【解決手段】基材フィルム1と、基材フィルム1の少なくとも一方の面上に積層されたハードコート層2とを備えたハードコートフィルム10であって、ハードコート層2は、エネルギー重合性官能基を有する化合物と、フィラーと、重合開始剤と、ポリチオール化合物とを含有する塗工液から形成されたものであって、ハードコートフィルム1を200℃の環境下に1時間保持する熱処理を施した後のJIS K5600−4−4:1999(ISO 7724−1:1984)に規定される色座標b
前記塗工液における、前記エネルギー重合性官能基を有する化合物の含有量と、前記フィラーの含有量と、前記ポリチオール化合物の含有量との総和に対する、前記重合開始剤の含有量の質量割合は、5質量%以下である、請求項1または2に記載のハードコートフィルム。
前記塗工液における、前記エネルギー重合性官能基を有する化合物の含有量と、前記フィラーの含有量と、前記ポリチオール化合物の含有量との総和に対する、前記ポリチオール化合物の含有量の質量割合は、1質量%以上30質量%未満である、請求項1から3のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
前記塗工液における、前記エネルギー重合性官能基を有する化合物の含有量と、前記フィラーの含有量と、前記ポリチオール化合物の含有量との総和に対する、前記フィラーの含有量の質量割合は、5質量%以上70質量%未満である、請求項1から4のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
基材フィルムの少なくとも一方の面に、請求項1から6のいずれか一項に記載のハードコートフィルムが備えるハードコート層を形成するための塗工液を塗布して前記基材フィルム上に塗膜を形成し、前記塗膜にエネルギーを照射して前記基材フィルム上にハードコート層を形成することを特徴とする、ハードコートフィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
1.ハードコートフィルム
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係るハードコートフィルム10は、基材フィルム1と、基材フィルム1の一方の主面1A上に積層されたハードコート層2とを備える。また、
図2に示されるように、本発明の他の一実施形態に係るハードコートフィルム10は、基材フィルム1と、基材フィルム1の一方の主面1A上に積層されたハードコート層2aおよび基材フィルム1の他方の主面1B上に積層されたハードコート層2bとを備える。
【0021】
(1)基材フィルム
本実施形態に係るハードコートフィルム10が備える基材フィルム1は、無色透明であってフィルム状の形状を有している限り、具体的な特徴は特に限定されない。一実施形態に係る基材フィルム1は透明プラスチックフィルムからなる。この透明プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリエチレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロースアセテートなどのセルロース系樹脂などからなるフィルムまたはこれらの積層フィルムが挙げられる。これらの中で、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。
【0022】
本実施形態に係るハードコートフィルム10が備える基材フィルム1の厚さとしては特に制限はなく、ハードコートフィルム10の使用目的に応じて適宜選定され、通常は10〜500μmである。取り扱い性を高めたり軽量化を実現したりする観点から、基材フィルム1の厚さは200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。基材フィルム1の厚さの下限は限定されない。取り扱い性を高めるなどの観点から、基材フィルム1の厚さは10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましい。
【0023】
本実施形態に係るハードコートフィルム10が備える基材フィルム1は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの耐候剤を含んでいてもよい。
図1に示される、本発明の一実施形態に係るハードコートフィルム10が備える基材フィルム1は、所望により蒸着、スパッタリングなどの手法により形成された金属性皮膜を、一方の主面1Aと反対側の主面上に有していてもよい。
【0024】
本実施形態に係るハードコートフィルム10が備える基材フィルム1は、その主面の少なくとも一方に、その(それらの)主面に積層される要素(ハードコート層2,2a,2b、金属性皮膜、粘着剤層などが例示される。)に対する剥離強さを高める目的で、酸化法や凹凸化法などによる表面処理が施されていてもよい。上記の酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、上記の凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材フィルム1の種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果および操作性などの面から、好ましく用いられる。また、シランカップリング剤などによるプライマー層が設けられていてもよい。
【0025】
(2)ハードコート層
本実施形態に係るハードコートフィルム10が備えるハードコート層2,2a,2bは、エネルギー重合性官能基を有する化合物(本明細書において、「重合性化合物」ともいう。)と、フィラーと、重合開始剤と、ポリチオール化合物とを含有する塗工液から形成されたものである。この塗工液は、重合開始剤を含むことから、塗工液の塗膜に対する紫外線照射や、塗膜への熱の付与によってエネルギー重合性化合物の重合反応を進行させることができる。
【0026】
図1に示されるように、ハードコート層2は基材フィルム1の一方の面上に積層されていてもよいし、
図2に示されるように、ハードコート層2a,2bは基材フィルム1の双方の面上に形成されていてもよい。塗工液の塗膜からハードコート層2,2a,2bを形成する際に、収縮現象が生じる場合が多いことから、
図2に示されるように、基材フィルム1の双方の面上にハードコート層2a,2bが形成されていることが、カール抑制の観点から好ましい。
【0027】
以下、塗工液の組成について説明する。
(2−1)重合性化合物
本発明の一実施形態に係る塗工液が含有する重合性化合物は、エネルギー重合性官能基を有する限り、具体的な構造や組成は限定されない。
【0028】
重合性化合物が有するエネルギー重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、スチリル基などのエチレン性不飽和基が例示される。これらの中でも、反応性の高さから、エネルギー重合性官能基は(メタ)アクリロイル基が好ましい。以下、エネルギー重合性官能基が(メタ)アクリロイル基である場合を具体例として説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基の少なくとも一方を意味する。他の類似語も同様である。
【0029】
重合性化合物は1種類の化合物から構成されていてもよいし、複数種類の化合物から構成されていてもよい。重合性化合物は、モノマーを含んでいてもよいし、重合体を含んでいていてもよい。重合性化合物が重合体を含む場合には、その重合体はオリゴマーであってもよいし、ポリマーであってもよい。
【0030】
重合性化合物がモノマーを含む場合において、かかるモノマーとして、5官能以上の多官能アクリレート系モノマーが例示される。5官能以上の多官能アクリレート系モノマーとしては、例えばジペンタエリスリトールペンタアクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートなどを挙げることができる。これらの中で、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
【0031】
重合性化合物が含んでもよいモノマーとして、4官能以下のエネルギー線重合性モノマーも例示される。その具体例として、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレート;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレーなどが挙げられる。
【0032】
重合性化合物がオリゴマーを含む場合において、かかるオリゴマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、ポリオールアクリレート系オリゴマーなどを挙げることができる。
【0033】
重合性化合物の具体的な一例として、上記の5官能以上の多官能アクリレート系モノマーからなる場合が挙げられる。重合性化合物の具体的な別の一例として、5官能以上の多官能アクリレート系モノマーと、エネルギー線重合性オリゴマーおよび/または4官能以下のエネルギー線重合性モノマーとの混合物が挙げられる。
【0034】
本実施形態に係る塗工液における重合性化合物の含有量は限定されない。ハードコート層2,2a,2bを適切に形成することが可能であるとともに、塗工液の粘度が適切になるように設定すればよい。塗工液における溶媒以外の成分(本明細書において「有効成分」ともいう。)全体に占める重合性化合物の質量比率は、20質量%以上95質量%以下であることが好ましく、30質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
【0035】
(2−2)フィラー
本発明の一実施形態に係る塗工液はフィラーを含有する。フィラーの種類、形状および含有量は、ハードコート層2,2a,2bが適切な光学特性を有する、すなわち、無色透明であることを満たす限り、限定されない。塗工液がフィラーを含有することにより、塗工液から形成されたハードコート層2,2a,2bの硬度を高めることが可能である。本実施形態に係る塗工液に含有されるフィラーは、1種類から構成されていてもよいし、2種類以上から構成されていてもよい。
【0036】
フィラーは無機系の材料を含有してもよいし、有機系の材料を含有してもよいが、ハードコート層2,2a,2bの硬度を高めることが容易である観点から、フィラーは無機系の材料を含有することが好ましく、無機系の材料から構成されることがより好ましい。
【0037】
無機系のフィラーを与える材料として、シリカ、酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物;フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物などが挙げられる。ハードコート層2,2a,2bが無色透明であることを満たす限り、金属、金属硫化物、金属窒化物などを用いてもよい。
【0038】
これらの中でも、ハードコート層2,2a,2bの硬度を高めることがより容易であること、入手が容易であることなどから、無機系のフィラーを与える材料としてシリカ、酸化アルミニウムが好ましい。ハードコート層2,2a,2bの屈折率を高める観点から、塗工液は、ジルコニア、チタニア、酸化アンチモンなどからなるフィラーを含有してもよい。逆に、ハードコート層2,2a,2bの屈折率を低下させる観点から、塗工液は、フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等のフッ化物からなるフィラー、中空シリカフィラーなどを含有してもよい。ハードコート層2,2a,2bに帯電防止性、導電性を付与する観点から、塗工液は、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズなどからなるフィラーを含有してもよい。
【0039】
フィラーの表面は化学修飾されていてもよい。化学修飾の具体的な構成は限定されない。一例として、シランカップリング剤などを介して、重合性化合物と同様にエネルギー重合性官能基を有することが挙げられる。この場合には、フィラーと重合性化合物との間で剥離が生じにくくなり、ハードコート層2,2a,2bの硬度が高くなる、透明性が高くなるといった好ましい傾向がみられやすくなる。本明細書において、エネルギー重合性官能基を有するシリカを反応性シリカといい、エネルギー重合性官能基を有さないシリカを非反応性シリカという。
【0040】
フィラーの形状は球状であってもよいし、非球状であってもよい。非球状である場合には、不定形であってもよいし、針状、鱗片状といったアスペクト比が高い形状であってもよい。ハードコート層の透明性が高まりやすくなることから、フィラーは球状であることが好ましい場合もある。
【0041】
フィラーの大きさも限定されない。フィラーの平均粒径は、通常、5nm程度から2μm程度であり、ハードコート層の透明性が高まりやすくなることから、フィラーの平均粒径は、5nm以上100nm以下であることが好ましい場合もある。なお、本明細書におけるフィラーの1μm未満の平均粒径は、粒度分布測定装置(日機装社製,ナノトラックWave−UT151)を使用して、動的光散乱法により測定した値とする。また、フィラーの1μm以上の平均粒径は、粒度分布測定装置(日機装社製,マイクロトラックMT3000II)を使用して、レーザー回折・散乱法により測定した値とする。
【0042】
本実施形態に係る塗工液におけるフィラーの含有量は限定されない。ハードコート層の硬度、塗膜からハードコート層が形成される際の収縮の程度、透明性などを所望の範囲に設定できるように、適宜設定すればよい。例示的に具体的な数値範囲を示せば、重合性化合物100質量部に対して5質量部以上200質量部以下程度が挙げられ、10質量部以上150質量部以下が好ましい範囲として例示される。
【0043】
(2−3)重合開始剤
本実施形態に係る塗工液は重合開始剤を含有する。重合開始剤の種類は限定されない。重合開始剤は、光重合開始剤および熱重合開始剤のいずれであってもよく、塗工液に双方が含有されていてもよい。重合開始剤を含有することにより、塗工液の塗膜に対して紫外線を照射したり塗膜に熱を与えたりすることで、塗膜内の重合性化合物の重合反応を進行させることが可能となる。
【0044】
光重合開始剤としては、例えば、アシルフォスフィンオキサイド系、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、チオキサントン系、およびイミダゾール系光重合開始剤等が挙げられる。
【0045】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0046】
アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどが挙げられる。
【0047】
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4’−ビス−ジメチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0048】
ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物などが挙げられる。
【0049】
チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどが挙げられる。
【0050】
イミダゾール系光重合開始剤としては、例えば、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビスイミダゾリル、2,2'−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ−(p−メトキシフェニル)ビスイミダゾリル、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等のヘキサアリールビスイミダゾール系化合物などが挙げられる。
【0051】
これらの光重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
また、熱重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ジアセチルパーオキシドのような有機過酸化物;2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]のようなアゾ系化合物が挙げられる。
【0053】
これらの熱重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
これらの重合開始剤の中でも、反応性の観点から、光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤や、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン等アセトフェノン系光重合開始剤が好ましい。
【0055】
上記の重合開始剤の使用量は特に限定されない。例示的に具体的な数値範囲を示せば、重合性化合物100質量部に対して、1〜15質量部の範囲が挙げられ、2〜10質量部の範囲が好ましい範囲として例示される。
【0056】
(2−4)ポリチオール化合物
本実施形態に係る塗工液は、ポリチオール化合物を含有する。ポリチオール化合物は、一分子内にメルカプト基を2つ以上有する化合物である。ポリチオール化合物の具体例として、ジグリコールジメルカプタン、トリグリコールジメルカプタン、テトラグリコールジメルカプタン、チオジグリコールジメルカプタン、チオトリグリコールジメルカプタン、チオテトラグリコールジメルカプタン、トリス(メルカプトプロピル)イソシアヌレート、エタンジチオール、プロパンジチオール、ヘキサメチレンジチオール、デカメチレンジチオール、トリレン−2,4−ジチオール、キシリレンジチオール、トリメチロールプロパントリス−β−メルカプトプロピオネート、o−キシレンジチオール、m−キシレンジチオール、p−キシレンジチオール、エチレングリコールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタンエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリヒドロキシエチルトリイソシアヌール酸トリスチオプロピオネート、トリス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)などが挙げられる。
【0057】
これらの中でも、ポリチオール化合物は、トリス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート(TEMPIC)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PEMP)、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)(MTPE−1)、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)(DPMP)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)およびトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)からなる群より選択される1種または2種以上の化合物を含むことが好ましい。これらは、メルカプト基を一分子内3個以上有するため、エン−チオール反応が進行しやすい。
【0058】
塗工液に含有される有効成分のうち、塗工液から形成されたハードコート層2,2a,2bを備えるハードコートフィルム10が加熱されたことにより黄変が生じることに最も影響を与える成分は重合開始剤であるところ、本実施形態に係る塗工液は、ポリチオール化合物を含有するため、塗工液における重合開始剤の含有量を低下させても、塗工液に含有される重合性化合物の重合反応を適切に進行させることができる。したがって、本実施形態に係る塗工液における、重合性化合物の含有量、フィラーの含有量、およびポリチオール化合物の含有量の総和に対する、重合開始剤の含有量の質量割合(本明細書において「開始剤質量割合」ともいう。)は5質量%以下であることが好ましい。本実施形態に係る塗工液は開始剤質量割合が5質量%以下であっても、かかる塗工液から形成されたハードコート層2,2a,2bの鉛筆硬度をH以上とすることが可能である。加熱後のハードコート層2,2a,2bに黄変が生じることをより安定的に抑制する観点から、塗工液の開始剤質量割合は3質量%以下であることが好ましい。なお、本明細書において、ハードコート層2,2a,2bの硬度を示す「鉛筆硬度」とは、JIS K5600−5−4(ISO/DIS 15184:1996、塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法))に準拠して測定される鉛筆硬度を意味する。
【0059】
本実施形態に係る塗工液における、重合性化合物の含有量と、フィラーの含有量と、ポリチオール化合物の含有量との総和に対する、ポリチオール化合物の含有量の質量割合(本明細書において「ポリチオール質量割合」ともいう。)は、1質量%以上30質量%未満であることが好ましい。ハードコート層2,2a,2bの硬度を高めることと、加熱後のハードコート層2,2a,2bに黄変が生じにくくすることとのバランスを良好にする観点から、ポリチオール質量割合は、5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
【0060】
本実施形態に係る塗工液における、重合性化合物の含有量と、フィラーの含有量と、ポリチオール化合物の含有量との総和に対する、フィラーの含有量の質量割合(本明細書において「フィラー質量割合」ともいう。)は、5質量%以上70質量%未満であることが好ましい。ハードコート層の硬度を高めることと、加熱後のハードコート層に黄変が生じにくくすることとのバランスを良好にする観点から、フィラー質量割合は、10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0061】
(2−5)その他の成分
本実施形態に係る塗工液が含有する重合開始剤が光重合開始剤である場合には、本実施形態に係る塗工液は、光重合開始剤とともに、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類のような光増感剤を併用してもよい。これらの光増感剤は、単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0062】
本実施形態に係る塗工液は、前述の、重合性化合物、フィラー、重合開始剤剤およびポリチオール化合物ならびに所望により用いられる前述の光増感剤、さらには各種添加剤、例えば赤外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤などをそれぞれ所定の割合で加えることにより、調製することができる。この際、必要に応じ、溶媒を加え、コーティングに適した濃度および粘度に調整するのがよい。
【0063】
この際用いる溶媒としては、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、メチルイソブチルケトン、イソホロン等のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒などが挙げられる。
【0064】
(2−6)厚さ
ハードコート層2,2a,2bの厚さは特に限定されない。一例を挙げれば、1μm以上100μm以下であり、3μm以上60μm以下であることがより好ましく、5μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0065】
(2−7)黄変率
本実施形態に係るハードコートフィルム10は、ハードコートフィルム10を200℃の環境下に1時間保持する熱処理を施した後のJIS K5600−4−4:1999(ISO 7724−1:1984)に規定される色座標b
*の値b
*1のハードコートフィルム10の熱処理前の色座標b
*の値b
*0に対する変化量Δb
*(=b
*1−b
*0)の、ハードコート層の厚さの総和(単位:μm)に対する割合(本明細書において、「黄変率」ともいう。)が、0.02μm
−1未満である。ハードコートフィルム10が
図1に示されるような構成を有する場合には、ハードコート層の厚さの総和は、ハードコート層2の厚さに等しい。ハードコートフィルム10が
図2に示されるような構成を有する場合には、ハードコート層の厚さの総和は、ハードコート層2aの厚さおよびハードコート層2bの厚さの総和となる。本実施形態に係るハードコートフィルム10は黄変率が0.02μm
−1未満であるため、当該ハードコートフィルム10が画像表示デバイスの表示側に配置される透明保護部材として用いられても、画像の色調変化といった表示に関する不具合が生じにくい。
【0066】
本実施形態に係るハードコートフィルム10が、画像表示デバイスの表示側に配置される透明保護部材としての適性をより安定的に有する観点から、ハードコートフィルム10の黄変率は、0.015μm
−1以下であることが好ましく、0.012μm
−1以下であることがより好ましい。
【0067】
(2−8)硬度
本実施形態に係るハードコートフィルム10が備えるハードコート層2,2a,2bの硬度は特に限定されない。必要に応じ適宜設定されるべきものである。一例として、鉛筆硬度として、H以上であることが挙げられる。ハードコート層2,2a,2bの鉛筆硬度がH以上であれば、十分に高い硬度を有するハードコート層であるといえる。ハードコート層2,2a,2bの鉛筆硬度が3H以上であれば、特に高い硬度を有するハードコート層であるといえる。
【0068】
(3)ハードコートフィルムにおけるその他の要素
本実施形態に係るハードコートフィルム10は、基材フィルム1およびハードコート層2,2a,2b以外の構成要素を備えていてもよい。そのような要素の具体例として、粘着剤層および剥離シートが例示される。
【0069】
(3−1)粘着剤層
図1に示される、本発明の一実施形態に係るハードコートフィルム10は、基材フィルム1の一方の主面1Aと反対側の面上に、粘着剤層を備えていてもよい。
図2に示される、本発明の別の一実施形態に係るハードコートフィルム10は、ハードコート層2a,2bの一方または双方の面上に、粘着剤層を備えていてもよい。本実施形態に係るハードコートフィルム10が備える粘着剤層は、粘着性組成物から形成される層状体である。粘着剤層を構成する粘着性組成物の組成は特に限定されない。主成分である粘着剤としてゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系等の粘着剤が例示され、これらの一種類を使用してもよいし、二種類以上を使用してもよい。
【0070】
上記のうちアクリル系の粘着剤についてやや詳しく説明すれば、官能基含有モノマーと、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等の他のモノマーとを共重合して得られるアクリル系共重合体を主成分とする。粘着性組成物は必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、充填剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等をさらに含んでいてもよい。
【0071】
官能基含有モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタアクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーやアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の水酸基含有モノマーが挙げられる。官能基含有モノマーは、アクリル系共重合体を構成するモノマー全体を基準(100質量%)として、モノマー単位として0.3〜5.0質量%含むことが好ましい。アクリル系共重合体は、官能基を含有することにより、架橋剤との反応で凝集力を調整することができ、粘着力および耐熱性を向上させることができる。
【0072】
粘着性組成物に使用される架橋剤としては、特に制限はなく、アクリル系の材料を主成分とする粘着性組成物において慣用されているものの中から適宜選択して用いられ、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが用いられ、好ましくはポリイソシアネート化合物が用いられる。
【0073】
粘着剤層の厚さは特に限定されない。用途に応じて適宜設定されるべきものであり、通常、1μm以上500μm以下程度とされる。
【0074】
(3−2)剥離シート
本実施形態に係るハードコートフィルム10が上記の粘着剤層を備える場合には、その基材フィルム1に対向する側と反対側の面を使用時まで保護する目的で、その面に、剥離シートの剥離面が貼付されていてもよい。この剥離シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムの一方の主面に、剥離剤を塗布することを含む剥離処理が施されたものなどが挙げられる。剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系などを用いることができるが、これらの中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。剥離シートの厚さは特に限定されない。
【0075】
剥離シートの厚さは限定されない。通常、20〜250μm程度である。
【0076】
2.ハードコートフィルムの製造方法
本実施形態に係るハードコートフィルム10の製造方法は限定されない。以下、
図1に示されるハードコートフィルム10を製造する方法の一例(第1の方法)および
図2に示されるハードコートフィルム10を製造する方法の一例(第2の方法)を説明する。
【0077】
(1)第1の方法
(1−1)塗布工程
まず、本実施形態に係るハードコートフィルム10が備える基材フィルム1の一方の主面1A上に、前述の塗工液を塗布して、上記主面1A上に塗膜を形成する。塗工液の塗布量は限定されない。塗布により得られた塗膜から形成されるハードコート層2,2a,2bの厚さに応じて適宜設定される。塗布手法も特に限定されない。例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などが例示される。必要に応じ、基材フィルム1の一方の主面1A上に形成された塗膜を乾燥して、塗膜内に含有される揮発性成分、特に溶媒を除去してもよい。乾燥する場合におけるその条件は任意であり、例えば、80〜140℃で数分間〜数十分間乾燥させることが挙げられる。
【0078】
(1−2)硬化工程
塗布工程により基材フィルム1の一方の主面1A上に形成された塗膜に、エネルギー線を照射したり熱を与えたりすることにより、塗膜内に含有される重合性化合物の重合反応を進行させる。この重合反応が進行することにより、塗膜はハードコート層2となり、基材フィルム1とハードコート層2とからなる本実施形態に係るハードコートフィルム10の基本的な構造が得られる。
【0079】
重合性化合物の重合反応を進行させるためのエネルギーとしては、熱やエネルギー線が挙げられ、エネルギー線としては、電離放射線、すなわち、X線、紫外線、電子線などが挙げられる。これらのうちでも、比較的照射設備の導入の容易な紫外線が好ましい。
【0080】
電離放射線として紫外線を用いる場合には、取り扱いのしやすさから波長200〜380nm程度の紫外線を含む近紫外線を用いればよい。紫外線量としては、重合性化合物の種類やハードコート層2の厚さに応じて適宜選択すればよく、通常50〜700mJ/cm
2程度であり、200〜600mJ/cm
2が好ましく、200〜500mJ/cm
2がより好ましい。また、紫外線照度は、通常50〜500mW/cm
2程度であり、100〜450mW/cm
2が好ましく、200〜400mW/cm
2がより好ましい。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線域の発光ダイオード(UV−LED)などが用いられる。
【0081】
(1−3)粘着剤層形成工程
こうしてハードコートフィルム10を得たら、必要に応じ、基材フィルム1の主面1Aと反対側の主面に、粘着剤層を形成する。粘着剤層の形成方法は任意である。一例を挙げれば、粘着剤層を形成するための組成物である粘着剤組成物からなる、またはこの粘着剤組成物に必要に応じ溶媒を添加してなる粘着剤層形成用塗工液を、基材フィルム1の主面1Aと反対側の主面上に塗布し、これを乾燥させることにより粘着剤層を得ることができる。粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合には、必要に応じて、粘着剤層を加熱したり、養生したりして、架橋剤の反応を進行させてもよい。
【0082】
(1−4)剥離シート貼付工程
上記のように粘着剤層形成工程を行った場合には、得られた粘着剤層の露出する面、すなわち、粘着剤層における基材フィルム1に対向する側と反対側の面に、剥離シートの剥離面を貼付して、粘着剤層の上記の面を保護する。
【0083】
(2)第2の方法
第2の方法は、上記の第1の方法との対比では、基材フィルム1の他方の面1B上にもハードコート層2bを形成する工程を有する点が相違する。ハードコート層2aを形成するための塗布工程と、ハードコート層2bを形成するための塗布工程とは、同時に行われてもよいし、別々に行われてもよい。別々に行われる場合における各塗布工程の実施の順序は任意である。
【0084】
また、一方のハードコート層を形成してから、他方のハードコート層に係る塗膜を形成してもよいし、基材フィルム1の両面1Aおよび1B上に塗膜を形成してから、一度の硬化工程により、ハードコート層2aおよびハードコート層2bを形成してもよい。
【0085】
図2に示される構造のハードコートフィルム10が得られたのち、粘着剤層形成工程、さらに必要に応じて剥離シート貼付工程が行われる場合には、粘着剤層形成工程の処理対象となるハードコート層は、ハードコート層2aおよびハードコート層2bのいずれであってもよいし、ハードコート層2a,2bの双方に粘着剤層などが形成されていてもよい。
【0086】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0087】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0088】
〔実施例1〕
(1)塗工液の調製
次の組成を有する塗工液を調製した。
i)重合性化合物として、6官能アクリレートであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を45質量部、
ii)フィラーとして、反応性シリカを50質量部、
iii)ポリチオール化合物として、トリス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート(TEMPIC)を5質量部、
iv)光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure(登録商標) TPO」)を1質量部、および
v)溶媒としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を50質量部。
【0089】
(2)ハードコートフィルムの作製
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート製基材フィルムの双方の主面上に、上記の塗工液を、マイヤーバーにて、ハードコート層としての厚さが10μmとなる量塗布して、乾燥炉にて100℃2分間の条件で乾燥し、双方の主面上に塗膜を形成した。得られた基材フィルムと塗膜とからなる積層体に対して、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製、照度200mW/cm
2)を用いて、照射量が500mJ/cm
2となるように、塗膜の双方の主面それぞれに光を照射した。こうして、塗膜を硬化させて、10μmの厚さのハードコート層を2層備え、これらの厚さの総和が20μmであるハードコートフィルムを得た。
【0090】
〔実施例2〕
(1)塗工液の調製
次の組成を有する塗工液を調製した。
i)重合性化合物として、6官能アクリレートであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を45質量部、
ii)フィラーとして、反応性シリカを50質量部、
iii)ポリチオール化合物として、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PEMP)を5質量部、
iv)光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル-フェニル−ケトン(BASF社製「Irgacure(登録商標) 184」)を3質量部、および
v)溶媒としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を50質量部。
【0091】
(2)ハードコートフィルムの作製
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート製基材フィルムの双方の主面上に、上記の塗工液を、マイヤーバーにて、ハードコート層としての厚さが25μmとなる量塗布して、双方の主面上に塗膜を形成した。得られた基材フィルムと塗膜とからなる積層体に対して、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製、照度200mW/cm
2)を用いて、照射量が500mJ/cm
2となるように、塗膜の双方の主面それぞれに光を照射した。こうして、塗膜を硬化させて、25μmの厚さのハードコート層を2層備え、これらの厚さの総和が50μmであるハードコートフィルムを得た。
【0092】
〔実施例3〕
実施例1と同様にして塗工液を調整した。
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート製基材フィルムの双方の主面上に、上記の塗工液を、マイヤーバーにて、ハードコート層としての厚さが30μmとなる量塗布して、双方の主面上に塗膜を形成した。得られた基材フィルムと塗膜とからなる積層体に対して、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製、照度200mW/cm
2)を用いて、照射量が500mJ/cm
2となるように、塗膜の双方の主面それぞれに光を照射した。こうして、塗膜を硬化させて、30μmの厚さのハードコート層を2層備え、これらの厚さの総和が60μmであるハードコートフィルムを得た。
【0093】
〔実施例4〕
次の組成を有する塗工液を調製した。
i)重合性化合物として、6官能アクリレートであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を45質量部、
ii)フィラーとして、非反応性シリカを50質量部、
iii)ポリチオール化合物として、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)(MTPE−1)を5質量部、
iv)光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure(登録商標) TPO」)を1質量部、および
v)溶媒としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を50質量部。
以下、実施例1と同様にして、25μm厚の基材フィルムのそれぞれの面に10μmの厚さのハードコート層を備え、ハードコート層の厚さの総和が20μmであるハードコートフィルムを得た。
【0094】
〔実施例5〕
次の組成を有する塗工液を調製した。
i)重合性化合物として、3官能アクリレートであるトリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートを45質量部、
ii)フィラーとして、反応性シリカを50質量部、
iii)ポリチオール化合物として、トリス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート(TEMPIC)を5質量部、
iv)光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure(登録商標) TPO」)を3質量部、および
v)溶媒としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を50質量部。
以下、実施例1と同様にして、25μm厚の基材フィルムのそれぞれの面に10μmの厚さのハードコート層を備え、ハードコート層の厚さの総和が20μmであるハードコートフィルムを得た。
【0095】
〔実施例6〕
次の組成を有する塗工液を調製した。
i)重合性化合物として、ウレタンアクリレート系オリゴマーを45質量部、
ii)フィラーとして、反応性シリカを50質量部、
iii)ポリチオール化合物として、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)(MTPE−1)を5質量部、
iv)光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure(登録商標) TPO」)を1質量部、および
v)溶媒としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を50質量部。
以下、実施例1と同様にして、25μm厚の基材フィルムのそれぞれの面に10μmの厚さのハードコート層を備え、ハードコート層の厚さの総和が20μmであるハードコートフィルムを得た。
【0096】
〔実施例7〕
次の組成を有する塗工液を調製した。
i)重合性化合物として、6官能アクリレートであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を45質量部、
ii)フィラーとして、反応性シリカを50質量部、
iii)ポリチオール化合物として、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)(DPMP)を5質量部、
iv)光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure(登録商標) TPO」)を1質量部、および
v)溶媒としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を50質量部。
以下、実施例1と同様にして、25μm厚の基材フィルムのそれぞれの面に10μmの厚さのハードコート層を備え、ハードコート層の厚さの総和が20μmであるハードコートフィルムを得た。
【0097】
〔実施例8〕
次の組成を有する塗工液を調製した。
i)重合性化合物として、6官能アクリレートであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を30質量部、
ii)フィラーとして、反応性シリカを50質量部、
iii)ポリチオール化合物として、トリス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート(TEMPIC)を20質量部、
iv)光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure(登録商標) TPO」)を1質量部、および
v)溶媒としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を50質量部。
以下、実施例1と同様にして、25μm厚の基材フィルムのそれぞれの面に10μmの厚さのハードコート層を備え、ハードコート層の厚さの総和が20μmであるハードコートフィルムを得た。
【0098】
〔実施例9〕
次の組成を有する塗工液を調製した。
i)重合性化合物として、6官能アクリレートであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を81質量部、
ii)フィラーとして、反応性シリカを10質量部、
iii)ポリチオール化合物として、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)(MTPE−1)を9質量部、
iv)光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure(登録商標) TPO」)を1質量部、および
v)溶媒としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を10質量部。
以下、実施例1と同様にして、25μm厚の基材フィルムのそれぞれの面に10μmの厚さのハードコート層を備え、ハードコート層の厚さの総和が20μmであるハードコートフィルムを得た。
【0099】
〔比較例1〕
次の組成を有する塗工液を調製した。
i)重合性化合物として、6官能アクリレートであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を50質量部、
ii)フィラーとして、反応性シリカを50質量部、
iii)光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure(登録商標) TPO」)を3質量部、および
iv)溶媒としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を50質量部。
以下、実施例1と同様にして、25μm厚の基材フィルムのそれぞれの面に10μmの厚さのハードコート層を備え、ハードコート層の厚さの総和が20μmであるハードコートフィルムを得た。
【0100】
〔比較例2〕
(1)塗工液の調製
次の組成を有する塗工液を調製した。
i)重合性化合物として、6官能アクリレートであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を50質量部、
ii)フィラーとして、非反応性シリカを50質量部、
iii)光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF社製「Irgacure(登録商標) 184」)を3質量部、および
iv)溶媒としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を50質量部。
【0101】
(2)ハードコートフィルムの作製
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート製基材フィルムの双方の主面上に、上記の塗工液を、マイヤーバーにて、ハードコート層としての厚さが25μmとなる量塗布して、双方の主面上に塗膜を形成した。得られた基材フィルムと塗膜とからなる積層体に対して、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製、照度200mW/cm
2)を用いて、照射量が500mJ/cm
2となるように、塗膜の双方の主面それぞれに光を照射した。こうして、塗膜を硬化させて、25μmの厚さのハードコート層を2層備え、厚さの総和が50μmであるハードコートフィルムを得た。
【0102】
〔比較例3〕
塗工液の調製の際に、光重合開始剤の配合量を1質量部に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、25μm厚の基材フィルムのそれぞれの面に10μmの厚さのハードコート層を備え、ハードコート層の厚さの総和が20μmであるハードコートフィルムを得た。
【0103】
〔比較例4〕
次の組成を有する塗工液を調製した。
i)重合性化合物として、6官能アクリレートであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を90質量部、
ii)ポリチオール化合物として、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)(MTPE−1)を10質量部、
iii)光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure(登録商標) TPO」)を1質量部、および
iv)溶媒としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を50質量部。
以下、実施例1と同様にして、25μm厚の基材フィルムのそれぞれの面に10μmの厚さのハードコート層を備え、ハードコート層の厚さの総和が20μmであるハードコートフィルムを得た。
【0104】
〔試験例1〕<黄変率の測定>
実施例および比較例により製造されたハードコートフィルムのそれぞれについて、JIS K5600−4−4:1999(ISO 7724−1:1984)に規定される色座標b
*の値b
*0を測定した。各ハードコートフィルムに対して、200℃の環境下に1時間保持する熱処理を施した。熱処理後のハードコートフィルムについて、色座標b
*の値b
*1を測定した。色座標b
*の変化量Δb
*(=b
*1−b
*0)をハードコート層の厚さの総和(単位:μm)で除して、各ハードコートフィルムの黄変率を求めた。結果を表1に示す。
【0105】
〔試験例2〕<鉛筆硬度>
JIS K5600−5−4(ISO/DIS 15184:1996、塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法))に基づいて、実施例および比較例により製造されたハードコートフィルムのそれぞれについて、ハードコート層の鉛筆硬度を求めた。結果を表1に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
表1から分かるように、本発明の条件を満たす実施例のハードコートフィルムが備えるハードコート層は、その硬度が2H以上と十分に高いうえに、加熱されても黄変が生じにくかった。