【解決手段】 平均一次粒径が6〜15nmであるアルミナ担体と、前記アルミナ担体に担持されたマンガンとを備えており、前記マンガンの担持量が前記アルミナ担体と前記マンガンとの総量に対して0.5〜8.0質量%であることを特徴とするVOC分解除去用触媒。
平均一次粒径が6〜15nmであるアルミナ担体と、前記アルミナ担体に担持されたマンガンとを備えており、前記マンガンの担持量が前記アルミナ担体と前記マンガンとの総量に対して0.5〜8.0質量%であることを特徴とするVOC分解除去用触媒。
前記アルミナ担体の平均一次粒径が8〜13nm、かつ、前記マンガンの担持量が前記アルミナ担体と前記マンガンとの総量に対して1.0〜5.0質量%であることを特徴とする請求項1に記載のVOC分解除去用触媒。
前記VOC分解除去用触媒を得る工程において、前記焼成の前に前記ゲル化物を得る工程により得られたゲル化物を50〜200℃の範囲内の温度で乾燥せしめて水分を除去し乾燥体を得る工程を含んでいることを特徴とする請求項3に記載のVOC分解除去用触媒の製造方法。
VOCを含有するガスと請求項1又は2に記載のVOC分解除去用触媒とをオゾンの存在下で接触させることにより前記VOCを分解除去することを特徴とするVOC分解除去方法。
前記VOCを含有するガスのVOC(A)に対する前記オゾン(B)の濃度(C1換算)比率(B/A)が0.1〜4であることを特徴とする請求項5に記載のVOC分解除去方法。
【背景技術】
【0002】
VOCは、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)の略称であり、揮発性有機化合物は、揮発性を有し大気中でガス状となる有機化合物の総称である。VOCとしては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、酢酸エチル、メタノール及びジクロロメタン等が挙げられ、塗料、接着剤、印刷インキ及び洗浄剤等の幅広い用途に用いられている。
【0003】
他方、光化学オキシダントによる大気汚染は未だ深刻であり、特に東京や名古屋等の都市部においては、光化学オキシダント濃度が環境基準値を満たしておらず、人体への影響が懸念されている。このような光学オキシダントの原因としては自動車等の内燃機関から排出される排ガス等、様々なものが挙げられるが、前記VOCも光学オキシダントの発生原因の一つである。そのため、近年では大気中へのVOC排出量は厳しく規制される傾向にあり、特にVOCの固定発生源である工場等においては、VOC排出量のさらなる低減対策が求められている。
【0004】
VOC排出量を低減するためのVOC処理技術としては、例えば、VOCを活性炭や金属酸化物等の多孔体に吸着させて回収する吸着法、触媒を用いてVOCを酸化分解する触媒法、VOCを高温で燃焼させて酸化分解させる燃焼法、及び前記触媒法と燃焼法とを組み合わせた触媒燃焼法等が知られている。前記触媒法に用いられる触媒としては光触媒が代表的であるが、処理速度が遅いことや、分解することができるVOC量が少ないという問題を有していた。更に、前記触媒燃焼法に用いられる触媒としてはハニカム状やペレット状の担体に白金やパラジウム等の貴金属を担持させた触媒が挙げられるが、被毒により触媒活性が低下しやすいという問題や、原材料となる貴金属の調達が困難であるという問題を有していた。
【0005】
このような課題を解決するために、H.Einaga et al.,J.Catalysis 227(2004)p.304〜312(非特許文献1)には、酢酸マンガン(II)四水和物を含有する水溶液にγ−Al
2O
3を含浸することによって調製した酸化マンガン担持アルミナ触媒が開示されている。しかしながら、非特許文献1に記載の酸化マンガン担持アルミナ触媒は、VOCの分解除去性能が必ずしも十分なものではなかった。
【0006】
また、特開平6−142455号公報(特許文献1)には、有臭成分をオゾンを用いて触媒上で接触酸化分解する方法において、触媒が第1成分としてMn、Niの酸化物から選ばれる少なくとも1種以上、第2成分としてAlの酸化物から構成されるものを用いることを特徴とする脱臭方法が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示されている脱臭方法並びに脱臭触媒においても、VOCの分解除去性能が必ずしも十分なものではなかった。
【0007】
更に、特開昭53−30978号公報(特許文献2)には、オゾン発生装置と、このオゾン発生装置で発生したオゾンに悪臭ガスを混合してなる混合ガスを通じる触媒反応槽と、この触媒反応槽を加熱する加熱装置とで構成する脱臭装置において、前記触媒反応槽の触媒として、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、モリブデン、鉛、タングステン、銅、バナジウムの少なくとも一種の金属若しくは金属酸化物を活性アルミナに担持して構成した脱臭触媒を配置した脱臭装置が開示されている。しかしながら、特許文献2に開示されている脱臭装置においても、VOCの分解除去性能が必ずしも十分なものではなかった。
【0008】
このように、これら非特許文献1、特許文献1及び特許文献2において開示された触媒は、いずれもVOCの分解除去性能が十分なものではなかった。
【0009】
しかしながら、近年は、VOC分解除去触媒に対する要求特性が益々高まっており、より高度なVOC分解除去性能を有するVOC分解除去用触媒が求められるようになってきた。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0026】
先ず、本発明のVOC分解除去用触媒について説明する。本発明のVOC分解除去用触媒は、平均一次粒径が6〜15nmであるアルミナ担体と、前記アルミナ担体に担持されたマンガンとを備えており、前記マンガンの担持量が前記アルミナ担体と前記マンガンとの総量に対して0.5〜8.0質量%であることを特徴とするものである。
【0027】
本発明において、VOCとは、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)の略称であり、前記揮発性有機化合物とは、揮発性を有し、大気中(常温常圧)において揮発して気体となる有機化合物の総称である。前記VOCとしては、トルエン、キシレン、ベンゼン、酢酸エチル、エチルベンゼン、スチレン、エタノール、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、等が挙げられる。本発明のVOC分解除去用触媒は、VOCを分解することによって、このようなVOCを含有するVOC含有ガス中からVOCを除去することが可能な触媒であり、好ましくは、VOCを酸化分解することによってVOC含有ガス中からVOCを除去することが可能な触媒である。本発明のVOC分解除去用触媒は、前記VOCの中でも、特に、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、スチレンの分解除去性能に優れている。更に、本発明のVOC分解除去用触媒は、オゾン存在下においてVOCを分解除去するVOC分解除去用触媒として特に優れている。
【0028】
(アルミナ担体)
本発明に係るアルミナ担体としては、アルミナ(Al
2O
3)を主成分とする担体であることが必要である。このようなアルミナを主成分とするアルミナ担体は、アルミナを主成分とすること以外は特に制限されない。ここで、「アルミナを主成分とする」とは、前記担体がアルミナのみから構成されるもの、或いは、主としてアルミナからなり他の成分を含み構成されるものであることを意味する。他の成分としては、この種の用途の排ガス浄化用触媒の担体として用いられる他の化合物を用いることができる。後者の場合、担体におけるアルミナの含有量は、担体の全質量100質量%に対して50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。このような担体におけるアルミナの含有量が前記下限未満では、担持したマンガンのVOC分解除去性能が低下する傾向にある。
【0029】
なお、このような担体におけるアルミナは、ベーマイト型、擬ベーマイト型、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型、θ型及びα型からなる群から選択される少なくとも一種のアルミナとすることができるが、安価で、かつ、比表面積が大きくガスを吸着する性能が高い傾向にあるという観点から、γ型、擬γ型、δ型及びθ型からなる群から選択される少なくとも一種のアルミナを用いることが好ましく、活性の高いγ−アルミナを用いることが特に好ましい。
【0030】
このような本発明において用いるアルミナ担体としては、平均一次粒径が6〜15nmであることが必要である。アルミナ担体の平均一次粒径が前記下限未満になると、ガス拡散性能が低下してVOC分解除去性能が不十分となる。他方、前記上限を超えると、ガス吸着性能が低下してVOC分解除去性能が低下するという問題が生じる。また、このような平均一次粒径としては、高比表面を確保し、大きな分子も効率よく吸着するという観点から、7〜13nmであることが好ましく、8〜13nmであることが特に好ましい。なお、このような担体の平均一次粒径は、X線回折装置を用いて粉末X線回折ピークの線幅からシェラーの式(Scherrer’s equation)を用いて算出することにより測定することができる。また、このような担体の平均一次粒径は任意の100個以上の粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定して各粒子の粒子径を求め、その値を平均化することにより求めることもできる。なお、このような粒子径は、粒子の断面の最大直径を意味し、粒子の断面が円形ではない場合には、その粒子の断面の最大の外接円の直径とする。
【0031】
また、本発明に係るアルミナ担体としては、十分な比表面積が得られるという観点から多孔質体であることが好ましく、具体的には、窒素吸着法により求めた比表面積が10m
2/g以上(より好ましくは50〜500m
2/g)であることが好ましい。比表面積が前記下限未満であるとVOC含有ガスを吸着する性能が低下してVOC分解除去性能が低下する傾向にある。
【0032】
更に、本発明に係るアルミナ担体においては、窒素吸着法により求めた中心細孔直径が2〜100nmであることが好ましく、5〜50nmであることがより好ましい。中心細孔直径が前記下限未満であると、VOC含有ガス及びオゾンがアルミナ担体の細孔内に十分に拡散されず、担体の外表面及び細孔内におけるVOCの分解除去性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、VOC含有ガスを吸着する性能が低下してVOC分解除去性能が低下する傾向にある。
【0033】
また、本発明に係るアルミナ担体においては、窒素吸着法により求めた細孔容積が0.3〜1.5cm
3/gであることが好ましい。細孔容積が前記下限未満であると、ガス拡散性能が低下してVOC分解除去性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとガス吸着性能が低下してVOC分解除去性能が低下する傾向にある。
【0034】
なお、本発明において、多孔質体の比表面積、中心細孔直径及び細孔容積は窒素吸着法で得られた窒素吸着等温線からBET等温吸着式により求めることができる。すなわち、例えば、先ず、VOC分解除去用触媒を液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法或いは重量法によりその吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各圧力に対する窒素ガスの吸着量をプロットして吸着等温線を得る。前記比表面積は、前記吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。また、前記中心細孔径は、前記吸着等温線を用いて、Cranston−Inklay法、Pollimore−Heal法、BJH法等の計算法を採用することにより得られた細孔径分布曲線の最大ピークにおける細孔半径を2倍した値として算出することができる。更に、前記細孔容積は、前記窒素吸着等温線を用いて相対圧が最高値となるときの窒素吸着量から求めることができる。
【0035】
(マンガン)
本発明に係るマンガン(Mn)は、アルミナ担体に担持されている金属活性種としてのマンガンである。このようなマンガンは、マンガンであること以外は特に制限されない。本発明のVOC分解除去用触媒において、前記アルミナ担体にマンガンを担持することにより、前記アルミナ担体中にVOC及びオゾンが十分に分散して吸着されるためVOC分解除去率がより向上し、更に、VOC分解除去反応においてVOCを含有するガスと触媒の活性種であるMnとの接触により前記触媒のVOC除去性能が発揮され、優れたVOC分解除去性能が発揮される。
【0036】
このような本発明において用いるマンガン(Mn)としては、担持量が前記アルミナ担体と前記マンガンとの総量に対して0.5〜8.0質量%であることが必要である。マンガン(Mn)の担持量が前記下限未満である場合、及び、前記上限を超える場合にはいずれも、十分なVOC分解除去性能が発揮されず、VOCの除去率が低下する。また、このようなマンガン(Mn)の担持量としては、前記アルミナ担体と前記マンガンとの総量に対して0.75〜5.0質量%であることが好ましく、1.0〜2.5質量%であることがより好ましい。前記担持量が前記下限未満であると、触媒反応の活性点が不足してVOC分解除去性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、マンガン粒子が粗大化してガスとの接触面積が減少し、VOC分解除去性能が低下する傾向にある。なお、このようなマンガンの担持量は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分析、電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe Microanalysis)分析、蛍光X線分析(XRF:X−ray Fluorescence Analysis)を用いた元素分析により確認することができる。
【0037】
また、このようなマンガンとしては、粒子状であることが好ましく、その平均一次粒子径が1.0〜50nmであることがより好ましく、2.0〜20nmであることが更に好ましい。平均一次粒子径が前記下限未満であると、前記アルミナ担体との親和性が強くなり過ぎて活性点として十分に機能しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ガスとの接触面積が減少し、VOC分解除去性能が低下する傾向にある。
【0038】
なお、このような本発明のVOC分解除去触媒においては、前記アルミナ担体に担持されたマンガンとしては、酸化マンガン(IV)状態のマンガンであることが好ましい。なお、該マンガンは、マンガンの雰囲気環境の変化(例えば、温度や酸化還元等の雰囲気変化)により、金属マンガン類似状態から酸化マンガン(IV)類似状態間の各マンガン化学種(例えば、金属マンガン、金属マンガン類似状態、マンガン(0)状態、マンガン(II)類似状態、マンガン(II)状態、酸化マンガン(II)類似状態、酸化マンガン(IV)類似状態、二酸化マンガン)に遷移する。
【0039】
(VOC分解除去用触媒)
本発明のVOC分解除去用触媒としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Ru、Os等の貴金属や、Ni、Co、Fe、Cu等を更に含有していてもよいが、本発明のVOC分解除去用触媒は前記貴金属を含有しなくとも十分な反応活性を発揮することができるため、製造コストを低減させる観点からは、前記貴金属を含有しないことが好ましい。
【0040】
本発明のVOC分解除去用触媒の使用形態としては特に制限されず、例えば、粉末状の触媒をそのまま用いてもよく、粉末状の触媒を定法によりペレット成形してペレット状の触媒としてもよく、粉末状の触媒を含有するスラリーを他の基材に被覆成形して用いてもよい。また、このような成形に際しては、本発明に係る金属酸化物担体にマンガン塩化物を担持させた後に成形を施してもよく、また、本発明に係る金属酸化物担体に成形を施した後にマンガン塩化物を担持させてもよい。
【0041】
また、前記他の基材としては特に制限されず、モノリス担体基材(ハニカムフィルタ、高密度ハニカム等)、フォームフィルタ基材、ペレット状基材、プレート状基材等が好適に採用される。また、このような基材の材質も特に制限されず、コージエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用される。
【0042】
[VOC分解除去用触媒の製造方法]
次に、本発明のVOC分解除去用触媒の製造方法について説明する。本発明のVOC分解除去用触媒の製造方法は、VOCを含有するガスのVOCを分解除去するVOC分解除去用触媒の製造方法であって、平均一次粒径が5〜40nmのアルミナゾルを準備する工程(アルミナゾル準備工程)と、前記アルミナゾルにマンガン塩水溶液を接触せしめて、焼成後にマンガンの担持量がアルミナ担体と前記マンガンとの総量に対して0.5〜8.0質量%となる量のマンガンがアルミナゾルに担持されているゲル化物を得る工程(ゲル化工程)と、前記ゲル化物を300〜900℃の範囲内の温度で焼成せしめることにより前記本発明のVOC分解除去用触媒を得る工程(焼成工程)と、を含むことを特徴とする方法である。
【0043】
(アルミナゾル準備工程)
本発明のVOC分解除去用触媒の製造方法においては、先ず、アルミナ担体源としてのアルミナゾルを準備する。アルミナゾルを準備する方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このようなアルミナゾルとしては、市販のものを用いてもよい。
【0044】
このような本発明に係るアルミナゾル準備工程において準備するアルミナゾルとしては、平均一次粒径が5〜40nmのアルミナゾルであることが必要である。アルミナゾルの平均一次粒径が前記下限未満になると、焼成時の熱安定性が不十分となる。他方、前記上限を超えると、比表面積が低下するという問題が生じる。また、このような平均一次粒径としては、比表面積を大きくし焼成時の安定性を確保するという観点から、7.5〜30nmであることが好ましく、10〜20nmであることが特に好ましい。なお、このようなアルミナゾルの平均一次粒径は、例えば、動的光散乱法等により測定することができる。
【0045】
このようなアルミナゾルを準備する方法としては、具体的には、超微粒子の酸化アルミニウムを水に懸濁させてアルミナゾルを得る方法、アルミニウムアルコキシドの加水分解物、塩基性アルミニウム塩と酸やアルカリ若しくは酸性アルミニウム塩と塩基の反応生成物に酸を添加して解膠してアルミナゾルを得る方法、金属アルミニウム粉末と希薄な酸水溶液を加熱反応させてアルミナゾルを得る方法、等が挙げられる。
【0046】
また、このようなアルミナゾルとしては、アルミナゾル固形分が5〜60質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。アルミナゾル固形分が前記下限未満になると、乾燥に長時間を要し、製造コストが増加する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ゾルが凝集しやすく、触媒の特性が不安定となる傾向にある。
【0047】
(ゲル化工程)
次に、前記アルミナゾル準備工程において得られたアルミナゾルにマンガン塩水溶液を接触せしめて、焼成後にマンガンの担持量がアルミナ担体と前記マンガンとの総量に対して0.5〜8.0質量%となる量のマンガンがアルミナゾルに担持されているゲル化物を得る(ゲル化工程)。このような本発明のVOC分解除去用触媒の製造方法において、アルミナゾルにマンガン塩水溶液を接触せしめてゲル化させる方法としては、上記以外は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。
【0048】
このようなゲル化工程において、マンガン塩水溶液としては、特に制限されず、硝酸マンガン、酢酸マンガン、硫酸マンガン、塩化マンガン等のマンガン塩水溶液を用いることができる。これらの中でも、硫黄や塩素の混入を避けるため、硝酸マンガン水溶液、酢酸マンガンが特に好ましい。
【0049】
また、前記マンガン塩水溶液を前記アルミナゾルに接触せしめる方法としては、特に制限されず、前記水溶液を前記アルミナゾルに添加して混合せしめる方法等、公知の方法を適宜採用できる。
【0050】
本発明のゲル化工程において用いるマンガン塩水溶液の液量や濃度としては、焼成後にマンガンの担持量がアルミナ担体と前記マンガンとの総量に対して0.5〜8.0質量%となる量のマンガンを担持できる量や濃度であることが必要である。例えば、用いるマンガン塩水溶液中のマンガンの全量がアルミナに担持される(マンガンの仕込み全量が担持される)場合は、マンガン塩水溶液中のマンガン量(金属換算)/(アルミナ成分量+前記マンガン量)が焼成後に0.5〜8.0質量%の範囲のうち所望のマンガン量となるように液量や濃度を調整する。
【0051】
なお、このようなマンガン塩水溶液の液量としては、例えば、アルミナ担体質量の0.5〜40倍の範囲であることが好ましく、1〜20倍がより好ましい。また、このようなマンガン塩水溶液の濃度としては、例えば、アルミナ担体質量に対して1〜30質量%の範囲であることが好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0052】
(焼成工程)
次いで、前記ゲル化工程において得られたゲル化物を300〜900℃の範囲内の温度で焼成せしめることにより本発明のVOC分解除去用触媒を得る(焼成工程)。このような本発明のVOC分解除去用触媒の製造方法において、前記ゲル化工程において得られたゲル化物を焼成する方法としては、前記温度(加熱温度)以外は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。
【0053】
このような焼成工程においては、加熱温度(焼成温度)としては、300〜900℃の範囲内の温度であることが必要である。加熱温度が前記下限未満になると、アルミナ担体の平均一次粒径が所定の範囲外となり触媒におけるVOC分解除去性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、マンガンが酸化物となり得られる触媒におけるVOC分解除去性能が低下する傾向にある。また、高比表面積のアルミナ相を形成するという観点から、このような加熱温度としては400〜700℃の範囲内であることが好ましく、450〜650℃の範囲内がより好ましい。
【0054】
また、このような焼成工程における加熱時間としては、特に制限されず、前記焼成の温度によって異なるものであるため一概には言えないが、10分間〜12時間の範囲内であることが好ましく、30分間〜6時間がより好ましい。加熱時間が前記下限未満になると、アルミナ担体の平均一次粒径が所定の範囲外となり触媒におけるVOC分解除去性能が低下する傾向にある。他方、前記上限を超えると、熱劣化が進行してマンガンが粒成長し担体表面における分散性が低下する傾向に、及び/又は、マンガンが酸化物となり得られる触媒におけるVOC分解除去性能が低下する傾向にある。
【0055】
更に、このような焼成工程における加熱温度及び加熱時間としては、加熱温度300〜900℃の範囲で、かつ、加熱時間10分間〜12時間の範囲で熱処理を行うことが好ましい。また、加熱温度400〜700℃の範囲で、かつ、加熱時間30分間〜6時間の範囲で熱処理を行うことがより好ましい。
【0056】
また、このような本発明のVOC分解除去用触媒の製造方法の焼成工程においては、前記焼成の前に前記ゲル化工程により得られたゲル化物を50〜200℃の範囲内の温度で乾燥せしめて水分を除去し乾燥体を得る工程(乾燥工程)を含んでいることが好ましい。このような前記ゲル化工程において得られたゲル化物を乾燥させて水分を除去する方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。このような乾燥工程における加熱温度としては、50〜200℃の範囲内の温度であることが好ましく、80〜150℃の範囲内がより好ましい。加熱温度が前記下限未満になると、乾燥時間が著しく長くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとマンガンの分散が不均一となり得られる触媒におけるVOC分解除去性能が低下する傾向にある。また、このような乾燥工程における加熱時間としては、特に制限されず、前記乾燥の温度によって異なるものであるため一概には言えないが、30分間〜48時間の範囲内であることが好ましく、1〜24時間であることがより好ましい。加熱時間が前記下限未満になると、好ましいアルミナ相やマンガン状態が形成されにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、アルミナの表面積低下やマンガン粒子が粗大化する傾向にある。
【0057】
このような本発明のVOC分解除去用触媒の製造方法により、アルミナ一次粒子を粗大化することなくアルミナ担体の平均一次粒径が6〜15nmである優れたVOC分解除去性能を有する前記本発明のVOC分解除去用触媒を製造することが可能となる。
【0058】
[VOC分解除去方法]
次に、本発明のVOC分解除去方法について説明する。本発明のVOC分解除去方法は、VOCを含有するガスと前記本発明のVOC分解除去用触媒とをオゾンの存在下で接触させることによりVOCを分解する方法である。
【0059】
前記VOCを含有するガスとしては、VOCを含有する空気等が挙げられる。本発明のVOC分解除去方法において、前記ガス中のVOCの濃度としては、0.05ppm以上であることが好ましく、0.1〜100ppmであることがより好ましい。VOC濃度が前記下限未満であると、触媒に吸着するVOC量が少なく分解反応が抑制される傾向にあり、他方、前記上限を超えると、触媒に吸着するVOC量が飽和されるために未反応のVOCが放出される傾向にある。
【0060】
前記VOCを含有するガス(VOC含有ガス)と前記VOC分解除去用触媒とをオゾンの存在下で接触させる方法としては特に制限はなく、前記VOC含有ガス、前記VOC分解除去用触媒及び前記オゾンを含有するガス(オゾン含有ガス)を反応容器に投入して反応させた後、VOC除去後のガスを回収するバッチ式であっても、VOC分解除去用触媒を充填した触媒床に前記VOC含有ガスと前記オゾン含有ガスとを別々の供給元から同時に流通させるか、或いは、VOC及びオゾンを含有する混合ガスを先ず調製してこれを前記触媒床に流通させる流通式であってもよい。
【0061】
前記オゾン含有ガス及び前記混合ガスとしては、オゾン或いはVOC及びオゾンを含有する空気等が挙げられる。本発明のVOC分解除去方法において、前記VOC分解除去用触媒と併用するオゾンの濃度としては、反応雰囲気中において5ppb以上であることが好ましく、0.1〜500ppmであることがより好ましい。オゾン濃度が前記下限未満であると、反応するオゾン量が少なくなるためにVOC分解除去性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、オゾン生成のために必要なエネルギーが増大する傾向にある。
【0062】
このような本発明のVOC分解除去方法においては、前記VOCを含有するガスのVOC(A)に対する前記オゾン(B)の濃度比率(B/A、C1換算)が0.1〜4の範囲内であることが必要である。前記オゾン/VOC濃度比率が前記下限未満になると、反応するオゾン量が少なくなるためにVOC分解除去性能が不十分となる。他方、オゾン/VOC濃度比率が前記上限を超えると、オゾン生成のために必要なエネルギーが増大するためコスト高となるという問題が生じる。また、このようなオゾン/VOC濃度比率としては、大気中に存在するオゾンを利用してVOCを除去するという観点から、0.2〜3であることが好ましく、0.5〜2であることが特に好ましい。
【0063】
また、前記混合ガスを流通させる場合、流通させる混合ガスの流量・流速としては、空間速度(SV)として、1000〜200000[h
−1]が好ましく、2000〜100000[h
−1]がより好ましい。空間速度(SV)が前記下限未満であると装置重量や容量が過大となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとガスと触媒との接触時間が短くなってVOC分解除去性能が低下する傾向にある。
【0064】
更に、前記VOC含有ガスとVOC分解除去用触媒とを接触させる際の条件は適宜設定することができるが、接触温度としては、マンガン塩化物が酸化物となってVOC分解除去性能が低下してしまうことを抑制するという観点から、0〜200℃であることが好ましく、オゾンの熱分解を抑制し、VOCを効率的に分解除去できるという観点から、室温(25℃)〜200℃であることがより好ましい。
【0065】
また、本発明のVOC分解除去方法における反応雰囲気としては、酸化雰囲気にあることが好ましく、反応雰囲気中における酸化性ガス濃度が0.1容量%以上にあることが好ましく、0.1〜20容量%にあることがより好ましい。前記酸化性ガス濃度が前記下限未満であるとVOC分解除去性能が低下する傾向にある。前記酸化性ガスとしては、酸素、一酸化窒素等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。このような本発明のVOC分解除去方法により、VOC含有ガスから、VOCを22%以上、好ましくは25%以上除去することが可能である。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
<VOC分解除去用触媒の調製>
先ず、マンガン硝酸塩(Mn(NO
3)
2、・6H
2O)和光純薬工業社製)をイオン交換水に溶解させて硝酸マンガン水溶液を調製した。次に、アルミナゾル(日産化学工業社製「AS−520」、平均粒径10〜20nm、固形分20質量%)3gに、焼成後にマンガンの担持量がアルミナ担体と前記マンガンとの総量に対して1.0質量%となるよう濃度を調整した硝酸マンガン水溶液1gを添加して混合しゲル状混合物を得た(なお、マンガンの仕込み全量が担持される)。次いで、ゲル状混合物を110℃において12時間加熱して乾燥させ、その後、500℃において1時間焼成して、マンガンがアルミナ(担体)に担持されたVOC分解除去用触媒を得た。なお、マンガンの担持量は、アルミナ担体とマンガンとの総量に対して1.0質量%であった。
【0068】
<アルミナ担体の平均一次粒径の測定:X線回折(XRD)測定>
実施例1で得られたVOC分解除去用触媒について、担体(アルミナ)の平均結晶子径(平均一次粒径)を以下のようにして測定した。先ず、得られた触媒を測定試料として、粉末X線回折装置(リガク社製、Ultima IV」)を用いて、触媒担体のX線回折(XRD)パターンを、ステップ幅0.02°、発散スリット2/3deg、散乱スリット8、CuKα線(λ=0.15418nm)、40kV、40mA、スキャン速度20deg/分の条件で測定した。このようにして得られたXRDパターンの触媒担体について、Al
2O
3に由来するピーク(2θ=36.8°〜37.2°)の回折線幅に基づいて、シェラーの式:
D=0.9λ/βcosθ
(式中、Dは結晶子径を示し、λは使用X線波長を示し、βはXRDの測定試料の回折線幅を示し、θは回折角を示す)
を計算して、平均結晶子径(平均一次粒径)を算出した。得られた結果を表1に示す。
<性能評価試験:VOC分解除去率測定>
実施例1で得られたVOC分解除去用触媒について、触媒の性能評価としてVOC分解除去率を以下のようにして測定した。先ず、得られたVOC分解除去用触媒を、粒子径が0.5〜1.0mm、嵩密度が0.3〜0.8g/cm
3のペレット状に成形した。このペレット状触媒0.5gを、オゾン発生器(荏原実業社製「OZSD−3000AS」)に接続した排ガス触媒評価装置(ベスト測器社製「CATA−5000−2」)の触媒床に充填した。次いで、この触媒床にオゾン(130ppm)、酸素(10容積%)、トルエン(270ppmC(炭素換算濃度))、及び窒素(残部)を含む混合ガス(入ガス)を75℃、流量5L/minの条件で流通させ、前記触媒床に前記混合ガスを流通させて30分後に、前記触媒床通過前後の混合ガス(出ガス)中のトルエン(THC)濃度を測定し、VOC分解除去率(トルエン除去率)を次式:
VOC分解除去率(%)={(入ガスTHC濃度−出ガスTHC濃度)/入ガスTHC濃度}×100
により求めた。得られた結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
(実施例2)
前記硝酸マンガン水溶液の濃度を、焼成後にマンガンの担持量がアルミナ担体と前記マンガンとの総量に対して5.0質量%となるように調整した硝酸マンガン水溶液1gを前記アルミナに対し添加した(なお、マンガンの仕込み全量が担持される)こと以外は実施例1と同様にして、VOC分解除去用触媒を得た。なお、得られたVOC分解除去用触媒のマンガン担持量は、アルミナ担体とマンガンとの総量に対して5.0質量%であった。得られたVOC分解除去用触媒について、担体(アルミナ)の平均結晶子径(平均一次粒径)の測定を実施例1と同様にして測定した。また、このVOC分解除去用触媒を用いたこと以外は実施例1と同様にしてVOC分解除去率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0071】
(実施例3)
前記硝酸マンガン水溶液の濃度を、焼成後にマンガンの担持量がアルミナ担体と前記マンガンとの総量に対して7.5質量%となるように調整した硝酸マンガン水溶液1gを前記アルミナに対し添加した(なお、マンガンの仕込み全量が担持される)こと以外は実施例1と同様にして、VOC分解除去用触媒を得た。なお、得られたVOC分解除去用触媒のマンガン担持量は、アルミナ担体とマンガンとの総量に対して7.5質量%であった。得られたVOC分解除去用触媒について、担体(アルミナ)の平均結晶子径(平均一次粒径)の測定を実施例1と同様にして測定した。また、このVOC分解除去用触媒を用いたこと以外は実施例1と同様にしてVOC分解除去率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0072】
(比較例1)
二酸化マンガン粉末(MnO
2、中央電気工業社製「CMD−K200」)をそのまま比較用触媒とした。この比較用触媒のVOC分解除去率を実施例1と同様にして測定した。得られた結果を表1に示す。
【0073】
(比較例2)
前記硝酸マンガン水溶液の濃度を、焼成後にマンガンの担持量がアルミナ担体と前記マンガンとの総量に対して0.3質量%となるように調整した硝酸マンガン水溶液1gを前記アルミナに対し添加した(なお、マンガンの仕込み全量が担持される)こと以外は実施例1と同様にして、比較用触媒を得た。なお、得られた比較用触媒のマンガン担持量は、アルミナ担体とマンガンとの総量に対して0.3質量%であった。得られた比較用触媒について、担体(アルミナ)の平均結晶子径(平均一次粒径)の測定を実施例1と同様にして測定した。また、この比較用触媒を用いたこと以外は実施例1と同様にしてVOC分解除去率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0074】
(比較例3)
前記硝酸マンガン水溶液の濃度を、焼成後にマンガンの担持量がアルミナ担体と前記マンガンとの総量に対して10.0質量%となるように調整した硝酸マンガン水溶液1gを前記アルミナに対し添加した(なお、マンガンの仕込み全量が担持される)こと以外は実施例1と同様にして、比較用触媒を得た。なお、得られた比較用触媒のマンガン担持量は、アルミナ担体とマンガンとの総量に対して10.0質量%であった。得られた比較用触媒について、担体(アルミナ)の平均結晶子径(平均一次粒径)の測定を実施例1と同様にして測定した。また、この比較用触媒を用いたこと以外は実施例1と同様にしてVOC分解除去率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0075】
(比較例4)
先ず、アルミナゾル(日産化学工業社製「AS−520」、粒径10〜20nm、固形分20質量%)3gを100℃において1時間程度放置して蒸発乾固した後、この蒸発乾固物を110℃において12時間加熱して乾燥させ、その後、これを空気中、500℃において1時間焼成せしめて、アルミナ担体(粉末)を得た。
【0076】
次に、得られたアルミナ担体2gに、マンガン硝酸塩(Mn(NO
3)
2、・6H
2O)和光純薬工業社製)をイオン交換水に溶解させて、焼成後にマンガンの担持量がアルミナ担体と前記マンガンとの総量に対して1.0質量%となるよう濃度を調整した硝酸マンガン水溶液2.5gを添加して混合し混合物を得た(なお、マンガンの仕込み全量が担持される)。次いで、この混合物を110℃において12時間加熱して乾燥させ、その後、500℃において1時間焼成して、マンガンがアルミナ担体に担持された比較用触媒を得た。なお、得られた比較用触媒のマンガン担持量は、アルミナ担体とマンガンとの総量に対して1.0質量%であった。
【0077】
得られた比較用触媒について、アルミナ担体の平均結晶子径(平均一次粒径)を実施例1と同様にして測定した。また、この比較用触媒を用いたこと以外は実施例1と同様にしてVOC分解除去率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0078】
(比較例5)
前記硝酸マンガン水溶液の濃度を、焼成後にマンガンの担持量がアルミナ担体と前記マンガンとの総量に対して5.0質量%となるように調整した硝酸マンガン水溶液2.5gを前記アルミナに対し添加した(なお、マンガンの仕込み全量が担持される)こと以外は比較例4と同様にして、比較用触媒を得た。なお、得られた比較用触媒のマンガン担持量は、アルミナ担体とマンガンとの総量に対して5.0質量%であった。得られた比較用触媒について、アルミナ担体の平均結晶子径(平均一次粒径)を実施例1と同様にして測定した。また、この比較用触媒を用いたこと以外は実施例1と同様にしてVOC分解除去率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0079】
(比較例6)
前記硝酸マンガン水溶液の濃度、焼成後にマンガンの担持量がアルミナ担体と前記マンガンとの総量に対して7.5質量%となるように調整した硝酸マンガン水溶液2.5gを前記アルミナに対し添加した(なお、マンガンの仕込み全量が担持される)こと以外は比較例4と同様にして、比較用触媒を得た。なお、得られた比較用触媒のマンガン担持量は、アルミナ担体とマンガンとの総量に対して7.5質量%であった。得られた比較用触媒について、アルミナ担体の平均結晶子径(平均一次粒径)を実施例1と同様にして測定した。また、この比較用触媒を用いたこと以外は実施例1と同様にしてVOC分解除去率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0080】
(比較例7)
比較例4と同様にして得たアルミナ担体2gに、PtP−ソルト水溶液(田中貴金属工業工業社製、50gPt/L)をイオン交換水に溶解させて、焼成後に白金(Pt)の担持量がアルミナ担体と前記白金(Pt)との総量に対して5.0質量%となるよう濃度を調整したPtP−ソルト水溶液2.5gを添加して混合し混合物を得た(なお、Ptの仕込み全量が担持される)。次いで、この混合物を110℃において12時間加熱して乾燥させ、その後、500℃において1時間焼成して、白金(Pt)がアルミナ担体に担持された比較用触媒を得た。なお、得られた比較用触媒の白金(Pt)担持量は、アルミナ担体と白金(Pt)との総量に対して5.0質量%であった。得られた比較用触媒のVOC分解除去率を実施例1と同様にして測定した。得られた結果を表1に示す。
【0081】
(比較例8)
比較例4と同様にして得たアルミナ担体(粉末)をそのまま比較用触媒とした。この比較用触媒のVOC分解除去率を実施例1と同様にして測定した。得られた結果を表1に示す。
【0082】
<評価結果>
図1に、実施例1〜3で得られたVOC分解除去用触媒及び比較例1〜8で得られた比較用触媒のトルエン除去率(分解除去率)を示すグラフを示す。
図1に示した結果から明らかなように、実施例1〜3のマンガンがアルミナ担体に担持されたVOC分解除去用触媒は、十分なトルエン除去性能を有することが確認された。一方、比較例1〜8では、実施例1〜3ほど十分なトルエン除去性能が得られないことが確認された。
【0083】
図2に、実施例1〜3で得られたVOC分解除去用触媒及び比較例2〜3で得られた比較用触媒におけるマンガン(Mn)の担持量とトルエン除去率との関係を示すグラフを示す(0.3質量%:比較例2、1.0質量%:実施例1、5.0質量%:実施例2、7.5質量%:実施例3、10.0質量部:比較例3)。
図2に示した結果から明らかなように、マンガンの担持量がアルミナ担体と前記マンガンとの総量に対して0.5〜8.0質量%の範囲内にある場合には、十分なトルエン除去性能を有することが確認された。一方、アルミナ担体がマンガンを担持していてもその担持量が少ない場合(比較例2)には十分なトルエン除去性能が得られないことが確認された。また、アルミナ担体がマンガンを担持していてもその担持量が多い場合(比較例3)にはトルエン分解除去率が低下し、一定量以上のマンガンによりVOC分解除去性能が阻害されるようになることが確認された。
【0084】
図3に、実施例1〜3で得られたVOC分解除去用触媒及び比較例4〜6で得られた比較用触媒におけるアルミナ担体の平均一次粒径とトルエン除去率との関係を示すグラフを示す(8.1nm:実施例1、9.0nm:実施例2、13.5nm:実施例3、15.5nm:比較例4、15.7nm:比較例5、19.3:比較例6)。
図3に示した結果から明らかなように、アルミナ担体の平均一次粒径が6〜15nmの範囲内にある場合には、十分なトルエン除去性能を有することが確認された。一方、アルミナ担体がマンガンを担持していても、マンガンの担持が含浸法による場合(比較例4〜6)には、アルミナ担体の平均一次粒径が大きくなり、十分なトルエン除去性能が得られないことが確認された。
【0085】
なお、流通させる混合ガスのオゾン濃度を0ppmとしたこと以外は実施例1〜3と同様にしてVOC分解除去率を求めた。その結果、いずれの場合もトルエン除去率が測定下限未満(2%未満)であり、このようなVOC分解除去方法においてオゾンを併用しない場合においては十分なトルエン分解除去性能が達成されないことが確認された。