特開2015-200146(P2015-200146A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 鹿島建設株式会社の特許一覧 ▶ 東京鐵鋼株式会社の特許一覧

特開2015-200146プレキャストコンクリート部材の接合方法およびプレキャストコンクリート部材
<>
  • 特開2015200146-プレキャストコンクリート部材の接合方法およびプレキャストコンクリート部材 図000003
  • 特開2015200146-プレキャストコンクリート部材の接合方法およびプレキャストコンクリート部材 図000004
  • 特開2015200146-プレキャストコンクリート部材の接合方法およびプレキャストコンクリート部材 図000005
  • 特開2015200146-プレキャストコンクリート部材の接合方法およびプレキャストコンクリート部材 図000006
  • 特開2015200146-プレキャストコンクリート部材の接合方法およびプレキャストコンクリート部材 図000007
  • 特開2015200146-プレキャストコンクリート部材の接合方法およびプレキャストコンクリート部材 図000008
  • 特開2015200146-プレキャストコンクリート部材の接合方法およびプレキャストコンクリート部材 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-200146(P2015-200146A)
(43)【公開日】2015年11月12日
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート部材の接合方法およびプレキャストコンクリート部材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20151016BHJP
   E04B 1/21 20060101ALI20151016BHJP
【FI】
   E04B1/58 503E
   E04B1/21 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-80731(P2014-80731)
(22)【出願日】2014年4月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390026723
【氏名又は名称】東京鐵鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(72)【発明者】
【氏名】荻原 行正
(72)【発明者】
【氏名】阿見 均
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA14
2E125AB12
2E125AC02
2E125AC07
2E125AG03
2E125BA44
2E125BB08
2E125BD01
2E125BE08
2E125BF06
2E125CA83
(57)【要約】
【課題】スリーブ継手を利用したプレキャストコンクリート部材の接合方法において、面倒な操作なしに、ワンタッチで雇い筋(接続用の鉄筋)の移動を行うことができるので、PCa部材の吊り込みも制限を受けることがない。
【解決手段】スリーブ継手を利用したプレキャストコンクリート部材の接合方法において、一方のプレキャストコンクリート部材1に雇い筋6(接続用の鉄筋)と雇い筋(接続用の鉄筋)の押し出し機構7を内蔵した特殊スリーブ3を内設し、相手方プレキャストコンクリート部材2のスリーブ4に向けて押し出し機構7により雇い筋6を押し出し挿入する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリーブ継手を利用したプレキャストコンクリート部材の接合方法において、一方のプレキャストコンクリート部材に雇い筋(接続用の鉄筋)と雇い筋(接続用の鉄筋)の押し出し機構を内蔵した特殊スリーブを内設し、相手方プレキャストコンクリート部材のスリーブに向けて押し出し機構により雇い筋を押し出し挿入することを特徴としたプレキャストコンクリート部材の接合方法。
【請求項2】
特殊スリーブの開口には雇い筋(接続用の鉄筋)係止のストッパーを設け、プレキャストコンクリート部材接合時にはその係止を解除する請求項1記載のプレキャストコンクリート部材の接合方法。
【請求項3】
スリーブ継手を利用した鉄筋継手接合に使用するプレキャストコンクリート部材であって、雇い筋と雇い筋の押し出し機構を内蔵した特殊スリーブを内設し、特殊スリーブ継手開口には雇い筋係止のストッパーを設けたことを特徴とするプレキャストコンクリート部材。
【請求項4】
雇い筋係止めのストッパーは閂であり、横並びの特殊スリーブの開口の複数に架け渡す請求項3記載のプレキャストコンクリート部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築工事におけるPCa部材(プレキャストコンクリート部材)の接合方法およびそれに使用するPCa部材(プレキャストコンクリート部材)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄筋継手は対向する二つの鉄筋定着手段を有し、これに接合しようとする一対の鉄筋の端部を定着することにより一対の鉄筋の突き合わせ接合がなされる。
【0003】
該定着手段には各種のものがあるがその一つにスリーブモルタル方式の定着手段がある。これはスリーブと称される筒体の中に鉄筋端部を挿入し該スリーブ内に充填されたグラウト(流動性の大きなモルタル)の硬化により鉄筋をスリーブ内に定着する方式の定着手段である。
【0004】
PCa部材(プレキャストコンクリート部材)の接合において、スリーブ継手を利用した鉄筋継手接合方法は、下記特許文献1にも開示されているが、一般に第一のPCa部材に接続すべき第二のPCa部材の端部に筒状のスリーブを埋設しておき、当該スリーブ内において両PCa部材の鉄筋同士を突き合わせつつ、両PCa部材同士を対向させ、その後、スリーブ内に充填材を充填する。
【特許文献1】特開平10−147978号公報
【0005】
このような、一方のPCa部材に通常のスリーブ継手を埋設し、これにもう一方のPCa部材から突出した主筋を挿入する従来の方法では、柱部材では上方から下方に向けてPCa部材を降下させながら簡便に行えるのに対して、梁部材では横方向にPCa部材を移動させながら行わなければならないという問題がある。
【0006】
さらに図3は現場の説明図で、αは柱、βは梁、γはパネルゾーンを示すが、前記に加えて(i)パネルゾーンγと梁βが一体になったPCa部材の場合は、柱頭上で横移動を可能とするため、柱PCaは“逆挿し工法”とならざるを得ない。
【0007】
また、(ii)パネルゾーンγと柱αが一体になったPCa部材の場合はパネルゾーンγに梁主筋を貫通させる横方向の孔を設ける工法とならざるを得ない。
【0008】
(i)(ii)いずれもPCa部材の取付けや目地及び柱梁主筋貫通孔内のモルタルグラウトが難しい。
【0009】
なお、下記特許文献はPCa梁部材同士を水平移動することなく接合作業するものとして提案されたものである。
【特許文献2】特開2008−69591号公報
【0010】
この特許文献2はプレキャスト鉄筋コンクリート梁部材同士の接合方法において、スリーブ継手を移動させる方法と、連結鉄筋を移動させる方法があり、前者は、一方の梁部材に配置された前記スリーブ継手を、他方の梁筋に向かって移動させスリーブ継手を双方の梁筋間に等しく跨らせて連結する。
【0011】
また、後者は、一方の梁部材には、連結鉄筋を装備可能なシース管を埋め込み、プレキャスト鉄筋コンクリート梁部材の端部同士を相対峙させ、突き合わせた状態で前記シース管内の連結鉄筋を他方の梁部材の端部に埋め込まれたスリーブ継手内へ挿入して跨らせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記特許文献2のスリーブ継手を他方の梁筋に向かって移動させることは、図3のパネルゾーンγでなければできない。その理由はプレキャスト鉄筋コンクリート梁部材の端部同士を相対峙させ、突き合わせた状態でスリーブ継手を他方の梁部材へ挿入して跨らせるのは不可能であることによる。
【0013】
さらに、スリーブ継手の梁筋間の移動は奥端近傍位置に止着された紐体を牽引することでおこなわれるもので、スムーズに移動させることが難しく、その操作が面倒である。
【0014】
連結鉄筋を他方の梁部材の端部に埋め込まれたスリーブ継手内へ挿入して跨らせる場合は手でこれを行うものとされ、凹部から手を差し入れて連結用鉄筋をスリーブ継手に向かって滑動させることが必要でその作業が面倒である。
【0015】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、スリーブ継手を利用したプレキャストコンクリート部材の接合方法において、面倒な操作なしに、ワンタッチで雇い筋(接続用の鉄筋)の移動を行うことができるので、PCa部材の吊り込みも制限を受けることがなく、例えば、梁PCa部材も鉛直方向の吊り込みが可能となるプレキャストコンクリート部材の接合方法およびプレキャストコンクリート部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するため本発明は、プレキャストコンクリート部材の接合方法として、第1に、スリーブ継手を利用したプレキャストコンクリート部材の接合方法において、一方のプレキャストコンクリート部材に雇い筋(接続用の鉄筋)と雇い筋(接続用の鉄筋)の押し出し機構を内蔵した特殊スリーブを内設し、相手方プレキャストコンクリート部材のスリーブに向けて押し出し機構により雇い筋を押し出し挿入すること、第2に、特殊スリーブの開口には雇い筋(接続用の鉄筋)係止のストッパーを設け、プレキャストコンクリート部材接合時にはその係止を解除することを要旨とするものである。
【0017】
また、プレキャストコンクリート部材として、第1に、スリーブ継手を利用した鉄筋継手接合に使用するプレキャストコンクリート部材であって、雇い筋と雇い筋の押し出し機構を内蔵した特殊スリーブを内設し、特殊スリーブ継手開口には雇い筋係止のストッパーを設けたこと、第2に、雇い筋係止めのストッパーは閂であり、横並びの特殊スリーブの開口の複数に架け渡すことを要旨とするものである。
【0018】
請求項1〜請求項3記載の本発明によれば、一方のプレキャストコンクリート部材に内設するスリーブを雇い筋(接続用の鉄筋)と雇い筋の押し出し機構を内蔵した特殊スリーブ(通常よりも長いスリーブ)とすることで、押し出し機構により雇い筋を自動的に押し出すことができる。
【0019】
これによりプレキャストコンクリート部材同士を突き合わせ状態で、雇い筋(接続用の鉄筋)を両プレキャストコンクリート部材同士のスリーブに掛け渡すことができ、スリーブと目地をモルタルグラウトすれば、接合が完成する。
【0020】
また、特殊スリーブ開口には雇い筋(接続用の鉄筋)係止のストッパーを設けることで、ストッパーにより雇い筋の押し出しのタイミングを確実なものとすることができる。
【0021】
請求項4記載の本発明によれば、雇い筋係止めのストッパーを閂とすることで、横並びの特殊スリーブ継手開口の複数に架け渡して複数の雇い筋の係止および解除を閂の抜き差しで一挙に行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたように本発明のプレキャストコンクリート部材の接合方法およびプレキャストコンクリート部材は、面倒な操作なしに、ワンタッチで雇い筋(接続用の鉄筋)の移動を行うことができるので、PCa部材の吊り込みも制限を受けることがなく、例えば、梁PCa部材も鉛直方向の吊り込みが可能となるものである。
【0023】
また、柱PCa部材についても、これをクレーンで吊り込むのではなく、例えば梁上端を走行する台車で所定の柱位置に水平移動する場合、柱PCa部材を一端持ち上げて、下階からの突出主筋を柱脚埋設主筋継手に挿入しなくても良く、走行台車に揚重機能を必要としない。
【0024】
さらに、パネルゾーンPCa部に“逆挿し工法”若しくは“パネルゾーン縦貫通雇い筋工法”を用いなくても、パネルゾーンPCaを柱頭上を横移動することが出来ると共にパネルゾーン縦貫孔が無くなる(レンコンPCaではなくなる)ので、モルタルグラウト作業が簡便化する。
【0025】
なお、パネルゾーンPCa部材を柱頭上で横移動させる必要性は、梁PCa部材に本発明を用いれば無くなる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のプレキャストコンクリート部材の接合方法およびプレキャストコンクリート部材の1実施形態を示す縦断側面図で、図中1、2はPCa部材(プレキャストコンクリート部材)であり、これらはスリーブ継手を利用した接合を行うものとして、それぞれ継手用のスリーブ3、4を埋設し、その開口5をPCa部材端面に顕出させた。なお、PCa部材1、2は梁PCa部材であること、柱PCa部材であることを問わない。
【0027】
スリーブ4は通常のスリーブ、スリーブ3は通常のスリーブよりも長さの長い特殊スリーブで(長さの点で特殊と称する)、この特殊スリーブ3には雇い筋(接続用の鉄筋)6と雇い筋(接続用の鉄筋)6の押し出し機構7を内蔵した。
【0028】
特殊スリーブ3、スリーブ4はPCa部材1、2の鉄筋8に被せるもので、その内壁面上には硬化グラウトとの係合強化のため多数の環状突起13が設けられている。
【0029】
押し出し機構7は本実施形態ではコイルスプリングバネで、雇い筋6をスリーブ開口5の方へ押し出すように付勢する伸長バネを用い、継手用特殊スリーブ3が嵌覆する鉄筋8と雇い筋6との間に介在させた。押し出し機構7は所要の長さまで伸長するコイルスプリングバネを圧縮して雇い筋6の後部に設置する
【0030】
なお、他の実施形態として押し出し機構7には板バネ等他のバネ、もしくは液体や気体で膨張し、その膨張力で押し出す部材、シリンダー等の伸縮機構で、伸長力で押し出す部材なども利用できる。
【0031】
また、図示のように二つの定着手段がすべてスリーブモルタル方式の継手(1本の筒体の形状をなす)をモルタル充填式鉄筋継手またはスリーブ継手という。図示の例はこれであるが、他の実施形態としては、片方が同方式でもう一方が他の定着手段(螺着方式等)の場合のハーフスリーブ継手、特にこれが螺着方式の場合をネジスリーブ継手であってもよい。
【0032】
特殊スリーブ3、スリーブ4の両開口付近の側壁には注入口9aおよび排出口9bが設けられる。
【0033】
ハーフスリーブ継手の場合には、スリーブ部の開口付近には注入口、他の定着手段との境界付近には排出口が設けられている。
【0034】
特殊スリーブ3の開口5には雇い筋6の係止のためのストッパー10を設け、PCa部材1、2の接合時にはその係止を解除する。
【0035】
本実施形態では、ストッパー10は、鉄筋等の鋼棒による閂であり、PCa部材接合面から出張らない様に、PCa部材1の接合面に掘られた溝11内に配置する。
【0036】
この溝11には特殊スリーブ3の開口5の位置を避けて、フック12が適宜間隔で設けられ、ストッパー10はこのフック12に差し入れることで、閂となる。
【0037】
前記溝11には特殊スリーブ3の開口5が適宜間隔で並ぶが、前記ストッパー10は、1本がこの横並びの特殊スリーブ3の開口5の複数個に架け渡すものとした。
【0038】
次に使用法および動作について説明する。PCa部材1は、雇い筋6の端面を抑える様にストッパー10をPCa部材断面を横断するように配置する。
【0039】
相対するPCa部材1、2を設置後、PCa部材1の外からストッパー10を引き抜くことにより、雇い筋押し出し機構7を作動させる。この時双方のPCa部材1、2共端面から主筋が突出していないのでPCa部材1、2の取付けは簡単である。
【0040】
このように双方のPCa部材1、2が目地を挟んで相対して設置された後、雇い筋押し出し機構7を作動させて雇い筋6を相対する通常のスリーブ4に挿入する。
【0041】
特殊スリーブ3、スリーブ4と目地をモルタルグラウトする。
【0042】
なお、前記のように、特殊スリーブ3、スリーブ4に「ねじスリーブ継手」を用いてもよい。PCa打ち込み主筋を“ねじ鉄筋”とすれば「ねじスリーブ継手」を用いることが出来、継手全長を短くすることが出来る。
【0043】
また、必要に応じて、雇い筋の径・強度をPCa部材打込み主筋と変えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明のプレキャストコンクリート部材の接合方法およびプレキャストコンクリート部材の1実施形態を示す雇い筋押し出し前の縦断側面図である。
図2】本発明のプレキャストコンクリート部材の接合方法およびプレキャストコンクリート部材の1実施形態を示す雇い筋押し出し後の縦断側面図である。
図3】現場でのプレキャストコンクリート部材の配置を示す説明図である。
図4】本発明のプレキャストコンクリート部材の要部の正面図である。
図5】本発明のプレキャストコンクリート部材の要部の縦断側面図である。
図6】本発明のプレキャストコンクリート部材の特殊スリーブの開口部の縦断側面図である。
図7】本発明のプレキャストコンクリート部材の特殊スリーブの開口部の正面図である。
【符号の説明】
【0045】
1、2…PCa部材(プレキャストコンクリート部材)
3…特殊スリーブ 4…スリーブ
5…開口 6…雇い筋(接続用の鉄筋)
7…押し出し機構 8…鉄筋
9a…注入口 9b…排出口
10…ストッパー 11…溝
12…フック 13…環状突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7