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  • 特開2015201360-絶縁電線 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-201360(P2015-201360A)
(43)【公開日】2015年11月12日
(54)【発明の名称】絶縁電線
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/02 20060101AFI20151016BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20151016BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20151016BHJP
   C08L 23/28 20060101ALI20151016BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20151016BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20151016BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20151016BHJP
   C08F 265/08 20060101ALI20151016BHJP
   C08F 279/02 20060101ALI20151016BHJP
   C08F 255/06 20060101ALI20151016BHJP
   C08F 255/02 20060101ALI20151016BHJP
【FI】
   H01B7/02 F
   H01B3/44 B
   H01B3/44 D
   H01B3/44 P
   C08L27/06
   C08L23/28
   C08L51/06
   C08L51/04
   C08K3/00
   C08F265/08
   C08F279/02
   C08F255/06
   C08F255/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-79847(P2014-79847)
(22)【出願日】2014年4月9日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野中 毅
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
5G305
5G309
【Fターム(参考)】
4J002BD03W
4J002BD04W
4J002BD05W
4J002BD06W
4J002BN04X
4J002BN08W
4J002BN14X
4J002BN15X
4J002DE076
4J002DE266
4J002FD016
4J002GN00
4J002GQ01
4J026AC01
4J026AC02
4J026AC12
4J026BA43
4J026BB01
4J026DB05
4J026DB13
4J026DB24
4J026DB25
4J026DB32
4J026GA08
4J026GA09
5G305AA02
5G305AB17
5G305AB40
5G305CA01
5G305CA37
5G305CA40
5G305CA53
5G305CA54
5G305CD01
5G309RA04
5G309RA06
5G309RA07
5G309RA08
5G309RA10
5G309RA12
(57)【要約】
【課題】可塑剤のブルーミング、他の絶縁電線が有する絶縁体への可塑剤の移行を抑制しつつ、柔軟性を向上させることが可能であり、良好な耐熱性を有する絶縁電線を提供する。
【解決手段】絶縁電線1は、導体2と、導体2の外周を被覆する絶縁体3とを有している。絶縁体3は、塩素含有樹脂と、主鎖ポリマーに不飽和アルコキシシラン化合物がグラフトされてなるシラングラフトマーとを含む組成物の水架橋体より構成されている。上記シラングラフトマーは、主鎖ポリマーに対する不飽和アルコキシシラン化合物のグラフト量が1質量%以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、該導体の外周を被覆する絶縁体とを有しており、
上記絶縁体は、
塩素含有樹脂と、主鎖ポリマーに不飽和アルコキシシラン化合物がグラフトされてなるシラングラフトマーとを含む組成物の水架橋体より構成されており、
上記シラングラフトマーは、上記主鎖ポリマーに対する上記不飽和アルコキシシラン化合物のグラフト量が1質量%以上であることを特徴とする絶縁電線。
【請求項2】
上記主鎖ポリマーは、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、および、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線。
【請求項3】
上記塩素含有樹脂は、塩化ビニル樹脂、および/または、塩素化ポリエチレンであることを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁電線。
【請求項4】
上記不飽和アルコキシシラン化合物は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、および、アリルトリブトキシシランからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁電線。
【請求項5】
上記組成物は、上記塩素含有樹脂100質量部に対して上記シラングラフトマーを1質量部〜100質量部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁電線。
【請求項6】
上記組成物は、フィラーを含有しており、かつ、上記塩素含有樹脂100質量部に対して上記シラングラフトマーを1質量部〜180質量部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両や電気・電子機器には、導体と、導体の外周を被覆する絶縁体とを有する絶縁電線が使用されている。絶縁体の材料としては、一般に、可塑剤が配合されてなる塩化ビニル樹脂が多く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、可塑剤、無機フィラー、酸化防止剤が配合されてなる塩化ビニル樹脂を絶縁体として用いた絶縁電線が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−207973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術は、以下の点で問題がある。すなわち、塩化ビニル樹脂に可塑剤が配合されてなる絶縁体を有する従来の絶縁電線は、比較的細径のものが多い。近年では、パワーケーブル等、比較的太径の絶縁電線が必要とされている。しかし、従来の絶縁体は、太径の絶縁電線に適用した場合に、柔軟性が不足するという問題がある。
【0006】
従来の絶縁電線における絶縁体の柔軟性を向上させるため、可塑剤の配合量を増加させる方法が考えられる。しかし、可塑剤の増量は、絶縁体表面への可塑剤のブルーミングを生じさせる。また、ハーネス形状等のように絶縁電線が束で使用された場合に、他の絶縁電線が有する絶縁体に可塑剤が移行し、他の絶縁電線の特性が劣化する。
【0007】
また、自動車等に適用される絶縁電線は、種々の熱環境下で使用されることが多く、良好な耐熱性を有していることが望まれる。
【0008】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、可塑剤のブルーミング、他の絶縁電線が有する絶縁体への可塑剤の移行を抑制しつつ、柔軟性を向上させることが可能であり、かつ、良好な耐熱性を有する絶縁電線を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、導体と、該導体の外周を被覆する絶縁体とを有しており、
上記絶縁体は、
塩素含有樹脂と、主鎖ポリマーに不飽和アルコキシシラン化合物がグラフトされてなるシラングラフトマーとを含む組成物の水架橋体より構成されており、
上記シラングラフトマーは、上記主鎖ポリマーに対する上記不飽和アルコキシシラン化合物のグラフト量が1質量%以上であることを特徴とする絶縁電線にある。
【発明の効果】
【0010】
上記絶縁電線は、絶縁体が、塩素含有樹脂と、主鎖ポリマーに不飽和アルコキシシラン化合物がグラフトされてなるシラングラフトマーとを含む組成物の水架橋体より構成されている。つまり、上記絶縁電線は、絶縁体の柔軟化を図るため、低分子量の可塑剤に比べて分子量が大きく、かつ柔軟な高分子化合物である上記シラングラフトマーを上記組成物に用いている。そのため、上記絶縁電線は、可塑剤のブルーミング、他の絶縁電線が有する絶縁体への可塑剤の移行を抑制しつつ、柔軟性を向上させることができる。なお、上記絶縁電線は、電線特性の一つである絶縁体の耐摩耗性が、絶縁体の柔軟性の向上によって大きく低下するおそれもない。
【0011】
また、上記絶縁電線は、上記組成物中に、主鎖ポリマーに対する不飽和アルコキシシラン化合物のグラフト量が1質量%以上であるシラングラフトマーを含んでいる。そのため、上記組成物の水架橋体より構成される絶縁体は、シラングラフトマー同士による架橋度を向上させることができる。それ故、上記絶縁電線は、良好な耐熱性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の絶縁電線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記絶縁電線において、導体には、例えば、絶縁電線の柔軟性向上等の観点から、複数本の金属素線が撚り合わされてなる金属撚り線などを用いることができる。金属撚り線は、複数本の金属素線が一括で撚り合わされていてもよいし、複数回に分けて撚り合わされていてもよい。金属撚り線は、具体的には、複数本の金属素線が撚り合わされてなる副金属撚り線がさらに複数本撚り合わされてなる構成とすることができる。この場合には、導体断面積が比較的大きくなった場合でも、導体中に隙間が多く形成されるため、絶縁電線の柔軟性向上に有利である。上記導体を構成する金属(合金含む)としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を例示することができる。
【0014】
導体の導体断面積は、上記作用効果を十分に発揮できるなどの観点から、好ましくは3mm〜50mm、より好ましくは5mm〜50mmの範囲内から選択することができる。
【0015】
上記絶縁電線において、絶縁体は、塩素含有樹脂と、シラングラフトマーとを含む組成物の水架橋体より構成されている。
【0016】
塩素含有樹脂は、分子内に塩素原子を含有する樹脂である。塩素含有樹脂としては、具体的には、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレンなどを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。塩化ビニル樹脂としては、具体的には、ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体に塩化ビニルがグラフト重合されたグラフト共重合体などが挙げられる。
【0017】
市販品の塩素含有樹脂としては、具体的には、大洋塩ビ社製のリューロン、TE−650、TE−800、TE−1050、TE−1300、TG−100、TH−500、TH−640、TH−700、TH−800、TH−1000、TH−1300、TH−1700、TH−2500、TH−3800、昭和電工社製のエラスレン、信越化学社製のTK−500、TK−600、TK−700、TK−800、TK−1000、TK−1700E、TK−2000E、TK−2500LS、GR−800T、GR−1300T、GR−1300Sなどを挙げることができる。
【0018】
シラングラフトマーは、主鎖ポリマーに不飽和アルコキシシラン化合物がグラフトされてなる。シラングラフトマーは、1種または2種以上併用することができる。
【0019】
シラングラフトマーの主鎖ポリマーとしては、具体的には、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、および、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などを挙げることができる。これらは1種または2種以上併用することができる。また、主鎖ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。これら主鎖ポリマーを用いた場合には、絶縁体の柔軟性向上を確実なものとすることができる。また、シラングラフトマーの分子量を大きくしやすいため、シラングラフトマーのブルーミングや他の絶縁電線が有する絶縁体へのシラングラフトマーの移行を抑制しやすい。
【0020】
エチレン−αオレフィン共重合体としては、具体的には、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体などが挙げられる。これらは1種または2種以上併用することができる。市販品のエチレン−αオレフィン共重合体としては、具体的には、ダウ・ケミカル日本社製のエンゲージ8003、8100、8130、7270、7447、7467、インフューズ9000、9007、9010、9100などを挙げることができる。
【0021】
エチレン−プロピレン共重合体やエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体は、1種または2種以上併用することができる。市販品のエチレン−プロピレン共重合体やエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体としては、具体的には、三井化学社製の0045、1045、1070、2060M、X−3012P、3092PM、3072EPM、K9720、JSR社製のEP11、EP43、EP21、EP33、EP96などを挙げることができる。
【0022】
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体は、1種または2種以上併用することができる。アクリロニトリル−ブタジエン共重合体を2種以上併用する場合、具体的には、例えば、アクリロニトリル含有量が異なるものを組み合わせて用いることができる。市販品のアクリロニトリル−ブタジエン共重合体としては、具体的には、JSR社製のJSR N215SL、JSR N222L、JSR N230SV、JSR N241、JSR 250S、JSR N520、JSR N202S、日本ゼオン社製のNipol DN003、Nipol 1041、Nipol 1042、Nipol 1043、Nipol DN401などを挙げることができる。
【0023】
シラングラフトマーの主鎖ポリマーにグラフトされる不飽和アルコキシシラン化合物は、不飽和モノアルコキシシラン化合物、不飽和ジアルコキシシラン化合物、不飽和トリアルコキシシラン化合物のいずれであってもよい。また、これらは1種または2種以上併用することができる。不飽和アルコキシシラン化合物としては、より具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリブトキシシランなどを挙げることができる。これらは1種または2種以上併用することができる。また、これらは、比較的入手が容易であり、シラノール縮合触媒の存在下にてシラングラフトマー同士を水架橋させやすい。そのため、これらを用いた場合には、上記組成物の水架橋体が得やすくなる利点がある。
【0024】
ここで、上記シラングラフトマーは、主鎖ポリマーに対する不飽和アルコキシシラン化合物のグラフト量が1質量%以上とされている。上記グラフト量が1質量%未満になると、上記組成物の水架橋時にシラングラフトマー同士の架橋が十分に生じず、架橋度を向上させることができなくなり、良好な耐熱性を有する絶縁電線が得られなくなる。上記グラフト量は、良好な耐熱性が確保されやすくなる、シラングラフトマー同士の架橋によりブルーミングや他材への移行を抑制しやすくなるなどの観点から、好ましくは、1.3質量%以上、より好ましくは、1.4質量%以上、さらに好ましくは、1.5質量%以上とすることができる。一方、上記グラフト量が過度に大きくなると、同じシラングラフトマー内において隣接するグラフト側鎖同士が水架橋されるおそれが高くなり、不飽和アルコキシシラン化合物をグラフトさせた意義が小さくなる。また、無駄な不飽和アルコキシシラン化合物も必要となり、電線製造コストの増加を招く。よって、絶縁体の水架橋時に、絶縁体の耐熱性に寄与する架橋部位を効率よく形成させるなどの観点から、上記グラフト量は、15質量%以下であることが好ましい。上記グラフト量は、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下、さらにより好ましくは11質量%以下、さらにより一層好ましくは10質量%以下とすることができる。上記グラフト量は、H−NMR法により測定することができる。
【0025】
なお、シラングラフトマーは、例えば、主鎖ポリマーと不飽和アルコキシシラン化合物と有機過酸化物との混合物を、150℃〜160℃程度の温度で5分〜10分程度加熱することにより得ることができる。
【0026】
この際、有機過酸化物としては、具体的には、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、n−ブチル4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンなどを挙げることができる。これらは1種または2種以上併用することができる。市販品の有機過酸化物としては、具体的には、日油社製のパーヘキシルD、パークミルD、パーヘキサV、パーブチルD、パーブチルC、パーヘキサ25Bなどを挙げることができる。
【0027】
上記絶縁電線において、上記組成物は、シラノール縮合触媒を含有することができる。この場合には、組成物と水分とを接触させて水架橋が行われる際に、効率的にシラングラフトマー同士を架橋させ、架橋度を向上させることが可能となる。そのため、この場合には、良好な耐熱性を有する絶縁電線を得やすくなる。シラノール縮合触媒としては、具体的には、ジブチル錫ジラウレート、酢酸第一錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、チタン酸テトラブチルエステル、ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の有機金属化合物などを挙げることができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
【0028】
上記絶縁電線において、上記組成物は、塩素含有樹脂100質量部に対してシラングラフトマーを1質量部〜100質量部含有することができる。この場合には、絶縁体が、適度な柔軟性を有するとともに優れた耐摩耗性を発揮することができる。
【0029】
上記組成物におけるシラングラフトマーの含有量は、柔軟性と耐摩耗性とのバランス等の観点から、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上、さらにより好ましくは7質量部以上、さらにより一層好ましくは10質量部以上とすることができる。また、上記組成物におけるシラングラフトマーの含有量は、柔軟性と耐摩耗性とのバランス等の観点から、好ましくは98質量部以下、より好ましくは95質量部以下、さらに好ましくは90質量部以下とすることができる。
【0030】
上記絶縁電線において、上記組成物は、他にも、ポリオレフィン樹脂等を含有することができる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)などを挙げることができる。また、上記組成物は、上述した作用効果を損なわない範囲内であれば、フィラー、酸化防止剤、老化防止剤、銅害防止剤、顔料などの各種の添加剤が1種または2種以上添加されていてもよい。
【0031】
上記絶縁電線において、例えば、上記組成物が、上述した作用効果を損なわない範囲内でフィラーを適量含む場合には、耐摩耗性の向上に有利である。この場合、上記組成物におけるシラングラフトマーの含有量の上限は、塩素含有樹脂100質量部に対して180質量部以下、好ましくは170質量部以下、さらに好ましくは160質量部以下、さらにより好ましくは150質量部以下、さらにより一層好ましくは140質量部以下の範囲まで拡大させることができる。この際、上記組成物におけるフィラーの含有量は、具体的には、柔軟性向上と耐摩耗性向上とのバランスなどの観点から、塩素含有樹脂100質量部に対して1〜30質量部、好ましくは3〜20質量部、より好ましくは5〜15質量部の範囲内とすることができる。
【0032】
上記フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムなどを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。また、上記フィラーは、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィンの単独重合体または共重合体あるいはこれらの混合物や、シランカップリング剤などの表面処理剤によって表面処理されていてもよい。
【0033】
フィラーの平均粒径は、好ましくは0.01〜20μm、より好ましくは0.02〜10μm、さらに好ましくは0.03〜8μmの範囲内とすることができる。フィラーの平均粒径を0.01μm以上とすることにより、フィラーの二次凝集による機械特性の低下を抑制しやすくなる。また、フィラーの平均粒径を20μm以下とすることにより、絶縁体の外観不良が生じ難くなる。なお、上記平均粒径は、レーザー回折・散乱法により測定した体積基準の累積度数分布が50%を示すときの粒子径(直径)d50である。
【0034】
市販品の炭酸カルシウムとしては、具体的には、白石カルシウム社製の白艶華CC、白艶華CCR、白艶華DD、Vigot10、Vigot15、白艶華Uなどを挙げることができる。市販品の酸化マグネシウムとしては、具体的には、宇部マテリアルズ社製のUC95S、UC95M、UC95Hなどを挙げることができる。市販品の水酸化マグネシウムとしては、具体的には、宇部マテリアルズ社製のUD−650−1、UD−653などを挙げることができる。
【0035】
上記絶縁電線において、絶縁体の厚みは、絶縁電線の柔軟性向上と耐摩耗性等の電線特性の確保とのバランスなどの観点から、好ましくは0.1mm〜3mm、より好ましくは0.2mm〜2.5mmの範囲内から選択することができる。
【0036】
上記絶縁電線は、自動車等の車両、電子・電気機器に使用することができる。より具体的には、上記絶縁電線は、ハイブリッド車や電気自動車等に用いられるパワーケーブル等に好適に適用することができる。
【0037】
なお、上述した各構成は、上述した各作用効果等を得るなどのために必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
図1に示すように、本例の絶縁電線1は、導体2と、導体2の外周を被覆する絶縁体3とを有している。絶縁体3は、塩素含有樹脂と、主鎖ポリマーに不飽和アルコキシシラン化合物がグラフトされてなるシラングラフトマーとを含む組成物の水架橋体より構成されている。また、シラングラフトマーは、主鎖ポリマーに対する不飽和アルコキシシラン化合物のグラフト量が1質量%以上とされている。
【0039】
本例では、導体2は、複数本の金属素線(不図示)が撚り合わされてなる副金属撚り線20がさらに複数本撚り合わされて構成されている。金属素線は、具体的には、軟銅線である。また、主鎖ポリマーは、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、および、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0040】
以下、絶縁体の構成が異なる絶縁電線の試料を複数作製し、各種評価を行った。その実験例について説明する。
【0041】
(実験例)
−材料の準備−
絶縁体の材料として以下のものを準備した。
・塩化ビニル樹脂(1)[信越化学社製、「TK−1000」]
・塩化ビニル樹脂(2)[信越化学社製、「TK−1700E」]
・塩化ビニル樹脂(3)[大洋塩ビ社製、「TE−1050」]
・塩化ビニル樹脂(4)[大洋塩ビ社製、「TH−1700」]
・シラングラフトマー(1)
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体[日本ゼオン社製、「Nipol 1041」]100質量部と、アリルトリメトキシシラン[東レダウコーニングシリコーン社製、「Z6825」]3質量部と、有機過酸化物[日油社製、「パークミルD」]0.5質量部とをバンバリーミキサーを用いて十分に混練した後、160℃にて10分間加熱した。これにより、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体にアリルトリメトキシシランがグラフトされてなるシラングラフトマー(1)を得た。シラングラフトマー(1)は、H−NMR法により測定されるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体に対するアリルトリメトキシシランのグラフト量が、1.2質量%であった。
・シラングラフトマー(2)
エチレン−ブテン共重合体[ダウ・ケミカル日本社製、「エンゲージ7467」]100質量部と、ビニルトリメトキシシラン[信越化学社製、「KBM−1003」]3質量部と、有機過酸化物[日油社製、「パークミルD」]0.5質量部とをバンバリーミキサーを用いて十分に混練した後、160℃にて10分間加熱した。これにより、エチレン−ブテン共重合体にビニルトリメトキシシランがグラフトされてなるシラングラフトマー(2)を得た。シラングラフトマー(2)は、H−NMR法により測定されるエチレン−ブテン共重合体に対するビニルトリメトキシシランのグラフト量が、1.5質量%であった。
・シラングラフトマー(3)
エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体[JSR社製、「EP43」]100質量部と、ビニルトリエトキシシラン[信越化学社製、「KBE−1003」]5質量部と、有機過酸化物[日油社製、「パークミルD」]0.5質量部とをバンバリーミキサーを用いて十分に混練した後、160℃にて10分間加熱した。これにより、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体にビニルトリエトキシシランがグラフトされてなるシラングラフトマー(3)を得た。シラングラフトマー(3)は、H−NMR法により測定されるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体に対するビニルトリエトキシシランのグラフト量が、3質量%であった。
・シラングラフトマー(4)
エチレン−プロピレン共重合体[JSR社製、「EP11」]100質量部と、ビニルトリエトキシシラン[信越化学社製、「KBE−1003」]10質量部と、有機過酸化物[日油社製、「パーヘキシルD」]1質量部とをバンバリーミキサーを用いて十分に混練した後、160℃にて10分間加熱した。これにより、エチレン−プロピレン共重合体にビニルトリエトキシシランがグラフトされてなるシラングラフトマー(4)を得た。シラングラフトマー(4)は、H−NMR法により測定されるエチレン−プロピレン共重合体に対するビニルトリエトキシシランのグラフト量が、5質量%であった。
・シラングラフトマー(5)
エチレン−ブテン共重合体[ダウ・ケミカル日本社製、「エンゲージ7447」]100質量部と、ビニルトリメトキシシラン[信越化学社製、「KBM−1003」]10質量部と、有機過酸化物[日油社製、「パーヘキサV」]1.5質量部とをバンバリーミキサーを用いて十分に混練した後、160℃にて10分間加熱した。これにより、エチレン−ブテン共重合体にビニルトリメトキシシランがグラフトされてなるシラングラフトマー(5)を得た。シラングラフトマー(5)は、H−NMR法により測定されるエチレン−ブテン共重合体に対するビニルトリメトキシシランのグラフト量が、5.5質量%であった。
・シラングラフトマー(6)
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体[日本ゼオン社製、「Nipol DN003」]100質量部と、アリルトリメトキシシラン[東レダウコーニングシリコーン社製、「Z6825」]15質量部と、有機過酸化物[日油社製、「パーヘキサV」]3質量部とをバンバリーミキサーを用いて十分に混練した後、160℃にて10分間加熱した。これにより、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体にアリルトリメトキシシランがグラフトされてなるシラングラフトマー(6)を得た。シラングラフトマー(6)は、H−NMR法により測定されるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体に対するアリルトリメトキシシランのグラフト量が、10質量%であった。
・シラングラフトマー(7)
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体[日本ゼオン社製、「Nipol DN003」]100質量部と、アリルトリメトキシシラン[東レダウコーニングシリコーン社製、「Z6825」]1質量部と、有機過酸化物[日油社製、「パークミルD」]0.1質量部とをバンバリーミキサーを用いて十分に混練した後、160℃にて10分間加熱した。これにより、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体にアリルトリメトキシシランがグラフトされてなるシラングラフトマー(7)を得た。シラングラフトマー(7)は、H−NMR法により測定されるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体に対するアリルトリメトキシシランのグラフト量が、0.3質量%であった。
・シラングラフトマー(8)
エチレン−ブテン共重合体[ダウ・ケミカル日本社製、「エンゲージ7467」]100質量部と、ビニルトリメトキシシラン[信越化学社製、「KBM−1003」]1質量部と、有機過酸化物[日油社製、「パークミルD」]0.2質量部とをバンバリーミキサーを用いて十分に混練した後、160℃にて10分間加熱した。これにより、エチレン−ブテン共重合体にビニルトリメトキシシランがグラフトされてなるシラングラフトマー(8)を得た。シラングラフトマー(8)は、H−NMR法により測定されるエチレン−ブテン共重合体に対するビニルトリメトキシシランのグラフト量が、0.5質量%であった。
・シラングラフトマー(9)
エチレン−プロピレン共重合体[JSR社製、「EP11」]100質量部と、ビニルトリエトキシシラン[信越化学社製、「KBE−1003」]1.5質量部と、有機過酸化物[日油社製、「パークミルD」]0.3質量部とをバンバリーミキサーを用いて十分に混練した後、160℃にて10分間加熱した。これにより、エチレン−プロピレン共重合体にビニルトリエトキシシランがグラフトされてなるシラングラフトマー(9)を得た。シラングラフトマー(9)は、H−NMR法により測定されるエチレン−プロピレン共重合体に対するビニルトリエトキシシランのグラフト量が、0.8質量%であった。
・無機フィラー(1)(炭酸カルシウム)[白石カルシウム社製、「白艶華DD」]
・無機フィラー(2)(炭酸カルシウム)[白石カルシウム社製、「白艶華CC」]
・シラノール縮合触媒(ジブチル錫ジラウレート)
・DINP(フタル酸ジイソノニル)
・DOP(フタル酸ジオクチル)
【0042】
―絶縁電線の作製―
軟銅線を9本拠り合わせてなる軟銅撚り線をさらに19本撚り合わせることにより、導体を準備した。なお、導体径は、5.3mm、導体断面積は、15mmである。
【0043】
次いで、シラノール縮合触媒を除いて表1、表2に示される所定の配合割合となるように各材料を二軸混練機を用いて200℃で混合した後、ペレタイザーを用いてペレット状に成形した。次いで、押し出し成形機を用いて、表1、表2に示される所定量のシラノール縮合触媒を各組成物に混合するとともに、導体の外周に、厚み1.1mmにて各組成物を押し出し被覆した。次いで、これを60℃×95%RHの湿熱環境下に12時間置くことにより、シラングラフトマー同士を水架橋し、上記組成物の水架橋体より構成される絶縁体を形成した。これにより、試料1〜24の絶縁電線を作製した。
【0044】
また、表3に示される所定の配合割合となるように各材料を二軸混練機を用いて200℃で混合した後、ペレタイザーを用いてペレット状に成形することにより、各組成物を得た。次いで、押し出し成形機を用いて、導体の外周に、厚み1.1mmにて各組成物を押し出し被覆することにより、上記組成物より構成される絶縁体を形成した。これにより、試料25〜30の絶縁電線を作製した。
【0045】
−柔軟性−
各試料の絶縁電線から長さ500mmの試験電線を採取した。次いで、一対の板状治具が取り付けられたロードセルの各板状治具間に、試験電線を横向きのU字状に湾曲させた状態で固定した。具体的には、各板状治具の表面に形成された各V字状の溝に、上記湾曲させた試験電線の各端部をそれぞれ嵌め込んで固定した。なお、各板状治具間の距離は200mmとした。次いで、ロードセルにて試験電線に圧縮方向の荷重を加え、各板状治具間の距離が100mmになるまで荷重を負荷したときの最大荷重[N]を測定した。最大荷重の値は、その値が小さい程、絶縁電線の柔軟性が良好であることを示す。
【0046】
−耐熱性−
各試料の絶縁電線から導体を抜き取り、得られた絶縁体を試験片とした。次いで、各試験片を150℃にて10日間恒温槽に入れて取り出した。その後、引張試験機を用い、恒温槽に入れる前の試験片と、恒温槽に入れた後の試験片について、標線間距離:20mm、引張速度:50mm/minの条件にて引張試験を行い、各試験片の伸びを測定した。恒温槽に入れる前の初期の伸びを100%とした場合に、恒温槽に入れた後の伸びが70%以上であった場合を、優れた耐熱性を有するとして「A+」、伸びが50%以上70%未満であった場合を、良好な耐熱性を有するとして「A」、伸びが50%未満であった場合を、耐熱性に劣るとして「C」とした。なお、本耐熱性の試験は、試料1〜24に対して行った。
【0047】
−耐摩耗性−
絶縁体の柔軟性が過度になると、絶縁体が摩耗し、電線特性の一つである耐摩耗性が低下することが考えられる。そこで、各試料の絶縁電線について、絶縁体の耐摩耗性の確認を行った。
【0048】
具体的には、社団法人自動車技術会規格「JASO D618」に準拠し、ブレード往復法によって絶縁体の耐摩耗性を評価した。すなわち、各試料の絶縁電線から長さ750mmの試験片を採取した。次いで、23±5℃の室温下、軸方向に10mm以上の長さ、毎分50回の速さにて、試験片の絶縁体表面上でブレードを往復させた。この際、ブレードにかかる荷重は7Nとした。そして、ブレードが導体に接するまでの往復回数を測定した。ブレードの往復回数が1500回以上2000回未満であった場合を耐摩耗性が良好であるとして「A」、ブレードの往復回数が2000回以上であった場合を耐摩耗性に優れるとして「A+」とした。
【0049】
表1〜表3に、各試料の絶縁電線における絶縁体の形成に用いた各組成物の配合(質量部)、絶縁体の柔軟性、耐熱性、および耐摩耗性の評価結果をまとめて示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
表1〜表3によれば、次のことがわかる。すなわち、表3に示されるように、試料25〜試料30の絶縁電線は、いずれも、絶縁体が、塩素含有樹脂に低分子量の可塑剤が配合されてなる組成物より構成されている。これらのうち、試料25〜試料29の絶縁電線は、表3に示される配合割合で可塑剤が配合されているものの、柔軟性試験における最大荷重が39[N]以上と大きく、柔軟性に劣っていることがわかる。また、絶縁体の柔軟性を向上させるため、さらに可塑剤が増量された試料30の絶縁電線は、絶縁体の表面に可塑剤のブルーミングが発生した。この結果から、可塑剤の増量による絶縁体の柔軟性向上には、限界があるといえる。また、試料25〜試料30の絶縁電線は、いずれも、低分子量の可塑剤が比較的多く含まれている。そのため、試料25〜試料30の絶縁電線は、絶縁電線が束で使用された場合に、他の絶縁電線が有する絶縁体に可塑剤が移行しやすく、他の絶縁電線の特性を劣化させることが懸念される。
【0054】
これらに対し、試料1〜試料16の絶縁電線は、絶縁体が、塩素含有樹脂と、主鎖ポリマーに不飽和アルコキシシラン化合物がグラフトされてなるシラングラフトマーとを含む組成物の水架橋体より構成されている。つまり、試料1〜試料16の絶縁電線は、絶縁体の柔軟化を図るため、低分子量の可塑剤に比べて分子量が大きく、かつ柔軟な高分子化合物である上記シラングラフトマーを上記組成物に用いている。そのため、試料1〜試料16の絶縁電線は、試料25〜試料29の絶縁電線に比べ、柔軟性試験における最大荷重が小さく、柔軟性が向上されている。また、試料1〜試料16の絶縁電線は、柔軟性向上のために積極的に可塑剤が配合されていないので、可塑剤のブルーミングがなく、他の絶縁電線が有する絶縁体への可塑剤の移行も抑制することが可能であるといえる。また、試料1〜試料16の絶縁電線は、シラングラフトマーのブルーミングも認められなかった。これは、シラングラフトマーの分子量が大きいことや、シラングラフトマー同士の水架橋により、絶縁体中にてシラングラフトマーの自由な移動が効果的に抑制されたためである。
【0055】
次に、表2に示されるように、試料17〜試料24の絶縁電線は、試料1〜試料16の絶縁電線と同様に、上記組成物中にシラングラフトマーを含んでいる。しかし、試料17〜試料24の絶縁電線は、シラングラフトマーにおける主鎖ポリマーに対する不飽和アルコキシシラン化合物のグラフト量が1質量%未満とされている。そのため、試料17〜試料24の絶縁電線は、絶縁体の耐熱性に劣っていた。これは、上記組成物の水架橋時にシラングラフトマー同士の架橋が十分に生じず、架橋度を向上させることができなかったためである。
【0056】
次に、試料1〜試料16の絶縁電線同士を比較する。試料1〜試料10の絶縁電線は、上記組成物におけるシラングラフトマーの含有量が、塩素含有樹脂100質量部に対して1質量部〜100質量部の範囲内とされている。そのため、試料1〜試料10の絶縁電線は、良好な柔軟性および耐熱性を確保しつつ、優れた耐摩耗性を有していることが確認された。特に、試料9、試料10の結果によれば、シラングラフトマーにおける主鎖ポリマーの種類や、1〜10質量%の範囲内での上記グラフト量の調整が最適に行われることにより、フィラーを併用することなく、良好な柔軟性、優れた耐熱性を確保しつつ、優れた耐摩耗性を発揮させることが可能であることがわかる。
【0057】
なお、試料11〜試料14の絶縁電線は、上記組成物におけるシラングラフトマーの含有量が100質量部以上とされている。そのため、試料11〜試料14の絶縁電線は、試料1〜試料10の絶縁電線に比べ、耐摩耗性が低下する傾向が見られた。これらに対し、試料15、試料16の絶縁電線は、柔軟性を損なわない範囲で上記組成物に無機フィラーが適量配合されている。そのため、試料15、試料16の絶縁電線は、試料11〜試料14の絶縁電線と比較して、優れた耐摩耗性を確保することができた。この結果から、上記組成物におけるシラングラフトマーの含有量が100質量部以上とされる場合でも、フィラーを適量併用することにより、良好な柔軟性、優れた耐熱性を確保しつつ、優れた耐摩耗性を発揮させることが可能であることがわかる。
【0058】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 絶縁電線
2 導体
3 絶縁体
図1