【解決手段】 本発明は、エラストマーに磁性フィラーが分散されている磁性エラストマーと、該磁性エラストマーに自己接着により一体化されている軟質発泡ポリウレタンと、からなるクッションパッド、および
エラストマーに磁性フィラーが分散されている磁性エラストマーと、該磁性エラストマーに自己接着により一体化されている軟質発泡ポリウレタンと、からなるクッションパッド、および
該クッションパッドの変形に起因する磁気変化を検出する磁気センサー、
からなるクッションパッドの変形を検出するシステム。
前記磁性フィラーがエラストマーの片面側に偏在していて、その偏在面の反対面で軟質発泡ポリウレタンと自己接着している、請求項1記載のクッションパッドの変形を検出するシステム。
前記クッションパッドが座席用のシートクッションパッドであり、検出する変形が人の着座状態である、請求項1〜4いずれかに記載のクッションパッドの変形を検出するシステム。
磁性エラストマーを作成する工程、クッションパッド用モールドに前記磁性エラストマーを配設する工程、軟質発泡ポリウレタン原液を注入する工程、前記軟質発泡ポリウレタン原液を発泡させて、磁性エラストマーと自己接着により一体化してクッションパッドを形成する工程、および該クッションパッドをクッションパッドの変形に起因する磁気変化を検出する磁気センサーと組み合わせる工程、からなるクッションパッドの変形を検出するシステムの製造方法。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両において、人が座席に着座してシートベルトをしかたどうか、を検出して、シートベルトをしていないときに警告を発するアラームシステムが実用化されている。このシステムは、通常、人の着座を検知して、着座してもシートベルトしないときに警告を発するものである。この装置には、人が着座したかどうかを検出する着座センサーが用いられている。着座センサーは、人が何回も座るのを検出しなければならないので、高い耐久性を必要とする。また、人が座ったときに、異物感が無いものが求められている。
【0003】
特開2012−108113号公報(特許文献1)には、座席に配置されて人の着座を検知する着座センサーであって、クッション部材の中に対向した電極を設けて、電気的接触で人の着座を検知するものが開示されている。このセンサーは、電極を用いるもので、配線がどうしても必要であり、大きな変位を受けると断線することも考えられ、耐久性に問題がある。また、電極は金属的な物が多く、人が座ったときに異物感が生じるし、電極が金属的で無いとしても、その他のものによる異物感が存在する。
【0004】
特開2011−255743号公報(特許文献2)には、誘電体を挟んで対向するセンサー電極と、センサー電極の間の静電容量を測定する静電容量センサーをと備えた静電容量式着座センサーが記載されている。このセンサーも電極を使うので、配線が必要であり、上記特許文献1と同じように耐久性の問題がある。また、電極の使用により、異物感はぬぐえない。
【0005】
特開2007−212196号公報(特許文献3)には、変位可能な可撓部材に取り付けられた磁気を発生させる磁気発生体と、磁気発生体から発生された磁場を検出する磁気インピーダンス素子を有するフレームの固定部材に取り付けられた磁気センサーを備える車両シート用加重検出装置が記載されている。この装置では、磁気発生体は所定の大きさを有する磁石を用いるもので、異物感がなくクッション材の表層へ配置することが難しく、クッション材内層部に配置すると、検出精度が問題となる。
【0006】
特開2006−014756号公報(特許文献4)には、永久磁石と磁気センサーを備えた生体信号検出装置が記載されている。この装置も明らかに永久磁石を使用するものであって、異物感があるので、クッション材の表層への配置が難しい。また、クッション内層部への配置も、検出精度が劣ることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、クッションパッドの耐久性を向上すると共に、異物感が生じないものを得ることを目的とする。本発明者等は、上記の目的を達成すべく鋭気検討の結果、エラストマー中に磁性フィラーが分散されている磁性エラストマーを用いて、それと発泡ポリウレタンとの組合せで、クッションパッドの表層に磁性体を持ってくることができる構成を見いだし、本発明を成すに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、エラストマーに磁性フィラーが分散されている磁性エラストマーと、該磁性エラストマーに自己接着により一体化されている軟質発泡ポリウレタンと、からなるクッションパッド、および該クッションパッドの変形に起因する磁気変化を検出する磁気センサー、からなるクッションパッドの変形を検出するシステム、を提供する。
【0010】
前記磁性フィラーは、好ましくはエラストマーの片面側に偏在していて、その偏在面の反対面で軟質発泡ポリウレタンと自己接着している。
【0011】
前記磁性フィラーの偏在度は、1〜90であるのが好ましい。
【0012】
前記磁性エラストマーは、好ましくは残存OH基濃度0.2〜0.9meq/gを有する。
【0013】
前記クッションパッドは、好ましくは座席用のシートクッションパッドであり、検出する変形が人の着座状態である。
【0014】
本発明は、また、磁性エラストマーを作成する工程、クッションパッド用モールドに前記磁性エラストマーを配設する工程、軟質発泡ポリウレタン原液を注入する工程、前記軟質発泡ポリウレタン原液を発泡させて、磁性エラストマーと自己接着により一体化してクッションパッドを形成する工程、および該クッションパッドをクッションパッドの変形に起因する磁気変化を検出する磁気センサーと組み合わせる工程、からなるクッションパッドの変形を検出するシステムの製造方法を提供する。
【0015】
前記磁性エラストマーは、好ましくは磁性フィラーの偏在面の反対面をモールドの内側になるように配設する。
【0016】
前記製造方法における磁性エラストマーは、好ましくは残存OH基濃度0.2〜0.9meq/gを有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、エラストマー中に磁性フィラーが分散されている磁性エラストマーを用いるので、固体状の磁石を用いる場合に比べて、固体感が非常に少なく、座り心地が良いクッションパッドとなる。また、磁気センサーは、磁性エラストマー中の磁性フィラーの磁気変化を検出するので、距離を離して設置しても良く、また電極を用いるシステムと異なって、電極に接続するための配線が不要であり、配線の切断などの耐久性の問題が解消される。更に、電極に接続する配線が不要なので、クッションパッド内に異物を設置する必要が無く、製造面でも簡単になる。
【0018】
磁性エラストマーは、軟質発泡ポリウレタンと自己接着により一体化しているので、磁性エラストマーの剥離なども少なく、耐久性が高く、かつ磁性エラストマーの弾性を有する特徴から、柔らかく、座り心地が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1、
図2および
図3を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明のクッションパッドの変形を検出するシステムを車載座椅子に応用する場合を示す模式断面図である。
図2は、本発明の磁性エラストマーの働きを示す模式図である。
図3は、本発明のクッションパッドの斜視図を模式的に表した図である。
【0021】
本発明のシステムは、基本的には、着座部1と、背もたれ部2と、磁気センサー3とから構成されている。着座部1は、磁性エラストマー4と、軟質発泡ポリウレタン5とからなるクッションパッド6と、それを覆う外皮7からなり、磁性エラストマー4は軟質発泡ポリウレタン5の着座面の一部に層状に形成されている。本発明では、磁性エラストマー4と軟質発泡ポリウレタン5は自己接着しているので、剥離しにくい。磁気センサー3は、システムを支える台座8に固定されているのが好ましい。台座8は、自動車の場合車体(図示せず)に固定されている。
【0022】
図3では、磁性エラストマー4と軟質発泡ポリウレタン5とからなる本発明のクッションパッド6の斜視図を示し、台座8とその上に載置された磁気センサー3も図示している。
図3中のA−A線は、この線に垂直に切断したものを
図2で模式的に示している。磁性エラストマー4は、人が着座して、変形を一番受けやすい場所の上方に配置してある。
図3では、クッションパッド6の上の外皮7が記載されていない。外皮7は、皮、布、合成樹脂が用いられるが、それらに限定されない。
【0023】
磁性エラストマー4は、
図2のように、エラストマー9中に磁性フィラー10が多く含まれていて、本発明では、磁性フィラー10は図の上方に偏在していて、その偏在度が1〜90であるのが好ましい。
【0024】
本明細書中で「偏在度」とは、磁性エラストマー中の磁性フィラーの偏在度合いを表す数値であって、以下の方法で測定したものを言う。作製したエラストマーをカミソリ刃で切り出し、サンプル断面をデジタルマイクロスコープにて100倍で観察した。得られた画像を、画像解析ソフト(三谷商事社製WinROOF)を用いて、エラストマーの厚み方向に3等分し上段層、中段層、下段層の磁性フィラーの粒子数をカウントした。各層の粒子数と、中段層の粒子数との比率を求める事で、各層の磁性フィラー存在率を求めた。さらに、[上段層の磁性フィラー存在率]−[下段層の磁性フィラー存在率]を求める事により偏在度とした。ここで、上段層とは磁性エラストマーにおける着座時に圧力を受ける部分である。偏在度の値が高い程、磁性フィラーが偏在して存在していることになる。
【0025】
図2では、磁性エラストマー4、軟質発泡ポリウレタン5と、磁気センサー3だけを示しているが、機能説明するためにこれらだけを抜き出した。
図2では、圧力11がエラストマー9の上方から掛けられている。圧力11により、エラストマー9が変形して、磁性フィラー10の位置が圧力のかかった部分だけ下方に下がる。この磁性フィラー10の下方への変化が磁性フィラー10から発生する磁場を変化させ、それが磁気センサー3で検出される。
【0026】
圧力11が高いと、磁性フィラー10の位置の変化が大きくなり、逆に圧力11が低いと、磁性フィラー10の位置変化が小さくなり、それらによる磁場の変化により、圧力11の強さも測定することができる。また、磁気センサー3は、
図1では1個であるが、磁気センサー3の個数、配置箇所は適宜変更することができる。
【0027】
図2に示したように、磁性フィラー10はエラストマー9の片面側に偏在していて、その偏在面が着座面となるのが好ましい。これにより、磁性フィラー10の変位が大きくなり、検出が容易になる。
【0028】
磁性フィラー10の偏在度は、上述のように測定して決定される。偏在度は、1〜90であり、好ましくは2〜90、より好ましくは3〜85である。偏在度が1より小さいと、軟質発泡ポリウレタンとの自己接着性が劣る傾向にある。また、偏在度が90より大きくなると、磁性エラストマー層が脆くなり、取扱いが困難になる。偏在度が1より小さくてもよいが、磁性フィラー10が偏在していた方が、エラストマー内部の変位が大きくなって、検出が容易になる。
【0029】
磁性フィラー10は、一般的に、稀土類系、鉄系、コバルト系、ニッケル系、酸化物系があるが、これらのいずれでもよい。好ましくは、高い磁力が得られる稀土類系であるが、これに限られない。磁性フィラー3の形状は、特に限定的ではなく、球状、扁平状、針状、柱状および不定形のいずれであってよい。磁性フィラーは、平均粒径0.02〜500μm、好ましくは0.1〜400μm、より好ましくは0.5〜300μmである。平均粒径が0.02μmより小さいと、磁性フィラーの磁気特性が悪化してしまう。平均粒径500μmを超えると磁性エラストマーの機械的特性(脆性)が悪化してしまう。
【0030】
磁性フィラー10は、着磁後にエラストマー中に導入してもよいが、通常はエラストマーに導入した後に着磁すること多い。エラストマー中に導入後、着磁すると、磁石の向きが
図2のように揃うことになり、磁力の検出が容易になる。
【0031】
エラストマー9は、一般のエラストマーを用いる事ができるが、圧縮永久歪等の特性を考慮すると熱硬化性エラストマーが好ましい。エラストマーに磁性フィラー導入後撹拌し、その後に磁性フィラーの偏在処理をすると、磁性フィラーの偏在が起こる。通常は、磁性フィラーを導入した後に室温あるいは所定の温度で静置すると、磁性フィラーの重さで沈降し、下面に磁性フィラーが偏在する。また、偏在を物理的な力、例えば遠心力あるいは磁力、を用いて行ってもよい。
【0032】
エラストマー9は、好ましくはポリウレタンエラストマーまたはシリコーンエラストマーが好適である。ポリウレタンエラストマーの場合、活性水素含有化合物と磁性フィラーを混合し、ここにイソシアネート成分を混合させる事により混合液を得る。また、イソシアネート成分にフィラーを混合し、活性水素含有化合物を混合させる事で混合液を得る事も出来る。該混合液を離型処理したモールド内に注型し、その時点で必要により所定時間静置して磁性フィラーの沈降による偏在化を行い、その後硬化温度まで加熱して硬化することにより、エラストマーを形成してもよい。シリコーンエラストマーの場合、シリコーンエラストマーの前駆体に溶剤と磁性フィラーを入れて混合し、型内に入れたときに必要により静置して偏在処理をし、その後加熱して硬化することによりエラストマーを形成する。混合液作成時に、必要に応じて溶剤を配合しても良い。
【0033】
ここで、ポリウレタンエラストマーの場合使用できるイソシアネート成分、活性水素含有化合物については下記のものが挙げられる。
【0034】
イソシアネート成分としては、ポリウレタンの分野において公知の化合物を特に限定なく使用できる。イソシアネート成分としては、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。これらは1種で用いても、2種以上を混合しても差し支えない。また、前記イソシアネートは、ウレタン変性、アロファネート変性、ビウレット変性、及びイソシアヌレート変性等の変性化したものであってもよい。
【0035】
活性水素含有化合物としては、ポリウレタンの技術分野において、通常用いられるものを挙げることができる。例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体等に代表されるポリエーテルポリオール、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、3−メチル−1,5−ペンタンアジペートに代表されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンのようなポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応物などで例示されるポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させ、次いで得られた反応混合物を有機ジカルボン酸と反応させたポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシル化合物とアリールカーボネートとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
活性水素含有化合物として上述した高分子量ポリオール成分の他に、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、及びトリエタノールアミン等の低分子量ポリオール成分、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジエチレントリアミン等の低分子量ポリアミン成分を用いてもよい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。更に、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)(MOCA)、2,6−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(2,3−ジクロロアニリン)、3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、トリメチレングリコール−ジ−p−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、N,N’−ジ−sec−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトライソプロピルジフェニルメタン、m−キシリレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等に例示されるポリアミン類を混合することもできる。
【0037】
エラストマー中の磁性フィラーの量は、エラストマー100重量部に対して、1〜450重量部、好ましくは2〜400重量部である。1重量部より少ないと、磁場の変化を検出することが難しくなる。また、450重量部を超えると、エラストマー自体が脆くなるなど、所望の特性が得られなくなる。
【0038】
本発明では、磁性エラストマーの残存OH基濃度が0.2〜0.9meq/gであることが好ましい。このOH基の存在が、軟質発泡ポリウレタンとの自己接着性を生む。従って、残存OH基濃度の存在が自己接着には重要である。残存OH基濃度は、好ましくは0.2〜0.85meq/gである。残存OH基濃度が、0.2meq/gより小さいと、軟質発泡ポリウレタンとの自己接着性が劣る。残存OH基濃度が、0.9meq/gよりも大きくなると、硬化が起こらないことも有り、また、硬化しても特性安定性などが悪くなる。残存OH基濃度は、配合設計時において算出される残存するOH基の量(meq)を、ウレタンエラストマーの総重量(g)で除したものである。
【0039】
磁気センサー3は、通常磁場の変化を検出するために用いられるセンサーであればよく、磁気抵抗素子(例えば、半導体化合物磁気抵抗素子、異方性磁気抵抗素子(AMR)、巨大磁気抵抗素子(GMR)またはトンネル磁気抵抗素子(TMR))、ホール素子、インダクタ、MI素子、フラックスゲートセンサーなどを例示することができる。より高いS/N比を有するという観点から、ホール素子が好ましく使用される。
【0040】
本発明は、また、磁性エラストマーを作成する工程、クッションパッド用モールドに前記磁性エラストマーを配設する工程、軟質発泡ポリウレタン原液を注入する工程、前記軟質発泡ポリウレタン原液を発泡させて、磁性エラストマーと自己接着により一体化してクッションパッドを形成する工程、および該クッションパッドを変形に起因する磁気変化を検出する磁気センサーと組み合わせる工程、からなるクッションパッドの変形を検出するシステムの製造方法を提供する。
【0041】
磁性エラストマーは、前述したように、エラストマーの形成時に磁性フィラーを配合して、必要に応じて静置あるいはその他の手段により磁性フィラーを偏在化させた後、型内で反応することにより作成することができる。この磁性エラストマーをクッションパッド用の金型内に配設し、その後軟質発泡ポリウレタン原液を注入する。このポリウレタン原液を発泡させることにより、磁性エラストマー中に残存するOH基とポリウレタン原液との間の反応、あるいは水素結合が起こり、軟質発泡ポリウレタンと磁性エラストマーとは自己接着性を有する。従って、磁性エラストマーは磁性フィラーの偏在面の反対面をモールドの内側になるように配設するのが好ましい。
【0042】
軟質発泡ポリウレタン原液は、ポリイソシアネート成分、ポリオール、水などの活性水素含有化合物を含むものである。ここで、使用できるポリイソシアネート成分、活性水素含有化合物については下記のものが挙げられる。
【0043】
ポリイソシアネート成分としては、ポリウレタンの分野において公知の化合物を特に限定なく使用できる。例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。また、ジフェニルメタンジイソシアネートの多核体(クルードMDI)であっても良い。エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。これらは1種で用いても、2種以上を混合しても差し支えない。また、前記イソシアネートは、ウレタン変性、アロファネート変性、ビウレット変性、及びイソシアヌレート変性等の変性化したものであってもよい。
【0044】
活性水素含有化合物としては、ポリウレタンの技術分野において、通常用いられるものを挙げることができる。例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体等に代表されるポリエーテルポリオール、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、3−メチル−1,5−ペンタンアジペートに代表されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンのようなポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応物などで例示されるポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させ、次いで得られた反応混合物を有機ジカルボン酸と反応させたポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシル化合物とアリールカーボネートとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオール、ポリマー粒子を分散させたポリエーテルポリオールであるポリマーポリオールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの具体例としては、三井化学株式会社製の市販品(例えば、EP3028、EP3033、EP828、POP3128、POP3428およびPOP3628)などが使用できる。
【0045】
軟質発泡ポリウレタンを製造するに際して、配合される上記以外のものは通常用いられる架橋剤、整泡剤、触媒等を使用すればよく、その種類はとくに限定されない。
【0046】
架橋剤の例としては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなど挙げられる。整泡剤としては、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のSF-2962、SRX−274C、2969T等が挙げられる。触媒の例としては、Dabco33LV(エアープロダクツジャパン株式会社製)、トヨキャットET、SPF2、MR(東ソー株式会社製)等が挙げられる。
【0047】
更に、必要に応じて、水、トナー、難燃剤などの添加物を適宜使用することもできる。
【0048】
難燃剤の例としては、大八化学株式会社製のCR530やCR505が挙げられる。
【0049】
上記方法で得られたクッションパッドは、本発明では、磁気センサーを組み合わせることにより、本発明のクッションパッドの変形を検出するシステムが得られる。
【実施例】
【0050】
本発明を実施例により更に詳細に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0051】
製造例1 イソシアネート末端プレポリマーAの合成
反応容器にポリオールA(グリセリンを開始剤にプロピレンオキシドを付加したポリオキシプロピレングリコール、OH価56、官能基数3)85.2重量部を入れ、撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。その後、反応容器内を窒素置換した。次いで、反応容器にトルエンジイソシアネート(三井化学株式会社製、2,4体=100%、NCO%=48.3%)14.8重量部を添加して、反応容器内の温度を80℃に保持しながら3時間反応させてイソシアネート末端プレポリマーA(NCO%=3.58%)を合成した。
【0052】
製造例2 イソシアネート末端プレポリマーBの合成
反応容器にポリオールC(ペンタエリスリトールを開始剤にプロピレンオキシドを付加したポリオキシプロピレングリコール、OH価75、官能基数3)81.2重量部を入れ、撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。その後、反応容器内を窒素置換した。次いで、反応容器にトルエンジイソシアネート(三井化学株式会社製、2,4体=100%、NCO%=48.3%)18.8重量部を添加して、反応容器内の温度を80℃に保持しながら3時間反応させてイソシアネート末端プレポリマーB(NCO%=4.55%)を合成した。
【0053】
実施例1
次に、ポリオールA213.0重量部およびオクチル酸鉛(東栄化工株式会社製、BTT−24)0.39重量部の混合液にネオジム系フィラー(愛知製鋼株式会社製、MF−15P)631.2重量部を添加し、フィラー分散液を調製した。このフィラー分散液を減圧脱泡し、同様に減圧脱泡した上記プレポリマーA100.0重量部を添加し、自転・公転ミキサー(シンキー株式会社製)にて混合および脱泡した。この反応液を1.0mmのスペーサーを有する離型処理したPETフィルム上に滴下し、ニップロールにて厚み1.0mmに調整した。その後、磁性フィラーの偏在処理として常温にて30分静置することで磁性フィラーを沈降させた。その後、80℃で1時間硬化を行って、フィラー分散ポリウレタンエラストマーを得た。得られた該エラストマーを着磁装置(電子磁気工業株式会社製)にて1.3Tで着磁することにより、磁性エラストマーを得た。
【0054】
上記磁性エラストマーを用いて、偏在度を下記の偏在度評価にしたがって測定した。結果を表1に示す。偏在度については、偏在処理時間も表1に記載する。
【0055】
偏在度評価
作製したエラストマーをカミソリ刃で切り出し、サンプル断面をデジタルマイクロスコープにて100倍で観察した。得られた画像を、画像解析ソフト(三谷商事株式会社製WinROOF)を用いて、エラストマーの厚み方向に3等分し上段層、中段層、下段層の磁性フィラーの粒子数をカウントした。各層の粒子数と、中段層の粒子数との比率を求める事で、各層の磁性フィラー存在率を求めた。さらに、[上段層の磁性フィラー存在率]−[下段層の磁性フィラー存在率]を求めることにより偏在度とした。ここで、上段層とは磁性エラストマーにおける着座面側の層である。
【0056】
ポリプロピレングリコール(三井化学株式会社製、EP−3028、OH価28)60.0重量部、ポリマーポリオール(三井化学株式会社製、POP−3128、OH価28)40.0重量部、ジエタノールアミン(三井化学株式会社製)2.0重量部、水3.0重量部、整泡剤(東レ・ダウ・コーニングシリコーン株式会社製、SF−2962)1.0重量部およびアミン触媒(エアープロダクツジャパン株式会社製、Dabco33LV)0.5重量部を混合・撹拌し、混合液Aを調製し、23℃に温度を調節した。また、トルエンジイソシアネートとクルードMDIの80/20(重量比)混合物(三井化学株式会社製、TM−20、NCO%=44.8%)を23℃に温調し、混合液Bとした。
【0057】
次いで、前記磁性エラストマーを50mm角に切り出し、クッションモールドに磁性フィラーの偏在面が下になるように配置し、モールド温度を62℃に調整した。そこへ、前記混合液Aと前記混合液BをNCO index=1.0となるように混合した軟質発泡ポリウレタン原液を、高圧発泡機にてモールド内に注入し、モールド温度62℃で5分間、発泡・硬化させて、磁性エラストマーが一体化されたクッションパッドを得た。このクッションパッドの特性安定性(%)を下記の要領で測定した。結果を表1に示す。また、クッションパッドの磁性フィラー側の表面性状の凹凸の有無を評価した。
【0058】
特性安定性の測定
得られたクッションパッドについて、50万回の耐久試験を行い、初期値に対するセンサー特性の変化率から特性安定性を求めた。センサー特性は10kPaの圧力を印加したときのホール素子の出力電圧変化率から求めた。なお、圧力印加には40mmφの面圧子を用いた。
【0059】
表面性状評価
製造した磁性エラストマーの表面性状を、以下の基準で評価した。
○:凹凸なし(取扱い性良好)
×:凹凸あり(取扱い性悪い)
【0060】
実施例2〜11および比較例1
使用する配合処方を表1に記載するものを用いて、磁性エラストマーを作成し、実施例1と同様の方法でクッションパッド作成して、偏在度、特性安定性および表面性状を評価した。結果を表1に示す。尚、比較例1は、軟質発泡ポリウレタンと一体成形を行わずに、別々に成形した後、両面テープで貼り付けたものについて、同じ評価を行った。両面テープで貼るのは、従来技術の態様であり、本発明では自己接着していることを特徴としている。
【0061】
【表1】
【0062】
表中、ポリオールBは、プロピレングリコールを開始剤にプロピレンオキシドを付加したポリオキシプロピレングリコール、OH価56、官能基数2である。
ポリオールDは、3-メチル-1,5-ペンタンジオールおよびトリメチロールプロパンとアジピン酸を出発原料としたポリエステルポリオール、OH価56、官能基数3である。
サマリウム系フィラーは、SmFeN合金微粉(平均粒径:2.5μm、住友金属鉱山株式会社製)である。
【0063】
表1から明らかなように、本発明の実施例の場合は、特性安定性が良い。しかし、一体成形ではなく、両面テープで留めた比較例1の場合は、特性安定性が20%を超える値になっている。
【0064】
実施例8では、磁性フィラーの偏在度が小さく、磁性エラストマーと軟質発泡ポリウレタンとの接着が不十分になる傾向に有り、特性安定性が悪くなっているが、使用に耐える範囲である。実施例9では、実施例8とは逆に偏在が大きく、特性安定性は良好であるが、表面状態が悪く、ハンドリング性が悪くなっているが、使用に耐える範囲内である。実施例10では、残存OH基濃度が少なく、化学的効果による接着効果が不十分であり、特性安定性が悪くなっているが、使用には支障がない状態である。実施例11では、設定NCO indexが低いため、磁性エラストマーの弾性率が非常に低くなり、特性安定性が悪くなっているが、使用に耐える範囲内である。