特開2015-20198(P2015-20198A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2015020198-自動溶接装置用遮光装置 図000003
  • 特開2015020198-自動溶接装置用遮光装置 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-20198(P2015-20198A)
(43)【公開日】2015年2月2日
(54)【発明の名称】自動溶接装置用遮光装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/32 20060101AFI20150106BHJP
   A61F 9/06 20060101ALI20150106BHJP
【FI】
   B23K9/32 B
   A61F9/06 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-151523(P2013-151523)
(22)【出願日】2013年7月22日
(71)【出願人】
【識別番号】501188306
【氏名又は名称】株式会社フナボリ
(74)【代理人】
【識別番号】100091591
【弁理士】
【氏名又は名称】望月 秀人
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 政則
(57)【要約】
【課題】 従来の自動溶接装置用遮光装置は、遮光板が衝立式であったため、移動が困難であり、ワーク交換時等の操作が煩雑であることに鑑みて、可搬性に優れ、操作性を向上させた自動溶接装置用遮光装置を提供する。
【解決手段】 枠状のフレーム1の上部に設けた巻取ロール6に遮光シート3を巻き取らせてあり、この巻取ロール6の回転方向に応じて遮光シート3の巻き取りと繰り出しとを行わせる。巻取ロール6の回転は、フレーム1の側面に設けたロール駆動手段10により行わせる。このロール駆動手段10の動作に圧縮空気を利用する。フレーム1の下部の脚フレーム2dにキャスター4を設けて、フレーム1を作業者が押動することにより容易に移動できるようにしてある。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動溶接装置に臨ませて設置して、アークによる発光を遮光する遮光板を備える自動溶接装置用遮光装置において、
前記自動溶接装置に臨ませて配する、該自動溶接装置の寸法に応じた枠状のフレームと、
前記フレームの下端部に取り付けたキャスターと、
前記フレームの上部に配した巻取ロールと、
前記巻取ロールに巻き取られる遮光シートと、
前記遮光シートの走行を案内する、前記フレームに固定させた遮光シート案内レールと、
前記巻取ロールを可逆回転させて、前記遮光シートを該巻取ロールへの巻き取りと繰り出しとを行わせるロール駆動手段とを備え、
前記巻取ロールから遮光シートを繰り出した状態で、前記フレームの内側に該遮光シートが展開した状態となることを特徴とする自動溶接装置用遮光装置。
【請求項2】
前記ロール駆動手段は、
前記フレームの外側側面に取り付けた一対のスプロケットと、
前記一対のスプロケットに掛け渡したローラーチェーンと、
前記ローラーチェーンに連結させたピストンロッドを備えたエアシリンダとからなり、
前記スプロケットの一方を前記巻取ロールの回転軸に嵌合させて、前記ピストンロッドの進退によってローラーチェーンの移動方向を変更させ、巻取ロールの回転方向を変更することによって、前記遮光シートの巻き取りと繰り出しとを行わせることを特徴とする請求項1に記載の自動溶接装置用遮光装置。
【請求項3】
前記エアシリンダに複動式のものを用いたことを特徴とする請求項2に記載の自動溶接装置用遮光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アーク溶接等の自動溶接装置の近辺に衝立式に配して、溶接作業の際のアークが発する高輝度の光を周囲の作業者に対して遮断する自動溶接装置用遮光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接時にアークから発せられる光は高輝度であることから、溶接作業においては、作業者の目の保護および顔面や身体を溶接焼けから守るための遮光手段を要する。この種の遮光手段では、遮光性や不燃性を備えた遮光板を設置して溶接作業の領域を遮断している。
【0003】
例えば、特許文献1には、プラズマ溶接ロボットシステムとして、マニピュレータの近傍に、プラズマ溶接トーチのアークを遮光する遮光板が配されている構成が開示されて、作業者をアークから保護する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−30026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の自動溶接装置用遮光装置では、特許文献1に開示されているように、溶接装置の周囲の必要な場所に、遮光性と不燃性を備えた遮光板が取り付けられた衝立式の遮光装置が設置されて、作業時の遮光が行われている。
【0006】
しかしながら、例えば、溶接の対象となるワークの取り出しや交換をする場合や、自動溶接装置の調整やメンテナンス等を行う場合等には前記遮光装置を移動させることを要する。また、特許文献1に開示された遮光板にはシャッタまたは開き戸が設けられており、これらを開放させてワークの交換等が行われる。
【0007】
しかしながら、これらの作業を行う場合であっても、遮光板そのものが支障となる場合があり、衝立を移動させる場合があるが、迅速に移動させることができない。
【0008】
特に、多数の自動溶接装置が設置されている工場等であっても、受注生産等によって稼働中の自動溶接装置が数台である場合に、衝立式の遮光板では、稼働していない自動溶接装置にも設置されていることとなり、設置スペースを要すると共に、無駄な機材となってしまっている。
【0009】
そこで、この発明は、移動が容易で、複数台の自動溶接装置がある場合に、稼働させる自動溶接装置に容易に対応させることができると共に、ワークの交換等を支障なく行うことができるようにする自動溶接装置用遮光装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る自動溶接装置用遮光装置は、自動溶接装置に臨ませて設置して、アークによる発光を遮光する遮光板を備える自動溶接装置用遮光装置において、前記自動溶接装置に臨ませて配する、該自動溶接装置の寸法に応じた枠状のフレームと、前記フレームの下端部に取り付けたキャスターと、前記フレームの上部に配した巻取ロールと、前記巻取ロールに巻き取られる遮光シートと、前記遮光シートの走行を案内する、前記フレームに固定させた遮光シート案内レールと、前記巻取ロールを可逆回転させて、前記遮光シートを該巻取ロールへの巻き取りと繰り出しとを行わせるロール駆動手段とを備え、前記巻取ロールから遮光シートを繰り出した状態で、前記フレームの内側に該遮光シートが展開した状態となることを特徴としている。
【0011】
遮光を要する自動溶接装置の近傍に、前記遮光装置を移動させる。このとき、キャスターにより作業者が押動して移動させる。次いで、前記ロール駆動手段の作動によって前記巻取ロールを正回転させて、前記遮光シートを繰り出す。遮光シートは前記遮光シート案内レールに案内されてフレームで囲まれた遮光部に展開され、自動溶接装置を臨んで遮光シートが配され、溶接作業時の光を遮断することになる。
【0012】
前記ロール駆動手段を作動させて、前記巻取ロールを逆回転させると、遮光シートが巻取ロールに巻き取られて、遮光部から退避する。これにより、フレームで囲まれた部分が開放されて、自動溶接装置に対してワークの交換等の必要な作業を行える。
【0013】
また、請求項2の発明に係る自動溶接装置用遮光装置は、前記ロール駆動手段は、前記フレームの外側側面に取り付けた一対のスプロケットと、前記一対のスプロケットに掛け渡したローラーチェーンと、前記ローラーチェーンに連結させたピストンロッドを備えたエアシリンダとからなり、前記スプロケットの一方を前記巻取ロールの回転軸に嵌合させて、前記ピストンロッドの進退によってローラーチェーンの移動方向を変更させ、巻取ロールの回転方向を変更することによって、前記遮光シートの巻き取りと繰り出しとを行わせることを特徴としている。
【0014】
前記ロール駆動手段としては、巻取ロールの回転軸に嵌合させたピニオンを、往復運動するラックによって回転させたり、ギヤードケーブルを利用したりその他の機構を用いることができる。本願発明では、チェーンとチェーンスプロケットを組合せ、チェーンをエアシリンダによるピストンの往復運動によって移動させてスプロケットを回転させ、このスプロケットの回転によって前記巻取ロールを可逆回転させるようにしたものである。
【0015】
また、請求項3の発明に係る自動溶接装置用遮光装置は、前記エアシリンダに複動式のものを用いたことを特徴としている。
【0016】
複動型のエアシリンダを利用するものである。単動型のエアシリンダを利用する場合には、復帰バネ等の機械構造等を要するが、複動型であれば駆動エアのみで作動させることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る自動溶接装置用遮光装置によれば、前記フレームを押動すれば簡便に移動させることができ、可搬性に優れた自動溶接装置用遮光装置とすることができる。しかも、ロール駆動手段を作動させることによって遮光シートの巻き取りと繰り出しとを行わせるから、簡単な操作によって迅速に遮光シートの出し入れを行うことができる。
【0018】
また、可搬性に優れているため、稼働する自動溶接装置に対応させて迅速に設置でき、自動溶接装置による溶接作業の効率を向上させることができる。
【0019】
さらに、遮光シートを巻取ロールに巻き取らせて遮光部から退避させれば、作業者が前記フレームの中央部を通って自動溶接装置に容易に接近することができ、ワークの交換や自動溶接装置の調整やメンテナンスを迅速に行うことができる。
【0020】
また、請求項2の発明に係る自動溶接装置用遮光装置によれば、スプロケットとローラーチェーンとの組合せによって巻取ロールを正逆いずれの方向にも確実に回転させることができる。また、エアシリンダによるピストンロッドの往復直線運動を巻取ローラーの回転運動に、簡単な機構で変更する構造にできるので、コストを抑制することができる。
【0021】
また、請求項3の発明に係る自動溶接装置用遮光装置によれば、前記ロール駆動手段に複動型のエアシリンダを用いたため、電気的に駆動手段に較べて、駆動に要するエネルギーの削減を図ることができ、二酸化炭素の排出の削減を果たす。また、軽量化を図ることができると共に、故障の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明に係る自動溶接装置用遮光装置の概略構造を示す斜視図である。
図2図1に示す自動溶接装置用遮光装置におけるフレームの右側面図であり、要部を示しており、また、一部を省略して示してある。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係る自動溶接装置用遮光装置を具体的に説明する。
【0024】
図1は、この発明に係る自動溶接装置用遮光装置1の構造を説明する概略の斜視図である。この自動溶接装置用遮光装置1は、枠状のフレーム2に遮光シート3が昇降自在に設けられた構造を備えている。遮光シート3は、遮光性と不燃性を備えており、下端部のハッチングで示す部分には暗色で不透明部3aが接続され、その他の部分は半透明部3bとされており、この半透明部3bを通して反対側を視認できて、溶接作業の状況を確認できるようにしてある。
【0025】
前記フレーム2は、2本の支柱フレーム2aの上部が梁フレーム2bで連結され、下部が補強フレーム2cで連結された枠状に形成されている。支柱フレーム2aの下端部には脚フレーム2dが設けられ、この脚フレーム2dの下面にそれぞれ一対のキャスター4が設けられて、フレーム2を移動させることができるようにしてある。前記支柱フレーム2aのそれぞれ内側面には、遮光シート案内レール5が設けられており、この遮光シート案内レール5の中央部に形成されたスリット5aに前記遮光シート3の側端部が挿入されて、該遮光シート3の昇降が案内されている。
【0026】
前記支柱フレーム2aの上部には巻取ロール6が両端が掛け渡されて回転自在に支持されており、この巻取ロール6に前記遮光シート3が巻き取られている。なお、前記梁フレーム2bは下方が開口したコ字形としてあり、このコ字形の内側にこの巻取ロール6が収容されるようにしてある。
【0027】
前記巻取ロール6の両端部の支持軸6aは軸受12aに支持されて回転自在とされており、支持軸6aの一方の端部は軸受12aから外側に突出されている。支持軸6aの端部を軸受12aからさらに外側に突出させた側の支柱フレーム2bの外側面には、ロール駆動手段10が配されている。
【0028】
前記支持軸6aの軸受12aから突出させた端部には、被動スプロケット11aが嵌着されている。この被動スプロケット11aの下方には該被動スプロケット11aと対となる案内スプロケット11bが、軸受12bに回転自在に支持された支持軸12cに嵌着されている。これら一対のスプロケット11a、11bにローラーチェーン13が掛け渡されている。このローラーチェーン13の一部には、ピストンロッド14の先端部が連係させてある。この実施形態では、ピストンロッド14の先端に連係ブラケット15が取り付けられ、この連係ブラケット15に植設された連係ロッド15aがローラーチェーン13の一つのリンクのローラー間に挿入されて、ピストンロッド14とローラーチェーン13とが連係されている。前記軸受12bは、支柱フレーム2aの形成された上下方向を長手方向とする長孔に連係させることによって、上下方向の位置が調整可能とされている。この軸受12bの上方には調整板16が支柱フレーム2aに固定されており、この調整板16に調整ボルト16aが螺合されている。この調整ボルト16aの先端を前記軸受12bのハウジングの上面に当接させてある。すなわち、この調整ボルト16aを調整板16に対して回転させて前進させることにより、ハウジングを前記長孔に対して移動させて、軸受12bの位置を変更することによって、軸受12a、12bの中心間距離が調整されるようにしてある。
【0029】
前記ピストンロッド14の往復直線運動は、エアシリンダ17の動作によって行われる。このエアシリンダ17には複動型のものが用いられており、前進用空気供給口17aと後退用空気供給口17bには、4ポート弁等の切替弁18を経由して作動用空気が供給される。切替弁18にはコンプレッサから配管18cを介して圧縮空気が供給され、配管18aを介して前記前進用空気供給口17aに作動空気が供給され、配管18bを介して前記後退用空気供給口17bに作動空気が供給される。なお、切替弁18には排気ポート18dが設けられている。また、この切替弁18による動作空気の供給の切替は、切替レバー18eを手動で操作することにより行われる。エアシリンダ17の先端部には、ピストンロッド14が遊挿されて緩衝バネ19が配されている。
【0030】
以上により構成されたこの発明に係る自動溶接装置用遮光装置1の動作を、以下に説明する。
【0031】
遮光を要する自動溶接装置に臨ませた所望の位置に、この自動溶接装置用遮光装置1を移動させる。このとき、作業者がフレーム1を押動させると、フレーム1の脚フレーム2dに取り付けられているキャスター4が転動して簡単に移動させることができる。移動後には、必要に応じてコンプレッサから供給される圧縮空気の配管18cを切替弁18に接続させる。なお、移動時に配管18cを脱着する必要がない場合には、フレーム1を移動させることで足りる。
【0032】
次いで、前記切替レバー18eを操作して、切替弁18の圧縮空気の流路を、後退空気供給口17bに連通させる。これにより、圧縮空気がピストンロッド14を後退させ、該ピストンロッド14はエアシリンダ17内に収容される方向に移動する。なお、後退移動の終端では、前記連結ブラケット15が緩衝バネ19に当接して衝撃が緩和される。ピストンロッド14の先端部にローラチェーン13が連係させてあるから、このピストンロッド14の後退動作によって、ローラチェーン13が、図2において矢標R方向へ移動して、被動スプロケット11aを、図2において時計回り方向へ回転させる。これにより、前記巻取ロール6が同方向へ正回転することにより、この巻取ロール6に巻き取られている遮光シート3が繰り出される。このとき、遮光シート3は、前記遮光シート案内レール5に案内されて、フレーム1の枠内に展開されることになる。これにより、自動溶接装置に臨んで遮光シート3が配された状態となり、自動溶接装置による溶接作業時に発せられる光が遮られる。
【0033】
前記自動溶接装置による加工すべきワークを交換する場合には、前記切替レバー18eを操作して、切替弁18により流路を変更して圧縮空気を前進空気供給口17aに連通させる。これにより、ピストンロッド14がエアシリンダ17から突出する方向に前進する。このピストンロッド14の前進によって前記被動スプロケット11aが、図2において反時計回り方向に回転し、巻取ロール6を同方向に逆回転する。この巻取ロール6の回転によって展開していた遮光シート3が巻取ロール6に巻き取られてフレーム1の枠内が開放されるから、作業者は自動溶接装置に接近してワークの交換等を行うことができる。
【0034】
当該自動溶接装置による作業が完了した場合で、他の自動溶接装置による作業を行う場合には、この自動溶接装置用遮光装置1を押動させて、他の自動溶接装置の作業場所まで移動させ、前述と同様に遮光シート3を巻取ロール6から繰り出せばよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明に係る自動溶接装置用遮光装置によれば、簡単な操作で、確実に遮光シートを溶接作業場所で展開させることができ、しかも、可搬性の良好なものとしたから、自動溶接装置により溶接作業の効率の向上に寄与する。
【符号の説明】
【0036】
1 自動溶接装置用遮光装置
2 フレーム
2a 支柱フレーム
2b 梁フレーム
2d 脚フレーム
3 遮光シート
4 キャスター
5 遮光シート案内レール
6 巻取ロール
10 ローラ駆動手段
11a 被動スプロケット
11b 案内スプロケット
13 ローラーチェーン
14 ピストンロッド
15 連結ブラケット
15a 連結ロッド
17 エアシリンダ
17a 前進用空気供給口
17b 後退用空気供給口
18 切替弁
18a、18b、18c 配管
18d 排気ポート
18e 切替レバー
図1
図2