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特開2015-20114スラリー供給システム、スラリー供給方法および脱水装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-20114(P2015-20114A)
(43)【公開日】2015年2月2日
(54)【発明の名称】スラリー供給システム、スラリー供給方法および脱水装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/00 20060101AFI20150106BHJP
   C02F 11/12 20060101ALI20150106BHJP
   B01D 61/56 20060101ALI20150106BHJP
   B01D 35/06 20060101ALI20150106BHJP
【FI】
   C02F11/00 AZAB
   C02F11/12 E
   B01D61/56
   B01D35/06 P
   B01D35/06 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-150140(P2013-150140)
(22)【出願日】2013年7月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 泰治
(72)【発明者】
【氏名】三島 成仁
(72)【発明者】
【氏名】小林 一郎
(72)【発明者】
【氏名】関 英典
【テーマコード(参考)】
4D006
4D059
【Fターム(参考)】
4D006GA18
4D006GA47
4D006JA42A
4D006JA52A
4D006PA02
4D006PB20
4D006PC80
4D059AA03
4D059BE09
4D059BE11
4D059BE15
4D059BE16
4D059BE37
4D059BE43
4D059BE46
4D059BJ00
4D059BJ01
4D059BJ02
4D059CB03
4D059CB09
4D059CB10
(57)【要約】
【課題】含水率や性状が安定しないスラリーであっても、より均一なシート状に成形可能であり、その結果より効率良く電気浸透脱水を行うことが可能な、電気浸透脱水機の脱水部にスラリーを供給するためのシステムを提供する。
【解決手段】スラリー11に圧力を印加する圧力印加手段22と、圧力印加手段22の下流に位置し、幅方向に間隔をあけて設けられた複数のスラリー供給口31と、複数のスラリー供給口31の下流に位置し、複数のスラリー供給口から吐出されたスラリー11の筋の幅方向の全体を挟み込むことが可能なシート成形手段41、43、44とを有するスラリー供給システムである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気浸透脱水機の脱水部にスラリーを供給するためのシステムであって、
スラリーに圧力を印加する圧力印加手段と、
前記圧力印加手段の下流に位置し、幅方向に間隔をあけて設けられた複数のスラリー供給口と、
前記複数のスラリー供給口の下流に位置し、前記複数のスラリー供給口から吐出されたスラリーの筋の幅方向の全体を挟み込むことが可能なシート成形手段と、
を有するスラリー供給システム。
【請求項2】
前記シート成形手段は、
電気浸透脱水機の脱水部の上流に配置されており、
複数のローラーに巻きかけられたベルトと、
前記ベルトの上方に間隔をあけて配置された押さえロールとを備える
請求項1に記載のスラリー供給システム。
【請求項3】
前記圧力印加手段がスラリーを圧送するポンプである
請求項1または2に記載のスラリー供給システム。
【請求項4】
前記スラリー供給口が円筒状のノズルである
請求項1〜3のいずれか一項に記載のスラリー供給システム。
【請求項5】
前記スラリー供給口がそれぞれ吐出量を調整するための弁を備える
請求項4に記載のスラリー供給システム。
【請求項6】
上記スラリーが排水処理設備から生じる汚泥である、
請求項1〜5のいずれか一項に記載のスラリー供給システム。
【請求項7】
スラリーに圧力を印加する工程と
前記圧力が印加されたスラリーを幅方向に間隔をあけて設けられた複数の供給口から筋状に吐出する工程と、
前記筋状に吐出された複数のスラリーの幅方向の全体を挟み込んでシート状に延伸する工程と、
前記シート状のスラリーを電気浸透脱水機の脱水部に供給する工程と
を有するスラリー供給方法。
【請求項8】
スラリー供給機と電気浸透脱水機とを有する脱水装置であって、
前記スラリー供給機は、
圧力が印加されたスラリーを吐出するための、幅方向に間隔をあけて設けられた複数のスラリー供給口を有し、
前記電気浸透脱水機は、
陽極側の回転式ドラムと、
複数のローラーに巻きかけられた陰極側のベルトと、
前記ドラムと前記ベルトが対向する脱水部と、
前記脱水部の上流に、前記ベルト上に前記スラリー供給口からのスラリーが吐出される受入部と、
前記受入部と前記脱水部の間に、前記ベルトと該ベルトの上方に間隔を介して設けられた押さえロールを備える厚み調整部とを有する、
脱水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理設備等から生じる汚泥や工業製品の生産工程等で生成する含水中間体などのスラリーを電気浸透脱水法によって脱水する際に用いる、スラリーの供給システムおよび方法、ならびに脱水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気浸透脱水法は電気浸透の原理を利用して汚泥などのスラリー中の固形物と水分を分離する方法である。具体的には、スラリーを金属などの電気伝導性物質で挟んで直流電圧を印加すると、表面がマイナスに帯電した固形物は陽極側に、プラスに帯電した水分は陰極側に引き寄せられることによって、固形物と水分の分離が進行する。
【0003】
電気浸透脱水法の特徴は、スラリーをより低い含水率(=スラリー中の液の質量/スラリー全体の質量)、例えば70%以下にまで脱水可能なことである。そのため、スラリーを高度に脱水することが求められる場合に利用されることが多い。また、様々な排水処理場、廃棄物処理場等で生じる汚泥を遠心分離、フィルタープレスなどの機械式脱水法によって脱水・減容した後に、さらに電気浸透脱水法が用いられることもある。
【0004】
例えば、特許文献1には、陽極側の回転式加圧ドラムと、フィルタベルトと重ね合わせて加圧ドラムの周域に張架された陰極側のプレスベルトとを備えた電気浸透脱水装置が記載されている。また、特許文献2には、2次脱水機として電気浸透式脱水機を備えた汚泥脱水装置が記載されている。
【0005】
電気浸透脱水法において、陽極と陰極、例えばドラムとベルトに挟まれたスラリーは、薄く均一な層を形成していることが望ましい。スラリーの層が厚すぎると、電気抵抗が大きくなって消費電力が多くなるからである。また、スラリーの厚みが不均一で空隙がある場合にも、空隙部が電気を通さないために、電気抵抗が大きくなって消費電力が多くなるからである。しかし、処理対象であるスラリーはその含水率や性状が一様でないことが多く、これを薄く均一なシート状に展開することは困難であった。
【0006】
この点に関して、特許文献2では、汚泥をスクリューによって撹拌しつつ切り出し、下方に配置された一対の平行ローラによって所定厚みのシート状に成形して、電気浸透式脱水機に供給することが提案されている。また、特許文献3では、脱水部の前方位置に、濾布ベルトの上方に適当間隔を隔ててケーキ押さえロールを設けて、均一な厚さのスラッジケーキを脱水部に供給する電気浸透脱水機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平3−46166号公報
【特許文献2】特許第4651045号公報
【特許文献3】実開平6−15706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者らは、特許文献2および3に記載された方法によっても、シート状に成形されるスラリーの均一性には、なお改善の余地があることを見い出した。
【0009】
すなわち、特許文献2の方法においては、平行ローラ間に進入しなかった汚泥がローラ上で転がって団子状となり、新たに供給される汚泥の進入を阻害し、さらに汚泥の塊が雪だるま式に大きくなることが起こり得た。これは、含水率が低く流動性が損なわれた部分があると、汚泥がスムーズに平行ローラ間に挟まれていかないことや、汚泥がローラ上に投入された時点でローラ間隔よりも大きな塊を形成していることなどが原因となって起こる。
【0010】
このような状況に陥ると、脱水機の運転を停止して、作業員が団子状の汚泥を突き崩してローラ間に押し込む作業が必要となる。あるいは運転停止に至らないまでも、脱水機に供給されるシート状汚泥の均一性が損なわれるという問題が生じる。
【0011】
また、特許文献3には濾布ベルト上に汚泥を投入する方法は説明されていないが、単に汚泥の投入量を制御するだけでは、汚泥中の含水率・流動性の不均一に起因して、押さえロールを通過しても空隙が残るなどの問題がある。
【0012】
本発明は以上の点を考慮してなされたものであり、含水率や性状が安定しないスラリーであっても、より均一なシート状に成形可能なスラリー供給システムおよび方法を提案することを目的とする。また、かかる脱水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題に対して、本発明では、幅方向に間隔をあけて設けられた複数のスラリー供給口からスラリーを筋状に吐出した後、シート成形手段によってスラリーをシート状に成形する。
【0014】
本発明のスラリー供給システムは、電気浸透脱水機の脱水部にスラリーを供給するためのシステムであって、スラリーに圧力を印加する圧力印加手段と、前記圧力印加手段の下流に位置し、幅方向に間隔をあけて設けられた複数のスラリー供給口と、前記複数のスラリー供給口の下流に位置し、前記複数のスラリー供給口から吐出されたスラリーの筋の幅方向の全体を挟み込むことが可能なシート成形手段とを有する。
【0015】
ここで「下流」とはスラリーの流れを基準にしたものであり、本発明のスラリー供給システムではスラリーが圧力印加手段、スラリー供給口、シート成形手段の順に流れていくことを意味している。また、ここで「幅方向」とは、脱水部に供給されるシート状のスラリーの幅方向のことをいう。
【0016】
この構成により、圧力が印加されたスラリーが複数の供給口から分割して吐出されることによって、スラリー供給量の幅方向の分布がより一様となり、幅方向の全体を挟み込むシート成形手段によって、スラリーをより均一なシート状に成形して脱水部に供給することができる。
【0017】
上記スラリー供給システムの一局面において、前記シート成形手段は、電気浸透脱水機の脱水部の上流に配置されており、複数のローラーに巻きかけられたベルトと、ベルトの上方に間隔をあけて配置された押さえロールとを備える。
【0018】
ここで「上流」とは、スラリーの流れを基準にしたものである。シート成形手段が脱水部の上流に設けられるとは、シート成形手段を通過したスラリーがその後に脱水部に進入することを意味する。この構成により、幅方向に分割吐出されたスラリーが、ベルトと押さえロールに挟み込まれて均一なシート状に成形されて、脱水部へと進入することができる。
【0019】
上記スラリー供給システムの他の局面において、前記シート成形手段は、前記スラリー供給口の下方に間隔をあけて配置される相互に平行な一対の成形ロールを備える。複数の供給口から吐出されたスラリーの筋は、一対の成形ロールの間を通過することによりシート状に成形されて、電気浸透脱水機に供給されることができる。
【0020】
上記圧力印加手段は、スラリーを圧送するポンプであってよい。これにより、スラリーに簡便に圧力を印加することができる。
【0021】
好ましくは、前記スラリー供給口は円筒状のノズルである。これにより、スラリーの流動性が変動しても、吐出量への影響を小さくすることができ、吐出量の幅方向の分布の一様性が向上する。
【0022】
好ましくは、前記スラリー供給口がそれぞれ吐出量を調整するための弁を備える。これにより、幅方向の吐出量分布をより綿密に調整することが可能となる。
【0023】
好ましくは、上記スラリー供給システムは、スラリーに印加された圧力を検知する圧力計と、少なくとも前記複数のスラリー供給口よりも上流に配置されたスラリーへの加水装置とをさらに有する。これにより、スラリーの含水率が変動して流動性が低下した場合にも、圧力の上昇に応じてスラリーに加水し、流動性を調整することができる。
【0024】
上記いずれかのスラリー供給システムは、排水処理設備から生じる汚泥を供給するためのシステムであってもよい。かかる汚泥は、種々のスラリーの中でも、含水率や性状が安定しないので、本発明のスラリー供給システムによって得られる効果が特に大きい。
【0025】
本発明のスラリー供給方法は、スラリーに圧力を印加する工程と、圧力を印加されたスラリーを幅方向に間隔をあけて設けられた複数の供給口から筋状に吐出する工程と、筋状に吐出された複数のスラリーの幅方向の全体を挟み込んでシート状に延伸する工程と、シート状のスラリーを電気浸透脱水機の脱水部に供給する工程とを有する。
【0026】
この方法により、スラリーに圧力を印加して複数の供給口から分割して吐出することによって、供給量の幅方向の分布をより一様なものとし、スラリーをより均一なシート状に成形して脱水部に供給することができる。
【0027】
本発明の脱水装置は、スラリー供給機と電気浸透脱水機とを有する。そして、スラリー供給機は、圧力が印加されたスラリーを吐出するための、幅方向に間隔をあけて設けられた複数のスラリー供給口を有する。そして、電気浸透脱水機は、陽極側の回転式加圧ドラムと、複数のローラーに巻きかけられた陰極側のベルトと、陽極側のドラムと陰極側のベルトが対向する脱水部とを有し、脱水部の上流には、ベルト上にスラリー供給口からのスラリーが吐出される受入部を有し、受入部と脱水部の間には、ベルトと該ベルトの上方に間隔を介して設けられた押さえロールを備える厚み調整部とを有する。
【0028】
この構成により、より均一なシート状のスラリーに対して電気浸透脱水を行うことができるので、脱水効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のスラリー供給システム、スラリー供給方法または脱水装置によれば、含水率や性状が安定しないスラリーであっても、より均一なシート状に成形して脱水部に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1の実施形態の全体構成を示す図である。
図2】第1の実施形態の汚泥供給機を示す図である。
図3】第2の実施形態の全体構成を示す図である。
図4】汚泥供給実験の装置を示す図である。
図5】汚泥供給実験の結果を示す図である。
図6】第3の実施形態の汚泥供給機を示す図である。
図7】ホッパーに貯留された汚泥の含水率が不均一化する状況を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の第1の実施形態を、図1および図2に基づいて説明する。第1の実施形態は、スラリーとして排水処理設備等から生じる汚泥を処理するものである。
【0032】
まず、図1に基づいて、本実施形態の全体構成と汚泥の流れを説明する。図1には、汚泥脱水装置10と汚泥搬送系統20が示されている。汚泥脱水装置10は汚泥供給機30と電気浸透脱水機40からなる。
【0033】
本実施形態で処理する汚泥11は、種々の排水処理設備、廃棄物処理設備から生じる汚泥を用いることができる。汚泥が生物処理汚泥である場合には、その含水率は典型的には97〜99%である。また、一度他の方式、例えば遠心分離、フィルタープレスなどの機械式脱水法によって脱水された汚泥を用いてもよい。その場合、汚泥の含水率は典型的には82〜86%程度である。
【0034】
図1において、汚泥搬送系統20は、ホッパー21と、ホッパー21の下部に混練機23と、混練機23の下方に汚泥を圧送するためのポンプ22と、搬送配管26を有する。汚泥11は一旦ホッパー21に貯留され、混練機23で混練され、ポンプ22によって搬送配管26を通って汚泥供給機30へ圧送される。
【0035】
汚泥供給機30は複数の汚泥供給口31を有する。ポンプ22によって圧送された汚泥は、複数の汚泥供給口31から、紐状、リボン状などの筋状に吐出されて、電気浸透脱水機40へ供給される。汚泥供給機の詳細は後述する。
【0036】
電気浸透脱水機40は、陽極側の加圧回転式ドラム42と、複数のローラー45に巻きかけられたエンドレスのベルト43と、一部においてベルト43と重ね合わされ、やはり複数のローラー45に巻きかけられたエンドレスのフィルター44とを有する。汚泥供給機30からの汚泥11は、受入部47に吐出され、次いで下流の押さえロール41とフィルター44およびベルト43に挟み込まれてシート状に成形され、次いで回転式ドラム42とフィルター44およびベルト43が対向する脱水部46へと進入する。汚泥11は脱水部46で、回転式ドラム42とベルト43によって圧搾されるとともに、電気浸透作用を受けて脱水される。脱水部46に供給される汚泥のシートの厚みは5〜30mmである。
【0037】
次に各部の詳細を説明する。
【0038】
図1の汚泥搬送系統20において、汚泥11を一旦ホッパー21に貯留することにより、いくつかの利点が得られる。その利点とは、汚泥が発生する前段の設備と後段の電気浸透脱水機の処理能力の差を運転時間の調整で吸収できることや、何らかの設備トラブルの際のバッファーとできることなどである。しかし、汚泥11をホッパー21に貯留すると、空気に触れる表面では乾燥が進み、汚泥中の水分が下方に流れ出すことによって、ホッパー21内の位置によって汚泥の含水率が不均一となりやすい。さらに、そこへ新たな汚泥が前段の設備から送られてくると、含水率の異なる層が上下に積み重なってしまう。この状態を図7に模式的に示すと、ホッパー21内では、汚泥の含水率が低い部分11aと含水率の高い部分11bが形成される。このような状態になると、汚泥を撹拌して切り出しても、汚泥の性状の均一化は難しくなる。また、含水率が異なる汚泥が順次圧送されるため、汚泥供給機に送られる汚泥の含水率は経時的に変動することになる。
【0039】
混練機23の種類は特に限定されず、回転するパドルやスクリューなどの公知のものを用いることができる。また、ポンプ22の下流において、スタティックミキサーによって汚泥が混練されるようにしてもよい。ポンプ22の種類は限定されないが、常に一定の確保された容積を先に送り続けることができ、粘度が高く流動性の少ない物質の搬送に適するなどの点から、ねじポンプ、モーノポンプ(兵神装備株式会社、登録商標)などの一軸ポンプを好適に用いることができる。
【0040】
図2は、汚泥供給機30の構成を、電気浸透脱水機40の一部とともに示している。図2において、汚泥供給機30は、前記ポンプ22によって圧送された汚泥11が到着するヘッダー管32と、ヘッダー管32から分岐して、幅方向に間隔をあけて設けられた汚泥供給口として複数のノズル31とを有する。図2のノズル31は直管状で、ヘッダー管32から分岐した配管35が直管状の途中に接続されている。各ノズル31は吐出量調整弁33と、後端に開閉自在な蓋34を備えている。
【0041】
汚泥供給口31の形態は特に限定されない。供給口31は図2のようなノズルであってもよいし、ヘッダー管32の管壁に設けられた穴であってもよい。また供給口31の吐出断面の形状は、円形、長円形、矩形、スリット状など各種形状を採用することができる。好ましくは、吐出断面の縦横比は1に近いものとする。個々の供給口31から吐出される汚泥の量が、幅方向の位置によってばらつくことがないからである。また、好ましくは、供給口31はノズルであるのがよい。汚泥が供給口31を通過する際の吐出抵抗が小さすぎると、吐出量が含水率など汚泥の性状の影響を受けやすく、複数の供給口31からの吐出量のバランスが変動しやすいからである。
【0042】
汚泥供給口31の大きさは特に限定されないが、吐出された汚泥の厚みが押さえロール41の径よりも十分小さいことが好ましく、具体的には、吐出された汚泥の最上面が押さえロール41の回転中心よりも低い位置にあることが好ましい。より具体的には、吐出された汚泥の厚みをh、押さえロール41の半径をR、押さえロール41とフィルター44の隙間をCとしたときに、h<R+Cの関係が成立していることが好ましい。これによって、シート成形手段の隙間、すなわちフィルター44と押さえロール41の間に入り込みにくい汚泥の塊が吐出されることを抑制できるからである。本実施形態では、汚泥に圧力が印加されているので、供給口31の開口が小さくても汚泥を問題なく吐出することができる。
【0043】
汚泥供給口31の数は、設備の大きさ、電気浸透脱水部に供給される汚泥のシートの幅、汚泥の粘性などに応じて決めることができるが、2以上であることを要し、3以上であることが好ましい。単一の供給口では、たとえスリット状の供給口を用いたとしても、その全幅から一様に汚泥を吐出することは困難である。複数の供給口を設けることによって、幅方向の予め設定した位置に汚泥を吐出することができ、幅方向の汚泥量の分布をより一様なものとすることができる。発明者らの実験によると、幅500mmでは3本、幅2000mmでは5本のノズルを用いることで、良好な結果が得られた。
【0044】
汚泥供給口31相互の間隔は、特に限定されないが、個々の供給口31から吐出された汚泥が独立した筋を形成する程度に大きいことが好ましい。開口が幅方向に長いスリット状である場合でも、隣合う供給口31の間隔は、開口の短辺または短径よりも大きくすることが好ましい。
【0045】
それぞれの汚泥供給口31には、吐出量調整弁33が設けられていることが好ましい。これにより、電気浸透脱水部に供給される汚泥量の幅方向の分布をより綿密に調整することができる。吐出量調整弁としては、ボール弁、ニードル弁、グローブ弁などの公知のものを用いることができる。
【0046】
図2では、直管状のノズル31の後端に開閉自在な蓋34が設けられている。これにより、運転中は蓋34を閉じ、清掃時には蓋34を開いてノズル31内部を容易に清掃することができる。
【0047】
図1を参照して、電気浸透脱水機40は、陽極側の回転式ドラム42と、複数のローラー45に巻きかけられたエンドレスのベルト43と、一部においてベルト43と重ね合わされ、やはり複数のローラー45に巻きかけられたエンドレスのフィルター44とを有する。ここで、回転式ドラム42、ベルト43、フィルター44の材質、構造等は特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0048】
図1および図2において、汚泥11は、汚泥供給機30から、電気浸透脱水機40の受入部47で、ベルト43上に支持されたフィルター44上に、複数の筋状に吐出される。好ましくは、汚泥11は、押さえロール41の近くに吐出される。供給口31としてノズルを用いると、押さえロールのより近くに汚泥を吐出することが可能となるので、この点でも好ましい。
【0049】
汚泥受入部47の下流には、ベルト43、フィルター44、およびフィルター44の上方に間隔をあけて配置された押さえロール41によって構成されるシート成形手段に進入して、シート状に成形・延伸される。
【0050】
押さえロール41と下方のフィルター44およびベルト43との間隔は、調整可能とする。押さえロール41が複数ある場合には、汚泥の進行方向に徐々に間隔を狭くしていくと、汚泥の進入がスムーズになり、最後の押さえロールの位置で汚泥厚みを決定することができるので好ましい。
【0051】
また、好ましくは、押さえロール41のうち、少なくとも1本は、ベルト43、フィルター44とは別の駆動装置を持ち、その回転速度をコントロールできるようにする。押さえロール41の周速を、フィルター44の線速よりもわずかに大きくすることで、汚泥11をより強く、スムーズに挟み込むことができる。
【0052】
以上のとおり、本実施形態では、図1を参照して、汚泥11に圧力を印加する圧力印加手段であるポンプ22と、幅方向に間隔をあけて複数設けられたノズル31と、電気浸透脱水機40のベルト43、フィルター44および押さえロール41で構成されるシート成形手段によって汚泥供給システムが構成されている。ポンプ22によって圧送された汚泥11が幅方向に分割されてノズル31から吐出されることにより、汚泥供給量の幅方向の分布をより一様なものとすることができる。そして、その結果として、汚泥をより均一なシート状で脱水部46に供給することができる。
【0053】
次に、本発明の第2の実施形態を、図3に基づいて説明する。第2の実施形態も、スラリーとして排水処理設備等から生じる汚泥を処理するものである。図3において、第1の実施形態と同じ構成要素には、図1と同じ符号を付した。第2の実施形態では、ポンプ22からの出口に圧力計25と、混練機23に加水装置24が設けられている点が第1の実施形態と異なる。
【0054】
ここで、第2の実施形態の説明に先立って、本発明者らが行った実験について説明する。汚泥の含水率が変化すると、それがわずかな変化であっても、汚泥の流動性が大きく変化して供給に障害を起こすことがある。そこで、本発明者らは、汚泥の含水率と供給トラブルの関係を確認するための実験を行った。
【0055】
図4は、供給実験に用いた実験装置50を示している。実験には、し尿処理場で発生する汚泥を遠心分離法によって含水率約82〜86%にまで脱水した汚泥を用いた。実験装置50は、ドラムドライヤーを流用したものである。実験装置50は、直径1000mm、幅2000mmのドラム62と、ドラム62の上方に間隔をあけて設けられた2本の押さえロール61a、61bを有する。図示しないポンプによって圧送された汚泥11を、ノズル51から押さえロール61aの手前に吐出した。ノズル51は内径が約25mm、長さ200mmのものを、ヘッダー管52から分岐して幅方向に5本を設けた。ポンプの出口には、図示しない圧力計を設けて、ポンプ吐出圧を測定した。汚泥11は、ドラム62上で徐々に体積が収縮するが、押さえロール61a,61bの位置で厚さ約20〜30mmとした。なお、ロール69は、押さえロール61aにスムーズに入り込まなかった汚泥11がこぼれ落ちるのを防ぐために、汚泥の進行方向とは逆の位置に配置したものである。
【0056】
図5に5回の実験の結果を示す。各実験はそれぞれ異なる日に約6時間の連続運転をしたものである。図の横軸は実験開始からの運転時間、縦軸はその時のポンプ吐出圧を示している。各実験における汚泥の含水率は81.8%から86.2%の範囲でばらついた。含水率が86.2%と比較的高かった5月12日の実験では、吐出圧はほぼ0.2MPa以下で安定していた。一方、含水率が85%以下となった4月11日、13日、14日、19日の実験では、吐出圧はほぼ倍の0.4MPa以上となり、最高で0.5MPaまで上昇した。また、4月13日の実験では、吐出圧は運転初期の0.3MPaから0.4MPa以上へと急激に上昇している。5回の実験のうち、4月11日、14日、19日の実験では、押さえロール61bの位置で汚泥詰まりが発生した。
【0057】
この実験結果では、汚泥の含水率が80%台半ばを境にしてわずか1〜2ポイント低下することでポンプ吐出圧が大きく上昇し、また供給障害が発生することがあった。しかしながら、汚泥の含水率は、この実験のように前段の設備から供給された時点でばらついていることが多いし、前段に1次脱水機を設けたとしても、汚泥の含水率(%)を1〜2ポイントの範囲で制御することは難しい。さらに汚泥の含水率がホッパー21に貯留中にも変化することは前述のとおりである。
【0058】
第2の実施形態においては、図3を参照して、圧力計25でポンプ吐出圧を監視することによって、吐出圧が急激にまたは大きく上昇した場合に加水装置24によって汚泥11の含水率を高めることができる。
【0059】
圧力計25は、ポンプ22と汚泥供給口31の間に設けることができる。例えば、ポンプ出口、汚泥搬送系統の配管26の途中、汚泥供給機30のヘッダー管32などに設けることができる。圧力計を設ける場所によって測定される値は異なるが、本実施形態の目的のためには、必ずしも特定の箇所での圧力値を正確に知る必要はない。圧力計を設ける場所にかかわらず、圧力測定値と供給障害の有無をしばらくの間記録することによって、個別の装置に対して圧力測定値と供給障害の可能性との関係を把握することができる。例えば、図5に示した場合では、ポンプ吐出圧が0.3MPaを超えると、加水を行うといった具合である。このように、圧力計25を設けることによって、汚泥に印加された圧力を直接または間接に検知することができる。
【0060】
加水装置24は、汚泥供給口31より上流に設けることができる。例えば、ホッパー下部の混練機23、汚泥搬送系統の配管26の途中、汚泥供給機30のヘッダー管32などに設けることができる。また、加水に用いる水は、必ずしも清水である必要はなく、汚泥が付着した機器の洗浄に使用した汚水など、汚泥性状に悪影響を与えないものであればよい。
【0061】
このような構成により、汚泥供給口に含水率の低い汚泥が差し掛かったときなど、ポンプ圧力が上昇した場合に、汚泥11に加水することができる。その結果、供給口31の閉塞や供給吐出後の押さえロール41部分での詰まりを防止することができる。また、かかる障害に至らないまでも、汚泥が流動性に乏しい部分を含むことによってシートの均一性が損なわれることを抑制することができる。
【0062】
なお、脱水が予定される汚泥に加水することは、エネルギーのロスを伴う。しかし、含水率(%)においてわずか1〜2ポイントの上昇によって、後段の電気浸透脱水機への汚泥供給上のトラブルや電気浸透脱水機の効率低下を未然に防ぐことができるならば、全体としての汚泥処理効率の向上につながる可能性がある。この点について、例えば、汚泥の含水率を上記4月14日の実験の平均84.0%から、5月12日の実験の平均86.2%にまで2.2ポイント加水した場合のロスを試算した。ポンプで圧送される汚泥の容積および電気浸透脱水機で除去される水の質量が一定と仮定すると、汚泥を84%から68%に脱水する場合に比べて、汚泥を84%から86.2%に加水することにより、処理能力が15%低下し、脱水後の汚泥の含水率が68%から72%に4ポイント上昇するという結果が得られた。含水率70%程度の汚泥はもともと流動性がなく、この程度の含水率の変化は、脱水後の汚泥の搬送設備を運転する上で問題を引き起こさない。一方、加水することによるメリットは、供給口や押さえロール部での詰まり、それに伴う装置の運転停止、清掃作業、作業員の負担増、事故の危険性などの可能性を低減できることである。
【0063】
次に、本発明の第3の実施形態を、図6に基づいて説明する。第3の実施形態も、スラリーとして排水処理設備等から生じる汚泥を処理するものである。図6において、第1の実施形態と同じ構成要素には、図2と同じ番号を付した。第3の実施形態では、シート成形手段として汚泥供給口31の下方に間隔をあけて配置された一対の成形ロール71,71を備えている。
【0064】
一対の成形ロール71,71は、幅方向に平行に、水平に配置されている。汚泥供給口31から吐出された汚泥は、成形ロール71,71によってシート状に成形されて、電気浸透脱水機40に供給される。
【0065】
この構成により、圧送された汚泥11が幅方向に分割されてノズル31から吐出されることにより、成形ロール71,71間に入り込みにくい汚泥の塊が吐出されることを抑制することができ、さらに、汚泥供給量の幅方向の分布をより一様なものとすることができる。そして、その結果として、汚泥をより均一なシート状で電気浸透脱水機40に供給することができる。
【0066】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0067】
例えば、上記実施形態では、スラリーとして排水処理設備等から生じる汚泥を処理する場合について説明したが、本発明の対象とするスラリーはこれに限定されない。本発明は、汚泥を対象とする場合も、し尿処理場、下水処理場、製紙工場、鉱工業における製錬工場など、さまざまな工程で発生する汚泥の処理に利用することができる。さらに、本発明は、汚泥以外のスラリーを対象として、食品製造分野における有用成分の分離・抽出、醤油等を回収するためのろ過・圧搾、高分子製造分野におけるポリマー粒子の分離・回収など、多くの製造工程に利用することができる。
【0068】
また、上記実施形態では汚泥への圧力印加手段として1軸ポンプなどの圧送ポンプを用いる例を示したが、その代わりに、コンプレッサー等を用いてホッパーに空気圧をかけ、汚泥を空気圧送してもよい。
【0069】
また、上記実施形態の電気浸透脱水機では、図1を参照して、ベルト43と別体のフィルター44を用いている。そのため、汚泥11はベルト43と重ね合わされたフィルター44を介してベルト43の上に吐出される。しかし、ベルトとフィルターの両方の機能を有するベルトを用いる場合には、フィルターを省略してもよい。例えば、特開2011−177692号公報には、かかる濾布を省略した電気浸透脱水機が開示されている。
【0070】
また、上記実施形態では、電気浸透脱水機としてドラムとベルトを用いるドラム式のものを用いる例を示したが、その代わりに、フラットベッド式の電気浸透脱水機を用いてもよい。フラットベッド式の電気浸透脱水機は、コンベアベルトの平坦な部分に汚泥層を載せ、平板状の陽極を押し下げて電気浸透脱水を行い、陽極を上昇させた状態でコンベアベルトを陽極板の長さの分だけ移動させるものである。その場合、シート成形手段は、コンベアベルトと、上方から下降する平板上のスタンパーであってもよい。
【符号の説明】
【0071】
10 汚泥脱水装置
11、11a、11b 汚泥
20 汚泥搬送系統
21 ホッパー
22 ポンプ(圧力印加手段)
23 混練機
24 加水装置
25 圧力計
26 搬送配管
30 汚泥供給機
31 ノズル(汚泥供給口)
32 ヘッダー管
33 吐出量調整弁
34 蓋
35 配管
40 電気浸透脱水機
41 押さえロール
42 回転式ドラム
43 エンドレスベルト
44 エンドレスフィルター
45 ローラー
46 脱水部
47 汚泥受入部
50 供給実験装置
51 ノズル
52 ヘッダー管
61a、61b 押さえロール
62 ドラム
69 汚泥こぼれ防止ロール
71 成形ロール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7