をメッシュ状に編成したネット包帯の実施例について説明する。
図8が膝に装着する膝用ネット包帯39を装着した状態を示す説明図である。膝用ネット包帯39は伸縮性を有する細い糸を使用して目の粗いメッシュ状に編成された、高い通気性を有する筒状ニット製品であって両端部にゴム編みされた口編み部36,37を有する。シリンダ針で編成された包帯本体の膝裏部にダイヤル針を使用して内生地を編み立て、二重編成部38を設けるのである。二重編成部38の周縁はシリンダ針とダイヤル針を交差させて編成するので二重編成部38は包帯本体と周縁部で連結され、それ以外の部分は包帯本体とは乖離した内生地となっている。
【0074】
外生地と内生地の二重生地によって患部が保護、保温され、また、膝のけがや関節の治療のために膝に貼り付けられたガーゼやシップ薬を内生地によって保持、保護することが
できる。内生地の編成糸に抗菌・制菌或いは防臭機能を有する糸を使用すると患部の衛生状態を保ちながら安心して使用することができる。また、二重編成部の一部を開口して収納部とし、薬剤を含ませたガーゼを収納して患部に当接し、保冷材或いはカイロ等を挿入して患部を冷却或いは保温することもできる。
【0075】
次に請求項4に記載した丸編みニット製品の実施例について説明する。
図9は足首より下部を保護するネット包帯48を装着した状態を示す説明図である。当該足首用ネット包帯48は上部包帯40と下部包帯41を別々に編成後縫製によって一体化して成り、踝付近に縫着線44が表出している。それぞれ口編み部42,43から編成を開始し、包帯本体40,41をシリンダで編成し、同時に内生地46,47をダイヤルで編成、連結していく方法は上述のとおりである。それぞれの編み終わりとなる開口部の一部45を残して縫い合わせて二重編成部を有する上部包帯40と下部包帯41を接続するのである。
【0076】
装着時には、縫合されずに開口状態となった踵部45に踵が嵌り込んで包帯のずれが防げる。この実施例では二重編成部を足底と足首前方に形成したが、二重編成部の位置や大きさ、数は変更可能であり、また二重編成部の一部を開口して収納部とすることも自在である。また、同様に腕用サポータや腕用ネット包帯として形成すると、縫合せずに残した開口部にひじが嵌り込み、ずれ防止となるのである。
【0077】
図10は手首に装着するネット包帯53の正面図である。ネット包帯53は親指を挿入する親指用開口部49と他の四指を挿入する開口部50を有する。手首の挿入部51からネット包帯本体となる外生地をシリンダを使用して筒状に編成し、途中からダイヤル針の一部を使用して二重編成部52を編成しながらネット包帯本体に連結していく方法は今まで説明してきたとおりである。
【0078】
図11は指用ネット包帯54を指に装着した状態を示す説明図である。指用ネット包帯は上部54aが閉じられた袋状に編成され、途中からダイヤル針の一部も作動させて内生地55を編成し二重編成部を有する指用ネット包帯54を完成させるのである。
続いて、本願発明を外反母趾用靴下に応用した実施例について説明する。
【0079】
図12は、本願の外反母趾矯正靴下56の右側を示す斜視図、
図13bが靴下56の左足用の正面と裏返した状態の背面(
図13a)を示す図面である。
この靴下56の母指の付け根に当接する部分を強い弾性力を有する糸で二重に編成し、足の幅方向に縮もうとする力によって中足骨や中足関節部を締め付けて元の位置に戻して固定し、その結果足指を広げる効果を付与して外反母趾の矯正効果を奏する靴下を提供するのである。
【0080】
靴下56本体は丸編み機のシリンダによって筒状に形成され、履き口57、足首部58、踵部59、フット部61及びつま先部62から構成される高伸縮性の編地から成る。母指の付け根付近まで編み進んだ後にダイヤル針で二重編成部63を編成すると同時にその周縁を靴下本体に連結していくのである。
【0081】
外反母趾の矯正効果を高めるために、つま先部62における母趾と第二指間に位置するあたりに、母趾と第二指間を広げる圧迫部材67をダイヤル針を作動させてパイル編みで短い帯状に編製する。靴下編成後に、圧迫部材を囲むようにつま先部62を略V字型に縫着することで縫着線64を境にして母趾を嵌入する母趾収納部65と他の四指を嵌入する収納部66に分割する。
【0082】
つま先部62の内部は二つの収納部に緩やかに分割されながら、表からは縫着線64の
みが認識され、靴下のつま先部62が内部で二股に分かれていることは容易に認識されにくい構造となっている。
【0083】
縫着線64の形状はV字状に限られるものではなく、U字状等、圧迫部材を囲みかつ、つま先部を分割するものであれば良い。
【0084】
パイル編み地から成る圧迫部材67は種々の症状に合わせて数、大きさ、長さ、形状及び位置の変更が自在である。実施例では母趾と第二指間に設けているが、第四指と第五指との間にも圧迫部材を設けることで内反小指を効果的に予防、矯正することも可能である。
【0085】
また、母趾の外反度に応じて圧迫部材の大きさを選択することが可能である。また靴下の足底で足指の付け根が当接する付近に、パイル編みで内生地を編成しクッション材68とすることも可能である。
【0086】
ハンマートゥの症状がひどい場合は歩行時に足指が機能せず足裏部が接地するため衝撃が直接足裏に及んで痛みを生じる。そこでパイル編み地を足裏の接地部に広く配設してクッション材とすることもできるのである。その場合もクッション材となるパイル編みは靴下やサポータ本体の編製時に同時に形成することができる。
【0087】
クッション材は、指間を拡開する圧迫部材と連設することもできるし、分離独立して形成することも可能である。
【0088】
本願の外反母趾矯正靴下は上述のように靴下形状に具体化するだけでなく本願の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形状に具現化可能である。