【解決手段】 しん材部と、上記しん材部の外周面に積層されたゴム層とを備えた籾摺りロールであって、上記ゴム層は、ポリオール成分、イソシアネート成分及び架橋剤を含有する熱硬化性ウレタン組成物の硬化物からなり、上記イソシアネート成分は、TDI及び/又はMDIであることを特徴とする籾摺りロール。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の籾摺りロールは、しん材部と上記しん材部の外周面に積層されたゴム層とを備えた籾摺りロールであって、上記ゴム層は、ポリオール成分、イソシアネート成分及び架橋剤を含有する熱硬化性ウレタン組成物の硬化物からなり、上記イソシアネート成分は、TDI及び/又はMDIであることを特徴とする。
【0012】
図1(a)は本発明の籾摺りロールの一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は(a)に示した籾摺りロールの正面図であり、(c)は(a)のA−A線断面図である。
図1(a)〜(c)に示す籾摺りロール10は、金属製のしん材部11と、しん材部11の外周面に積層されたゴム層12とからなる。
しん材部11は、筒内に籾摺りロール10を籾摺り機に取り付けるための取付用フランジ11aが設けられた円筒状の部材である。
しん材部11に外周面の全体には均一な厚さでゴム層12が形成されている。
【0013】
ゴム層12は、ポリオール成分、特定のイソシアネート成分及び架橋剤を含有する熱硬化性ウレタン組成物の硬化物からなる層である。
本発明の籾摺りロールでは、上記ゴム層が、TDI及びMDIの少なくとも一方をイソシアネート成分として含有する熱硬化性ウレタン組成物の硬化物からなるため、耐久性に優れ、使用時に熱膨張しにくく、更には、変色しにくいとの優れた効果を奏する。
【0014】
以下、本発明の籾摺りロールの構成部材について説明する。
上記しん材部としては、従来公知の籾摺りロールで使用されているしん材部と同様のものを用いることができる。上記しん材部に材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、鉄、モリブデン、チタン等が挙げられる。
また、上記しん材部の形状やサイズも特に限定されず、従来品と同様、籾摺りロールを取り付ける籾摺り機の仕様や、JIS規格(JIS B 9214:もみすり用ゴムロール)に合わせて適宜設定すればよい。
【0015】
上記ゴム層は、ポリオール成分、イソシアネート成分及び架橋剤を含有する熱硬化性ウレタン組成物の硬化物からなり、上記熱硬化性ウレタン組成物は、上記イソシアネート成分として、TDI及び/又はMDIを含有する。
【0016】
上記TDI(トリレンジイソシアネート)としては従来公知のTDIを用いることができ、上記TDIにおいて、2,4−TDIと2,6−TDIとの配合比(2,4−TDI/2,6−TDI)は特に限定されないが、65/35〜80/20(重量比)が好ましい。上記TDIとしては、例えば、T−80(2,4−TDI/2,6−TDI=80/20)、T−100(2,4−TDI/2,6−TDI=100/0)、T−65(2,4−TDI/2,6−TDI=65/35)等を用いることができる。
勿論、上記TDIとしては各種市販品を使用することもできる。
【0017】
上記MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート又はポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート)は特に限定されるものではなく、その分子量分布の広狭を問わず用いることができ、例えば、ピュアMDI(4,4’−MDI)、ポリメリックMDI等を用いることができる。
勿論、上記MDIとしては各種市販品を使用することもできる。
【0018】
上記熱硬化性ウレタン組成物におけるイソシアネート基濃度は、1.2〜4.5重量%であることが好ましい。
上記イソシアネート基濃度が、1.2重量%未満では硬化物の耐摩耗性が低下してしまうことがある。一方、上記イソシアネート基濃度が4.5重量%を超えると、硬化物が硬度の高すぎるものとなってしまうことがある。
上記イソシアネート基濃度(重量%)とは、イソシアネート成分、ポリオール成分、及び、架橋剤の合計量中に含まれるイソシアネート基の重量割合をいう。
【0019】
上記ポリオール成分としては、従来、ポリウレタンの合成に使用されるポリオール成分であれば特に限定されず、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。
これらのなかでは、ポリエステルポリオールが好ましい。極性の高いポリエステルポリオール基により発現する高い分子間力により、耐摩耗性に優れたゴム層を形成することができるからである。
【0020】
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸とグリコールとを常法に従って反応させることにより得たもの等が挙げられる。
上記ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、それらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
これらのなかではアジピン酸が好ましく、グリコールや架橋剤として1,4−ブタンジオールを用いる場合にはアジピン酸が特に好ましい。アジピン酸にC原子配列は、1,4−ブタンジオールと同じ4連配列であるため、配向結晶性に優れ、結晶化構造を有することにより強固な分子間力を発現する。また、アジピン酸は安価であるため、経済的にも優れる。
上記ジカルボン酸は単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。
【0021】
上記グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリエチレングリコール等の脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、p−キシレンジオール等の芳香族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。
上記グリコールとしては、脂肪族グリコールが好ましく、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールが更に好ましい。JIS−A硬さが90°程度のゴム層を形成するのに適しており、かつ、安価である。
ジカルボン酸及びグリコールの反応物であるポリエステルポリオールは、線状構造であるが、3価以上のエステル形成成分を用いた分枝状ポリエステルであってもよい。
上記グリコールは単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
【0022】
上記ポリエステルポリオールとしては、特に、ポリエチレンアジペート系ポリエステルポリオール、ポリブチレンアジペート系ポリエステル、及び、ポリエチレンブチレンアジペート系ポリエステルが好ましい。JIS−A硬さが90°程度のゴム層を形成するのに適した分子構造を有しており、かつ、安価である。
【0023】
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、それらの共重合体等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。これらのなかでは、耐摩耗性が良好な点から、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。
【0024】
上記ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、触媒の存在下に低分子量グリコールを開始剤としてε−カプロラクトンを開環付加させることにより得られるものが挙げられる。
上記低分子量グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の2価のアルコールとトリメチレングリコール、グリセリン等の3価のアルコールが好ましく用いられる。上記触媒としては、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラエチルチタネート等の有機チタン系化合物、オクチル酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズラウレート、塩化第1スズ、臭化第1スズ等のスズ系化合物等が好ましく用いられる。
なお、上記ε−カプロラクトン以外にもトリメチルカプロラクトンやバレロラクトンのような他の環状ラクトンを一部混合してもかまわない。
上述したポリオールは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記ポリオールは、数平均分子量が1000〜3000であることが好ましい。数平均分子量が1000未満では、ゴム層に満足なゴム弾性を発現せず、剛性が高いものとなることがある。一方、数平均分子量が3000を超えると、ゴム層に満足なゴム強度を付与できず、柔軟すぎるゴム層となることがある。
上記数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)測定によるポリスチレン換算の測定値である。
【0026】
上記架橋剤としては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン(BHEB)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン、水等が挙げられる。
これらのなかでは、適切なゴム硬度、ゴム剛性を発現させやすいことから、1,4−ブタンジオール、BHEBが好ましい。また、1,4−ブタンジオールやBHEBを含む熱硬化性ウレタン組成物は、ポットライフが比較的長く、手注型でも成形することができる。
上記架橋剤は、単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。
【0027】
上記熱硬化性ウレタン組成物は、更にシリコーンオイルを含有することが好ましい。
シリコーンオイルを含有する熱硬化性ウレタン組成物の硬化物からなるゴム層は、その摩擦係数が低くなることにより寿命が長くなり、籾摺り時の音(稼働音)が小さくなり、更には、シリコーンオイルのブリードにより、籾摺りロールの表面がシリコーンオイルで包まれたものとなるため、耐水性(保管時を含む)が向上することとなる。
上記シリコーンオイルとしては、特に限定されず、例えば、ポリジメチルシロキサン及びその変性体等を用いることができる。
上記シリコーンオイルの粘度は、20〜1000mPa・s(cps)が好ましい。
上記シリコーンオイルの粘度が20mPa・s未満では、シリコーンオイルのブリード量が多くなりすぎることがあり、一方、1000mPa・sを超えると、分散性が低下したり、ブリードしなくなってしまったりすることがある。
【0028】
上記熱硬化性ウレタン組成物において、上記シリコーンオイルの含有量は、上記イソシアネート成分、上記ポリオール成分及び上記架橋剤の合計量に対して、0.3〜5重量%が好ましく、0.5〜3重量%が更に好ましい。
上記シリコーンオイルの含有量が0.3重量%未満では、シリコーンオイルを配合した効果を充分に得られないことがあり、一方、5重量%を超えると、ゴム層の表面がべたついたり、ゴム層の硬度やゴム物性が低下したりすることがある。
【0029】
上記熱硬化性ウレタン組成物は、更に、鎖延長剤、架橋促進剤や架橋遅延剤等の反応助剤、加水分解防止剤、無機繊維や無機フィラー等の補強材、着色剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、防黴剤、難燃剤、充填剤(増量剤)等の各種添加剤などを必要に応じて含有していてもよい。
【0030】
上記ゴム層(上記熱硬化性ウレタン組成物の硬化物)は、20℃におけるJIS−A硬さが85°以上であることが好ましい。上記JIS−A硬さが85°未満では、上記ゴム層が柔らかすぎるため、耐摩耗性が低下することがある。
上記JIS−A硬さは、88°以上がより好ましく、90°以上が更に好ましい。
一方、上記ゴム層の20℃におけるJIS−A硬さは、99°未満が好ましい。99°を超えると、籾摺り時に米が破損し、いわゆる砕米の発生率が増加するおそれがある。
また、上記ゴム層のJIS−A硬さは、籾摺りの対象となる米が比較的柔らかいジャポニカ米等である場合には88〜92°程度が好ましく、籾摺りの対象となる米が比較的固いインディカ米等である場合は92〜96°程度が好ましい。
上記JIS−A硬さは、JIS K 9124で引用するJIS K 6253に準拠して測定すればよい(但し、測定温度は20℃)。
なお、本発明における「ゴム層」は、JIS K 9124にいう「ゴム部」に相当する。
【0031】
上記ゴム層(上記熱硬化性ウレタン組成物の硬化物)は、tanδのピーク温度(Tg)が、10℃以下である好ましい。使用時のゴム層の温度である30〜50℃において適切なゴム弾性を発現するからである。
【0032】
上記ゴム層(上記熱硬化性ウレタン組成物の硬化物)は、DIN摩耗減量は、60〜100mm
3であることが好ましい。
上記DIN摩耗減量が60mm
3未満では、籾摺り時に砕米の発生率が高くなることがあり、一方、100mm
3を超えると、耐久性が不充分となる。
上記DIN摩耗減量は、JIS K 6264のDIN摩耗試験に準拠して測定すればよい。
【0033】
上記ゴム層の厚さは特に特に限定されず、従来品と同様、籾摺りロールを取り付ける籾摺り機の仕様や、JIS規格(JIS B 9214)に合わせて適宜設定すればよい。
上記ゴム層の厚さ(
図1(b)中、Tで示す)とは、未使用時のゴム層の外径と内径の差の1/2の値をいう。
【0034】
本発明の籾摺りロールでは、上記しん材部と上記ゴム層との密着性をより向上させるべく、両者の間にプライマー層及び/又は接着剤層を形成したり、上記しん材部の外周面にゴム層との密着性を高めるための表面処理を及び施したりしてもよい。
上記接着剤の形成は、例えば、フェノール系接着剤等を用いて行うことができる。また、上記プライマー層の形成は、例えば、ウレタン系、ポリエステル系、シラン系、ポリアミド系、フェノール系のプライマーや、シランカップリング剤等を用いて行うことができる。
上記表面処理としては、例えば、粗化面の形成等が挙げられ、上記粗化面の形成は、例えば、ブラスト処理、研削処理、エッチング処理、メッキ処理、研磨処理、酸化処理等により行えばよい。
【0035】
上記籾摺りロールは、その断面(使用時の回転軸に垂直な断面)の真円度が0.5mm以下であることが好ましい。上記真円度が0.5mmを超えると、使用時に籾摺りロール同士の間隔のバラツキが大きくなり、脱ぷ率が低下したり、砕米の発生率が増加したりすることがある。
【0036】
次に、本発明の籾摺りロールの製造方法について説明する。
上記籾摺りロールは、例えば、下記(1)及び(2)の工程を経ることにより製造することができる。
(1)まず、しん材部を作製する。上記しん材部は、従来公知の方法により作製することができ、例えば、アルミダイキャスト等により作製することができる。
その後、必要に応じて、しん材部の外周面に接着剤層及び/又はプライマー層を形成したり、しん材部に外周面に表面処理を施したりする。
【0037】
(2)次に、上記しん材部の周囲にゴム層を形成する。ここでは、しん材部を円筒形の金型内に載置し、その後、しん材部の外周面と金型の内壁面との間隙に、上述して熱硬化性ウレタン組成物を注入し、所定の条件で硬化させることによりゴム層を形成する。
このとき、硬化条件は特に限定されず、上記熱硬化性ウレタン組成物に組成に応じて適宜設定すればよいが、通常、100〜160℃で30〜90分間加熱する条件を採用することができる。
また、上記条件で硬化処理を行い、金型から脱型した後、例えば、100〜160℃で3〜48時間の条件で後硬化を行ってもよい。
【0038】
このような方法により、しん材部の外周面にゴム層を積層することにより、全体に渡って均一な密度を有するゴム層が形成された籾摺りロールを製造することができる。
本発明で用いられる熱硬化性ウレタン組成物を調製後の硬化に進行が比較的緩やかだからである。
また、上記籾摺りロールの製造方法では、必要に応じて、研削加工によってゴム層の表面を形成してもよい。勿論、金型から脱型したまま、上記研削加工を行わなくてもよい。
【0039】
次に、本発明の籾摺りロールの使用方法について説明する。
図2は、本発明の籾摺りロールの使用方法を説明するための模式図である。
本発明の籾摺りロールは、2個の籾摺りロールを1組にして、従来公知のゴムロール式の籾摺り機に取り付けて使用する。
即ち、
図2に示すように、一対の籾摺りロール10A、10Bを所定の間隔Lを有するように平行に取り付け、籾摺りロール10A、10Bのそれぞれを互いに逆方向に、かつ、異なる回転速度(籾摺りロール10Aの回転速度Va≠籾摺りロール10Bの回転速度Vb)で回転させる。そして、この状態で籾摺りロール10A、10B同士の間に籾米1を投入すると、籾摺りロール10Aと籾摺りロール10Bとの周速差により籾米1から籾殻が脱ぷされることとなる。
【0040】
上記籾摺りロールの使用時における、籾摺りロール10Aと籾摺りロール10Bとの隙間の距離Lや、籾摺りロール10A及び籾摺りロール10Bのそれぞれの回転速度(周速度)Va、Vbは特に限定されず、籾摺り機の仕様、投入する籾米の種類や乾燥率、処理速度、脱ぷ率等の各種条件に応じて適宜設定すればよい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
1.熱硬化性ウレタン組成物の調製
(調製例1)
MDIをイソシアネート成分とし、ポリエチレンアジペートエステルジオール(PEA)をポリオール成分とするウレタンプレポリマー(サンプレンP6814、三洋化成社製)100重量部、シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング社製、SH−200(100mPa・s))1.0重量部、黄色顔料(ZAイエロー#200、御国化学株式会社製)0.02重量部、及び、白色顔料(ZAホワイト#2200、御国化学株式会社製)0.02重量部をアジターにて混合した。次に、得られた混合物に、1,4−ブタンジオール(BASFジャパン社製)1.59重量部、BHEB(三井化学社製)10.50重量部を追加混合し、熱硬化性ウレタン組成物Aを調製した。
【0043】
(調製例2)
ウレタンプレポリマー(サンプレンP6814、三洋化成社製)100重量部、黄色顔料(ZAイエロー#200)0.02重量部、及び、白色顔料(ZAホワイト#2200)0.02重量部をアジターにて混合した。次に、得られた混合物に、1,4−ブタンジオール(BASFジャパン社製)1.59重量部、BHEB(三井化学社製)10.50重量部を追加混合し、熱硬化性ウレタン組成物Bを調製した。
【0044】
(調製例3)
TDIをイソシアネート成分とし、ポリエチレンアジペートエステルジオール(PEA)をポリオール成分とするウレタンプレポリマー(タケネートL−1290、三井化学社製)100重量部、シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング社製、SH−200(100mPa・s))1.0重量部、黄色顔料(ZAイエロー#200)0.02重量部、及び、白色顔料(ZAホワイト#2200)0.02重量部をアジターにて混合した。次に、得られた混合物に、メチレンビス(2−クロロアニリン)(イハラケミカル工業社製、イハラキュアミンMT)12.6重量部を追加混合し、熱硬化性ウレタン組成物Cを調製した。
【0045】
(調製例4)
TDIをイソシアネート成分とし、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)をポリオール成分とするウレタンプレポリマー(タケネートL−2710、三井化学社製)100重量部、シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング社製、SH−200(100mPa・s))1.0重量部、黄色顔料(ZAイエロー#200)0.02重量部、及び、白色顔料(ZAホワイト#2200)0.02重量部をアジターにて混合した。次に、得られた混合物に、メチレンビス(2−クロロアニリン)(イハラキュアミンMT)13.1重量部を追加混合し、熱硬化性ウレタン組成物Dを調製した。
【0046】
(調製例5)
ポリエチレンアジペートエステルジオール(PEA)(ブルコラン2000MM、住友バイエルウレタン社製)100重量部、NDI(デスモジュール15、住友バイエルウレタン社製)25重量部、シリコーンオイル(SH−200(100mPa・s))1.0重量部、黄色顔料(ZAイエロー#200)0.02重量部、及び、白色顔料(ZAホワイト#2200)0.02重量部をアジターにて混合した。次に、得られた混合物に、1,4−ブタンジオール(BASFジャパン社製)5.0重量部を追加混合し、熱硬化性ウレタン組成物Eを調製した。
【0047】
2.籾摺りロールの作製及び評価(1)
(実施例1)
本実施例では、型式:大60の籾摺りロールを作製した。
まず、アルミダイキャストにより、
図1に示した形状のしん材部を鋳造した。
次に、円筒形の金型内に、上記しん材部の外周面と上記金型の内周面との間隔が全周に渡ってほぼ等間隔になるように上記しん材部を設置した。
その後、上記しん材部の外周面と上記金型の内周面との間隙に、熱硬化性ウレタン組成物Aを注入し、下記に条件で硬化させ、外径寸法と幅寸法を切削により調整し、上記しん材部の外周面にゴム層が積層された籾摺りロールを作製した。
【0048】
(硬化条件)
注入時の熱硬化性ウレタン組成物Aの温度を105℃とし、金型温度130℃で60分間硬化させた。
その後、金型から脱型し、110℃、24時間の条件で後硬化を行った。
【0049】
(実施例2)
熱硬化性ウレタン組成物Aに代えて熱硬化性ウレタン組成物Cを使用し、下記の条件で硬化させた以外は実施例1と同様にして籾摺りロールを作製した。
(硬化条件)
注入時の熱硬化性ウレタン組成物Cの温度を85℃とし、金型温度130℃で60分間硬化させた。
その後、金型から脱型し、110℃、24時間の条件で後硬化を行った。
【0050】
(実施例3)
熱硬化性ウレタン組成物Aに代えて熱硬化性ウレタン組成物Dを使用し、下記の条件で硬化させた以外は実施例1と同様にして籾摺りロールを作製した。
(硬化条件)
注入時の熱硬化性ウレタン組成物Dの温度を85℃とし、金型温度130℃で60分間硬化させた。
その後、金型から脱型し、110℃、24時間の条件で後硬化を行った。
【0051】
(比較例1)
熱硬化性ウレタン組成物Aに代えて熱硬化性ウレタン組成物Eを使用し、下記の条件で硬化させた以外は実施例1と同様にして籾摺りロールを作製した。
(硬化条件)
注入時の熱硬化性ウレタン組成物Eの温度を125℃とし、金型温度130℃で60分間硬化させた。
その後、金型から脱型し、110℃、24時間の条件で後硬化を行った。
【0052】
(比較例2)
バンドー化学社製の籾摺りロール(ホワイトロール、統合大60型)を本比較例の籾摺りロールとした。なお、上記ホワイトロールは、SBRを主成分とするゴム層を備えた籾摺りロールである。
【0053】
(比較例3)
バンドー化学社製の籾摺りロール(レッドロール、統合大60型)を本比較例の籾摺りロールとした。なお、上記レッドロールは、SBRを主成分とするゴム層を備えた籾摺りロールである。
【0054】
(評価)
(1)籾摺りロールのサイズと温度の関係
実施例及び比較例で作製した籾摺りロールについて、20℃、45℃、70℃の各温度下で2時間放置した後、各籾摺りロールの片側厚さを測定した。
ここで、45℃及び70℃下での2時間放置は、それぞれの温度に設定されたオーブン内に2時間保管することにより行った。
片側厚さの計測では、20cmのデジタルノギスを使用して、しん材部の内表面からゴム層の表面までの寸法を3か所測定し、その平均値を片側厚さとした。
更に、各籾摺りロールにおいて、20℃で計測した片側厚さを「100」として、20℃の片側厚さに対する45℃、70℃での片側厚さの比率を算出した。結果を表1に示した。
【0055】
(2)JIS−A硬さ
実施例及び比較例で作製した籾摺りロールに形成されたゴム層のJIS−A硬さを、JIS K 9124で引用するJIS K 6253に準拠して測定した。但し、測定温度は20℃とし、測定箇所は3か所とした。結果を表1に示した。
【0056】
(3)DIN摩耗減量
実施例及び比較例で作製した籾摺りロールに形成されたゴム層のDIN摩耗減量を評価した。
上記DIN摩耗減量の評価は、上記ゴム層と同様の組成の試験片(直径16mm×厚さ6mm)を別途作製し、この試験片を用いて、JIS K 6264に準拠した方法において、試験片の回転:無し(A法)、試験片の付加力:10Nで行った。結果を表1に示した。
【0057】
(4)tanδのピーク温度(Tg)
実施例及び比較例で作製した籾摺りロールに形成されたゴム層のtanδのピーク温度(Tg)を評価した。
上記tanδのピーク温度の評価は、上記ゴム層と同様の組成の試験片(幅3mm×長さ40mm×厚さ1mm)を別途作製し、レオペクトラ−DVE−V4(レオロジ−(株)製)によって静止歪み5%、10Hz正弦波引張加振を温度範囲60〜100℃で測定した。損失係数tanδが最大値を示す温度をtanδのピーク温度とした。
【0058】
(5)色調変化(変色の有無)
実施例及び比較例で作製した籾摺りロールに形成されたゴム層の色調変化を評価した。
上記色調変化の評価は、上記ゴム層と同様の組成の試験片(サイズ:長さ200mm×幅70mm×厚さ2mm)を別途作製し、サンシャインウェザーオメーター(スガ試験機株式会社製、サンシャインウェザーメータS80)用いて、上記試験片をJIS K 6732の促進耐候性試験に規定された条件で120時間暴露し、その後、色調の変化を観察した。結果を表1に示した。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示したように、特定の熱硬化性ウレタン組成物の硬化物からなるゴム層を備えた本発明の籾摺りロールは、他のポリウレタン製のゴム層を備えた籾摺りロールに比べて使用時に膨張しにくく、既に市場にて信頼性が確立されている市販品と同程度の寸法安定性を有している。
また、本発明の籾摺りロールは保管時に変色することがないことも明らかとなった。
【0061】
3.籾摺りロールの作製及び評価(2)
(実施例4)
本実施例では、型式:大100の籾摺りロールを作製した。
ここでは、形状及び寸法を変更した以外は、実施例1と同様の方法を用いて籾摺りロールを作製した。
【0062】
(実施例5)
熱硬化性ウレタン組成物Aに代えて熱硬化性ウレタン組成物Bを使用した以外は実施例4と同様にして籾摺りロールを作製した。
本実施例で作製した籾摺りロールにおいて、ゴム層のJIS−A硬さは92°(20℃で測定)であり、ゴム層のDIN摩耗減量は105mm
2であり、ゴム層のtanδのピーク温度(Tg)は0℃である。
なお、各物性は、上述した評価方法と同様の方法により測定した。
【0063】
(実施例6)
本実施例では、型式:大100の籾摺りロールを作製した。
ここでは、形状及び寸法を変更した以外は、実施例2と同様の方法を用いて籾摺りロールを作製した。
【0064】
(比較例4)
バンドー化学社製の籾摺りロール(ホワイトロール、統合大100型)を本比較例の籾摺りロールとした。
【0065】
(評価)
(6)籾摺りロールの性能評価
後述する2ヵ所の施設にて、籾摺り量とゴム層の摩耗量との関係を評価した。
また、豊岡カントリーエレベーターでは、市販の籾摺りロールの使用寿命に関する過去の実績について聞き取り調査を行った。
(6−1)実施例4及び5で作製した籾摺りロールの評価
たじま農業協同組合、豊岡カントリーエレベーターにて評価した。
籾摺り機は、サタケ社製、型式:HA10NC(2004年導入)を使用した。
籾米は、銘柄:うるち、水分率(玄米基準)14.3〜14.8%、投入もみ温度5〜15℃とした。
処理速度は、約4.6トン/時間とした。
なお、実施例4の籾摺りロールを使用した場合の脱ぷ率は78%であり、実施例5の籾摺りロールを使用した場合の脱ぷ率は79%であった。
【0066】
本評価では、約300トンの籾米を処理し、そのときの籾摺りロールのゴム層の摩耗量を計測した。このとき摩耗量は、一対の籾摺りロール(主ロール及び副ロール)のそれぞれの端面に定規を押し当て、残存するゴム層の厚さを計測し、初期のゴム層の厚さ(25mm)との差として算出した。結果を表2に示した。
なお、表2において、主ロール前及び副ロール前の摩耗量とは、籾摺りロールを籾摺り機に取り付けた際に手前に位置する端面で計測した摩耗量をいい、主ロール後及び副ロール後の摩耗量とは、籾摺りロールを籾摺り機に取り付けた際に奥側に位置する端面で計測した摩耗量をいう。
【0067】
更に、上記摩耗量の計測結果に基づいて、籾摺りロールを使用寿命まで(ゴム層の厚さが5mmになるまで)使用した際の予想限界籾摺り量(籾摺り可能な籾米の重量の予想値)を算出した。結果を表2に示した。
なお、予想限界籾摺り量は、上述した方法で計測した4か所の摩耗量の平均値(平均摩耗量)を算出し、平均摩耗量(A)、及び、実際に処理した籾米の重量(B)に基づき、下記計算式(1)より算出した。
予想限界籾摺り量=籾米の重量(B)÷〔平均摩耗量(A)/20〕・・・(1)
【0068】
また、豊岡カントリーエレベーターでの聞き取り調査の結果、バンドー化学社製の籾摺りロール(ホワイトロール、統合大100型)の寿命(限界籾摺り量)は、概ね300〜400トンであることが明らかとなった。
【0069】
(6−2)実施例6及び比較例4で作製した籾摺りロールの評価
兵庫南農業協同組合、稲美カントリーエレベーターにて評価した。
籾摺り機は、サタケ社製、型式:HPS100HEA(1999年導入)を使用した。
籾米は、銘柄:ヒノヒカリ及びキヌヒカリ、水分率(玄米基準):14.3%(ヒノヒカリ)、14.1%(キヌヒカリ)とした。
処理速度は、約2.0トン/時間とした。
なお、実施例6及び比較例4の籾摺りロールを使用した場合の脱ぷ率は、従来の籾摺りロールを使用した場合と同程度であった。
【0070】
本評価では、約600トン(実施例6)又は約200トン(比較例4)の籾米を処理し、そのときの籾摺りロールのゴム層の摩耗量を計測した。結果を表2に示した。
また、上記摩耗量の計測結果に基づき、予想限界籾摺り量を算出した。算出結果を表2に示した。
なお、摩耗量の計測方法、及び、予想限界籾摺り量の算出方法は、上記(5−1)と同様である。但し、比較例4では摩耗量を主ロール前、及び、副ロール前の2か所でのみ計測した。
【0071】
【表2】
【0072】
表2に示したように、特定の熱硬化性ウレタン組成物の硬化物からなるゴム層を備えた本発明の籾摺りロールは、耐久性に優れるため、長期に渡って使用することができ、籾摺りロールの交換頻度を低減することができる。
また、上記熱硬化性ウレタン組成物がシリコーンオイルを含有する場合、耐久性が向上することも明らかとなった。
更に、各籾摺りロールにおいて、20℃で計測した片側厚さを「100」として、20℃の片側厚さに対する45℃、70℃での片側厚さの比率を算出した。結果を表1に示した。