【実施例】
【0067】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0068】
<I. 電極触媒の調製>
〔I-1. カソード用白金電極触媒〕
[実施例1-1-1]
硫酸350 g中に、カーボン担体材料(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)20 gを添加し、攪拌した。次に、過マンガン酸カリウム10.8 g(カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して4.1 mol%)を添加し、3昼夜攪拌した。次いで、イオン交換水800 gを添加後、30%過酸化水素水を6 ml添加した。この混合物を、そのまま一昼夜攪拌した後、ろ過及び洗浄した。洗浄後の生成物をろ過した後、固形分を1 N硝酸500 mlに添加し、一昼夜攪拌した。反応生成物を、ろ過及び洗浄した。洗浄後の生成物を、80℃で15時間乾燥した後、アルゴンガス中、700℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、700℃で2時間保持)して、カーボン担体を得た(酸化工程)。このカーボン担体10 gに、0.1 N硝酸水溶液420 gを加え、分散させた。この分散液に、最終生成物の総質量に対して30質量%のPt担持量となるPt仕込量(4.29 g)を含むジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、99.5%エタノール50 gの順に加えた。この混合物を、実質的に均質となるように十分に撹拌した後、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。加熱終了後、得られた分散液を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた固形分を、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、700℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、700℃で2時間保持)した(触媒金属担持工程)。以上の方法により、電極触媒の粉末を得た。
【0069】
[実施例1-1-2]
硫酸350 g中に、カーボン担体材料(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)20 gを添加し、攪拌した。次に、過マンガン酸カリウム18 g(カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して6.8 mol%)を添加し、3昼夜攪拌した。次いで、イオン交換水800 gを添加後、30%過酸化水素水を10 ml添加した。この混合物を、そのまま一昼夜攪拌した後、ろ過及び洗浄した。洗浄後の生成物をろ過した後、固形分を1 N硝酸500 mlに添加し、一昼夜攪拌した。反応生成物を、ろ過及び洗浄した。洗浄後の生成物を、80℃で15時間乾燥した後、アルゴンガス中、700℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、700℃で2時間保持)して、カーボン担体を得た(酸化工程)。このカーボン担体10 gに、0.1 N硝酸水溶液420 gを加え、分散させた。この分散液に、最終生成物の総質量に対して30質量%のPt担持量となるPt仕込量(4.29 g)を含むジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、99.5%エタノール50 gの順に加えた。この混合物を、実質的に均質となるように十分に撹拌した後、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。加熱終了後、得られた分散液を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた固形分を、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、700℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、700℃で2時間保持)した(触媒金属担持工程)。以上の方法により、電極触媒の粉末を得た。
【0070】
[実施例1-1-3]
硫酸350 g中に、カーボン担体材料(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)20 gを添加し、攪拌した。次に、硝酸ナトリウム1.92 g及び過マンガン酸カリウム18 g(カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して2.7 mol%)を添加し、3昼夜攪拌した。次いで、イオン交換水800 gを添加後、30%過酸化水素水を4 ml添加した。この混合物を、そのまま一昼夜攪拌した後、ろ過及び洗浄した。洗浄後の生成物をろ過した後、固形分を1 N硝酸500 mlに添加し、一昼夜攪拌した。反応生成物を、ろ過及び洗浄した。洗浄後の生成物を、80℃で15時間乾燥した後、アルゴンガス中、700℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、700℃で2時間保持)して、カーボン担体を得た(酸化工程)。このカーボン担体10 gに、0.1 N硝酸水溶液420 gを加え、分散させた。この分散液に、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含むジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、99.5%エタノール50 gの順に加えた。この混合物を、実質的に均質となるように十分に撹拌した後、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。加熱終了後、得られた分散液を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた固形分を、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、700℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、700℃で2時間保持)した(触媒金属担持工程)。以上の方法により、電極触媒の粉末を得た。
【0071】
[実施例1-1-4]
実施例1-1-3において、酸化工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を800℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0072】
[実施例1-1-5]
実施例1-1-3において、酸化工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を900℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0073】
[実施例1-1-6]
実施例1-1-3において、触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を800℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0074】
[実施例1-1-7]
実施例1-1-3において、酸化工程における硝酸ナトリウムの添加量を2.88 gに、過マンガン酸カリウムの添加量を10.8 g(カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して4.1 mol%)に、30%過酸化水素水の添加量を6 mlに、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0075】
[実施例1-1-8]
実施例1-1-3において、酸化工程における硝酸ナトリウムの添加量を2.88 gに、過マンガン酸カリウムの添加量を10.8 g(カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して4.1 mol%)に、30%過酸化水素水の添加量を6 mlに、それぞれ変更し、且つ触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を800℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0076】
[実施例1-1-9]
実施例1-1-1において、触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0077】
[実施例1-1-10]
実施例1-1-1において、酸化工程における過マンガン酸カリウムの添加量を18 g(カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して6.8 mol%)に、30%過酸化水素水の添加量を10 mlに、それぞれ変更し、且つ触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0078】
[実施例1-1-11]
カーボン担体材料(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)25 gを、磁性皿に秤量した。このカーボン担体材料を、空気中、590℃で熱酸化処理(条件:2時間で昇温、590℃で5時間保持)して、カーボン担体を得た(酸化工程)。このカーボン担体10 gに、0.1 N硝酸水溶液420 gを加え、分散させた。この分散液に、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含むジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、99.5%エタノール50 gの順に加えた。この混合物を、実質的に均質となるように十分に撹拌した後、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。加熱終了後、得られた分散液を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた固形分を、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、800℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、800℃で2時間保持)した(触媒金属担持工程)。以上の方法により、電極触媒の粉末を得た。
【0079】
[実施例1-1-12]
実施例1-1-11において、酸化工程における空気中熱酸化処理温度を600℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0080】
[実施例1-1-13]
実施例1-1-11において、酸化工程における空気中熱酸化処理温度を600℃に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を700℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0081】
[実施例1-1-14]
実施例1-1-11において、酸化工程における空気中熱酸化処理温度を610℃に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を700℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0082】
[実施例1-1-15]
実施例1-1-11において、酸化工程における空気中熱酸化処理温度を620℃に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を700℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0083】
[実施例1-1-16]
実施例1-1-11において、酸化工程における空気中熱酸化処理温度を630℃に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を700℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0084】
[比較例1-1-1]
カーボン担体(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)10 gに、0.1 N硝酸水溶液420 gを加え、分散させた。この分散液に、最終生成物の総質量に対して30質量%のPt担持量となるPt仕込量(4.29 g)を含むジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、99.5%エタノール50 gの順に加えた。この混合物を、実質的に均質となるように十分に撹拌した後、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。加熱終了後、得られた分散液を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた固形分を、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、700℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、700℃で2時間保持)した(触媒金属担持工程)。以上の方法により、電極触媒の粉末を得た。
【0085】
[比較例1-1-2]
比較例1-1-1において、触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を800℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0086】
[比較例1-1-3]
比較例1-1-1において、触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を900℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0087】
[比較例1-1-4]
カーボン担体材料(Ketjen;ライオン製)を、アルゴンガス中、2800℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、2800℃で2時間保持)して、カーボン担体を得た。このカーボン担体10 gに、0.1 N硝酸水溶液420 gを加え、分散させた。この分散液に、最終生成物の総質量に対して30質量%のPt担持量となるPt仕込量(4.29 g)を含むジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、99.5%エタノール50 gの順に加えた。この混合物を、実質的に均質となるように十分に撹拌した後、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。加熱終了後、得られた分散液を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた固形分を、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、700℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、700℃で2時間保持)した(触媒金属担持工程)。以上の方法により、電極触媒の粉末を得た。
【0088】
[比較例1-1-5]
比較例1-1-4において、触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を700℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0089】
[比較例1-1-6]
比較例1-1-1において、カーボン担体材料をKetjen(ライオン製)に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を800℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0090】
[比較例1-1-7]
比較例1-1-1において、カーボン担体材料をKetjen(ライオン製)に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を900℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0091】
[比較例1-1-8]
比較例1-1-1において、触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0092】
[比較例1-1-9]
比較例1-1-1において、触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を900℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0093】
[比較例1-1-10]
カーボン担体材料(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)25 gを、磁性皿に秤量した。このカーボン担体材料を、空気中、550℃で熱酸化処理(条件:2時間で昇温、550℃で5時間保持)して、カーボン担体を得た(酸化工程)。このカーボン担体10 gに、0.1 N硝酸水溶液420 gを加え、分散させた。この分散液に、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含むジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、99.5%エタノール50 gの順に加えた。この混合物を、実質的に均質となるように十分に撹拌した後、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。加熱終了後、得られた分散液を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた固形分を、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、800℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、800℃で2時間保持)した(触媒金属担持工程)。以上の方法により、電極触媒の粉末を得た。
【0094】
[比較例1-1-11]
比較例1-1-10において、酸化工程における空気中熱酸化処理温度を560℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0095】
[比較例1-1-12]
比較例1-1-10において、酸化工程における空気中熱酸化処理温度を570℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0096】
〔I-2. カソード用白金合金電極触媒〕
[実施例1-2-1]
硫酸350 g中に、カーボン担体材料(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)20 gを添加し、攪拌した。次に、硝酸ナトリウム2.88 g及び過マンガン酸カリウム10.8 g(カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して4.1 mol%)を添加し、3昼夜攪拌した。次いで、イオン交換水800 gを添加後、30%過酸化水素水を6 ml添加した。この混合物を、そのまま一昼夜攪拌した後、ろ過及び洗浄した。洗浄後の生成物をろ過した後、固形分を1 N硝酸500 mlに添加し、一昼夜攪拌した。反応生成物を、ろ過及び洗浄した。洗浄後の生成物を、80℃で15時間乾燥した後、アルゴンガス中、800℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、800℃で2時間保持)して、カーボン担体を得た(酸化工程)。このカーボン担体10 gに、0.1 N硝酸水溶液420 gを加え、分散させた。この分散液に、最終生成物の総質量に対して30質量%のPt担持量となるPt仕込量(4.29 g)を含むジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、99.5%エタノール50 gの順に加えた。この混合物を、実質的に均質となるように十分に撹拌した後、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。加熱終了後、得られた分散液を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた固形分を、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、800℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、800℃で2時間保持)した。得られた30質量%Pt担持カーボン担体を、カーボン担体の総質量に対して80倍の純水に分散させた。この分散液に、市販の硝酸コバルト六水和物を純水に溶解させることで調製された硝酸コバルト水溶液を、白金とコバルトとのmol比がPt:Co=2:1となるような量で滴下した。滴下終了後、使用された硝酸コバルトのコバルトに対して1〜6 mol当量の水素化ホウ素ナトリウム水溶液を滴下した。滴下終了後、反応液を1〜20時間撹拌した。その後、反応混合物を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた粉末ケーキを、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、800℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、800℃で2時間保持)して、白金とコバルトを合金化した(触媒金属担持工程)。以上の方法により、電極触媒の粉末を得た。
【0097】
[実施例1-2-2]
実施例1-2-1において、酸化工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を700℃に変更し、且つ触媒金属担持工程における白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0098】
[実施例1-2-3]
実施例1-2-1において、酸化工程における硝酸ナトリウムの添加を廃止し、酸化工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を700℃に変更し、且つ触媒金属担持工程における白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0099】
[実施例1-2-4]
実施例1-2-1において、酸化工程における硝酸ナトリウムの添加を廃止し、酸化工程における過マンガン酸カリウムの添加量を18 g(カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して6.8 mol%)に、30%過酸化水素水の添加量を10 mlに、アルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更し、且つ触媒金属担持工程における白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0100】
[実施例1-2-5]
実施例1-2-1において、酸化工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を700℃に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0101】
[実施例1-2-6]
実施例1-2-1において、触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0102】
[実施例1-2-7]
実施例1-2-1において、酸化工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を700℃に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に、白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0103】
[実施例1-2-8]
実施例1-2-1において、酸化工程における硝酸ナトリウムの添加を廃止し、酸化工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を700℃に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に、白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0104】
[実施例1-2-9]
実施例1-2-1において、酸化工程における硝酸ナトリウムの添加を廃止し、酸化工程における酸化工程における過マンガン酸カリウムの添加量を18 g(カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して6.8 mol%)に、30%過酸化水素水の添加量を10 mlに、アルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更し、且つ触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に、白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0105】
[実施例1-2-10]
カーボン担体材料(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)25 gを、磁性皿に秤量した。このカーボン担体材料を、空気中、600℃で熱酸化処理(条件:2時間で昇温、600℃で5時間保持)して、カーボン担体を得た(酸化工程)。このカーボン担体10 gに、0.1 N硝酸水溶液420 gを加え、分散させた。この分散液に、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含むジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、99.5%エタノール50 gの順に加えた。この混合物を、実質的に均質となるように十分に撹拌した後、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。加熱終了後、得られた分散液を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた固形分を、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、800℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、800℃で2時間保持)した。得られた20質量%Pt担持カーボン担体を、カーボン担体の総質量に対して80倍の純水に分散させた。この分散液に、市販の硝酸コバルト六水和物を純水に溶解させることで調製された硝酸コバルト水溶液を、白金とコバルトとのmol比がPt:Co=2:1となるような量で滴下した。滴下終了後、使用された硝酸コバルトのコバルトに対して1〜6 mol当量の水素化ホウ素ナトリウム水溶液を滴下した。滴下終了後、反応液を1〜20時間撹拌した。その後、反応混合物を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた粉末ケーキを、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、800℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、800℃で2時間保持)して、白金とコバルトを合金化した(触媒金属担持工程)。以上の方法により、電極触媒の粉末を得た。
【0106】
[実施例1-2-11]
実施例1-2-10において、触媒金属担持工程における白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0107】
[実施例1-2-12]
実施例1-2-10において、酸化工程における空気中熱酸化処理温度を610℃に変更し、且つ触媒金属担持工程における白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0108】
[実施例1-2-13]
実施例1-2-10において、酸化工程における空気中熱酸化処理温度を620℃に変更し、且つ触媒金属担持工程における白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0109】
[実施例1-2-14]
実施例1-2-10において、酸化工程における空気中熱酸化処理温度を630℃に変更し、且つ触媒金属担持工程における白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0110】
[比較例1-2-1]
カーボン担体(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)10 gに、0.1 N硝酸水溶液420 gを加え、分散させた。この分散液に、最終生成物の総質量に対して30質量%のPt担持量となるPt仕込量(4.29 g)を含むジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、99.5%エタノール50 gの順に加えた。この混合物を、実質的に均質となるように十分に撹拌した後、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。加熱終了後、得られた分散液を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた固形分を、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、700℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、700℃で2時間保持)した。得られた30質量%Pt担持カーボン担体を、カーボン担体の総質量に対して80倍の純水に分散させた。この分散液に、市販の硝酸コバルト六水和物を純水に溶解させることで調製された硝酸コバルト水溶液を、白金とコバルトとのmol比がPt:Co=2:1となるような量で滴下した。滴下終了後、使用された硝酸コバルトのコバルトに対して1〜6 mol当量の水素化ホウ素ナトリウム水溶液を滴下した。滴下終了後、反応液を1〜20時間撹拌した。その後、反応混合物を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた粉末ケーキを、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、800℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、800℃で2時間保持)して、白金とコバルトを合金化した(触媒金属担持工程)。以上の方法により、電極触媒の粉末を得た。
【0111】
[比較例1-2-2]
比較例1-2-1において、カーボン担体材料をKetjen(ライオン製)に変更し、且つ触媒金属担持工程における白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を800℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0112】
[比較例1-2-3]
比較例1-2-1において、カーボン担体材料をOSAB(デンカ製)に変更し、且つ触媒金属担持工程における白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を800℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0113】
[比較例1-2-4]
比較例1-2-1において、触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0114】
[比較例1-2-5]
比較例1-2-1において、触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に変更し、且つ触媒金属担持工程における白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を900℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を800℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0115】
〔I-3. アノード用白金電極触媒〕
[実施例2-1-1]
実施例1-1-16において、触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して5質量%のPt担持量となるPt仕込量(0.53 g)を含む量に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を400℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0116】
[実施例2-1-2]
実施例2-1-1において、触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して10質量%のPt担持量となるPt仕込量(1.11 g)を含む量に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0117】
[比較例2-1-1]
比較例1-1-1において、触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して5質量%のPt担持量となるPt仕込量(0.53 g)を含む量に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を400℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0118】
[比較例2-1-2]
比較例2-1-1において、触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して10質量%のPt担持量となるPt仕込量(1.11 g)を含む量に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
【0119】
<II. 電極触媒の評価方法>
[II-1. カーボン担体の炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)]
X線回折(XRD)装置(Rint2500;リガク製)を用いて、実施例及び比較例の電極触媒の調製に用いた触媒金属担持前のカーボン担体のXRDを測定した。測定条件は、以下のとおりである:Cu管球、50 kV、300 mA。得られたXRDスペクトルに基づき、Scherrerの式を用いて、炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)を決定した。
【0120】
[II-2. カーボン担体の比表面積]
比表面積測定装置(BELSORP-mini;日本ベル製)を用いて、実施例及び比較例の電極触媒の調製に用いた触媒金属担持前のカーボン担体の、ガス吸着法に基づくBET比表面積(m
2/g)を測定した。測定条件は、以下のとおりである:前処理:150℃、2時間真空脱気;測定:定容法を用いた窒素による吸着等温線の測定。
【0121】
[II-3. カーボン担体の酸素濃度]
酸素分析装置(型番:EMGA-920;堀場製作所製)を用いて、実施例及び比較例の電極触媒の調製に用いた触媒金属担持前のカーボン担体に導入された酸素濃度(カーボン担体の総質量に対する質量%)を測定した。測定条件は、以下のとおりである:不活性ガス中、インパルス加熱溶融−NDIR法。
【0122】
[II-4. カーボン担体のラマンスペクトル測定]
ラマン分光装置(NRS-1000;日本分光製)を用いて、実施例及び比較例の電極触媒の調製に用いた触媒金属担持前のカーボン担体のラマンスペクトルを測定した。測定条件は、以下のとおりである:レーザー波長:532 nm、レーザー出力:100 mV。得られたラマンスペクトルにおいて、1300〜1400 cm
-1の領域に観測されるピーク(D-バンドピーク)と1500〜1600 cm
-1の領域に観測されるピーク(G-バンドピーク)とを同定した。同定されたD-バンドピーク及びG-バンドピークから、G-バンドピークの半値幅(G-バンド半値幅)、及びD-バンドピーク強度I
DとG-バンドピーク強度I
Gとの強度比(D/G比)を決定した。
【0123】
[II-5. カーボン担体の細孔分布測定]
カーボン担体(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)を、実施例1-1-13〜1-1-16の酸化工程と同様の手順で熱酸化処理した。細孔分布測定装置(BELSORP-mini;日本ベル製)を用いて、熱酸化処理前、600℃で熱酸化処理後、610℃で熱酸化処理後、620℃で熱酸化処理後、及び630℃で熱酸化処理後のカーボン担体の、ガス吸着法に基づく細孔分布を測定した。測定条件は、以下のとおりである:前処理:120℃、8時間真空脱気;測定:定容法を用いた窒素による吸着等温線の測定。
【0124】
[II-6. 触媒金属の担持量測定]
王水を用いて、所定量の実施例及び比較例の電極触媒から触媒金属を溶解させた。誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置(ICPV-8100;島津製作所製)を用いて、得られた溶液中の触媒金属イオンを定量した。前記定量値から、電極触媒に担持された触媒金属(Pt及びCo)の担持量(電極触媒の総質量に対する質量%)を決定した。
【0125】
[II-7. 白金の(220)面の結晶子径]
X線回折(XRD)装置(Rint2500;リガク製)を用いて、実施例及び比較例の電極触媒のXRDを測定した。測定条件は、以下のとおりである:Cu管球、50 kV、300 mA。得られたXRDスペクトルに基づき、Scherrerの式を用いて、白金の(220)面の結晶子径を決定した。
【0126】
[II-8. 電極触媒の電子顕微鏡観察]
透過型電子顕微鏡(TEM)(H9500;日立製作所製)を用いて、実施例及び比較例の電極触媒のカーボン担体の表面を観察した。湿式分散法を用いて、各電極触媒の試料を調製し、加速電圧300 kV、倍率1,000,000倍で、カーボン担体の構造を観察した。
【0127】
[II-9. 電極触媒のCO吸着量]
0.05 gの実施例及び比較例の電極触媒を容器に秤量した。容器中の各試料を、ヘリウムガス(100% He)気流下、3℃/minの条件で80℃まで昇温した。80℃到達後、容器内の雰囲気を水素ガス(100% H
2)に置換した。その後、水素雰囲気下で、各試料を30分間還元処理した。還元終了後、容器内の雰囲気をヘリウムガス(100% He)に置換し、ヘリウムガス気流下で30℃まで冷却した。次に、容器内へ、一酸化炭素(100% CO)をパルス状に導入(導入圧力:100 kPa)した。熱伝導度検出器(TCD)を用いて触媒に結合しなかったCO量を検出し、触媒に打ち込んだCO量と触媒に結合せずに排出されたCO量との差分として、各電極触媒の試料のCO吸着量(ml/g-触媒)を決定した。次いで、この値をPt担持率で除して、Pt単位質量当たりのCO吸着量(ml/g-Pt)を算出した。
【0128】
[II-10. 電極触媒のECSA維持率]
0.1 M HClO
4水溶液を電解液として用いる回転ディスク電極法に基づき、実施例及び比較例の電極触媒の電気化学的有効比表面積(ECSA)を測定した。作用極上に、所定量の白金を塗布した。電解液中に、窒素ガス(N
2)を連続的に吹き込んだ状態で、電位サイクルクリーニング(RHE基準で50から1200 mV, 600サイクル)を実施した。その後、電位サイクル耐久処理(RHE基準で400から1200 mV, 5000サイクル)を実施した。電位サイクル耐久処理前後のECSAの測定値から、ECSA維持率(%)を決定した。
【0129】
<III. 電極触媒の評価結果>
[III-1. 電極触媒の調製条件及び物性値]
実施例及び比較例の電極触媒の調製条件の概要を表1に、該電極触媒の物性値を表2に、それぞれ示す。また、実施例及び比較例の電極触媒の調製に用いたカーボン担体、並びに実施例及び比較例の電極触媒の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を
図1及び2に示す。さらに、実施例及び比較例の電極触媒の各物性値の関係を
図3〜12にそれぞれ示す。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
[III-2. カソード用白金担持電極触媒]
高比表面積を有する市販のカーボン担体材料であるKetjen及びOSAB、並びに比表面積の低い市販のカーボン担体材料であるトーカブラック#3855の表面を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。トーカブラック#3855のTEM画像を
図1に示す。また、X線回折(XRD)測定により、前記カーボン担体材料の炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)を決定した。Ketjenは、2.0 nmのLcを有し、OSABは、1.8 nmのLcを有した。これに対し、比表面積の低い市販のカーボン担体材料であるトーカブラックは、5.3 nmのLcを有した。
【0133】
ラマンスペクトル測定により、前記カーボン担体材料のG-バンド半値幅及びD-バンドピーク強度I
DとG-バンドピーク強度I
Gとの強度比(D/G比)を決定した。高比表面積を有する市販のカーボン担体材料であるKetjenは、81 cm
-1のG-バンド半値幅及び1.18のD/G比を有し、OSABは、68 cm
-1のG-バンド半値幅及び1.50のD/G比を有した。これに対し、比表面積の低い市販のカーボン担体材料であるトーカブラック#3855は、39 cm
-1のG-バンド半値幅及び0.34のD/G比を有した。前記結果から、Ketjen及びOSABは、トーカブラック#3855と比較して、比表面積は高いものの、結晶性が低いことが示唆された。
【0134】
図3に示すように、実施例1-1-1〜1-1-16の白金担持電極触媒は、170 m
2/g以下の比表面積であっても24 ml/g-Pt以上のCO吸着量を有することが明らかとなった。前記実施例の白金担持電極触媒の比表面積は、95〜170 m
2/gの範囲であった。これに対し、前記実施例と同一のカーボン担体材料(比表面積:79 m
2/g)を、酸化工程を実施することなくそのまま用いた比較例1-1-1、1-1-2、1-1-3、1-1-8及び1-1-9の白金担持電極触媒、並びに高比表面積を有する市販のカーボン担体材料であるKetjen(比表面積:800 m
2/g)を、酸化工程を実施することなくそのまま用いた比較例1-1-7の白金担持電極触媒は、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。
【0135】
図4に示すように、実施例1-1-1〜1-1-16の白金担持電極触媒は、5.0 nm以上のLc及び24 ml/g-Pt以上のCO吸着量を有した。これに対し、市販のカーボン担体材料であるKetjenを、酸化工程を実施することなくそのまま用いた比較例1-1-7の白金担持電極触媒は、2.0 nmのLcであり、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。
【0136】
図5に示すように、実施例1-1-1〜1-1-16の白金担持電極触媒は、0.9未満のD/G比及び24 ml/g-Pt以上のCO吸着量を有した。前記実施例のD/G比は、0.5以上且つ0.9未満の範囲であった。これに対し、前記実施例と同一のカーボン担体材料を、酸化工程を実施することなくそのまま用いた比較例1-1-1、1-1-2、1-1-3、1-1-8及び1-1-9の白金担持電極触媒は、0.34のD/G比であり、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。また、前記実施例と同一のカーボン担体材料を550〜570℃の範囲の温度で熱酸化処理する酸化工程を実施することによって調製された比較例1-1-10〜1-1-12の白金担持電極触媒は、0.45〜0.57の範囲のD/G比であり、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。さらに、市販のカーボン担体材料であるKetjenを、酸化工程を実施することなくそのまま用いた比較例1-1-7の白金担持電極触媒は、1.17のD/G比であり、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。
【0137】
図6に示すように、実施例1-1-1〜1-1-16の白金担持電極触媒は、4.5 nm以下の白金の(220)面の結晶子径及び24 ml/g-Pt以上のCO吸着量を有した。前記実施例の白金の(220)面の結晶子径は、3.2 nm以上且つ4.1 nm未満の範囲であった。これに対し、前記実施例と同一のカーボン担体材料を、酸化工程を実施することなくそのまま用いて、実施例1-1-1と同一の白金担持量(30質量%)となるように触媒金属担持工程を実施した比較例1-1-1、1-1-2及び1-1-3の白金担持電極触媒は、5.9 nmの白金の(220)面の結晶子径であり、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。また、実施例1-1-3と同一の白金担持量(20質量%)となるように触媒金属担持工程を実施した1-1-8及び1-1-9の白金担持電極触媒は、4.6 nmの白金の(220)面の結晶子径であり、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。前記実施例と同一のカーボン担体材料を550〜570℃の範囲の温度で熱酸化処理する酸化工程を実施することによって調製された比較例1-1-10〜1-1-12の白金担持電極触媒は、4.2〜4.4 nmの範囲の白金の(220)面の結晶子径であり、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。さらに、市販のカーボン担体材料であるKetjenを、酸化工程を実施することなくそのまま用いて、実施例1-1-1と同一の白金担持量(30質量%)となるように触媒金属担持工程を実施した比較例1-1-7の白金担持電極触媒は、4.2 nmの白金の(220)面の結晶子径であり、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。
【0138】
比較例1-1-4及び1-1-5の白金担持電極触媒は、国際公開第2005/106994号に記載の方法と同様の方法によって調製された。
図3に示すように、比較例1-1-4及び1-1-5の白金担持電極触媒は、前記文献に記載の値と同程度のカーボン担体の比表面積(123 m
2/g)を有したが、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。また、
図6に示すように、当該比較例の白金担持電極触媒の白金の(220)面の結晶子径は、4.5 nmを超える値であった。
【0139】
図7に示すように、比較例の白金担持電極触媒は、高CO吸着量と高ECSA維持率とを両立することが困難であった。例えば、高CO吸着量(32 ml/g-Pt)を有する比較例1-1-6の白金担持電極触媒の場合、ECSA維持率は58%であった。一方、高ECSA維持率(78%)を有する比較例1-1-7の白金担持電極触媒の場合、CO吸着量は22 ml/g-Ptであった。同様に、高ECSA維持率(85%)を有する比較例1-1-9の白金担持電極触媒の場合、CO吸着量は23 ml/g-Ptであった。図中に、比較例1-1-6及び1-1-7の白金担持電極触媒のデータ点を結ぶ点線を示す。
【0140】
これに対し、実施例1-1-1〜1-1-16の白金担持電極触媒は、いずれも前記点線の上方にCO吸着量及びECSA維持率のデータ点が存在した。前記の通り、実施例1-1-1〜1-1-16の白金担持電極触媒は、グラファイト構造部分が多く、且つ該グラファイト構造部分の結晶性が高いカーボン担体を有する。高結晶性のグラファイト構造部分が多いカーボン担体は、燃料電池の運転条件下におけるカーボン担体の耐酸化性が高い。それ故、前記実施例の白金担持電極触媒は、比較例1-1-6及び1-1-7の白金担持電極触媒と比較して、高CO吸着量と高ECSA維持率とを両立できたと考えられる。
【0141】
[III-3. カソード用白金合金担持電極触媒]
図8〜11に示すように、実施例1-2-1〜1-2-14の白金合金担持電極触媒は、前記白金担持電極触媒の場合と同様に、170 m
2/g以下(特に95〜170 m
2/gの範囲)の比表面積、5.0 nm以上のLc、0.9未満(特に0.5以上且つ0.9未満の範囲)のD/G比、及び4.5 nm以下(特に3.2 nm以上且つ4.1 nm未満の範囲)の白金の(220)面の結晶子径を有した。この場合、実施例1-2-1〜1-2-14の白金合金担持電極触媒は、18 ml/g-Pt以上のCO吸着量を有した。
【0142】
図12に示すように、実施例1-2-1〜1-2-14の白金合金担持電極触媒は、前記白金担持電極触媒の場合と同様に、比較例1-2-2及び1-2-3の白金合金担持電極触媒のデータ点を結ぶ点線の上方にCO吸着量及びECSA維持率のデータ点が存在した。それ故、前記実施例の白金合金担持電極触媒は、比較例1-2-2及び1-2-3の白金合金担持電極触媒と比較して、高CO吸着量と高ECSA維持率とを両立できたと考えられる。
【0143】
[III-4. カーボン担体の細孔分布]
熱酸化処理前、600℃で熱酸化処理後、610℃で熱酸化処理後、620℃で熱酸化処理後、及び630℃で熱酸化処理後のカーボン担体の細孔分布を
図13に、熱酸化処理温度と細孔容積との関係を
図14にそれぞれ示す。
【0144】
図13に示すように、600〜630℃の範囲の温度で熱酸化処理されたカーボン担体は、熱酸化処理前のカーボン担体と比較して、1.0〜2.5 nm(特に1.7〜1.9 nm)の範囲の細孔半径を有する細孔をさらに有することが示された。また、
図14に示すように、600〜630℃の範囲の温度で熱酸化処理されたカーボン担体は、熱酸化処理前のカーボン担体と比較して、細孔容積が増加した。この細孔容積の増加は、熱酸化処理によって前記細孔半径を有する細孔がさらに形成されたことに起因すると考えられる。それ故、熱酸化処理によって形成される前記細孔半径を有する細孔が、触媒金属の担持サイトとして使用されると考えられる。
【0145】
カーボン担体の熱酸化処理による細孔の形成は、カーボン担体のTEM画像からも確認された。
図2に示すように、実施例1-1-7、1-1-8、1-2-2、1-2-5及び1-2-7と同一の条件で酸化剤処理による酸化工程実施後のカーボン担体の表面(
図2A)、並びに実施例1-1-12、1-1-13、1-2-10及び1-2-11と同一の条件で熱酸化処理による酸化工程実施後のカーボン担体の表面(
図2B)には、非処理のカーボン担体の表面(
図1)と比較して、結晶構造の乱れが観察された。
【0146】
[III-5. アノード用電極触媒]
表2に示すように、実施例2-1-1及び2-2-2のアノード用白金担持電極触媒は、カーボン担体が5.0 nm以上のLc及び95〜170 m
2/gの範囲の比表面積を有した。この場合、触媒金属が4.5 nm以下の白金の(220)面の結晶子径を有し、42 ml/g-Pt以上のCO吸着量を有した。これに対し、比較例2-1-1及び2-2-2のアノード用白金担持電極触媒は、カーボン担体の比表面積が79 m
2/gであり、34又は31 ml/g-PtのCO吸着量であった。
【0147】
<IV. 電極触媒の調製>
[IV-1. カーボン担体の熱酸化処理温度]
空気中には酸素が存在するため、空気中(すなわち酸素存在下)でカーボン担体を熱酸化処理すると、カーボン担体中の炭素が燃焼し、比表面積が増加する。このため、高結晶性で且つ比表面積の低いカーボン担体を空気中で熱酸化処理することにより、比表面積を所望の範囲に制御し得る。しかしながら、空気中熱酸化処理温度を過度に高くすると、カーボン担体中の炭素の燃焼が急速に進行し、比表面積の制御が困難となる可能性がある。
【0148】
実施例1-1-11の酸化工程の手順に基づき、カーボン担体(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)を、空気中、室温〜1000℃の範囲の温度で熱酸化処理した。熱重量分析(TG)装置(TG8120;リガク製)を用いて、得られたカーボン担体の5%質量減少温度(℃)を決定した。カーボン担体の空気中熱酸化処理温度と5%質量減少温度との関係を
図15に示す。
【0149】
図15に示すように、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度が500℃以上に上昇すると、5%質量減少温度が直線的に低下した。空気中熱酸化処理温度が630℃の場合、5%質量減少温度は約600℃まで低下した。それ故、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度が630℃を超える場合、結果として得られるカーボン担体の耐酸化性が急激に低下する可能性がある。
【0150】
実施例1-1-11〜1-1-16及び比較例1-1-10〜1-1-12の白金担持電極触媒の調製における、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度と該電極触媒のCO吸着量及び白金の(220)面の結晶子径との関係を
図16に、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体の比表面積との関係を
図17に、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体に含有される酸素濃度との関係を
図18に、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体のD/G比との関係を
図19に、それぞれ示す。
【0151】
図16に示すように、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度が580℃以上の場合、24 ml/g-Pt以上のCO吸着量で且つ4.1 nm以下の白金の(220)面の結晶子径を有する白金担持電極触媒が得られた。前記の結果は、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度が580℃以上の場合、空気中熱酸化処理温度の上昇に伴ってカーボン担体の比表面積が増加したことに起因すると考えられる(
図17)。また、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度が580℃以上の場合、空気中熱酸化処理温度の上昇に伴ってカーボン担体に含有される酸素濃度が増加した(
図18)。前記の結果は、カーボン担体の熱酸化処理により、カーボン担体の炭素が酸化され、触媒金属の担持サイトとして使用され得る細孔が形成されたことを示唆する(
図13及び14)。さらに、
図19に示すように、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度が上昇すると、カーボン担体のD/G比は増加した。前記の結果は、カーボン担体の熱酸化処理により、カーボン担体のグラファイト構造の部分が減少し、非グラファイト構造の部分が増加することを示唆する。
【0152】
実施例1-1-1〜1-1-10及び比較例1-1-1の白金担持電極触媒の調製における、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比と該電極触媒のCO吸着量及び白金の(220)面の結晶子径との関係を
図20に、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体の比表面積との関係を
図21に、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体に含有される酸素濃度との関係を
図22に、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体のD/G比との関係を
図23に、それぞれ示す。
【0153】
図20に示すように、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比が2.5 mol%以上の場合、24 ml/g-Pt以上のCO吸着量で且つ4.1 nm以下の白金の(220)面の結晶子径を有する白金担持電極触媒が得られた。前記の結果は、K/C比が2.5 mol%以上の場合、カーボン担体の酸化に伴ってカーボン担体の比表面積が増加したことに起因すると考えられる(
図21)。また、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比が2.5 mol%以上の場合、空気中熱酸化処理温度の上昇に伴ってカーボン担体に含有される酸素濃度が増加した(
図22)。前記の結果は、カーボン担体の熱酸化処理により、カーボン担体の炭素が酸化され、触媒金属の担持サイトとして使用され得る細孔が形成されたことを示唆する。さらに、
図23に示すように、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比が増加すると、カーボン担体のD/G比は増加した。前記の結果は、カーボン担体の酸化剤処理により、カーボン担体のグラファイト構造の部分が減少し、非グラファイト構造の部分が増加したことを示唆する。