【課題】火気に対して安全であり、かつ、閉塞性成分を含む原液を噴射する場合において、使用間隔が長くなったり夏場の高温下での保管などにより噴射通路内において閉塞性成分による詰まりが生じたとしても、このような詰まりを解消することのできる噴射製品を提供する。
【解決手段】原液と圧縮ガスとを含む内容物を充填する容器本体と、容器本体に取り付けられるバルブ機構と、原液を噴射する噴射孔を有し、バルブ機構に取り付けられる噴射部材とを備え、バルブ機構と噴射部材とは、原液が通過する噴射通路を備え、原液は、噴射通路を閉塞し得る閉塞性成分を含み、バルブ機構は、圧縮ガスにより原液を加圧して噴射するエアゾール噴射を行うための第1の操作状態と、原液をエアゾール噴射よりも高い圧力に加圧して噴射通路に供給する第2の操作状態とに変位する噴射製品。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
本発明の一実施形態の噴射製品が、図面を参照して説明される。
図1は、本実施形態の噴射製品1の模式的な断面図である。
図2は、
図1に示される本実施形態の噴射製品1の拡大図である。
図1および
図2に示される噴射製品1は、噴射動作が行われていない状態(非噴射状態)である。噴射製品1は、内容物を充填するための容器本体2と、容器本体2に取り付けられるバルブ機構3と、バルブ機構3に取り付けられる噴射部材4とを備える。内容物は、原液5と、圧縮ガスとを含む。噴射部材4は、原液を噴射する噴射孔43aを備える。本実施形態の噴射製品1によれば、圧縮ガスにより原液5を加圧して噴射するエアゾール噴射(以下、単にエアゾール噴射ともいう)と、原液5をエアゾール噴射よりも高い圧力に加圧して噴射通路に供給する閉塞物の除去操作(以下、単にポンプ操作ともいう)とを切り替えることができる。また、本実施形態の噴射製品1において、エアゾール噴射とポンプ操作との切り替えは、使用者が噴射部材4を適宜操作することにより行うことができるほか、後述する切替部材9を操作することにより行うこともできる。以下、それぞれの構成について説明する。なお、以下に示される実施形態は一例であり、噴射製品1の構成は、エアゾール噴射とポンプ操作とを適宜切り替えることができる構成であれば特に限定されない。
【0022】
<容器本体2>
容器本体2は、内容物を充填するための耐圧容器であり、有底筒状の本体部21と、本体部21よりも小径であり本体部21の上部に一体的に設けられた筒状の首部22とを含む。首部22の上部には開口が形成されている。開口は、内容物を充填する際の充填口であり、内容物の充填後にバルブ機構3により閉止される。
【0023】
容器本体2を構成する材料は、特に限定されない。容器本体2を構成する材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等の合成樹脂やアルミニウム、ブリキなどの金属が例示される。合成樹脂を用いる場合は、たとえば、日光による内容物の劣化を防止するために紫外線吸収剤が含有されてもよく、圧縮ガスの透過を防止するために容器本体の外表面または内面に炭素やシリカなどが蒸着されてもよい。首部22の外周には、後述されるネジキャップ62と接続するための雄ネジ部23が形成されている。
【0024】
<バルブ機構3>
バルブ機構3は、容器本体2内を密封し、容器本体2から原液5を取り込んで圧縮ガスの圧力で噴射するための、さらには容器本体2から原液5を取り込んで加圧するための部材であり、ハウジング6と、ハウジング6内に収容されるバルブ本体7と、ハウジング6とバルブ本体7とによって形成され、容器本体2内に空気を導入するための空気導入路を開閉する逆止弁機構8とを備える。バルブ本体7は、ハウジング6内を上下方向に摺動自在に収容されるステム71(内部ステム74および外部ステム75)を含む。本実施形態において、バルブ機構3は、エアゾール噴射を行う第1の操作状態と、閉塞物の除去操作を行う第2の操作状態とに変位する。第1の操作状態および第2の操作状態の詳細は、後述される。
【0025】
(ハウジング6)
ハウジング6は、筒状のハウジング本体61と、ハウジング本体61に接続され、ハウジング本体61を容器本体2に取り付けるためのネジキャップ62とを備える。
【0026】
ハウジング本体61は、容器本体2から取り込まれる原液5が通過または一時的に貯留される第1空間S1と、後述する外部から導入される空気が通過する第2空間S2とを内部に備える円筒状の部材である。第1空間S1と第2空間S2とは、後述するピストン部材72により区画される。ハウジング本体61は、後述する外部ステム75が出没する開口が形成された上端と、容器本体2に貯留される原液5を取り込むためのチューブ63が接続される下端とを有する。
【0027】
ハウジング本体61の上端には、径方向の外側へ突出するフランジ部61aが周設されている。フランジ部61aは、容器本体2にハウジング本体61を位置決めするための部位であり、フランジ部61aの大きさ(外径)は、容器本体2の首部22の外径と略一致する。フランジ部61aの下面と首部22の上端とは、ガスケット64を介して位置決めされる。ハウジング本体61は、フランジ部61aにより位置決めされた状態において、ハウジング本体61の外周壁と容器本体2の首部22の内周壁とは離間している。
【0028】
ハウジング本体61の下端近傍には、ハウジング本体61よりも径の小さな小径部61bが形成されている。小径部61bには、チューブ63が差し込まれる連結溝61cが形成されている。チューブ63は、容器本体2の内底近傍まで延びる比較的長尺の円筒状部材であり、連結溝61cに差し込まれる一端と、容器本体2に貯留された原液5中に浸漬され、原液5を取り込むための開口が形成された他端とを有する。
【0029】
小径部61bの中央には、容器本体2からチューブ63を介して取り込まれる原液5をハウジング本体61の第1空間S1に導入するための液相連通孔61dが形成されている。液相連通孔61dと第1空間S1との接続箇所には、ボール弁機構65が設けられている。
【0030】
ボール弁機構65は、容器本体2から第1空間S1への一方向に原液5を取り込むための弁機構である。ボール弁機構65は、ハウジング本体61の下端近傍において、ハウジング本体61の内周壁が径方向の内側へ膨出することにより形成された凹部65aと、凹部65aに落とし込まれたボール65bとを含む。ボール65bは、噴射部材4を操作しないときは自重により液相連通孔61dと第1空間S1との連通箇所を閉止する。一方、ボール65bは、バルブ機構3が後述されるエアゾール噴射を行う第1の操作状態にある場合において、容器本体2内の圧縮ガスによる圧力と、ステム孔の開放による大気との連通により、原液がチューブ63から第1空間S1内へ流入し、その液流によってボール65bが持ち上げられ、液相連通孔61dと第1空間S1との連通箇所を開放する。また、ボール65bは、閉塞物を除去する第2の操作状態にある場合において、容器本体2内の原液5が第1空間S1に取り込まれる際に発生する液流によって持ち上げられ、液相連通孔61dと第1空間S1との連通箇所を開放する。
【0031】
ハウジング本体61の側周壁には、後述するピストン部材72により適宜開閉される空気導入孔61eが形成されている。空気導入孔61eは、第2空間S2と容器本体2の内部空間とを接続し、容器本体内の圧力が充分に低くなった状態でポンプ操作をした後で外部の空気を容器本体2内に導入するための孔である。空気導入孔61eは、非噴射状態または後述される第1の操作状態ではピストン部材72により閉止され、バルブ機構3が第1の操作状態から第2の操作状態に変位する際にピストン部材72が下方向に摺動されることにより開放される。
【0032】
ネジキャップ62は、フランジ部61aの上面を押さえ、中央に開口が形成された円盤状の天板62aと、天板62aの外周縁から下方へ設けられた側周部62bと、天板62aの内周縁から上方へ設けられた円筒状の装着部62cとを有する。側周部62bの内周壁には、首部22の雄ネジ部23と接続するための雌ネジ部62dが形成されている。装着部62cは、内周壁において径方向内側へ周設されたカバー部62eと、外周壁において径方向の外側へ突出するよう周設された係合部62fとを備える。カバー部62eは、ハウジング本体61に対して後述する逆止弁機構8を位置決めするため部位である。係合部62fは、噴射部材4をネジキャップ62に取り付けるための部位である。
【0033】
(バルブ本体7)
バルブ本体7は、容器本体2から取り込まれた原液5を噴射部材4に送るための部材であり、ハウジング本体61内に上下方向に摺動自在に収容されるステム71と、ステム71と協働してハウジング7内を上下方向に摺動するピストン部材72と、ステム71を上方に付勢するバネ部材73とを備える。
【0034】
ステム71は、ステム孔76が形成された内部ステム74と、内部ステム74の上部に装着され、ハウジング本体61の上端に形成された開口から出没する外部ステム75とからなる。内部ステム74と外部ステム75とは、同軸上に設けられており、ハウジング本体61内を一体的に上下方向に摺動する。
【0035】
内部ステム74は、下向きの椀状であり、下面にバネ部材73の上端が接続される比較的大径の椀状部74aと、椀状部74aよりも小径であり、椀状部74aの上面中央から上方に延びる円筒状の円筒部74bとを含む。
【0036】
椀状部74aの上面と円筒部74bとの接続箇所には、ピストン部材72の内側摺動部77の下端が当接する環状の当接溝74hが形成されている。椀状部74aの下面には、バネ部材73の上端が接続される環状の接続溝74cが形成されている。
【0037】
円筒部74bは、噴射時に原液5が通過する内部ステム内通路74dを有する。また、円筒部74bは、外周壁に、内部ステム内通路74dと第1空間S1とを連通するステム孔76が形成された筒状の円柱部74eと、円柱部74eの上端から上方にかけて縮径された縮径部74fと、縮径部74fの上端から上方に延びる筒状の小径部74gとを含む。円柱部74eと縮径部74fと小径部74gとは、いずれも同軸上に形成されている。
【0038】
外部ステム75は、内部ステム内通路74dを通過した原液5がさらに通過する外部ステム内通路75aを備え、小径部74gを取り囲む円錐台状のスカート部75bと、スカート部75bの上端から上方にかけて縮径された縮径部75cと、縮径部75cの上端から上方に延びる筒状部75dとを含む。筒状部75dの上端は、容器本体2から突出しており、噴射部材4が取り付けられる。筒状部75dの外径は、ハウジング本体61の内径よりも小さい。そのため、外部ステム75の外周壁とハウジング本体61の内周壁とにより、外部から導入される空気が通過する空間(空気導入路)が画定される。
【0039】
スカート部75bは、バルブ機構3が後述する第1の操作状態から第2の操作状態に変位する際に、下端をピストン部材72の後述する連結環79に押し当てて、ピストン部材72を下方へ摺動させるための部位である。スカート部75bの外径は、椀状部74aと同程度である。スカート部75bの内径は、小径部74gの外径よりも大きい。そのため、スカート部75bの内周壁と小径部74gの外周壁とは離間される。このように離間されて形成された空間には、後述するピストン部材72の上部内側摺動部77aが挿入される。
【0040】
筒状部75dの内径は、小径部74gの外径と同程度である。そのため、外部ステム75は、小径部74gの上部を筒状部75dの下端側から挿入することにより内部ステム74に装着される。装着された状態において、内部ステム内通路74dと外部ステム内通路75aとは連通される。
【0041】
ピストン部材72は、ハウジング本体61の内部空間を第1空間S1と第2空間S2とに区画するとともに、ステム孔76および空気導入孔61eを適宜開閉するための部材である。ピストン部材72は、内部ステム74および外部ステム75と適宜協働してハウジング本体61内を上下方向に摺動する。ピストン部材72は、内部ステム74の外周壁と摺動する内側摺動部77と、ハウジング本体61の内周壁と摺動する外側摺動部78と、内側摺動部77と外側摺動部78とを連結する連結環79とを含む。連結環79は、内側摺動部77と外側摺動部78との中心近傍をつなぐ。
【0042】
内側摺動部77は、ステム孔76を適宜開閉するための部位であり、連結環79との接続箇所の上部に相当する上部内側摺動部77aと、連結環79との接続箇所の下部に相当する下部内側摺動部77bとを含む。内側摺動部77の内周壁の形状は、内部ステム74の外周壁の形状と相補的な形状であり、非噴射状態において、内側摺動部77は、内周壁を内部ステム74の外周壁に密着させてステム孔76を閉止する。
【0043】
上部内側摺動部77aの上端は、内部ステム74の外周壁と外部ステム75のスカート部75bの内周壁との間に形成される空間に挿入され、バルブ機構3が非噴射状態から第1の操作状態に変位する際に外部ステム75および内部ステム74が下方向へ摺動されると、内部ステム74の外周壁と外部ステム75の内周壁とにより形成される空間により深く挿入される。
【0044】
下部内側摺動部77bは、バネ部材73により内部ステム74が上方向に付勢されると、椀状部74aの当接溝74hと下端とが当接し、上方向に付勢される。
【0045】
外側摺動部78は、空気導入孔61eを適宜開閉する円柱状の部材であり、ハウジング本体61の内周壁に沿って摺動する。また、外側摺動部78は、連結環79との接続箇所の上部に相当する上部外側摺動部78aと、連結環79との接続箇所の下部に相当する下部外側摺動部78bとを含む。
【0046】
上部外側摺動部78aの上端は、バネ部材73により内部ステム74を介して上方向に付勢されると、後述する押さえ部材81の下端と当接する。
【0047】
連結環79は、内側摺動部77と外側摺動部78とを連結する部位である。また、連結環79は、上面において、スカート部75bの下端と当接する。そのため、ピストン部材72は、噴射時に外部ステム75が押し下げられることにより、スカート部75bが連結環79の上面に当接した後、下方に押し下げられる。
【0048】
ピストン部材72を構成する材料としては、合成樹脂、シリコーンゴム、合成ゴム等の弾性力のある材料が例示される。
【0049】
バネ部材73は、ステム71を上方に付勢するための部材であり、椀状部74aの下面に形成された接続溝74cと接続される上端と、凹部65aの周囲に取り付けられる下端とを有する。バネ部材73は、ハウジング本体61内において圧縮した状態で配置されており、内部ステム74を上方に付勢する。
【0050】
このように構成されたバルブ本体7は、ネジキャップ62の雌ネジ部62dを容器本体2の雄ネジ部23に螺合させることにより、容器本体2に固定される。
【0051】
(逆止弁機構8)
逆止弁機構8は、外部から空気を容器本体2内に適宜導入するための機構であり、ネジキャップ62とハウジング本体61との間に設けられ、押さえ部材81とシール材82とを含む。
【0052】
押さえ部材81は、カバー部62eとともにシール材82を挟んで位置決めするための部材である。押さえ部材81の下端は、上部外側摺動部78aの上端と当接し、非噴射状態でのピストン部材72の位置を規定する。
【0053】
シール材82は、外部ステム75とハウジング本体61とにより形成される空気導入路を適宜開閉するための部材であり、ネジキャップ62の内周壁に沿って取り付けられる外周縁と外部ステム75が挿通される挿通孔を画定する内周縁とを有する。また、シール材82は、外部ステム75の外周壁と面接触できるように、内周縁から下方に延設されたシール部位を有する。シール材82は、ネジキャップ62を首部22に螺合することにより、カバー部62eと押さえ部材81の上面とにより押圧状態で挟まれる。また、シール材82の内周縁の径は、筒状部75dの外径よりもわずかに小さくなるよう調整されている。そのため、シール材82は、所定の面接触圧で空気導入路を閉止する(閉状態)。シール材82は、このように閉状態にある場合、容器本体2内と外部とを充分に遮断し、容器本体2内からの圧縮ガスの漏洩を防止する。シール材82が外部ステム75を閉止する圧力(閉止圧)は、上記した面接触圧のほかに、容器本体2の内圧を含む。すなわち、容器本体2の内部空間と第2空間S2とは、空気導入孔61eにより連通されている。空気導入孔61eは、バルブ機構3が第1の操作状態から第2の操作状態に変位する際に、ピストン部材72が下方へ摺動されることにより開放される。この場合、開放された空気導入孔61eを介して容器本体2の気相部分(圧縮ガスが存在)と第2空間S2とが連通され、同じ圧力となる。したがって、シール材82は、面接触圧と容器本体2の内圧とを含む閉止圧により外部ステム75を閉止する。
【0054】
<噴射部材4>
噴射部材4は、外部ステム75に装着される噴射ノズル41と、ネジキャップ62に装着される操作部42とを含む。
【0055】
噴射ノズル41は、L字型の筒状体であり、筒状部75dの上端と接続される一端と、先端ノズル43が接続される他端とを備える。噴射ノズル41の外周壁には、後述するレバー42bの本体部42hに形成された軸受に軸支される回動軸41aが設けられている。噴射ノズル41の一端の下面41cには、係止溝41b(被係合部の一例
図3参照)が形成されている。係止溝41bは、バルブ機構3が後述される第1の操作状態に変位する際に切替部材9の係止突起95を係止するために設けられている。係止溝41bの深さは、係止突起95の高さと同程度である。また、係止溝41bの深さは、内部ステム74の当接溝74hの底からステム孔76までの距離よりもわずかに長い。
【0056】
先端ノズル43は、原液5の噴射方向や噴射形状等を調整するための治具であり、噴射ノズル41に接続される一端と、原液5が噴射される噴射孔43aが形成された他端とを備える。本実施形態の噴射製品1は、先端ノズル43にメカニカルブレークアップ機構を備えたノズルチップ43bが装着されている。メカニカルブレークアップ機構は、原液5を広範囲に均一に噴霧するための機構であり、原液5に旋回力を与えて適度な大きさに微細化するための溝(チャンネル)を有する。
【0057】
このようなノズルチップ43bを備える先端ノズル43は、従来公知の単なる直線状の噴射経路を備える先端ノズル(図示せず)と比較して複雑な構造である。そのため、後述する内容物に含まれる閉塞性成分は、メカニカルブレークアップ機構の溝を閉塞しやすい。しかしながら、本実施形態の噴射製品1は、バルブ機構3を後述するエアゾール噴射を行う第1の操作状態から、閉塞物を除去する第2の操作状態に変位させてポンプ操作を行うことにより、このようなメカニカルブレークアップ機構を備える先端ノズル43を装着した場合であっても、溝における閉塞性成分の閉塞状態を解消でき、詰まりを除去することができる。
【0058】
操作部42は、第1空間S1に貯留される原液5を噴射するためにステム71を摺動させるための部位であり、装着部62cに装着されるレバー支持部42aと、レバー支持部42aに軸支されたレバー42bとを含む。
【0059】
レバー支持部42aは、円筒状の本体部42cと、本体部42cの側壁から突出する支持アーム42dとを備える。本体部42cは、装着部62cが挿入される環状溝42eが形成されており、環状溝42eの内面には、装着部62cの係合部62fが係合する係合溝42fが形成されている。レバー支持部42aは、環状溝42eに装着部62cが挿入され、係合部62fと係合溝42fとが係合されることにより、ネジキャップ62に装着される。支持アーム42dの上端近傍には、後述するレバー42bに設けられる軸受(図示せず)に軸支される回動軸42gが形成されている。
【0060】
レバー42bは、使用者が噴射時に操作する部位であり、支持アーム42dに軸支される軸受が形成された一端と、先端ノズル43が露出される他端とを含む本体部42hと、本体部42hの他端から下方に延設されたトリガー部42iとを含む。本体部42hは、中央部分に、回動軸41aが軸支される軸受(図示せず)が形成されている。トリガー部42iは、噴射時に使用者によって操作される。
【0061】
このように構成された噴射部材4によれば、使用者がトリガー部42iを引くことにより、レバー42bは回動自在に軸支された後端を基点として回動し、かつ、中央部分に形成された軸受を介して噴射ノズル41を下方に押し下げる。
【0062】
<切替部材9>
切替部材9は、バルブ機構3を後述する非噴射状態、第1の操作状態および第2の操作状態に変位させる際に好適に使用される治具である。
図1および
図2に加え、
図3を参照して、本実施形態の切替部材9が説明される。
図3は、切替部材9の動作を説明するための斜視図である。なお、本実施形態において切替部材9は、必須ではない。
【0063】
切替部材9は、本体部42cに装着するための円筒状の装着部91と、噴射ノズル41の一端と当接して噴射ノズル41の下方向への移動を適宜制止するための円筒状の当接部92とからなる本体部90と、本体部90の外周壁において径方向の外側に膨出するよう形成された板状の操作部93とを備える。本体部90の外周壁には、一部が切り欠かれた切欠部94が形成されている。装着部91と当接部92とは、外径が同程度であり、一体的に形成されている。また、装着部91の中心孔91aの径は、当接部92の中心孔92bの径よりも大きく、本体部42cの外径と同程度である。そのため、装着部91は、切欠部94を介して本体部42cに嵌め込むことにより本体部42cに取り付けることができる。一方、当接部92の中心孔92bの径は、外部ステム75の外径よりもわずかに大きい。そのため、装着部91を本体部42cに装着することによって切替部材9を本体部42cおよび外部ステム75の外周に取り付けた場合に、中心孔92bを画定する内周縁は、外部ステム75の外周壁と接触しない。これにより、外部ステム75は、上下方向に摺動される際に、切替部材9(当接部92)により摺動が阻害されることがない。
【0064】
当接部92の上面92aには、係止突起95(係合部の一例)が形成されている。係止突起95は、噴射ノズル41の一端の下面に形成された係止溝41bに適宜係合される。
【0065】
切替部材9は、いくらか弾性を有する樹脂からなる。そのため、切替部材9は、切欠部94を押し広げて、装着部91を本体部42cに嵌め込むことにより、容易に本体部42cおよび外部ステム75の外周に取り付けることができる。同様に、切替部材9は、切欠部94を押し広げて、本体部42cから容易に取り外すことができる。
【0066】
当接部92は、切替部材9が本体部42cに取り付けられた状態において、噴射ノズル41の一端側の下面41cと本体部42cの上面との間に挟まれるように配置される。そのため、噴射ノズル41は、下面41cと係止突起95の上面とが当接することにより下方向への移動が規制される。
【0067】
操作部93は、使用者が切替部材9を操作する際に指先同士で摘まむ部位である。使用者は、操作部93を操作することにより、切替部材9を本体部42cおよび外部ステム75の軸周りに回動させることができる。切替部材9を操作して非噴射状態、第1の操作状態および第2の操作状態にそれぞれ切り替える方法については後述される。
【0068】
(内容物)
内容物は、容器本体2に充填され、原液5と圧縮ガスとを含む。原液5は、噴射部材4が操作されることにより、容器本体2からバルブ機構3に供給される。具体的には、原液5は、チューブ63の下端から取り込まれ、第1空間S1を通過または第1空間S1に一時的に貯留された後、ステム孔76から内部ステム74の内部ステム内通路74dに供給される。次いで、原液5は、外部ステム75の外部ステム内通路75a、噴射ノズル41のノズル内通路41dに供給され、噴射孔43aより噴射される。本実施形態では、このように容器本体2内の原液5がチューブ63の下端開口からバルブ機構3に供給され、さらに噴射部材4の噴射孔から噴射されるまでの通路を特に、「噴射通路」という。噴射通路は、容器本体2から取り込まれる原液5がステム孔76に至るまでに通過する通路、すなわち原液5がチューブ63の下端開口からチューブ63内および第1空間S1を経てステム孔76に至るまでの内部通路と、ステム孔76から噴射孔43aに至るまでに通過する通路、すなわちステム孔76から内部ステム内通路74d、外部ステム内通路75a、ノズル内通路41dを経て噴射孔43aに至るまでのまでの外部通路とからなる。
【0069】
原液5は、噴射通路に付着して狭窄したり、噴射通路を閉塞する可能性のある成分(閉塞性成分)を溶媒に配合したものである。なお、本実施形態では、閉塞性成分の付着、閉塞性成分による狭窄や閉塞を単に「閉塞等」ともいう。
【0070】
閉塞性成分は、頭髪や皮膚などの対象物に付着して所望の効果を発揮するための成分であり、たとえば、合成樹脂、水溶性高分子、パウダーが例示される。
【0071】
合成樹脂は、たとえば頭髪をセットするために配合される。ここで、従来、たとえば合成樹脂を含む原液を噴射するヘアスプレーの場合、圧縮ガスではなく液化ガスが使用されることが多い。この場合、合成樹脂は、液化ガス(加圧状態において液体)の溶解力を利用して原液中に溶解される。また、液化ガスは気化するため、噴射後に噴射通路、特にステム孔76や、噴射孔43aなどの噴射通路内に仮に閉塞性成分が残留してもこれらを排出する作用を奏する。そのため噴射通路は閉塞されにくい。しかしながら、本実施形態の噴射製品1は、内容物として液化ガスを含有せず、圧縮ガスが含まれる。圧縮ガスは加圧状態において主に気体であり、合成樹脂を溶解させる作用を有しない。また、原液中にほとんど溶解しないため、噴射通路において残留した閉塞性成分を排出する作用も小さい。したがって、閉塞性成分である合成樹脂は、乾燥して被膜を形成して噴射通路を閉塞しやすい。しかしながら、本実施形態の噴射製品1は、バルブ機構3を後述するエアゾール噴射を行う第1の操作状態から第2の操作状態に変位させて原液をエアゾール噴射よりも高い圧力に加圧して噴射通路に供給することにより、閉塞性成分による噴射通路の閉塞状態を解消でき、詰まりを除去することができる
【0072】
合成樹脂は、エタノールなどの溶媒に溶解して用いられる。合成樹脂としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸オクチルアミド・アクリル酸ヒドロキシプロピル・メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体、ビニルピロリドン・メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル・アクリル酸ステアリル・ジアクリル酸トリプロピレングリコール共重合体、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、架橋型N,N−ジメチルアクリルアミド−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム共重合体、N−メタクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル樹脂アルカノールアミン、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、N,N−ジメチル−N−(2−メタクリロイルオキシエチル)アミンN−オキシド・メタクリル酸アルキル共重合体などが例示される。
【0073】
合成樹脂の含有量は、固形分が原液中0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、合成樹脂の含有量は、固形分が10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。合成樹脂の含有量が0.1質量%未満の場合、頭髪をセットする効果が充分に得られない傾向がある。一方、合成樹脂の含有量が10質量%を超える場合、ステム孔76や噴射孔43aなどの噴射通路に残留した原液5が乾燥して強固な被膜を形成し、噴射通路を強固に閉塞して除去しにくくなる傾向がある。
【0074】
水溶性高分子は、たとえば原液5の粘度を高くしてジェル状にする増粘剤として用いられる。水溶性高分子は、水、エタノール、エタノール水溶液などに溶解して用いられる。水溶性高分子としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース系高分子、カラギーナン、キサンタンガム、アラビアゴム、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガム、ローカストビーンガムなどのガム質、ゼラチン、デキストラン、デキストリン、ペクチン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、変性ポテトスターチなどのデンプン類、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマーなどがあげられる。
【0075】
水溶性高分子の含有量は、原液中0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、水溶性高分子の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。水溶性高分子の含有量が0.01質量%未満の場合、原液5の粘度を高くする効果が充分に得られない傾向がある。一方、水溶性高分子の含有量が5質量%を超える場合、粘度が高くなりすぎ噴射通路から排出しにくくなる傾向がある。
【0076】
パウダーは、制汗効果、収斂効果、日焼け止め効果等を付与するためや、使用感を向上させるための補助剤等として用いられる。パウダーは、エタノール、エタノール水溶液などに分散して用いられる。パウダーとしては、クロルヒドロキシアルミニウムなどの制汗剤、酸化チタン、酸化亜鉛などの紫外線散乱剤、ゼオライトなどの発熱剤、細孔内にジエチルトルアミドやメントールなどの有効成分を担持した多孔性シリカ、シクロペンタシロキサン・ジメチコンクロスポリマーや(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーなどのシリコーンパウダー、ポリアミド、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルなどの樹脂パウダー、タルク、シリカなどが例示される。
【0077】
パウダーの含有量は、原液中0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、パウダーの含有量は、原液中20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。パウダーの含有量が0.1質量%未満の場合、パウダーを配合することにより期待される所望の効果が充分に得られない傾向がある。一方、パウダーの含有量が20質量%を超える場合、ステム孔76や噴射孔43aなどの噴射通路を閉塞するパウダー量が多くなり、固まりやすく、除去しにくくなる傾向がある。
【0078】
原液5は、上記閉塞性成分に加え、他の有効成分を含んでもよい。他の有効成分としては、塩化カルプロニウムやトウガラシチンキなどの血行促進剤、酢酸トコフェロールやパンテノールなどのビタミン類、サリチル酸やレゾルシンなどの角質溶解剤、センブリ抽出液やローズマリー抽出液などの各種抽出物、ミントやメントールなどの清涼剤、塩化セチルピリジニウムやイソプロピルメチルフェノールなどの殺菌消毒剤、グリチルリチン酸ジカリウムやトラネキサム酸などの抗炎症剤、キシリトールなどの甘味料、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ヒアルロン酸などの保湿剤、香料、ポリソルベート、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの界面活性剤、クエン酸や乳酸などのpH調整剤、エデト酸二ナトリウムなどのキレート剤、パラベンやフェノキシエタノールなどの防腐剤、各種オイル成分などが例示される。
【0079】
圧縮ガスは、容器本体2の気相部分に所定の圧力に圧縮された状態で主に存在し、原液5を加圧する。圧縮ガスとしては、窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素、圧縮空気等が例示される。
【0080】
圧縮ガスが充填された後の容器本体2の内圧(平衡圧力(25℃でのゲージ圧))は、0.2MPa以上であることが好ましく、0.3MPa以上であることがより好ましい。また、容器本体2の内圧は、1.0MPa以下であることが好ましく、0.8MPa以下であることがより好ましい。容器本体2の内圧が0.2MPa未満である場合、後述するエアゾール噴射を行う第1の操作状態において原液5が少なくなったときに圧力が低下して低くなりすぎ、噴射状態が悪くなりやすい。一方、容器本体の内圧が1.0MPaを超える場合、エアゾール噴射を行う第1の操作状態において原液5の噴射が強くなり過ぎる傾向がある。
【0081】
原液5は、閉塞性成分、用途や目的などに応じて選択された他の有効成分および添加剤を溶媒に添加して溶解または乳化させることにより調製することができる。
【0082】
原液5および圧縮ガスを充填する方法は、特に限定されず、容器本体2内に原液5を充填し、容器本体2の開口上端とフランジ部61aの下面に設けられるガスケット64との間に隙間を確保するようにバルブ機構3を保持し、隙間から圧縮ガスを充填し、ネジキャップ62を取り付けて密封し、噴射部材4を取り付ける方法が例示される。
【0083】
<バルブ機構3の変位の一例>
次に、上記構成の噴射製品1を用いて原液5を噴射する場合におけるバルブ機構3の変位が、
図1〜
図3に加えて
図4〜
図6を参照して説明される。
図4は、切替部材9の動作を説明するための斜視図である。
図5は、バルブ機構3がエアゾール噴射を行う第1の操作状態に変位している噴射製品1の模式的な断面図である。
図6は、噴射通路の閉塞物を除去する第2の操作状態に変位している噴射製品1の模式的な断面図である。
【0084】
(非噴射状態)
まず、原液を噴射しない非噴射状態(噴射前の状態)では、
図2および
図3に示されるように、切替部材9は、当接部92が本体部42cに嵌め込まれている。また、切替部材9は、係止突起95が噴射ノズル41の下面41cと当接するように適宜回動されている。この状態では、噴射ノズル41は、下方向に移動することができない。その結果、バルブ機構3は、バネ部材73により内部ステム74、外部ステム75およびピストン部材72が上方へ付勢された状態で維持される。この場合、ステム孔76および空気導入孔61eは共に閉止されている。そのため、原液5は噴射されない。また、噴射ノズル41は、下方向に移動することができないため、原液は、誤って噴射されることがない。
【0085】
(エアゾール噴射を行う第1の操作状態)
一方、
図4に示されるように、切替部材9の係止突起95が係止溝41bと対応する位置まで回動されると、バルブ機構3は、非噴射状態からエアゾール噴射を行う第1の操作状態に容易に変位することができる。具体的には、
図4に示されるように、係止突起95が係止溝41bと対応する位置まで回動されると、使用者はトリガー部42iを操作することができる。これにより噴射ノズル41が下方向に可能な範囲で押し下げられると、係止突起は、係止溝に係止される。その結果、内部ステム74と外部ステム75とは、一体となって下方へ摺動する。内部ステム74と外部ステム75とは、係止溝41bの深さ分(係止突起95の高さ分)だけ下降する。上記のとおり、係止溝41bの深さは、当接溝74hの底からステム孔76までの距離よりもわずかに長い。そのため、
図5に示されるように、この変位により、ステム孔76は、下部内側摺動部77bの外周壁による閉止から開放される。一方、ピストン部材72はほとんど移動せず、空気導入孔61eは閉じられたままである。ステム孔76が開放されると、容器本体2内と外部とが連通される。このとき、容器本体2内は圧縮ガスにより加圧されているため、噴射通路内で圧力差が生じ、圧縮ガスにより加圧されている原液5がボール65bを上方向に持ち上げて、第1空間S1に供給される。さらに、この原液5は、ステム孔76を介して外部通路に供給され、噴射孔43a(
図1参照)より噴射される。このように、第1の操作状態では、原液5は、圧縮ガスによる加圧力により連続的に噴射される(エアゾール噴射)。
【0086】
ところで、エアゾール噴射では、圧縮ガスによる加圧力で原液5を噴射するため、使用を続けることにより原液5が減少し、容器本体2の気相部分の容積が増える。この場合、圧縮ガスによる加圧力が低下することとなる。圧縮ガスによる加圧力が低下すると、原液5は、充分な噴射圧で噴射されにくくなる。一方、ステム孔や噴射孔43aには噴射後に原液5が残留しやすく、時間の経過とともに、原液5に含まれる閉塞性成分が乾燥してステム孔76や噴射孔43aを閉塞等しやすい。このような問題は、閉塞性成分が被膜を形成する合成樹脂等である場合に特に顕著である。圧縮ガスによる加圧力が低下した状況では、エアゾール噴射のままでは、このような閉塞性成分による閉塞等を取り除くことができず、噴射製品1が使用不能となる場合がある。そこで、本実施形態の噴射製品1は、バルブ機構3を第1の操作状態から第2の操作状態に変位させて操作することにより、原液をエアゾール噴射よりも高い圧力に加圧して噴射通路に供給し、噴射通路を閉塞している閉塞性成分を溶解・粉砕して取り除くことを特徴とする。
【0087】
(閉塞物の除去操作を行う第2の操作状態)
切替部材9(
図3、4参照)が取り外されると、バルブ機構3は、第1の操作状態から第2の操作状態に容易に変位することができる。具体的には、
図6に示されるように、切替部材9が取り外されると、使用者はトリガー部42i(
図1参照)をさらに操作することができ、噴射ノズル41は、第1の操作状態(
図5参照)からさらに下方向に可能な範囲で押し下げられる。この際、内部ステム74と外部ステム75とは、スカート部75bの下端が連結環79に当接するまで一体となって下方へ摺動し、その後、内部ステム74、外部ステム75およびピストン部材72が一体となってさらに下方へ摺動する。この変位により、空気導入孔61eが外側摺動部78の外周壁による閉止から開放される。また、この変位により、第1空間S1の容積は減少する。この際、ボール65bは、第1空間S1の容積の減少による下方向への付勢によって凹部65a内に沈み、液相連通孔61dを閉止する。その結果、第1空間S1に貯留される原液(図示せず)は、所定の適切な圧力(エアゾール噴射よりも高い圧力)に加圧される。加圧された原液は、ステム孔76を介して外部通路に供給され、ステム孔や噴射孔43aなどの外部通路の閉塞物を除去し、詰まりを解消することができる。このように、第2の操作状態では、原液は、圧縮ガスの加圧力に依らず、ピストン部材72により第1の操作状態よりも高い圧力に原液を加圧して外部通路に供給することができ、安定した除去効果が得られる。
【0088】
その後、使用者によるトリガー部42iの操作が止められると、復帰動作および第1空間S1への原液の取り込み動作が開始される。すなわち、バネ部材73の付勢力により、内部ステム74および外部ステム75は、一体となって上方へ押し上げられ、ステム孔76が下部内側摺動部77bの内周壁により再び閉止される。また、空気導入孔61eは、外側摺動部78の外周壁により再び閉止される。なお、内部ステム74、ピストン部材72および外部ステム75の上方への摺動は、上部外側摺動部78aの上端が押さえ部材81の下端と当接することにより制止される。
【0089】
このように、バネ部材73により、内部ステム74、外部ステム75およびピストン部材72が一体となって押し上げられる際、ステム孔76は閉止されている。そのため、ボール65bも上方へ移動し、液相連通孔61dと第1空間S1とを連通箇所を開放し、第1空間S1には、容器本体2から新たに一定量の原液5が取り込まれる。
【0090】
なお、閉塞性成分がステム孔76や噴射孔43aなどの噴射通路を強固に閉塞している場合、1回のポンプ操作では、充分に閉塞等が開放されない場合がある。この場合、使用者は、繰り返しポンプ操作を行い、詰まりを除去することができる。また、本実施形態の噴射製品1は、ポンプ操作により閉塞性成分が除去された後は、切替部材9を取り付けることで再びエアゾール噴射を行うことができる。
【0091】
ここで、ポンプ操作後の上記復帰動作において、バネ部材73により内部ステム74、ピストン部材72および外部ステム75が一体となって押し上げられる際に、第1空間S1に一定量の原液が取り込まれると、容器本体2内の気相部分の容積が増え、容器本体2の内圧が低下する。容器本体2の内圧が高い状態(たとえば噴射製品1の保管時や使用初期など)では、閉止圧(面接触圧+容器本体の内圧)は充分に大きく、内圧の低下量以上となり、シール材82は、閉状態が維持される。この場合、容器本体2内には外部から空気は導入されない。しかしながら、圧縮ガスにより原液は加圧されるため、第1空間S1には、原液が取り込まれる。一方、使用により容器本体2の内圧が低下すると、シール材82の閉止圧も低下する。そして、原液が第1空間S1に取り込まれる際の内圧の低下量が、低下した閉止圧を上回る場合、シール材82と外部ステム75の外周壁との面接触が解除され、外部からの空気が容器本体2内に導入される。その後、バネ部材73により外部ステム75がさらに上方に付勢されることにより、上部外側摺動部78aによって空気導入孔61eが閉止され、容器本体2内に導入された空気により、容器本体2の内圧は高められる。このような容器本体2の内圧の上昇に伴い、シール材82による閉止圧も増加する。その結果、シール材82は、外部ステム75の外周壁と再び面接触し、外部と第2空間S2とを遮断する。以上の動作を経て、本実施形態の噴射製品1は、容器本体2内に外部から空気が適宜導入され得る。
【0092】
以上、本実施形態の噴射製品1は、エアゾール噴射を行うための第1の操作状態と、閉塞物の除去操作を行う第2の操作状態に変位するバルブ機構3を備える。そのため、噴射製品1は、たとえばエアゾール噴射を行うことにより閉塞性成分がステム孔や噴射孔43aなどで閉塞等した場合であっても、ポンプ操作に切り替えることにより原液をエアゾール噴射よりも高い圧力に加圧して噴射通路に供給し、閉塞物を除去することができる。そのため、噴射製品1は、火気への安全性の低い原料をあえて使用しなくても、このようなポンプ操作を行うことにより、ステム孔や噴射孔43aにおける閉塞性成分の閉塞等を解消でき、詰まりを除去することができる。
【0093】
(第2の実施形態)
本発明の一実施形態の噴射製品が、図面を参照して説明される。
図7は、本実施形態の噴射製品1aの模式的な断面図である。
図7に示される噴射製品1aは、ハウジング本体66の形状が異なる以外は、第1の実施形態において上記した噴射製品1(
図1参照)と同様の構成である。そのため、重複する構成については同一の参照符号を付して説明を適宜省略する。
【0094】
図7に示されるように、ハウジング本体66は、バネ部材73の下端が取り付けられた位置よりもさらに径方向の外側に、環状の溝(環状溝66a)が形成されている。環状溝66aには、コイルバネ66bが落とし込まれている。コイルバネ66bは、たとえば噴射製品1aを上下方向等に適宜振とうすることにより、環状溝66aから容易に出没される。
【0095】
本実施形態の噴射製品1aは、原液5に含まれる閉塞性成分が、ケーキングを起こしやすいパウダー等である場合に特に好適に使用される。すなわち、パウダー5aを分散した原液5の場合、使用後に静置するとパウダー5aは自重により沈降し、ハウジング本体66内においてケーキングすることがある。第1の実施形態において上記した噴射製品1(
図1参照)の場合、このようなパウダー5aは、凹部65内のボール65bの上に集合するように沈降してケーキングしやすい。そして、第1空間S1内は原液5による液密状態であるため、上下逆さまに振とうしてもパウダー5aは再分散されにくい。その結果、ケーキングしたパウダー5aは、微細化されずに大きな塊の状態で噴射される場合があり、ステム孔76や噴射孔43aを閉塞しやすい。
【0096】
しかしながら、本実施形態では、第1空間S1に取り込まれたパウダー5aのうち少なくとも一部が環状溝66aに沈降する。環状溝66aに沈降したパウダー5aは、コイルバネ66bを環状溝66aから出没させることにより攪拌され、容易に再分散される。また、コイルバネ66bの撹拌効果により液流が発生し、凹部65内に沈降しているパウダーも分散させることができる。その結果、本実施形態の噴射製品1aは、原液5がパウダー5aを含んでいる場合であっても、パウダーが分散した状態で噴射することができる。なお、エアゾール噴射時に噴射通路でパウダーによる閉塞等が生じても、ポンプ操作に切り替えて原液5をエアゾール噴射よりも高い圧力に加圧して噴射通路に供給することにより、強い液流によりパウダーを除去することができる。
【0097】
コイルバネ66bの高さは容器を振った際に上下動できる大きさであれば特に限定されない。コイルバネ66bの高さは、たとえば環状溝66aの深さと同程度であってもよく、環状溝66aの深さよりも大きくてもよい。また、コイルバネ66bに代えて、環状溝66aから出没し得る他の部材が採用されてもよい。このような他の部材としては、たとえば、円筒状のリング状部材が例示される。
【0098】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明したが、本発明の噴射製品は、たとえば次のような変形実施形態を採用することができる。
【0099】
(1)上記実施形態では、切替部材を備える噴射製品について例示した。本発明は、これに代えて、切替部材を備えない噴射製品であってもよい。すなわち、バルブ機構を、非噴射状態からエアゾール噴射を行う第1の操作状態に切り替える操作および、第1の操作状態からポンプ操作を行う第2の操作状態に切り替える操作は、いずれも噴射部材(噴射ノズル)に接続されたステムの摺動距離を調整することにより行われる。そのため、使用者は、トリガー部を適宜操作することにより、噴射ノズルの移動距離およびステムの摺動距離を調整して、バルブ機構を変位させてもよい。このような変形実施形態によれば、切替部材が不要となり、部品点数が減少するため好ましい。
【0100】
(2)上記実施形態では、当接部の上面に形成された係止突起が、噴射ノズルの下面に形成された係止溝に係合される場合について例示した。本発明は、これに代えて、当接部の上面に係止溝が形成され、噴射ノズルの一端の下面に係止突起が形成されてもよい。また、上記実施形態では、切替部材を回動させることにより、係止突起を係止溝に対応する位置に配置する場合と、係止溝を係止溝に対応しない位置に配置する場合とに切り替えることにより、噴射ノズルが下方向に移動し得る距離を調整する場合について例示した。本発明は、これに代えて、係止突起と係止溝との組み合わせ以外の、噴射ノズルの移動距離を調整することのできる他の構造を採用してもよい。このような構造としては、たとえば、当接部の側周面に斜め方向に延びる突条を形成し、噴射部材の一端に、この突条と相補的な形状を有する溝を形成してもよい。
【0101】
(3)上記実施形態では、ポンプ操作を行う際に、切替部材を噴射部材の本体部から取り外す態様について例示した。本発明は、これに代えて、切替部材の構造を、切替部材を本体部に取り付けたままポンプ操作を行うことのできる構造に適宜変更してもよい。このような構造としては、当接部に高さの異なる2段階の係合突起と、噴射ノズルの一端の下面に、この2段階の係合突起と係合する深さの異なる2段階の係合溝とを形成することが挙げられる。このような係合突起および係合溝の組み合わせによれば、たとえば1段目の係合突起が1段目の溝と対応する位置に配置されるように切替部材を回動させることにより、バルブ機構が非噴射状態から第1の操作状態に変位できるよう噴射ノズルおよびステムの移動距離および摺動距離を調整することができる。さらに、1段目の係合突起が1段目の溝に係合した状態から、さらに切替部材を回動させて、2段目の係合突起が2段目の溝に係合する位置に配置させることにより、バルブ機構が第1の操作状態から第2の操作状態に変位できるよう噴射ノズルおよびステムの移動距離および摺動距離を調整することができる。
【0102】
(4)上記実施形態では、噴射部材の先端ノズルにメカニカルブレークアップ機構を備えたノズルチップが装着された場合について例示した。本発明は、これに代えて、メカニカルブレークアップ機構を備えない汎用の先端ノズルが使用されてもよい。