【課題】含水率や性状が安定しないスラリーであっても、シート状や紐状に成形して、安定に供給することが可能なスラリー供給システムおよびスラリー供給方法を提案することである。
【解決手段】1次脱水処理されたスラリー11を2次脱水機40に供給するためのシステムであって、前記2次脱水機40にスラリー11を供給する供給口31と、前記供給口31の上流に配置されたスラリーへの加水装置24とを有するスラリー供給システムである。
【背景技術】
【0002】
排水処理場等から発生する汚泥を減容するときや、各種工業製品生産時に中間製品から有用物を分離回収するときなどに、スラリーの脱水処理が広く行われている。また、スラリーを高度に脱水してより低い含水率を得るために、スラリーを遠心分離、フィルタープレスなどの機械式脱水法によって1次脱水した後に、さらに加熱して乾燥したり、電気浸透脱水法で処理することにより、2次脱水処理が行われることがある。このような2次脱水処理では、脱水効率を向上させるために、スラリーがシート状や紐状で供給されることが一般的である。
【0003】
例えば、電気浸透脱水法においては、スラリーを陽極と陰極に挟んで直流電圧を印加する際に、スラリーが薄く均一な層を形成していることが望ましい。スラリーの層が厚すぎると、電気抵抗が大きくなって消費電力が多くなるからである。また、スラリーの厚みが不均一で空隙がある場合にも、空隙部が電気を通さないために、電気抵抗が大きくなって消費電力が多くなるからである。
【0004】
スラリーを加熱・脱水する乾燥機としては、内部に蒸気を流通させて加熱したドラム表面でスラリーを乾燥するドラムドライヤーや、スラリーをコンベヤーベルトで搬送しながら熱風を通過させるベルト式乾燥機などがある。いずれの場合も、スラリー中の水分の表面への拡散を容易にするために、スラリーはシート状や紐状にして供給されることが望ましい。
【0005】
この点に関して、特許文献1では、2次脱水機として電気浸透式脱水機を備えた汚泥脱水装置において、汚泥をスクリューによって撹拌しつつ切り出し、下方に配置された一対の平行ローラによって所定厚みのシート状に成形して、電気浸透式脱水機に供給することが提案されている。また、特許文献2には、多段バンド式乾燥機(ベルト式乾燥機)に、最大2m程度の幅と10mm程度の厚さを有する矩形断面の成形ノズルを通して、脱水汚泥を供給することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、スラリーをシート状や紐状に成形して供給する場合には、スラリーの流動性の不均一や経時的な変動が原因となって、さまざまな供給上の問題が発生することがあった。本発明者らは、特許文献1および2に記載された方法によっても、脱水機へスラリーを安定に供給するには、なお改善の余地があることを見い出した。
【0008】
すなわち、特許文献1の方法においては、平行ローラ間に進入しなかった汚泥がローラ上で転がって団子状となり、新たに供給される汚泥の進入を阻害し、さらに汚泥の塊が雪だるま式に大きくなることが起こり得た。これは、含水率が低く流動性が損なわれた部分があると、汚泥がスムーズに平行ローラ間に挟まれていかないことや、汚泥がローラ上に投入された時点でローラ間隔よりも大きな塊を形成していることなどが原因となって起こる。
【0009】
このような状況に陥ると、脱水機の運転を停止して、作業員が団子状の汚泥を突き崩してローラ間に押し込む作業が必要となる。あるいは運転停止に至らないまでも、脱水機に供給されるシート状汚泥の均一性が損なわれるという問題が生じる。
【0010】
特許文献2の方法においては、汚泥がスリット状ノズルの全幅から一様に流出せず、汚泥量の幅方向の分布が不均一となることがある。
【0011】
本発明は以上の点を考慮してなされたものであり、含水率や性状が安定しないスラリーであっても、シート状や紐状に成形して、安定に供給することが可能なスラリー供給システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題に対して、本発明では、供給するスラリーの流動性が低下した場合に、スラリーに加水することによって、供給上の問題を予防する。
【0013】
本発明のスラリー供給システムは、1次脱水処理されたスラリーを2次脱水機に供給するためのシステムであって、前記2次脱水機にスラリーを供給する供給口と、前記供給口の上流に配置されたスラリーへの加水装置とを有する。
【0014】
ここで「上流」とは、スラリーの流れを基準にしたものである。加水装置が供給口の上流に設けられるとは、加水装置を通過したスラリーがその後に供給口に到達することを意味する。この構成により、スラリーの流動性が低下した場合に、スラリーに加水して流動性を高めることが可能となり、供給上の問題を未然に防ぐことができる。
【0015】
上記スラリー供給システムの一局面において、前記スラリーは汚泥である。排水処理施設や廃棄物処理施設等で発生する汚泥は、種々のスラリーの中でも、含水率や性状が変動しやすいので、本発明のスラリー供給システムによって得られる効果が特に大きい。
【0016】
好ましくは、前記スラリー供給システムは、圧送ポンプをさらに有し、スラリーが前記圧送ポンプによって圧送される。この構成によると、スラリーに圧力を印加して供給口から吐出することによって、スラリーの吐出量が粘性・流動性に影響されにくくなる。
【0017】
好ましくは、前記スラリー供給システムは、スラリーの流動性検知手段をさらに有する。これにより、スラリーの流動性の変動を監視し、流動性が低下した場合に加水を行うことができる。
【0018】
好ましくは、圧送ポンプを有する前記スラリー供給システムは、スラリーの流動性検知手段として、スラリー供給圧を測定する圧力計を有する。これにより、流動性の変動をより簡便に検知することができる。圧力計は、圧送ポンプと前記供給口の間に設けることができる。
【0019】
上記スラリー供給システムは、2次脱水機として機能するドラムドライヤーまたは電気浸透脱水機に、シート状に成形されたスラリーを供給するものであってもよい。これらの脱水機では、スラリーを薄くかつ均一なシート状で供給することによって、脱水効率が大きく向上するので、本発明のスラリー供給システムによる効果が特に大きい。
【0020】
上記スラリー供給システムは、2次脱水機として機能するドラムドライヤーまたは電気浸透脱水機にスラリーを供給するシステムであって、前記供給口が幅方向に間隔をあけて複数設けられたものであってもよい。ここで「幅方向」とは、2次脱水機に供給されるスラリーの幅方向のことをいう。これによって、スラリー供給量の幅方向の分布をより一様なものとすることができる。
【0021】
本発明のスラリー供給方法は、1次脱水機から排出されるスラリーを2次脱水機に供給する方法であって、スラリーをポンプで圧送する工程と、スラリーを供給口から前記2次脱水機に供給する工程と、スラリーの供給圧を検知する工程と、供給圧が所定の大きさを超えたときにスラリーに加水する工程とを有する。
【0022】
この方法によって、スラリーの流動性が低下した場合にも、スラリーに加水して流動性を高め、供給上の問題を未然に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のスラリー供給システムまたはスラリー供給方法によれば、含水率や性状が安定しないスラリーであっても、より均一なシート状や紐状に成形して、安定して脱水機に供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第1の実施形態を、
図1に基づいて説明する。第1の実施形態は、スラリーとして排水処理設備等から生じる汚泥を電気浸透脱水機に供給するものである。
【0026】
まず、本実施形態の全体構成と汚泥の流れを説明する。
図1は、汚泥搬送系統20、汚泥供給機30と電気浸透脱水機40を示している。
【0027】
本実施形態で処理する汚泥11は、種々の排水処理設備、廃棄物処理設備から生じる汚泥を1次脱水処理したものを用いることができる。1次脱水処理の方法および回数は特に限定されず、汚泥の流動性が失われない範囲で、各種の方法で1回以上の処理を行うことができる。汚泥が生物処理汚泥である場合には、その含水率は典型的には97〜99%である。これを1次脱水処理、例えば遠心分離、フィルタープレスなどの機械式脱水法によって処理した汚泥の含水率は典型的には82〜86%程度である。
【0028】
図1において、汚泥搬送系統20は、ホッパー21と、ホッパー21の下部に加水装置24および混練機23と、混練機23の下方に汚泥を圧送するためのポンプ22と、搬送配管26と、ポンプ22からの出口に圧力計25とを有する。汚泥11は一旦ホッパー21に貯留され、混練機23で混練され、ポンプ22によって搬送配管26を通って汚泥供給機30へ圧送される。
【0029】
汚泥供給機30は汚泥供給口31を有する。ポンプ22によって圧送された汚泥は、汚泥供給口31から吐出されて、電気浸透脱水機40へ供給される。何らかの原因によって汚泥の流動性が乏しくなると、ポンプ吐出圧の上昇を圧力計25で検知できるので、加水装置24を作動させて汚泥11の含水率を高めることができる。
【0030】
電気浸透脱水機40は、陽極側の加圧回転式ドラム42と、複数のローラー45に巻きかけられたエンドレスのベルト43と、一部においてベルト43と重ね合わされ、やはり複数のローラー45に巻きかけられたエンドレスのフィルター44とを有する。回転式ドラム42とフィルター44およびベルト43が対向する領域が脱水部46を構成し、汚泥11は脱水部46で、回転式ドラム42とベルト43によって圧搾されるとともに、電気浸透作用を受けて脱水される。脱水部に供給される汚泥のシートの厚みは5〜30mmである。
【0032】
図1の汚泥搬送系統20において、汚泥11を一旦ホッパー21に貯留することにより、いくつかの利点が得られる。その利点とは、汚泥が発生する前段の設備と後段の電気浸透脱水機の処理能力の差を運転時間の調整で吸収できることや、何らかの設備トラブルの際のバッファーとできることなどである。しかし、汚泥11をホッパー21に貯留すると、空気に触れる表面では乾燥が進み、汚泥中の水分が下方に流れ出すことによって、ホッパー21内の位置によって汚泥の含水率が不均一となりやすい。さらに、そこへ新たな汚泥が前段の設備から送られてくると、含水率の異なる層が上下に積み重なってしまう。この状態を
図7に模式的に示すと、ホッパー21内では、汚泥の含水率が低い部分11aと含水率の高い部分11bが形成される。このような状態になると、汚泥を撹拌して切り出しても、汚泥の性状の均一化は難しくなる。また、含水率が異なる汚泥が順次圧送されるため、汚泥供給機に送られる汚泥の含水率は経時的に変動することになる。
【0033】
混練機23の種類は特に限定されず、回転するパドルやスクリューなどの公知のものを用いることができる。また、ポンプ22の下流において、スタティックミキサーによって汚泥が混練されるようにしてもよい。ポンプ22の種類は限定されないが、常に一定の確保された容積を先に送り続けることができ、粘度が高く流動性の少ない物質の搬送に適するなどの点から、ねじポンプ、モーノポンプ(兵神装備株式会社、登録商標)などの一軸ポンプを好適に用いることができる。
【0034】
圧力計25は、ポンプ22と汚泥供給機30の汚泥供給口31の間に設けることができる。例えば、ポンプ出口、汚泥搬送系統の配管26の途中、汚泥供給口31の直前などに設けることができる。圧力計を設ける場所によって測定される値は異なるが、本実施形態の目的のためには、必ずしも特定の箇所での圧力値を正確に知る必要はない。圧力計を設ける場所にかかわらず、圧力測定値と供給上の問題の有無をしばらくの間記録することによって、個別の装置に対して圧力測定値と供給上の問題の関係を把握することができる。
【0035】
なお、本実施形態では汚泥の流動性を間接的に検知する手段として、圧力計25によってポンプ吐出圧、すなわちスラリー供給圧を測定しているが、その他の手段を用いてもよい。例えば、特に流動性検知手段を設けずに汚泥供給口31から吐出される汚泥を目視で観察してもよいし、ロードセルを搭載した計量コンベア等の重量センサー、電磁流量計等の流量センサー、画像モニターなどをスラリーの流動性検知手段として用いてもよい。
【0036】
加水装置24は、汚泥供給口31より上流に設けることができる。例えば、ホッパー下部の混練機23、汚泥搬送系統の配管26の途中、汚泥供給口31の直前などに設けることができる。また、加水に用いる水は、必ずしも清水である必要はなく、汚泥が付着した機器の洗浄に使用した汚水など、汚泥性状に悪影響を与えないものであればよい。
【0037】
汚泥供給口31の形態等は特に限定されない。例えば、汚泥供給口31はノズルであってもよいし、ヘッダー管の管壁に設けられた穴であってもよい。また、供給口31の吐出断面の形状は円形、長円形、矩形、スリット状など各種形状を採用することができる。また、汚泥供給口31の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。また、汚泥供給口31の大きさは、吐出圧や後段の脱水機の能力等を考慮して適宜設計することができる。
【0038】
電気浸透脱水機40の、回転式ドラム42、ベルト43、フィルター44の材質、構造等は特に限定されず、公知のものを用いることができる。電気浸透脱水機40に供給された汚泥11は、押さえロール48で形や厚みを整えられて、脱水部46に進入する。
【0039】
本実施形態では、以上の構成により、汚泥供給口31に含水率の低い汚泥11が差し掛かったときなど、ポンプ圧力が上昇した場合に、汚泥11に加水することができる。その結果、供給口31の閉塞や供給吐出後の押さえロール48部分での詰まりを防止することができる。また、かかる障害に至らないまでも、汚泥が流動性に乏しい部分を含むことによってシートの均一性が損なわれることを抑制することができる。例えば、汚泥がスリット状ノズルの全幅から、より一様に吐出されるようにすることができる。
【0040】
1次脱水によって含水率が低下した汚泥は、わずかな含水率の変化によって大きく流動性が変化することがあるが、本実施形態のシステムまたは方法によれば、含水率や性状が安定しない汚泥であっても、安定して2次脱水機に供給することができる。
【0041】
次に、本発明の第2の実施形態を、
図2および
図3に基づいて説明する。第2の実施形態も、スラリーとして排水処理設備等から生じる汚泥を電気浸透脱水機に供給するものである。第2の実施形態では、汚泥供給機30の供給口31が、幅方向に間隔をあけて設けられた複数のノズル31である点が、第1の実施形態と異なる。
【0042】
図2は、汚泥搬送系統20、汚泥供給機30と電気浸透脱水機40を示している。
図2において、第1の実施形態と同じ構成要素には
図1と同じ符号を付した。汚泥供給機30は複数の汚泥供給口31を有する。ポンプ22によって圧送された汚泥は、複数の汚泥供給口31から、紐状、リボン状などの筋状に吐出されて、電気浸透脱水機40へ供給される。汚泥供給機30からの汚泥11は、受入部46に吐出され、次いで下流の押さえロール41とフィルター44およびベルト43に挟み込まれてシート状に成形され、次いで回転式ドラム42とフィルター44およびベルト43が対向する脱水部46へと進入する。
【0043】
次に、第2の実施形態の汚泥供給機30および電気浸透脱水機40の詳細を説明する。
【0044】
図3は汚泥供給機30の構成を、電気浸透脱水機40の一部とともに示している。
図3において、汚泥供給機30は、前記ポンプ22によって圧送された汚泥が到着するヘッダー管32と、ヘッダー管32から分岐して、幅方向に間隔をあけて設けられた汚泥供給口として複数のノズル31とを有する。
図3のノズル31は直管状で、ヘッダー管32から分岐した配管35が直管状の途中に接続されている。各ノズル31は吐出量調整弁33と、後端に開閉自在な蓋34を備えている。
【0045】
図3において、ノズル31の形状は特に限定されない。ノズル31の吐出断面の形状は、円形、長円形、矩形、スリット状など各種形状を採用することができる。好ましくは、吐出断面の縦横比は1に近いものとする。個々のノズル31から吐出される汚泥の量が、幅方向の位置によってばらつくことがないからである。供給口31がノズルであることによって、汚泥がノズル31を通過する際に適度な吐出抵抗が生じ、吐出量が汚泥の流動性の影響を受けにくくなり、複数のノズル31からの吐出量のバランスが変動しにくくなる。
【0046】
ノズル31の大きさは特に限定されないが、吐出された汚泥の厚みが押さえロール41の径よりも十分小さいことが好ましく、具体的には、吐出された汚泥の最上面が押さえロール41の回転中心よりも低い位置にあることが好ましい。より具体的には、吐出された汚泥の厚みをh、押さえロール41の半径をR、押さえロール41とフィルター44の隙間をCとしたときに、h<R+Cの関係が成立していることが好ましい。これによって、シート成形手段の隙間、すなわちフィルター44と押さえロール41の間に入り込みにくい汚泥の塊が吐出されることを抑制できるからである。本実施形態では、汚泥に圧力が印加されているので、ノズル31の開口が小さくても汚泥を問題なく吐出することができる。
【0047】
ノズル31の数は、設備の大きさ、電気浸透脱水部に供給される汚泥の幅、汚泥の粘性などに応じて決めることができるが、間隔をあけて設けられているので2以上であり、3以上であることが好ましい。複数の供給口31を設けることによって、幅方向の予め設定した位置に汚泥を吐出することができ、幅方向の汚泥量の分布をより一様なものとすることができる。発明者らの実験によると、幅500mmでは3本、幅2000mmでは5本のノズルを用いることで、良好な結果が得られた。
【0048】
ノズル31相互の間隔は、特に限定されないが、個々のノズル31から吐出された汚泥が独立した筋を形成する程度に大きいことが好ましい。開口が幅方向に長いスリット状である場合でも、隣合うノズル31の間隔は、開口の短辺または短径よりも大きくすることが好ましい。
【0049】
それぞれのノズル31には、吐出量調整弁33が設けられていることが好ましい。これにより、電気浸透脱水部に供給される汚泥量の幅方向の分布をより綿密に調整することができる。吐出量調整弁としては、ボール弁、ニードル弁、グローブ弁などの公知のものを用いることができる。
【0050】
図3では、直管状のノズル31の後端に開閉自在な蓋34が設けられている。これにより、運転中は蓋34を閉じ、清掃時には蓋34を開いてノズル31内部を容易に清掃することができる。
【0051】
汚泥11は、汚泥供給機30から、電気浸透脱水機40の受入部46で、ベルト43上に支持されたフィルター44上に、複数の筋状に吐出される。好ましくは、汚泥11は、押さえロール41の近くに吐出される。供給口31としてノズルを用いると、押さえロールのより近くに汚泥を吐出することが可能となるので、この点でも好ましい。
【0052】
汚泥受入部47の下流には、ベルト43、フィルター44、およびフィルター44の上方に間隔をあけて配置された押さえロール41によって構成される厚み調整手段に進入して、シート状に成形・延伸される。
【0053】
押さえロール41と下方のフィルター44およびベルト43との間隔は、調整可能とする。押さえロール41が複数ある場合には、汚泥の進行方向に徐々に間隔を狭くしていくと、汚泥の進入がスムーズになり、最後の押さえロールの位置で汚泥厚みを決定することができるので好ましい。
【0054】
また、好ましくは、押さえロール41のうち、少なくとも1本は、ベルト43、フィルター44とは別の駆動装置を持ち、その回転速度をコントロールできるようにする。押さえロール41の周速を、フィルター44の線速よりもわずかに大きくすることで、汚泥11をより強く、スムーズに挟み込むことができる。
【0055】
以上のとおり、ポンプ22によって圧送された汚泥11を幅方向に分割してノズル31から吐出することにより、汚泥供給量の幅方向の分布をより一様なものとすることができる。そして、その結果として、汚泥をより均一なシート状で電気浸透脱水機40の脱水部46に供給することができる。そして、ポンプ吐出圧が上昇した場合に、汚泥11に加水して、汚泥供給上の問題を予防できることは第1の実施形態と同様である。
【0056】
次に、本発明の第3の実施形態を、
図4および
図5に基づいて説明する。第3の実施形態は、スラリーとして排水処理設備等から生じる汚泥をドラムドライヤーに供給するものである。第3の実施形態では、脱水機がドラムドライヤーである点が、第2の実施形態と異なる。
【0057】
図4は、汚泥搬送系統20、汚泥供給機30とドラムドライヤー50を示している。
図4において、第2の実施形態と同じ構成要素には
図2と同じ符号を付した。汚泥供給機30は複数の汚泥供給口31を有する。ポンプ22によって圧送された汚泥は、汚泥供給口31から、紐状、リボン状などの筋状に吐出されて、ドラムドライヤー50へ供給される。汚泥11は、高温のドラム52表面に接して加熱され、乾燥される。
【0058】
図5は、ドラムドライヤー50に汚泥11が供給される部分を示している。汚泥11は、ノズル31から、ドラム52上に複数の筋状に吐出される。次いで汚泥11は、ドラム52の上方に間隔をあけて設けられた2本の押さえロール58a、58bによってドラム52の表面にシート状に広げられる。ドラムドライヤーでは、必ずしも汚泥をシート状に成形する必要はないが、汚泥がより広い面積でドラムと接することにより、脱水効率が向上する。なお、ロール59は、押さえロール58aにスムーズに入り込まなかった汚泥11がこぼれ落ちるのを防ぐために、汚泥の進行方向とは逆の位置に配置されたものである。
【0059】
第3の実施形態においても、ポンプ吐出圧が上昇した場合に、汚泥11に加水して、汚泥供給上の問題を予防できることは第1および第2の実施形態と同様である。
【0060】
次に、本発明者らが行った、汚泥の含水率と供給トラブルの関係を確認するための汚泥供給実験について説明する。
【0061】
供給実験は、
図4および
図5に示した第3の実施形態の設備を用いて行った。実験には、し尿処理場で発生する汚泥を遠心分離法によって含水率約82〜86%にまで脱水した汚泥を用いた。ドラムドライヤー50は、直径1000mm、幅2000mmのドラム52と、ドラム52の上方に間隔をあけて設けられた2本の押さえロール58a、58bを有する。図示しないポンプによって圧送された汚泥11を、ノズル31から押さえロール58aの手前に吐出した。ノズル31は内径が約25mm、長さ200mmのものを、ヘッダー管32から分岐して幅方向に5本を設けた。ポンプの出口には、図示しない圧力計を設けて、ポンプ吐出圧を測定した。汚泥11は、乾燥にともなって体積が収縮するが、押さえロール58a、58bの位置で厚さ約20〜30mmとした。
【0062】
図6に5回の実験の結果を示す。各実験はそれぞれ異なる日に約6時間の連続運転をしたものである。図の横軸は実験開始からの運転時間、縦軸はその時のポンプ吐出圧を示している。各実験における汚泥の含水率は81.8%から86.2%の範囲でばらついた。含水率が86.2%と比較的高かった5月12日の実験では、吐出圧はほぼ0.2MPa以下で安定していた。一方、含水率が85%以下となった4月11日、13日、14日、19日の実験では、吐出圧はほぼ倍の0.4MPa以上となり、最高で0.5MPaまで上昇した。また、4月13日の実験では、吐出圧は運転初期の0.3MPaから0.4MPa以上へと急激に上昇している。5回の実験のうち、4月11日、14日、19日の実験では、押さえロール58bの位置で汚泥詰まりが発生した。
【0063】
この実験結果では、汚泥の含水率が80%台半ばを境にしてわずか1〜2ポイント低下することでポンプ吐出圧が大きく上昇し、また供給障害が発生することがあった。しかしながら、汚泥の含水率は、この実験のように前段の設備から供給された時点でばらついていることが多いし、前段に1次脱水機を設けたとしても、汚泥の含水率(%)を1〜2ポイントの範囲で制御することは難しい。さらに汚泥の含水率がホッパー21に貯留中にも変化することは前述のとおりである。
【0064】
したがって、本実験結果からも、本発明の効果は明らかである。本発明では、汚泥の供給量を直接または間接に監視しながら、流動性が乏しくなったときには、供給する汚泥に加水することによって、供給障害を予防できる、例えば、
図6に示した場合では、ポンプ吐出圧が0.3MPaを超えると、加水を行うといった具合である。
【0065】
なお、脱水が予定される汚泥に加水することは、エネルギーのロスを伴う。しかし、含水率(%)においてわずか1〜2ポイントの上昇によって、後段の電気浸透脱水機への汚泥供給上のトラブルや電気浸透脱水機の効率低下を未然に防ぐことができるならば、全体としての汚泥処理効率の向上につながる可能性がある。この点について、例えば、汚泥の含水率を上記4月14日の実験の平均84.0%から、5月12日の実験の平均86.2%にまで2.2ポイント加水した場合のロスを試算した。ポンプで圧送される汚泥の容積および電気浸透脱水機で除去される水の質量が一定と仮定すると、汚泥を84%から68%に脱水する場合に比べて、汚泥を84%から86.2%に加水することにより、処理能力が15%低下し、脱水後の汚泥の含水率が68%から72%に4ポイント上昇するという結果が得られた。含水率70%程度の汚泥はもともと流動性がなく、この程度の含水率の変化は、脱水後の汚泥の搬送設備を運転する上で問題を引き起こさない。一方、加水することによるメリットは、供給口や押さえロール部での詰まり、それに伴う装置の運転停止、清掃作業、作業員の負担増、事故の危険性などの可能性を低減できることである。
【0066】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0067】
例えば、上記実施形態では、スラリーとして排水処理設備等から生じる汚泥を処理する場合について説明したが、本発明の対象とするスラリーはこれに限定されない。本発明は、汚泥を対象とする場合も、し尿処理場、下水処理場、製紙工場、鉱工業における製錬工場など、さまざまな工程で発生する汚泥の処理に利用することができる。さらに、本発明は、汚泥以外のスラリーを対象として、食品製造分野における有用成分の分離・抽出、醤油等を回収するためのろ過・圧搾、高分子製造分野におけるポリマー粒子の分離・回収など、多くの製造工程に利用することができる。なお、産業分野によっては、「1次脱水・2次脱水」の語に代えて「予備脱水・本脱水」等の語が用いられる場合がある。そのような場合でも、脱水後のスラリーを次の脱水機に供給する工程で含水率や性状が安定せず、汚泥の場合と同様の問題が発生する場合には、本発明の供給システムまたは方法を用いることができる。スラリーの含水率と流動性の関係はスラリーの種類等に依存するが、1次脱水処理されたスラリーの含水率は一般的に80〜90%であり、このようなスラリーに対して本発明の供給システムまたは方法を好適に用いることができる。
【0068】
また、上記実施形態では1軸ポンプなどの圧送ポンプを用いる例を示したが、その代わりに、ホッパーに空気圧をかけて、汚泥を空気圧送してもよい。また、上記実施形態では汚泥供給機として、圧力が印加された汚泥を供給口から吐出する例を示したが、汚泥が自重によって供給口を通って2次脱水機に落下するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態の電気浸透脱水機では、
図1を参照して、ベルト43と別体のフィルター44を用いている。そのため、汚泥11はベルト43と重ね合わされたフィルター44を介してベルト43の上に吐出される。しかし、ベルトとフィルターの両方の機能を有するベルトを用いる場合には、フィルターを省略してもよい。例えば、特開2011−177692号公報には、かかる濾布を省略した電気浸透脱水機が開示されている。
【0070】
また、上記実施形態では、電気浸透脱水機としてドラムとベルトを用いるドラム式のものを用いる例を示したが、その代わりに、フラットベッド式の電気浸透脱水機を用いてもよい。フラットベッド式の電気浸透脱水機は、コンベアベルトの平坦な部分に汚泥層を載せ、平板状の陽極を押し下げて電気浸透脱水を行い、陽極を上昇させた状態でコンベアベルトを陽極板の長さの分だけ移動させるものである。