【手段】 (a)木材チップに温水を添加する工程、(b)少なくとも1つのストレーナーを有する前加水分解釜にて、木材チップを水熱処理して木材チップに含まれるヘミセルロースを加水分解する工程、(c)水熱処理後の木材チップと加水分解液とを分離する工程、(d)分離した木材チップをクラフト蒸解して溶解クラフトパルプを得る工程、を含む、溶解クラフトパルプを連続製造する方法において、前記工程(c)において前加水分解釜のストレーナーより加水分解液の一部を抜き出して、工程(a)で木材チップに添加する温水と共に添加する。
前加水分解釜のストレーナーが、木材チップを供給する供給口と加水分解された木材チップを排出する排出口との間に設置されていることを特徴とする、請求項1ないし2記載の溶解クラフトパルプを連続製造する方法。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クラフト蒸解前の前加水分解処理において、前加水分解液中に糖類、フルフラール類が生成する。従って、溶解パルプの製造と同時に、これらの有用な物質を製造することができる。
【0006】
本発明の課題は、溶解クラフトパルプを効率的に連続製造し、加水分解液より糖類、フルフラール類を高濃度で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、以下に示す方法により、溶解クラフトパルプを効率的に連続製造し、加水分解液の糖類、フルフラール類を高濃度で製造する方法を提供することが可能となることを見出した。
(a)木材チップに温水を添加する工程、
(b)少なくとも1つのストレーナーを有する前加水分解釜にて、木材チップを水熱処理して木材チップに含まれるヘミセルロースを加水分解する工程、
(c)水熱処理後の木材チップと加水分解液とを分離する工程、
(d)分離した木材チップをクラフト蒸解して溶解クラフトパルプを得る工程、
を含む、溶解クラフトパルプを連続製造する方法において、
前記工程(c)において前加水分解釜のストレーナーより加水分解液の一部を抜き出して、工程(a)で木材チップに添加する熱水と共に添加することを特徴とする、溶解クラフトパルプを連続製造する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、溶解クラフトパルプを効率的に連続製造することが可能となり、加水分解液より糖類、フルフラール類を高濃度で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、溶解クラフトパルプの製造技術に関する。本発明において溶解クラフトパルプ(DKP)とは、クラフト蒸解法(KP法)によって製造される溶解パルプである。溶解パルプとは、化学的に精製されたセルロース純度の高いパルプを意味し、好ましい態様においてα−セルロース含有率が90%以上である。一般に木材はセルロース、リグニン、ヘミセルロースの三大成分と少量の樹脂分、灰分などを含んでいるが、溶解パルプはセルロース純度が高く、化学繊維、セロハン、プラスチック、合成糊料、その他いろいろなセルロース系誘導体の原料として広く利用されている。
【0010】
本発明の原料は木材チップである。本発明においては、針葉樹材の木材チップを含むことが好ましく、そのサイズや樹種は特に制限されず、単一種類の木材のチップでも2種以上の木材が混合されたチップでもよい。本発明においては、比較的、蒸解や漂白が難しいとされる針葉樹材の樹種であっても、高品質な溶解パルプを効率良く製造することができる。本発明において使用される針葉樹材のチップとしては、例えば、カラマツ属やマツ属の木材チップを好適に使用することができる。カラマツ属に関しては、例えば、Larix(
以下、L.と略す)leptolepis(カラマツ)、L. laricina(タマラック)、L. occidentalis(セイブカラマツ)、L. decidua(ヨーロッパカラマツ)、L. gmelinii(グイマツ)
などが挙げられる。また、カラマツ属以外の針葉樹としては、例えば、マツ属に関しては、Pinus radiata(ラジアータマツ)など、トガサワラ属に関しては、Pseudotuga(以下、P.と略す)menziesii(ダクラスファー)、P. japonica(トガサワラ)など、スギ属に関しては、Cryptomeria japonicaなどを挙げることができる。
【0011】
本発明において広葉樹材の木材チップを原料として使用することもできる。広葉樹材の木材チップとしては、例えば、ユーカリ属木材チップを好適に使用することができる。ユーカリ属に関しては、Eucalyptus(以下、E.と略す) calophylla、E.citriodora、E.diversicolor、E.globulus、E.grandis、E.gummifera、E.marginata、E.nesophila、E.nitens、E.amygdalina、E.camaldulensis、E.delegatensis、E.gigantea、E.muelleriana、E.obliqua、E.regnans、E.sieberiana、E.viminalis、E.camaldulensis、E.marginataなどを挙げることができる。
【0012】
温水を添加する工程
木材チップは水熱処理工程の前で温水が添加される。温水はチップビンから前加水分解釜の間、例えば、チップメータースクリュー、チップチューブにて添加する。
【0013】
前加水分解工程(水熱処理工程)
本発明では蒸解を行う前の前処理として、木材チップに対して水熱処理を行って、木材チップ中のヘミセルロース分を水溶性の糖に分解して、除去する。前処理としての水熱処理(前加水分解)は、木材チップを高温の水で処理することによって実施される。添加する水は、熱水でも水蒸気の状態でもよい。加水分解の進行によって有機酸等が生成するので、処理液のpHは2〜5となるのが一般的である。
【0014】
水熱処理は少なくとも1つのストレーナーを有する前加水分解釜にて行う。前加水分解釜は、頂部供給口から供給した木材チップを加圧・加熱条件に維持しつつ前加水分解釜内を移動させながら木材チップを連続的に加水分解処理して、ヘミセルロース分を除去する。ヘミセルロース分が除去された木材チップ、加水分解液は前加水分解釜の底部より排出され、クラフト蒸解釜へ供給される。また、前加水分解釜に設けられたストレーナーより加水分解液を取り出すことができる。
【0015】
取り出された加水分解液の一部あるいは全部を木材チップに温水を添加する工程において、温水と共に添加する。加水分解液を木材チップに添加する温水全量に対して20〜80%となるように添加することが好ましく、40〜80%となるように添加することがさらに好ましい。加水分解液の添加量が20%未満であると、得られる加水分解液中の糖類、フルフラール類の濃度の上昇幅が小さい。加水分解液の添加量が80%を超えると、加水分解液中の糖類、フルフラール類の濃度は高いが、加水分解液の量が少なくなるため収率が低下する。
【0016】
水熱処理は、150〜180℃の温度範囲で行うことが好ましい。温度が150℃未満であれば、ヘミセルロースの除去が不十分となり、180℃を超えると加水分解が過剰となりα−セルロース分も低下してしまう。処理時間は特に制限されないが、15〜400分が好ましく、20〜250分がより好ましく、25〜150分がさらに好ましい。処理時間が短すぎると、ヘミセルロースの除去が不十分となり、ヘミセルロースを除去したことによる脱リグニン性の向上効果も少なくなる。一方、処理時間が長すぎると、加水分解が過剰となりα−セルロース分が減少してパルプ収率の低下を招くとともに、リグニンの縮合により、後に続く蒸解工程における蒸解性の悪化を招いてしまう。
【0017】
また、本発明における水熱処理は、Pファクター(Pf)を指標として、処理温度及び処理時間を設定することができる。Pファクターとは、前加水分解処理で反応系に与えられた熱の総量を表す目安であり、本発明では下記式によって表わされ、チップと水が混ざった時点から蒸解終了時点まで時間積分することで算出する。
【0018】
Pf=∫ln
−1(40.48−15106/T)dt
[式中、Tはある時点の絶対温度を表す]
本発明における水熱処理は、Pファクター(Pf)が350〜900となる範囲で行うことが好ましく、500〜800がさらに好ましい。Pfが350未満であれば、ヘミセルロースの除去が不十分となり、ヘミセルロースを除去したことによる脱リグニン性の向上効果も少なくなる。また、Pfが900を超えると、加水分解が過剰となりα−セルロース分が減少してパルプ収率の低下を招くとともに、リグニンの縮合により、後に続く蒸解工程における蒸解性の悪化を招いてしまう。
【0019】
水熱処理工程は、木材チップと水を耐圧性容器(前加水分解釜)に入れて行うことができるが、容器の形状や大きさは特に制限されない。
【0020】
水熱処理釜(前加水分解釜)に木材チップと水を供給する際の比率は1.0〜2.3L/kgとすることが好ましい。前加水分解釜に供給する木材チップと水の比率は動的液比とも呼ばれ、木材チップ1kgあたりの水の量として示される。動的液比が1.0L/kg未満であると、木材チップに対して水が少なすぎるために加水分解が不十分となり、液比が2.3L/kgを超えると前加水分解釜の頂部において気相部が十分に確保できないので好ましくない。なお、水には木材チップと共に供給する水だけではなく、木材チップに含まれる水分、ドレン水等も含まれる。
【0021】
また、前加水分解釜内において木材チップと水の液比は、例えば、1.0〜5.0L/kgとすることができ、1.5〜4.5L/kgが好ましく、2.0〜4.0L/kgがさらに好ましい。液比が1.0L/kg未満であると、木材チップに対して水が少なすぎるために加水分解が不十分となり、液比が5.0L/kgを超えると容器の大きさが過大となるので好ましくない。また、必要に応じて、少量の鉱酸を添加してもよい。
【0022】
水熱処理で発生する前加水分解液にはヘミセルロースの加水分解で生成する糖類、フルフラール類を主成分とする有機物が含まれている。すなわち、本発明において溶解クラフトパルプに加えて、糖類、フルフラール類を同時に製造することが可能である。製造されるフルフラール類としては、フルフラール、5−ヒドロキシメチルフルフラール等が挙げられる。また、製造される糖類はオリゴ糖、単糖等で、オリゴ糖類としては、キシロオリゴ糖、セロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等が挙げられ、生成する単糖類としては、キシロース、アラビノース、グルコース、ガラクトース、マンノース等が挙げられる。
【0023】
チップの回収工程
次いで、本発明においては、加水分解処理後の木材チップと加水分解排液とを分離し、加水分解排液と木材チップを回収する。好ましい態様において、前加水分解処理後の木材チップは、前加水分解排液と分離した後、チップを十分に水で洗浄して回収する。不十分な洗浄では、後続の蒸解工程において悪影響が生じる場合がある。
【0024】
加水分解液の洗浄、除去は、一般的な固液分離装置などを用いることによって行うことができる。例えば、前加水分解釜に抽出スクリーンや濾布などの固液分離装置を設け、容器下部から洗浄水を導入してスクリーンから抽出して向流洗浄することができる。
【0025】
蒸解工程
洗浄後のチップは、蒸解液と共に蒸解釜へ投入され、一般的な条件で蒸解に供する。また、MCC、EMCC、ITC、Lo−solidなどの修正法の蒸解に供しても良い。また、1ベッセル液相型、1ベッセル気相/液相型、2ベッセル液相/気相型、2ベッセル液相型などの蒸解型式なども特に限定はない。好ましくは、蒸解を終えた未晒パルプは蒸解液を抽出後、ディフュージョンウォッシャーなどの洗浄装置で洗浄する。洗浄後の未晒パルプのカッパー価は、針葉樹の場合、10〜22にすることが好ましく、12〜20としてもよい。広葉樹の場合、5〜20にすることが好ましく、6〜16としてもよい。
【0026】
蒸解工程は、水熱処理した木材チップを蒸解液とともに耐圧性容器に入れて行うことができるが、容器の形状や大きさは特に制限されない。木材チップと薬液の液比は、例えば、1.0〜5.0L/kgとすることができ、1.5〜4.5L/kgが好ましく、2.0〜4.0L/kgがさらに好ましい。
【0027】
蒸解液は、木材チップが針葉樹の場合、対絶乾木材チップ重量当たりの活性アルカリ添加率(AA)を16〜22質量%とすることが好ましい。活性アルカリ添加率を16質量%未満であるとリグニンやヘミルロースの除去が不十分となり、22質量%を超えると収率の低下や品質の低下が起こる。ここで活性アルカリ添加率とは、NaOHとNa
2Sの合計の添加率をNa
2Oの添加率として換算したもので、NaOHには0.775を、Na
2Sには0.795を乗じることでNa
2Oの添加率に換算できる。
【0028】
また、本発明においては、絶乾チップ当たり0.01〜1.5質量%のキノン化合物を含むアルカリ性蒸解液を蒸解釜に添加してもよい。キノン化合物の添加量が0.01質量%未満であると添加量が少なすぎて蒸解後のパルプのカッパー価が低減されず、カッパー価とパルプ収率の関係が改善されない。さらに、粕の低減、粘度の低下の抑制も不十分である。また、キノン化合物の添加量が1.5質量%を超えてもさらなる蒸解後のパルプのカッパー価の低減、及びカッパー価とパルプ収率の関係の改善は認められない。
【0029】
使用されるキノン化合物はいわゆる公知の蒸解助剤としてのキノン化合物、ヒドロキノン化合物又はこれらの前駆体であり、これらから選ばれた少なくとも1種の化合物を使用することができる。これらの化合物としては、例えば、アントラキノン、ジヒドロアントラキノン(例えば、1,4−ジヒドロアントラキノン)、テトラヒドロアントラキノン(例えば、1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン、1,2,3,4−テトラヒドロアントラキノン)、メチルアントラキノン(例えば、1−メチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン)、メチルジヒドロアントラキノン(例えば、2−メチル−1,4−ジヒドロアントラキノン)、メチルテトラヒドロアントラキノン(例えば、1−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン、2−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン)等のキノン化合物であり、アントラヒドロキノン(一般に、9,10−ジヒドロキシアントラセン)、メチルアントラヒドロキノン(例えば、2−メチルアントラヒドロキノン)、ジヒドロアントラヒドロアントラキノン(例えば、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン)又はそのアルカリ金属塩等(例えば、アントラヒドロキノンのジナトリウム塩、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウム塩)等のヒドロキノン化合物であり、アントロン、アントラノール、メチルアントロン、メチルアントラノール等の前駆体が挙げられる。これら前駆体は蒸解条件下ではキノン化合物又はヒドロキノン化合物に変換する可能性を有している。
【0030】
蒸解は、120〜220℃の温度範囲で行うことが好ましく、150〜180℃がより好ましい。温度が低すぎると脱リグニン(カッパー価の低下)が不十分である一方、温度が高すぎるとセルロースの重合度(粘度)が低下する。また、本発明における蒸解時間とは、蒸解温度が最高温度に達してから温度が下降し始めるまでの時間であるが、蒸解時間は、120分以上10時間が好ましく、60分以上240分以下が好ましい。蒸解時間が60分未満ではパルプ化が進行せず、10時間を超えるとパルプ生産効率が悪化するために好ましくない。
【0031】
また、本発明における蒸解は、Hファクター(Hf)を指標として、処理温度及び処理時間を設定することができる。Hファクターとは、蒸解過程で反応系に与えられた熱の総量を表す目安であり、下記の式によって表わされる。Hファクターは、チップと水が混ざった時点から蒸解終了時点まで時間積分することで算出する。
【0032】
Hf=∫exp(43.20−16113/T)dt
[式中、Tはある時点の絶対温度を表す]
本発明においては、蒸解後得られた未漂白パルプは、必要に応じて、種々の処理に供することができる。
【0033】
一つの態様において、蒸解で得られたパルプに酸素脱リグニン処理を行うことができる。本発明に使用される酸素脱リグニンは、公知の中濃度法あるいは高濃度法がそのまま適用できる。中濃度法の場合はパルプ濃度が8〜15質量%、高濃度法の場合は20〜35質量%で行われることが好ましい。酸素脱リグニンにおけるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用することができ、酸素ガスとしては、深冷分離法からの酸素、PSA(Pressure Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorption)からの酸素等が使用できる。
【0034】
酸素脱リグニン処理の反応条件は、特に限定はないが、酸素圧は3〜9kg/cm
2、より好ましくは4〜7kg/cm
2、アルカリ添加率は0.5〜4質量%、温度は80〜140℃、処理時間は20〜180分、この他の条件は公知のものが適用できる。なお、本発明において、酸素脱リグニン処理は、複数回行ってもよい。
【0035】
酸素脱リグニン処理が施されたパルプは、例えば、次いで洗浄工程へ送られ、洗浄後、多段漂白工程へ送られ、多段漂白処理を行うことができる。本発明の多段漂白処理は、特に限定されるものではないが、酸(A)、二酸化塩素(D)、アルカリ(E)、酸素(O)、過酸化水素(P)、オゾン(Z)、過酸等の公知の漂白剤と漂白助剤を組み合わせるのが好適である。例えば、多段漂白処理の初段は二酸化塩素漂白段(D)やオゾン漂白段(Z)を用い、二段目にはアルカリ抽出段(E)や過酸化水素段(P)、三段目以降には、二酸化塩素や過酸化水素を用いた漂白シーケンスが好適に用いられる。三段目以降の段数も特に限定されるわけではないが、エネルギー効率、生産性等を考慮すると、合計で三段あるいは四段で終了するのが好適である。また、多段漂白処理中にエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)等によるキレート剤処理段を挿入してもよい。
【0036】
本発明によって製造された溶解クラフトパルプ(DKP)は、ヘミセルロースや各種フェノール類が除去されているため、通常の酸素脱リグニン処理や漂白処理により高品質の溶解クラフトパルプを容易に製造することができる。
【実施例】
【0037】
次に実施例に基づき、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に記載しない限り、本発明において、%などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとする。
【0038】
[実施例1]
図1に示すような前加水分解釜、クラフト蒸解釜を備える装置により溶解クラフトパルプを連続製造した。
ラジアータパインの木材チップに液比3.2(L/kg)となるようにチップメータースクリューにて温水を加え、前加水分解釜4に連続的に投入して、前加水分解温度170℃で、Pファクターを変更しながら、加水分解処理を行った。加水分解処理後の処理液のpHは3.3だった。この際、ストレーナー5より加水分解液を抽出し、抽出した加水分解液の一部を木材チップに添加する温水全量に対して20%となるように添加した。この加水分解液は下記の分析法に従い、フルフラール類濃度、ブリックス値を測定した。なお、ブリックス(Brix)値とは糖度とも言われ、ブリックス計(糖度計)により測定した測定値で、溶液中の糖類の量の尺度となるもので、1ブリックスはショ糖濃度1質量%に相当する。
続いて、木材チップはクラフト蒸解釜6に投入され、蒸解温度158℃で210分間、Hファクター(Hf)=1500でクラフト蒸解を行った。薬液は、活性アルカリ添加率(AA)16.5%で、活性アルカリ105g/L(Na
2O換算値)、NaOH75.6g/L(Na
2O換算値)、Na
2S29.4g/L(Na
2O換算値)、硫化度28%の組成で、木材チップと蒸解薬液との液比は3.2(L/kg)とした。
・加水分解液中のフルフラール類の濃度測定:RI検出器(RID-10A)を搭載したHPLCシステム(島津製)を用いた。カラムはイオン交換カラム(Aminex-HPX-87P、300×7.8mm)を使用し、5mM硫酸の溶離液を1.0ml/minの流速で測定した。
・加水分解液中のブリックス値の測定:加水分解液を孔径0.45μmのフィルターで濾過後、この濾液についてブリックス値をブリックス計(PAL−1、アタゴ社製)によって測定した。
【0039】
[実施例2]
抽出した加水分解液の一部を木材チップに添加する温水全量に対して80%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして溶解クラフトパルプを連続製造した。
【0040】
図2に実施例1、2の加水分解液中のフルフラール類の濃度とP−ファクターの関係を示した。
図2より、木材チップに添加する加水分解液を温水全量に対して20%(実施例1)から80%(実施例2)に増加させると、加水分解液中のフルフラール類の濃度が増加することが明白である。
【0041】
図3に実施例1、2の加水分解液中のブリックス値とP−ファクターの関係を示した。
図2より、木材チップに添加する加水分解液を温水全量に対して20%(実施例1)から80%(実施例2)に増加させると、加水分解液中のブリックス値、すなわち糖類の濃度が増加することが明白である。