(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-200805(P2015-200805A)
(43)【公開日】2015年11月12日
(54)【発明の名称】光学フィルタ、光量絞り装置、及び、撮像機器
(51)【国際特許分類】
G02B 1/11 20150101AFI20151016BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20151016BHJP
G02B 7/02 20060101ALI20151016BHJP
G03B 9/00 20060101ALI20151016BHJP
G03B 11/00 20060101ALI20151016BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20151016BHJP
【FI】
G02B1/10 A
G02B5/00 A
G02B7/02 D
G03B9/00 A
G03B11/00
B32B3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-79905(P2014-79905)
(22)【出願日】2014年4月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】若林 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】柳 道男
【テーマコード(参考)】
2H042
2H044
2H080
2H083
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2H042AA06
2H042AA08
2H042AA22
2H044AD01
2H080AA10
2H080AA12
2H080AA31
2H083AA05
2H083AA41
2H083AA58
2K009AA01
2K009AA15
2K009BB11
2K009CC03
2K009CC09
2K009CC21
4F100AA17C
4F100AA27B
4F100AK25B
4F100AK42A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10B
4F100CC02B
4F100EC04
4F100GB51
4F100JN06
4F100JN18B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】近年では、デジタルカメラやビデオカメラ等の撮像機器の小型化が進み、光量調整部材として用いられるNDフィルタ表面での反射光が、ゴーストの原因となる場合がある。従来の微細凹凸周期構造における問題点は、理想的な配列に並べることが困難であり、低反射特性を生かしきれていない点である。そこで、透明基板と膜層、もしくは透明基板と空気層の界面における反射防止効果の精度を向上させた光学フィルタを提供することが課題である。
【解決手段】透明基板の表面に可視光波長以下のピッチと高さを有する微細凹凸周期構造を形成し、該微細凹凸周期構造に基材側から表層側に向かって屈折率が連続的に変化する特性を付加したことにある。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の表面に可視光波長以下のピッチと高さを有する微細凹凸周期構造を形成し、該微細凹凸周期構造は透明基板側から表層側に向かって屈折率が連続的に変化する特性を有していることを特徴とする光学フィルタ。
【請求項2】
透明基板の両面に可視光波長以下のピッチと高さを有する微細凹凸周期構造を形成し、少なくとも前記透明基板の片面の前記微細凹凸周期構造上もしくは該裏面に無機硬質膜が成膜されていることを特徴とする光学フィルタ。
【請求項3】
前記透明基板は合成樹脂から成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
前記無機硬質膜は金属又は金属酸化物から成る光吸収層と、誘電体層が積層されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つの請求項に記載の光学フィルタ。
【請求項5】
前記無機硬質膜の可視光透過濃度は一定濃度もしくは連続的に濃度が変化する領域を有することを特徴とする請求項4に記載の光学フィルタ。
【請求項6】
開口を形成するための絞り羽根と、前記開口を通過する光の光量を調節する光学フィルタを有する光量絞り装置において、請求項1〜5の何れか1つの請求項に記載の光学フィルタを備えたことを特徴とする光量絞り装置。
【請求項7】
光学系と、該光学系を通過する光量を制限する請求項6に記載の光量絞り装置と、前記光学系によって形成される像を受像する固体撮像素子とを有することを特徴とする撮像機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止効果に優れた光学機能フィルムに関し、詳しくは屈折率を連続的に変化させた反射防止フィルムを用いた光学フィルタ、光量絞り装置及び撮像機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、デジタルカメラやビデオカメラ等の光学機器には、その光量調節のために絞り装置が組み込まれている。この絞り装置は、CCD等の固体撮像素子に入射する光量を絞り羽根の開閉により調節するものであり、被写界が明るい場合には、より小さく絞り込まれるようになっている。従って、快晴時や高輝度の被写体を撮影する際には光量を減衰させるために絞りは小絞りとなるが、そのままでは光は絞りで回折し、撮影した画像の劣化を引き起こしてしまうことがある。また、CCD等の固体撮像素子が高感度化することにより、更に光量を減衰させる必要があり、この画像劣化の傾向は顕著になっている。
【0003】
そこで、この問題の対策として、絞り羽根に光量調整部材としてフィルム状のND(Neutral Density)フィルタを取り付けて、絞り開口が大きい状態で光量を減衰することが行われている。具体的には、絞り羽根の一部に絞り羽根とは異なる別部材から成るNDフィルタを接着剤で貼り付け、被写体が高輝度の際には、NDフィルタを光軸上に位置させ、通過光量を制限する。このため、絞り開口が小さくなり過ぎるまで絞り込むことを回避し、絞り開口を一定の大きさに維持することができる。更に、光量調節機能として濃度勾配を有するNDフィルタを使用し、このNDフィルタを光軸上に移動させることにより、更なる光量調節を行うこともある。また、絞り羽根にNDフィルタを接着せずに、NDフィルタを独立して光学的作用を持たせた種々の絞り装置も提案されている。
【0004】
上述したような絞り装置におけるNDフィルタは、一般に真空蒸着等により透明基板上に多層膜を形成したものが用いられている。例えば、特許文献1に示すように、基材上に、該基材側から表層側に向かって屈折率が連続的に変化する屈折率傾斜膜からなる反射防止層を設け、該反射防止層の基材面と接触する部分の屈折率が該基材の屈折率よりも高い膜が用いられている。また、特許文献2においては、透明基板上の微細凹凸周期構造上に、反射率を低減させるための反射防止膜であるAl
2O
3膜と、透過率を低減させるための光吸収層であるTixOy膜を交互に積層し、反射防止効果を高めるために最表層に低屈折材料であるSiO
2膜を光学膜厚n×d(n:屈折率、d:物理膜厚)でλ/4(λ=500〜600nm)蒸着したNDフィルタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−012657号公報
【特許文献2】特開2008−076844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、デジタルカメラやビデオカメラ等の撮像機器の小型化が進み、光量調整部材として用いられるNDフィルタ表面での反射光が、ゴーストの原因となる場合がある。通常はPET樹脂等から成る透明基板の片面にND膜を成膜し、他面に反射防止膜としてAR膜を成膜したり、或いは透明基板の両面にND膜を成膜している。
図5はND膜の膜構成図を示しており、透明基板上にAl
2O
3膜と、TixOy膜を交互に積層し、最表層にMgF
2膜を蒸着し、ND膜を成膜している。
図7はNDフィルタの界面における反射の説明図であり、その1例として透明基板の片面にND膜2、他面にAR膜3が成膜されている。反射は屈折率の異なる物質の界面で起こるため、空気とAR膜3の界面a、AR膜3と透明基板1の界面b、透明基板1とND膜2の界面c、ND膜2と空気の界面dの4つの面において光の反射が生ずる。また、ND膜2やAR膜3が多層膜であれば、その中の各層の界面でも反射がある。その中でも、特にAR膜3と透明基板1の界面b、透明基板1とND膜2の界面c、の反射率を低減させるのが最も効果的である。しかし、実際には微細凹凸周期構造を理想的な等ピッチ構成に配列させることは困難であり、実際の製品として理論値の反射率まで反射を低減出来ていない問題がある。
【0007】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、従来方法では反射を低減することの困難な透明基板と膜層、もしくは透明基板と空気層の界面における反射防止効果の精度を向上させた光学フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明に係る光学フィルタの技術的特徴は、透明基板の表面に可視光波長以下のピッチと高さを有する微細凹凸周期構造を形成し、該微細凹凸周期構造に基材側から表層側に向かって屈折率が連続的に変化する特性を付加したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る光学フィルタによれば、光学フィルタの基板上に可視光波長以下のピッチと高さを有する凹凸部から成る微細凹凸周期構造を形成し、基板から膜もしくは空気層へその微細凹凸周期構造内の屈折率を小さくなるように設定することで、透明基板と膜、もしくは透明基板と空気層との界面で発生する反射光を効率的に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例1)
本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は撮影光学系の構成図を示し、レンズ21、光量絞り装置22、レンズ23〜25、ローパスフィルタ26、CCD等から成る固体撮像素子27が順次に配列されている。光量絞り装置22においては、絞り羽根支持板28に一対の絞り羽根29a、29bが可動に取り付けられている。絞り羽根29aには、絞り羽根29a、29bにより形成される略菱形形状の開口部を通過する光量を減光するためのNDフィルタ30が接着されている。
【0012】
図3は本実施例で使用する蛾目(Moth eye)構造から成る微細凹凸周期構造の模式図を示している。
図1のNDフィルタ30の表面には、
図3に示すように厚さ約100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)から成る透明基板31上に円錐形状の突起部32が等間隔で無数に配置された微細凹凸周期構造33が設けられている。
【0013】
本実施例における透明基板31として、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂フィルムを使用している。しかしPET以外にも、透明性及び機械的強度を有するフィルム状の合成樹脂基板を使用することも可能である。例を挙げれば、PEN(ポリエチレンナフタレート)、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド等である。また、透明基板31の厚さとしては、NDフィルタ30としての剛性を保持しながら、可能な限り薄いことが好ましい。具体的には、その厚さとして300μm以下とすることが好ましく、より好ましくは50〜100μmとすることが好ましい。
【0014】
各突起部32の高さ方向に対し、突起部32の最頂部から最底部に向かうにつれて突起部32の体積は徐々に増加し、それに対応した有効屈折率も突起部32の最頂部から最底部に向かい連続的に分布する。そのため、空気層から透明基板31に向かって滑らかな有効屈折率分布を有し、この微細凹凸周期構造33に光が入射した場合には、急激な屈折率差がないため、光は殆ど反射されずに透明基板31内に到達する。
【0015】
なお、良好な反射防止効果を得るために、突起部32は
図3に示すように円錐形状にすることが好ましいが、円錐形状の代りに、四角錐形状の突起部、或いは他の多角錐形状、更には逆円錐形状の凹部とした微細凹凸周期構造33を用いてもよい。
【0016】
また、微細凹凸周期構造33の凹凸パターンのピッチPは可視光領域の波長(λ=400〜700nm)よりも小さいことが好ましく、本実施例では300nmとしている。ピッチPが大きくなり、可視光領域の波長、例えば550nmとなると、光の回折現象が発生し画像劣化の原因となる。ピッチPを小さくなるほど反射防止効果が得られる波長も低波長側に拡大されてくるが、ピッチPを小さくするほど微細凹凸周期構造33の形成が困難になるため、ピッチPは100〜300nmが好ましい。
【0017】
また、微細凹凸周期構造33の凸部或いは凹部の高さDと、微細凹凸周期構造33のピッチPとの比(アスペクト比)D/Pが大きい場合に反射防止効果が大きくなり、D/Pが0.2以上であることが好ましく、より好ましくは1以上である。しかし、この高さDも可視光領域の波長よりも小さくすることが好ましい。
【0018】
微細凹凸周期構造33を構成する突起部32を形成するには、例えば、形成すべき微細凹凸周期構造と逆の形状を有する型を用いて、熱や圧力を加えて基板の表面に微細凹凸周期構造を転写する。或いは、半導体製造技術を用いて基板31の表面に直接、微細凹凸周期構造を形成することができる。また、基板の表面に光硬化樹脂で膜を形成し、形成すべき微細凹凸周期構造と逆の形状を有する型を密着させて、光硬化樹脂を固化させる方法がある。
【0019】
本実施例においては
図4に示すように、アルミ金型4にアクリルなどのモノマーである光硬化樹脂5を充填し、その上から透明基板1を置いた後に、光照射して離型する方法で透明基板1上に微細凹凸周期溝を転写する方法について説明する。
【0020】
この方法にて、微細凹凸周期構造内の屈折率を連続的に変化させる構造の製作方法を説明する。
【0021】
屈折率を連続的に変化させる構造を製作する一例として、酸化金属粒子を光硬化樹脂に添加させる方法を用いる。その酸化金属粒子の粒径は、微細凹凸周期構造が数百nmであるため、それ以下が好ましく、より好ましくは数十nm、最も好ましくは数nmがより望ましい。その酸化金属粒子を酸化ジルコニウム(粒径10〜20nm)に選定した場合を例に挙げる。
【0022】
屈折率を変化させる原理としては、光硬化樹脂内に添加する酸化金属粒子の配合率wt%を調整することにより、光硬化樹脂の屈折率n1よりも屈折率が高い特性n0にコントロールが可能となる。
【0023】
上述した方法により、屈折率の変化領域は、光硬化樹脂の選択により自由に設定が可能である。
【0024】
例えば、ウレタンアクリレートに酸化ジルコニウムを0wt%から70wt%に配合した場合、屈折率は1.52(n1) 〜 1.66(n0)領域で特性を変化させることが可能となる。
【0025】
上述した性質を利用し、光硬化樹脂内の酸化金属粒子配合率を変化させることで屈折率を連続的に可変させる。その手段としては、振動や遠心などにより酸化金属粒子を分散させる方法が挙げられる。なお透明基板側の屈折率は、透明基板の屈折率に極力合わせるように光硬化樹脂を選定した方がよい。
【0026】
このようにして形成した
図2のような屈折率が連続的に変化する微細凹凸周期構造の表面形状をAFMで測定したところ、高さ350nm、ピッチ300nmの凹凸パターンが形成された。
【0027】
図6は、
図3において形成した微細凹凸周期構造の面もしくはその裏面に、金属膜、金属酸化物、誘電体膜等の積層膜から成る無機質膜であるND膜を形成するための真空蒸着機チャンバの構成図を示している。チャンバ61内には、蒸着源62、回転可能な蒸着傘63が設けられ、この蒸着傘63には成膜部位に開口部を設けた蒸着パターン形成マスク52と蒸着治具51が配置されている。蒸着治具51は、この蒸着傘63と共にZ軸を中心に回転し成膜が行われる。
【0028】
図5は上述の方法により透明基板もしくは微細凹凸周期構造上に成膜した無機硬質膜であるND膜構成図を示している。透明基板もしくは微細凹凸周期構造上には、第1、3、5層に反射率を低減させるための反射防止膜であるAl
2O
3膜72と、第2、4、6層に透過率を低減させるための光吸収層であるTixOy膜73とを交互に積層している。更に、反射防止効果を高めるために最表層の第11層に低屈折材料であるMgF
2膜を光学膜厚n×d(n:屈折率、d:物理膜厚)でλ/4(λ=500〜600nm)蒸着し、11構成のND膜とされている。
【0029】
反射防止膜としては透明誘電体が使用することができ、Al
2O
3膜72の他にSiO
2、SiO、MgF
2、ZrO
2、TiO
2等が使用することができる。また、光吸収層としては可視領域の波長を吸収する特性を有する材料を使用することができ、TiOx膜73の他にTi、Ni、Cr、NiCr、NiFe、Nb等の金属、合金、酸化物が使用することができる。
【0030】
そして、蒸着時に反射率をモニタリングすることにより、Al
2O
3膜の膜厚を制御することにより反射率を小さくすることが可能である。光透過率はTixOy膜の総膜厚によって変化し、このTixOy膜の総膜厚が厚くなるほど光透過率は低下する。また、λ=400〜700nmの波長範囲内での光透過率の平坦性は、上述のTixOy膜組成のyによって変化し、適切に選択することにより光透過率分布は平坦となる。なお、積層する層数や使用材料は、目的の特性により変わってくる。
【0031】
このようなND膜は真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等の成膜法により成膜することができるが、本実施例においては上述のように真空蒸着法により成膜した。そして、最表層のMgF
2膜を成膜した後に、透明基板を真空蒸着機から取り出し、必要に応じ、ND膜が成膜された透明基板を裏面として、再び蒸着治具51にセットし、真空蒸着機において蒸着する。
【0032】
そして成膜が完了した後に、透明基板を真空蒸着機から取り出し、透明基板上に形成された複数のNDフィルタを個々の形状にプレス抜きを行う。
【0033】
このようにして製作したNDフィルタについて、
図8のような複数の構成サンプルを製作し、光量絞り装置の絞り羽根に取り付け撮像画像を評価した。まず、あたり実験として表1に示すように、透明基板上の片面へ微細凹凸周期構造を形成したサンプルを製作して反射率の確認を行った。透明基板の最大反射率は9%であるのに対し、微細凹凸周期構造を片面に形成すると、最大反射率は5%に低減した。改善策として、本実施例のように屈折率を連続的に変化させた微細凹凸周期構造を片面に形成すると、最大反射率は4%以下に低減し効果がみられた。
【0034】
微細凹凸周期構造がある場合の本発明の実施例における最大反射率(λ=400〜700nm)と従来との比較結果を表1に示す。
【表1】
【0035】
(実施例2)
実施例2においては、
図8(a)に示す透明基板の片面に微細凹凸周期構造を設け、透明基板の両側にND膜を成膜したNDフィルタを製作する。透明基板1には実施例1と同様に、厚さ100μmのPET樹脂フィルムを用い、
図3に示すような微細凹凸周期構造を用いる。実施例1と同様、アルミ金型4にアクリルなどのモノマーである光硬化樹脂5を充填し、その上から透明基板1を置き光照射して離型する方法で透明基板1上に微細凹凸周期溝を転写する方法で透明基板1の片面に転写する。このようにして、微細凹凸周期構造が転写された透明基板1の表面形状をAFMで測定したところ、高さ350nm、ピッチ300nmの凹凸が形成されたことが確認できた。
【0036】
上述の方法により、片面に微細凹凸周期構造を形成した透明基板1を用いて、微細凹凸周期構造上に濃度0.5のND膜2を両面にそれぞれ成膜することにより、濃度1.0(透過率10%)のNDフィルタを形成した。なお、本実施例2におけるND膜2の成膜方法は実施例1と同じである。
【0037】
このようにして作製したNDフィルタを光量絞り装置の絞り羽根に取り付け撮像画像を評価した。表2に示すように、透明基板1に微細凹凸周期構造を形成したNDフィルタについては、微細凹凸周期構造面での反射率が低減され、ゴーストは見られなかった。さらには、本実施例の屈折率を連続的に変化させた微細凹凸周期構造を採用した場合、反射率は0.50%以下となり大幅な反射率改善が見られた。
【0038】
よって、透明基板の両面に本実施例の構成をした微細凹凸周期構造を形成することにより、更なる特性の改善が見込める。またND濃度は、単濃度以外にも連続的に濃度変化する構成にも有効である。
【0039】
微細凹凸周期構造がある場合の本発明の実施例におけるゴーストと最大反射率(λ=400〜700nm)と従来との比較結果を表2に示す。最大反射率の2つの値は、
図8に示す方向に進む光の最大反射率である。
【表2】
【0040】
実施例3においては、
図8(b)に示す透明基板の片面に微細凹凸周期構造を設け、AR膜の代替とする。その透明基板の反対面にはND膜を成膜したNDフィルタを製作する。透明基板1には実施例1と同様に、厚さ100μmのPET樹脂フィルムを用い、
図3に示すような微細凹凸周期構造を用いる。実施例1と同様、アルミ金型4にアクリルなどのモノマーである光硬化樹脂5を充填し、その上から透明基板1を置き光照射して離型する方法で透明基板1上に微細凹凸周期溝を転写する方法で透明基板1の片面に転写する。このようにして、微細凹凸周期構造が転写された透明基板1の表面形状をAFMで測定したところ、高さ350nm、ピッチ300nmの凹凸が形成されたことが確認できた。
【0041】
上述の方法により、片面に微細凹凸周期構造を形成した透明基板1を用いて、微細凹凸周期構造上に濃度0.5のND膜2を片面に成膜することにより、濃度0.5(透過率32%)のNDフィルタを形成した。なお、本実施例2におけるND膜2の成膜方法は実施例1と同じである。
【0042】
このようにして作製したNDフィルタを光量絞り装置の絞り羽根に取り付け撮像画像を評価した。表3に示すように、透明基板1に微細凹凸周期構造を形成したNDフィルタについては、微細凹凸周期構造面での反射率が低減され、ゴーストは見られなかった。さらには、本実施例の屈折率を連続的に変化させた微細凹凸周期構造を採用した場合、ND膜面反射率は0.30%以下、微細凹凸周期構造面反射率は3.00%以下となり大幅な反射率改善が見られた。
【0043】
よって、透明基板の両面に本実施例の構成をした微細凹凸周期構造を形成することにより、更なる特性の改善が見込める。またND濃度は、単濃度以外にも連続的に濃度変化する構成にも有効である。
【0044】
微細凹凸周期構造がある場合の本発明の実施例におけるゴーストと最大反射率(λ=400〜700nm)と従来のAR膜がある場合との比較結果を表3に示す。最大反射率の2つの値は、
図8に示す方向に進む光の最大反射率である。
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0045】
反射光を効率的に低減した光学フィルタ、光学フィルタを備えた光量絞り装置およびこれを搭載した撮像機器を提供できる。
【符号の説明】
【0046】
1:透明基板
2:ND膜
3:AR膜
4:アルミ金型
5:光硬化樹脂
21:レンズ
22:光量絞り装置
23:レンズ
24:レンズ
25:レンズ
26:ローパスフィルタ
27:固体撮像素子
28:絞り羽根支持板
29:絞り羽根
30:NDフィルタ
31:透明基板
32:突起部
33:微細凹凸周期構造
51:蒸着治具
61:チャンバ
62:蒸着源
63:蒸着傘