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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-201275(P2015-201275A)
(43)【公開日】2015年11月12日
(54)【発明の名称】筒型電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20151016BHJP
【FI】
   H01M2/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-78127(P2014-78127)
(22)【出願日】2014年4月4日
(71)【出願人】
【識別番号】503025395
【氏名又は名称】FDKエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】安西 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】都築 秀典
(72)【発明者】
【氏名】國谷 繁之
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011BB03
5H011CC06
5H011DD05
5H011KK01
(57)【要約】
【課題】筒型電池の耐衝撃性を向上する。
【解決手段】発電要素が収納される有底円筒状の正極缶11と、正極缶11の底面30の中央に突設される正極端子(正極端子部12)と、開口部を封口するとともに負極端子を形成する負極端子板32とを備える筒型電池において、正極缶11の底面30の周縁に沿って環状に第1リブ111を形成し、また、正極缶11の底面30に、第1リブ111と同心の、正極端子よりも大径かつ第1リブ111よりも小径の第2リブ112を形成する。また正極缶11の底面30に、底面30の中心から放射状に延びる線に沿って帯状に延びる第3リブ113を形成する。第3リブ113は、正極缶11の底面30の少なくとも正極端子と第2リブ112との間の領域に形成する。また、第3リブ113は、正極缶11の底面30の少なくとも第2リブ112と第1リブ111との間の領域に形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素が収納される有底円筒状の正極缶と、
前記正極缶の底面中央に前記正極缶の外側に向かって突設される正極端子と、
前記開口部を封口するとともに負極端子を形成する負極端子板と
を備える筒型電池であって、
前記正極缶の底面の周縁に沿って環状の第1リブが形成されるとともに、前記正極缶の底面に、前記第1リブと同心の、前記正極端子よりも大径かつ前記第1リブよりも小径の環状の第2リブが形成されている
ことを特徴とする筒型電池。
【請求項2】
前記正極缶の底面に、当該底面の中心から放射状に延びる線に沿って帯状に延びる第3リブが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の筒型電池。
【請求項3】
前記正極缶の底面の少なくとも前記正極端子と前記第2リブとの間の領域に前記第3リブが形成されていることを特徴とする請求項2に記載の筒型電池。
【請求項4】
前記正極缶の底面の少なくとも前記第2リブと前記第1リブとの間の領域に前記第3リブが形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の筒型電池。
【請求項5】
前記第3リブの少なくとも一部は前記正極缶の内側に向かって突設されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の筒型電池。
【請求項6】
前記第1リブの少なくとも一部は前記正極缶の内側に向かって突設されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の筒型電池。
【請求項7】
前記第2リブの少なくとも一部は前記正極缶の内側に向かって突設されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の筒型電池。
【請求項8】
前記第2リブの径が前記正極缶の底面の径の約半分であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の筒型電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒型電池の耐衝撃性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、単1型アルカリ電池の正極端子部の耐衝撃性を改善することを目的として、正極缶の底部の中央に正極端子部を突設し、底部の周縁部にラベル貼付面を水平に形成し、正極缶の底部に数本のテーパー状の補強リブを、それぞれ正極端子部を中心として放射状に配設することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−283148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アルカリ電池等の筒型電池にあっては、落下等の衝撃により正極缶の底面が損傷すると内部に充填されている合剤に割れが生じる等して電池性能が低下することがある。また衝撃により電池内部に短絡が発生するとそれにより生じたガスにより電池内圧が上昇して正極缶が膨らみ、電子機器の損傷や電子機器からの電池の取り出しが困難になる等の問題が生じることがある。また、特許文献1に記載の方法によれば、正極端子部の耐衝撃性の向上を期待できるが、正極缶の絞り工程等において缶変形が生じることがある。
【0005】
本発明は、こうした観点からなされたものであり、筒型電池の耐衝撃性を向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一つは、発電要素が収納される有底円筒状の正極缶と、前記正極缶の底面中央に前記正極缶の外側に向かって突設される正極端子と、前記開口部を封口するとともに負極端子を形成する負極端子板とを備える筒型電池であって、前記正極缶の底面の周縁に沿って環状の第1リブが形成されるとともに、前記正極缶の底面に、前記第1リブと同心の、前記正極端子よりも大径かつ前記第1リブよりも小径の環状の第2リブが形成されていることを特徴としている。
【0007】
また本発明の他の一つは、上記筒型電池であって、前記正極缶の底面に、当該底面の中心から放射状に延びる線に沿って帯状に延びる第3リブが形成されていることを特徴としている。
【0008】
また本発明の他の一つは、上記筒型電池であって、前記正極缶の底面の少なくとも前記正極端子と前記第2リブとの間の領域に前記第3リブが形成されていることを特徴としている。
【0009】
また本発明の他の一つは、上記筒型電池であって、前記正極缶の底面の少なくとも前記第2リブと前記第1リブとの間の領域に前記第3リブが形成されていることを特徴としている。
【0010】
また本発明の他の一つは、上記筒型電池であって、前記第3リブの少なくとも一部は前記正極缶の内側に向かって突設されていることを特徴としている。
【0011】
また本発明の他の一つは、上記筒型電池であって、前記第1リブの少なくとも一部は前記正極缶の内側に向かって突設されていることを特徴としている。
【0012】
また本発明の他の一つは、上記筒型電池であって、前記第2リブの少なくとも一部は前記正極缶の内側に向かって突設されていることを特徴としている。
【0013】
また本発明の他の一つは、上記筒型電池であって、前記第2リブの径が前記正極缶の底面の径の約半分であることを特徴としている。
【0014】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、筒型電池の耐衝撃性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】アルカリ電池1の構成を示す図であり、(a)はアルカリ電池1の断面図、(b)はアルカリ電池1を正極側から見た平面図である。
図2A】従来例として示すアルカリ電池1を正極側から見た平面図である。
図2B】比較例として示すアルカリ電池1を正極側から見た平面図である。
図2C】実施例1として示すアルカリ電池1を正極側から見た平面図である。
図2D】実施例2として示すアルカリ電池1を正極側から見た平面図である。
図2E】実施例3として示すアルカリ電池1を正極側から見た平面図である。
図3】試験2で用いたアルカリ電池1の構成を示す図である。
図4A】変形例1として示すアルカリ電池1を正極側から見た平面図である。
図4B】変形例2として示すアルカリ電池1を正極側から見た平面図である。
図4C】変形例3として示すアルカリ電池1を正極側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1(a)に筒型電池の一例として示す円筒形アルカリ電池(LR20型(単一形)アルカリ電池。以下、アルカリ電池1と称する。)の断面図を、図1(b)にアルカリ電池1をその正極側から眺めた平面図を示している。尚、図1(a)は、アルカリ電池1を図1(b)のA−A’線で切断したときの縦断面図(円筒軸の延長方向を上下(縦)方向としたときの断面図)である。
【0018】
同図に示すように、アルカリ電池1は、有底筒状の金属製の電池缶(以下、正極缶11と称する。)、正極缶11に挿入される正極合剤21、正極合剤21の内周側に設けられる有底円筒状のセパレータ22、セパレータ22の内周側に充填される負極合剤23、正極缶11の開口部に樹脂等の絶縁性の素材からなるガスケット35(絶縁体)を介して嵌着され、正極缶11の開口部を封口する負極端子板32、及び負極端子板32の内側にスポット溶接等によって固設される、真鍮等の金属製の素材からなる棒状の負極集電子31を備える。正極合剤21、セパレータ22、及び負極合剤23は、アルカリ電池1の発電要素を構成している。
【0019】
正極缶11は導電性の材質からなり、例えば、ニッケルメッキ鋼板等の金属材をプレス加工したものが用いられる。正極缶11は、正極集電体並びに正極端子としての機能を兼ねており、その底部には正極缶11の外側に向かって突設された略円筒状の正極端子部12が一体形成されている。
【0020】
正極缶11の外周面は、絶縁性の外装ラベル13で被覆されている。外装ラベル13は、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET: PolyEthylene Terephthalate)、ポリ塩化ビニル(PVC:PolyVinyl Chloride)等の絶縁性、熱収縮性の樹脂素材からなる。外装ラベル13は、例えば、当該樹脂素材からなるフィルムを正極缶11の周囲に巻き付けた後、これを加熱収縮させることにより、正極缶11に密着させて設けられる。
【0021】
正極合剤21は、正極活物質としての電解二酸化マンガン(EMD)、導電材としての黒鉛、及び水酸化カリウム(KOH)を主成分とする電解液を、ポリアクリル酸などのバインダーとともに混合し、その混合物を圧延、解砕、造粒、分級等の工程にて処理した後、圧縮し環状に成形したものである。同図に示すように、正極缶11の内部には、正極缶11の円筒軸と同軸となるように、複数の環状の正極合剤21が上下方向に積層されて圧入されている。同図に示すアルカリ電池1の場合は3つの正極合剤21を正極缶11に圧入している。
【0022】
負極合剤23は、負極活物質としての亜鉛合金粉末をゲル化したものである。亜鉛合金粉末は、ガスアトマイズ法や遠心噴霧法によって造粉されたものであり、亜鉛、ガスの発生の抑制(漏液防止)等を目的として添加される合金成分(ビスマス、アルミニウム、インジウム等)、及び電解液としての水酸化カリウム(KOH)を含む。負極集電子31は、負極合剤23の中心部に貫入されている。
【0023】
負極端子板32は、その周縁がガスケット35を挟んで正極缶11の開口部の縁部とともに内側に折り曲げられてカシメ加工されることにより正極缶11の開口部を封口している。上記カシメ加工は、例えば、正極缶11の底面の最外周部を支持しつつ、正極缶11を当該正極缶11の外径よりも細い径の金型に挿入することにより行われる。
【0024】
図1(a)又は図1(b)に示すように、本実施形態のアルカリ電池1は、電池落下時等における正極缶11の耐衝撃性の向上、正極缶11のへこみや合剤割れによる電池性能の低下防止、電池内圧上昇時の膨張抑制等を図るべく、正極缶11の底面30に、正極缶11の周縁に沿って正極缶11の外側に突出させて形成された円環状の第1リブ111と、正極缶11の底面30に正極缶11の外側に突出させて形成された、第1リブ111と同心の、正極端子部12よりも大径かつ第1リブ111よりも小径の円環状の第2リブ112を設けている。
【0025】
正極缶11の底面30に設けた上記第1リブ111及び第2リブ112による耐衝撃性の効果を検証すべく、本発明者らは、正極缶11の底面30の形状が異なる複数種のアルカリ電池1を作製し、それらについて試験1(落下試験、放電試験)、試験2(絞り加工時の正極缶変形確認試験)、及び試験3(電池短絡時の総高変化確認試験)を行った。図2A図2Eに、作製した各アルカリ電池1を正極缶11の底面30の方向から眺めた平面図を示す。
【0026】
図2Aは、従来例として作製したアルカリ電池1の正極缶11の底面30の平面図である。同図に示すように、このアルカリ電池1の底面30には、当該底面30の径の約半分の径の円環状の第2リブ112が設けられている。尚、このアルカリ電池1の底面30の厚さは0.30mmである。
【0027】
図2Bは、比較例として作製したアルカリ電池1の正極缶11の底面30の平面図である。同図に示すように、このアルカリ電池1の底面30には、正極端子部12の中心から放射状に延びる線に沿って所定幅で帯状に延びる第3リブ113のみが設けられている。尚、このアルカリ電池1の底面30の厚さは0.30mmである。
【0028】
図2Cは、実施例1,3として作製したアルカリ電池1の正極缶11の底面30の平面図である。このアルカリ電池1の底面30の形状は図1(b)に示した底面30と同様であり、正極缶11の周縁に沿って正極缶11の外側に突出させて形成された円環状の第1リブ111と、正極缶11の外側に突出させて形成された、第1リブ111と同心の、正極端子部12よりも大径かつ第1リブ111よりも小径の円環状の第2リブ112とを有する。実施例1と実施例3のアルカリ電池1の違いは正極缶11の底面30の厚さである。実施例1のアルカリ電池1の底面30の厚さは0.30mmであり、実施例3のアルカリ電池1の底面30の厚さは0.25mmである。
【0029】
図2Dは、実施例2,4として作製したアルカリ電池1の正極缶11の底面30の平面図である。同図に示すように、このアルカリ電池1の正極缶11の底面30には、正極缶11の周縁に沿って正極缶11の外側に突出させて形成した円環状の第1リブ111と、正極缶11の底面30に正極缶11の外側に突出させて形成した、第1リブ111と同心の、正極端子部12よりも大径かつ第1リブ111よりも小径の円環状の第2リブ112と、外側に突出させて形成した、正極端子部12の中心(正極缶11の底面30の中心)から放射状に延びる線に沿って正極端子部12の中心から所定幅で帯状に延びる第3リブ113とが設けられている。実施例2と実施例4の違いは正極缶11の底面の厚さである。実施例2のアルカリ電池1の正極缶11の底面30の厚さは0.30mm、実施例4のアルカリ電池1の正極缶11の底面30の厚さは0.25mmである。
【0030】
図2Eは、実施例5,6として作製したアルカリ電池1の正極缶11の底面30の平面図である。同図に示すように、このアルカリ電池1の正極缶11の底面30には、正極缶11の周縁に沿って正極缶11の外側に突出させて形成された円環状の第1リブ111と、正極缶11の底面30に正極缶11の外側に突出させて形成された、第1リブ111と同心の、正極端子部12よりも大径かつ第1リブ111よりも小径の円環状の第2リブ112と、外側に突出させて形成された、正極端子部12の中心(正極缶11の底面30の中心)から放射状に延びる線に沿って所定幅で帯状に延びる第3リブ113a,bとが設けられている。図2Dのアルカリ電池1との違いは、正極端子部12と第2リブ112との間に設けられている第3リブ113aが延びる方向と、第2リブ112と第1リブ113の間に設けられている第3リブ113bが延びる方向とが一致していない点(互いに45度ずれている。)である。実施例2と実施例4の違いは正極缶11の底面の厚さである。実施例2のアルカリ電池1の正極缶11の底面の厚さは0.30mm、実施例4のアルカリ電池1の正極缶11の底面の厚さは0.25mmである。
【0031】
尚、電池サイズの違いによる影響を検証すべく、試験は、従来例、比較例、及び実施例1〜6の夫々について、いずれもLR20型、及び図1と同様の構造からなるLR14型の2タイプの電池を作製して行った。図2A図2Eに符号d1〜d4で示した寸法を表1に示す。尚、正極缶11の底面を基準とするリブの高さは、第1リブ111、第2リブ112、及び第3リブ113のいずれについても0.5mmとした。
【0032】
【表1】
<試験1(落下試験、放電試験)>
落下試験は、正極端子部12(正極缶11の底面30)が地面の方向を向くように(正極缶11の軸が地面に鉛直になるように)アルカリ電池1を所定の高さ(落下高さ)に保持し、その位置からアルカリ電池1を地面に落下させ、落下後のアルカリ電池1の状態(へこみの有無、放電性能)を観察乃至測定することにより行った。試験は、各アルカリ電池1について落下高さ及び落下回数を変えた複数パターン(高さ:0.5m,1.0m,2.0m、落下回数:1回,5回,10回)について行った。
【0033】
放電試験は、LR20型については、10Ωの抵抗を接続して1日あたり4時間の条件で放電を行い、放電を開始してから終止電圧(0.9V)に達するまでの時間を測定することにより行った。また、LR14型については、20Ωの抵抗を接続して1日あたり4時間の条件で放電を行い、放電を開始してから終止電圧(0.9V)に至るまでの時間を測定することにより行った。
【0034】
表2にLR20型のアルカリ電池1について行った試験の結果を、表3にLR14型のアルカリ電池1について行った試験の結果を夫々示す。尚、表中、「へこみ」の欄には、落下後のアルカリ電池1の正極缶11にへこみが観察された場合は「×」を、へこみの発生が観察されなかった場合は「○」を記載した。また、「放電時間(hr)」の欄には「従来例」のアルカリ電池1について落下前の放電時間を100%とした場合における相対値を記載した。
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
表2及び表3に示すように、従来例についてはLR20型及びLR14型のいずれについても正極缶11にへこみが観察されたが、比較例及び実施例1〜6については、いずれの試験条件(落下高さ、落下回数)についてもへこみは観察されなかった。また、へこみが観察された従来例のアルカリ電池1については放電時間が短くなっているが、比較例及び実施例1〜6についてはいずれの試験条件(落下高さ、落下回数)についても放電時間は殆ど変化が見られなかった。尚、へこみが観察された従来例のアルカリ電池1の放電時間が短くなるのは電池内部に生じた合剤割れによるものと考えられる。
【0037】
<試験2(絞り加工時の正極缶変形確認試験)>
絞り加工時の正極缶変形確認試験は、従来例、比較例、及び実施例1〜6の夫々に対応する底面形状を有する正極缶11を作製し、夫々について絞り加工により正極缶11の開口部を負極端子板32により封口することにより行った。尚、絞り加工時に正極缶11が正極合剤21から受ける応力の影響を避けるため、図3に示すように、正極合剤21は正極缶11の底面30との間に隙間50が形成されるように正極缶11に充填した。
【0038】
表4にLR20型のアルカリ電池1について行った試験の結果を、表5にLR14型のアルカリ電池1について行った試験の結果を夫々示す。試験は、従来例、比較例、及び実施例1〜6の夫々について50本ずつ行った。表中の数値は絞り加工後に変形が確認された正極缶11(アルカリ電池1)の本数である。
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
表4及び表5に示すように、従来例及び比較例については絞り加工後の正極缶11に変形が観察されたが、実施例1〜実施例6についてはいずれも変形は観察されなかった。
【0041】
<試験3(電池短絡時の総高変化確認試験)>
電池短絡時の総高変化確認試験は、従来例、比較例、及び実施例1〜6のアルカリ電池1について、24時間短絡後に短絡を停止し、短絡を停止してから一月後のアルカリ電池1の総高(正極缶11の底面の最大突出部から負極端子板32の最大突出部までの正極缶11の円筒軸に沿った長さ)の変化を測定することにより行った。表6にLR20型のアルカリ電池1について行った試験の結果を、表7にLR14型のアルカリ電池1について行った試験の結果を夫々示す。
【0042】
【表6】
【0043】
【表7】
表6及び表7に示すように、実施例1〜6については、従来例及び比較例に比べて電池総高の変化が少なかった。また実施例2,4(図2D)及び実施例5、6(図2E)については、実施例1,3(図2C)に比べて電池総高の変化が少なく、短絡時における電池総高の変化をより確実に抑制できることがわかった。尚、電池総高の変化は、短絡により電池内部に発生したガスにより電池の内圧が上昇することにより生じると考えられる。
【0044】
<効果>
以上の通り、実施例1,3(図2C)のように、正極缶11の底面30に、正極缶11の周縁に沿って正極缶11の外側に突出させて形成された円環状の第1リブ111と、正極缶11の外側に突出させて形成された、第1リブ111と同心の、正極端子部12よりも大径かつ第1リブ111よりも小径の円環状の第2リブ112を設けることにより、正極缶11のへこみや合剤割れによる電池性能の低下防止、電池内圧上昇時の膨張抑制等を図ることができることがわかった。
【0045】
また実施例2、4(図2D)及び実施例5,6(図2E)のように、正極缶11の底面30に、正極缶11の周縁に沿って正極缶11の外側に突出させて形成した円環状の第1リブ111と、正極缶11の底面30に正極缶11の外側に突出させて形成した、第1リブ111と同心の、正極端子部12よりも大径かつ第1リブ111よりも小径の円環状の第2リブ112と、外側に突出させて形成した、正極端子部12の中心(正極缶11の底面30の中心)から放射状に延びる線に沿って所定幅で帯状に延びる第3リブ113とを設けた場合も、上記と同様の効果が得られることを確認できた。また実施例2、4(図2D)及び実施例5,6(図2E)の場合は実施例1,3(図2C)の場合に比べて短絡時の電池総高の変化をより確実に抑制できることがわかった。
【0046】
<変形例>
図2C図2Eに示したもの以外にも、同様の効果を奏することが可能な正極缶11の底面30の形状として、例えば、図4A図4Cに示すもの(変形例1〜3)が考えられる。変形例1〜3は、実施例2,4(図2D)又は実施例5,6と同様、正極缶11の周縁に沿って正極缶11の外側に突出させて形成した円環状の第1リブ111と、正極缶11の底面30に正極缶11の外側に突出させて形成した、第1リブ111と同心の、正極端子部12よりも大径かつ第1リブ111よりも小径の円環状の第2リブ112と、外側に突出させて形成した、正極端子部12の中心(正極缶11の底面30の中心)から放射状に延びる線に沿って所定幅で帯状に延びる第3リブ113とを設けている。但し、実施例2,4と異なり、変形例1については第2リブ112と第1リブ113との間の領域には第3リブ113を設けていない。また実施例5,6と異なり、変形例2については、正極端子部12と第2リブ112との間の領域には第3リブ113を設けていない。また、変形例3については、実施例5,6に比べて第3リブ113の本数を減らしている。
【0047】
ところで、以上の説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0048】
例えば、本発明は、マンガン電池等、円筒形状の電池缶を集電体とする他の種類の電池に広く適用することができる。
【0049】
また、前述した実施形態では、第1リブ111、第2リブ112、及び第3リブ113のいずれも正極缶11の外側に向けて突出させているが、これらの全部又は一部を正極缶11の内側に向けて突出させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 アルカリ電池、11 正極缶、111 第1リブ、112 第2リブ、113 第3リブ、12 正極端子部、21 正極合剤、22 セパレータ、23 負極合剤、30 底面、31 負極集電子、32 負極端子板、35 封口ガスケット
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4A
図4B
図4C