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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-20073(P2015-20073A)
(43)【公開日】2015年2月2日
(54)【発明の名称】2線式信号伝送
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0402 20060101AFI20150106BHJP
【FI】
   A61B5/04 310M
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-147572(P2014-147572)
(22)【出願日】2014年7月18日
(31)【優先権主張番号】13/946,031
(32)【優先日】2013年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【テーマコード(参考)】
4C027
【Fターム(参考)】
4C027AA02
4C027BB05
4C027DD03
4C027HH04
4C027KK03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】第1の信号を生成する第1の信号源と、第2の信号を生成する第2の信号源と、を含む、装置を提供する。
【解決手段】2つの信号源間にクロスオーバースイッチが、直接スイッチ構成において第1及び第2の信号の和を生成し、かつ交差スイッチ構成において第1及び第2の信号間の差を生成するように接続される。装置12は、和及び差を受信し、これらから第1の信号及び第2の信号を復元するプロセッサ26を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
第1の信号を生成する第1の信号源及び第2の信号を生成する第2の信号源と、
直接スイッチ構成において前記第1及び第2の信号の和を生成し、かつ交差スイッチ構成において前記第1及び第2の信号間の差を生成するように、前記2つの信号源間に接続されるクロスオーバースイッチと、
前記和及び前記差を受信し、かつ該和及び差から前記第1の信号及び前記第2の信号を復元するように構成されたプロセッサと、を含む、装置。
【請求項2】
それぞれ前記第1の信号源と前記クロスオーバースイッチとに接続され、該第1の信号源及びクロスオーバースイッチから前記和及び前記差を前記プロセッサに伝達するように構成された1対の導電体を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の信号がアナログ信号を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
ヒト患者への挿入のために構成された、カテーテルの遠位端を含み、該遠位端に前記第1の信号源、前記第2の信号源、及び前記クロスオーバースイッチが組み込まれる、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の信号源がそれぞれ、前記遠位端の外側に生成される磁場に応じてそれぞれ前記第1の信号及び前記第2の信号を生成するように構成された第1及び第2のコイルを含み、前記プロセッサが、前記第1の信号及び前記第2の信号に反応して前記遠位端の位置及び向きの表示を決定するように構成された、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記クロスオーバースイッチを、前記直接スイッチ構成と前記交差スイッチ構成との間で切り替えるように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
装置であって、
それぞれn個の信号を生成する一連のn個の信号源であって、nは1より大きい整数である、一連のn個の信号源と、
(n−1)個のクロスオーバースイッチであって、各クロスオーバースイッチがp番目の信号源と(p+1)番目の信号源との間に接続され、pは整数であり、1≦p<nであり、前記n個の信号のn個の異なる線形組み合わせを生成するように構成された、(n−1)個のクロスオーバースイッチと、
前記線形組み合わせを受信し、かつ該線形組み合わせから前記n個の信号を復元するように構成されたプロセッサと、を含む、装置。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記n個の信号の前記n個の異なる線形組み合わせをそれぞれ生成するように、前記(n−1)個のクロスオーバースイッチを、前記スイッチのn個の構成にわたって循環させるように構成される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記異なる線形組み合わせ内の前記n個の信号のそれぞれの係数が+1又は−1である、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
それぞれ前記n個の信号源の1番目及び(n−1)番目のクロスオーバースイッチに接続され、前記線形組み合わせを前記プロセッサに伝達するように構成された、1対の導電体を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
方法であって、
第1の信号源から第1の信号を生成すること及び第2の信号源から第2の信号を生成することと、
直接スイッチ構成において前記第1及び第2の信号の和を生成し、かつ交差スイッチ構成において前記第1及び第2の信号間の差を生成するように、前記2つの信号源間にクロスオーバースイッチを接続することと、
前記和及び前記差を受信することと、
前記和及び前記差から前記第1の信号及び前記第2の信号を復元することと、を含む、方法。
【請求項12】
1対の導電体を前記第1の信号源と前記クロスオーバースイッチとにそれぞれ接続することと、前記1対の導電体を介して前記和及び前記差を伝達することと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1及び第2の信号がアナログ信号を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
ヒト患者への挿入のために構成されたカテーテルの遠位端を用意することと、該遠位端に、前記第1の信号源、前記第2の信号源、及び前記クロスオーバースイッチを組み込むことと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第1及び第2の信号源がそれぞれ、前記遠位端の外側に生成される磁場に応じてそれぞれ前記第1の信号及び前記第2の信号を生成するように構成された第1及び第2のコイルを含み、前記第1の信号及び前記第2の信号に反応して前記遠位端の位置及び向きの表示を決定することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記クロスオーバースイッチを、前記直接スイッチ構成と前記交差スイッチ構成との間で切り替えることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
方法であって、
一連のn個の信号源からn個の信号をそれぞれ生成することであって、nは1より大きい整数である、ことと、
前記n個の信号のn個の異なる線形組み合わせを生成するように構成された、(n−1)個のクロスオーバースイッチのそれぞれを、p番目の信号源と(p+1)番目の信号源との間に接続することであって、pは整数であり、1≦p<nである、ことと、
前記線形組み合わせを受信することと、
前記受信した線形組み合わせから前記n個の信号を復元することと、を含む、方法。
【請求項18】
前記n個の信号の前記n個の異なる線形組み合わせをそれぞれ生成するように、前記(n−1)個のクロスオーバースイッチを、前記スイッチのn個の構成にわたって循環させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記異なる線形組み合わせ内の前記n個の信号のそれぞれの係数が+1又は−1である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記n個の信号源の1番目と(n−1)番目のクロスオーバースイッチとに1対の導電体を接続することと、該1対の導電体を介して前記線形組み合わせを伝達することと、を含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは導電体を用いる信号伝送、具体的には最小数の導電体を介して多重信号を伝送することに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの分野において、比較的多数の測定を同時に行うことが必要とされることがあり、またその測定結果を測定位置から離れた場所へと転送することが必要となることがある。このような転送は、測定位置と離れた場所との間の接続上の制約から困難な場合がある。例えば最小侵襲性の外科手術では、手術を受けている患者内に通じる経路の大きさは極端に限定され得ることから、外科手術のためのカテーテル又はツールの直径はミリメートルの程度でなければならない。測定結果を転送するために用いる導電体の数を最小化することにより、カテーテル又はツールの直径を低減することができ、それに応じて患者に利益がもたらされる。
【0003】
参照により本特許出願に組み込まれる文書は、組み込まれた文書内の用語が、本明細書で明示的又は暗黙的に行われる定義と相反するように定義される場合を除き、本出願の一体部分と見なされるべきであり、本明細書における定義のみが検討されるべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は、
第1の信号を生成する第1の信号源及び第2の信号を生成する第2の信号源と、
直接スイッチ構成において第1及び第2の信号の和を生成し、かつ交差スイッチ構成において第1及び第2の信号間の差を生成するように、2つの信号源間に接続されるクロスオーバースイッチと、
和及び差を受信し、かつ和及び差から第1の信号及び第2の信号を復元するように構成されたプロセッサと、を含む、装置を提供する。
【0005】
開示された一実施形態では、装置は、それぞれ第1の信号源とクロスオーバースイッチとに接続され、第1の信号源及びクロスオーバースイッチから和及び差をプロセッサに伝達するように構成された1対の導電体を含む。
【0006】
開示された更なる実施形態では、第1及び第2の信号がアナログ信号を含む。
【0007】
開示された、また更なる実施形態では、装置が、ヒト患者への挿入のために構成された、カテーテルの遠位端を含み、この遠位端に第1の信号源、第2の信号源、及びクロスオーバースイッチが組み込まれる。典型的には、第1及び第2の信号源がそれぞれ、遠位端の外側に生成される磁場に応じてそれぞれ第1の信号及び第2の信号を生成するように構成された第1及び第2のコイルを含み、プロセッサが、第1の信号及び第2の信号に反応して遠位端の位置及び向きの表示を決定するように構成される。
【0008】
代替的な一実施形態では、プロセッサが、クロスオーバースイッチを、直接スイッチ構成と交差スイッチ構成との間で切り替えるように構成される。
【0009】
本発明の一実施形態により更に、装置であって、
それぞれn個の信号を生成する一連のn個の信号源であって、nは1より大きい整数である、一連のn個の信号源と、
(n−1)個のクロスオーバースイッチであって、各クロスオーバースイッチがp番目の信号源と(p+1)番目の信号源との間に接続され、pは整数であり、1≦p<nであり、n個の信号のn個の異なる線形組み合わせを生成するように構成された、(n−1)個のクロスオーバースイッチと、
線形組み合わせを受信し、かつこの線形組み合わせからn個の信号を復元するように構成されたプロセッサと、を含む、装置が提供される。
【0010】
典型的には、プロセッサが、n個の信号のn個の異なる線形組み合わせをそれぞれ生成するように、(n−1)個のクロスオーバースイッチを、このスイッチのn個の構成にわたって循環させるように構成される。
【0011】
このような異なる線形組み合わせ内のn個の信号のそれぞれの係数が、+1又は−1であり得る。
【0012】
装置は、それぞれn個の信号源の1番目及び(n−1)番目のクロスオーバースイッチに接続され、線形組み合わせをプロセッサに伝達するように構成された、1対の導電体を含み得る。
【0013】
本発明の一実施形態により、方法であって、
第1の信号源から第1の信号を生成すること及び第2の信号源から第2の信号を生成することと、
直接スイッチ構成において第1及び第2の信号の和を生成し、かつ交差スイッチ構成において第1及び第2の信号間の差を生成するように、これら2つの信号源間にクロスオーバースイッチを接続することと、
和及び差を受信することと、
和及び差から第1の信号及び第2の信号を復元することと、を含む、方法が更に提供される。
【0014】
この方法は、ヒト患者への挿入のために構成されたカテーテルの遠位端を用意することと、この遠位端に、第1の信号源、第2の信号源、及びクロスオーバースイッチを組み込むことと、を含んでよい。
【0015】
本発明の一実施形態により、方法であって、
一連のn個の信号源からn個の信号をそれぞれ生成することであって、nは1より大きい整数である、ことと、
n個の信号のn個の異なる線形組み合わせを生成するように構成された、(n−1)個のクロスオーバースイッチのそれぞれを、p番目の信号源と(p+1)番目の信号源との間に接続することであって、pは整数であり、1≦p<nである、ことと、
線形組み合わせを受信することと、
受信した線形組み合わせからn個の信号を復元することと、を含む、方法が更に提供される。
【0016】
本開示は、以下の発明を実施するための形態を、以下の図面と併せ読むことによって、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態による2線式伝送システムを用いた侵襲性医療処置の概略図である。
図2図1の処置で使用される、本発明の実施形態によるカテーテルの遠位端の概略図である。
図3A】本発明の一実施形態によるクロスオーバースイッチを示す概略回路図である。
図3B】本発明の一実施形態によるクロスオーバースイッチを示す概略回路図である。
図4A】本発明の一実施形態による、図2のカテーテルの遠位端内の回路のさまざまな構成の概略回路図である。
図4B】本発明の一実施形態による、図2のカテーテルの遠位端内の回路のさまざまな構成の概略回路図である。
図4C】本発明の一実施形態による、図2のカテーテルの遠位端内の回路のさまざまな構成の概略回路図である。
図5】本発明の一実施形態による、クロスオーバースイッチにより接続された一連の多重信号源の概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
概論
本発明の一実施形態によれば、最小数の導電体を用いて多重信号、典型的にはアナログ信号を転送する方法が提供される。典型的には、多重信号を転送するのに1対の導電体しか必要としない。
【0019】
多重信号が2つの信号源からの2信号からなる場合には、2構成を有するクロスオーバースイッチを2つの信号源間に接続する。「直接」構成では、スイッチは第1及び第2の信号の和を生成し、「交差」構成では、スイッチは第1と第2の信号間の差を生成する。和及び差は、典型的には上述した1対の導電体を介してプロセッサに伝達され、プロセッサが、受信した和及び差を分析することによって2信号を復元する。
【0020】
多重信号が、対応する数の信号源から2つより多い数の信号を含む場合には、より多くのクロスオーバースイッチが用いられる。一般に、n個の信号源(nは正の整数)であれば、(n−1)個のクロスオーバースイッチがこれらn個の信号源間に接続される。典型的には、スイッチの構成は順次変えられるため、いずれの時点をとっても、これらのスイッチのうちわずか1つが交差構成にあって、そのスイッチに接続された2信号間の「局所」差を提供する。それぞれのスイッチ構成ごとに信号の異なる線形組み合わせが生成され、各線形組み合わせは、最大1つの信号差を伴う信号和からなる。
【0021】
これらのさまざまな線形組み合わせは、1対の導電体を介してプロセッサに伝達することが可能であり、プロセッサがこれらの線形組み合わせを分析することによって、n個の信号のそれぞれを復元することが可能である。
【0022】
本発明の実施形態によれば、多重信号を実質的に同時にサンプリングすることが可能となり、この信号が後続のプロセッサによる復元のために、1対の導電体を用いて転送され得る。復元後は、プロセッサが全信号を常時利用できるようになり、これは、各信号が順次利用可能となる、信号転送の時分割多重化システムとは対照的である。
【0023】
システムの説明
以下の記載において、図面中の同様の要素は同様の数字により識別され、同様の要素は、必要に応じて識別数字に文字を添えることにより区別される。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態による2線式伝送システム10を用いた侵襲性医療処置の概略図であり、図2はその処置で使用される、本発明の実施形態によるカテーテルの遠位端の概略図である。例として、システム10は、医療専門家14によってヒト患者18の心臓に施される侵襲性医療処置のために用いられる装置12に組み込まれるものと想定する。
【0025】
処置を施すために、医療専門家14は、カテーテル20を患者内に、カテーテルの遠位端22が患者の心臓に入るように、挿入する。遠位端が患者の心臓内にある間にこの遠位端を追跡するために、装置12は、典型的には患者の下方かつ外側であって心臓16の近傍に位置する磁気トランスミッタ24を含む。トランスミッタ24は、装置12の操作コンソール28内に位置するプロセッサ26により駆動かつ制御される。Biosense Webster(Diamond Bar,CA)により製作されるCarto(登録商標)システムはこのような追跡方法を用いている。
【0026】
以下により詳細に説明するように、トランスミッタからの磁界に応じて遠位端22内で生成された信号が、カテーテル20を介してプロセッサ26に返送される。プロセッサが、受信した信号を分析することによって遠位端の位置及び向きを決定するが、その結果を、コンソールに付属するスクリーン30上に表示してもよい。結果は、典型的には、遠位端を表すアイコンを心臓のマップ内に組み込む形で表示される。
【0027】
以下にその例を示すような、遠位端内で生成されるその他の信号もまた、カテーテル20を介して折り返し転送されてよく、これらの信号を分析した結果も、スクリーン30上に表示されてよい。これらの信号から導かれる結果としては、典型的には心臓の特性を表す数字表示及び/又はグラフが挙げられる。
【0028】
図2は、遠位端22の構成要素を概略的に示す。遠位端は、典型的には、心臓16の、遠位端22が位置する部分の特性を測定するために用いられる1つ以上の検出要素を含む。このような検出要素は、例えば、遠位端によって心臓に加えられる力又は圧力を測定するセンサ、心臓の温度を測定するセンサ、及び/又は心臓の電極電位を測定する電極を含み得る。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、Govariらに付与された米国特許第8,357,152号には、カテーテルの遠位端内に圧力検出信号を生成するセンサを有するシステムが説明されている。以下の説明から明らかとなるように、本発明の実施形態において、上述したタイプのセンサによって供給される信号がプロセッサ26に伝達され得る。
【0029】
例として、遠位端22は、心臓の電極電位を測定するために用いられ得る3つのほぼ同様の電極50、すなわち電極52A、52B、及び52Cを含むものと想定する。実施形態によっては、電極52A、52B、及び/又は52Cを、心臓に高周波アブレーションパワーを加えるためにも使用され得る。
【0030】
電極50などの検出要素からの測定結果が有用であるためには、典型的にはこれらの要素が位置する遠位端の位置及び向きを知る必要がある。位置及び向きを提供するために、遠位端は、相互に垂直な軸を有するように配置された3つのほぼ同様のコイル60、すなわち60A、60B、及び60Cを含む。明確にするために図ではコイルが別個の中心を有するものとして示されているが、これらのコイルは、スペースを節約するために共通の中心を有するように構成されてもよい。これらのコイルが、(上述したように)トランスミッタ24からの磁界に応じて、プロセッサ26によって受信される信号を生成する。しかしながら、各信号をそれぞれのコイル60ごとに対応する導電体対を介してプロセッサに折り返し転送する代わりに、本発明の実施形態では、以下に説明するように、3つのコイルの信号を1対の導電体62、すなわち62A、62Bを介してプロセッサ26に折り返し転送する。導電体62は、典型的には、カテーテル20内に組み込まれるケーブル64内に収納される。
【0031】
導電体対62によって信号を転送するために、コイル60は2つのクロスオーバースイッチ70、すなわちスイッチ70A及び70Bに接続される。本発明の実施形態で用いられるクロスオーバースイッチ70の特性を以下に説明する。遠位端内に配置されたコイル60、スイッチ70、及び導電体62を、本明細書では回路80と称する。
【0032】
図3A及び図3Bはそれぞれ、本発明の一実施形態による、包括的クロスオーバースイッチ70の第1の「直接」構成、及び同スイッチの第2の「交差」構成を示す概略回路図である。スイッチ70は、これら2つの構成の1つをとることができ、その特性を以下に説明する。スイッチ70は、4つの絶縁された端子T1、T2、T3、及びT4を含む。第1の構成では、端子T1及びT2がともに接続され、端子T3及びT4がともに接続される。第2の構成では、端子T1及びT4がともに接続され、端子T3及びT2がともに接続される。
【0033】
スイッチ70は、それぞれ信号SおよびSを生成する2つの信号源、典型的にはアナログ信号源に接続される。一般に、S及びSの式は等式(1):
【数1】
(式中、A、Aは信号の振幅であり、ω、ωは信号の周波数であり、φ、φは信号の位相である)によって与えられる。
【0034】
信号S及びSを生成する信号源は、例として、図3A及び3Bにおいてはコイルとして示されている。この信号源は、実際にコイルであってもよいが、そうである必要はなく、信号S及びSを生成する実体は、等式(1)によって表され得る信号を与えるいずれの構成要素又は構成要素の組み合わせであってもよい。
【0035】
信号Sは信号源の端子S1a及びS1b間に生じ、同様に信号Sは信号源の端子S2a及びS2b間に生じる。図示のように信号源はスイッチ70に接続、すなわち信号源の端子S1bがスイッチの端子T1に接続、信号源の端子S2a及びS2bがそれぞれスイッチの端子T2及びT4に接続され、切り替えられた信号源からの出力が信号源の端子S1a及びスイッチの端子T3から取り出される。
【0036】
スイッチ70の第1、すなわち直接構成では、出力V(端子S1a及びT3間)が2つの信号の和である。すなわち、
【数2】
【0037】
スイッチ70の第2、すなわち交差構成では、出力V(端子S1a及びT3間)が、第1の信号と、極性を逆転させた第2の信号との和であって、2つの信号の差に相当する。すなわち、
【数3】
【0038】
本発明の実施形態では、クロスオーバースイッチ70を当該技術分野において既知である任意の好適なプロセスによって実現し得る。このようなプロセスとしては、このスイッチを微小電気機械システム(MEMS)又は特定用途向け集積回路(ASIC)として製造することが挙げられるが、これに限定されるものではない。各スイッチ70の構成、すなわち、特定のスイッチ70が第1の直接構成にあるか又は第2の交差構成にあるかは、スイッチを2つの構成間で切り替えることができるプロセッサ26の制御下にある。簡単にするために、図には切り替えを可能にするプロセッサからスイッチへの制御リンクは示していない。
【0039】
図4A、4B、及び4Cは、本発明の一実施形態による遠位端22内の回路80のさまざまな構成の概略回路図である。上述したように、クロスオーバースイッチ70A及び70Bがコイル60C、60B、及び60Aに接続されるが、その接続を図4A、4B、及び4Cに示す。スイッチ70Bの、(図3A及び3Bに示した)汎用スイッチ70との等価性を示すように、同様にそれぞれ信号S及びSを生成する信号源として表示されるコイル60A及び60Bに接続されたスイッチ70Aが示されている。図3A及び3Bにおけると同様に、これらの信号源は、端子S1a、S1b、S2a、及びS2bを有している。
【0040】
スイッチ70Bもまた汎用スイッチ70と等価であり、このスイッチ70Bに接続された、コイル60Cに相当し信号Sを生成する信号源を有している。コイル60Cは、それぞれスイッチ70Bの端子T4、T2に接続された信号源の端子S3a、S3bを有する。
【0041】
しかしながら、図4A、4B、及び4Cの回路においては、スイッチ70Aの端子T3がスイッチ70Bの端子T1に接続され、回路からの出力は、それぞれ導電体62A及び62Bに接続される信号源の端子S1aとスイッチ70Bの端子T3との間に取り出される。
【0042】
本発明の一実施形態では、プロセッサ26が回路80を循環的に再構成し、回路の構成を図4Aに示すように、次いで図4Bに示すように、次に図4Cに示すように設定し、また図4Aの構成へと戻す。循環的再構成の周期は、典型的には信号S、S、及びSの特性に依存する。S及びSは等式(1)によって上述した形態をとるものと想定し、信号Sは同様の性質であり、かつ次の形態の等式:
【数4】
(式中、Aは振幅であり、ωは周波数であり、そしてφは信号Sの位相である)を有するものと想定する。
【0043】
例えば、信号の周波数ω、ω、ωが10kHzの程度であれば、プロセッサ26は、異なる構成が約1ミリ秒ごとに生じるように、回路80の異なる構成間の切り替えの周波数を1kHzの程度と設定してよい。異なる構成間のその他の好適な切り替え周波数は、当業者には明らかであり、そのような周波数は本発明の範囲内にあるものと想定される。
【0044】
図4Aは、回路80の第1の構成82を示し、スイッチ70A及び70Bは両方とも直接構成にある。この場合、導電体62からの出力は等式:
【数5】
出示される。
【0045】
図4Bは回路80の第2の構成84を示し、スイッチ70Bは直接構成にあり、スイッチ70Aは交差構成にある。この場合、導電体62からの出力は等式:
【数6】
で示される。
【0046】
図4Cは回路80の第3の構成86を示し、スイッチ70Bは交差構成にあり、スイッチ70Aは直接構成にある。この場合、導電体62からの出力は等式:
【数7】
で示される。
【0047】
回路80の上述した3つの構成間の切り替えを行う間に、プロセッサ26は値V、V、及びVを受信する。等式(5)、(6)、及び(7)を調べることによって、S、S、及びSについて次のような等式:
【数8】
を導き出し得る。
【0048】
プロセッサ26は、信号S、S、及びSの値を測定された値V、V、及びVから導き出すために、等式(8)、(9)、及び(10)、又はこれらの等式の適用に等価な方式を適用し得る。
【0049】
図2、3A、3B、4A、4B及び4Cを参照して上述した例は、1つのクロスオーバースイッチ及びこのスイッチに接続された2つの信号源を有する回路と、2つのスイッチ及びこれらのスイッチに接続された3つの信号源を有する回路とを例示する。しかしながら、これらは特定の例であり、本発明の実施形態としては、n個の信号源とこれらの信号源間に接続された(n−1)個のクロスオーバースイッチとを有する回路が挙げられ、ここにnは1より大きい整数である。
【0050】
図5は、本発明の一実施形態による、クロスオーバースイッチにより接続された一連の多重信号源の概略回路図である。回路100は、信号S、S、S、...、Sをそれぞれ生成する一連のn個の信号源102、すなわち102A、102B、102C、...、102Zを含む、ここにnは2以上の整数である。信号源102はそれぞれの端子対(S1a、S1b)、(S2a、S2b)、...、を有し、これらの端子間に生成される信号S、S、S、...、Sは等式(1)及び(4)と同様の等式によって表され得る。回路100は自らが生成する信号を、例として、本明細書ではプロセッサ26と想定するプロセッサに、導電体対104A、104Bを介して供給する。
【0051】
回路100はまた、一連の(n−1)個のクロスオーバースイッチ70、すなわちスイッチ70A、70B、...、70Yを含む。以下に説明することを除き、スイッチ70A、70B及び信号源102A、102B、102Cは、スイッチ70A、70B及び信号源60A、60B、60C(図4A、4B、4C)について上述したように接続される。回路100において、端子S1aは導電体104Aに接続されるが、スイッチ70Bの端子T3は導電体104Bには接続されない。
【0052】
その代わり、スイッチ70Bの端子T3は、(スイッチ70Aの端子T3がスイッチ70Bの端子T1に接続されるように)後続のスイッチ70の端子T1に接続される。所定のスイッチ70の端子T3を後続のスイッチ70の端子T1に接続するパターンは、一連のスイッチの最後のスイッチ70に達するまで継続する。図においてスイッチ70Yとして示される最後のスイッチの端子T3は、導電体104Bに接続される。したがって、導電体104Aがn個の信号源102の1番目に接続され、導電体104Bが(n−1)番目のスイッチ70に接続される。
【0053】
簡単にするために、回路100は、すべてのスイッチ70が直接構成にあるものとして描かれている。回路を動作させる場合、プロセッサ26は、典型的にはこの構成の回路から開始する。次にプロセッサは、スイッチ70のそれぞれを、いずれの時点をとってもわずか1つのスイッチ70が交差構成にあるように、その直接及び交差構成間で順次切り替える。交差構成にある時、スイッチは、このスイッチに接続された2つの信号の「局所」差を生成する。切り替えは、一連のスイッチの最後のものに到達するまで継続される。最後のスイッチがその交差構成に切り替えられた後で直接構成に戻り、全スイッチ70が再度、図示のような直接構成となる。プロセッサ26は、典型的には信号S、S、S、...、Sが測定される限り、スイッチの順次切り替えパターンの循環を継続する。
【0054】
出力V、V、V、...、Vは導電体104間に生じ、プロセッサ26によって上述した順次切り替えの最中に受信されるが、これらの出力は、信号S、S、S、...、Sのさまざまな線形組み合わせを含む、以下の一群の等式(11)によって与えられる。
【数9】
【0055】
等式(11)を調べれば、各等式内の各信号S、S、S、...、Sの項の係数は+1又は−1であることが明白である。また、各等式内において、いずれかの2つの項間に最大1つの「局所」差があり、残りのすべての項間の関係が和であることも、明らかである。
【0056】
等式(11)は、行列形式:
【数10】
(式中、Vはベクトル
【数11】
)で記述し得る。Sはベクトル
【数12】
そして
Mはn×n行列
【数13】
【0057】
等式(12)から、信号S、S、S、...、Sについては次式:
【数14】
(式中、M−1は行列Mの逆行列である)のように与えられる。
【0058】
プロセッサ26は、等式(13)を適用し、又は等価式の適用を行うことで、信号S、S、S、...、Sについての値を回路出力V、V、V、...、Vから導き出す。
【0059】
上述したもののような回路を用いることにより、プロセッサ26は、多重信号S、S、S、...、Sのサンプリングを、1対の導電体を用いて実質的に同時に行うことができるようになる。したがって、図2に戻ると、コイル60A、60B、及び60Cからの信号を導電体62A及び62Bを介して同時にサンプリングし得る。更に、遠位端内にクロスオーバースイッチ70を追加することにより、他の信号、例えば電極52によって生成されるもの、及び/又は遠位端内に組み込まれ得るセンサ、例えば先述の米国特許第8,357,152号に説明されるような圧力センサによって生成されるものもまた、導電体62A及び62Bを介してサンプリングし得る。
【0060】
上述した実施形態は一例として記載されたものであり、本発明は、本明細書において上に具体的に図示及び説明した内容に限定されないことが明らかとなろう。むしろ、本発明の範囲には、上で説明した様々な特徴の組合わせと部分的組合わせの両方、並びにそれらの変形形態及び修正形態が含まれ、これらは、上述の説明を読めば当業者には想到するものであり、従来技術では開示されていないものである。
【0061】
〔実施の態様〕
(1) 装置であって、
第1の信号を生成する第1の信号源及び第2の信号を生成する第2の信号源と、
直接スイッチ構成において前記第1及び第2の信号の和を生成し、かつ交差スイッチ構成において前記第1及び第2の信号間の差を生成するように、前記2つの信号源間に接続されるクロスオーバースイッチと、
前記和及び前記差を受信し、かつ該和及び差から前記第1の信号及び前記第2の信号を復元するように構成されたプロセッサと、を含む、装置。
(2) それぞれ前記第1の信号源と前記クロスオーバースイッチとに接続され、該第1の信号源及びクロスオーバースイッチから前記和及び前記差を前記プロセッサに伝達するように構成された1対の導電体を含む、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記第1及び第2の信号がアナログ信号を含む、実施態様1に記載の装置。
(4) ヒト患者への挿入のために構成された、カテーテルの遠位端を含み、該遠位端に前記第1の信号源、前記第2の信号源、及び前記クロスオーバースイッチが組み込まれる、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記第1及び第2の信号源がそれぞれ、前記遠位端の外側に生成される磁場に応じてそれぞれ前記第1の信号及び前記第2の信号を生成するように構成された第1及び第2のコイルを含み、前記プロセッサが、前記第1の信号及び前記第2の信号に反応して前記遠位端の位置及び向きの表示を決定するように構成された、実施態様4に記載の装置。
【0062】
(6) 前記プロセッサが、前記クロスオーバースイッチを、前記直接スイッチ構成と前記交差スイッチ構成との間で切り替えるように構成された、実施態様1に記載の装置。
(7) 装置であって、
それぞれn個の信号を生成する一連のn個の信号源であって、nは1より大きい整数である、一連のn個の信号源と、
(n−1)個のクロスオーバースイッチであって、各クロスオーバースイッチがp番目の信号源と(p+1)番目の信号源との間に接続され、pは整数であり、1≦p<nであり、前記n個の信号のn個の異なる線形組み合わせを生成するように構成された、(n−1)個のクロスオーバースイッチと、
前記線形組み合わせを受信し、かつ該線形組み合わせから前記n個の信号を復元するように構成されたプロセッサと、を含む、装置。
(8) 前記プロセッサが、前記n個の信号の前記n個の異なる線形組み合わせをそれぞれ生成するように、前記(n−1)個のクロスオーバースイッチを、前記スイッチのn個の構成にわたって循環させるように構成される、実施態様7に記載の装置。
(9) 前記異なる線形組み合わせ内の前記n個の信号のそれぞれの係数が+1又は−1である、実施態様7に記載の装置。
(10) それぞれ前記n個の信号源の1番目及び(n−1)番目のクロスオーバースイッチに接続され、前記線形組み合わせを前記プロセッサに伝達するように構成された、1対の導電体を含む、実施態様7に記載の装置。
【0063】
(11) 方法であって、
第1の信号源から第1の信号を生成すること及び第2の信号源から第2の信号を生成することと、
直接スイッチ構成において前記第1及び第2の信号の和を生成し、かつ交差スイッチ構成において前記第1及び第2の信号間の差を生成するように、前記2つの信号源間にクロスオーバースイッチを接続することと、
前記和及び前記差を受信することと、
前記和及び前記差から前記第1の信号及び前記第2の信号を復元することと、を含む、方法。
(12) 1対の導電体を前記第1の信号源と前記クロスオーバースイッチとにそれぞれ接続することと、前記1対の導電体を介して前記和及び前記差を伝達することと、を含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記第1及び第2の信号がアナログ信号を含む、実施態様11に記載の方法。
(14) ヒト患者への挿入のために構成されたカテーテルの遠位端を用意することと、該遠位端に、前記第1の信号源、前記第2の信号源、及び前記クロスオーバースイッチを組み込むことと、を含む、実施態様11に記載の方法。
(15) 前記第1及び第2の信号源がそれぞれ、前記遠位端の外側に生成される磁場に応じてそれぞれ前記第1の信号及び前記第2の信号を生成するように構成された第1及び第2のコイルを含み、前記第1の信号及び前記第2の信号に反応して前記遠位端の位置及び向きの表示を決定することを含む、実施態様14に記載の方法。
【0064】
(16) 前記クロスオーバースイッチを、前記直接スイッチ構成と前記交差スイッチ構成との間で切り替えることを含む、実施態様11に記載の方法。
(17) 方法であって、
一連のn個の信号源からn個の信号をそれぞれ生成することであって、nは1より大きい整数である、ことと、
前記n個の信号のn個の異なる線形組み合わせを生成するように構成された、(n−1)個のクロスオーバースイッチのそれぞれを、p番目の信号源と(p+1)番目の信号源との間に接続することであって、pは整数であり、1≦p<nである、ことと、
前記線形組み合わせを受信することと、
前記受信した線形組み合わせから前記n個の信号を復元することと、を含む、方法。
(18) 前記n個の信号の前記n個の異なる線形組み合わせをそれぞれ生成するように、前記(n−1)個のクロスオーバースイッチを、前記スイッチのn個の構成にわたって循環させることを含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記異なる線形組み合わせ内の前記n個の信号のそれぞれの係数が+1又は−1である、実施態様17に記載の方法。
(20) 前記n個の信号源の1番目と(n−1)番目のクロスオーバースイッチとに1対の導電体を接続することと、該1対の導電体を介して前記線形組み合わせを伝達することと、を含む、実施態様17に記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
【外国語明細書】
2015020073000001.pdf