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特開2015-200958疑似乱数列の生成法、疑似乱数生成装置、及び、ゲーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-200958(P2015-200958A)
(43)【公開日】2015年11月12日
(54)【発明の名称】疑似乱数列の生成法、疑似乱数生成装置、及び、ゲーム
(51)【国際特許分類】
   G06F 7/58 20060101AFI20151016BHJP
   A63F 13/80 20140101ALI20151016BHJP
【FI】
   G06F7/58 B
   A63F13/80 A
   A63F13/80 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-77982(P2014-77982)
(22)【出願日】2014年4月4日
【新規性喪失の例外の表示】申請有り
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
(71)【出願人】
【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(74)【代理人】
【識別番号】100158377
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 祥子
(72)【発明者】
【氏名】池田 心
(72)【発明者】
【氏名】テンシリリックン シラ
(72)【発明者】
【氏名】野村 久光
【テーマコード(参考)】
2C001
【Fターム(参考)】
2C001BB10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ユーザの満足度が十分に得られる疑似乱数列の生成法、生成装置及びこれを用いたゲームを提供する。
【解決手段】アンケート調査によって数学的には正しくない乱数にもかかわらずユーザが自然であると認識する傾向を定量化し、ユーザにとって自然な乱数に求められる特徴量を設定し、乱数列における特徴量を、数学的なランダムさでなく、認知バイアスを受けた人間の認識上でランダムな範囲に調節することにより、ユーザを「自然な乱数である」として満足させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疑似乱数列生成方法であって、該疑似乱数が、認知バイアスを受けたユーザの認識と数学的正解との偏りが再現されている疑似乱数である、疑似乱数列生成方法。
【請求項2】
以下の工程を含む、請求項1に記載の疑似乱数生成方法。
工程1:認知バイアスの分類に基づき、乱数及び/又は確率について人間に共通する誤解、偏り、思い込みの傾向を定量化する。
工程2:工程1で定量化された値を用いて、乱数及び/又は確率における特定の特徴量について、ユーザからみた自然さにとって望ましい範囲を、数学的な理論値とは関係なく設定する。
工程3:アルゴリズムにより、乱数列の特定の特徴量を工程2で決定された望ましい範囲に最適化し、新たな疑似乱数列を生成する。
【請求項3】
疑似乱数生成装置であって、該疑似乱数が、認知バイアスを受けたユーザの認識と数学的正解との偏りが再現されている疑似乱数である、疑似乱数生成装置。
【請求項4】
上記偏りが、乱数及び/又は確率における特定の特徴量についてユーザからみた自然さにとって望ましい範囲に設定されたものであり、上記再現が、アルゴリズムによって乱数列の上記特定の特徴量を望ましい範囲に最適化されたものである、請求項3に記載の疑似乱数生成装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の疑似乱数の生成方法を用いるゲーム。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の疑似乱数生成装置を備えるゲーム。
【請求項7】
すごろく、麻雀、くじびき、トランプのいずれかである、請求項5又は6に記載のゲーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 疑似乱数列の生成法、疑似乱数生成装置、及び、これらを用いたゲームに関する。
【背景技術】
【0002】
疑似乱数生成とは、コンピュータの中で特定の確率分布に従って数を取り出すことを指し、この操作とこの操作に関わる装置は、シミュレーション・確率的最適化法・モンテカルロ法・強化学習法など情報学の多くの用途・分野で必須の部品となっている。疑似乱数生成の方法として古典的なものに線形合同法などの乱数生成法があるが、多くの欠点が指摘されている。近年は、Mersenne twister(MT)などの多くのすぐれた疑似乱数生成法が開発されており、上記のような用途では、「偏りのなさ」、「周期の長さ」、「生成の速度」などの要求を十分満たすものが簡単に利用できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−59904号公報
【特許文献2】特開2005−3746号公報 上記特許文献1,2は、ゲーム会社によりユーザに不満を抱かせない乱数生成法を提案している。例えば、商品当選の実際の割合が定められた確率に比べて一定範囲内に収まるような修正が動的に行われ、偏りが相殺される。
【0004】
コンピュータゲームでも、麻雀牌を混ぜる・トランプを配る・サイコロを振るなどの作業のすべてをコンピュータが肩代わりするため、多くのゲームで疑似乱数が用いられる。これらをコンピュータプレイヤ側に有利になるように操作する、すなわちいわゆる「ズル」をすることは、簡単であり、実際に多くのソフトで行われてきた。パーティ要素の強いすごろくゲームや個性の強いキャラクタの出る麻雀ゲームでは、こういった「ズル」は楽しさの演出のためにほぼ明示的に行われているため、プレイヤがこれを許容できる場合が多い。
【0005】
一方、暗黙的に行われる乱数操作、特に開発者が強い思考ルーチンを作れないために行われる乱数操作は、プレイヤに好まれない。このようなゲームの評価は下がる傾向にある。ところが、思考ルーチンがハンデを必要としないくらいに強い場合でも、本当の乱数に近い、すなわち「数学的な意味で優れた」乱数、例えばMT法による乱数を使うことが、プレイヤの満足にとって最善とは言えない場合がある。
【0006】
従来技術には共通した2つの欠点がある。一つ目は、調整があくまで理論的な統計量に沿うように行われる点である。例えば、サイコロを61回振れば、連続した目が出る回数は平均10回である。しかし、多くのユーザは数学的な素養が不十分な場合には、理論的な統計量が最も満足度を高めるとは限らない。多くの人にとって、サイコロを61回振った場合、連続した目が出る回数としては7回程度が最も自然に受け止められる。7回程度が最も自然と「勘違い」されているのである。理論的な統計量に忠実な従来技術は、このような人間の「正しい勘違い」、すなわちユーザの人間らしい感覚に対応していない。二つ目は、偏り(理論値からのずれ)が生じたことを検知した後に調整が行われる点である。これは言いかえれば、偶然による偏りの後に急激な人工的な隔たりが導入されることを意味する。したがって、かえってユーザの不信感のもとになりうる点、複数の統計量を用いる場合に修正が困難になり得る点が懸念される。
【0007】
例えば、カード対戦要素とすごろく要素を持つ有名なテレビゲームのシリーズ「カルドセプト」(商品名)については、しばしばユーザ側から「サイコロの目がユーザに不利なように操作されている」という意見・報告が出されている。面白いことに、これに対してメーカー側は10年以上前から公式見解として「サイコロの目は操作していない、普通の疑似乱数を使っている。」と述べているのだが、ユーザは納得していない。このようなユーザの意見を、一部の人がしつこく批判しているだけ、メーカー側がうその説明をしている、予期していないバグによるものと解釈できないことはない。しかし、このような意見の有力な背景は、「数学が得意でない人間にとっては、数学的には正しい疑似乱数が乱数に見えない」という現象にあると本発明者は推測している。
【0008】
対象が自然であるかどうかの判断は、評価者の対象への理解に大きく依存する。例えばアマチュア用に手加減をする将棋プログラムの研究では、2つの棋譜に対する人間らしさの評価がプロ棋士とアマチュア棋士とで逆転することが確認されている。数学者にとって自然な乱数よりも、一般的なプレイヤにとって自然に見える乱数の方がゲームソフトでは必要となる。
【0009】
実際、人間はしばしば確率的な事象に対して誤った判断を下す。この、「ある対象を評価する際に、自身の利害や希望に沿った方向に歪められたり、対象の目立ちやすい特徴に引きずられたりして、他の特徴についての評価がゆがめられる現象」は、認知バイアスと呼ばれる。人間の情報処理能力には限界があるため、ある程度の誤差を容認し、用いる情報量を節約して素早い知覚・判断を行っている。これをヒューリスティクス(無意識下の簡便な思考法)という。人間の判断に至る時間は短くなるが、必ずしも正しいとは言えない判断結果を下すことになる。ここに、認知バイアスが生じる。ユーザに自然と思ってもらうためには、ユーザが認知バイアスによってどのような勘違いをしやすいかということを考慮にいれる必要がある。
【0010】
認知バイアスの形態は非常に多種多様である。「数学が得意でない人間にとっては、数学的には正しい疑似乱数が乱数に見えない」という現象、「数学者にとって自然な乱数よりも、一般的なプレイヤにとって自然に見える乱数」に関わりのある認知バイアスとして、以下のものが挙げられる。
【0011】
[確証バイアス]人間は現在持っている理念、理論、仮説に一致する情報を集め、潜在的に反証となる証拠の収集を避ける基本傾向を持つ。数多くの実験によって、被験者は関連のある証拠を積極的に探すように求められた時、自分の仮説を論駁するのではなく確証するのに都合の良い方策を採用するため、一般的規則を発見するのに失敗する。例えば、ゲームプレイ中の人間は、ひとたびサイコロが操作されていると仮説を立ててしまうと、それ以降のプレイでその仮説に都合の良い部分ばかりに目がいき、ますます確信を深めてしまう可能性がある。
【0012】
[バンドワゴン効果]人間は、他人の行動につられたり、他人の意見に影響されたりする傾向がある。これを心理学では「同調」と呼ぶ。特に日本人は同調意識が強く、「これが流行っている」とテレビや雑誌に紹介されただけで商品を買ってしまったりする。自分の好みで選ぶのではなく、周囲と同じ趣向であることに安心感を得るのである。場合によってはゲームのレビューなどでも同様の現象が生じている可能性がある。
【0013】
[小数の法則]統計学の大数の法則(law of lagre numbers)をもじってつけられたものである。「大数の法則」は、母集団から抽出される標本の大きさが大きくなるにつれ、その標本平均は母集団平均に近づくという統計法則である。これに対し、「小数の法則」は、母集団からランダムに抽出したどんなに少ない標本でも母集団の性質を表している“はずだ”という人々の思い込みのことである。例えば、長い乱数列中の数の出現頻度は全体では一様であるが、どの部分を抽出しても一様であるべきだ、と思ってしまいがちである。実際には、狭い領域ではある程度の偏りが見られる。
【0014】
[ギャンブラーの誤謬]例えば、表と裏の出る確率が50%ずつのコインを振って、4回続けて表が出ると、「次はそろそろ裏が出るだろう」と考えることは、一般人にはありがちである。4回も表の続く確率は1/2x1/2x1/2x1/2=1/16であり、次も表が出る確率は1/32で100回のうち3回程度の確率にすぎない。しかし、何回続けて表が出ようとも、次に表の出る確率は50%である。表が続くと次に表の出る確率を本来の50%から過小評価してしまう。このような考えを「ギャンブラーの誤謬」と呼ぶ。
【0015】
[クラスターの錯覚]クラスターの錯覚とは、ランダムに起こるべきある出来事がまとまって起こったとき、それをランダムでないと錯覚してしまうことを指す。例えば、コイン投げで表が続けて4回出たら、多くの人は驚くであろう。しかし、20回連続して投げた場合、表が続けて4回出る確率は50%であり、決して珍しいことではない。
【0016】
[制御幻想]実際には制御不可能であるものを、自分が制御できると思い込んでしまい、成功確率を高く錯覚して行動してしまうことを「制御幻想」と呼ぶ。テレビゲーム上のサイコロと、実際にサイコロを振るすごろくでは、異なる実験結果が出る可能性は高い。
【0017】
[ランダム系列の誤認知]人間が考えるランダムさは理論的なランダムさより入れ替わりが激しくなっている可能性がある。ポール・バカンの実験(1960年)では、70名の大学生に「偏りのないコインを偏りのない方法で300回投げた時に表と裏がどのような配列で出るかを考えてほしい」と指示した。数学理論的には、この系列には表と裏のあいだで平均して150回の交代が起こるはずである。ところが、学生の90%が交代が頻繁すぎる配列を作った(平均175回)。つまり、人間は、二つの結果の間の交代が、ランダムな配列で実際に起こるよりも頻繁に起こるものと期待する。
【0018】
[効用・プロスペクト理論]確率を伴う事象における意思決定には、意思決定者の嗜好や認知バイアスが強く反映する。期待効用仮説は主に、将来の利得に対する喜びを利得の量に対して線形的な効用関数で表し、その利得が得られる確率で期待値を取ることで、人の行動をモデル化したものである。プロスペクト理論はさらに、期待効用仮説では説明できない人間の行動をうまく説明するために、人が確率に対しても非線形な偏りを持った認知をすることを見出し、モデル化するものである。例えば、多くの人にとって1%で起きる事象と0.1%で起きる事象はどちらも「非常にまれ」であって、10倍も違うように実感することは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従来の遊戯機やゲームでは、このような「認知バイアス」は考慮されていなかった。このため従来の遊戯機やゲームでは乱数が高度に調節されているにもかかわらず、ユーザの満足度が十分に得られていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、遊戯機やゲームにおけるユーザの満足を向上させるために、ユーザにとって最も自然と判断される統計量が理論値からはずれていることを利用する。すなわち、本発明では、認知バイアスと呼ばれる、多くの人に共通する“統計量に対する誤った期待”を調査・定量化し、新たに疑似乱数を生成することで、従来技術では不可能であった高いユーザ満足度を可能とする。
【0021】
すなわち本発明は、以下のものである。
(1)疑似乱数列生成方法であって、該疑似乱数が、認知バイアスを受けたユーザの認識と数学的正解との偏りが再現されている疑似乱数である、疑似乱数列生成方法。
(2)以下の工程を含む、上記(1)の疑似乱数生成方法。
工程1:認知バイアスの分類に基づき、乱数及び/又は確率について人間に共通する誤解、偏り、思い込みの傾向を定量化する。
工程2:工程1で定量化された値を用いて、乱数及び/又は確率における特定の特徴量について、ユーザからみた自然さにとって望ましい範囲を、数学的な理論値とは関係なく設定する。
工程3:アルゴリズムにより、乱数列の特定の特徴量を工程2で決定された望ましい範囲に最適化し、新たな疑似乱数列を生成する。
(3)疑似乱数生成装置であって、該疑似乱数が、認知バイアスを受けたユーザの認識と数学的正解との偏りが再現されている疑似乱数である、疑似乱数生成装置。
(4)上記偏りが、乱数及び/又は確率における特定の特徴量についてユーザからみた自然さにとって望ましい範囲として設定されたものであり、上記再現が、アルゴリズムによって乱数列の上記特定の特徴量を望ましい範囲に最適化されたものである、上記(3)の疑似乱数生成装置。
(5)上記(1)又は(2)に記載の疑似乱数の生成方法を用いるゲーム。
(6)上記(3)又は(4)に記載の疑似乱数生成装置を備えるゲーム。
(7)すごろく、麻雀、くじびき、トランプのいずれかである、上記(5)又は(6)のゲーム。
【0022】
本発明は、標準的な、すなわち「数学的に正しい乱数列」を、ユーザにとって自然な、すなわち「ユーザにとって正しい乱数列」に最適化する方法として画期的である。本方法では、アンケート調査によって数学的には正しくない乱数にもかかわらずユーザが自然と誤解する傾向を定量化し(工程1)、ユーザにとって自然な乱数に求められる特徴量を設定し(工程2)、アルゴリズムにより標準的乱数にそのような特徴量を導入して新たな疑似乱数列を生成する(工程3)。上記特徴量とは、ある回数サイコロを振った時に同じ目が連続した回数のような、ユーザの感じる乱数の自然さを左右すると思われる、サイコロの目の出方に対応する量である。本方法では、乱数列における上記特徴量を、数学的なランダムさでなく、認知バイアスを受けた人間の認識上でランダムな範囲に調節することにより、ユーザが「自然な乱数である」と誤解して満足できる、新たな疑似乱数列を作成する。本発明の疑似乱数列の生成方法を実行する疑似乱数生成プログラムを実装した装置は、ユーザが「自然な乱数である」と誤解して満足できるような新たな疑似乱数列を製造する装置である。このような本発明の疑似乱数列の生成方法、あるいは、本発明の疑似乱数列生成装置を、すごろく、麻雀、くじびき、トランプなどのゲームに導入することができる。
【0023】
本発明では、まず、ゲームユーザまたはゲームユーザとなる可能性のある人の認知バイアスを定量的に検出する。定量化の手法として、日常的にゲームプレイを楽しむ人や、これまでにゲームプレイの経験がある人を被験者として認知バイアスを受けやすいと思われる事象認識についてアンケートを行い、認知バイアスを定量的に検出する方法が挙げられる。その他、定量化の手法としては、ゲームユーザまたはゲームユーザとなる可能性のある人の様々な行為、反応を分析する手法であれば、いかなるものでもよい。次に、被験者にとって自然に見える乱数サンプルを収集し、その一方で、乱数系列に存在する特徴量を抽出した。特徴量は、例えば、「同じ目が2連続する部分の数」などである。次に、収集した乱数サンプルを、上記特徴量を用いて分析し、乱数サンプルにおける特徴量と、理論上の特徴量との隔たりを定量化した。そして、本発明では、被験者が示した乱数系列と同じような特徴を持つ乱数系列、すなわち、被験者が示した乱数系列と同程度で理論値と隔たりを持つ乱数系列が、自然に見えるはずである、という仮説を置いた。そして、疑似乱数生成装置においてアルゴリズムでそのような乱数系列を作成し、人間にとってより自然に近い状態に最適化された疑似乱数を製造した。上記疑似乱数生成装置は、アルゴリズムを実装したコンピュータである。乱数系列はオフラインで生成され、動的で急激な修正は行わない。
【0024】
上記アルゴリズムについて以下に説明する。以下のように数値を設定する。
・s:疑似乱数の系列。
・Fi(s):系列sの、特徴量Fiの値。
・[αi,βi]:特徴量Fiの望ましい範囲。理論値とは独立に定められている。
・Erri(x):各特徴に関するxの、望ましい範囲からの逸脱量。x≦αiならαi-x、βi≦xならx−βi、αi≦x≦βiなら0とする。
・γi:逸脱に対する重み。
このとき、系列sに対する最小化したい評価値を以下のErr(s)と定義する。
【0025】
【数1】
【0026】
ある標準的な乱数列を用意し、アルゴリズム上、その全ての特徴量Fiが範囲内に収まるように、すなわちErr(s)=0に限りなく近づくように、乱数列を最適化する。ユーザにとってより自然に見える疑似乱数を、最適化された疑似乱数列として生成する。
Fiは、連続して同じ数が2回続く場合の数、といった、ユーザの抱く自然さを左右する乱数列の特徴量であり、iの範囲は適宜選択できる。ユーザの評価を有意に向上させるためには、iは5〜20の範囲が望ましい。
【0027】
被験者に、本発明で得られた疑似乱数と理論的に正しい標準の乱数を見せ、自然さの評価を行ったところ、被験者は本発明で得られた疑似乱数を「通常の疑似乱数に近いもの」と感じていた。本発明で得られた最適化された疑似乱数は、被験者の認知バイアスによって、自然である、すなわち正しいと誤解されていた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施例1で用いた9マス目に落とし穴のあるすごろくの模式図。
図2】実施例2で用いた6マス目に落とし穴のあるすごろく模式図。
図3】実施例5における統計量F6の最適化の理解のためのイメージ図。
図4】実施例7で用いたプログラムのキャプチャ画面。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の疑似乱数生成方法の基礎となる、認知バイアスの検出のためのアンケートの例を示す。アンケート調査は2回に分けて行った。
(実施例1)1回目のアンケート調査である。被験者は、ゲームが好きな情報系大学院生12人である。図1のような単純すごろくを被験者に見せ、9マス目にある落とし穴にはまる確率を予測してもらった。サイコロが公正なものである場合、正しい確率は約28%である。しかし、12人中10人は20%以下の確率を答えた。落ちる確率が2割以下だと予想している落とし穴に3割近い確率で落ちたとしたら、「サイコロが操作されている」と思っても仕方ないであろう。この結果は確証バイアスを裏付けている。
(実施例2)2回目のアンケート調査である。被験者は、実施例1と同じくゲームが好きな情報系大学院生の16人である。このうち10人が1回目のアンケート調査の被験者と共通している。いくつかの比較的想像しやすい日常的な事象として、表1に示す、Q1〜Q9を示し、その起こりやすさを(a)2%以下、(b)2〜8%、(c)8〜25%、(d)25〜75%、(e)75〜92%、(f)92〜98%、(g)98%以上、 の7段階で予想してもらった。1問あたり20秒ほどしか時間を与えず、直感で答えることを促した。各設問の数学的正解と、被験者の回答を、表2に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
平均的に数学的正解に近かったのは、Q1,Q2,Q3,Q9で、半数以上の被験者が正解しており、残りの被験者の間違った回答は数学的正解と一段階しか差が無かった。特にQ9の正解率が高かったことは、1回目のアンケート結果と対照的であった。6マス目に落ちる確率は約36%で、9マス目に落ちる確率(約28%)より高い。しかし、2回目のアンケートでは、被験者16人中12人が6マス目に落ちる確率を25%以上と答えた。近い罠に落ちる可能性を比較的高く見積もる、すなわち遠い罠の危険を過小評価するような認知バイアスが存在すると推測される。
【0033】
数学的には、Q4は約90%、Q5は約99%である。しかし、Q4では被験者の半数が25%以下(起こりやすさがa〜c)と答えている。Q5では、92%以上(起こりやすさがf、あるいはg)と答えたのは、被験者16人の中で3人にすぎない。誕生日のパラドックスとして知られる有名なこの問題に正しく答えられないということは、被験者のような確率を利用した遊びに慣れた層でも必ずしも確率に関して十分な素養を持たないことを示唆している。
【0034】
Q6,Q8は過大評価が多かった。Q6では9人が起こりやすさをc又はdと答え、Q8では12人が起こりやすさをc又はdと答えた。Q7は過小評価が多かった。Q6の結果から、被験者が「10回中6回起こる」が「中間的な」事象と感じる可能性を指摘できる。Q7の結果から、被験者が「10回中1回起こる」が「目立つ」あるいは「極端な」事象と感じる可能性を指摘できる。このような「目立つ」あるいは「極端な」事象はユーザの抱く「不自然さ」に通じる認識である。Q8の結果は、「1%」という小さい確率を心理学的確率としては比較的高く見積もってしまうプロスペクト理論で説明できるかもしれない。
【0035】
(実施例3)被験者にとって自然に見える乱数サンプルの収集例である。すごろくとは関係なく、単に系列として自然に見える乱数列を作成した。2回目アンケートに回答した被験者16人に、「サイコロを振るつもりで」と告げて、1〜6の数字からなる長さ100の乱数列を書いてもらった。実際にはサイコロ等の使用は認めていない。
【0036】
被験者のうち2人の被験者が書いた乱数列の先頭から40字分を表3に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
被験者1の乱数列には、同じ数字が2連続、3連続する部分が多く含まれている。これに対して被験者2の乱数列では2連続の部分すら含まれておらず、数学的には明らかに乱数とは言えない特徴を持ってしまっている。これはこの被験者の誤りあるいは偏りと言え、この被験者に自然に見える乱数でサイコロの目を作るなら、目の連続は好ましくないと予想される。
【0039】
(実施例4)その一方で、疑似乱数系列から、ユーザからみた乱数の自然さの調節因子となる特徴として、「同じ目が2連続する部分の数」といった15の特徴量:F1〜F15を抽出した。その上で理論値と被験者の出した実際の値とを比較し、偏りを検出し、その偏りに沿うような疑似乱数系列を生成するよう試みた。用いた特徴量と、系列の長さが100の場合の、それぞれの特徴量のおよその理論値を表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
これら特徴量を用いて、実施例3で得られた被験者16人分の自然と思える乱数サンプルを分析した。その結果を表5にまとめる。
【0042】
【表5】
【0043】
乱数サンプルは、被験者にとって自然に見えるさいころの目の出方ととらえてよい。すると、F1、F2〜F5は出た目のバラツキを示す。実際には特定の目があまり出ない、あるいは特定の目がよく出る、といったことは稀ではないが、被験者は比較的均等に目を配置している。
【0044】
F6の結果から、乱数サンプルでは偶数から奇数への変化、奇数から偶数への変化が理論値よりも多く含むことが分かる。被験者にとって、これらの変更が多い方が、「変化がある=乱数である」という印象を抱き易いのであろう。この結果は、先述のポール・バカンの実験と同様である。
【0045】
F7、F8、F9は、連続した目の出方である。全てにおいて、乱数サンプルの値は理論値よりも小さい。上位8人の平均ですら、理論値よりも小さい。この結果は先述のクラスターの錯覚を裏付けている。実は、乱数サンプル収集後に、さらに被験者に「目が3連続することは何回くらいあるか」と質問したところ、半数以上が2あるいは3と、正しい答えを出している。しかし、頭ではそのくらいあると思っていても、短時間で乱数を書けと言われると、「乱数=散らばった数」という思い込みから、数の連続を忌避する傾向がある。
【0046】
F10〜F15は、3連続、4連続ほどではないが、ある目がある部分中に頻繁に登場するようなパターンである。F7、F8、F9と同様に、上位平均ですら理論値よりも低い。F7、F8、F9と同様に、被験者にとって、このようなある目の頻繁な登場が「無意識あるいは意識的に忌避したくなるパターン」であることが分かる。
【0047】
以上のように、被験者によって作成された系列は理論値と比較すると大きく偏った特徴を持つ。このような偏りは、ユーザ(被験者)にとって自然に見えるサイコロの目(乱数列)を生成させる上で重要である。
【0048】
(実施例5)被験者にとって自然に見える乱数列の生成例である。すなわち、実施例4で定量化された偏りと同様の特徴を持つ、ユーザにとって自然に見える疑似乱数を作成した。以下に、この生成例で用いた記号について示す。
・s:疑似乱数の系列。
・Fi(s):系列sの、特徴量Fiの値。
・[αi,βi]:特徴量Fiの望ましい範囲。例えばF6では、[54,60]に定める。
・Erri(x):各特徴に関するxの、望ましい範囲からの逸脱量。x≦αiならαi-x、βi≦xならx−βi、αi≦x≦βiなら0とする。
・γi:逸脱に対する重み。
このとき、系列sに対する最小化したい評価値をErr(s)=Σi(γiErri(Fi(s))と定義する。
・Fi:F1〜F15(各特徴量の定義は表4の通り。)
この例では長さ50の系列を作成して用いた。実施例3と同様の方法で、1回目アンケートに回答した被験者12人に、「サイコロを振るつもりで」と告げて、1〜6の数字からなる長さ50の乱数列を書いてもらった。得られた乱数列サンプルを実施例4と同様に分析した結果、表5と同様の傾向が見られた。この結果を参考に、パラメータαi,βi,γiを表6のように定めた。F6は理論値より多めに、その他は理論値より低めの範囲となっている。
【0049】
【表6】
【0050】
標準の疑似乱数生成器を用いて長さ50の系列を300例用意したところ、その最良評価値は2.7であり、最悪評価値は239.0であり、平均は52.1であった。最良、最悪の系列を表7に示す。
【0051】
【表7】
【0052】
最良のものは、ある意味、「不自然なほど」F7〜F15の値が小さいわけだが、人間は自然に感じる可能性が高いと考えられる。逆に、最悪のものは、同じ目が連続あるいは頻繁に出ているが、これもまぎれもなく標準の疑似乱数生成器から出力されたものである。
【0053】
Err(s)が小さくなるような系列Sを求めるために、局所探索アルゴリズムを用いた。その概略を以下に示す。
1.sを標準の疑似乱数で初期化する。
2.系列の一か所をランダムに変更しS´とする。
3.Err(s´)<Err(s)ならsをs´で置き換える。
4.Err(s)=0になるか1000回に達するまで、2.〜3.を繰り返す。
【0054】
このような設定で標準的なPCを用いて実際に乱数列の最適化を行ったところ、最適化にかかった時間は0.02秒程度であった。すごろくなどのゲーム用途には全く問題のない速度で疑似乱数を生成できることが分かった。
ここで行った最適化では、例えばF6:偶数と奇数が並ぶ部分の数は、望ましい範囲である54〜60の範囲に調整されている。(図3
(実施例6)実施例5で生成した疑似乱数列の自然さを評価した。まず、以下のA,B,Cの乱数系列を用意した。
A(標準乱数):無作為に作成した標準の疑似乱数系列である。すなわち人間の認知バイアスを反映させた最適化を全く行っていない乱数系列である。
B(下位乱数):標準の疑似乱数系列300サンプルをErr()によって評価し、悪い方から20%にあたる60系列を選んだものである。
C(調整乱数):Err(S)=0となる最適化を行った疑似乱数系列である。
【0055】
これらから異なる48ずつを選び、2回目アンケートに回答した被験者16人に3つずつ割り当てた。
【0056】
(評価方法)被験者は,9つのWindowsプログラムを順番に実行する。プログラムが実行されると、1秒間に1文字ずつ、現在のサイコロの目と過去5回分がアラビア数字で表示される。被験者は同じプログラムを2回実行し、同じ系列を2回見る。その後、それぞれの系列を以下の1〜5で評価して回答する。
(評価1)偏りのある乱数に違いない。
(評価2)おそらく偏りのある乱数である。
(評価3)分からない。
(評価4)おそらく通常の疑似乱数である。
(評価5)通常の疑似乱数に違いない。
9つのプログラムにはそれぞれA,B,Cのいずれかの群に属する系列が割り当てられており、全ての被験者が異なる系列を見る。9つのプログラムの実行順は定められており、ランダムに、かつ同じ群に属する系列を連続して見ることがないように並べられている。被験者には群の数や順番は知らされていない。
(評価結果)A,B,Cのそれぞれについて、評価1〜評価5がそれぞれ何回あったかを表8に示す。
【0057】
【表8】
【0058】
B群は、48回中40回で評価1又は評価2、つまり偏りのある乱数であると判断されている。ゲームプレイ中、標準的な乱数が使われていれば、5回に1回はこのような偏りのある乱数系列を経験するわけであり、乱数の自然さへの疑いを生じやすいと言える。
C群では半数以上の回数で、評価4または評価5、つまり通常の疑似乱数であると「誤解させる」ことができていた。Err()の値が大きいものを選んだB群と、Err()の値が0であるC群とでは、被験者の感じる「自然さ」にはっきりした違いが生じている。このことから、上述のErr()の調整がユーザにとっての乱数の自然さを向上していることが分かる。A群の評価は、BとCの中間的なものとなっている。A群の中には先に挙げた、Err()が2.7のもの、Err()が238.0のものをはじめとして、「人間にとって自然にみえやすい」ものから「人間にとって不自然にみえやすい」ものまで様々な列が含まれているから、このような結果になるのは自然であろう。C群ではA群に比べて評価の平均が0.63ポイント高くなって(より通常の乱数ととらえられて)いる。
【0059】
(実施例7)実施例6で作成した疑似乱数系列を用いたゲームの評価を行った。実施例6で作成したB群、C群の疑似乱数系列を用いて、被験者に簡単な一人すごろくをプレイしてもらい、どのような場合に満足・不満足、自然さ・不自然さを抱くのかを調べた。
【0060】
(実験方法)図4にプログラムのキャプチャ画面を示す。被験者がプログラムを起動すると、以下の手順で実験が行われる。
1.スタート地点(左端)にコマが置かれる。
2.サイコロを振るボタンを押す。
3.分かれ道がなければ、自動でサイコロの目だけ進む。
4.分かれ道があれば、上、右、下のどのルートを選ぶかを、ボタンで決定する。
5.落とし穴(罠)のあるマスに止まると負け、緑のマス(右端)に到達すると勝ち。
6.上記1〜5を15ゲームx2セット行う。15ゲームが終わるとサイコロが変わる旨が表示される。
与えられたB群、C群の系列は被験者ごとに異なる。被験者の半数が前半1セットでB群の系列を、後半1セットでC群の系列を用い、残りの半数の被験者はその逆の順番で系列を用いるが、このことは被験者には知らされていない。本実験では、合計30回のゲーム中に罠に落ちた回数が少ない順に成績をつけ、16人中3位に入賞した被験者には1000円分の商品を渡す旨を事前告知し、被験者のインセンティブとした。駒を進める最適戦略は自明ではないので、プレイヤは試行錯誤しながらルートを選択することになる。
【0061】
(評価1:落ちる回数の事後予想)すごろくプレイの後に、被験者に、実際に罠に落ちた回数と、「15ゲームあたり平均何回落ちるようなすごろくか」の予想値を出してもらった。予想回数は3回から8回までさまざまであったが、実際のプレイで落ちた回数が多かった被験者(最大16回)は多い回数を予想し、実際のプレイで落ちる回数が少なかった(最小7回)被験者は多少ない数を予想する傾向があった。その相関係数は0.54と比較的高く、「限られた経験や結果に引きずられて一般的な傾向を予想する」というしばしば指摘される認知バイアスがここでも確認できた。
【0062】
(評価2:さいころの自然さ)被験者に、先述の(評価1)〜(評価5)と同じ基準で、前半15ゲーム分と広範15ゲーム分のサイコロの自然さを評価してもらった。B群の平均点は2.44点、C群の平均点は3.50点で、1ポイント強の差がついた。これは表8の結果と同じ傾向にある。
【0063】
(評価:不満足・不信感)実験後に、被験者に、前半後半のそれぞれについて、「プログラムにサイコロの目を調整されたために罠に落とされた、と思いますか?」という質問を出し、「1.そうは全く思わない」から「5.そのように強く思う」までの5段階で回答してもらった。B群の平均点は3.19、C群の平均点は2.88で、C群の方がやや不満が小さい。一方、罠に落ちた回数と、罠に落とされたと思う程度(1〜5の段階)には相関があり、相関係数はB群で0.31、C群で0.55であった。つまり、罠に落ちた人ほど、それがサイコロ調整のせいだと思っていることになる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明では、数学的な意味で良い疑似乱数が、標準的なゲームプレイヤにとって良いものではないという欠点を初めて指摘し、この欠点を解消して自然に見える疑似乱数系列の生成法を提案した。本発明で生成した疑似乱数列では、同じ目が続く回数などの特徴量をユーザの感じる自然さからみて望ましい範囲に最適化されている。この結果、本発明で生成した疑似乱数列では、ユーザに不自然な印象と結び付けられて目立つ部分が少なくなっている。そのため、生成した疑似乱数そのものをユーザに見せた場合にユーザがより自然と感じる。生成した疑似乱数列をすごろくで使った場合にはユーザが目の出方がより自然であると感じる。このような本発明で生成した疑似乱数列を用いたすごろく、麻雀、くじびき、トランプのようなゲームでは、ユーザが「コンピュータにズルをされて負けた」と思う場面が減り、より自然で満足度の高いプレイを楽しむことができる。
【0065】
また、ランダムさ(乱数の自然さ)の他に、ユーザのゲームに対する満足度を左右する事象として、ユーザにとって都合のよい目と都合の悪い目の出方がある。この点を考慮して、本発明で用いた疑似乱数生成手法をさらに応用、発展することができる。疑似乱数の適用対象をすごろくに限った場合、止まりたくないマスに止まるような頻度を、乱数列の生成とは別に調整する手法を設定し、そのような手法で調整したサイコロの目の生成方法を実装したすごろくを作成することができる。例えば、10回中3回止まるような確率の場合は、実際に10回中2〜4回止まらせ、1回以下(あまりに都合が良い場合が多く、プレイヤが不信感を抱き易い)や5回以上(あまりに都合が悪いことが多く、プレイヤが不信感を抱き易い)にしないといった調整が考えられる。
【0066】
さらに、先述のとおり、ユーザが認識する乱数の自然さ、ゲームの公平さは、ユーザ間の個人差が大きい。特定のゲームの熟練者や数学的素養のあるプレイヤからみれば、認知バイアスを加味した疑似乱数列や、ほどほどに都合の良し悪しが調節されたすごろくは、ある意味「ゲームが下手な人向け」、「数学ができない人」向けであり、かえって不自然になる可能性が高い。そこで、そのようなユーザにも自然なゲームを提供するために、本発明の疑似乱数生成法に加えて、ゲームプレイ中にユーザの傾向をオンラインで分析して、その人に特化した乱数列・サイコロ制御法を設計し、これを本発明の疑似乱数生成法に反映させるという方法も考えられる。
このように、本発明の疑似乱数生成法を基本として、より不自然さ・不信を感じさせないゲームを提供することができる。具体的なゲーム製品としては、ゲームセンターなどの遊戯機、ゲームのソフトウェアなどがある。ゲームの種類は、ユーザから見た公平性が求められ、乱数を用いる必要があるものであれば、限定されない。特に、すごろく、麻雀、くじびき、トランプを用いたゲームが本発明の利用に適している。
図1
図2
図3
図4