特開2015-203622(P2015-203622A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジャストの特許一覧

特開2015-203622携帯型極間式磁粉探傷器およびその操作方法
<>
  • 特開2015203622-携帯型極間式磁粉探傷器およびその操作方法 図000005
  • 特開2015203622-携帯型極間式磁粉探傷器およびその操作方法 図000006
  • 特開2015203622-携帯型極間式磁粉探傷器およびその操作方法 図000007
  • 特開2015203622-携帯型極間式磁粉探傷器およびその操作方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-203622(P2015-203622A)
(43)【公開日】2015年11月16日
(54)【発明の名称】携帯型極間式磁粉探傷器およびその操作方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/84 20060101AFI20151020BHJP
【FI】
   G01N27/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-82948(P2014-82948)
(22)【出願日】2014年4月14日
(71)【出願人】
【識別番号】394026714
【氏名又は名称】株式会社ジャスト
(74)【代理人】
【識別番号】100080045
【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 健二
(72)【発明者】
【氏名】近藤 浩
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA11
2G053AB22
2G053BA03
2G053BA13
2G053BA25
2G053DB28
2G053DC03
2G053DC11
2G053DC19
(57)【要約】
【課題】被検査物としての締付ボルト8を補助ヨーク6と継鉄棒7との間に配置するといった簡単な操作で、迅速に締付ボルト8の疲労割れを判定することができる携帯型極間式磁粉探傷器およびその操作方法を提供する。
【解決手段】携帯型極間式磁粉探傷器1では、締付ボルト8を補助ヨーク6と継鉄棒7との間に挟持する。スイッチSwを投入して、摺動式電源変圧器5により第1磁極部2、補助ヨーク6、締付ボルト8、継鉄棒7および第2磁極部4にわたる磁気回路Mを形成する。これにより、蛍光磁粉を締付ボルト8の外表面に吸着集合させ、紫外線照射のバックライト10で照らす。極微細な疲労割れ検査では、20〜40Vの印加電圧が適正であり、摺動式電源変圧器5の操作により、ねじ部全体に疑似模様が生じる電圧よりも少し低い電圧を設定すればよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の距離だけ離間して配置された第1磁極部と第2磁極部とを有する磁性基板と、
前記第1磁極部と前記第2磁極部との間に電圧を印加する摺動式電源変圧器と、
前記第1磁極部に設けられた補助ヨークと、
前記第2磁極部に設けられ、前記補助ヨークに対して接離方向に摺動調整可能に取り付けられた継鉄棒とを備え、
蛍光磁粉液を散布した締付ボルトの磁粉探傷時に、前記締付ボルトを前記補助ヨークと前記継鉄棒との間に挟持し、
前記摺動式電源変圧器により前記第1磁極部、前記補助ヨーク、前記締付ボルト、前記継鉄棒および前記第2磁極部にわたる磁気回路を形成し、蛍光磁粉を前記締付ボルトの外表面に吸着集合させることを特徴とする携帯型極間式磁粉探傷器。
【請求項2】
一定の距離だけ離間して配置された第1磁極部と第2磁極部とを有する磁性基板と、
前記第1磁極部と前記第2磁極部との間に電圧を印加する摺動式電源変圧器と、
前記第1磁極部に設けられた補助ヨークと、
前記第2磁極部に設けられ、前記補助ヨークに対して接離方向に摺動調整可能に取り付けられた継鉄棒とを備え、
所定の検査液で調整された蛍光磁粉液を前記締付ボルトに散布する散布工程と、
前記蛍光磁粉液が散布された前記締付ボルトを前記補助ヨークと前記継鉄棒との間に挟持する挟持工程と、
スイッチの投入により、前記摺動式電源変圧器に通電し、前記第1磁極部、前記補助ヨーク、前記締付ボルト、前記継鉄棒および前記第2磁極部にわたる磁気回路を形成し、蛍光磁粉を前記締付ボルトの外表面に吸着集合させる吸着集合工程と、
紫外線照射のバックライトで照らす照明工程とを具備する携帯型極間式磁粉探傷器の操作方法。
【請求項3】
一定の距離だけ離間して配置された第1磁極部と第2磁極部とを有する磁性基板と、
前記第1磁極部と前記第2磁極部との間に電圧を印加する摺動式電源変圧器と、
前記第1磁極部に設けられ、開口部が内外に貫通する支持穴部を有する支持部と、
前記支持穴部に回転可能に支持されて小型モータにより駆動されるように設けられた第1挟持部と、
前記第2磁極部に設けられ、前記第1挟持部に対して接離方向に摺動調整可能に取り付けられた第2挟持部と、
前記第2挟持部に前記支持穴部に対応するように形成された横穴部に配された圧縮スプリングと、
前記横穴部の開口端で前記圧縮スプリングにより外方へ付勢されるように取り付けられた摺動盤とを備え、
蛍光磁粉液を散布した締付ボルトの磁粉探傷時に、頭部を前記第1挟持部に当接させ、螺子部の末端を前記摺動盤に当接させるようにして前記締付ボルトを前記第1挟持部と前記第2挟持部との間で挟持し、
前記摺動式電源変圧器の摺動操作により、前記締付ボルトを前記第1挟持部を介して軸周りに回転させながら、前記摺動式電源変圧器により前記第1磁極部、前記締付ボルトおよび前記第2磁極部にわたる磁気回路を形成し、蛍光磁粉を前記締付ボルトの外表面に吸着集合させながら、前記小型モータに通電し、前記締付ボルトを前記第1挟持部を介して軸周りに回転させることを特徴とする携帯型極間式磁粉探傷器。
【請求項4】
前記摺動式電源変圧器は、前記小型モータの高速回転、準高速回転、中速回転および低速回転に対応する高圧レンジ、準高圧レンジ、中圧レンジおよび低圧レンジの4レンジを有し、それぞれ大まかな疲労割れ、中程度の疲労割れ、微細な疲労割れおよび極微細な疲労割れの各検出に対応させたことを特徴とする請求項3に記載の携帯型極間式磁粉探傷器。
【請求項5】
前記摺動式電源変圧器は、前記小型モータの高速回転、準高速回転、中速回転および低速回転に対応する高圧レンジ、準高圧レンジ、中圧レンジおよび低圧レンジの4レンジを有し、それぞれ大まかな疲労割れ、中程度の疲労割れ、微細な疲労割れおよび極微細な疲労割れの各検出に対応し、前記極微細な疲労割れの検出に必要な前記低圧レンジに、20V−40Vの電圧範囲を含むことを特徴とする請求項3に記載の携帯型極間式磁粉探傷器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁極間に電圧を印加し、磁気力により蛍光磁粉を締付ボルトの外表面に吸着集合させて疲労割れを検出する携帯型極間式磁粉探傷器およびその操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁粉探傷法は非破壊検査法の一種であり、磁性体から成る被検査物(角ビレットや丸ビレットを含む)の表面あるいは表面下の比較的浅い部分にピンホールなどの微細な欠陥部が存在する場合、被検査物に電流または磁束を流して磁化することにより、欠陥部に磁束の偏流が生じ、空中への漏洩が起こる現象を利用したものである(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0003】
一般的に、締付ボルトの疲労割れを検出するために行う磁粉探傷試験は、コイル法と残留法を組み合わせて用いられる。疲労割れは、ボルト頭部首下の段付部、若しくはねじの谷部に発生する疑似模様を極力抑え、谷部または段付部に発生した疲労割れだけに磁粉を吸着させて検出する。この検出方法は、高価な定置式の磁化装置が必要であり、この検査態勢を備えている施設は少ない。
【0004】
過去にも、保守検査において、超音波探傷で割れが検出されたボルトの磁粉探傷を極間式探傷器で行ったが、容易には割れが検出できなかった。磁化が強すぎて全てのねじ谷部に磁粉が吸着され、疲労割れを明確に判別することができなかった。通電しながら磁粉を適用してそのまま水と界面活性剤を混入させたバケツの中に浸漬してゆっくりボルトを揺すって、健全部に吸着した磁粉を落としながら観察して初めて疲労割れが判別できる状態であった。
【0005】
また、自動車工場のクレーン走行ガーダの取付ボルトのサンプリング調査で、磁粉探傷を行った際、図4(a)、(b)、(c)に示すように、締付ボルト50に生じたノッチPが鋭くて発生した指示模様が疲労割れか否かを判別し難いこともあり、被検査物を切断した断面を観察することで割れのないことを確認した事例もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−215724号公報
【特許文献2】特開平8−94582号公報
【特許文献3】実公昭63−177745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1−3のいずれも構造が複雑で高価で持ち運びに不便であるため、簡易な構成で、持ち運びが便利な携帯型極間式磁粉探傷器およびその操作方法の登場が望まれていた。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、コイル法に必要な高価な定置式磁化装置を必要とせず、反磁界を生ぜず、しかも、簡単な操作で迅速に被検査物の疲労割れを判定することができる携帯型極間式磁粉探傷器およびその操作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(請求項1について)
磁性基板は、一定の距離だけ離間して配置された第1磁極部と第2磁極部とを有する。摺動式電源変圧器は、第1磁極部と第2磁極部との間に電圧を印加する。補助ヨークは、第1磁極部に設けられ、継鉄棒は第2磁極部に設けられ、補助ヨークに対して接離方向に摺動調整可能に取り付けられている。
蛍光磁粉液を散布した締付ボルトの磁粉探傷時に、締付ボルトを補助ヨークと継鉄棒との間に挟持する。摺動式電源変圧器により第1磁極部、補助ヨーク、締付ボルト、継鉄棒および第2磁極部にわたる磁気回路を形成し、蛍光磁粉を締付ボルトの外表面に吸着集合させる。
【0010】
請求項1では、被検査物としての締付ボルトを補助ヨークと継鉄棒との間に配置するといった簡単な操作で、迅速に被検査物の疲労割れを判定することができる。しかも、コイル法に必要な高価な定置式磁化装置を必要とせず、反磁界を生じない。
SCM435(M20)の極微細な疲労割れ検査では、20〜40Vの印加電圧が適正であり、磁気的に硬い材料でも適用余裕があり、材質が不明でも、適正な印加電圧については、摺動式電源変圧器の操作により、ねじ部全体に疑似模様が生じる電圧よりも少し低い電圧を設定すればよい。
【0011】
適正な印加電圧を設定することにより、被検査物の疲労割れだけに磁粉を吸着集合させて欠陥指示模様を形成し、他の部分では疑似模様の発生を抑え、締付ボルトの難易度の高い磁粉探傷試験を簡単かつ確実に行うことができる。
【0012】
(請求項2について)
磁性基板は、一定の距離だけ離間して配置された第1磁極部と第2磁極部とを有する。摺動式電源変圧器は、第1磁極部と第2磁極部との間に電圧を印加する。補助ヨークは、第1磁極部に設けられ、継鉄棒は第2磁極部に設けられ、補助ヨークに対して接離方向に摺動調整可能に取り付けられている。
散布工程では、所定の検査液で調整された蛍光磁粉液を締付ボルトに散布する。散布工程に引き続く挟持工程では、蛍光磁粉液が散布された締付ボルトを補助ヨークと継鉄棒との間に挟持する。吸着集合工程では、スイッチの投入により、摺動式電源変圧器に通電し、第1磁極部、補助ヨーク、締付ボルト、継鉄棒および第2磁極部にわたる磁気回路を形成し、蛍光磁粉を締付ボルトの外表面に吸着集合させる。照明工程では、紫外線照射のバックライトで照らす。
【0013】
請求項2における携帯型極間式磁粉探傷器の操作方法は、散布工程、挟持工程、吸着集合工程および照明工程から成る。この操作方法では、被検査物の疲労割れだけに磁粉を吸着集合させて欠陥指示模様を形成し、他の部分では疑似模様の発生を抑え、締付ボルトの難易度の高い磁粉探傷試験を簡単かつ確実に行うことができる。
【0014】
(請求項3について)
磁性基板は、一定の距離だけ離間して配置された第1磁極部と第2磁極部とを有する。摺動式電源変圧器は、第1磁極部と第2磁極部との間に電圧を印加する。支持部は、第1磁極部に設けられ、開口部が内外に貫通する支持穴部を有する。第1挟持部は、支持穴部内に回転可能に支持されて小型モータにより駆動されるように設けられている。第2挟持部は、第2磁極部に設けられ、第1挟持部に対して接離方向に摺動調整可能に取り付けられている。圧縮スプリングは、第2挟持部に支持穴部に対応するように形成された横穴部に配されている。摺動盤は、横穴部の開口端で圧縮スプリングにより外方へ付勢されている。
【0015】
蛍光磁粉液を散布した締付ボルトの磁粉探傷時に、頭部を第1挟持部に当接させ、螺子部の末端を摺動盤に当接させるようにして締付ボルトを第1挟持部と第2挟持部との間で挟持する。摺動式電源変圧器の摺動操作により、締付ボルトを第1挟持部を介して軸周りに回転させながら、摺動式電源変圧器により第1磁極部、締付ボルトおよび第2磁極部にわたる磁気回路を形成する。これにより、蛍光磁粉を締付ボルトの外表面に吸着集合させながら、小型モータに通電し、締付ボルトを第1挟持部を介して軸周りに回転させる。
【0016】
請求項3では、被検査物としての締付ボルトを第1挟持部と第2挟持部との間に配置するといった簡単な操作で、迅速に被検査物の疲労割れを判定することができる。しかも、小型モータにより締付ボルトが回転するので、締付ボルトの外表面に余分に吸着集合した磁粉を遠心力により振り落とし、疲労割れの正確な判別に貢献することができる。
【0017】
(請求項4について)
摺動式電源変圧器は、小型モータの高速回転、準高速回転、中速回転および低速回転に対応する高圧レンジ、準高圧レンジ、中圧レンジおよび低圧レンジの4レンジを有する。4レンジの高圧、準高圧、中圧および低圧は、それぞれ大まかな疲労割れ、中程度の疲労割れ、微細な疲労割れおよび極微細な疲労割れの各検出に対応させている。
【0018】
請求項4では、疲労割れの程度に応じて摺動式電源変圧器を所望の電圧レンジに設定して、締付ボルトの磁粉探傷操作を迅速に行うことができる便宜が得られる。
【0019】
(請求項5について)
摺動式電源変圧器は、小型モータの高速回転、準高速回転、中速回転および低速回転に対応する高圧レンジ、準高圧レンジ、中圧レンジおよび低圧レンジの4レンジを有し、それぞれ大まかな疲労割れ、中程度の疲労割れ、微細な疲労割れおよび極微細な疲労割れの各検出に対応し、極微細な疲労割れの検出に必要な低圧レンジに、20V−40Vの電圧範囲を含む。
【0020】
請求項5では、極微細な疲労割れの検出する際、印加電圧を20V−40Vの電圧範囲に設定するだけで、極微細な疲労割れを迅速かつ正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】(a)は携帯型極間式磁粉探傷器の模式図、(b)は携帯型極間式磁粉探傷器の平面図である(実施例1)。
図2】(a)−(e)は、極微細な疲労割れが印加電圧の低下により判明することを示す一連の検査図である(実施例1)。
図3】携帯型極間式磁粉探傷器の模式図である(実施例2)。
図4】(a)は磁粉探傷時の締付ボルトを示す正面図、(b)、(c)は締付ボルトの切断面を示す正面図である(従来技術)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る携帯型極間式磁粉探傷器およびその操作方法では、コイル法に必要な高価な定置式磁化装置を必要とせず、反磁界を生ぜず、しかも、簡単な操作で迅速に被検査物の疲労割れを判定する構成を特徴とする。
【実施例】
【0023】
〔実施例1の構成〕
本発明の実施例1について、図1および図2を参照ながら説明する。
図1(a)、(b)に示す携帯型極間式磁粉探傷器1において、磁性基板2は、一定の距離だけ離間して配置された第1磁極部3と第2磁極部4とを有する。摺動式電源変圧器5はスライドトランス、あるいはボルトスライダーとも称されるもので、第1磁極部3と第2磁極部4との間に電圧を印加する。交流一次電源(IN)は100Vであり、二次側の出力(OUT)は0−130Vのレンジまでの変圧操作が可能である。
【0024】
補助ヨーク6は、第1磁極部3に設けられている。継鉄棒7は第2磁極部4に設けられ、図1(a)に矢印Hで示すように、補助ヨーク6に対して接離方向に摺動調整可能に取り付けられている。具体的には、第2磁極部4には、図1(b)に示す基板4a上に設けられた長溝4b内に継鉄棒7をスライド可能に嵌合している。
【0025】
被検査物としての締付ボルト8および疲労割れの探傷条件は、表1に示すように、調整された蛍光磁粉液を散布工程で締付ボルト8に散布して磁粉探傷を行う。斯かる磁粉探傷時、締付ボルト8を挟持工程で補助ヨーク6と継鉄棒7との間に挟持する。スイッチSwを投入して、摺動式電源変圧器5への通電により第1磁極部3、補助ヨーク6、締付ボルト8、継鉄棒7および第2磁極部4にわたる磁気回路Mを形成する。磁気回路Mの形成と時を同じくする吸着集合工程で蛍光磁粉を締付ボルト8の外表面に吸着集合させる。吸着集合工程に続く照明工程で紫外線照射のバックライト10で照らす。
【0026】
【表1】
【0027】
実施例1では、被検査物としての締付ボルト8を補助ヨーク6と継鉄棒7との間に配置するといった簡単な操作で、迅速に締付ボルト8の疲労割れを判定することができる。しかも、コイル法に必要な高価な定置式磁化装置を必要とせず、反磁界を生じない。
SCM435(M20)の極微細な疲労割れ検査では、20〜40Vの印加電圧が適正であり、磁気的に硬い材料でも適用余裕があり、材質が不明でも、適正な印加電圧については、摺動式電源変圧器5の操作により、ねじ部全体に疑似模様が生じる電圧よりも少し低い電圧を設定すればよい。
【0028】
この状況を図2に示す。印加電圧が100−80Vでは、図2(a)、(b)に示すように、殆ど判別できない極微細な疲労割れも、図2(c)に示すように、60Vから目視可能となり、図2(d)、(e)に記号Sで示すように、40−20Vではコントラストが鮮明になり一瞬にして検出することができた。
【0029】
適正な印加電圧を設定することにより、被検査物の疲労割れだけに磁粉を吸着集合させて欠陥指示模様を形成し、他の部分では疑似模様の発生を抑え、難易度の高い締付ボルト8の磁粉探傷試験を簡単かつ確実に行うことができる。
なお、検査液濃度は、溶接部の探傷では、0.5〜0.7g/リットル程度であり、ねじ谷部の疲労割れなど微細な割れを検出するには、0.1g/リットル以下の薄い濃度で、締付ボルト8への通電時間を長めにすることで、より良好な検査結果が得られる。
【0030】
〔実施例2の構成〕
図3は本発明の実施例2を示す。実施例2が実施例1と異なるところは、小型モータ11を用いて被検査物としての締付ボルト8を軸周りに回転させることである。
支持部は、補助ヨーク6として第1磁極部3に設けられ、開口部12aが内外に貫通する支持穴部12を有する。第1挟持部13は、支持穴部12内に回転可能に支持されて小型モータ11により駆動される。すなわち、小型モータ11は回転軸11aを第1挟持部13に連結固定している。
【0031】
第2挟持部は継鉄棒7として、第2磁極部4に設けられ、第1挟持部13に対して接離方向に摺動調整可能に取り付けられている。継鉄棒7には、支持穴部12に対応するように形成された横穴部7aを有する。横穴部7aには、圧縮コイルスプリング14が長手方向に沿って配されている。横穴部7aの開口端7bには、開口端7bに対応する摺動盤15が配置されている。摺動盤15は、圧縮コイルスプリング14の先端部に取り付けられ、圧縮コイルスプリング14の弾性力により開口端7bの外方へ付勢されている。摺動盤15の外面側には、後述する螺子部8bの末端が当接により円滑摺動するように、小球ボール15aを滑動可能に埋設している。
【0032】
ここで、摺動式電源変圧器5は、駆動回路5aを介して小型モータ11に接続されており、表2に一覧表として示すように、小型モータ11の高速回転、準高速回転、中速回転および低速回転に対応する高圧レンジN1、準高圧レンジN2、中圧レンジN3および低圧レンジN4の4レンジを有する。4レンジの高圧レンジN1、準高圧レンジN2、中圧レンジN3および低圧レンジN4にそれぞれ大まかな疲労割れ、中程度の疲労割れ、微細な疲労割れおよび極微細な疲労割れの各検出に対応させている。
【0033】
【表2】
【0034】
蛍光磁粉液を締付ボルト8に散布し磁粉探傷を行う磁粉探傷時、被検査物としての締付ボルト8を第1挟持部13と継鉄棒7との間で挟持する。すなわち、締付ボルト8の頭部8aを第1挟持部13に当接させ、螺子部8bの末端を摺動盤15に当接させるように配置する。
【0035】
ついで、摺動式電源変圧器5の摺動操作により、締付ボルト8を第1挟持部13を介して軸周りに回転させながら、摺動式電源変圧器5により第1磁極部3、締付ボルト8および第2磁極部4にわたる磁気回路Mを形成する。これにより、蛍光磁粉を締付ボルト8の外表面に吸着集合させながら、小型モータ11に通電し、締付ボルト8を第1挟持部13を介して軸周りに回転させる。
【0036】
実施例2では、被検査物としての締付ボルト8を第1挟持部13と継鉄棒7との間に配置するといった簡単な操作で、迅速に締付ボルト8の疲労割れを判定することができる。しかも、小型モータ11により締付ボルト8が回転するので、締付ボルト8の外表面に余分に吸着集合した磁粉を遠心力により振り落とし、疲労割れの正確な判別に貢献することができる。
また、表2に示すように、疲労割れの程度に応じて摺動式電源変圧器5を所望の電圧レンジ(N1−N4)に設定して、締付ボルト8の磁粉探傷操作を迅速に行うことができる便宜が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の携帯型極間式磁粉探傷器およびその操作方法では、被検査物としての締付ボルトを補助ヨークと継鉄棒との間に配置するといった簡単な操作で、迅速に被検査物の疲労割れを判定することができる。適正な印加電圧を設定することにより、被検査物の疲労割れだけに磁粉を吸着集合させて欠陥指示模様を形成する。難易度の高い締付ボルトの磁粉探傷試験を簡単かつ確実に可能とする合理的な技法に着目して需要が増大し、関連部品などの流通を介して機械業界への適用が可能となる。
【符号の説明】
【0038】
1 携帯型極間式磁粉探傷器
2 磁性基板
3 第1磁極部
4 第2磁極部
5 摺動式電源変圧器
6 補助ヨーク(支持部)
7 継鉄棒(第2挟持部)
7a 横穴部
8 締付ボルト(被検査物) 8a 頭部
8b 螺子部
10 バックライト
11 小型モータ
12 支持穴部
12a 開口部
13 第1挟持部
14 圧縮コイルスプリング(圧縮スプリング)
15 摺動盤
M 磁気回路
N1 高圧レンジ
N2 準高圧レンジ
N3 中圧レンジ
N4 低圧レンジ
Sw スイッチ
図1
図2
図3
図4