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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-200411(P2015-200411A)
(43)【公開日】2015年11月12日
(54)【発明の名称】内面材押圧装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/18 20060101AFI20151016BHJP
   B29C 63/26 20060101ALI20151016BHJP
   E03F 7/00 20060101ALI20151016BHJP
   E03F 3/04 20060101ALI20151016BHJP
【FI】
   F16L55/18 B
   B29C63/26
   E03F7/00
   E03F3/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-69397(P2015-69397)
(22)【出願日】2015年3月30日
(31)【優先権主張番号】特願2014-72157(P2014-72157)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505354095
【氏名又は名称】タキロンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】黒川 裕司
(72)【発明者】
【氏名】森田 佳伸
(72)【発明者】
【氏名】橋本 隆弘
【テーマコード(参考)】
2D063
4F211
【Fターム(参考)】
2D063BA19
2D063EA06
4F211AD25
4F211AG08
4F211AH43
4F211SA17
4F211SC03
4F211SD18
4F211SJ22
4F211SJ29
4F211SP02
(57)【要約】
【課題】内面材を傷付けたり、変形させたりすることなく内面材を押圧することができ、しかも装置のコンパクト化を達成することができる内面材押圧装置を提供すること。
【解決手段】内面材3における複数の押圧ポイントP1,P2,P3のそれぞれに対応して面接触される複数の押圧パッド31A,31B,31Cと、複数の押圧パッド31A,31B,31Cを対応する複数の押圧ポイントP1,P2,P3に押し付けるための推力を発生する複数の伸縮シリンダ32A,32B,32Cと、内面材固定部材4におけるこれから嵌着しようとする内面材3の嵌着予定部位に対し反力をとる反力支持体33とを備え、前記嵌着予定部位に対し反力支持体33で反力をとりながら各伸縮シリンダ32A,32B,32Cからの推力を各押圧パッド31A,31B,31Cに伝達して内面材3における各押圧ポイントP1,P2,P3を押圧するものとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の内周面に設置される内面材固定部材に対して内面材を嵌着するために該内面材を押圧する内面材押圧装置であって、内面材に面接触される押圧パッドと、内面材固定部材におけるこれから嵌着しようとする内面材の嵌着予定部位又は該嵌着予定部位から管周方向外側の近傍部位に対し反力をとる反力支持体と、押圧パッドを内面材に押し付けるための推力を発生する伸縮シリンダとを備え、前記嵌着予定部位又はその近傍部位に対し反力支持体で反力をとりながら伸縮シリンダからの推力を押圧パッドに伝達して内面材を押圧するようにしたことを特徴とする内面材押圧装置。
【請求項2】
内面材における管周方向に存する複数の押圧ポイントのそれぞれに対応するように、押圧パッド及び伸縮シリンダを配設し、各伸縮シリンダからの推力を各押圧パッドに伝達して各押圧ポイントを押圧するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の内面材押圧装置。
【請求項3】
内面材固定部材に係合可能な位置合わせガイド部材を反力支持体に付設し、該位置合わせガイド部材を内面材固定部材に係合させて、内面材に対する押圧パッドの管周方向の位置合わせをするようしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の内面材押圧装置。
【請求項4】
押圧パッドに、内面材固定部材の位置を検出する検出センサを配設するようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の内面材押圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、既設管の補修や新設管の内表面の仕上げなどのために管の内周面側に内面材を内張りする際に用いられて好適な内面材押圧装置に関し、特に、管の内周面に設置される内面材固定部材に対して内面材を嵌着するために該内面材を押圧する内面材押圧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、既設管の補修工法として、隣り合うライニング体を接続部材で順次接合することによって既設管内部に筒状体を形成し、該筒状体と既設管との間に硬化性充填材を充填して既設管の補修を施すようにしたものがある。
ここで、ライニング体には第1係合部が形成される一方で、接続部材には第2係合部が形成され、第1係合部と第2係合部との係合により、隣り合うライニング体が接続部材を介して接合されている。
【0003】
一方、既設管の内周面に剛性リングや剛性直材等からなる内面材固定部材を設置し、該内面材固定部材に嵌着される内面材を既設管の周方向に順次配設して筒状体を形成し、該筒状体と既設管との間に硬化性充填材を充填して既設管の補修・補強を施すようにしたものもある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
上記のライニング体を用いた既設管の補修工法において、隣り合うライニング体を接続部材で接合するのに用いられて好適なライニング装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
このライニング装置は、接続部材上を転動可能な回転部材と、回転部材を接続部材に押し付けるための推力を発生するエアシリンダと、既設管の内周面に対し反力をとる固定パッドとを備え、回転部材に設けられたフランジ状の凸部を接続部材の撓み領域に設けられた凹部に嵌め込み、既設管の内周面に対し固定パッドで反力をとりながらエアシリンダからの推力を回転部材に伝達して回転部材を接続部材に押し付けながら転動させることにより、ライニング体の第1係合部と接続部材の第2係合部とを係合させて隣り合うライニング体を接続部材を介して接合することができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−316539号公報
【特許文献2】特許第5138829号公報
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載のものにおいて、内面材固定部材に対して内面材を嵌着するためには該内面材を内面材固定部材へと押圧する必要があり、内面材を押圧する装置として上記特許文献2に係るライニング装置を適用することが考えられる。
この場合、回転部材に設けられたフランジ状の凸部を内面材に突き当てた点接触状態で回転部材から内面材へと押圧力が加えられることになる。
このため、内面材における回転部材の凸部が突き当てられた点接触部分に局所的に強い力が作用し、これによって内面材が傷付いたり、変形したりするといった不具合が発生する恐れがある。
【0007】
したがって、内面材固定部材に対して内面材を嵌着するための装置として、上記特許文献2に係るライニング装置をただ単に適用することは上記不具合の発生を招く恐れがあるため好ましくなく、改良の余地があると言える。
なお、上記回転部材として転動面に凸部等を有しない単なるローラを用いることも考えられるが、この場合、内面材に対しローラが線接触となり、内面材におけるローラの線接触部分に強い力が集中的に作用することになり、上記不具合と同様の不具合が発生する恐れがある。
さらに、上記特許文献2のライニング装置のように、既設管の内部において径方向に棒状に延び、既設管の内周面に対して反力をとりながら押圧力を作用させる構成のものでは、既設管の口径が大きくなれば、それに合わせて装置の全長が長いものを用いなくてはならず、装置の重量増等で取り扱いが難しくなるという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたもので、内面材を傷付けたり、変形させたりすることなく内面材を押圧することができ、しかも装置のコンパクト化を達成することができる内面材押圧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の内面材押圧装置は、管の内周面に設置される内面材固定部材に対して内面材を嵌着するために該内面材を押圧する内面材押圧装置であって、内面材に面接触される押圧パッドと、内面材固定部材におけるこれから嵌着しようとする内面材の嵌着予定部位又は該嵌着予定部位から管周方向外側の近傍部位に対し反力をとる反力支持体と、押圧パッドを内面材に押し付けるための推力を発生する伸縮シリンダとを備え、前記嵌着予定部位又はその近傍部位に対し反力支持体で反力をとりながら伸縮シリンダからの推力を押圧パッドに伝達して内面材を押圧するようにしたことを特徴とする。
【0010】
この場合において、内面材における管周方向に存する複数の押圧ポイントのそれぞれに対応するように、押圧パッド及び伸縮シリンダを配設し、各伸縮シリンダからの推力を各押圧パッドに伝達して各押圧ポイントを押圧することができる。
【0011】
また、内面材固定部材に係合可能な位置合わせガイド部材を反力支持体に付設し、該位置合わせガイド部材を内面材固定部材に係合させて、内面材に対する押圧パッドの管周方向の位置合わせをすることができる。
【0012】
押圧パッドに、内面材固定部材の位置を検出する検出センサを配設するようにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の内面材押圧装置によれば、内面材に面接触される押圧パッドによって内面材が押圧されるので、内面材固定部材への嵌着に必要とされる押圧力を、内面材の傷付きや変形が生じない所定の面圧以下となるように内面材に作用させることができ、内面材を傷付けたり、変形させたりすることなく内面材を押圧することができる。
また、内面材固定部材におけるこれから嵌着しようとする内面材の嵌着予定部位又は該嵌着予定部位から管周方向外側の近傍部位に対して反力をとりながら押圧力を作用させる構成とされるので、既設管の口径が大きくなってもそれに合わせて装置を延長する必要がなく、装置のコンパクト化を達成することができる。
【0014】
また、内面材における管周方向に存する複数の押圧ポイントのそれぞれに対応するように、押圧パッド及び伸縮シリンダを配設し、各伸縮シリンダからの推力を各押圧パッドに伝達して各押圧ポイントを押圧することにより、内面材の複数の押圧ポイントを複数の押圧パッドで一気に押圧することができるので、内面材の嵌着作業の効率を格段に向上させることができる。
【0015】
また、内面材固定部材に係合可能な位置合わせガイド部材を反力支持体に付設し、該位置合わせガイド部材を内面材固定部材に係合させて、内面材に対する押圧パッドの管周方向の位置合わせをすることにより、押圧パッドで内面材をより正確に押圧することができる。
【0016】
また、押圧パッドに、内面材固定部材の位置を検出する検出センサを配設するようにすることにより、押圧パッドによって押圧された内面材と内面材固定部材の位置関係を検出することができ、これにより、内面材の内面材固定部材への嵌着状態を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る内面材押圧装置を示す図で、(a)は既設管に設置状態の正面図、(b)は同側面図である。
図2図1(a)のA部拡大図である。
図3図1(b)のB部拡大図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る内面材押圧装置を示す図で、(a)は既設管に設置状態の正面図、(b)は同側面図である。
図5図4(a)のC部拡大図である。
図6図4(b)のD部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の内面材押圧装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0019】
〔第1の実施形態〕
図1には、本発明の第1の実施形態に係る内面材押圧装置を示す図で、既設管に設置状態の正面図(a)及び同側面図(b)がそれぞれ示されている。
また、図2には、図1(a)のA部拡大図が、図3には、図1(b)のB部拡大図が、それぞれ示されている。
【0020】
<内面材押圧装置の概略説明>
図1(a)及び(b)に示される内面材押圧装置1Aは、既設管2の補修・補強のために既設管2の内周面側に内面材3を内張りする際に用いられる装置であり、既設管2の内周面に設置される内面材固定部材4に対して内面材3を嵌着するために該内面材3を押圧する機能を有している。
なお、内面材固定部材4は、管軸方向に所定間隔を有して複数設置されており、内面材3は、管軸方向に隣り合う内面材固定部材4に架け渡されるようにして張り付けられる。
【0021】
<内面材の説明>
内面材3は、管軸方向に沿って延びる、例えば、合成樹脂製の帯板状部材よりなり、既設管2の内周面と対向する一側の板面3aを有するとともに、この一側の板面3aの反対側に、内張り後に既設管2の新たな内周面を構成する他側の板面3bを有している。
【0022】
図2に示されるように、内面材3の一側の板面3aには、管周方向に所定間隔を有して第1係止爪11、第2係止爪12及び第3係止爪13がそれぞれ形成されている。
内面材3の管周方向の両端部には、上向きに開口した開口部内に係止爪を形成してなる嵌着部14がそれぞれ形成されている。
管周方向に隣接する内面材3は、管周方向に互いに突き合わされた状態のそれぞれの嵌着部14における係止爪に係合可能な係止爪を有する内面材連接材15がそれら嵌着部14に抜け止め状態に嵌着することによって接続されている。
【0023】
<内面材固定部材の説明>
内面材固定部材4は、既設管2の内周面に沿う形状の剛性リング17に、例えば、合成樹脂製の多数の連結部材18がその剛性リング17に沿って組み付けられて構成されている。
【0024】
剛性リング17は、湾曲形成した複数の鉄筋、好ましくは、異形鉄筋等からなる棒状部材のほか、形鋼等の鋼材を用いて既設管2の周方向に環状に組み立てられてなり、既設管2の内周面に対してほぼ均一な間隔を有して配設されるように、図示されない所要のアンカー等の任意の定着部材を介して既設管2の内周面に取り付けられている。
【0025】
連結部材18は、両端部に形成される嵌入部19と、既設管2の内周面と対向する側の面において管周方向に所定間隔を有して形成される複数(本例では5個)のリブ状の剛性直材部20と、既設管2の中心側へ向けた面において管周方向に所定間隔を有して形成される第1内面材嵌着部21、第2内面材嵌着部22及び第3内面材嵌着部23とを有している。
嵌入部19には、内面材3の端部に設けられた嵌着部14が嵌め込まれる。
内面材嵌着部21,22,23には、内面材3が抜け止め状態に嵌着されるように、既設管2の中心側へ向けて開口した開口部内に、内面材3に設けられた係止爪11,12,13と係合可能な係止爪21a,22a,23aが形成されている。
図3に示されるように、剛性直材部20には、管軸方向の一方側に開口するように切り欠かれて剛性リング17を嵌入可能な剛性リング嵌着部24が形成されている。
【0026】
<押圧ポイントの説明>
図2に示されるように、内面材3には3つの押圧ポイントP1,P2,P3があり、内面材3の他側の板面3bにおける第1係止爪11に対応する部位が第1押圧ポイントP1、同板面3bにおける第2係止爪12に対応する部位が第2押圧ポイントP2、同板面3bにおける第3係止爪13に対応する部位が第3押圧ポイントP3であり、各押圧ポイントP1,P2,P3を押圧することにより、各係止爪11,12,13を各内面材嵌着部21,22,23に嵌着することができる。
【0027】
<内面材押圧装置の詳細説明>
次に、内面材押圧装置の詳細構造について、主に図2及び図3を用いて以下に説明する。
【0028】
図2に示されるように、第1の実施形態の内面材押圧装置1Aは、内面材3における複数の押圧ポイントP1,P2,P3のそれぞれに対応して面接触可能な平坦面(内面材3の表面に沿うように円柱状の曲面とすることもできる。)を有する平板状部材よりなる複数の押圧パッド31A,31B,31Cと、複数の押圧パッド31A,31B,31Cを対応する複数の押圧ポイントP1,P2,P3に押し付けるための推力を発生する複数の伸縮シリンダ32A,32B,32Cと、内面材固定部材4におけるこれから嵌着しようとする内面材3の嵌着予定部位に対し反力をとる反力支持体33とを備え、嵌着予定部位に対し反力支持体33で反力をとりながら各伸縮シリンダ32A,32B,32Cからの推力を各押圧パッド31A,31B,31Cに伝達して内面材3における各押圧ポイントP1,P2,P3を押圧するように構成されている。
伸縮シリンダ32A,32B,32Cには、取り扱いが容易なエアシリンダを好適に用いることができ、押圧パッド31A,31B,31Cを内面材3に押し付けるための必要な推力及びストローク(伸長量)を得ることができるように、シリンダ径が30〜100mm程度、好ましくは、40〜80mm程度、使用圧力(コンプレッサの圧力)が0.3〜1MPa程度、好ましくは、0.5〜0.8MPa程度、ストロークが50〜500mm程度、好ましくは、100〜400mm程度のものを好適に用いることができる。
上記の各伸縮シリンダ32A,32B,32Cにより490〜1960Nの力が得られ、この範囲の力であれば、内面材3の係止爪11,12,13を連結部材18の対応する内面材嵌着部21,22,23に嵌着することができ、過剰な力がかかることもなく、内面材3の変形を起こすこともない。
なお、伸縮シリンダ32A,32B,32Cとしては、上記エアシリンダのほか、例えば、電動シリンダ、油圧シリンダ等を用いることができる。
また、押圧パッド31A,31B,31Cは、各押圧ポイントP1,P2,P3を押圧することにより、各係止爪11,12,13を各内面材嵌着部21,22,23に嵌着することができるように、図2及び図3に示す内面材嵌着部21,22,23の既設管2の中心側へ向けて開口した開口部の寸法(例えば、管周方向及び管軸方向の寸法:約20mmと約60mm)に対して、大きい矩形状のもの、好ましくは、管周方向及び管軸方向にそれぞれ10〜200mm程度、より好ましくは、20〜100mm程度大きい矩形状のものを用いるようにすることが好ましい。
ここで、大きく形成する寸法が、10mm未満であると、位置合わせに時間を要することで作業性が低下することとなり、一方、200mmを超えると、押圧力が分散して必要な押圧力が得にくくなる。
【0029】
ここで、複数の押圧ポイントP1,P2,P3、すなわち第1押圧ポイントP1、第2押圧ポイントP2及び第3押圧ポイントP3に対し、複数の押圧パッド31A,31B,31C、すなわち第1押圧パッド31A、第2押圧パッド31B及び第3押圧パッド31Cがそれぞれ対応する。
また、第1押圧パッド31Aを第1押圧ポイントP1に押し付けるための推力を発生するのが第1伸縮シリンダ32Aであり、第2押圧パッド31Bを第2押圧ポイントP2に押し付けるための推力を発生するのが第2伸縮シリンダ32Bであり、第3押圧パッド31Cを第3押圧ポイントP3に押し付けるための推力を発生するのが第3伸縮シリンダ32Cである。
各押圧パッド31A,31B,31Cと各伸縮シリンダ32A,32B,32Cにおいては、各押圧パッド31A,31B,31Cが各伸縮シリンダ32A,32B,32Cにおけるロッド部の先端部に皿ビス等の締結手段によって直接的に固定されている。
【0030】
<反力支持体の説明>
図3に示されるように、反力支持体33は、今回の内面材嵌着作業の実施対象である図中二点鎖線で示される先行側の内面材固定部材4Aと、この先行側の内面材固定部材4Aに対し管軸方向に所定間隔をあけて配設される次回の内面材嵌着作業の実施対象である図中実線で示される後行側の内面材固定部材4Bとの間において、内面材3を抱きかかえるように内部に挿通可能に配設されるベースフレーム35を備えている。
図2に示されるように、ベースフレーム35は、略四角枠状に形成されており、剛性リング17に沿うように管周方向に延びてその剛性リング17の曲率に合わせて管径方向外側に向けて凸状に湾曲した底板部35aを備え、この底板部35aの管周方向の両端部に側板部35bを立設し、これら側板部35bに支持される天板部35cを底板部35aと対向するよう配置して構成されている。
なお、十分に剛直な側板部35bを用いた場合には、側板部35bは一方だけを使用した、所謂コ字型のベースフレームを使用することもできる。
【0031】
ベースフレーム35の底板部35aの下面側には、管周方向に適宜間隔で所要の脚部材36が固着されている。
図3に示されるように、脚部材36は、先行側の内面材固定部材4Aにおいて、これから嵌着しようとする内面材3の嵌着予定部位における剛性リング17に向けて延設されている。
脚部材36の先端部には、管軸方向の一方側に開口して剛性リング17を嵌入可能な剛性リング嵌着部36aが形成されている。
さらに、ベースフレーム35の底板部35aの下面側には、それら脚部材36の外側に位置するように一対の位置合わせガイド部材37が後行側の内面材固定部材4Bにおける連結部材18の両端部に形成された嵌入部19に嵌め込み可能に固着されている。
なお、脚部材36の先端部に形成される剛性リング嵌着部36aは、上記の形状のもののほか、剛性リング嵌着部36aの先割れした2つの突端部のうち、下側の突端部のみを有するものであっても、下側の突端部により剛性リング17との間で反力を持つことができるため使用できる。
【0032】
ベースフレーム35には、基端側が天板部35cに固着される一方で先端側が管軸中心に向かって延びる支柱部材38が立設されている。
支柱部材38の先端部近傍には、基端側が該支柱部材38に固着される一方で先端側が先行側の内面材固定部材4Aの上方位置に向かって管軸方向に延びる梁部材39が突設されている。
梁部材39の先端部には、複数の伸縮シリンダ32A,32B,32Cを円弧状配置で支持するシリンダ支持フレーム40が固着されている。
ここで、複数の伸縮シリンダ32A,32B,32Cの円弧状配置とは、図1(a)に示されるように、各押圧ポイントP1,P2,P3に各伸縮シリンダ32A,32B,32Cを対応させ、かつ各伸縮シリンダ32A,32B,32Cの推力作用線LA,LB,LCが、管軸中心で交わるようにして、各押圧パッド31A,31B,31Cを内面材貼付時のその内面材の湾曲面に沿う仮想円弧ライン上に並ぶように位置させる各伸縮シリンダ32A,32B,32Cの配置のことである。
図3に示されるように、梁部材39上には、伸縮シリンダ32A,32B,32Cの配管も兼ねる取手41が取り付けられ、この取手41により、装置のハンドリングや位置決めなどを容易に行うことができる。
【0033】
以上に述べたように構成される内面材押圧装置1Aを用いた内面材嵌着作業について以下に説明する。
なお、以下に述べる内面材嵌着作業は、内面材固定部材4に対し管周方向に合計15枚の内面材3を順次嵌着して張り付けることで筒状体45を組み立てる例である。
また、内面材固定部材4に内面材3を嵌着するにあたっては、各内面材嵌着部21,22,23に対し各係止爪11,12,13が対応するように連結部材18に対し内面材3の位置合わせをする。
【0034】
図2に示されるように、既設管2内の最低位置にある連結部材18に対して内面材3の位置合わせをし、この内面材3を反力支持体33のベースフレーム35内に抱きかかえるように挿通した状態とする。
【0035】
次いで、図3に示されるように、位置合わせガイド部材37を、後行側の内面材固定部材4Bにおける連結部材18の一端部側の嵌入部19に嵌め込む。
これにより、複数の押圧ポイントP1,P2,P3に対する複数の押圧パッド31A,31B,31Cの管周方向の位置合わせをすることができる。
【0036】
次いで、各脚部材36の先端部に設けられた剛性リング嵌着部36aに剛性リング17が嵌入されるように複数の脚部材36を先行側の内面材固定部材4Aに向けて押し進めて嵌着する。
これにより、複数の押圧ポイントP1,P2,P3に対する複数の押圧パッド31A,31B,31Cの管軸方向の位置合わせをすることができるとともに、先行側の内面材固定部材4Aにおけるこれから嵌着しようとする内面材3の嵌着予定部位に対し反力支持体33で反力をとることができる。
【0037】
そして、各伸縮シリンダ32A,32B,32Cを伸長作動させることにより、嵌着予定部位に対し反力支持体33で反力をとりながら各伸縮シリンダ32A,32B,32Cからの推力を各押圧パッド31A,31B,31Cに伝達して内面材3における各押圧ポイントP1,P2,P3を押圧する。
こうして、1枚目の内面材3のすべての係止爪11,12,13を連結部材18の対応するすべての内面材嵌着部21,22,23に嵌着することができ、1枚目の内面材3の嵌着作業が完了する。
【0038】
1枚目の内面材3を基準に、2枚目から15枚目までの内面材3を、管周方向の一方と他方にほぼ均等に振り分けるように、1枚目の内面材3に対して実施した押圧動作と同様の押圧動作を実施することにより、2枚目から15枚目までの内面材3の嵌着作業が完了する。
そして、上記の内面材3の嵌着作業の後、管周方向に隣接する内面材3の互いの突き合わせ位置にある嵌着部14に内面材連接材15を嵌着して、隣接する内面材3同士を順次接合するようにされる。
なお、上記説明は、内面材3を1枚目から15枚目までの嵌着作業の後、内面材連接材15の接合を行う事例であるが、内面材3の嵌着作業完了前でいくつかの内面材3の嵌着の後に嵌着のできた内面材3に対して適宜内面材連接材15を接合することもできる。
こうして、15枚の内面材3で図1(a)中一点鎖線で示される筒状体45を形成し、該筒状体45と既設管2との間に硬化性充填材を充填して既設管の補修・補強を施す。
【0039】
<作用効果の説明>
第1の実施形態の内面材押圧装置1Aによれば、内面材3に面接触される押圧パッド31A,31B,31Cによって内面材3が押圧されるので、内面材固定部材4への嵌着に必要とされる押圧力を、内面材3の傷付きや変形が生じない所定の面圧以下となるように内面材3に作用させることができ、内面材3を傷付けたり、変形させたりすることなく内面材3を押圧することができる。
また、内面材固定部材4におけるこれから嵌着しようとする内面材3の嵌着予定部位に対して反力をとりながら押圧力を作用させる構成とされるので、既設管2の口径が大きくなってもそれに合わせて装置を延長する必要がなく、装置のコンパクト化を達成することができる。
また、内面材3の複数の押圧ポイントP1,P2,P3を複数の押圧パッド31A,31B,31Cで一気に押圧することができるので、内面材3の嵌着作業の効率を格段に向上させることができる。
【0040】
〔第2の実施形態〕
図4には、本発明の第2の実施形態に係る内面材押圧装置を示す図で、既設管に設置状態の正面図(a)及び同側面図(b)がそれぞれ示されている。
また、図5には、図4(a)のC部拡大図が、図6には、図4(b)のD部拡大図が、それぞれ示されている。
第2の実施形態の内面材押圧装置1Bにおいて、第1の実施形態の内面材押圧装置1Aと同一又は同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては第2の実施形態の内面材押圧装置1Bに特有の部分を中心に説明することとする。
【0041】
図4(a)及び(b)に示される内面材押圧装置1Bにおいては、第1の実施形態の内面材押圧装置1Aにおける反力支持体33に代えて、内面材固定部材4におけるこれから嵌着しようとする内面材3の嵌着予定部位から管周方向外側(図において管周方向の右側)の近傍部位に対し反力をとる反力支持体50が採用されている。
【0042】
<反力支持体の説明>
図4(b)に示されるように、反力支持体50は、今回の内面材嵌着作業の実施対象である先行側の内面材固定部材4Aと、次回の内面材嵌着作業の実施対象である後行側の内面材固定部材4Bとの間に配されるベースフレーム51を備えている。
図5に示されるように、ベースフレーム51は、先行側の内面材固定部材4Aにおけるこれから嵌着しようとする内面材3の嵌着予定部位の連結部材18Aを基準として、この連結部材18Aに対し管周方向の他側(図5において右側)に隣接する連結部材18Bに沿うように帯状に延びてその連結部材18Bの曲率に合わせて管径方向外側に向けて凸状に湾曲した形状に形成されている。
【0043】
ベースフレーム51の下面側には、管周方向に適宜間隔で所要の脚部材52が固着されている。
脚部材52は、先行側の内面材固定部材4Aの剛性リング17における連結部材18Bが嵌着された部位に向けて延設されている。
図6に示されるように、脚部材52の先端部には、管軸方向の一方側に開口して剛性リング17を嵌入可能な剛性リング嵌着部52aが形成されている。
【0044】
図5に示されるように、ベースフレーム51における管周方向の一端部には、内面材3における他端側の嵌着部14と係合して内面材3をガイドする内面材ガイド部材53が固着されている。
また、ベースフレーム51における管周方向の中間部及び他端部には、それぞれ位置合わせガイド部材54,55が固着されている。
これら位置合わせガイド部材54,55は、いずれも先行側の内面材固定部材4Aと後行側の内面材固定部材4Bとに架け渡すように係合可能で、一方の位置合わせガイド部材54は、各内面材固定部材4A,4Bにおける連結部材18Bの第2内面材嵌着部22に嵌め込み可能とされる一方、他方の位置合わせガイド部材55は、各内面材固定部材4A,4Bにおける連結部材18Bの嵌入部19に嵌め込み可能とされている。
【0045】
ベースフレーム51における管周方向の一端部には、基端側がベースフレーム51上に固着される一方で先端側が管軸中心に向かって延びる支柱部材56が立設されている。
支柱部材56の先端部近傍には、基端側が該支柱部材56に固着される一方で先端側が先行側の内面材固定部材4Aにおけるこれから嵌着しようとする内面材3の嵌着予定部位の上方位置に向かって管接線方向に沿って延びる梁部材57が突設され、梁部材57の下面側には、複数の伸縮シリンダ32A,32B,32Cを円弧状配置で支持するシリンダ支持部材58が固着されている。
【0046】
なお、装置のハンドリングや位置決めなどを容易に行うために、ベースフレーム51と支柱部材56との間に配設される補強部材59に取手60が、梁部材57に取手61が取り付けられている。
【0047】
以上に述べたように構成される内面材押圧装置1Bにおいては、位置合わせガイド部材54を各内面材固定部材4A,4Bにおける連結部材18Bの第2内面材嵌着部22に嵌め込むとともに、位置合わせガイド部材55を各内面材固定部材4A,4Bにおける連結部材18Bの嵌入部19嵌め込む。
これにより、複数の押圧ポイントP1,P2,P3に対する複数の押圧パッド31A,31B,31Cの管周方向の位置合わせをすることができる。
【0048】
次いで、先行側の内面材固定部材4Aの剛性リング17における連結部材18Bが嵌着された部位に各脚部材52の剛性リング嵌着部52aを嵌入するように複数の脚部材52を内面材固定部材4Aに向けて押し進めて嵌着する。
これにより、複数の押圧ポイントP1,P2,P3に対する複数の押圧パッド31A,31B,31Cの管軸方向の位置合わせをすることができるとともに、内面材3の嵌着予定部位から管周方向の他側の近傍部位に対し反力支持体50で反力をとることができる。
【0049】
そして、各伸縮シリンダ32A,32B,32Cを伸長作動させることにより、嵌着予定部位の近傍部位に対し反力支持体50で反力をとりながら各伸縮シリンダ32A,32B,32Cからの推力を各押圧パッド31A,31B,31Cに伝達して内面材3における各押圧ポイントP1,P2,P3を押圧する。
こうして、1枚目の内面材3のすべての係止爪11,12,13を連結部材18Aの対応するすべての内面材嵌着部21,22,23に嵌着することができ、1枚目の内面材3の嵌着作業が完了する。
【0050】
1枚目の内面材3に対して実施した押圧動作と同様の押圧動作を実施することにより、2枚目から15枚目までの内面材3の嵌着作業が完了する。
なお、内面材3の2枚目以降の嵌着作業においては、管周方向に隣接する内面材3の互いの突き合わせ位置にある嵌着部14に内面材連接材15(図2参照)を嵌着して、隣接する内面材3同士を順次接合するようにされる。
こうして、15枚の内面材3で図4(a)中一点鎖線で示される筒状体45を形成し、該筒状体45と既設管2との間に硬化性充填材を充填して既設管の補修・補強を施す
【0051】
<作用効果の説明>
第2の実施形態の内面材押圧装置1Bによっても、第1の実施形態の内面材押圧装置1Aと同様の作用効果を得ることができる。
【0052】
<内面材の内面材固定部材への嵌着状態を確認するための検出手段の説明>
ところで、上記第1〜第2の実施形態において、押圧パッド31A〜31Cに、内面材固定部材4,4A,4Bの位置を検出する検出センサ(図示省略)を配設する(押圧パッド31A〜31Cの内面材3に対する当接面側に検出センサを配設するか、検出センサ自体で押圧パッド31A〜31Cを構成する。)ようにすることができる。
より具体的には、検出センサには、内面材固定部材4,4A,4Bを構成する鉄筋からなる剛性リング17の位置を検出することができる電磁誘導方式のセンサを好適に用いることができる。
これにより、押圧パッド31A〜31Cによって押圧された内面材3と内面材固定部材4,4A,4Bの位置関係を検出することができ、内面材3の内面材固定部材4,4A,4Bへの嵌着状態を確認することができる。
この場合、内面材3の内面材固定部材4,4A,4Bへの嵌着状態の確認は、センサと鉄筋からなる剛性リング17との距離を検出し、この距離によって内面材3が剛性リング17に対して所定位置まで押圧できたかを、センサの出力を表示する表示機(図示省略)の表示を確認することにより行うことができ、さらに必要に応じて、表示機の表示と併せて、内面材3が伸縮シリンダ32A〜32Cを介して所定位置まで押された(センサと鉄筋からなる剛性リング17との距離が所定距離未満になった)ことを作業者に音等で知らせるようにしたり、伸縮シリンダ32A〜32Cの作動を自動制御するようにすることもできる。
【0053】
以上、本発明の内面材押圧装置について、複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、各実施形態に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
例えば、本実施例では剛性リングに環状のものを使用したが、このほか、螺旋状のものも使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の内面材押圧装置は、内面材を傷付けたり、変形させたりすることなく内面材を押圧することができるという特性を有していることから、老朽化した下水道管等の既設管の補修の際に用いられる内面材の内張り作業の用途に好適に用いることができるほか、例えば、新設管の内表面の仕上げの際に用いられる内面材の内張り作業の用途にも用いることができ、特に、内面材が合成樹脂製である場合に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0055】
1A,1B 内面材押圧装置
2 既設管
3 内面材
4,4A,4B 内面材固定部材
31A〜31C 押圧パッド
32A〜32C 伸縮シリンダ
33,50 反力支持体
37,54,55 位置合わせガイド部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6