【解決手段】ジョイント部材14は、短柱状に形成されている。ジョイント部材14には軸心方向の両端側で開口した穴部16、18が形成されている。穴部16、18は、直線状のパイプ部材12が嵌入可能な形状及び寸法に設定されている。穴部16、18におけるパイプ部材12の挿込方向は、ジョイント部材14の軸心方向の一方側と他方側とで互いに交差する方向に傾斜して設定されている。パイプ部材12とジョイント部材14とが交互に連結されることで、全体として湾曲状の曲部が形成されている。
前記第二部材は、複数の前記ジョイント部が間隔をあけて互いに並列配置されるように当該複数の前記ジョイント部同士を連結して一体化する連結保持部を備える、請求項1記載の車体フレーム構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、車体フレームを製造する際に曲げ加工が必要になる。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、曲げ加工をせずに湾曲状の曲部を形成することができる車体フレーム構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の車体フレーム構造は、直線状の第一部材と、短柱状に形成されかつ軸心方向の両端側で開口して前記第一部材が挿し込み可能な挿込部が形成されたジョイント部を備え、前記挿込部における前記第一部材の挿込方向が前記ジョイント部の軸心方向の一方側と他方側とで互いに交差する方向に傾斜して設定された第二部材と、を有し、前記第一部材と前記第二部材とが交互に連結されることで湾曲状の曲部が形成されている。
【0007】
上記構成によれば、第二部材のジョイント部の挿込部には、直線状の第一部材が挿し込み可能となっており、挿込部における第一部材の挿込方向は、ジョイント部の軸心方向の一方側と他方側とで互いに交差する方向に傾斜して設定されている。そして、本発明では、第一部材と第二部材とが交互に連結されることで、湾曲状の曲部が形成されているので、曲げ加工をせずに湾曲状の曲部が形成される。
【0008】
請求項2に記載する本発明の車体フレーム構造は、請求項1記載の構成において、前記第二部材は、複数の前記ジョイント部が間隔をあけて互いに並列配置されるように当該複数の前記ジョイント部同士を連結して一体化する連結保持部を備える。
【0009】
上記構成によれば、第二部材の連結保持部は、複数のジョイント部が間隔をあけて互いに並列配置されるように当該複数のジョイント部同士を連結して一体化している。このため、別途スペーサを設けなくても、複数の湾曲状の曲部を離して並列配置しかつ一体化することができる。
【0010】
請求項3に記載する本発明の車体フレーム構造は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記第二部材は、前記挿込部の内周面を構成する内筒部と、前記内筒部の外周面に対して半径方向に離間する内周面を備えると共に前記ジョイント部の外周面を構成する外筒部と、前記内筒部と前記外筒部とを連結する多孔質部と、を備える。
【0011】
上記構成によれば、第二部材は、内筒部と外筒部とが多孔質部によって連結されているので、衝突時等に多孔質部が潰れることで衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0012】
請求項4に記載する本発明の車体フレーム構造は、請求項3記載の構成において、前記多孔質部は、強度に異方性を有するハニカム部とされている。
【0013】
上記構成によれば、多孔質部は、強度に異方性を有するハニカム部となっているので、衝突荷重の入力方向を予め想定してハニカム部の向きを設定することで、衝突時には所望の変形モードを得ることができる。
【0014】
請求項5に記載する本発明の車体フレーム構造は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記第二部材は、前記挿込部の内周面を構成する内筒部と、前記内筒部の外周面に対して半径方向に離間する内周面を備えると共に前記ジョイント部の外周面を構成する外筒部と、前記内筒部と前記外筒部とを弾性変形可能に連結する弾性部と、を備える。
【0015】
上記構成によれば、第二部材は、内筒部と外筒部とが弾性部によって弾性変形可能に連結されているので、第一部材と第二部材とをオーバーラップさせた部位の剛性が高くなり過ぎるのを容易に抑えることができると共に第一部材と第二部材との間の振動伝達を抑制することができる。
【0016】
請求項6に記載する本発明の車体フレーム構造は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記第二部材は、前記挿込部の内周面を構成する内筒部と、前記内筒部の外周面に対して半径方向に離間する内周面を備えると共に前記ジョイント部の外周面を構成する外筒部と、前記内筒部と前記外筒部との間に充填されて振動減衰材で構成された振動減衰部と、を備える。
【0017】
上記構成によれば、第二部材において内筒部と外筒部との間には、振動減衰材で構成された振動減衰部が充填されているので、第一部材と第二部材との間の振動伝達を抑制することができる。
【0018】
請求項7に記載する本発明の車体フレーム構造は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記第二部材は、前記第一部材の外周面に対して半径方向に離間する内周面を備えると共に前記ジョイント部の外周面を構成する筒部と、前記筒部の内周面に設けられて前記第一部材を前記ジョイント部の軸心側へ向けて付勢する付勢部と、を備える。
【0019】
上記構成によれば、第二部材の筒部が第一部材の外周面に対して半径方向に離間すると共に第二部材の筒部の内周面に設けられた付勢部が第一部材をジョイント部の軸心側へ向けて付勢するので、第一部材と第二部材とをオーバーラップさせた部位の剛性が高くなり過ぎるのを容易に抑えることができると共に第一部材と第二部材との間の振動伝達を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の車体フレーム構造によれば、曲げ加工をせずに湾曲状の曲部を形成することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る車体フレーム構造について
図1及び
図2を用いて説明する。
図1には、本実施形態に係る車体フレーム構造10が平面図で示されている。なお、
図1に示される車体フレーム構造10は、一例としてキャビンのアンダフレームの前端側に適用されたものである。また、
図1において、矢印FRは車体前方側を示し、矢印Wは車体幅方向を示している。
【0023】
図1に示されるように、車体フレーム構造10は、第一部材としてのパイプ部材12と、第二部材としてのジョイント部材14と、を備えている。パイプ部材12は、直線状のパイプすなわち直管とされている。パイプ部材12の材質は、構造材として使用されるものであればよく、一例として、金属(例えば、鉄鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金等)、プラスチック(例えば、CFRP(炭素繊維強化樹脂)、GFRP(ガラス繊維強化樹脂)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等のエンジニアリング・プラスチック)が適用可能である。
【0024】
図2には、ジョイント部材14が示されている。
図2(A)はジョイント部材14の斜視図であり、
図2(B)は
図2(A)のジョイント部材14の軸心14Xに沿って切断した縦断面図である。なお、ジョイント部材14の材質は、パイプ部材12の材質と同様である。
【0025】
図2に示されるように、ジョイント部材14は、短柱状に形成されている。ジョイント部材14には軸心方向(符号14X参照)の両端側で開口した挿込部としての穴部16、18が形成されている。穴部16、18は、パイプ部材12が嵌入可能(挿し込み可能)な形状及び寸法に設定されている。なお、本実施形態のジョイント部材14は、その全体が請求項1記載のジョイント部を構成している。
【0026】
図2(B)に示されるように、穴部16、18におけるパイプ部材12の挿込方向は、ジョイント部材14(ジョイント部)の軸心方向(符号14X参照)の一方側と他方側とで互いに交差する方向に傾斜して形成(設定)されている。このため、ジョイント部材14の軸心方向両側の穴部16、18にパイプ部材12が嵌入された場合、ジョイント部材14を介して隣り合うパイプ部材12は、互いに交差する方向を軸心方向として配置されることになる。本実施形態の穴部16、18は、
図2(B)の断面視で左右対称に傾斜している。
【0027】
ジョイント部材14の軸心方向中央部には、穴部16と穴部18とを仕切る隔壁部20が形成されている。隔壁部20は、一例として、ジョイント部材14の軸心方向(符号14X参照)と直交する壁部とされている。
【0028】
以上説明したジョイント部材14は、本実施形態では鋳造で製造されている。但し、ジョイント部材14は、鍛造、射出成形、切削加工等のような他の製造方法で製造されたものでもよい。
【0029】
図1に示されるように、本実施形態の車体フレーム構造10は、パイプ部材12とジョイント部材14とが交互に連結されることで、全体として湾曲状の曲部22が形成されている。換言すれば、本実施形態によれば、曲げ加工をせずに湾曲状の曲部22を形成することができる。また、ジョイント部材14の穴部16、18の形成方向(傾斜方向)を変えるだけで、曲部22の曲率を変えることもできる。
【0030】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る車体フレーム構造30について、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3には、本実施形態に係る車体フレーム構造30が斜視図で示されている。なお、
図3に示される車体フレーム構造30は、一例としてキャビンのアンダフレームの前端側に適用されたものである。また、
図3において、矢印FRは車体前方側を示し、矢印Wは車体幅方向を示している。
【0031】
図3に示されるように、車体フレーム構造30は、第一部材としてのパイプ部材32と、第二部材としてのジョイント部材34と、を備えている。パイプ部材32及びジョイント部材34は、第1の実施形態のパイプ部材12及びジョイント部材14と同様の材質とされている。また、パイプ部材32は、第1の実施形態におけるパイプ部材12(
図1参照)と同様の部材であり、直線状のパイプとされている。
【0032】
図4には、ジョイント部材34が斜視図で示されている。
図4に示されるように、ジョイント部材34は、短柱状に形成されたジョイント部36を複数個(本実施形態では三個)備えている。各ジョイント部36は、第1の実施形態におけるジョイント部材14(
図2参照)と同様の構造とされている。すなわち、ジョイント部36には軸心方向(符号36X参照)の両端側で開口した挿込部としての穴部38、40が形成されており、穴部38、40は、パイプ部材32(
図3参照)が嵌入可能(挿し込み可能)な形状及び寸法に設定されている。また、穴部38、40におけるパイプ部材32(
図3参照)の挿込方向は、ジョイント部36の軸心方向(符号36X参照)の一方側と他方側とで互いに交差する方向に傾斜して形成(設定)されている。ジョイント部36の軸心方向中央部には、穴部38と穴部40とを仕切る隔壁部42が形成されている。
【0033】
また、ジョイント部材34は、複数のジョイント部36が間隔をあけて互いに並列配置されるように当該複数のジョイント部36同士を連結して一体化する連結保持部44を備えている。連結保持部44は、中心部44Xから三本の腕部44Aが放射状に延びた形状(略Y字状)に形成されており、各腕部44Aの長さ及び隣り合う腕部44A同士がなす角度は等しく設定されている。そして、各腕部44Aの先端部にジョイント部36の外周面が突き当てられて接続されている。本実施形態では、連結保持部44は、スペーサの機能を兼ねた連結部とされている。また、ジョイント部36同士は平行に配置され、各ジョイント部36の軸心方向(符号36X参照)の端面位置が揃えられている。
【0034】
なお、ジョイント部材34は、第1の実施形態と同様に鋳造で製造されている。但し、ジョイント部材34は、他の製造方法で製造されたものでもよい。
【0035】
図3に示されるように、本実施形態の車体フレーム構造30は、互いに並列配置される三本のパイプ部材32と一個のジョイント部材34とが交互に連結されることで、三個の湾曲状の曲部46A、46B、46Cが間隔をあけて並列状にかつ一体化されたフレーム体46として形成されている。このため、別途スペーサを設けなくても、複数の湾曲状の曲部46A、46B、46Cを離間させて並列配置しかつ一体化することができる。つまり、スペーサを設けない分だけ部品点数を減らすことができる。また、連結保持部44の形状を本実施形態のような形状にすることで、重量化が抑えられる。
【0036】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る車体フレーム構造50について、
図5を用いて説明する。
図5には、本実施形態に係る車体フレーム構造50の一部が斜視図で示されている。なお、
図5では、パイプ部材32を透視した状態で第二部材としてのジョイント部材52を示すと共に、パイプ部材32の外形を二点鎖線で示している。
【0037】
図5に示されるように、本実施形態は、ジョイント部36(
図3参照)に代えて、ジョイント部54を備える点で、第2の実施形態とは異なる。他の構成は、第2の実施形態と同様の構成となっている。なお、第2の実施形態と同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
ジョイント部材52は、複数のジョイント部54を備えている。ジョイント部54は、短柱状に形成されかつ軸心方向(符号54X参照)の両端側で開口してパイプ部材32が嵌入可能(挿し込み可能)な挿込部としての穴部56(図中奥側の穴部は図示省略)が形成されている。ジョイント部54の穴部56におけるパイプ部材32の挿込方向は、第2の実施形態における穴部38、40(
図2参照)と同様であり、ジョイント部54の軸心方向(符号54X参照)の一方側と他方側とで互いに交差する方向に傾斜して形成(設定)されている。
【0039】
ジョイント部54は、穴部56の内周面56Aを構成する内筒部58と、ジョイント部54の外周面54Aを構成する外筒部60と、を備えている。本実施形態では一例として、内筒部58は、ジョイント部54の軸心方向(符号54X参照)の一方側と他方側とにそれぞれ一個ずつ、すなわち一対設けられている。一対の内筒部58の外周面58Bは、ジョイント部54の外周面54Aと同軸的に配置され、各内筒部58の外径は同径に設定されている。一方、一対の内筒部58の内周面(56A)の各軸心は、ジョイント部54の軸心54Xに対して異なる方向に傾斜しており、各内筒部58の内径は同径に設定されている。また、本実施形態では一対の内筒部58の対向面同士は接触している。但し、一対の内筒部58の対向面同士は離れて配置されてもよい。なお、本実施形態では、円筒形の外筒部60の内側に一対の内筒部58が配置されているが、このような一対の内筒部58に代えて、一対の内筒部58を一体化した一個の内筒部(すなわち、第1の実施形態におけるジョイント部材14(
図2参照)の外径を小さくしたような内筒部)が一対の内筒部58と同様の位置に配置されてもよい。外筒部60の内周面60Aは、内筒部58の外周面58Bに対して半径方向に離間している。
【0040】
また、ジョイント部54のブシュ部においては、内筒部58と外筒部60とが、多孔質部としてのハニカム部62によって連結されている。ハニカム部62は、薄板材62Aによって断面多角形で所定の方向(本実施形態ではジョイント部54の軸心方向(符号54X参照)と同じ方向)に延びる複数のセル壁が形成されたものであり、セル壁に囲まれて前記所定の方向に延びる複数のセル通路を有している。このため、ハニカム部62は、強度に異方性を有しており、セル壁(セル通路)の延在方向に対する強度に比べて、セル壁(セル通路)の延在方向に直交する方向に対する強度が低くなっている。
【0041】
本実施形態の構成によっても、前述した第1、第2の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。また、本実施形態の構成によれば、ジョイント部材52は、内筒部58と外筒部60とがハニカム部62によって連結されているので、衝突時等にハニカム部62が潰れることで衝撃エネルギーを吸収することができる。また、ハニカム部62は、強度に異方性を有しているので、衝突荷重の入力方向を予め想定してハニカム部62のセル通路の延在方向の向きを設定することで、衝突時には所望の変形モードを得ることができる。
【0042】
また、本実施形態の車体フレーム構造50を例えば車両のキャビンのフレーム部に適用した場合、衝突時に衝撃エネルギーが吸収されることで、キャビンの変形量を小さく抑えることができる。
【0043】
なお、本実施形態の変形例として、内筒部58と外筒部60とを連結する多孔質部は、例えば、ラティス(格子)構造を有するラティス部、トラス構造を有するトラス部等のような他の多孔質部であってもよい。また、本実施形態の他の変形例として、内筒部58と外筒部60との間に、例えば、発泡金属材、発泡スチロール、ウレタン材等のような多孔質材(多孔質部)が充填されることで、内筒部58と外筒部60とが連結されてもよい。これらの変形例でも、衝突時等には、多孔質部が潰れることで衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0044】
さらに、本実施形態の他の変形例として、一対の内筒部58に代えて、一定の肉厚の円筒形に形成された内筒部がジョイント部54の軸心方向(符号54X参照)の一方側と他方側とにそれぞれ一個ずつ設けられかつそれら一対の内筒部の各軸心がジョイント部54の軸心54Xに対して異なる方向に傾斜するように設定されてもよい。この変形例では、ハニカム部(62)に包囲された内側部分(内側空間)は、第1の実施形態における穴部16、18(
図2参照)をそれぞれ延長して連通させかつその内径を大きくしたような連通構造になっている。そして、この変形例では、前記内筒部の内側を、パイプ部材32が挿し込み可能な挿込部とするので、前記挿込部におけるパイプ部材32の挿込方向がジョイント部の軸心方向の一方側と他方側とで互いに交差する方向に傾斜して設定される。なお、この変形例のさらなる変形例として、前記内筒部の位置に、前記内筒部に代えてパイプ部材(32)の軸心方向の端部が配置される構成としてもよい。
【0045】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態に係る車体フレーム構造70について、
図6を用いて説明する。
図6には、本実施形態に係る車体フレーム構造70の一部が断面図で示されている。この図に示されるように、車体フレーム構造70は、ハニカム部62(
図5参照)に代えて、弾性部76を備える点で、第3の実施形態に係る車体フレーム構造50(
図5参照)とは異なる。他の構成は、第3の実施形態と同様の構成となっている。なお、第3の実施形態と同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
図6に示されるように、第二部材としてのジョイント部材72は、複数のジョイント部74にそれぞれ弾性部76を備えている。弾性部76は、複数のSバネ(「S字バネ」ともいう)76Aで構成され、内筒部58と外筒部60とを弾性変形可能に連結している。複数のSバネ76Aは、概ね外筒部60の半径方向に沿って配置され、内筒部58と外筒部60とを架け渡している。
【0047】
本実施形態の構成によっても、前述した第1、第2の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。また、本実施形態の構成によれば、パイプ部材32とジョイント部材72とをオーバーラップさせた部位の剛性が高くなり過ぎるのを容易に抑えることができると共にパイプ部材32とジョイント部材72との間の振動伝達を抑制することができる。
【0048】
パイプ部材32とジョイント部材72とをオーバーラップさせた部位の剛性を好適に設定することで、曲部46A、46B、46C(
図3参照)全体の弾性特性を良好にすることができ、例えば、パイプを曲げ加工したものと同等の弾性特性を有するフレームを容易に得ることができる。また、パイプ部材32とジョイント部材72との間の振動伝達が抑制されることで、フレームを伝播する振動を小さくすることができる。
【0049】
[第4の実施形態の変形例]
第4の実施形態の変形例を
図7に示す。この変形例は、
図7に示されるように、第4の実施形態の内筒部58(
図6参照)に代えてパイプ部材32の軸心方向の端部が配置されている点が第4の実施形態と異なる。なお、
図6のパイプ部材32と
図7のパイプ部材32は、径が異なるが他の点は同様の構成であるため同一符号を付す。
【0050】
図7に示されるように、第二部材としてのジョイント部材73は、複数のジョイント部75にそれぞれ筒部61を備えている。筒部61は、パイプ部材32の外周面32Aに対して半径方向に離間する内周面61Aを備えると共にジョイント部75の外周面75Aを構成している。なお、筒部61は、第4の実施形態の外筒部60と同様の部材で構成されている。
【0051】
筒部61の内周面61Aには付勢部77が設けられている。付勢部77を構成する複数のSバネ76Bは、本実施形態では筒部61の内周面61Aに取り付けられており、パイプ部材32をジョイント部75の軸心75X側へ向けて付勢している。また、複数のSバネ76Bは、筒部61の内周面61Aの周方向に沿って並設されると共に、ジョイント部75の軸心方向(
図7の紙面に垂直な方向)に沿って並設されている。複数のSバネ76Bのうちパイプ部材32に対して図中下側に配置されるものは、その配置位置がジョイント部75の軸心方向の両端側から中央部側へいくに従って、伸縮方向の寸法が長く設定されている。これに対して、複数のSバネ76Bのうちパイプ部材32に対して図中上側に配置されるものは、その配置位置がジョイント部75の軸心方向の両端側から中央部側へいくに従って、伸縮方向の寸法が短く設定されている。これにより、ジョイント部75の挿込部75Bにおけるパイプ部材32の挿込方向は、第4の実施形態と同様に、ジョイント部75の軸心方向の一方側と他方側とで互いに交差する方向に傾斜して設定されている。そして、パイプ部材32とジョイント部材73とが交互に連結されることで湾曲状の曲部(図示省略)が形成されている。
【0052】
このような構成でも第4の実施形態とほぼ同様の作用及び効果を得ることができる。
【0053】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態に係る車体フレーム構造80について、
図8を用いて説明する。
図8には、本実施形態に係る車体フレーム構造80の一部が断面図で示されている。この図に示されるように、車体フレーム構造80は、Sバネ76A(
図6参照)に代えて、板バネ86Aを備える点で、第4の実施形態に係る車体フレーム構造70(
図6参照)とは異なる。他の構成は、第4の実施形態と同様の構成となっている。なお、第4の実施形態と同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
図8に示されるように、第二部材としてのジョイント部材82は、複数のジョイント部84にそれぞれ弾性部86を備えている。弾性部86は、複数の板バネ86Aで構成され、内筒部58と外筒部60とを弾性変形可能に連結している。複数の板バネ86Aは、内筒部58と外筒部60との間の周方向に所定間隔で複数個配置され、内筒部58の側に凸になるように撓んでおり、ジョイント部84の軸心84X側へ向けて付勢している。なお、図中では、内筒部58が配置される前の状態の板バネ86Aの位置を二点鎖線で示す。
【0055】
本実施形態の構成によっても、前述した第4の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0056】
[第5の実施形態の変形例]
第5の実施形態の変形例を
図9に示す。この変形例は、
図9に示されるように、第5の実施形態の内筒部58(
図8参照)に代えてパイプ部材32の軸心方向の端部が配置されている点が第5の実施形態と異なる。なお、
図8のパイプ部材32と
図9のパイプ部材32は、径が異なるが他の点は同様の構成であるため同一符号を付す。また、第4の実施形態の変形例と同様の構成部については同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
図9に示されるように、第二部材としてのジョイント部材83は、複数のジョイント部85にそれぞれ筒部61を備えている。筒部61の内周面61Aには付勢部87が設けられている。付勢部87を構成する複数の板バネ86Bは、パイプ部材32をジョイント部85の軸心85X側へ向けて付勢している。また、複数の板バネ86Bは、筒部61の内周面61Aの周方向に沿って並設されると共に、ジョイント部85の軸心方向(
図9の紙面に垂直な方向)に沿って並設されている。複数の板バネ86Bのうちパイプ部材32に対して図中下側に配置されるものは、その配置位置がジョイント部85の軸心方向の両端側から中央部側へいくに従って、伸縮方向の寸法が長く設定されている。これに対して、複数の板バネ86Bのうちパイプ部材32に対して図中上側に配置されるものは、その配置位置がジョイント部85の軸心方向の両端側から中央部側へいくに従って、伸縮方向の寸法が短く設定されている。これにより、ジョイント部85の挿込部85Bにおけるパイプ部材32の挿込方向は、第5の実施形態と同様に、ジョイント部85の軸心方向(符号85X参照)の一方側と他方側とで互いに交差する方向に傾斜して設定されている。そして、パイプ部材32とジョイント部材83とが交互に連結されることで湾曲状の曲部(図示省略)が形成されている。
【0058】
このような構成でも第5の実施形態とほぼ同様の作用及び効果を得ることができる。
【0059】
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態に係る車体フレーム構造90について、
図10を用いて説明する。
図10には、本実施形態に係る車体フレーム構造90が断面図で示されている。この図に示されるように、車体フレーム構造90は、弾性部86(
図8参照)に代えて、振動減衰部96を備える点で、第5の実施形態に係る車体フレーム構造80とは異なる。他の構成は、第5の実施形態と同様の構成となっている。なお、第5の実施形態と同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0060】
図10に示されるように、第二部材としてのジョイント部材92は、複数のジョイント部94にそれぞれ振動減衰部96を備えている。振動減衰部96は、振動減衰材で構成され、内筒部58と外筒部60との間に充填されている。振動減衰材としては、例えば、ゴム、片状黒鉛鋳鉄、マグネシウム合金等が適用される。なお、振動減衰部96は、弾性部として把握される場合もあり得る。
【0061】
本実施形態の構成によっても、前述した第1、第2の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。また、本実施形態の構成によれば、パイプ部材32とジョイント部材92との間の振動伝達を抑制することができ、フレームを伝播する振動を小さくすることができる。なお、本実施形態の変形例として、振動減衰部(96)に包囲された内側部分(内側空間)を、第1の実施形態における穴部16、18(
図2参照)をそれぞれ延長して連通させたような連通構造にすると共に、内筒部58に代えて、パイプ部材(32)の軸心方向の端部を、振動減衰部(96)と面接触する位置に配置する構成としてもよい。
【0062】
[実施形態の補足説明]
なお、上記実施形態及び上述の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。第1の実施形態のジョイント部材14(
図1及び
図2参照)、並びに第2〜第6の実施形態及び第4、第5の実施形態の変形例におけるジョイント部36、54、74、75、84、85、94(
図3〜
図10参照)を、衝突を想定して適宜組み合わせて適所に設ければ、衝突性能に優れた車体フレームを形成することができる。
【0063】
例えば、第2の実施形態の変形例として、
図3に示される車体フレーム構造30の三個の曲部46A、46B、46Cのうち最も車室外側に配置される曲部46Aには、ジョイント部36に代えて、
図5に示されるジョイント部54を適用してもよい。このような構成によれば、車両の衝突時には、最も車室外側に配置されるジョイント部54のハニカム部62が潰れて衝撃エネルギーを吸収する。一方、ハニカム部62は、セル壁(セル通路)の延在方向には変形しにくいので、
図3に示される曲部46Aの湾曲ラインの崩れは抑えられる。また、車室内側寄りのジョイント部36は、構造材に適用される材質のみで構成されているので、変形しにくく、曲部46B、46Cの変形は最小限に抑えられる。
【0064】
なお、本発明の適用例として、キャビンを構成するフレームの各湾曲部には、前記変形例と同様に、
図3に示される三個の曲部46A、46B、46Cのうち最も車室外側に配置される曲部46Aにおいて、
図4に示されるジョイント部36に代えて、
図5に示されるジョイント部54を適用する構成を採り得る。
【0065】
また、例えば、第2の実施形態の他の変形例として、
図3に示される車体フレーム構造30の三個の曲部46A、46B、46Cのうち最も車体下方側に配置される曲部46Bには、ジョイント部36に代えて、
図6に示されるジョイント部74、
図7に示されるジョイント部75、
図8に示されるジョイント部84、
図9に示されるジョイント部85、及び、
図10に示されるジョイント部94のいずれかを適用してもよい。このような構成によれば、三個の曲部46A、46B、46Cのうち最も振動を受けやすい曲部46Bにおける振動を抑えることができるので、フレームを伝播する振動を効果的に抑えることができる。
【0066】
また、上記実施形態では、車体フレーム構造は、一例としてキャビンのアンダフレームの前端側に適用されたものとされているが、本発明の車体フレーム構造は、例えば、キャビンのアンダフレームの後端側、キャビンのアッパフレームの前端側及び後端側、キャビンのサイドフレームの前端側及び後端側、Bピラー、並びに、バンパ等のような他の部位に適用されてもよい。一例として、本発明の車体フレーム構造は、特開2012−224224号公報に示される車体構造の湾曲部に適用されてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、第一部材が直管のパイプ部材12、32とされているが、第一部材は、中実直線状の軸部材であってもよい。
【0068】
また、上記第1、第2の実施形態では、
図2及び
図4に示されるように、ジョイント部材14、34に隔壁部20、42が形成されているが、これらの隔壁部20、42が形成されない構成も変形例として採り得る。
【0069】
また、上記第1、第2の実施形態では、
図2及び
図4に示されるように、穴部16、18、38、40が軸心14X、36Xと直交する中央線(図示省略、ジョイント部を二等分するライン)に対して左右対称に形成されているが、挿込部(穴部)は、ジョイント部の軸心と直交する中央線に対して左右非対称であってもよい。
【0070】
また、
図3〜
図10に示されるように、上記第2〜第6の実施形態及び第4、第5の実施形態の変形例では、連結保持部44が三個のジョイント部36、54、74、75、84、85、94同士を連結して一体化しているが、一個の連結保持部が連結して一体化するジョイント部の個数は、二個であってもよいし四個以上であってもよい。
【0071】
また、
図3〜
図10に示される上記第2〜第6の実施形態等の変形例として、連結保持部は、複数のジョイント部と軸心方向が同じ方向に設定された角筒状に形成されて当該複数の前記ジョイント部同士を連結して一体化するような他の形状の連結保持部であってもよい。
【0072】
なお、上記第3の実施形態では、
図5に示されるように、ハニカム部62は、ジョイント部54の軸心方向(符号54X参照)と同じ方向に複数のセル通路が延びているが、車体におけるジョイント部材(第二部材)の配置位置によっては、例えば、ハニカム部の複数のセル通路がジョイント部の軸心方向と交差する方向(一例として直交する方向)に延びるような設定も採り得る。
【0073】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。