【解決手段】複数の蓄電素子X1,X2,X3,X4が電気的に接続された蓄電素子群16を備えた蓄電モジュール10Aであって、複数の蓄電素子X1〜X4に一定時間通電された通電状態において、複数の蓄電素子X1〜X4のうち、一の蓄電素子の温度と他の蓄電素子の温度とを比較して温度の高い蓄電素子の初期蓄電容量が温度の低い蓄電素子の初期蓄電容量よりも大きくなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の構成によると、相対的に蓄電容量が低下したことを検出するための構成、及び、相対的に蓄電容量が低下した蓄電池セル群に対して優先的に冷却風を分配するための構成が必要となるため、構造が複雑になるという問題があった。
【0005】
本発明は上記の課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の蓄電素子が電気的に接続された蓄電素子群を備えた蓄電モジュールであって、前記複数の蓄電素子に一定時間通電された通電状態において、前記複数の蓄電素子のうち、一の蓄電素子の温度と他の蓄電素子の温度とを比較して温度の高い蓄電素子の初期蓄電容量が温度の低い蓄電素子の初期蓄電容量よりも大きいものとなっている。
【0007】
本発明によれば、複数の蓄電素子に一定時間通電された状態において、他と比べて温度の高い蓄電素子の初期放電容量が大きくなっている。これにより、劣化の進行が速いと考えられる温度の高い蓄電素子の寿命を延ばすことができる。この結果、冷却手段等の複雑な構成を用いることなく、簡易な手法により、全体として蓄電モジュールの寿命を延ばすことができる。
【0008】
なお、本明細書で用いる「一定時間」とは、「ある程度の幅をもった時間」という意味であり、その長さが不変であることを意味するものではない。また、「一定時間」とは、通電された複数の蓄電素子のうち、少なくとも2つの蓄電素子の間に温度差が生じる時間をいう。
【0009】
また、本明細書で用いる「蓄電容量」には、一般的に二次電池に対して用いられる「放電容量」という用語、及び一般的にキャパシタに対して用いられる「静電容量」という用語が含まれるものとする。
【0010】
本発明の実施態様としては以下の態様が好ましい。前記複数の蓄電素子のうち初期蓄電容量が最小であるものを最小蓄電素子とし、前記最小蓄電素子の初期蓄電容量を最小初期蓄電容量としたときに、(前記複数の蓄電素子に通電された通電状態において、最小蓄電素子と異なる蓄電素子の初期蓄電容量と前記最小初期蓄電容量との差)/{(前記最小蓄電素子と異なる蓄電素子の温度と前記最小蓄電素子の温度との差)×前記最小初期蓄電容量}の値Dが、0.001〜0.1であることが好ましい。
【0011】
上記の態様によれば、複数の蓄電素子に通電された状態において、他と比べて温度の高い蓄電素子の性能が劣化した場合でも、他と比べて温度の高い蓄電素子の初期蓄電容量を十分に大きくすることができるので、全体として、蓄電モジュールの寿命を延ばすことができる。
【0012】
前記蓄電素子群に隣接して、前記通電状態において前記複数の蓄電素子の通電中に発熱する電気的熱源が配されていることが好ましい。
【0013】
上記の態様によれば、複数の蓄電素子に通電された状態において、複数の蓄電素子のうち、電気的熱源に隣接して配された蓄電素子の温度は他と比べて高くなる。この場合においても、電気的熱源に隣接して配された蓄電素子の初期蓄電容量を他と比べて大きくすることにより、蓄電モジュールの寿命を延ばすことができる。
【0014】
前記電気的熱源は前記複数の蓄電素子の状態を管理するECUであってもよい。
【0015】
上記の態様によれば、ECUを備えた蓄電モジュールの寿命を延ばすことができる。
【0016】
前記蓄電素子群は車両に搭載されており、前記車両には前記車両の走行中に発熱する車両側熱源が更に搭載されており、前記蓄電素子群は、前記車両のうち前記車両側熱源の近傍に配されるものであってもよい。
【0017】
車両が走行している状態においては、複数の蓄電素子のうち車両側熱源に近い位置に配された蓄電素子の温度は他と比べて高くなる。この場合においても、車両側熱源に近い位置に配された蓄電素子の初期蓄電容量を他と比べて大きくすることにより、蓄電モジュールの寿命を延ばすことができる。
【0018】
前記車両側熱源はエンジンであってもよい。
【0019】
上記の態様によれば、エンジンの近傍に配された場合でも、蓄電モジュールの寿命を延ばすことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡易な構成により蓄電モジュールの寿命を延ばすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態1>
本発明の実施形態1につき、
図1ないし
図3を参照しつつ説明する。本実施形態に係る蓄電モジュール10Aは、電気自動車、ハイブリッド車、ガソリン車、ディーゼル車等の車両11に搭載される。以下の説明においては、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向として説明する。
【0023】
(車両11)
図1に示すように、車両11の車体12は、エンジン13が収容されたエンジンルーム14と、エンジンルーム14の後方に設けられて乗員が乗る車室15と、を備える。エンジン13は、車両11が走行する状態において熱を発生する車両側熱源とされる。
【0024】
(蓄電モジュール10A)
車室15のうち前端部寄りの位置であって、且つ、車室15の右端部寄りの位置には、蓄電モジュール10Aが配設されている。車室15はエンジンルーム14の後方に位置しているので、蓄電モジュール10Aは車室15のうちエンジンルーム14の近傍の位置に配された状態になっている。蓄電モジュール10Aは、複数(本実施形態では4つ)の蓄電素子X1,X2,X3,X4が電気的に接続された蓄電素子群16を備える。
【0025】
(蓄電素子群16)
図2に示すように、本実施形態においては、4つの蓄電素子X1,X2,X3,X4が左右方向に並んで配されており、左から順に、蓄電素子X1,蓄電素子X2,蓄電素子X3,蓄電素子X4とされる。蓄電素子X1〜X4は、直方体形状をなしている。直方体形状とは、直方体を含むと共に、直方体でなくとも、実質的に直方体形状を認められる形状を含む。4つの蓄電素子X1〜X4は、図示しない導電性の接続部材により直列に接続されている。本実施形態において、複数の蓄電素子X1〜X4は同形、同大である。
【0026】
蓄電素子X1〜X4は、正極(図示せず)と、負極(図示せず)と、ケース17と、ケース17内に収容された図示しない蓄電要素と、を備える。ケース17内には、固体、又は液体の電解質が充填されている。
【0027】
(熱的環境)
車室15内の温度分布は、概ね、車室15の内部から外部へ向かうに従って低くなっている。このため、車室15の前端部寄りの位置あって、且つ右端部寄りの位置に、左右方向に並べて配された複数の蓄電素子X1〜X4の温度も、車室15の内部から外部に至るにつれて(
図1において左から右に向かうにつれて)低くなっている。
【0028】
エンジン13は、車両11が走行している間、発熱しているので、エンジンルーム14の温度は車室15内に比べて高くなっている。本実施形態に係る全ての蓄電素子X1〜X4の前端部は、エンジンルーム14側に配されている。このため、エンジン13の発熱に関して、複数の蓄電素子X1〜X4間で温度条件に差異は生じないようになっている。
【0029】
(実施例1)
続いて、本発明を蓄電モジュール10Aに適用した実施例1について説明する。実施例1に係る蓄電素子X1〜X4は、ケース17内に、箔状の正極集電体に分極性電極物質を含む正極合剤を塗布してなる正極合板と、箔状の負極集電体に負極活物質を含む負極合剤を塗布してなる負極合板との間に、シート状をなす絶縁性のセパレータを介在させた蓄電要素が収容されてなる。ケース17内には液体状又は固体状の電解質が充填されている。実施例1に係る蓄電素子X1〜X4は、いわゆるリチウムイオンキャパシタである。
【0030】
実施例1に係る蓄電素子X1〜X4は、X方向の長さ寸法が1.5cmであり、Y方向の長さ寸法が10cmであり、Z方向の長さ寸法が12cmとされる。
【0031】
蓄電素子X1〜X4については、ケース17内に収容する蓄電要素における正極合板及び負極合板の塗布量を変更することにより、各蓄電素子X1〜X4の放電容量を変えた。
【0032】
(初期静電容量)
実施例1に係る蓄電素子X1〜X4のそれぞれについては、以下のようにして初期静電容量を測定した。25℃において、20mAの電流、3.8Vの電圧で定電流定電圧充電した。充電の終了条件は、15V到達後30分経過した時点とした。その後、20Aの電流で2.2Vまで放電し、3.5Vから2.5Vまでの電圧範囲での放電電荷量から静電容量を算出し、初期静電容量とした。
【0033】
4つの蓄電素子X1〜X4を左右方向に並べて、図示しない接続部材によって直列接続することにより、蓄電モジュール10Aを作製した。
【0034】
上記の蓄電モジュール10Aを車両11の車体12に形成された車室15内に配置した。蓄電モジュール10Aは、車室15内の前端部であって、且つ、右端部寄りの位置に配置した。
【0036】
(サイクル特性試験)
本実施形態に係る蓄電モジュール10Aについては、以下のようにしてサイクル特性試験を行った。電流20A、電圧15.2Vの定電流定電圧充電を行った。充電終止条件については、電流値が15.2V到達後30分経過した時点とした。その後、電流20A、終止電圧8.8Vの定電流放電を行った。上記充放電サイクルを1サイクルとし、これを1000サイクル連続して実施した。このときの1サイクル目に対する1000サイクル目の蓄電容量の比率を蓄電容量維持率とした。なお、本明細書で用いる「蓄電容量」には、一般的に二次電池に対して用いられる「放電容量」という用語、及び一般的にキャパシタに対して用いられる「静電容量」という用語が含まれるものとする。
【0037】
上記のサイクル特性試験は、車両11のエンジン13を作動させた状態で実施した。車両11のエンジン13が作動された状態で、且つサイクル特性試験を実施している状態における各蓄電素子X1〜X4の温度を測定した。各蓄電素子X1〜X4の温度と、各蓄電素子X1〜X4の初期静電容量について
図1にまとめた。
【0038】
また、表1に、蓄電素子X1,X2,X3について、(複数の蓄電素子に通電された通電状態において、最小蓄電素子と異なる蓄電素子の初期静電容量と最小初期静電容量との差)/{(最小蓄電素子と異なる蓄電素子の温度と最小蓄電素子の温度との差)×最小初期静電容量}の値Dを記載した。
【0039】
(比較例1)
比較例1においては、4つの蓄電素子X1〜X4の初期静電容量は、同一(1300F)であるものとした。上記以外の条件については実施例1と同様にして蓄電モジュール10Aを作製し、サイクル特性試験を実施した。
【0040】
比較例1においては、全ての蓄電素子X1〜X4の初期静電容量は同一なので、値Dは0となる。
【0041】
(結果)
比較例1に係る蓄電モジュール10Aの蓄電容量維持率を100とした場合における、実施例1に係る蓄電モジュール10Aの蓄電維持率の相対値は、103であった。このように実施例1に係る蓄電モジュール10Aの寿命は、比較例1に係る蓄電モジュール10Aに比べて20%も向上した。
【0042】
実施例1においては、複数の蓄電素子X1〜X4に一定時間通電された通電状態において、蓄電素子X1〜X4のうち、一の蓄電素子の温度と他の蓄電素子の温度とを比較して温度の高い蓄電素子の初期静電容量が温度の低い蓄電素子の初期静電容量よりも大きく設定されている。この結果、複数の蓄電素子X1〜X4に通電された状態において、他と比べて温度の高い蓄電素子の初期静電容量は、必ず大きく設定されている。これにより、劣化の進行が速いと考えられる温度の高い蓄電素子の寿命を延ばすことができる。この結果、全体として、蓄電モジュール10Aの寿命を延ばすことができる。
【0043】
また、複数の蓄電素子X1〜X4のうち初期静電容量が最小であるものを最小蓄電素子する。本実施形態においては、蓄電素子X4が最小蓄電素子とされる。最小蓄電素子X4の初期静電容量を最小初期静電容量としたときに、(複数の蓄電素子に通電された通電状態において、最小蓄電素子と異なる蓄電素子の初期放電容量と最小初期放電容量との差)/{(最小蓄電素子と異なる蓄電素子の温度と最小蓄電素子の温度との差)×最小初期放電容量}の値Dは、蓄電素子X1では0.0123であり、蓄電素子X2では0.0154であり、蓄電素子X3では0.0077であった。このように実施例1では、値Dは、0.001〜0.1に設定されている。
【0044】
上記の値Dは、より好ましくは0.003〜0.05であり、特に好ましくは、0.005〜0.02である。
【0045】
実施例1によれば、複数の蓄電素子X1〜X4に通電された状態において、他と比べて温度の高い蓄電素子の性能が劣化した場合でも、他と比べて温度の高い蓄電素子の初期静電容量を十分に大きくすることができるので、全体として、蓄電モジュール10Aの寿命を延ばすことができる。
【0046】
なお、本明細書で用いる「一定時間」とは、「ある程度の幅をもった時間」という意味であり、その長さが不変であることを意味するものではない。また、「一定時間」とは、通電された複数の蓄電素子のうち、少なくとも2つの蓄電素子の温度の間に差が生じる時間をいう。
【0047】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2について、
図4ないし
図6を参照しつつ説明する。
図4及び
図5に示すように、本実施形態においては、蓄電モジュール10Bの右方には、蓄電モジュール10Bに隣接してECU18が配されている。ECU18は、複数の蓄電素子X1〜X4の状態を管理するようになっている。
【0048】
(ECU18)
ECU18は図示しないマイコンを備える。マイコンは、複数の蓄電素子X1〜X4の状態を示す信号を取得し、複数の蓄電素子X1〜X4の状態を判断し、複数の蓄電素子X1〜X4の放電状態及び充電状態を制御する。このようにECU18のマイコンは、複数の蓄電素子X1〜X4に通電されている状態において複数の蓄電素子X1〜X4の状態を管理する処理を実行しており、発熱している。このため、ECU18は、複数の蓄電素子X1〜X4に通電されている状態において発熱する電気的熱源とされる。
【0049】
(熱的環境)
複数の蓄電素子X1〜X4に通電している間、ECU18は各蓄電素子X1〜X4の状態を管理するために作動している。このため、複数の蓄電素子X1〜X4に通電しているときにはECU18自体も発熱するので、複数の蓄電素子X1〜X4のうちECU18に最も近い位置に配された蓄電素子X4の温度の温度は、他の蓄電素子X1,X2,X3に比べて最も高くなる。本実施形態においては、蓄電素子群16のうち、右端部に配された蓄電素子X4の温度が最も高くなる。
【0050】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0051】
(実施例2)
蓄電モジュール10Bの右方にECU18を配置した以外は実施例2と同様にして蓄電モジュール10Bを作製し、サイクル特性試験を実施した。
【0052】
実施例2につき、左右方向について並べられた各蓄電素子X1〜X4の初期静電容量と、各蓄電素子X1〜X4の温度とを
図6にまとめた。実施例2においては、蓄電素子X2,X3が最小蓄電素子とされる。
【0053】
また、表2に、蓄電素子X1,X4について、(複数の蓄電素子に通電された通電状態において、最小蓄電素子と異なる蓄電素子の初期静電容量と最小初期静電容量との差)/{(最小蓄電素子と異なる蓄電素子の温度と最小蓄電素子の温度との差)×最小初期静電容量}の値Dを記載した。
【0055】
(比較例2)
比較例2においては、4つの蓄電素子X1〜X4の初期放電容量は同一(1290F)であるものとした。上記以外の条件については実施例2と同様にして蓄電モジュール10B作製し、サイクル特性試験を実施した。
【0056】
比較例2においては、全ての蓄電素子X1〜X4の初期静電容量は同一なので、値Dは0となる。
【0057】
(結果)
比較例2に係る蓄電モジュール10Bの蓄電容量維持率を100とした場合における、実施例2に係る蓄電モジュール10Bの静電容量維持率の相対値は、102であった。このように実施例2に係る蓄電モジュール10Bの寿命は、比較例2に係る蓄電モジュール10Bに比べて12%も向上した。
【0058】
実施例2における値Dは、蓄電素子X1では0.0129であり、蓄電素子X4では0.0124であった。このように実施例2では、値Dは、0.001〜0.1に設定されている。
【0059】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3について、
図7ないし
図9を参照しつつ説明する。
図7及び
図9に示すように、実施形態3においては、複数(本実施形態では4つ)の蓄電素子Y1,Y2,Y3,Y4は、前後方向に並んで配されている。各蓄電素子Y1〜Y4は同形同大に形成されている。
【0060】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0061】
(実施例3)
続いて、本発明を蓄電モジュール10Cに適用した実施例3について説明する。実施例3に係る蓄電素子Y1〜Y4は、X方向の長さ寸法が10cmであり、Y方向の長さ寸法が1.5cmであり、Z方向の長さ寸法が12cmとされる。
【0062】
蓄電素子Y1〜Y4については、ケース17内に収容する蓄電要素における正極板及び負極板の大きさを変更することにより、各蓄電素子Y1〜Y4の静電容量を変えた。
【0063】
4つの蓄電素子Y1〜Y4を前後方向に並べて、図示しない接続部材によって直列接続することにより、蓄電モジュール10Cを作製した。
【0064】
上記の蓄電モジュール10Cを車両11の車体12に形成された車室15内に配置した。蓄電モジュール10Cは、車室15内の前端部であって、且つ、右端部寄りの位置に配置した。
【0065】
サイクル特性試験は、車両11のエンジン13を作動させた状態で実施した。車両11のエンジン13が作動された状態で、且つサイクル特性試験を実施している状態における各蓄電素子Y1〜Y4の温度を測定した。各蓄電素子Y1〜Y4の温度と、各蓄電素子Y1〜Y4の初期静電容量について
図9にまとめた。実施例3では、蓄電素子Y1が最小蓄電素子とされる。
【0066】
また、表3に、蓄電素子Y2,Y3,Y4について、(複数の蓄電素子に通電された通電状態において、最小蓄電素子と異なる蓄電素子の初期静電容量と最小初期静電容量との差)/{(最小蓄電素子と異なる蓄電素子の温度と最小蓄電素子の温度との差)×最小初期静電容量}の値Dを記載した。
【0068】
(比較例3)
比較例1においては、4つの蓄電素子Y1〜Y4の初期静電容量は同一(1440F)であるものとした。上記以外の条件については実施例3と同様にして蓄電モジュール10Cを作製し、サイクル特性試験を実施した。
【0069】
比較例3においては、全ての蓄電素子Y1〜Y4の初期静電容量は同一なので、値Dは0となる。
【0070】
(結果)
比較例3に係る蓄電モジュール10Cの蓄電容量維持率を100とした場合における、実施例3に係る蓄電モジュール10Cの蓄電容量維持率の相対値は、105であった。このように実施例3に係る蓄電モジュール10Cの寿命は、比較例3に係る蓄電モジュール10Cに比べて30%も向上した。
【0071】
実施例3における値Dは、蓄電素子Y2では0.0139であり、蓄電素子Y3では0.104であり、蓄電素子Y4では0.0089であった。このように実施例3では、値Dは、0.001〜0.1に設定されている。
【0072】
<実施形態4>
次に、本発明の実施形態4について、
図10ないし
図12を参照しつつ説明する。
図10及び
図11に示すように、本実施形態においては、蓄電モジュール10Dの右方には、蓄電モジュール10Dに隣接してECU18が配されている。ECU18は、複数の蓄電素子Y1〜Y4の状態を管理するようになっている。
【0073】
(ECU18)
ECU18は図示しないマイコンを備える。マイコンは、複数の蓄電素子Y1〜Y4の状態を示す信号を取得し、複数の蓄電素子Y1〜Y4の状態を判断し、複数の蓄電素子Y1〜Y4の放電状態及び充電状態を制御する。このようにECU18のマイコンは、複数の蓄電素子Y1〜Y4に通電されている状態において複数の蓄電素子Y1〜Y4の状態を管理する処理を実行しており、発熱している。このため、ECU18は、複数の蓄電素子Y1〜Y4に通電されている状態において発熱する電気的熱源とされる。
【0074】
(熱的環境)
複数の蓄電素子Y1〜Y4に通電している間、ECU18は各蓄電素子Y1〜Y4の状態を管理するために作動している。このため、複数の蓄電素子Y1〜Y4に通電しているときにはECU18自体も発熱するので、複数の蓄電素子Y1〜Y4のうちECU18に最も近い位置に配された蓄電素子Y4の温度の温度は、他の蓄電素子Y1,Y2,Y3に比べて最も高くなる。
【0075】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0076】
(実施例4)
蓄電モジュール10Dの右方にECU18を配置した以外は実施例3と同様にして蓄電モジュール10Dを作製し、サイクル特性試験を実施した。各蓄電素子Y1〜Y4の温度と、各蓄電素子Y1〜Y4の初期静電容量について
図12にまとめた。実施例4では、蓄電素子Y1が最小蓄電素子とされる。
【0077】
また、表4に、蓄電素子Y2,Y3,Y4について、(複数の蓄電素子に通電された通電状態において、最小蓄電素子と異なる蓄電素子の初期静電容量と最小初期静電容量との差)/{(最小蓄電素子と異なる蓄電素子の温度と最小蓄電素子の温度との差)×最小初期静電容量}の値Dを記載した。
【0079】
(比較例4)
比較例4においては、4つの蓄電素子Y1〜Y4の初期静電容量は同一(1440F)であるものとした。上記以外の条件については実施例4と同様にして蓄電モジュール10Dを作製し、サイクル特性試験を実施した。
【0080】
比較例4においては、全ての蓄電素子Y1〜Y4の初期静電容量は同一なので、値Dは0となる。
【0081】
(結果)
比較例4に係る蓄電モジュール10Dの蓄電容量維持率を100とした場合における、実施例4に係る蓄電モジュール10Dの蓄電容量維持率の相対値は、105であった。このように実施例4に係る蓄電モジュール10Dの寿命は、比較例4に係る蓄電モジュール10Dに比べて30%も向上した。
【0082】
実施例4における値Dは、蓄電素子Y2では0.0139であり、蓄電素子Y3では0.0104であり、蓄電素子Y4では0.0089であった。このように実施例4では、値Dは、0.001〜0.1に設定されている。
【0083】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0084】
(1)本実施形態においては、蓄電素子としてリチウムイオンキャパシタを用いたが、これに限られず、蓄電素子としては、ニッケル―水素電池、リチウムイオン二次電池等の公知の二次電池を用いてもよい。
【0085】
(2)本実施形態においては、角形の蓄電素子を用いたが、これに限られず、蓄電素子としては、円筒型、コイン型、ラミネート型等、必要に応じて任意の形状を採用することができる。
【0086】
(3)本実施形態においては、複数の蓄電素子は直列に接続される構成としたが、これに限られず、複数の蓄電素子は、並列接続でもよく、また、並列接続された複数の蓄電素子群16を直列接続する構成としてもよい。
【0087】
(4)本実施形態においては、4つの蓄電素子が並べられて蓄電素子群16が形成される構成としたが、これに限られず、蓄電素子群16は、2つ〜3つ、又は、5つ以上の蓄電素子を含む構成としてもよい。
【0088】
(5)本実施形態に係る蓄電モジュールは車両11に搭載される構成としたが、蓄電モジュールは、電動自転車、電動バイク等に搭載される構成としてもよい。
【0089】
(6)本実施形態においては、車両側熱源はエンジン13であったが、これに限られず、車両側熱源は、排気管でもよく、変速装置でもよく、車両11の走行時に発熱する任意の装置とすることができる。
【0090】
(7)本実施形態においては、電気的熱源はECU18であったが、これに限られず、電気的熱源としては、蓄電モジュールから導出されて、複数の蓄電モジュール同士を接続する導電路であってもよい。
【0091】
(8)本実施形態においては、同形同大の複数の蓄電素子につき、ケース内に収容される蓄電要素の量を増減させることにより初期放電容量を増減させたが、これに限られず、複数の蓄電素子は、体積を異ならせて蓄電要素の体積を増減させることにより、各蓄電素子の初期放電容量を異ならせる構成としてもよい。