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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-201405(P2015-201405A)
(43)【公開日】2015年11月12日
(54)【発明の名称】調心機能付きコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/631 20060101AFI20151016BHJP
【FI】
   H01R13/631
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-80838(P2014-80838)
(22)【出願日】2014年4月10日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧 知秀
(72)【発明者】
【氏名】曽根 康介
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 克司
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA09
5E021FA16
5E021FB20
5E021FC31
(57)【要約】
【課題】コネクタ間の組み付け上のばらつきを吸収して円滑に嵌合を行うことができるようにする。
【解決手段】ホルダに第1ばね片24と一対の第2ばね片27とを撓み可能に設け、第1コネクタ6をY軸方向から弾性的に挟み込む。第2ばね片27にはX軸方向に沿って対称的に傾斜する上側受け面29を形成して、第1コネクタ6の両受け部18に対して作用する弾性力がX軸方向に沿って中心軸に向けて作用するようにする。さらに、第1コネクタ6はホルダ部HにおいてZ軸方向へも変位可能な状態で保持されている。これにより、第1コネクタ6は基準位置に保持され、かつ三次元的に変位可能な状態で保持される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撓み可能なロックアームを有する第1コネクタと、
この第1コネクタを装着可能で前記第1コネクタを待ち受け側とするホルダと、
前記第1コネクタと嵌合可能でかつ前記ロックアームに係止可能な第2コネクタとを備え、
前記ホルダと前記第1コネクタとの間には、前記第1コネクタを基準位置に調心するための複数のばね部が介在されるとともに、
前記複数の各ばね部は、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとが嵌合する際の中心軸を、前記ロックアームの撓み方向であるY軸方向から挟んだ位置に配されて前記第1コネクタを前記基準位置に向けて付勢し合うY方向ばね部と、
前記中心軸を、前記Y軸と直交する方向であるX軸方向から挟んだ位置に配されて前記第1コネクタを前記基準位置へ向けて付勢し合うX方向ばね部とを備えていることを特徴とする調心機能付きコネクタ。
【請求項2】
前記第1コネクタは前記ホルダに対して前記第1、第2の両コネクタの嵌合方向であるZ軸方向に沿って変位可能な状態で装着されていることを特徴とする請求項1に記載の調心機能付きコネクタ。
【請求項3】
前記Y方向ばね部は、前記ホルダにおいてそれぞれが前記Y軸方向に沿って撓み可能に形成され前記第1コネクタを前記Y軸方向から弾性的に挟む第1ばね片と第2ばね片とからなり、
前記第1ばね片は、前記第1コネクタにおいて前記Y軸方向に関して前記ロックアームが設けられた面とは反対側の面を支持する一方、
前記第1コネクタには前記X軸方向外方へ向けて一対の受け部が張り出し形成され、
前記第2ばね片は、前記ホルダにおいて前記両受け部に対応して対称に一対が設けられ、かつ前記第2ばね片は前記第1ばね片との間で前記第1コネクタを前記Y軸方向から弾性的に挟んで保持することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の調心機能付きコネクタ。
【請求項4】
前記X方向ばね部は、前記両第2ばね片における前記受け部との対向面にそれぞれ形成され、共に前記X軸方向に沿って内側から外側にかけて対称の下り勾配をなして形成されていることを特徴とする請求項3に記載の調心機能付きコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調心機能付きコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のコネクタは、相手ハウジング(レセプタクルコネクタハウジング)に嵌合可能なハウジング(プラグハウジング)を備えている。ハウジングは、複数の弾性係合部を有している。そして、ハウジングは、パネル隔壁に設けられた孔部に挿入され、各弾性係止部が孔部の周縁部に当接することで、パネル隔壁に対して嵌合方向と直交する方向へ揺動可能に支持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−190720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のコネクタは、ハウジングがパネル隔壁の孔部に挿入された状態で、ハウジングが各弾性係止部を介して嵌合方向と直交する方向に揺動変位することにより、両ハウシングの嵌合誤差を吸収できるようになっている。したがって、パネル隔壁の孔部に相当する構造を有しないものには、上記コネクタの技術を適用することができないという事情がある。例えば、電子制御ユニットや油圧センサ等と共にコネクタが搭載される自動変速機の油圧制御装置の場合、全体の構成が複雑になるため、相手ハウジングに対するハウジングの嵌合作業に手間取ると、他の部品の組み付け作業にも支障を来たし、作業効率が大幅に低下するという問題がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コネクタの嵌合作業を円滑に進め、組み立ての作業効率を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の調心機能付きコネクタは、撓み可能なロックアームを有する第1コネクタと、この第1コネクタを装着可能で第1コネクタを待ち受け側とするホルダと、第1コネクタと嵌合可能でかつロックアームに係止可能な第2コネクタとを備え、ホルダと第1コネクタとの間には、第1コネクタを基準位置に調心するための複数のばね部が介在されるとともに、複数の各ばね部は、第1コネクタと第2コネクタとが嵌合する際の中心軸を、ロックアームの撓み方向であるY軸方向から挟んだ位置に配されて第1コネクタを基準位置に向けて付勢し合うY方向ばね部と、中心軸を、Y軸と直交する方向であるX軸方向から挟んだ位置に配されて第1コネクタを前記基準位置へ向けて付勢し合うX方向ばね部とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1コネクタと第2コネクタとの間で相対的な取付け位置のばらつきが生じ、嵌合の際に互いの中心軸がずれていると、両コネクタの嵌合作業がし辛くなる。その点、本発明によれば、第1コネクタは、X方向ばね部及びY方向ばね部によって基準位置から変位しうる。したがって、仮に、両コネクタ間で芯ずれが生じていたとしても、X方向ばね部及びY方向ばね部がこの芯ずれを吸収して両コネクタを円滑に嵌合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1において自動変速機の油圧制御装置に設けられた第1コネクタと、ソレノイドに設けられた第2コネクタとが分離している状態を示す斜視図
図2】ソレノイドの組み付けに伴って第1・第2コネクタが嵌合している状態を示す斜視図
図3】第1コネクタとホルダ部とを示す分解斜視図
図4】ホルダ部に第1コネクタを取り付けた状態を示す斜視図
図5】同じく平面図
図6図5のA−A線断面図
図7図5のB−B線断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
(1)本発明の調心機能付きコネクタは、前記第1コネクタは前記ホルダに対して前記第1、第2の両コネクタの嵌合方向であるZ軸方向に沿って変位可能な状態で装着されることが好ましい。
第1・第2の両コネクタ間でZ軸方向に関する取付け位置のばらつきがあると、第2コネクタが所定の嵌合ストロークを変位しても、両コネクタが正規嵌合にまで至らず、ロックアームによる係止が不能となる場合等が生じ得る。しかし、上記の構成によれば、第1コネクタはホルダに対してZ軸方向に沿って変位可能な状態で装着されているため、Z軸方向の取付け位置のばらつきを吸収して両コネクタを確実に正規嵌合状態に至らしめることができる。
(2)前記Y方向ばね部は、前記ホルダにおいてそれぞれが前記Y軸方向に沿って撓み可能に形成され前記第1コネクタを前記Y軸方向から弾性的に挟む第1ばね片と第2ばね片とからなり、前記第1ばね片は、前記第1コネクタにおいて前記Y軸方向に関して前記ロックアームが設けられた面とは反対側の面を支持する一方、前記第1コネクタには前記X軸方向外方へ向けて一対の受け部が張り出し形成され、前記第2ばね片は、前記ホルダにおいて前記両受け部に対応して対称に一対が設けられ、かつ前記第2ばね片は前記第1ばね片との間で前記第1コネクタを前記Y軸方向から弾性的に挟んで保持する構成としてもよい。
このような構成によれば、第1コネクタはホルダに設けられた第1ばね片と一対の第2片とによってY軸方向から弾性的に挟まれて支持されることで、第1コネクタはY軸方向の基準位置に支持されている。仮に、第1・第2コネクタの嵌合の際に両コネクタ間で互いの中心軸がY軸方向にずれていたとしても、第1ばね片あるいは第2ばね片を撓み変形させることでずれを吸収することができ、円滑な嵌合が可能になる。
(3)前記X方向ばね部は、前記両第2ばね片における前記受け部との対向面にそれぞれ形成され、共に前記X軸方向に沿って内側から外側にかけて対称の下り勾配をなして形成されるようにするとよい。
第1コネクタがホルダによって支持されている状態では、第1コネクタの受け部は第2ばね片からY軸方向に関する弾性反力を受けている。この際に、第2ばね片が受け部と対向する面は、共にX方向ばね部としてX軸方向外方へ向かう下り勾配が設定されているため、第2ばね片からの弾性反力は両受け部に対しX軸方向沿って内向きに、つまり対向するように作用する。これにより、第1コネクタはX軸方向の基準位置に支持される。仮に、第1・第2のコネクタの嵌合の際に両コネクタ間で互いの中心軸がX軸方向にずれていたとしても、両第2ばね片を撓み変形させることで、互いのずれを吸収することができ、もって円滑な嵌合が可能になる。
また、上記の構成であれば、X方向ばね部とY方向ばね部は共に第2ばね片において兼用して形成されるため、ホルダの構成を簡素化することができる、という効果も発揮することができる。
【0010】
<実施例>
次に、本発明の調心機能付きコネクタを具体化した実施例について、図面を参照しつつ説明する。本実施例の調心機能付きコネクタは、自動車のオートマチックトランスミッションの油圧制御装置に適用されたものである。
【0011】
図1、2に示すように、油圧制御装置はバルブボディ1を備えており、このバルブボディ1には複数のソレノイド2が組込まれる(図2では一つのソレノイド2が組み込まれている様子が示されている。)。なお、本実施例の調心機能付きコネクタは各ソレノイド2にそれぞれ対応して設けられるが、図1、2ではそのうちの一つのみが示されており、以下の説明もこの一つのみについて行う。
【0012】
バルブボディ1にはソレノイド2を組み付けるためのソレノイド組み付け部3が設けられている。ソレノイド組み付け部3は、バルブボディ1の外面から横向き略円筒形状をなして突出され、その前方にはソレノイド2の電磁部2Aの外周面に適合可能な凹面4が凹み形成されている。
【0013】
ソレノイド2は略円筒状をなし、電磁部2Aと弁部2Bとから構成されている。弁部2Bは電磁部2Aより小径に形成されており、ソレノイド組み付け部3へ差し込み可能である。弁部2Bがソレノイド組み付け部3へ正規に差し込まれると、弁部2Bと電磁部2Aとの境界部分に形成された段部がソレノイド組み付け部3の前端面に当接し、その状態で図示しないロック手段にてソレノイド2の装着状態がロックされるようになっている。こうして、弁部2Bの差し込みがなされると、弁部2Bとソレノイド組み付け部3との間で油圧制御のための油圧回路(図示しない)が構成される。
【0014】
電磁部2Aの外周面には調心機能付きコネクタを構成する第2コネクタ5(雄コネクタ)が突設されている。第2コネクタ5は、電磁部2Aの外周面から突出する基部5Aとこの基部5Aからソレノイド2の軸線と平行に突出し前方へ向けて開口する筒状のフード部5Bとから構成されている。フード部5B内にはソレノイド2に接続される雄端子金具(図示しない)が突出している。フード部5Bの外面にはロック孔5Cが開口し、後述する第1コネクタ6(雌コネクタ)と第2コネクタ5とが正規に嵌合したときに、第1コネクタ6のロックアーム7と係止可能となっている。
【0015】
前記したバルブボディ1の外面には、ハーネス収容部9を支持するためのボス部8が計3か所に突設されている。各ボス部8は、ソレノイド組み付け部3を挟んで片側に2個、反対側に1個が配されている。ハーネス収容部9の内部には後述する第1コネクタ6から導出された電線Wが配索されている。
【0016】
図1図2に示すように、ハーネス収容部9は樹脂製の収容部本体9Aと、金属製のカバー9Bとから構成されている。収容部本体9Aは上方へ開放する樋状に形成され、カバー9Bはその開口面を覆っている。収容部本体9Aの複数箇所にはロック爪10が立設され、これらがカバー9Bに対して弾性的に係止することによって、収容部本体9Aとカバー9Bとが一体化されている。カバー9Bは三方向に延び、各延出端部には取付け片11が形成されている。各取付け片11はボス部8の上面に載置されボス部8にねじ締めされることによって、ハーネス収容部9の全体が吊り下げ状態で支持されている。
【0017】
ハーネス収容部9の収容部本体9Aには、ホルダ部H(ホルダ)が一体に形成されている。図1に示すように、第1コネクタ6はホルダ部Hに取付けられて第2コネクタ5に対する待ち受け側のコネクタとなっている。なお、以下では、第1コネクタ6に対する第2コネクタ5の嵌合方向をZ軸方向と呼ぶ。
【0018】
第1コネクタ6について説明すると(主として、図3参照)、第1コネクタ6は樹脂製のコネクタハウジング12を有している。コネクタハウジング12の内部には左右に2つのキャビティ13が形成され、それぞれの内部には雌端子金具14が収容されている。コネクタハウジング12の上面にはロックアーム7が設けられている。ロックアーム7はコネクタハウジング12の嵌合面側の端部から長手方向に沿って片持ち状に延出し、上下方向(以下、ロックアーム7の撓み方向をY軸方向と呼ぶ)へ撓み可能に形成されている。ロックアーム7の上面であって長さ方向の途中にはロック突部15が突出形成されている。
【0019】
図7に示すように、コネクタハウジング12の下面(ロックアーム7が形成されている面と反対側の面)の後部は一段大きくなって突出して段差部16が形成されており、これより前側の部分との間には段差が形成されている。また、段差部16の下面は、後方へ向けて上り勾配となる下側傾斜面17が形成されている。
【0020】
また、コネクタハウジング12の後部において、幅方向(以下、Z軸及びY軸と直交するこの方向をX軸方向と呼ぶ)の両側には一対の受け部18が設けられている。両受け部18は、図3に示すように、側片18Aと両側片18Aの上縁からX軸方向外方へ張り出す受け片18Bとからなり、正面視で略逆L字状でかつ対称形状をなして形成されている。また、両受け部18の側片18Aはコネクタハウジング12の幅方向両側面とは縦向きに形成された連結片18Cを介して接続され、受け部18全体は、容易には撓み変形しない程度の剛性が付与され、実質的に撓み不能に形成されている。
【0021】
図6に示すように、両側片18A及び連結片18Cの下端はコネクタハウジング12の段差部16の下面と面一に形成されている。また、図7に示すようにも両側片18Aの下縁も段差部16の下側傾斜面17と面一の勾配をもって下側傾斜面19が形成されている。
【0022】
両受け部18の受け片18Bの上面には上側傾斜面20が対称に形成されている。すなわち、両上側傾斜面20には、図6に示すように、幅方向(X軸方向)外方へ向けて徐々に下り勾配となるような傾斜が設定されているとともに、図7に示すように、後方(Z軸方向)へ向けての下り勾配も設定されている。
【0023】
ホルダ部Hは、図3に示すように、収容部本体9Aと一体に形成されX軸方向で対向する側板部21を有している。両側板部21間を接続する収容部本体9Aのホルダ形成壁22には切欠き窓23が形成され、この切欠き窓23を通して第1コネクタ6から導出された電線Wをハーネス収容部9内に収容できるようにしている。
【0024】
バルブボディ1にソレノイド2を組み込むに際し、ソレノイド組み付け部3の中心軸とソレノイド2の中心軸とが揃っている状態(正対状態)で、第1・第2のコネクタ5,6の中心軸同士が揃っており、かつソレノイド2がバルブボディ1に正規深さまで挿入されて組み付けが完了した時に、両コネクタ5,6間も正規の嵌合深さとなってロックアーム7によるロックがかかった状態となるのであれば、ソレノイド2の組み込み作業とコネクタ5,6同士の嵌合作業を同時に行うことができる。しかし、第1・第2のコネクタ5,6間でX,Y,Z軸方向に関して嵌合誤差が生じていると、両コネクタ5,6の嵌合作業をソレノイド2の組み込み作業と同時にはなし得ない。このような事態に鑑み、本実施例ではホルダ部Hにおいて、両コネクタ5,6間の嵌合誤差を吸収する機構を設定している。
【0025】
まず、Y軸方向に関する嵌合誤差を吸収する機構を説明する。図3に示すように、収容部本体9Aのホルダ形成壁22において、切欠き窓23の下縁には第1ばね片24が前方へ向けて片持ち状に張り出し形成されており、Y軸方向に沿って撓み可能である。図5に示すように、第1ばね片24のX軸方向に沿う幅は、切欠き窓23の開口幅より広幅に形成され、かつ図6に示すように、第1コネクタの両側片18Aの外面同士の間の寸法とほぼ等しく形成されている。そして、図6に示すように、コネクタハウジング12の段差部16及び両側片18Aを載置させて第1コネクタ6を下支えする。
【0026】
図7に示すように、第1ばね片24の付け根部分は、一旦、斜め上向きに形成されるが、これより前部側は第1コネクタ6の下側傾斜面17,19の勾配に適合可能な勾配をもった下側受け面25が形成されている。また、第1ばね片24の前縁には全幅に亘って係止爪26が上向きに突出形成されており、第1コネクタ6の段差部16の前端面に係止可能である。
【0027】
収容部本体9Aのホルダ形成壁22には、上記切欠き窓23をX軸方向から挟んで一対の第2ばね片27が設けられている。両第2ばね片27はY軸方向に撓み可能であり、第1ばね片24と共に本発明のY方向ばね部を構成する。
【0028】
両第2ばね片27は、ホルダ形成壁22の上縁から前方へ向けて片持ち状に延出している。図5に示すように、両第2ばね片27の前端の位置は第1ばね片24の前端とほぼ同位置か僅かに後方に位置している。両第2ばね片27の外側縁はホルダ部Hの側板部21とは離間しており、また内側縁は平面視で第1ばね片24の外側縁より外方に位置するようになっている。両第2ばね片27の前端縁は共に下向きに屈曲して抜け止め爪28が形成され、第1コネクタ6の両受け部18の前縁に係止して係止爪26と共に第1コネクタ6がホルダ部Hから前方へ抜けないようにしている。
【0029】
図3等に示すように、両第2ばね片27の付け根側は、一旦、前方へ向けて下り勾配となるように形成され、そこから先の面には、図6図7に示すように、上側受け面29が形成されている。上側受け面29は、図7に示すように、前方へ向けての(Z軸方向に沿う方向)上り勾配が設定され、この勾配はZ軸方向に関する上側傾斜面20の勾配と適合するようにしてある。また、上側受け面29には、図6に示すように、幅方向外側へ向けての(X軸方向)下り勾配も設定され、この勾配はX軸方向に関する上側傾斜面20の勾配と適合するようにしてある。
【0030】
第1コネクタ6がホルダ部Hに装着された状態では、第1コネクタ6は第1ばね片24及び両第2ばね片27をそれぞれ撓み変形させつつ、これらばね片24,27によってY軸方向から弾性的に挟み付けられている。すなわち、第1ばね片24及び第2ばね片27は第1コネクタ6を後述する基準位置へ向けて付勢し合っており、その結果、第1コネクタはY軸方向に関して両ばね片24,27の弾性反力がバランスした位置(基準位置)に保持される。
【0031】
上記したように、両第2ばね片27の上側受け面29は図6に示すような幅方向(X軸方向)外側へ向かう下り勾配が設定されていた。上側受け面29において、X軸方向に沿う方向の勾配の成分は本発明のX方向ばね部を構成する。すなわち、第1コネクタ6がホルダ部Hに装着されている状態では、第1コネクタ6に対して第1、第2ばね片24,27から弾性反力が作用している。そして、この弾性反力は、上側受け面29のX軸方向の勾配成分により、第1コネクタ6に対しX軸方向に沿って基準位置へ向けて付勢し合うように作用する。その結果、第1コネクタはX軸方向に関しても、両第2ばね片27の弾性反力がバランスした位置(基準位置)に保持される。
【0032】
かくして、第1コネクタ6は第1ばね片24及び両第2ばね片27にてX軸方向及びY軸方向に関して中立の基準位置に保持される。換言すれば、基準位置とは、X軸方向に関しては、第1コネクタ6の長手方向に沿う中心軸がソレノイド2が差し込まれるソレノイド組み付け部3の中心軸の真上の位置であり、Y軸方向に関しては、ソレノイド組み付け部3の中心軸から第1コネクタ6の長手方向の中心軸までの距離が、ソレノイド2の中心軸から第2コネクタ5の長手方向の中心軸までの距離と同じとなる位置を言う。
【0033】
また、第1コネクタ6がホルダ部Hに装着された状態において、第1コネクタ6はZ軸方向に沿って所定長さ変位可能となっている。第1コネクタ6において、Z軸方向に関する前端位置は、図7に示すように、第1ばね片24の係止爪26が第1コネクタ6の段差部16の前端縁に当接状態で係止した位置である。第1コネクタ6において、Z軸方向に関する後端位置は、両第2ばね片27の後端縁が収容部本体9Aのホルダ形成壁22に当接した位置である。
【0034】
なお、第1コネクタ6と第2コネクタ5との嵌合の際に、第1コネクタ6と第1、第2ばね片24,27との間に生じる摩擦力は、第1コネクタ6と第2コネクタ5との間の摩擦力よりも大きく設定されている。したがって、第1・第2コネクタ5,6は軽い力で嵌合状態にロックされるが、両コネクタ5,6が嵌合した時にはソレノイド2がソレノイド組み付け部3にロックされるため、第1・第2のコネクタ5,6が不用意に嵌合解除されてしまうことはない。
【0035】
次に、上記のように構成された本実施例の作用効果を説明する。まず、第1コネクタ6をホルダ部Hに対し前方から組み付けを行う。この場合、第1コネクタ6は第1ばね片24及び両第2ばね片27の間が拡開するように撓み変形をさせることで、ホルダ部H内に押し入れられる。これにより、第1コネクタ6は、段
差部16と両受け部18の側片18Aとが第1ばね片24の下側受け面25上に適合状態で支持される。また、このときには、両受け部18の上側傾斜面20が、対応する第2ばね片27の上側受け面29にほぼ適合した状態で弾接している。
【0036】
こうして第1コネクタ6がホルダ部Hに対して装着されたときには、第1コネクタ6はY軸方向に関しては第1・第2の各ばね片24,27の弾性反力がY軸方向に関してバランスして作用しているため、Y軸方向に関して中立位置(基準位置)で保持される。また、第2ばね片27の上側受け面29のX軸方向の勾配成分により、第1コネクタ6はX軸方向に沿って相互に反対方向から弾性反力が作用し合い、かつこれがバランスするため、第1コネクタ6はX軸方向に関しても中立位置(基準位置)に保持される。以上の結果、第1コネクタ6は基準位置においてフローティング支持された状態となっている。
【0037】
次いで、ソレノイド組み付け部3に対してソレノイド2の弁部2Bが挿入される。このとき、ソレノイド組み付け部3がソレノイド2の弁部2Bに正対(互いの中心軸が揃っている状態)し、かつ第2コネクタ5が第1コネクタ6と正対する関係にあれば、ソレノイド2がソレノイド組み付け部3に正規深さまで挿入されるのに伴い、第2コネクタ5が第1コネクタ6に正規に嵌合されてロックアーム7のロック突部15が第2コネクタ5のロック孔5Cに係止して嵌合状態が保持される。
【0038】
一方、ソレノイド2の弁部2Bがソレノイド組み付け部3に正対している状態において、仮に、第1コネクタ6に対して第2コネクタ5が正対した状態になく、互いのコネクタの中心軸がX軸方向あるいはY軸方向にずれたり傾いていたとしても、第1コネクタ6の前端部が第2コネクタ5のフード部5B内に誘い込まれて浅く挿入されることにより、第1コネクタ6が第1ばね片24及び第2ばね片27を撓み変形させることで、X軸方向及びY軸方向に変位して第2コネクタ5との正規の嵌合状態に誘導させられる。こうして第1・第2の両コネクタ5,6が正規に嵌合すれば、雌雄の端子金具が正規の接続状態となる。
【0039】
また、仮に、ソレノイド組み付け部3に対するソレノイド2の嵌合ストロークと、第1コネクタ6に対する第2コネクタ5の嵌合ストロークに誤差が生じていると、ソレノイド組み付け部3に対するソレノイド2の嵌合が完了しても、第1、第2の両コネクタが正規嵌合に至っていない状況(ロックアーム7に係止突部が係止されていない状況)となってしまったり、逆に、両コネクタ5,6の正規嵌合状態が成立しても、ソレノイド組み付け部3に対してソレノイド2が正規深さまで届いていない状態となってしまうことがあり得る。しかし、本実施例では第1コネクタ6はZ軸方向に関してホルダ部H内で所定ストローク、つまり第1ばね片24の係止爪26が第1コネクタ6の傾斜面の段差部分に係止した位置と、両第2ばね片27の後端縁が収容部本体9Aの側壁に当接した位置との間で変位可能であるため、Z軸方向のずれも吸収することができる。したがって、ソレノイド2の組み付けとコネク5,6タ同士の嵌合に関してZ軸方向のストロークのばらつきが生じていたとしても、ソレノイド2の正規組み付け状態と両コネクタの正規嵌合状態とを揃って実現することができる。
【0040】
以上説明したように、本実施例によれば、第1コネクタ6はホルダ部Hに対してX軸方向、Y軸方向さらにはZ軸方向のいずれの方向に関しても変位可能な状態で支持されるため、両コネクタ5,6間での組み付け上のばらつきを三次元的に広く吸収してコネクタ同士の嵌合作業を円滑に効率よく進めることができる。また、第1コネクタ6はホルダ部Hに対して変位可能な状態で保持されるものの、X軸方向及びY軸方向に対しては調心機能が発揮されて基本的な組み付け位置が定められているため、両コネクタ間の当初の芯ずれを小さくして両者の円滑な嵌合に寄与することができる。
【0041】
また、本実施例においては、Y方向ばね部としての機能及びX方向ばね部としての機能を共に第2ばね片27に設定した。したがって、これら機能を別個に設定するよりもホルダ部Hの構成を簡素化することができる。
【0042】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、ホルダ部Hをハーネス収容部9の収容部に一体に形成したが、別体に形成されるものであってもよい。
(2)上記実施例では、第2ばね片27にY方向ばね部の一方とX方向ばね部とを設けるようにしたが、これらばね部はホルダ部Hにおいて別個に設けるようにしてもよい。
(3)上記実施例では、受け部18は板状に形成されたものを示したが、より剛性を高めるべくブロック状に形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
5…第2コネクタ
6…第1コネクタ
7…ロックアーム
18…受け部
24…第1ばね片(Y方向ばね部)
27…第2ばね片(Y方向ばね部)
29…上側受け面(X方向ばね部)
H…ホルダ部(ホルダ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7