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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-202926(P2015-202926A)
(43)【公開日】2015年11月16日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20151020BHJP
   B66B 23/00 20060101ALI20151020BHJP
   B66B 25/00 20060101ALI20151020BHJP
【FI】
   B66B31/00 C
   B66B23/00 C
   B66B25/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-82504(P2014-82504)
(22)【出願日】2014年4月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000232944
【氏名又は名称】日立水戸エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高木 雄司
(72)【発明者】
【氏名】宇津宮 博文
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑季
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321AA01
3F321AA04
3F321CD14
3F321DA03
3F321DC03
3F321EA02
3F321EA03
3F321EA04
3F321EB07
3F321EC07
3F321EC08
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、床仕上げのための土木作業が発生せず、乗客コンベアの乗降床の着脱を容易に行うことができると共にポールの固定強度を高めることができ乗客コンベアを提供することにある。
【解決手段】
2つの建屋梁の間に跨って設置され端部に建屋梁に掛けられる受梁が設けられた本枠体1と、本体枠1の内側に配置され無端状に連結されて循環移動する踏段と、本体枠1に設けられ踏段を駆動するスプロケットと、スプロケットを駆動するための動力を発生させる駆動機と、駆動機を制御する電気盤と、本体枠1の外側に配置された人感センサーが設けられたポール8と、受梁1Sの上部を覆う受梁部カバー91とを備えた乗客コンベアにおいて、ポール8は受梁部カバー91を貫通して建屋梁に対して固定される。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの建屋梁の間に跨って設置され端部に前記建屋梁に掛けられる受梁が設けられた本枠体と、前記本体枠の内側に配置され無端状に連結されて循環移動する踏段と、前記本体枠に設けられ前記踏段を駆動するスプロケットと、前記スプロケットを駆動するための動力を発生させる駆動機と、前記駆動機を制御する電気盤と、前記本体枠の外側に配置された人感センサーが設けられたポールと、前記受梁の上部を覆う受梁部カバーとを備えた乗客コンベアにおいて、
前記ポールは前記受梁部カバーを貫通して前記建屋梁に対して固定されたことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記建屋梁に固定され前記受梁と当接する受梁用金具を備え、前記ポールは前記受梁用金具に固定されたことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記ポールは下端に固定部を有し、前記固定部の下側に空間が設けられ、前記受梁がスライドして前記空間に進入可能に構成されたことを特徴とする請求項2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記固定部を固定するベース固定部材と、前記ベース固定部材を前記受梁用金具から高さ方向に距離を隔てて配置する間隔保持板とを備え、前記間隔保持板を前記受梁用金具に固定し、前記ベース固定部材を前記間隔保持板に固定したことを特徴とする請求項3に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記間隔保持板は、前記本体枠の幅方向において前記受梁の端部近傍に位置し、前記受梁との接触によって前記幅方向における前記本体枠のずれを防止することを特徴とする請求項4に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
前記固定部は長孔で形成されたねじ孔と鉛直方向に延びたポール芯部とを有し、前記ベース固定部材に前記固定部をねじ結合し、前記ポールを前記ポール芯部に嵌め合わせて立設したことを特徴とする請求項4又は5に記載の乗客コンベア。
【請求項7】
前記受梁部カバーに前記ポールが貫通する開口部を設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【請求項8】
前記受梁部カバーと前記ポールとの間に、前記2つの建屋梁の間に想定される層間変位に余裕分を加えた大きさの隙間を設けたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【請求項9】
前記受梁と前記間隔保持板との間に、前記2つの建屋梁の間に想定される層間変位に余裕分を加えた大きさの隙間を設けたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【請求項10】
前記受梁部カバーと前記ポールとの隙間を塞ぐために輪状の塞ぎ板を設けるとともに、前記塞ぎ板は前記受梁部カバーの上に前記層間変位に余裕分を加えた大きさのラップ代を設けたことを特徴とする請求項8に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人感センサーなどのポールを備えた乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2006−188314号公報(特許文献1)及び特開2010−116247号公報(特許文献2)がある。特許文献1には、自動運転機能を有する乗客コンベアの制御装置として、乗り場付近に設置されたセンサーにより利用者の有無を検出し、利用者を検出すると乗客コンベアを起動させ、一定時間の運転後、利用者を検出しないと乗客コンベアを停止させ、次の利用者があるまで乗客コンベアを待機させる制御装置が記載されている(段落0003参照)。この乗客コンベアでは、光電センサーや超音波センサーなどを有する利用者検出装置を備え、この利用者検出装置により人体を検出し、利用者の有無を検出する。この利用者検出装置は乗り場及び降り場付近(乗降口付近)にポール状に形成されて設けられている(段落0018及び0019参照)。
【0003】
また、特許文献2には、フレーム内に格納された駆動装置及び制御装置の点検時に開放されるカバープレートを備え、カバープレートの手摺の延長線上に開口部を有し、この開口部の上部に、内部にカメラを配置したポールを着脱可能に立設した乗客コンベアが記載されている(段落0018参照)。この乗客コンベアでは、ポールを立設するために、一端部にポール内に挿入可能な突出部を有し他端部にねじ部を有する上部台座と、上部台座のねじ部と螺合するねじ部を有する下部台座とを有し、上部台座のねじ部をカバープレートの開口部からカバープレートの裏面に固定された下部台座のねじ部に螺合させて、上部台座を下部台座に固定する。そしてポールを上部台座の突出部に被せて両者を固定することにより、ポールがカバープレート上に立設される構造である(段落0021参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-188314号公報
【特許文献2】特開2010-116247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような構造では、通常、乗客コンベアが設置される建屋梁の範囲外の建屋床面にポールが立設される。この場合、建屋床面のコンクリート部にアンカーボルトを打ち込んでベースを固定し、このベースにポールを固定する必要がある。さらに、アンカーボルト及びベースの周りの床面を整える床仕上げを行う必要がある。また、近傍に建屋鋼材がある場合は、建屋鋼材に溶接によってベースを固定する。この場合も、ベース周りの床仕上げを行う必要がある。
【0006】
これらのポール立設構造では、乗客コンベアの設置範囲から離れた位置にポールを設置しているため、乗客コンベアの据付工事の範囲とは別にポールのベース周りをコンクリートで床を仕上げる土木業者の作業が必要となり、工事の打ち合わせや日程などの調整が必要で、コスト低減や日程短縮の隘路となっていた。
【0007】
一方、特許文献2の乗客コンベアでは、ポールが乗客コンベアの設置範囲に立設されるため、建屋床面の床仕上げの工程を無くすことができる。ポールは乗客コンベアの乗降床(カバープレート)に堅固に固定されているが、乗客コンベアの乗降床は機械室内の保守点検の際、取り外しを容易にするために、通常、本体枠上に設けた枠上に置いているだけである。このため、利用客や荷物がポールに接触すると、ポールが長いために、てこの原理で乗客コンベアの乗降床が持ち上がりやすくなる。これに対し乗客コンベアの乗降床を堅固に固定すると、今度は保守点検の際に外しづらくなる課題が発生する。
【0008】
本発明の目的は、床仕上げのための土木作業が発生せず、乗客コンベアの乗降床の着脱を容易に行うことができると共にポールの固定強度を高めることができ乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、2つの建屋梁の間に跨って設置され端部に建屋梁に掛けられる受梁が設けられた本枠体1と、本体枠1の内側に配置され無端状に連結されて循環移動する踏段と、本体枠1に設けられ踏段を駆動するスプロケットと、スプロケットを駆動するための動力を発生させる駆動機と、駆動機を制御する電気盤と、本体枠1の外側に配置された人感センサーが設けられたポール8と、受梁1Sの上部を覆う受梁部カバー91とを備えた乗客コンベアにおいて、ポール8は受梁部カバー91を貫通して建屋梁に対して固定される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の乗客コンベアによれば、床仕上げのための土木作業が発生せず、乗客コンベアの乗降床の着脱を容易に行うことができると共にポールの固定強度を高めることができる。なお、上述した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例によるエスカレーター装置の平面図である。
図2】本発明の一実施例によるエスカレーター装置の側面図である。
図3図1に示したエスカレーター装置の要部であるポールのベース部を示す斜視図である。
図4図1に示したエスカレーター装置におけるポールの取り付け状態を示す図であり、図1のVで示す方向から見た断面図である。
図5】受梁部カバーとポールを上から見た図であり、図1のK部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、本発明の乗客コンベアは、異なる階床間に設置されるエスカレーター(エスカレーター装置)や、水平或いは緩やかな傾斜角度を有して設置される動く歩道を含む。以下の実施例ではエスカレーター装置について説明するが、動く歩道にも同様に適用することができる。
【0013】
図1は、本発明の一実施例によるエスカレーター装置の平面図である。図2は、本発明の一実施例によるエスカレーター装置の側面図である。
【0014】
エスカレーター装置ESは、上階建屋Aと下階建屋Bとに跨って設置され、本体枠1の両端に設けた受梁1U,1Sが建屋梁A1,B1に掛けられて設置されている。建屋梁A1及びB1は受梁1U,1Sを掛け止める受梁用金具10や高さ調整のための調整板21等(図4参照)を配置するため、上階建屋A及び下階建屋Bの床面から窪んだ凹状部として形成されている。
【0015】
本体枠1の内部(内側)には、無端状に連結されて循環移動する踏段2と、本体枠1に設けられ踏段2を駆動するスプロケット31,32と、スプロケット31を駆動するための動力を発生させる駆動機4と、駆動機4を制御する電気盤5とが設けられている。駆動機4と電気盤5とは本体枠1の長手方向端部に設けられた機械室(上部機械室)40に設置され、その上側には乗降床61が設けられている。本体枠1の長手方向において機械室40が設けられた端部とは反対側の端部には下部機械室41が設けられており、下部機械室41の上側にも乗降床62が設けられている。また踏段2の両側に踏段2と同期して同方向に移動する移動手摺7が設けられている。
【0016】
ここで、踏段2の幅方向及び奥行き方向を以下のように定義する。踏段2の幅方向は、踏段2の移動方向に対して垂直、かつ踏段2の踏み面に平行な方向である。踏段2の移動方向に沿い、かつ踏段2の踏み面に平行な方向を奥行き方向と定義する。また、踏段2の幅方向は乗客コンベア(エスカレーター)及び本体枠1の幅方向に一致する。
【0017】
乗降床61は機械室(上部機械室)40の上側を覆い、機械室(上部機械室)40の上側に利用者の歩行面を形成している。乗降床62は下部機械室41の上側を覆い、下部機械室41の上側に利用者の歩行面を形成している。
【0018】
更に本体枠1の枠外(外側)に人感センサーが設けられたポール8(8a、8b、8c、8d)を配置している。受梁1U,1S上には受梁部カバー91,92を設けて、受梁1U,1Sの上側(上部)を受梁部カバー91,92で覆っている。
【0019】
このポール8に設けられた人感センサーにより利用者の有無を検出し、利用者を検出すると乗客コンベアを起動させ、一定時間の運転後、利用者を検出しないと乗客コンベアを停止させ、次の利用者があるまで乗客コンベアを待機させる、いわゆる自動運転機能の制御を行うことができる。この制御は、電気盤5により行われる。
【0020】
また、移動手摺7とポール8との間には、誘導柵SKを設け、脇からの進入を防止して、利用者が進行方向SNを歩行するように誘導している。
【0021】
図3は、ポール8aのベース部の構成を示す斜視図である。なお、ポール8a、8b、8c、8dは建屋に対して同じように固定される。4本のポール8a、8b、8c、8dをまとめてポール8という場合もある。
【0022】
本実施例のエスカレーター装置は、板状に形成した受梁用金具10を有し、この受梁用金具10の長手方向における端部上面には、後述する所定の高さを有するL字状の間隔保持板11が溶接などによって固定されている。
【0023】
受梁用金具10は金属製の板状部材であり、厚さ方向に垂直な平面が長方形である。すなわち、受梁用金具10は長手方向の2辺10a,10bと、長手方向の2辺10a,10bを両端部で接続する、長手方向に垂直な2辺10c,10dとを有する。なお、受梁用金具10の長手方向はエスカレーターの幅方向に平行な方向である。
【0024】
間隔保持板11は受梁用金具10の長手方向両端部にそれぞれ一つずつ設けられる。間隔保持板11は、2辺11a,11bが直角に屈曲して接続されたL字状に形成されている。間隔保持板11は、2辺のうちの一辺11aが受梁用金具10の長手方向の辺10aに沿うように辺10aに近接して配置され、他の一辺11bが受梁用金具10の長手方向に垂直な辺10cに沿うように辺10cに近接して配置される。この場合、間隔保持板11の辺11aは、本体枠1の受梁1U,1Sが掛止される側の辺10bとは反対側の辺10aに沿うように辺10aに近接して配置されている。また、間隔保持板11の辺11aは受梁用金具10の辺10c側から受梁用金具10の長手方向の中央部(辺10d側)に向けて延設されている。
【0025】
図3では図示していないが、受梁用金具10の辺10d側の端部にも間隔保持板11が同様に設けられる。具体的に説明すると、受梁用金具10の辺10d側に設けられる間隔保持板11は、辺10c側に設けられる間隔保持板11と、受梁用金具10の板面(平面)に垂直でかつ受梁用金具10の中心線10clを通る平面に対して面対称に構成される。
【0026】
この間隔保持板11の2辺11a,11bが屈曲するように接続された角部上には、四角形の板状のベース固定部材12が溶接などで固定されて一体化されている。
【0027】
このベース固定部材12は、受梁用金具10の幅方向(受梁用金具10の長手方向に垂直な方向)の一方側に偏寄されており、かつ受梁用金具10の上面とほぼ平行に配置されており、その四隅にはタップ孔13がそれぞれ形成されている。すなわち、ベース固定部材12を受梁用金具10の上面に投影した場合、受梁用金具10の幅方向において、ベース固定部材12の本体枠1側の端部12bは受梁用金具10の板面上にあるように設けられている。これにより、受梁用金具10の上面とベース固定部材12の下面との間に、空間11cが形成される。なお、本体枠1側の端部12bとは反対側の端部12aは受梁用金具10の板面から本体枠1側とは反対側にはみ出すように設けられているが、必ずしもはみ出さなくてもよい。
【0028】
ベース固定部材12に取り付けられることになるポールベース(固定部)14は、ベース固定部材12とほぼ同形状に形成され、中心部に鉛直方向に延びたポール芯部15が立設されている。また四隅にはタップ孔13に対応する位置に取り付け用の長孔16がそれぞれ形成されている。長孔16は、一対のポール8aと8bの位置調整、或いは一対のポール8cと8dの位置調整のために利用される。
【0029】
図4は、上述したポール8のベース部の取り付け状態を示す図であり、図1のVで示す方向から見た断面図である。
【0030】
受梁部カバー91の下部には、本体枠1の受梁1Sが存在している。
【0031】
建屋梁B1には調整板21を介在させて図3に示した受梁用金具10が固定され、その上に受梁1Sが設置されている。すなわち、建屋梁B1上に調整板21を設置し、調整板21の上に受梁用金具10を設置することで、建屋梁B1と受梁用金具10との間に調整板21を介在させている。調整板21は受梁1Sを受ける高さを調整する。
【0032】
また、受梁用金具10には受梁1Sの端部近傍に間隔保持板11の辺11bが設けられているため、この間隔保持板11の辺11bと受梁1Sとの接触によって本体枠1におけるその幅方向のずれが規制されている。このために、本体枠1の幅方向において、間隔保持板11は受梁1Sの両側に設けられている。
【0033】
間隔保持板11は、受梁1S或いは本体枠1に対して、以下のような機能を有する。間隔保持板11の辺11bは、受梁用金具10の幅方向において、受梁用金具10及び建屋梁B1に対する本体枠1の相対変位を可能にすると共に、本体枠1の相対変位を案内する。また、間隔保持板11の辺11bは、本体枠1の幅方向において、受梁用金具10及び建屋梁B1に対する本体枠1の相対変位を規制する。
【0034】
上述した間隔保持板11の高さは、ベース固定部材12が受梁1Sよりも高い位置になるように設定され、凹み部Zが設けられている。凹み部Zは図3の空間11cによって形成される。すなわち、ポールベース(固定部)14の下側に凹み部Z(空間11c)が構成される。この凹み部Zにより、上階建屋Aと下階建屋Bとの間に層間変位が発生した場合に、受梁1Sが凹み部Z(空間11c)にスライドして入り込むようにして、ポール8或いはそのベース部との干渉が起こらないようにしている。このように、間隔保持板11は受梁用金具10とベース固定部材12との間に空間11cを形成することにより受梁1Sが進入可能な凹み部Zを形成する部材である。このために、間隔保持板11はベース固定部材12を受梁用金具10から高さ方向に距離を隔てて配置する。
【0035】
また、上階建屋Aと下階建屋Bの梁間に層間変位が発生した場合を考慮して、受梁1Sと間隔保持板11との間に、想定される層間変位に余裕分を加えた大きさ(層間変位+余裕分)の隙間g1を設けている。
【0036】
本実施例では、間隔保持板11をL字状に形成していることにより、間隔保持板11の辺11bは受梁1Sの案内部として機能し、受梁用金具10の幅方向において受梁用金具10及び建屋梁B1に対する受梁1Sの相対変位を可能にしている。一方、間隔保持板11の辺11aは受梁用金具10の長手方向において受梁1Sと設置範囲が重複している。このため、受梁1Sが受梁用金具10の幅方向にスライドすると、辺11aは受梁1Sと干渉することになる。隙間g1は辺11aと受梁1Sとの干渉を防ぐ。上述したように、受梁用金具10はその面上で受梁1Sがスライド可能なように設けられる。
【0037】
ベース固定部材12には、ボルト23によってポールベース14が固定されている。これらの固定は、図3に示したポールベース14に形成した長孔16などを利用して調整しながら行うことができる。ベース固定部材12に固定されたポールベース14のポール芯部15にポール8aが嵌め合わされて、ポール8aが立設される。ポールベース14とポール8aとは一体化された構造であってもよい。
【0038】
こうして、受梁設置範囲B1Lにポール8aが立設される。本実施例では、ポール8aはポールベース14及びベース固定部材12を介して受梁用金具10に固定され、最終的に建屋梁B1に固定される。その他のポール8b、8c、8dも同様に固定する。ポール8は、その対向部に従来と同様に人感センサーを配置し、乗客の乗り込み側には案内用に表示などを行ってもよい。
【0039】
受梁設置範囲B1L内にポール8のベース部を固定しているため、従来のような建屋の床面コンクリートにアンカーボルトを打ち込んだり、床仕上げをする作業を省略することができる。
【0040】
また、本実施例では、空間11cによって形成される凹み部Zを設けたことにより、受梁用金具10の幅方向に沿う方向において、建屋梁B1の受梁設置範囲B1Lを小さくすることができる。すなわち、ポール8の下端の固定部(ベース部)であるポールベース14を受梁用金具10(建屋梁B1)へ投影した範囲と受梁1Sのスライド範囲とが重複するように構成することで、ポールベース14を設置するための専用面積を無くする、或いは小さくすることができる。また、受梁用金具10の長手方向においても、建屋梁B1の寸法を小さくすることができる。
【0041】
さらに、受梁用金具10の幅方向において、ベース固定部材12及びポールベース14を受梁用金具10の辺10aから突出するように設けたことにより、受梁用金具10の幅寸法を大きくすることなく、ポール8と本体枠1との間隔を広げることができる。ポール8に人感センサーを設けてエスカレーターの自動運転を行う場合は、ポール8と本体枠1との間隔を大きくしたい場合がある。このような場合に、本実施例は有効である。
【0042】
図5は、受梁部カバー91とポール8aを上から見た図1のK部の拡大図である。
【0043】
ポール8aは受梁部カバー91を貫通して建屋梁B1に固定された受梁用金具10に固定される。このため、受梁部カバー91には、ポール8aが貫通する切り欠き状の開口部91aを設ける。これにより、ポール8aは開口部91aの内側に配置される。
【0044】
上階建屋Aと下階建屋Bの梁間に層間変位が発生した場合を考慮して、開口部91aの縁とポール8aの外周面との間に、想定される層間変位に余裕分を加えた大きさ(層間変位+余裕分)の隙間g2を設けている。動く歩道を含む乗客コンベアでは、2つの建屋梁間に発生する層間変位を考慮する。
【0045】
また、受梁部カバー91とポール8aとの隙間91aを塞ぐために、ポール8aの外周に鍔部を形成するように輪状に形成された塞ぎ板18を設ける。塞ぎ板18は受梁部カバー91の上に、想定される層間変位に余裕分を加えた大きさ(層間変位+余裕分)のラップ代R1を設けている。
【0046】
以上の説明では、建屋梁B1側について説明したが、建屋梁A1側も同様に構成することができる。ただし、建屋梁A1側では、受梁1Uは受梁用金具10或いは建屋梁A1に対して固定するようにしてもよい。
【0047】
また、上記の例では、ポール8を建屋梁側に固定する構造を述べたが、エスカレーター装置ESの本体枠1の受梁にポール8を取り付ける構造にしてもよい。この場合、層間変位が発生した場合を考慮して、ポール8と建屋床面との間に、想定される層間変位に余裕分を加えた大きさ(層間変位+余裕分)の隙間を設けるとよい。更にこの隙間を塞ぐ塞ぎ板を設け、前記塞ぎ板は建屋床面の上に想定される層間変位に余裕分を加えた大きさ(層間変位+余裕分)のラップ代を有するとよい。
【0048】
以上説明したように、ポール8を建屋梁の受梁設置範囲B1Lに固定したことにより、前述の課題を解決することが出来る。
【0049】
また、本実施例のエスカレーターによれば、ポール8をエスカレーター装置ES側へ寄せて配置することができる。
【0050】
尚、本発明は、上述した実施例に限定するものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、各部材の形状や、ポール芯部15の構造など種々の変形が可能であり、また必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定するものではない。
【符号の説明】
【0051】
1…本体枠、1U、1S…受梁、A1,B1…建屋梁、2…踏段、31,32…スプロケット、4…駆動機、40,41…機械室、5…電気盤、61,62…乗降床、7…移動手摺、8(8a、8b、8c、8d)…ポール、91,92…受梁部カバー,91a…開口部,10…受梁用金具,11…間隔保持板、12…ベース固定部材、13…タップ穴、14…ポールベース(固定部)、15…ポール芯部、16…長孔、18…塞ぎ板。
図1
図2
図3
図4
図5