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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-200404(P2015-200404A)
(43)【公開日】2015年11月12日
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/46 20060101AFI20151016BHJP
【FI】
   F16F9/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-259303(P2014-259303)
(22)【出願日】2014年12月22日
(31)【優先権主張番号】特願2014-74966(P2014-74966)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 陽亮
(72)【発明者】
【氏名】三輪 和宏
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA46
3J069EE06
3J069EE28
3J069EE39
(57)【要約】
【課題】ピストン速度の中高速域での減衰力の調整範囲を広くして所望の減衰力特性を得ることができる緩衝器を提供する。
【解決手段】実施形態の緩衝器1における減衰力発生装置20は、作動流体が流れるメイン流路70,80と、該メイン流路70,80を開閉して作動流体の流れを制御することによって減衰力を発生させるメインバルブ30と、メイン流路70,80から分岐された作動流体が流入されると共に該作動流体の圧力によってメインバルブ30に閉弁方向の内圧を作用させるパイロット室31と、パイロット室31から作動流体が流出されるパイロット流路90とを備える。そして、パイロット室31からパイロット流路90を経て流出された作動流体の流れに、メイン流路70,80におけるメインバルブ30により狭窄される流路に生じる噴流を合流させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌装されたピストンと、該ピストンに連結されて前記シリンダの外部へ延出されたピストンロッドと、前記シリンダ内の前記ピストンの摺動による作動流体の流れを制御して減衰力を発生させる減衰力発生装置とを備えた緩衝器であって、
前記減衰力発生装置は、
前記シリンダ内の前記ピストンの摺動によって作動流体が流れるメイン流路と、
該メイン流路を開閉して作動流体の流れを制御することによって減衰力を発生させるメインバルブと、
前記メイン流路から分岐され又は前記メインバルブに設けられたバイパス流路と、
前記バイパス流路を介して作動流体が流入されると共に該作動流体の圧力によって前記メインバルブに閉弁方向の内圧を作用させるパイロット室と、
前記パイロット室から作動流体が流出されるパイロット流路と
を備え、
前記パイロット室から前記パイロット流路を経て流出された作動流体の流れに、前記メイン流路における前記メインバルブにより狭窄される流路に生じる噴流を合流させることを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
作動流体が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌装されたピストンと、該ピストンに連結されて前記シリンダの外部へ延出されたピストンロッドと、前記シリンダ内の前記ピストンの摺動による作動流体の流れを制御して減衰力を発生させる減衰力発生装置とを備えた緩衝器であって、
前記減衰力発生装置は、
前記シリンダ内の前記ピストンの摺動によって作動流体が流れるメイン流路と、
該メイン流路を開閉して作動流体の流れを制御することによって減衰力を発生させるメインバルブと、
前記メイン流路から分岐され又は前記メインバルブに設けられたバイパス流路と、
前記バイパス流路を介して作動流体が流入されると共に該作動流体の圧力によって前記メインバルブに閉弁方向の内圧を作用させるパイロット室と、
前記パイロット室から作動流体が流出されるパイロット流路と
を備え、
前記パイロット室から前記パイロット流路を経て流出された作動流体の流れに、前記メイン流路の全部又は前記メインバルブを有する箇所以外の前記メイン流路の一部の流路が狭窄されることにより生じる噴流を合流させることを特徴とする緩衝器。
【請求項3】
前記パイロット室から前記パイロット流路を経て流出された作動流体の流れを、前記メイン流路における前記メインバルブを流れた作動流体の流れと同じ方向に合流させること を特徴とする請求項1又は2記載の緩衝器。
【請求項4】
前記パイロット室から前記パイロット流路を経て流出された作動流体の流れを、前記メイン流路における前記メインバルブを流れた作動流体の流れと逆方向に合流させることを特徴とする請求項1又は2記載の緩衝器。
【請求項5】
前記パイロット室から前記パイロット流路を経て流出された作動流体の流れを、前記メイン流路における前記メインバルブを流れた作動流体の流れに合流させる箇所に、少なくとも何れか一方の作動流体の流れが遮蔽される遮蔽部材を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の緩衝器。
【請求項6】
前記パイロット室から前記パイロット流路を経て流出された作動流体の流れを、前記メイン流路における前記メインバルブを流れた作動流体の流れに合流させる箇所に、少なくとも何れか一方の作動流体の流れる方向が変更される流れ変更部材を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の緩衝器。
【請求項7】
前記減衰力発生装置は、前記ピストンの内部に設けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の緩衝器。
【請求項8】
前記減衰力発生装置は、前記ピストンの外部に設けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮動に伴って発生する内部の作動流体の流れを制御して減衰力を調整する減衰力調整装置を備える緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動二輪車の前輪を車体に対して懸架するフロントフォークとして使用される緩衝器には、作動流体であるオイルが封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌装されたピストンと、該ピストンに連結されてシリンダの外部へ延出されたピストンロッドを備え、シリンダ内のピストンの摺動によるオイルの流れを制御して減衰力を調整する減衰力調整装置を備えたものがある。
【0003】
このような油圧緩衝器において、ピストン速度の中高速域における減衰力特性を大きく変化させる減衰力調整装置として、ピストンに設けられた油路を選択的に開閉するディスクバルブの背部にパイロット室を形成し、このパイロット室を固定オリフィスを介してディスクバルブの上流側のシリンダ室に連通させるとともに、可変オリフィスを介してディスクバルブの下流側のシリンダ室に連通させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような減衰力調整装置によれば、可変オリフィスを開閉することによって、シリンダ内の2室間の通路面積を調整するとともに、可変オリフィスで生じる圧力損失によってパイロット室の圧力(背圧)を変化させてディスクバルブの開弁圧力を調整することができる。そのため、減衰力特性の調整範囲を広げることができる。
【0004】
しかしながら、上記減衰力調整装置によれば、可変オリフィスの流路面積を小さくして減衰力をハード側に調整した場合、パイロット室の圧力が高くなる分、図14に示すように、ディスクバルブ101の開度が小さくなって弁座102との隙間が小さくなる。そのため、この隙間を通過する作動流体の流速が高められて噴流となる。このため、ディスクバルブ101と弁座102との隙間の圧力が低下し、ディスクバルブ101に閉弁方向の力が作用して減衰力が増大する。この結果、特にピストン速度の中高速域において過大な減衰力が発生するという問題がある。
【0005】
そこで、特許文献2には、図15に示すように、ディスクバルブ201の外周縁を弁座202側に折り曲げて案内部201aを形成する構成を採用した減衰力調整装置が提案されている。このような減衰力調整装置によれば、開弁時のディスクバルブ201と弁座202との隙間を通過する作動流体の噴流を、弁座202とディスクバルブ201の案内部201aとの隙間に向かって弁座202の外周部に沿うような噴出角度θで噴出させる。これによって、ディスクバルブ201に作用する閉弁方向の力を軽減し、特にピストン速度の中高速域における過大な減衰力の発生を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭62−155242号公報
【特許文献2】特開平10−246271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2において提案された図15に示す構成を採用する減衰力調整装置は、ディスクバルブ201に直接作用する噴流によってディスクバルブ201に作用する閉弁方向の力を軽減する方式を採用している。
【0008】
特許文献2において提案された減衰力調整装置では、ピストン速度の中高速域における減衰力を抑える効果しか期待できず、逆により大きな減衰力を発生させることは不可能である。そのため、減衰力の調整範囲が比較的狭いという問題がある。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、ピストン速度の中高速域での減衰力の調整範囲を広くして所望の減衰力特性を得ることができる緩衝器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、作動流体が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌装されたピストンと、該ピストンに連結されて前記シリンダの外部へ延出されたピストンロッドと、前記シリンダ内の前記ピストンの摺動による作動流体の流れを制御して減衰力を発生させる減衰力発生装置とを備えた緩衝器であって、前記減衰力発生装置は、前記シリンダ内の前記ピストンの摺動によって作動流体が流れるメイン流路と、該メイン流路を開閉して作動流体の流れを制御することによって減衰力を発生させるメインバルブと、前記メイン流路から分岐され又は前記メインバルブに設けられたバイパス流路と、前記バイパス流路を介して作動流体が流入されると共に該作動流体の圧力によって前記メインバルブに閉弁方向の内圧を作用させるパイロット室と、前記パイロット室から作動流体が流出されるパイロット流路とを備え、前記パイロット室から前記パイロット流路を経て流出された作動流体の流れに、前記メイン流路における前記メインバルブにより狭窄される流路に生じる噴流を合流させることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、作動流体が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌装されたピストンと、該ピストンに連結されて前記シリンダの外部へ延出されたピストンロッドと、前記シリンダ内の前記ピストンの摺動による作動流体の流れを制御して減衰力を発生させる減衰力発生装置とを備えた緩衝器であって、前記減衰力発生装置は、前記シリンダ内の前記ピストンの摺動によって作動流体が流れるメイン流路と、該メイン流路を開閉して作動流体の流れを制御することによって減衰力を発生させるメインバルブと、前記メイン流路から分岐され又は前記メインバルブに設けられたバイパス流路と、前記バイパス流路を介して作動流体が流入されると共に該作動流体の圧力によって前記メインバルブに閉弁方向の内圧を作用させるパイロット室と、前記パイロット室から作動流体が流出されるパイロット流路とを備え、前記パイロット室から前記パイロット流路を経て流出された作動流体の流れに、前記メイン流路の全部又は前記メインバルブを有する箇所以外の前記メイン流路の一部の流路が狭窄されることにより生じる噴流を合流させることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記パイロット室から前記パイロット流路を経て流出された作動流体の流れを、前記メイン流路における前記メインバルブを流れた作動流体の流れと同じ方向に合流させることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記パイロット室から前記パイロット流路を経て流出された作動流体の流れを、前記メイン流路における前記メインバルブを流れた作動流体の流れと逆方向に合流させることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の発明において、前記パイロット室から前記パイロット流路を経て流出された作動流体の流れを、前記メイン流路における前記メインバルブを流れた作動流体の流れに合流させる箇所に、少なくとも何れか一方の作動流体の流れが遮蔽される遮蔽部材を有することを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載の発明において、前記パイロット室から前記パイロット流路を経て流出された作動流体の流れを、前記メイン流路における前記メインバルブを流れた作動流体の流れに合流させる箇所に、少なくとも何れか一方の作動流体の流れる方向が変更される流れ変更部材を有することを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項記載の発明において、前記減衰力発生装置は、前記ピストンの内部に設けられることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項記載の発明において、前記減衰力発生装置は、前記ピストンの外部に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、パイロット室からパイロット流路を経て流出された作動流体の流れに、メイン流路における前記メインバルブにより狭窄される流路に生じる噴流を合流させている。また請求項2に記載の発明によれば、パイロット室からパイロット流路を経て流出された作動流体の流れに、メイン流路の全部又はメインバルブを有する箇所以外のメイン流路の一部の流路が狭窄されることにより生じる噴流を合流させている。このパイロット室からパイロット流路を経て流出された作動流体の流れは、メイン流路上でメインバルブを流れる作動流体の流れである噴流の勢いにより調整される。請求項1及び2に記載の発明のいずれの場合であっても、パイロット室からパイロット流路を経て流出された作動流体の流れに噴流を合流させることになる。これにより、パイロット室の背圧もメイン流路のメインバルブを流れる作動流体の噴流を利用して調整される。このため、噴流を利用してメインバルブに作用する閉弁方向の押圧力も調整することができ、所望の減衰力に調整することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、パイロット室からパイロット流路を経て流出された作動流体の流れを、メイン流路における前記メインバルブを流れた作動流体の流れと同じ方向に合流させている。このため、ピストン速度の中高速域において、メイン流路上でメインバルブを流れる作動流体の流れである噴流の勢いにより、パイロット室からパイロット流路を経て流出された作動流体の流れに吸出し効果が生まれる。この結果、パイロット室の背圧が低下してメインバルブを閉弁方向に押圧する力が低下し、メインバルブの開度が大きくなるためにピストン速度の中高速域における減衰力の上昇を抑えることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、パイロット室からパイロット流路を経て流出された作動流体の流れを、メイン流路におけるメインバルブを流れた作動流体の流れと逆方向に合流させている。このため、パイロット室からパイロット流路を経て流出された作動流体の流れの勢いが、メイン流路上でメインバルブを流れる作動流体の流れである噴流との衝突で抑えられる。この結果、パイロット室の背圧が上昇してメインバルブを閉弁方向に押圧する力も上昇し、メインバルブの開度が小さくなるためにピストン速度の中高速域における減衰力を高く調整することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、パイロット室からパイロット流路を経て流出された作動流体の流れを、メイン流路におけるメインバルブを流れた作動流体の流れに合流させる箇所に、少なくとも何れか一方の作動流体の流れが遮蔽される遮蔽部材を有している。このため、パイロット室からパイロット流路を経て流出された作動流体の流れ、又はメイン流路におけるメインバルブを流れた作動流体の流れの少なくとも何れか一方の流れの勢いが遮蔽部材により抑えられる。これにより、パイロット室の背圧も調整される。このため、メインバルブに作用する閉弁方向の押圧力も調整することができ、所望の減衰力に調整することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、パイロット室からパイロット流路を経て流出された作動流体の流れを、メイン流路におけるメインバルブを流れた作動流体の流れに合流させる箇所に、少なくとも何れか一方の作動流体の流れる方向が変更される流れ変更部材を有している。このため、パイロット室からパイロット流路を経て流出された作動流体の流れをメイン流路上のメインバルブを流れた作動流体の流れに合流させる箇所に、少なくとも何れか一方の作動流体の流れる方向が変更されることによって、パイロット室の背圧を調整して所望の減衰力に調整することができる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、減衰力発生装置をピストンにコンパクトに組み込むことによって、緩衝器を例えば自動二輪車の前輪を車体に対して懸架するフロントフォーク又はリアクッションとして使用することができる。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、減衰力発生装置をピストンの外部に配置することにより、減衰力発生装置を自由な位置に配置することができ、レイアウトの自由度を高めることができる。このため、アクチュエータであるソレノイドの配置やハーネス等の取り回し等についてもレイアウトの自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態1に係る緩衝器の要部の縦断面図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る緩衝器の減衰力発生装置の縦断面図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る緩衝器の減衰力発生装置における圧側行程時のオイルの流れを示す縦断面図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る緩衝器の減衰力発生装置における伸側行程時のオイルの流れを示す縦断面図である。
図5】ピストン速度に対する減衰力の特性を示す図である。
図6】本発明の実施の形態2に係る緩衝器の減衰力発生装置の縦断面図である。
図7】本発明の実施の形態3に係る緩衝器のガイド部の部分縦断面図である。
図8】(a)〜(e)はパイロット流と噴流との合流の種々の形態を示す模式図である。
図9】本実施の形態の緩衝器の油圧回路図である。
図10】本実施の形態の緩衝器における他の構成の油圧回路図である。
図11】本実施の形態の緩衝器における他の構成の油圧回路図である。
図12】本実施の形態の緩衝器における他の構成の油圧回路図である。
図13】本実施の形態の緩衝器における他の構成の油圧回路図である。
図14】特許文献1において提案された油圧緩衝器の減衰力調整装置要部の縦断面図である。
図15】特許文献2において提案された油圧緩衝器の減衰力調整装置要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0027】
<実施の形態1>
[緩衝器の構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係る緩衝器1の要部の縦断面図、図2は、同緩衝器の減衰力調整装置の縦断面図である。
【0028】
本実施の形態に係る緩衝器1は、自動二輪車(図示しない)の前輪を車体に対して懸架する倒立型のフロントフォークとして使用されるものであって、図1に示すように、この緩衝器1においては、車体側に取り付けられたアウタチューブ2の内部に、車軸側に取り付けられたインナチューブ3の一部が下方から挿入されている。
【0029】
上記アウタチューブ2は、その上端部がアッパブラケット(図示しない)とロアブラケット(図示しない)によって自動二輪車の車体(ステアリング軸)に取り付けられており、その上端はキャップボルト4によって閉塞されている。このアウタチューブ2のインナチューブ3が貫通する下端開口部の内周には、インナチューブ3の外周に摺接するガイドブッシュ5とオイルシール6及びダストシール7が嵌着されている。
【0030】
アウタチューブ2内の軸中心部には、その上端がキャップボルト4に結着された中空状のピストンロッド8が垂下している。このピストンロッド8は、その一部がインナチューブ3内の上端部に嵌着された有底筒状の隔壁部材9を貫通してインナチューブ3の内部に上方から挿入されている。そして、このピストンロッド8の下端部には、減衰力発生装置20のアクチュエータを構成するソレノイド40とピストン21及びスプリングカラー10が上下のナット11,12によって結着されており、減衰力発生装置20の主要部はピストン21の内部に組み込まれている。なお、ピストンロッド8の内部には、ソレノイド40に給電するための電源コード13が挿通されている。また、ピストンロッド8のナット11の上方にはリバウンドスプリング14が巻装されている。
【0031】
インナチューブ3は、その下端部が車軸取付部材(図示しない)を介して自動二輪車の前車軸に取り付けられており、アウタチューブ2内に挿入された部分は、その上端外周に嵌着されたガイドブッシュ15とアウタチューブ2の下端部内周に嵌着されたガイドブッシュ5とによってアウタチューブ2に対して上下摺動可能に保持されている。そして、アウタチューブ2の内周とインナチューブ3の外周との隙間に上下をガイドブッシュ15とガイドブッシュ5とに封止された環状油室S4が形成される。また、インナチューブ3は、後述する隔壁部材9よりも下側の部位に、インナチューブ3内のロッド側油室S3と環状油室S4とを連通する連通孔3aが形成される。
【0032】
また、インナチューブ3の上端部内周に嵌着された隔壁部材9の底部の軸中心部には、ピストンロッド8が貫通するロッドガイド16が嵌着されている。そして、ピストンロッド8は、ロッドガイド16によって上下摺動可能に保持されている。なお、インナチューブ3は、特許請求の範囲の請求項1及び2に示されるシリンダに相当する。
【0033】
ところで、インナチューブ3の内周には、ピストン21が上下摺動可能に嵌合している。アウタチューブ2とインナチューブ3の内部は隔壁部材9によって上下に区画されており、上方の空間はリザーバとして機能する油溜室Reである。油溜室Reは、隔壁部材9を境界にしてロッド側油室S3とのオイルの給排が行われるオイル収容部Roとエア等のガスが充填されるガス収容部Rgとから構成される。
【0034】
また、インナチューブ3内の隔壁部材9の下方の空間は、ピストン21によってロッド側油室S3とピストン側油室S2とに区画されている。これらのロッド側油室S3とピストン側油室S2には、作動流体であるオイルが充填されている。なお、インナチューブ3内の底部とスプリングカラー10との間には、懸架スプリング17が介装されている。また、インナチューブ3からのオイルの漏出は、オイルシール6のシール作用によって防がれている。ダストのアウタチューブ2の下端開口部からの侵入は、ダストシール7のシール作用によって防がれている。
【0035】
次に、減衰力発生装置20の構成の詳細を図2に基づいて以下に説明する。
【0036】
減衰力発生装置20は、その主要部がピストン21に組み込まれている。ピストン21は、上部ピストン21Aと下部ピストン21Bに2分割されている。そして、減衰力発生装置20においては、下方からバルブストッパ22、伸側出口チェック弁23、下部ピストン21B、圧側入口チェック弁24、伸側入口チェック弁25、上部ピストン21A、圧側出口チェック弁26、バルブストッパ27、弁座部材28及びソレノイド40を上下方向(軸方向)に順次組み付けて構成されている。
【0037】
弁座部材28の軸中心部からは、ロッド部28Aが下方に向かって一体に突設されている。このロッド部28Aは、バルブストッパ27、圧側出口チェック弁26、上部ピストン21A、伸側入口チェック弁25、圧側入口チェック弁24、下部ピストン21B、伸側出口チェック弁23及びバルブストッパ22の径方向の中心部を貫通しており、その下端部にナット12が螺着されている。
【0038】
下部ピストン21Bの凹部21aには、弁座部材28のロッド部28Aの外周に嵌着されたメインバルブ部材29が収容されている。このメインバルブ部材29の外周には、略円筒状のメインバルブ30が上下摺動可能に嵌合保持されている。そして、メインバルブ部材29の凹部21aのメインバルブ30の背面側(図2の下側)には、メインバルブ部材29によって区画された環状のパイロット室(背圧室)31が形成されている。このパイロット室31には、メインバルブ30を上部ピストン21Aの下面(着座面)に着座する上方向(閉弁側)に付勢する板バネ32が収容されている。
【0039】
下部ピストン21Bの凹部21aには、メインバルブ30の外周との間に流路33が形成されている。この流路33は、メインバルブ30に形成された油孔30aを介してパイロット室31に連通している。
【0040】
ところで、上部ピストン21Aの下部内周は、テーパ状にカットされた空間34が形成されている。上部ピストン21Aには、上下方向に貫通する油孔21bと斜めの油孔21cが形成されている。ここで、油孔21bは、インナチューブ3内のロッド側油室S3(図1参照)に常時開口しており、伸側入口チェック弁25によって選択的に開閉される。また、油孔21cは、空間34に常時開口しており、圧側出口チェック弁26によって選択的に開閉される。
【0041】
下部ピストン21Bの下部内周には、テーパ状にカットされた空間35が形成されている。また、下部ピストン21Bには、上下方向に貫通する油孔21dと斜めの油孔21eが形成されている。ここで、油孔21dは、インナチューブ3内に形成されたピストン側油室S2(図1参照)に常時開口しており、圧側入口チェック弁24によって選択的に開閉される。また、油孔21eは、空間35に常時開口しており、伸側出口チェック弁23よって選択的に開閉される。
【0042】
弁座部材28の軸中心上部には、上方が開口する凹部28aが形成されている。この凹部28aからは、ロッド部28Aの軸中心を下方に向かう油孔28bが形成されている。そして、この油孔28bの下端部からは径方向外方に向かう油孔28cが直角に形成されている。この油孔28cは、メインバルブ部材29に径方向に形成された油孔(図示しない)を介してパイロット室31に連通している。
【0043】
ところで、メインバルブ部材29には、軸方向に貫通する複数の油孔29aが形成されている。これらの油孔29aは、その一端(上端)が上部ピストン21Aの空間34を介して上部ピストン21Aの油孔21cに連通し、他端(下端)が下部ピストン21Bの空間35を介して下部ピストン21Bの油孔21eに連通している。
【0044】
上部ピストン21Aと下部ピストン21Bとの間には、両ピストン21A,21Bの外周に嵌着された円環状のディスタンスカラー36によって上下方向の隙間37が形成されている。そして、この隙間37に、圧側入口チェック弁24と伸側入口チェック弁25が設けられている。これらの圧側入口チェック弁24と伸側入口チェック弁25は、これらの間に介装された板バネ38によって下部ピストン21Bの油孔21dと上部ピストン21Aの油孔21bをそれぞれ閉じる方向に付勢されている。
【0045】
ここで、ソレノイド40の構成について説明する。
【0046】
ソレノイド40は、その下端開口部内周が弁座部材28の外周に螺着された円筒状のケース41の内部に、有底筒状の2つのコア42,43、環状のコイル44、コア42,43の内部に収容されたプランジャ45、該プランジャ45の軸中心部を貫通する中空状の作動ロッド46等を収容して構成されている。作動ロッド46は、その上下方向両端部が円筒状のガイドブッシュ47,48によって上下方向に移動可能に支持されている。そして、作動ロッド46の弁座部材28の凹部28a内に臨む下端外周には、パイロット弁49が結着されている。
【0047】
パイロット弁49は、弁座部材28の凹部28aの内周に上下方向に移動可能に嵌合しており、弁座部材28の軸中心部に形成された油孔28bの上端に形成されたテーパ状の弁座28dに選択的に着座することによって油孔28bを開閉する。ここで、弁座部材28の凹部28aにはパイロット弁49によって区画される空間50が形成されている。そして、この空間50には、パイロット弁49を開弁方向(図2の上方向)に付勢するバネ51が収容されている。ここで、弁座部材28に形成された空間50は、弁座部材28の油孔28b,28cとメインバルブ部材29に形成された油孔(図示しない)を介してパイロット室31に連通している。また、パイロット弁49には、油孔49aが貫設されている。この油孔49aは、空間50に常時開口している。
【0048】
ソレノイド40のコア42の端面には、弁座部材28との間に凹状の空間52が形成されている。この空間52には、パイロット弁49の油孔49aを選択的に開閉するフェイル弁53が設けられている。このフェイル弁53は、作動ロッド46の外周に上下摺動可能に保持されており、空間52内に収容されたバネ54によって閉弁方向(図2の下方)に付勢されている。なお、このバネ54のバネ定数は、パイロット弁49を開弁方向に付勢するバネ51のバネ定数よりも小さく設定されている。
【0049】
弁座部材28には、上下方向に貫通する油孔28eが形成されている。空間52は、油孔28eと、バルブストッパ27と弁座部材28との間に形成された円筒状の流路55と、上部ピストン21Aと弁座部材28のロッド部28Aとの間に形成された円筒状の流路56とを介して、上部ピストン21Aの空間34に連通している。
【0050】
ところで、本実施の形態に係る緩衝器1においては、メインバルブ部材29の径方向の中心部には、上方に向かって上部ピストン21Aの空間34へ延びる円筒状のガイド部29Aが形成されている。このガイド部29Aの内周面には、上方に向かって傾斜されたテーパ状のガイド面29bが形成されている。
【0051】
以上のように構成された減衰力発生装置20においては、下部ピストン21Bの油孔21dと、隙間37と、上部ピストン21Aの空間34と、上部ピストン21Aの油孔21cとは、圧側行程時のメイン流路70を構成している。このメイン流路70には、メインバルブ30と、圧側入口チェック弁24と、圧側出口チェック弁26とが設けられている。また、上部ピストン21Aの油孔21bと、隙間37と、メインバルブ部材29の油孔29aと、下部ピストン21Bの油孔21eとは、伸側行程時のメイン流路80を構成している。このメイン流路80には、メインバルブ30と、伸側入口チェック弁25と、伸側出口チェック弁23とが設けられている。
【0052】
そして、上部ピストン21Aと下部ピストン21Bとの間の隙間37、メインバルブ30の外周側に形成された流路33、メインバルブ30の油孔30a、パイロット室31、メインバルブ部材29に形成された油孔(図示しない)、弁座部材28に形成された油孔28c,28b、パイロット弁49と弁座部材28とによって形成された空間50、パイロット弁49に形成された油孔49a、ソレノイド40のコア42に形成された空間52、弁座部材28に形成された油孔28e、バルブストッパ27と弁座部材28との間に形成された流路55、流路55に連なる流路56、上部ピストン21Aの空間34は、圧側及び伸側のパイロット流路90を構成している。このパイロット流路90には、パイロット弁49とフェイル弁53が設けられている。ここで、流路33及びメインバルブ30の油孔30aは、メイン流路70、80を流れるオイルの一部をパイロット室31へ導くバイパス流路としても機能する。
【0053】
[緩衝器の作用]
次に、以上のように構成された緩衝器1の圧側行程時と伸側行程時の作用を図3図5に基づいて以下に説明する。なお、図3は、本実施の形態に係る緩衝器1の減衰力調整装置における圧側行程時のオイルの流れを示す縦断面図、図4は、同減衰力調整装置における伸側行程時のオイルの流れを示す縦断面図、図5は、ピストン速度に対する減衰力の特性を示す図である。
【0054】
(圧側行程)
まず、緩衝器1の圧側行程時の作用を図3に基づいて以下に説明する。
【0055】
自動二輪車の走行中に前輪が路面凹凸に追従して上下動すると、前輪を懸架する緩衝器1のアウタチューブ2とインナチューブ3とが伸縮動する。インナチューブ3がアウタチューブ2に対して相対的に上動する圧側行程においては、ピストン側油室S2内のオイルがピストン21によって圧縮されてその圧力が高くなる。すると、このピストン側油室S2内のオイルは、圧側行程時のメイン流路70を通ってロッド側油室S3へと流れ込む。具体的には、図3に実線矢印にて示すように、オイルは、ピストン側油室S2から下部ピストン21Bの油孔21dを通過して圧側入口チェック弁24を板バネ38の付勢力に抗して押し開いて隙間37へと流れ、その圧力でメインバルブ30を板バネ32とパイロット室31の背圧による閉弁方向の力に抗して押し開いて隙間37から空間34を介して上部ピストン21Aの油孔21cを通り、圧側出口チェック弁26を押し開いてロッド側油室S3へと流れ込む。このとき、オイルがメインバルブ30を通過する際の流動抵抗によって、当該緩衝器1には圧側減衰力が発生する。
【0056】
一方、ピストン側油室S2から下部ピストン21Bの油孔21dを通って隙間37へと流れ込んだオイルの一部は、パイロット流路90を通ってメイン流路70を流れるオイルに合流する。具体的には、図3に破線矢印にて示すように、ピストン側油室S2から下部ピストン21Bの油孔21dを通って隙間37へと流れ込んだオイルの一部は、メインバルブ30の外周側の流路33からメインバルブ30の油孔30aを通過してパイロット室31へと流れ込み、パイロット室31からメインバルブ部材29の油孔(図示しない)、弁座部材28の油孔28c,28b、パイロット弁49と弁座28dとの隙間を通って弁座部材28の空間50へと流れ込む。そして、弁座部材28の空間50へと流れ込んだオイルは、パイロット弁49の油孔49aを通ってフェイル弁53をバネ54の付勢力に抗して押し開いてコア42の空間52へと流れ込み、空間52から弁座部材28の油孔28e、流路55,56を通って上部ピストン21Aの空間34へと流れ込み、メイン流路70を流れるオイルに空間34において合流する。
【0057】
ここで、ソレノイド40を駆動して作動ロッド46とこれに結着されたパイロット弁49を上下方向に移動させてパイロット弁49の開度を変化させることによって、該パイロット弁49を通過するオイルの流動抵抗を調整してパイロット室31の背圧を調整することができる。そして、この背圧によるメインバルブ30を閉弁方向に押圧する力を制御してメインバルブ30の開度を調整することができる。このようにメインバルブ30の開度を調整することによって、該メインバルブ30を通過するオイルの流動抵抗によって発生する減衰力を調整することができる。具体的には、パイロット弁49の開度を絞れば、パイロット室31の背圧が高くなり、メインバルブ30の開度が絞られて減衰力が高められる。一方、パイロット弁49の開度を大きく調整すれば、メインバルブ30の開度も大きくなって減衰力が小さく調整される。
【0058】
本実施の形態1では、前述のようにパイロット流路90を流れるオイルは、メイン流路70を流れるオイルを上部ピストン21Aの空間34において合流するが、メインバルブ部材29のガイド部29Aによって両オイルが制御される。以下、パイロット流路90のオイルの流れを「パイロット流」と称し、メイン流路のメインバルブ30を通過するオイルの流れを「噴流」と称する。ここで、噴流とは、一般的に速度を持った流体が小さな孔から空間中にほぼ一方向の流れとなって噴出する現象のことをいう。本発明での噴流とは、メイン流路70、80上に配置されたメインバルブ30をオイルが通過する箇所の流路が狭窄されることにより、該流路を通過するオイルが噴出する場合、メイン流路70、80上に配置されたメインバルブ30を通過したオイルが、パイロット流路90と合流する部分等のメインバルブ30が配置される箇所以外の箇所の流路が狭窄されることにより、該流路を通過するオイルが噴出する場合、流路が狭窄されて生じる相対的に高速な流れの途中でパイロット流が合流する部分が設けられる場合も含むものとする。
【0059】
図3に示されるメイン流路70のメインバルブ30を通過したオイルは、径方向にロッド部28A側に向かって(外側から内側に)噴出する噴流となる。また、パイロット流は、ガイド部29Aの傾斜されたガイド面29bによって、流れの方向が制御される。このガイド面29bの傾斜方向と噴流の方向とは、ガイド部29Aを境界として同じ方向となっている。このため、図3に示される圧側行程では、メイン流路70のメインバルブ30を通過したオイルの噴流の方向に対して、ガイド面29bの傾斜方向に案内されたパイロット流が同じ方向に合流する。このため、メインバルブ30を通過したオイルの噴流の流れの勢いにより、パイロット流の吸出し効果が生まれる。この結果、パイロット室31の背圧が低下してメインバルブ30を閉弁方向に押圧する力が低下し、メインバルブ30の開度が大きくなるためにピストン速度の中高速域における圧側減衰力の上昇を抑えることができる。ここで、図5にピストン速度に対する減衰力の特性を示すが、本実施の形態によれば、実線Aにて示すリニアな特性に対して相対的に破線Bにて示すようにピストン速度の中高速域の圧側減衰力の増加率を抑えることができる。
【0060】
図3に示される本実施の形態1に係る緩衝器1では、パイロット室31からパイロット流路90を経て流出されたオイルの流れであるパイロット流に、メインバルブ30により狭窄される流路30bに生じる噴流を合流させている。しかし、これに限ることなく、当該パイロット流に、メイン流路70の全部又はメインバルブ30を有する流路30bの箇所以外のメイン流路70の一部の流路が狭窄されることにより生じる噴流を合流させてもよい。いずれの場合であっても、当該パイロット流に噴流を合流させることになる。これにより、パイロット室31の背圧もメイン流路70のメインバルブ30を通過したオイルの噴流を利用して調整される。このため、噴流を利用してメインバルブ30に作用する閉弁方向の押圧力も調整することができ、所望の減衰力に調整することができる。
【0061】
また、図3に示されるガイド部29Aは、その形状により上記した噴流の流れの勢いによるパイロット流の吸出し効果に限定されない。例えば、ガイド部29Aの壁面部29dを噴流に近づける等により、噴流の勢いをより抑える効果を主たる目的とした遮蔽部材としてもよい。この噴流の勢いを抑えることにより、パイロット流及びパイロット室31の背圧も調整される。このため、メインバルブ30に作用する閉弁方向の押圧力も調整することができ、所望の減衰力に調整することができる。この場合の壁面部29dは、メイン流路70におけるメインバルブ30を流れるオイルの流れである噴流を遮蔽することになるが、これに限定されることなく、パイロット室31からパイロット流路90を経て流出されたパイロット流の勢いを抑える遮蔽部材を設けて所望の減衰力に調整してもよい。さらに、上記のように噴流側及びパイロット流側の何れか一方のみに遮蔽部材を設けるだけでなく、両方共に遮蔽部材を設けて所望の減衰力に調整してもよいことは勿論である。
【0062】
さらに、図3に示されるガイド部29Aは、例えば、ガイド面29bの傾斜の角度を変えることにより、パイロット室31からパイロット流路90を経て流出されたオイルの流れであるパイロット流の流れる方向を変更する流れ変更部材としてもよい。このパイロット流が流れる方向を変更することにより、パイロット室31の背圧を調整して所望の減衰力に調整することができる。この場合のガイド部29Aは、パイロット流の流れる方向を変更することになるが、これに限定されることなく、メイン流路70におけるメインバルブ30を流れたオイルの流れである噴流の流れる方向を変更する流れ変更部材を設けて所望の減衰力に調整してもよい。また、上記のように噴流側及びパイロット流側の何れか一方のみ流れ変更部材を設けるだけでなく、両方共に流れ変更部材を設けて所望の減衰力に調整してもよいことは勿論である。さらに、パイロット流と噴流の合流箇所又はそれぞれの出口に、遮蔽部材及び/又は流れ変更部材を設けて、パイロット室31の背圧を調整して所望の減衰力に調整してもよいことは勿論である。
【0063】
ところで、圧側行程においては、インナチューブ3に進入するピストンロッド8の進入体積分の量のオイルがインナチューブ3内のロッド側油室S3から連通孔3aを介して環状油室S4に移送される。このとき、環状油室S4の容積増加分ΔV(補給量)がピストンロッド8の容積増加分ΔVよりも大きいため、環状油室S4へのオイルの補給量のうち、「ΔV‐ΔV」の不足分がオイル収容部Roからロッド側油室S3へ補給される。なお、この不足分のオイルの補給は、隔壁部材9の底部に形成された、オイル収容部Roとロッド側油室S3との間のオイルの給排を可能にする給排部(図示しない)を介して行われる。
【0064】
(伸側行程)
次に、緩衝器1の伸側行程時の作用を図4に基づいて以下に説明する。
【0065】
インナチューブ3がアウタチューブ2に対して相対的に下動する伸側行程においては、ロッド側油室S3内のオイルがピストン21によって圧縮されてその圧力が高くなる。すると、このロッド側油室S3内のオイルは、伸側行程時のメイン流路80を通ってピストン側油室S2へと流れ込む。具体的には、図4に実線矢印にて示すように、オイルは、ロッド側油室S3から上部ピストン21Aの油孔21bを通過して伸側入口チェック弁25を板バネ38の付勢力に抗して押し開いて隙間37へと流れ、その圧力でメインバルブ30を板バネ32とパイロット室31の背圧による閉弁方向の力に抗して押し開いて隙間37からメインバルブ部材29の油孔29aと下部ピストン21Bの油孔21eを通り、伸側出口チェック弁23を押し開いてピストン側油室S2へと流れ込む。このとき、オイルがメインバルブ30を通過する際の流動抵抗によって、当該緩衝器1には伸側減衰力が発生する。
【0066】
一方、ロッド側油室S3から上部ピストン21Aの油孔21bを通って隙間37へと流れ込んだオイルの一部は、圧側行程時と同様に、パイロット流路90を通ってメイン流路80を流れるオイルに合流する。ここで、パイロット流路90におけるオイルの流れを図4に破線矢印にて示す。
【0067】
本実施の形態1では、前述のようにパイロット流路90を流れるオイルは、メイン流路80のメインバルブ30を通過したオイルの噴流と上部ピストン21Aの空間34において合流する。
【0068】
図4に示されるメイン流路80のメインバルブ30を通過したオイルは、径方向にロッド部28A側に向かって(外側から内側に)噴出する噴流となる。また、パイロット流は、ガイド部29Aの傾斜されたガイド面29bによって、流れの方向が制御される。しかしながら、噴流は、ガイド部29Aのガイド面29bの傾斜方向とは、ガイド部29Aを境界として圧側行程と同様な同じ方向ではなく、異なる方向となっている。これにより、伸側行程では、噴流によるパイロット流の吸出し効果の影響は圧側行程と比較して抑えられる。このため、ピストン速度の中高速域での減衰力の上昇を抑える効果の影響も抑えられる。
【0069】
また、圧側行程では、パイロット流にメインバルブ30により狭窄される流路30bに生じる噴流を合流させる場合や、パイロット流にメイン流路70の全部又はメインバルブ30を有する流路30bの箇所以外のメイン流路70の一部の流路が狭窄されることにより生じる噴流を合流させる場合を示した。これと同様に伸側行程においても、パイロット流にメインバルブ30により狭窄される流路30bに生じる噴流を合流させる場合や、パイロット流にメイン流路80の全部又はメインバルブ30を有する流路30bの箇所以外のメイン流路80の一部の流路が狭窄されることにより生じる噴流を合流させる場合があってもよい。いずれの場合であっても、パイロット流に噴流を合流させることにより、噴流を利用してメインバルブ30に作用する閉弁方向の押圧力も調整し、所望の減衰力に調整できることは勿論である。
【0070】
なお、圧側行程では、例えば、ガイド部29Aの形状を変更することにより、パイロット流と噴流の合流箇所又はそれぞれの出口に、遮蔽部材及び/又は流れ変更部材を設ける場合も示したが、伸側行程においても同様に、パイロット流と噴流の合流箇所又はそれぞれの出口に、遮蔽部材及び/又は流れ変更部材を設けて、パイロット室31の背圧を調整して所望の減衰力に調整してもよいことは勿論である。
【0071】
ところで、伸側行程においては、インナチューブ3から退出するピストンロッド8の退出容積分のオイルが環状油室S4から連通孔3aを介してロッド側油室S3へ移送される。このとき、環状油室S4の容積減少分ΔV(排出量)がピストンロッド8の容積減少分ΔVよりも大きいため、環状油室S4へのオイルの排出量のうち、「ΔV‐ΔV」の余剰分がロッド側油室S3からオイル収容部Roへ排出される。なお、この余剰分のオイルの排出は、隔壁部材9の底部に形成された、オイル収容部Roとロッド側油室S3との間のオイルの給排を可能にする給排部(図示しない)を介して行われる。
【0072】
本実施の形態1では、メイン流路70,80のメインバルブ30を通過したオイルの噴流とパイロット流とが合流する方向を利用してパイロット室31の背圧を制御することができる。そして、このパイロット室31の背圧を制御することにより、メインバルブ30の開度を効果的に調整して所望の減衰力を容易に調整することができる。
【0073】
<実施の形態2>
次に本発明の実施の形態2を図6に基づいて以下に説明する。
【0074】
図6は、本発明の実施の形態2に係る緩衝器の減衰力発生装置20’の縦断面図である。本図においては、図2において示したものと同一の構成部分には同一の符号を付して重複する説明を省略又は簡略する。
【0075】
本実施の形態2に係る緩衝器1と減衰力発生装置20’の基本構成は、実施の形態1に係るものと同じであるが、本実施の形態2に係る減衰力発生装置20’においては、メインバルブ部材29のガイド部29A’の上面は、上部ピストン21Aの空間34に突出しておらず、上面は平坦面を構成している点が実施の形態1とは異なっている。
【0076】
本実施の形態2に係る減衰力発生装置20においては、圧側行程においてパイロット流路90を流れるパイロット流は、メイン流路70,80のメインバルブ30を通過したオイルの噴流と上部ピストン21Aの空間34で合流する。しかしながら、ガイド部29A’の上面は、ガイド部29Aと異なり、パイロット流の方向を案内しないため、パイロット流は、噴流と同じ方向に合流することによる吸出し効果も噴流と逆方向に合流することによる衝突の効果も抑えられる。この結果、パイロット室31の背圧は、噴流によるパイロット流路90の圧力を上昇させることの影響も、低下させることの影響も小さくなる。このため、メインバルブ30を閉弁方向に押圧する力も相対的に上昇することも低下することもなく、メインバルブ30の開度は、ピストン速度の中高速域の減衰力を図5の破線Bや一点鎖線Cでもない中間であるほぼリニアな実線Aに示すような減衰力にすることもできる。
【0077】
本実施の形態2では、メイン流路70,80のメインバルブ30を通過したオイルの噴流とパイロット流とが合流する方向を規定せずに、パイロット室31の背圧を上昇させることも低下させることもなく減衰力をリニアに制御することができる。そして、このパイロット室31の背圧を制御することにより、メインバルブ30の開度を効果的に調整して所望の減衰力を容易に調整することができる。
【0078】
<実施の形態3>
次に本発明の実施の形態3を図7に基づいて以下に説明する。
【0079】
図7は、本発明の実施の形態3に係る緩衝器のガイド部の部分縦断面図である。同一の構成部分には同一の符号を付して重複する説明を省略又は簡略する。
【0080】
図7に示すガイド部29A”は、実施の形態1と同様に上部ピストン21Aの空間34に突出させる場合であっても、ガイド部29A”の上端部外周を実施の形態1とは逆方向に上方に向かって傾斜されたテーパ状のガイド面29cとすることもできる。これによって、図7に示すガイド面29cの傾斜方向と噴流の方向とは、ガイド部29A”を境界として逆方向となる。このため、圧側行程では、メイン流路70のメインバルブ30を通過したオイルの噴流の方向に対して、ガイド面29cの傾斜方向に案内されたパイロット流が逆方向に合流して衝突する。これにより、パイロット室31からパイロット流路90を経て流出されたパイロット流の流れの勢いが、メインバルブ30を流れる噴流との衝突で抑えられる。この結果、パイロット室31の背圧が上昇してメインバルブ30を閉弁方向に押圧する力も上昇し、メインバルブ30の開度が小さくなる。このため、ピストン速度の中高速域における減衰力を図5の一点鎖線Cに示すように高く調整することができる。また伸側行程においても、圧側行程と同様に、噴流とパイロット流との逆方向に衝突するため、ピストン速度の中高速域における減衰力を高く調整することができる。
【0081】
本実施の形態3では、メイン流路70,80のメインバルブ30を通過したオイルの噴流とパイロット流とが合流する方向を利用してパイロット室31の背圧を制御することができる。そして、このパイロット室31の背圧を制御することにより、メインバルブ30の開度を効果的に調整して所望の減衰力を容易に調整することができる。
【0082】
本実施の形態1〜3では、いずれもパイロット室31からパイロット流路90を経て流出されたオイルの流れに、メイン流路70,80におけるメインバルブ30により狭窄される流路30bに生じる噴流を合流させている。これにより、パイロット室31の背圧もメイン流路70,80のメインバルブ30を通過したオイルの噴流を利用して調整される。このため、噴流を利用してメインバルブ30に作用する閉弁方向の押圧力も調整することができ、所望の減衰力に調整することができる。
【0083】
また、本実施の形態1〜3に示すように、パイロット流路90を流れるオイルとメインバルブ30を通過したオイルとの合流方向を変えることによって、圧側行程及び伸側行程の何れか一方の行程のみ又は両方の行程においてパイロット室31の背圧を調整して減衰力を調整することもできる。
【0084】
また、本実施の形態1〜3に示すように、減衰力発生装置20及びソレノイド40をピストン21にコンパクトに組み込むことによって、緩衝器1を例えば自動二輪車の前輪を車体に対して懸架するフロントフォークだけでなく、リアクッションとしても使用することができる。
【0085】
ところで、本発明は、パイロット流路90のパイロット弁49の下流を流れるオイルとメイン流路70,80のメインバルブ30を通過するオイルの噴流の流れを制御することによってパイロット室31の背圧を制御し、これによって特にピストン速度の中高速域における減衰力を調整するようにした。パイロット室31の背圧を下げるための構成をしては、例えば、図8(a)〜(c)に模式的に示すような形態が考えられる。一方、パイロット室31の背圧を高めるための構成としては、例えば、図8(d),(e)に模式的に示す形態が考えられる。
【0086】
すなわち、図8(a)は、パイロット流路90を流れるパイロット流を、メイン流路70,80を流れる噴流の流れ方向に沿わせて、同じ方向に合流させた構成を示している。図8(b)は、パイロット流と噴流とを逆方向に合流させつつも、パイロット流の噴流との衝突を防ぎ、流れの方向を変更するための流れ変更部材60bを設けた構成を示している。このため、噴流とパイロット流の少なくとも何れか一方の流れの勢いが流れ変更部材60bにより抑えられる。これにより、パイロット室の背圧も調整される。このため、メインバルブに作用する閉弁方向の押圧力も調整することができ、所望の減衰力に調整することができる。しかし、この図8(b)に示す流れ変更部材60bは、噴流とパイロット流の何れか一方の流れの方向を変更して互いに合流させる構成だけに限定されない。例えば、パイロット流が流れ変更部材60bに衝突している箇所である遮蔽部材61bの長さを長くする等により、遮蔽部材61bを噴流とパイロット流の何れか一方の流れを遮蔽することを主たる目的としたものでもよい。これにより、噴流とパイロット流の少なくとも何れか一方の流れの勢いが当該遮蔽部材61bにより抑えられ、パイロット室の背圧も調整される。このため、メインバルブに作用する閉弁方向の押圧力も調整することができ、所望の減衰力に調整することができる。
【0087】
図8(c)は、メイン流路の一部を絞ってベンチュリ管とし、絞り部60cで絞られて流速が高くなった部分にパイロット流を流す構成を示している。これは流路が狭窄されて生じる相対的に高速な流れである噴流の途中でパイロット流が合流する部分が設けられる場合の一実施例である。これらの構成によってパイロット室31の背圧を下げて減衰力を小さく調整することができる。
【0088】
他方、図8(d)は、パイロット流路90を流れるパイロット流をメイン流路70,80を流れる噴流の流れ方向に逆方向に合流させてパイロット流と噴流を衝突させる構成を示している。図8(e)は、パイロット流と噴流とを正面衝突させる構成を示している。これらの構成によって、パイロット室31の背圧を高めて減衰力が大きくなるよう調整することができる。
【0089】
なお、図8(a)〜(d)に示される各構成は、実施の形態1〜3に示されるようにパイロット室31からパイロット流路90を経て流出されるオイルの流れに、メインバルブ30により狭窄される流路30bに生じる噴流を合流させている場合であってもよい。また、これに限ることなく、パイロット室31からパイロット流路90を経て流れるオイルの流れに、メイン流路70,80の全部又はメインバルブ30を有する流路30b等の箇所以外のメイン流路70,80の一部の流路が狭窄されることにより生じる噴流を合流させている場合であってもよい。いずれの場合であっても、パイロット室31からパイロット流路90を経て流出されるオイルの流れに噴流を合流させることになる。これにより、パイロット室31の背圧もメイン流路70,80のメインバルブ30を通過したオイルの噴流を利用して調整される。このため、噴流を利用してメインバルブ30に作用する閉弁方向の押圧力も調整することができ、所望の減衰力に調整することができる。
【0090】
[油圧回路]
ここで、本実施の形態の緩衝器1の油圧回路について説明する。なお、油圧回路は、本実施の形態1及び本実施の形態2において同じである。
【0091】
図9は、本実施の形態の緩衝器1の油圧回路図である。図9に示す油圧回路は、メインバルブ30、パイロット流路90、圧側入口チェック弁24、圧側出口チェック弁26、伸側入口チェック弁25、伸側出口チェック弁23及び油溜室Reを備える。また、図9に示すように、ピストン21が備えられた側とは異なる側のピストンロッド8の上端には、例えば、車体側取付部材61が備えられる。一方、インナチューブ3の下端には、例えば、車軸側取付部材62が備えられる。すなわち、車体側取付部材61が備えられるピストンロッド8の上端は、車体側となり、車軸側取付部材62が備えられるインナチューブ3の下端は、車軸側となる。
【0092】
また、図9に示す油圧回路では、油溜室Reは、ロッド側油室S3に直接連通するように設けられる。この油溜室Reは、所定量のオイルを油溜室Reに給排するため、例えば、図示しないオリフィス、チェック弁等を備えて、オイルの導入量を調整している。
【0093】
(1−1)圧側行程
このような油圧回路を備える緩衝器1において、圧側行程では、オイルの流れは、図9に示す油圧回路において実線矢印で示される。インナチューブ3がアウタチューブ2に対して相対的に上動する圧側行程においては、ピストン側油室S2内のオイルがピストン21によって圧縮されてその圧力が高くなる。すると、前述したように、このピストン側油室S2内のオイルは、圧側行程時のメイン流路70を通ってロッド側油室S3へと流れ込む。このとき、オイルがメインバルブ30を通過する際の流動抵抗によって、当該緩衝器1には圧側減衰力が発生する。ここで、図3及び図6に示されるメイン流路70とパイロット流路90とが合流される箇所は、図9に示す油圧回路上では、メインバルブ30とパイロット流路90との符号が記載される箇所に該当している。
【0094】
(1−2)伸側行程
伸側行程では、オイルの流れは、図9に示す油圧回路において破線矢印にて示される。インナチューブ3がアウタチューブ2に対して相対的に下動する伸側行程においては、ロッド側油室S3内のオイルがピストン21によって圧縮されてその圧力が高くなる。すると、前述したように、このロッド側油室S3内のオイルは、伸側行程時のメイン流路80を通ってピストン側油室S2へと流れ込む。このとき、オイルがメインバルブ30を通過する際の流動抵抗によって、当該緩衝器1には伸側減衰力が発生する。ここで、図3及び図6に示されるメイン流路70とパイロット流路90とが合流される箇所は、図9に示す油圧回路上では、メインバルブ30とパイロット流路90との符号が記載される箇所に該当している。
【0095】
[その他の油圧回路]
図10図13は、本実施の形態の緩衝器1における他の構成の油圧回路図である。なお、図9に示された油圧回路と同一の構成部分には、同一の符号を付して重複する説明を省略又は簡略する。図10図13において、圧側行程時のオイルの流れを実線、伸側行程時のオイルの流れを破線で示している。
【0096】
図10の油圧回路)
油圧回路は、図10に示すように、メインバルブ30と、パイロット流路90と、圧側入口チェック弁24と、圧側出口チェック弁26と、伸側入口チェック弁25と、伸側出口チェック弁23と、油溜室Reとを備える。
【0097】
なお、この油圧回路では、減衰力発生装置20及び油溜室Reは、ピストン21の外部、さらにはピストン21が摺動するインナチューブ3の外部に設けられている。油溜室Reは、図9に示す油圧回路と同様に所定のオイルを給排する機能を有する。油溜室Reは、例えば、内部にガスが充填された袋状のブラダ等を備えてもよい。
【0098】
油溜室Reは、メインバルブ30及びパイロット流路90の下流側で分岐された油路と連通している。このように、メインバルブ30及びパイロット流路90の下流側で油溜室Reに連通する油路を分岐することで、油溜室Reには、メインバルブ30で減衰された後のオイルが導入される。
【0099】
(2−1)圧側行程
自動二輪車の走行中に後輪が路面凹凸に追従して上下動すると、後輪を懸架する緩衝器1が伸縮動する。ピストンロッド8がインナチューブ3に対して相対的に上動する圧側行程においては、ピストン側油室S2内のオイルがピストン21によって圧縮されてその圧力が高くなる。すると、このピストン側油室S2内のオイルは、減衰力発生装置20へ導かれる。
【0100】
減衰力発生装置20へ導かれたオイルは、(1−1)圧側行程の場合と同様に、圧側行程時のメイン流路70を通ってロッド側油室S1へと流れ込む。このとき、オイルがメインバルブ30を通過する際の流動抵抗によって、当該緩衝器1には圧側減衰力が発生する。ここで、図3及び図6に示されるメイン流路70とパイロット流路90とが合流される箇所は、図10に示す油圧回路上では、メインバルブ30とパイロット流路90との符号が記載される箇所に該当している。
【0101】
(2−2)伸側行程
ピストンロッド8がインナチューブ3に対して相対的に下動する伸側行程においては、ピストン21がピストンロッド8と共にインナチューブ3内を下動する。そのため、ロッド側油室S1内のオイルがピストン21によって圧縮されてその圧力が高くなる。すると、このロッド側油室S1内のオイルは、減衰力発生装置20へ導かれる。
【0102】
減衰力発生装置20へ導かれたオイルは、(1−2)伸側行程の場合と同様に、伸側行程時のメイン流路80を通ってピストン側油室S2へと流れ込む。このとき、オイルがメインバルブ30を通過する際の流動抵抗によって、当該緩衝器1には伸側減衰力が発生する。ここで、図3及び図6に示されるメイン流路70とパイロット流路90とが合流される箇所は、図10に示す油圧回路上では、メインバルブ30とパイロット流路90との符号が記載される箇所に該当している。
【0103】
図11の油圧回路)
油圧回路は、図11に示すように、メインバルブ30と、パイロット流路90と、圧側入口チェック弁24と、圧側出口チェック弁26と、伸側入口チェック弁25と、伸側出口チェック弁23と、油溜室Reとを備える。
【0104】
この油圧回路では、減衰力発生装置20及び油溜室Reをインナチューブ3内のピストン21の内部に備えている。なお、これに限定されものではなく、油溜室Reは、インナチューブ3内であってピストン21の外部に設けられてもよい。また、油溜室Reは、ピストンロッド8の内部を貫通する流路から車軸側取付部材(図示しない)内や車軸側取付部材(図示しない)近傍に設けられてもよい。
【0105】
油溜室Reは、メインバルブ30及びパイロット流路90の下流側で分岐された油路と連通している。このように、メインバルブ30及びパイロット流路90の下流側で油溜室Reに連通する油路を分岐することで、油溜室Reには、メインバルブ30で減衰された後のオイルが導入される。
【0106】
(3−1)圧側行程
ピストンロッド8がインナチューブ3に対して相対的に上動することで圧力が高くなったピストン側油室S2内のオイルは、(1−1)圧側行程の場合と同様に、圧側行程時のメイン流路70を通ってロッド側油室S1へと流れ込む。このとき、オイルがメインバルブ30を通過する際の流動抵抗によって、当該緩衝器1には圧側減衰力が発生する。ここで、図3及び図6に示されるメイン流路70とパイロット流路90とが合流される箇所は、図11に示す油圧回路上では、メインバルブ30とパイロット流路90との符号が記載される箇所に該当している。
【0107】
(3−2)伸側行程
ピストンロッド8がインナチューブ3に対して相対的に下動することで圧力が高くなったロッド側油室S1内のオイルは、(1−2)伸側行程の場合と同様に、伸側行程時のメイン流路80を通ってピストン側油室S2へと流れ込む。このとき、オイルがメインバルブ30を通過する際の流動抵抗によって、当該緩衝器1には伸側減衰力が発生する。ここで、図3及び図6に示されるメイン流路70とパイロット流路90とが合流される箇所は、図11に示す油圧回路上では、メインバルブ30とパイロット流路90との符号が記載される箇所に該当している。
【0108】
図12の油圧回路)
油圧回路は、図12に示すように、メインバルブ30と、パイロット流路90と、圧側入口チェック弁24と、圧側出口チェック弁26と、伸側入口チェック弁25と、伸側出口チェック弁23と、油溜室Reとを備える。
【0109】
図12に示すように、油溜室Reを減衰力発生装置20に並設せずに、ピストン側油室S2に直接連通させて備えている。なお、この場合、減衰力発生装置20及び油溜室Reは、ピストン21の外部、さらにはインナチューブ3の外部に設けられている。なお、油溜室Reの入口には、ピストンロッド8のインナチューブ3内への進入体積分の所定量のオイルを油溜室Reに導入するため、例えば、図示しないオリフィスやチェック弁等を備えて、オイルの導入量を調整している。
【0110】
(4−1)圧側行程
ピストンロッド8がインナチューブ3に対して相対的に上動することで圧力が高くなったピストン側油室S2内のオイルは、減衰力発生装置20へ導かれる。また、ピストン側油室S2内のオイルの一部は、油溜室Reに導入される。この油溜室Reに導入されるオイルの量は、ピストンロッド8のインナチューブ3内への進入体積分に相当する。これによって、ピストンロッド8のインナチューブ3内への進入に伴うインナチューブ3内の容積変化が補償される。
【0111】
減衰力発生装置20におけるオイルの流れは、油溜室Reに導入されるオイルの流れ以外、前述した(2−1)圧側行程で説明した流れと同じである。ここで、図3及び図6に示されるメイン流路70とパイロット流路90とが合流される箇所は、図12に示す油圧回路上では、メインバルブ30とパイロット流路90との符号が記載される箇所に該当している。
【0112】
(4−2)伸側行程
ピストンロッド8がインナチューブ3に対して相対的に下動することで圧力が高くなったロッド側油室S1内のオイルは、減衰力発生装置20へ導かれる。また、油溜室Re内のオイルは、ピストン側油室S2へ補給される。これによって、ピストンロッド8のインナチューブ3内からの退出に伴うインナチューブ3内の容積変化が補償される。
【0113】
減衰力発生装置20におけるオイルの流れは、油溜室Reから導出されるオイルの流れ以外、前述した(2−2)伸側行程で説明した流れと同じである。ここで、図3及び図6に示されるメイン流路70とパイロット流路90とが合流される箇所は、図12に示す油圧回路上では、メインバルブ30とパイロット流路90との符号が記載される箇所に該当している。
【0114】
図13の油圧回路)
油圧回路は、図13に示すように、メインバルブ30と、パイロット流路90と、圧側入口チェック弁24と、圧側出口チェック弁26と、伸側入口チェック弁25と、伸側出口チェック弁23と、油溜室Reとを備える。
【0115】
この油圧回路では、油圧回路の機能がピストン21に併設されている。すなわち、油溜室Reを並設しない減衰力発生装置20をインナチューブ3内のピストン21の内部に備えている。なお、油溜室Reは、ピストン21の外部、さらにはピストン21が摺動するインナチューブ3の外部に設けられている。
【0116】
油圧回路は、油溜室Reピストン21の内部に備えない以外は、図11に示した油圧回路と同じである。また、油溜室Reの構成は、図12に示した油溜室Reの構成と同じである。
【0117】
(5−1)圧側行程
具体的なオイルの流れは、油溜室Reに導入されるオイルの流れ以外、前述した(3−1)圧側行程で説明した流れと同じである。ここで、図3及び図6に示されるメイン流路70とパイロット流路90とが合流される箇所は、図13に示す油圧回路上では、メインバルブ30とパイロット流路90との符号が記載される箇所に該当している。
【0118】
また、ピストン側油室S2内のオイルの一部は、油溜室Reに導入される。この油溜室Reに導入されるオイルの量は、ピストンロッド8のインナチューブ3内への進入体積分に相当する。これによって、ピストンロッド8のインナチューブ3内への進入に伴うインナチューブ3内の容積変化が補償される。
【0119】
(5−2)伸側行程
具体的なオイルの流れは、油溜室Reから導出されるオイルの流れ以外、前述した(3−2)伸側行程で説明した流れと同じである。ここで、図3及び図6に示されるメイン流路70とパイロット流路90とが合流される箇所は、図13に示す油圧回路上では、メインバルブ30とパイロット流路90との符号が記載される箇所に該当している。
【0120】
また、油溜室Re内のオイルは、ピストン側油室S2へ補給される。これによって、ピストンロッド8のインナチューブ3内からの退出に伴うインナチューブ3内の容積変化が補償される。
【0121】
図10図13に示した他の構成の油圧回路を備える緩衝器1においても、パイロット室31の背圧を、メイン流路70のメインバルブ30を通過したオイルの噴流を利用して制御しているため、本実施の形態1〜3に示した緩衝器1の作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0122】
また、図11及び図13に示した他の構成の油圧回路を備える緩衝器1においては、減衰力発生装置20及びソレノイド40は、ピストン21の内部に設けられている。このため、減衰力発生装置20及びソレノイド40をピストン21にコンパクトに組み込むことによって、緩衝器1を例えば自動二輪車の前輪を車体に対して懸架するフロントフォーク又はリアクッションとして使用することができる。
【0123】
また、図10及び図12に示した他の構成の油圧回路を備える緩衝器1においては、減衰力発生装置20及びソレノイド40は、ピストン21の外部に設けられている。このため、減衰力発生装置20及びソレノイド40をピストン21の外部に配置することにより、減衰力発生装置20及びソレノイド40を自由な位置に配置することができ、レイアウトの自由度を高めることができる。このため、アクチュエータであるソレノイド40の配置やハーネス等の取り回し等についてもレイアウトの自由度を高めることができる。
【0124】
なお、以上は車体側にアウタチューブを取り付け、車軸側にインナチューブを取り付けて成る倒立型の緩衝器に対して本発明を適用した形態について説明したが、本発明は、車体側にインナチューブを取り付け、車軸側にアウタチューブを取り付けて成る正立型の緩衝器に対しても同様に適用可能である。
【0125】
また、以上は本発明を自動二輪車の前輪を車体に対して懸架するフロントフォークして使用される緩衝器に対して適用した形態について説明したが、上記の各油圧回路で示された構成は、例えば、自動二輪車の後輪を車体に対して懸架するリアクッションとして使用される緩衝器に対して適用してもよい。さらに、本発明は、自動二輪車以外の他の任意の車両の車輪を懸架する緩衝器に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0126】
1…緩衝器、2…アウタチューブ、3…インナチューブ、3a…連通孔、4…キャップボルト、5…ガイドブッシュ、6…オイルシール、7…ダストシール、8…ピストンロッド、9…隔壁部材、10…スプリングカラー、11、12…ナット、13…電源コード、14…リバウンドスプリング、15…ガイドブッシュ、16…ロッドガイド、17…懸架スプリング、20…減衰力発生装置、21…ピストン、21A…上部ピストン、21B…下部ピストン、21a,28a…凹部、21b,21c,21d,21e,28b,28c,28e,29a,30a,49a…油孔、22,27…バルブストッパ、23…伸側出口チェック弁、24…圧側入口チェック弁、25…伸側入口チェック弁、26…圧側出口チェック弁、28…弁座部材、28A…ロッド部、28d…弁座、29…メインバルブ部材、29A,29A’,29A”…ガイド部、29b,29c…ガイド面、29d…壁面部、61b…遮蔽部材、30…メインバルブ、31…パイロット室、32,38…板バネ、30b,33,55,56…流路、34,35,50,52…空間、36…ディスタンスカラー、37…隙間、40…ソレノイド、41…ケース、42、43…コア、44…コイル、45…プランジャ、46…作動ロッド、47,48…ガイドブッシュ、49…パイロット弁、51,54…バネ、53…フェイル弁、60b…流れ変更部材、60c…絞り部、70,80…メイン流路、90…パイロット流路、S1、S3…ロッド側油室、S2…ピストン側油室、S4…環状油室、Re…油溜室、Rg…ガス収容部、Ro…オイル収容部。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図10
図11
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図13
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図15