特開2015-202902(P2015-202902A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-202902(P2015-202902A)
(43)【公開日】2015年11月16日
(54)【発明の名称】薄葉紙収納箱
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/08 20060101AFI20151020BHJP
   B65D 5/42 20060101ALI20151020BHJP
   A47K 10/20 20060101ALI20151020BHJP
   A47K 10/42 20060101ALI20151020BHJP
【FI】
   B65D83/08 A
   B65D5/42 C
   A47K10/20 A
   A47K10/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-84680(P2014-84680)
(22)【出願日】2014年4月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074181
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 明博
(74)【代理人】
【識別番号】100152249
【弁理士】
【氏名又は名称】川島 晃一
(72)【発明者】
【氏名】村田 剛
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】小松 直美
【テーマコード(参考)】
3E014
3E060
【Fターム(参考)】
3E014LA07
3E014LA09
3E060AA03
3E060AB03
3E060BA03
3E060BC04
3E060DA04
3E060EA08
3E060EA14
(57)【要約】
【課題】 エンボス加工時の紙表面の破損を抑止しつつ、簡易に美粧性に優れた薄葉紙収納箱を得る。
【解決手段】 薄葉紙を収納する紙製の箱体1からなる薄葉紙収納箱において、箱体1に高さが10〜60μmの凸エンボス8を形成し、凸エンボス8の周囲に凸エンボス8の輪郭部10へ向かって徐々に濃くなるグラデーション模様11を施した。これにより、エンボス加工時の紙表面の破損を抑止しつつ、立体感のあるエンボスを得ることができるとともに、箱体に形成された凸エンボス8の凸形状と、凸エンボス8の周囲に施されたグラデーション模様11との相乗効果により、従来にない優れた美粧性を得ることができる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄葉紙を収納する紙製の箱体からなる薄葉紙収納箱において、
前記箱体には、高さが10〜60μmの凸エンボスが形成されており、
前記凸エンボスの周囲には、グラデーション模様が施されていることを特徴とする薄葉紙収納箱。
【請求項2】
前記凸エンボスは、L*a*b*表色系におけるL*値が80〜95であり、前記凸エンボスのL*値と前記グラデーション模様の最も高いL*値との差が3以上であることを特徴とする請求項1に記載の薄葉紙収納箱。
【請求項3】
前記箱体は、JIS K 7105に基づく60度鏡面光沢度が70〜90であり、L*a*b*表色系におけるL*値が80〜95であることを特徴とする請求項1または2に記載の薄葉紙収納箱。
【請求項4】
前記箱体を構成する板紙の坪量が350〜450g/mであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の薄葉紙収納箱。
【請求項5】
前記凸エンボスの面積は、頂面の平面視での面積が、前記箱体1面に対し4%以内であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の薄葉紙収納箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美粧性に優れた薄葉紙収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ティシュペーパー、キッチンペーパー等の薄葉紙の分野においては、需要者の購買意欲を喚起するため、薄葉紙を収納する箱体の外観に高い美粧性が求められている。
そのような箱体に高い美粧性を付与したものとして、例えば、高級感を出すために、箱体の外面の光沢度を高くした薄葉紙収納箱が知られている(例えば、特許文献1参照。)
また、さらに美粧性を向上させる目的で、箱体を構成する板紙にエンボス加工を施した薄葉紙収納箱が知られている(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−132432号公報
【特許文献2】特開2008−87854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エンボス加工を施す際、エンボス高さの高いエンボスを成形するには、エンボス加工ロールを凸版と凹版にしてエンボス圧を高くする必要があり、加工時に紙表面が破損するおそれがある。また、オンラインにて凹版と平版で簡易エンボス加工する方法があるが、この場合エンボス高さが低くなり、立体感に乏しく美粧性が得られないといった問題があった。この場合、特に原紙の坪量を少なくすると原紙の紙厚が薄くなるため、その傾向が顕著になる。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、エンボス加工時の紙表面の破損を抑止しつつ、簡易に美粧性に優れた薄葉紙収納箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、エンボス高さを特定の範囲とし、凸エンボスの周囲にグラデーション模様を施すことによって、上記の課題が解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の薄葉紙収納箱は、薄葉紙を収納する紙製の箱体からなる薄葉紙収納箱において、前記箱体には、高さが10〜60μmの凸エンボスが形成されており、前記凸エンボスの周囲には、グラデーション模様が施されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の薄葉紙収納箱は、請求項1に記載の、前記凸エンボスは、L*a*b*表色系におけるL*値が80〜95であり、前記凸エンボスのL*値と前記グラデーション模様の最も高いL*値との差が3以上であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の薄葉紙収納箱は、請求項1または2に記載の、前記箱体は、JIS K 7105に基づく60度鏡面光沢度が70〜90であり、L*a*b*表色系におけるL*値が80〜95であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の薄葉紙収納箱は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の、前記箱体を構成する板紙の坪量が350〜450g/mであることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の薄葉紙収納箱は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の、前記凸エンボスの面積は、頂面の平面視での面積が、前記箱体1面に対し4%以内であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明よれば、エンボス加工時の紙表面の破損を抑止しつつ、立体感のあるエンボスを得ることができるとともに、箱体に形成された凸エンボスの凸形状と、凸エンボスの周囲に施されたグラデーション模様との相乗効果により、従来にない優れた美粧性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る薄葉紙収納箱の外観を示す斜視図である。
図2】箱体の長側面を示す正面図である。
図3】凸エンボスとグラデーション模様を示す一部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る薄葉紙収納箱を実施するための形態について詳細に説明する。
図1乃至図3は本発明に係る薄葉紙収納箱の実施の形態の一例を示すもので、図1は本発明に係る薄葉紙収納箱の外観を示す斜視図、図2は箱体の長側面を示す正面図、図3は凸エンボスとグラデーション模様を示す一部拡大斜視図である。
【0015】
本発明の薄葉紙収納箱は、薄葉紙を収納する紙製の箱体1からなる。
箱体1に収納される薄葉紙は、家庭用、業務用、産業用のフェイシャルティシュー、トイレットペーパー、ペーパータオル、テーブルナプキン等の衛生用紙及び紙製又は不織布製のワイパーの何れでも良く、それらの形態はV字折り、C字折り、Z字折り等のシート状のものでもロール状のものでも良い。
【0016】
箱体1は、紙製であれば、その大きさ、形状等について特に限定されず、本例では、ミシン目等の切込線2によって形成される薄葉紙の取出口3を有する天面4と、天面4と反対側の底面5と、天面4と底面5の長辺を有する長側面6と、天面4と底面5の短辺を有する短側面7とからなる直方体形状の構造となっている。
【0017】
箱体1を構成する板紙の種類としては、紙箱(化粧箱)に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、白ボール(コートボール、A白ボール)やマニラボール(高級白板紙、特殊白板紙、一般マニラボール)等を使用することができる。特に、外観の美しさ、印刷適正、経済性の観点からコートボールが好ましい。
【0018】
JIS P 8124に準じて測定される板紙の坪量は、350〜450g/m、より好ましくは400〜450g/mである。簡易エンボス加工の場合、坪量が350g/m未満であると、紙厚が薄くなりエンボス高を得にくくなる。一方、坪量が450g/mを超えると、経済性が悪くなる。
【0019】
箱体1は、JIS K 7105に基づく60度鏡面光沢度が70〜90、より好ましくは80〜90である。光沢度が70未満であると、高級感を感じることできず美粧性が劣る。一方、光沢度が90を超えると、高光沢による高級感としてはそれ以上のものが得られず、経済性が悪くなる。
【0020】
上記の光沢度を得る方法としては、湿潤状態、もしくは可塑性を有している状態の塗工層を、鏡面仕上げした加熱ドラム(キャストドラム)に圧着し、塗工層の乾燥と同時に鏡面仕上げ面を写し取ることにより強光沢を得るキャスト法(キャストコート)、または、ロールコーターで印刷面に樹脂などを溶解し、ロールコーティングして乾燥させ、その鏡面光沢のある金属製のロールや平板、あるいはエンドレススチールベルトなどによって加熱プレスし、一定時間経過後剥がしとり、印刷面に強光沢を付与するプレス加工(プレスコート)が挙げられる。
なお、光沢度を上げる方法としては、この他にUVニスを塗工した後、UVを照射するUVニス引き加工があるが、UV照射により、光沢度、白色度が低下し、所望の美粧性が得られないため本発明では適さない。
【0021】
箱体1は、L*a*b*表色系におけるL*値が80〜95である。この範囲であると、後述するグラデーション模様との差が明確になり、美粧性が向上する。また、a*値は0.1〜0.3、b*値は−0.1〜−0.3が好ましい。ここで、本発明でいう「L*a*b*表色系」とは、CIE(国際照明委員会)1976(JIS Z 8729)で規定された表色系である。L*a*b*表色系におけるL*値、a*値、b*値は、色彩色差計を用いて測定することができる。なお、L*値は明度指数であり、a*値及びb*値は、それぞれ知覚色度指数である。
【0022】
箱体1は、JIS P 8148に基づく白色度が70〜80、好ましくは75〜80である。この範囲であると、後述するグラデーション模様との差が明確になり、美粧性が向上する。
なお、本発明における箱体1の光沢度、L*a*b*表色系および白色度は、箱体1の最も面積の多い地の部分の値である。
【0023】
箱体1を構成する板紙にエンボス加工を施すことにより、箱体1には凸エンボス8が形成されている。凸エンボス8の高さは10〜60μm、より好ましくは30〜60μmである。凸エンボス8の高さが10μm未満であると、立体感に乏しく高い美粧性が得らない。一方、凸エンボス8の高さが60μmを超えると、エンボス加工ロール又はプレートを凸版と凹版にしてエンボス圧を高くする必要があり、加工時に紙表面が破損するおそれがある。ここで、凸エンボス8の高さとは、凸エンボス非付与部分から、凸エンボス8の頂面9の最も高い部分までの距離のことである。
凸エンボス8については、例えば、板紙に対して平版と凹版のエンボス加工ロール又はプレートでプレス加工を行い付与することができる。
【0024】
凸エンボス8は、箱体1の底面5を除く5面のうちのいずれか1面に形成されていればよく、箱体1の底面5を除く5面のうちの2面以上に形成されているのが好ましい。
凸エンボス8の面積は、頂面9の平面視での面積が、箱体1面に対し4%以内、より好ましくは3%以内である。箱体1面当たりの凸エンボス8の面積が4%を超えると、凸エンボス8が目立たなくなり、美粧性に劣る。
【0025】
凸エンボス8の周囲には、凸エンボス8の輪郭部10へ向かって徐々に濃くなる(凸エンボス8から離れる方向へ向かって徐々に薄くなる)グラデーション模様11が施されている。グラデーション模様11を施すための印刷方法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等の公知の印刷方法が用いられる。
【0026】
グラデーション模様11は、箱体1の底面5を除く5面のうちのいずれか1面に形成されていればよく、箱体1の底面5を除く5面のうちの2面以上に形成されているのが好ましい。
グラデーション模様11の面積は、箱体1面に対し10%以内、より好ましくは2.5%以内である。箱体1面当たりのグラデーション模様11の面積が10%を超えると、エンボスと接する印刷のときグラデーションの諧調が破りがたい。
【0027】
凸エンボス8は、頂面9のL*a*b*表色系におけるL*値が80〜95であり、グラデーション模様11は、L*a*b*表色系におけるL*値が77〜92である。
そして、凸エンボス8のL*値とグラデーション模様11の最も高いL*値との差、具体的には、凸エンボス8のL*値とグラデーション模様11が凸エンボス8に接する場所のグラデーション模様11のL*値との差が3以上、より好ましくは4以上である。L*値の差が3未満であると、凸エンボス8の形状が目立ち難く、美粧性が劣る。
【実施例】
【0028】
以下に、本発明を実施例で説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例で共通に用いた試験方法は以下の通りである。
【0029】
(1)坪量
JIS P 8124に準じて測定した。
(2)光沢度
JIS K 7105に準じて60度鏡面光沢度を測定した。
(3)L*a*b*表色系
JIS Z 8722に記載された方法に準拠し、分光測色計(CMS−35SPX型、株式会社 村上色彩技術研究所)を用いて測定した。a*値は赤方向、−a*値は緑方向、b*値は黄方向、−b*値は青方向を示す。
(4)白色度
JIS P 8148「紙,板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に準拠して測定した。
(5)グラデーション模様の印刷及び凸エンボスの作成
板紙にオフセット印刷でグラデーション模様を印刷した後、模様を彫刻した凹版と平版でプレス加工を行い、凸エンボスを作成した。なお、比較例3については、グラデーション模様ではなく、単色の模様を印刷した。
(6)評価
(紙の割れ)
グラデーション模様の印刷後、凸エンボスを作成した板紙に対し、板紙の表面に割れが生じているか評価を行った。その結果を表1に示す。
(美粧性)
得られた板紙で作成した箱体に対し、美粧性を官能評価した。評価は、20人のパネラーで行い、下記の基準に従って判定した。最も支持の多い意見を評価の結果として、その結果を表1に示す。
○:高い美粧性を感じる。
△:あまり美粧性を感じない。
×:ほとんど美粧性を感じない。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1の薄葉紙収納箱は、紙板の表面に割れがなく、高い美粧性を感じた。即ち、本発明の薄葉紙収納箱は、紙表面の破損を抑止しつつ、優れた美粧性を得ることができる。
これに対して、凸エンボス高さを低くした比較例1は、紙板の表面に割れは生じないものの、美粧性に劣り、凸エンボス高さを高くした比較例2は、美粧性は向上するものの、紙板の表面に割れが生じた。また、凸エンボス周囲に単色の模様を印刷した比較例3は、ほとんど美粧性が感じられなかった。さらに、板紙にUVニス引き加工をした比較例4は、UVニス処理により、光沢度、白色度が低下し、ほとんど美粧性が感じられなかった。
【符号の説明】
【0032】
1 箱体
2 切込線
3 取出口
4 天面
5 底面
6 長側面
7 短側面
8 凸エンボス
9 頂面
10 輪郭部
11 グラデーション模様
図1
図2
図3