(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-204163(P2015-204163A)
(43)【公開日】2015年11月16日
(54)【発明の名称】ハーネス及びハーネスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20151020BHJP
H01B 13/012 20060101ALI20151020BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20151020BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20151020BHJP
H01R 4/70 20060101ALI20151020BHJP
【FI】
H01B7/00 306
H01B7/00 301
H01B13/00 513A
H01B13/00 521
H02G3/04 J
H01R4/70 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-82103(P2014-82103)
(22)【出願日】2014年4月11日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】那倉 裕二
【テーマコード(参考)】
5G309
5G357
【Fターム(参考)】
5G309AA06
5G309FA04
5G357DA05
5G357DA10
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD01
5G357DD05
5G357DG01
5G357DG06
(57)【要約】
【課題】特性インピーダンスが安定したハーネス及び該ハーネスの製造方法を提供することにある。
【解決手段】ハーネス1は、ツイストペア線2、シース3、テープ4及び端子51,52を備える。ツイストペア線2は絶縁電線21,22を有し、絶縁電線21,22は撚り合わされている。ツイストペア線2はシース3に覆われている。絶縁電線21,22夫々の一端には端子51,52が接続されている。更に、ハーネス1はシース3の端部にシース3の長さ方向のスリット6を備え、テープ4がシース3の端部の外周に巻きつけられている。シース3は、テープ4によりスリット6を閉じた状態に保持されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の絶縁電線が撚り合わされたツイストペア線と該ツイストペア線を覆う被覆部とを備えるハーネスにおいて、
前記被覆部の端部に、前記被覆部の長さ方向のスリットを備えており、
前記スリットを閉じた状態に保持する保持部を備えることを特徴とするハーネス。
【請求項2】
前記保持部は前記端部の外周に巻かれているテープであることを特徴とする請求項1に記載のハーネス。
【請求項3】
前記保持部は、接着剤により形成される接着層であることを特徴とする請求項1に記載のハーネス。
【請求項4】
前記保持部の誘電率は前記被覆部の誘電率と略同一であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載のハーネス。
【請求項5】
2本の絶縁電線が撚り合わされたツイストペア線と該ツイストペア線を覆う被覆部とを備え、前記2本の絶縁電線夫々の一端に金具が取り付けられたハーネスの製造方法において、
前記一端の側で、前記被覆部の端部に前記被覆部の長さ方向のスリットを入れ、
前記スリットから前記2本の絶縁電線を剥き出し、
前記2本の絶縁電線夫々の前記一端に前記金具を取り付け、
前記被覆部が前記2本の絶縁電線を覆っている状態に戻し、
前記スリットを閉じた状態に保持することを特徴とするハーネスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信線として用いられるハーネス及びハーネスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、車輌に搭載された複数のECU(Electric Control Unit:電子制御装置)が行う通信における信号伝達に、2本の絶縁電線が撚り合わされたツイストペア線を用いたハーネスが使用されている。ハーネスにおいてツイストペア線の線間距離が大きく広がるとハーネスを用いた通信において生じるEMI(Electromagnetic Interference :電磁波障害)が増加し、またハーネス自体のEMI耐性が低下するという問題が存在する。該問題を解決するハーネスが特許文献1に開示されている。特許文献1に記載のハーネスでは、ツイストペア線をシースで覆いツイストペア線の線間距離を短くすることによってEMIの増加及びEMI耐性の低下を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−103322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、ツイストペア線にシースを被せたハーネスを通信線として用いる場合、ハーネスの特性インピーダンスはツイストペア線にシースを被せた状態で設計されている。このように構成されたハーネスを用いる場合において、ハーネスの端部のシースはツイストペア線の一端に端子を取り付けるために除去されている。ツイストペア線と端子との接続部でシースが除去されることから、特性インピーダンスの不整合が生じてEMIが増加し、またEMI耐性が低下するため通信障害の原因となる問題がある。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは特性インピーダンスが安定したハーネス及び該ハーネスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るハーネスは、2本の絶縁電線が撚り合わされたツイストペア線と該ツイストペア線を覆う被覆部とを備えるハーネスにおいて、前記被覆部の端部に、前記被覆部の長さ方向のスリットを備えており、前記スリットを閉じた状態に保持する保持部を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ハーネスは被覆部を備えており、保持部が被覆部の長さ方向のスリットを閉じた状態に保持する。これによって、ツイストペア線の線間距離が広がらず、特性インピーダンスを安定させることができる。また、例えば絶縁電線に金具を取り付けた場合であっても、ツイストペア線が剥き出しである部分が短いので、長さ方向についての特性インピーダンスの変化が小さく、特性インピーダンスが安定している。
【0008】
本発明に係るハーネスは、前記保持部は前記端部の外周に巻かれているテープであることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、テープにより簡単にスリットを閉じた状態に保持することができる。
【0010】
本発明に係るハーネスは、前記保持部は、接着剤により形成される接着層であることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、接着剤により形成される接着層によって、スリットを確実に閉じた状態に保持することができる。
【0012】
本発明に係るハーネスは、前記保持部の誘電率は前記被覆部の誘電率と略同一であることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、保持部の誘電率と被覆部の誘電率とは略同一であるので、特性インピーダンスをより安定させることができる。
【0014】
本発明に係るハーネスの製造方法は、2本の絶縁電線が撚り合わされたツイストペア線と該ツイストペア線を覆う被覆部とを備え、前記2本の絶縁電線夫々の一端に金具が取り付けられたハーネスの製造方法において、前記一端の側で、前記被覆部の端部に前記被覆部の長さ方向のスリットを入れ、前記スリットから前記2本の絶縁電線を剥き出し、前記2本の絶縁電線夫々の前記一端に前記金具を取り付け、前記被覆部が前記2本の絶縁電線を覆っている状態に戻し、前記スリットを閉じた状態に保持することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、ハーネスの一端の側で、被覆部の端部に被覆部の長さ方向のスリットを入れ、スリットから2本の絶縁電線を剥き出し、2本の絶縁電線夫々の一端に金具を取り付け、2本の絶縁電線を被覆部に覆われた状態に戻し、スリットを閉じた状態に保持する。これにより、特性インピーダンスが安定したハーネスを製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ハーネスは被覆部を備えており、保持部が被覆部の端部で被覆部の長さ方向のスリットを閉じた状態に保持する。これによって、ツイストペア線が剥き出しである部分が短いので特性インピーダンスを安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態1に係るハーネスの一側を部分的に示す外観図である。
【
図2】実施の形態1に係るハーネスの一側を部分的に示す断面図である。
【
図3】実施の形態1に係るテープが取り外されたハーネスの一側を部分的に示す外観図である。
【
図4】実施の形態1に係るハーネスの製造方法の説明図である。
【
図5】実施の形態2に係るハーネスの一側を部分的に示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1に係るハーネス1の一側を部分的に示す外観図であり、
図2は実施の形態1に係るハーネス1の一側を部分的に示す断面図である。ハーネス1はツイストペア線2、シース3、テープ4及び端子51,52を備える。
【0019】
ツイストペア線2は絶縁電線21,22を有し、絶縁電線21,22は撚り合わさっている。ツイストペア線2はシース3によって覆われ、シース3は被覆部として機能する。また、絶縁電線21,22夫々の端部には金具として機能する端子51,52が取り付けられ、絶縁電線21,22の芯線と端子51,52とは導通している。更にシース3の端部の外周がテープ4によって巻回されている。シース3の材質は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等である。テープ4は誘電性の材質、例えばポリ塩化ビニル(PVC)で構成される。
【0020】
図3は実施の形態1に係るテープ4が取り外されたハーネス1の一側を部分的に示す外観図である。ハーネス1には、シース3の端部にシース3の長さ方向のスリット6が設けられている。テープ4はスリット6を閉じた状態に保持し、保持部として機能する。
【0021】
以上のように構成されたハーネス1は、ツイストペア線2がシース3に覆われることにより絶縁電線21,22の線間距離が短く保たれ、ツイストペア線2が剥き出しである部分が短い。このため、ハーネス1は、ハーネス1の長さ方向の特性インピーダンスの変化が小さく、特性インピーダンスが安定している。したがって、ハーネス1は、ハーネス1を用いた通信で生じるEMIの増加を防止することができEMIに対する耐性が向上する。
【0022】
また、テープ4を用いて簡単にスリット6を閉じた状態に保持することができる。更に、テープ4とシース3の誘電率は略同一である。このためハーネス1の長さ方向のインピーダンスはより安定している。
【0023】
なお、ハーネス1はテープ4とシース3との誘電率が略同一でない構成でもよく、該構成においてもハーネス1の長さ方向についての特性インピーダンスが安定する効果は得られる。
【0024】
ハーネス1の製造方法を説明する。
図4は実施の形態1に係るハーネス1の製造方法の説明図である。まず、
図4Aに図示するように、ツイストペア線2を覆うシース3の端部にシース3の長さ方向にスリット6を入れる。次に、スリット6により分割されたシース3の端部を、シース3の一端から長さ方向に折り返す。これにより、
図4Bに図示するように端子51,52の取り付け作業に必要な長さの絶縁電線21,22が剥き出しとなる。そして、
図4Cに示すように、絶縁電線21,22の剥き出しとなった部分の撚りを解き、絶縁電線21,22夫々に端子51,52を取り付ける。その後、
図4Dに示すように折り返していたシース3を絶縁電線21,22がシース3に覆われた状態に戻す。
【0025】
更に、シース3の端部にテープ4を巻き付けることにより、
図4Eに示すようにハーネス1が製造できる。テープ4を巻き付けることにより、シース3のスリット6を閉じた状態に保持する。以上のように特性インピーダンスが安定したハーネス1が製造される。
【0026】
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2に係るハーネス7の一側を部分的に示す外観図である。実施の形態1では、保持部としてテープ4を用いてスリット6を閉じた状態に保持したが、スリット6を閉じた状態に保持するための構成はテープ4を用いた構成に限定されない。実施の形態2では他の構成でスリット6を閉じた状態に保持するハーネス7について説明する。実施の形態1と共通する構成については同様の符号を付してその説明を省略する。
【0027】
ハーネス7はハーネス1と同様にツイストペア線2、シース3及び端子51,52を備え、これらはハーネス1と同様に構成されている。またシース3は、スリット6及び接着層8を備えている。ハーネス7においては、スリット6は接着層8により閉じた状態に保持され、接着層8が保持部として機能している。接着層8は、スリット6におけるシース3の縁に、接着剤により形成されている。
【0028】
接着剤は、例としてエポキシ樹脂系接着剤又はシリコーン樹脂系接着剤等がある。
【0029】
以上のように構成されたハーネス7は、ツイストペア線2がシース3に覆われることにより絶縁電線21,22の線間距離が短く保たれ、ツイストペア線2が剥き出しである部分が短い。このため、ハーネス7の長さ方向の特性インピーダンスの変化が小さく、特性インピーダンスが安定している。したがって、ハーネス7は、ハーネス7を用いた通信で生じるEMIの増加を防止できEMIに対する耐性が向上する。
【0030】
また、接着層8は、スリット6を確実に閉じた状態に保持することができる。更に、接着層8とシース3の誘電率は略同一である。このためハーネス7の長さ方向のインピーダンスはより安定している。
【0031】
なお、ハーネス7はシース3と接着層8との誘電率が略同一でない構成でもよく、該構成においてもハーネス7の長さ方向についての特性インピーダンスが安定する効果は得られる。また、接着層8をシース3の外周におけるスリット6周辺部に接着剤を塗布して形成して、スリット6を閉じた状態に保持する構成であってもよい。
【0032】
ハーネス7の製造方法を説明する。実施の形態1におけるハーネス1と同様に、シース3の端部にシース3の長さ方向のスリット6を入れる。スリット6により分割されたシース3の端部を、シース3の一端から長さ方向に折り返す。これにより、端子51,52の取り付け作業に必要な長さの絶縁電線21,22が剥き出しとなる。スリット6から剥き出した2本の絶縁導線21,22夫々の一端に端子51,52を取り付け、絶縁電線21,22をシース3が覆っている状態に戻す。
【0033】
ハーネス7の製造方法では、その後、スリット6におけるシース3の縁に、接着剤を塗布しスリット6を閉じる。接着剤が形成する接着層8によりスリット6を閉じた状態に保持する。
【0034】
実施の形態1のハーネス1及び実施の形態2のハーネス7に係る、シース3の端部に設けられるスリットの数は1本に限定されず、複数であってもよい。スリットの数が複数である場合、製造時にツイストペア線2を容易に剥き出すことができる。
【0035】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0036】
1、7 ハーネス
2 ツイストペア線
21、22 絶縁電線
3 シース(被覆部)
4 テープ(保持部)
51、52 端子(金具)
6 スリット
8 接着層(保持部)