(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-200314(P2015-200314A)
(43)【公開日】2015年11月12日
(54)【発明の名称】内燃機関のタービン軸に取り付けられるピニオンを作成する方法
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20151016BHJP
【FI】
F02B39/00 T
F02B39/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-78589(P2015-78589)
(22)【出願日】2015年4月7日
(31)【優先権主張番号】14163882.5
(32)【優先日】2014年4月8日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】514319984
【氏名又は名称】エフピーティー モーターエンフォーシュング エージー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドラゴリューブ ミラノビッチ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】タービン軸上にピニオンを取り付ける方法を得地峡する。
【解決手段】内燃機関のタービン軸にピニオンPを取り付ける方法であって、前記ピニオンは、軸対称を有する単一片で作成され、環状歯付き部分及び前記環状部分と同軸の同軸穴を有し、タービンの前記軸にピニオンをねじ式に取り付けるねじ山を備えた同軸穴を有し、前記ねじ山が、局所的ピッチ変化を有する方法。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のタービン軸に取り付けられるピニオンを作成する方法であって、環状歯付き部分(2)及び前記環状部分(2)と同軸の軸方向部分(1)を有し、タービンの前記軸(SH)に前記ピニオン(P)をねじ式に留めるねじ山(TH1)を有する同軸穴(H)を備えたピニオンを、軸対称を有する単一片で作成する少なくとも1つの段階を含み、また前記ねじ山(TH1)を局所的ピッチ変化を有するように作成する手順を含む方法。
【請求項2】
前記軸方向部分(1)を、少なくとも1つの端部(E,F)が前記環状歯付き部分(2)に対して軸方向に突出するように作成する段階を含み、前記手順が、
前記同軸穴(H)を作成する段階と、
前記突出する端部(E,F)の対応関係で、少なくとも1本の平行線に従って1つ又は複数のパーシャルカットを作成する段階と、
前記軸方向部分の軸方向の牽引又は圧縮を行う段階と、
前記ねじ山(TH1)を作成する段階とを連続的に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パーシャルカット(G1,G2,G3)が複数のとき、前記パーシャルカット(G1,G2,G3)が、同じ平行線上又は異なる平行線上に連続的に配列される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パーシャルカットが異なる平行線上に配置されるとき、前記パーシャルカットが、角度的にずらされる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
残りのねじ切り部分の直径(D)より大きい直径(DE)を得る前記少なくとも1つの突出端部(E)の限定された所定の延長部分(EA3)のための同軸穴(H)の一部分を拡張する段階と、
少なくとも1つの更に他のパーシャルカット(C1,C2,C3)を、前記端部(E)自体の平行線に従って、そのような限定延長部(EA3)の対応関係で作成して、前記突出端部(E)自体に一体化された円盤ばねとする段階とを更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記更に他のパーシャルカット(C1,C2,C3)が複数のとき、前記更に他のパーシャルカット(C1,C2,C3)が、同じ平行線または異なる平行線上に連続的に配置される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記更に他のパーシャルカットが異なる平行線上に配置されるとき、前記更に他のパーシャルカットが、角度的にずらされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ピニオンの前記ねじ山(TH1)と相補形のねじ山(TH2)と、前記円盤ばねが接触するように意図された固定式当接リングナット(B)とを有するタービン軸(SH)を作成する段階を含む、請求項5〜7のいずれか一項に記載方法。
【請求項9】
内燃機関のタービン軸(SH)に取り付けられたピニオン(P)であって、前記ピニオンが、軸対称(X)を有する単一片で作成され、環状歯付き部分(2)及び前記環状歯付き部分(2)と同軸の軸方向部分(1)を備え、また前記タービンの前記軸(SH)に前記ピニオンをねじ式に留めるねじ山(TH1)を有する同軸穴を備え、前記ねじ山(TH1)が、局所的ピッチ変化を有する、ピニオン(P)。
【請求項10】
前記軸方向部分(1)が、前記環状部分(2)に対して軸方向に突出し、前記突出部分(E)には円盤ばねが組み込まれた、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記ピニオン(P)の前記ねじ山(TH1)と相補形のねじ山(TH2)と、前記円盤ばねが接触するように意図された固定式当接リングナット(B)とを有するタービン軸(SH)を含む、請求項9〜10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
軸(SH)及びそれぞれのピニオン(P)と、請求項9〜11のいずれかによるそれぞれの取付けシステムを備えた内燃機関用のタービン。
【請求項13】
請求項12によるタービンを含む内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のタービン運動の伝達に関連する構成要素を取り付けるためのシステム、詳細にはタービンのそれぞれの軸へのピニオンの取付けに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、タービン軸上にピニオンを備えたタービンは、内燃機関の駆動シャフトに接続され、ターボコンパウンドシステムのスキーマとそれぞれの代替実施形態を実現するものである。
【0003】
自動車分野におけるタービンの軸は、比較的細く、8〜20mmの直径を有する。ピニオンは、この軸にスプライン結合される。
【0004】
そのような細い軸には、軸自体を弱めることになるため、軸型の溝付きカップリングは使用できない。
【0005】
出願人が考えうる解決策によれば、ピニオンをタービン軸にねじ式に留めることができるが、タービンがターボコンパウンド構成の場合には、タービンが、機械式トルクを生成しそのトルクを駆動シャフトに伝える段階と、駆動シャフトがタービンを駆動する段階とがあることを考慮しなければならない。2つの段階のいずれでも、ねじ山の方向によって、ピニオンが、シャフトから緩む可能性がある。
【0006】
半径方向ピン又は合わせピンは、タービンによって達成される回転速度でシャフト自体を支持する軸受の高速摩耗を決定する質量の偏りを引き起こすので、使用できない。
【0007】
この問題のため、最も広く普及している取付け方法は、「押し嵌め」型のものであり、すなわち、ピニオンが、力によってタービン軸と係合し、分解できない単一片となり、したがって、破壊して部品を分離するかピニオンを加熱しなければならない。
【0008】
そのような解決策は、最善ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、それぞれのタービン軸上にピニオンを取り付けるための普遍的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるピニオンは、単一片で作成され、互いに環状で軸対称を有する2つの部分を含み、外側部分は歯が付けられ、内側部分は、少なくとも部分的にねじ山が設けられた同軸穴を有する。
【0011】
本発明の根底にある概念は、貫通穴のねじ山上に小さい局所的ピッチ変化を導入することであり、それにより、ピニオンの本体が、それぞれのタービンのシャフトに連結される。
【0012】
これにより、ねじのピッチの小さい局所的変化が得られ、これにより、タービンの軸上のピニオンの締め付け摩擦が有利に増大する。
【0013】
ピニオンを実現するための好ましい方法によれば、内側部分の平行線に従ってパーシャルカットが作成され、次に、ピニオンが、軸方向に圧縮または牽引され、その後で雌ねじが作成される。
【0014】
内側部分は、外側部分より大きい延長部分を有し、それにより、ピニオンの対称軸に従う端部の少なくとも一方が、歯付き部分に対して突出する。
【0015】
前記パーシャルカットは、そのような端部の少なくとも一方の端部の対応関係で作成される。
【0016】
様々なカットが、同一の平行線上又は互いに平行な平行線上に適切な角度ずらされて、引き続きかつ不連続的に作成されることが好ましい。
【0017】
したがって、そのような端部は、軸方向圧縮を受けた場合に弱化しやすく、これにより、ねじ山の前記局所的ピッチ変化が生じやすくなる。
【0018】
本発明の好ましい代替実施形態によれば、ピニオンの内側部分の2つの端部の一方にも円盤ばねが組み込まれる。
【0019】
円盤ばねの特徴を利用して、固定式当接リングナットと隣接ねじ山とを有するタービン軸を作成可能である。
【0020】
タービン軸上のピニオンをねじ式に嵌めることによって、円盤ばねの特徴を備えるピニオンの端部が、固定式当接リングナットと接触したときに、そのような端部が圧縮され変形して圧縮エネルギーを蓄積し始める段階が始まる。
【0021】
そのような圧縮エネルギーは、それぞれのタービンの正常機能中にピニオン自体に加わるトルクによってピニオンが緩むのを防ぐ。
【0022】
本発明の第1の目的は、請求項1により、内燃機関のタービン軸に取り付けられるピニオンを作成する方法である。
【0023】
本発明の別の目的は、前述の方法に対応するピニオンである。
【0024】
更に、本発明の更に他の目的は、前述のピニオンを含むタービンと、前記タービンを含む内燃機関である。
【0025】
特許請求の範囲は、好ましい実施形態について述べるこの記述の一体部分である。
【0026】
本発明の更に他の目的及び利点は、好ましい実施形態(及びその代替実施形態)の以下の詳細な説明と、単に実例であり非制限的な添付図面とから明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】
図1Bに示されたピニオンの好ましい代替実施形態を示す図である。
【
図4】前述のピニオンが取り付けられたそれぞれのタービン軸の側面図である。
【0028】
図では、同じ参照番号と文字は、同じ要素又は構成要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の目的であるピニオンPの軸方向図を示す
図1Aと、同じピニオンの側面図を示す
図1Bを参照すると、ピニオンが、軸Xによる軸対称をなすことが分かり、
更に、単一片で作成されるが、
− 内径Dを有する同軸貫通穴Hを有し、ねじ山TH1を少なくとも部分的に備えた第1の内側部分1と、
− 歯が付けられ第1の部分に対して環状の第2の外側部分2とを有し、
第1の部分1は、第2の部分の軸方向延長部分EA2より大きい軸方向延長部分EA1を有する。
【0030】
便宜上、第1の部分は軸方向として規定され、第2の部分は管状として規定されるが、これらは単一片で作成される。
【0031】
軸方向部分の少なくとも一方の端部E及び/又はFは、環状部分に対して軸方向に突出する。
【0032】
図1Bを参照すると、少なくとも1つのパーシャルカットG1,G2,G3が、軸方向部分1の平行線に従って、端部E及び/又はF上に作成され、ねじ山TH1を備え、より小さい直径Dを有するように設計された同軸穴の軸方向部分の対応関係にある。
【0033】
円筒形状では、「平行線」の概念は明らかであり、円筒自体の対称軸と直角に交差する平面に従う円筒の円周方向である。
【0034】
最初に、前記1つ又は複数のパーシャルカットG1,G2,G3が作成され、次にピニオンが、軸方向に圧縮又は牽引され、その後で雌ねじTH1が作成される。
【0035】
図1Aは、パーシャルカットG2及びG3が、前述の端部Eと反対側に、端部Fの同じ平行線上に連続して作成されたことを示す。
【0036】
図1Aから、パーシャルカットG1,G2,G3が、外側から貫通穴Hまで達することが分かる。
【0037】
連続したカットG2及びG3は、同一平行線上に作成される。
【0038】
カットは、異なる平行線上に作成されてもよいが、2本の隣接した平行線の間で角度的にずらされることが好ましい。
【0039】
パーシャルカットという用語は、第1の部分1の周囲全体に影響を及ぼさないが、好ましくは、180°より小さい部分に影響を及ぼすカットとして設計されるべきであることに注意されたい。
【0040】
図1Bを参照すると、カットG1が、同じ平行線に属するカットG2及びG3に対して角度的にずらされることが分かる。
【0041】
そのようなカットは、ピニオンの軸方向弾性を高め、それにより、ピニオンが圧縮または牽引されている間にねじ山を作成することによって、それぞれより大きいか小さいピッチを局所的に有するねじができる。
【0042】
これにより、ピニオンが軸から間違って緩むのを防ぐのに有利な軸SH上のピニオンの締付けトルクが増大する。
【0043】
図2の代替実施形態に関して、ピニオンの軸方向部分1の端部Eが、限定部分EA3を有し、軸方向穴Hが、残りのねじ部分より大きい直径DEを有することが分かる。
【0044】
そのような部分EA3は、その部分とその軸方向延長部分の両方を同じ記号EA3で示されており、前記限定延長部分EA3の対応関係で、端部Eの1本又は複数本の平行線に従って、少なくとも1つのパーシャルカットC1,C2,C3を有する。
【0045】
図1Bから、パーシャルカットC1,C2,C3が、外側から貫通穴Hまで達することが分かる。
【0046】
様々なカットは、C1,C2が、同一平行線上に引き続きかつ不連続で作成されるか、(C1,C2),C3が、互いに平行な平行線上に適切な角度ずらされて作成されることが好ましい。
【0047】
したがって、そのような端部Eは、弱化され、軸方向圧縮を受けた場合に円盤ばねのように挙動する。
【0048】
図4を参照すると、タービンSHの軸は、ねじ部分TH2と、固定式リングナットBとを有し、固定式リングナットBは、ピニオンPの弱化端部Eのための停止点の特徴を備える。
【0049】
したがって、本発明のそのような好ましい代替実施形態によれば、ピニオンは、ねじピッチTH1の前述の局所的変更に加えて、歯付き部分2に対して軸方向に突出しかつ前記端部Eの対応関係にあるねじ山及び弱化カットC1,C2,C3を備えた軸方向貫通穴Hの残りの部分より大きい直径DEを有する軸方向穴を有する内側部分1の端部Eを含む、単一片で作成される。換言すると、端部Eは、円盤ばねの特徴を備えるように機械加工される。
【0050】
円盤ばねを作成するのに必要な他の機械加工作業に関しては、作業を行う順序は関係ない。
【0051】
例えば、第2の部分の歯付け作業は、円盤ばねの特徴を備える弱化端部Eを作成した後で行われてもよい。
【0052】
例えば、同軸穴Hは、様々なカットC1,C3,C3の前に作成されても後に作成されてもよく、同じことは、それぞれのねじ切り部分にも延長部EA3の穴の直径の拡張にも有効である。
【0053】
考慮すべき順序は、
− 同軸穴を作成すること、
− ピニオンに軸方向の牽引又は圧縮を加えること、
− 前記ねじ山(TH1)を作成することだけである。
【0054】
有利には、端部Eは、より大きい弾性を有し、したがって、ピニオンの好ましくない緩みを有効に防止する締め付けトルクをかけることが可能である。
【0055】
ピニオンを交換しなければならない場合は、ピニオンを破壊したり加熱したりせずに、適切なトルクを加えることによっていつでも外すことが可能である。
【0056】
端部のうちの一方の端部(E)だけに円盤ばねを作成してもよいが、パーシャルカットG1〜G3は、端部E,Fまたは両方に作成されてもよい。これは、ねじの局所的変化が、ねじ山TH1のどの箇所でもその機能を果たすからである。
【0057】
本発明の他の代替及び等価な実施形態は、本発明の範囲から逸脱することなく実施するように考案され縮小されうることは当業者に明らかである。
【0058】
以上の記述から、当業者は、更なる構造詳細について述べることなく本発明を実施できる。様々な好ましい実施形態において述べた要素と特徴は、本出願の範囲から逸脱することなく組み合わされうる。先行技術の説明で述べたことは、詳細な説明で明示的に除外されない限り、本発明の特徴との組み合わせで考慮されるべきであり、本発明の一体部分となる。
【0059】
更に、先行技術の説明で開示された特徴は、既知の先行技術の存在に関する宣言としてではなく、本発明をよりよく理解するために紹介されている。
【符号の説明】
【0060】
1 軸方向部分
2 環状歯付き部分
C1,C2,C3 パーシャルカット
D,DE 直径
E,F 軸方向端部
EA1,EA2,EA3 軸方向延長部分
H 同軸穴
SH 軸
TH1 雌ねじ、ねじ山
【外国語明細書】