【解決手段】2本の導電性繊維2および1本の圧電性繊維1を含み、これらが略同一平面上に、導電性繊維、圧電性繊維、導電性繊維の順序に配置されている。更に圧電単位中の導電性繊維が、他の導電性繊維並びに圧電性繊維に接しないように、絶縁性繊維3が導電性繊維と圧電性繊維の間に配されるている圧電単位を含む電気信号を出力とする。
2本の導電性繊維および1本の圧電性繊維を含み、これらが略同一平面上に、導電性繊維、圧電性繊維、導電性繊維の順序に配置されている圧電単位を含む電気信号を出力とするトランスデューサー。
圧電単位は絶縁性繊維を含み、該絶縁性繊維は、圧電単位中の導電性繊維が、他の圧電単位中の導電性繊維、あるいは導電性繊維と圧電性繊維に接しないように配置されている請求項1記載のトランスデューサー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、通常の繊維材料を用いて、かつ従前の織編物構造を作製することで柔軟性にとんだ布帛状のトランスデューサーを提供することにある。さらには、そのトランスデューサーからの信号を用いたセンサーや発電素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、2本の導電性繊維と1本の圧電性繊維との組み合わせ形状により、圧電素子として機能する場合があることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
1. 2本の導電性繊維および1本の圧電性繊維を含み、これらが略同一平面上に、導電性繊維、圧電性繊維、導電性繊維の順序に配置されている圧電単位を含む電気信号を出力とするトランスデューサー。
2. 圧電単位は絶縁性繊維を含み、該絶縁性繊維は、圧電単位中の導電性繊維が、他の圧電単位中の導電性繊維、あるいは導電性繊維と圧電性繊維に接しないように配置されている、上記1記載のトランスデューサー。
3. 圧電性繊維が、主としてポリ乳酸を含む上記1に記載のトランスデューサー。
4. 圧電性繊維が、主としてポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を含み、これらの光学純度は99%以上である上記1記載のトランスデューサー。
5. 圧電性繊維が一軸配向し且つ結晶を含む上記1記載のトランスデューサー。
6. 導電性繊維が炭素繊維である上記1記載のトランスデューサー。
7. 複数の圧電単位を含有する織編物である上記1記載のトランスデューサー。
8. 複数の圧電単位を含有する織物であって、その織組織が平織、綾織、サテン織およびそれらの複合組織である上記7記載のトランスデューサー。
9. 織編物を複数組み合わせて用いる上記7記載のトランスデューサー。
10. 上記1〜9のいずれか一項に記載のトランスデューサーを用いたセンサー。
11. 上記1〜9のいずれか一項に記載のトランスデューサーを用いた発電素子。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば通常の繊維材料を用いて、かつ従前の織編物構造を作製することで柔軟性に富んだ布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本発明のトランスデューサーは、フレキシブルな繊維状であるので、織りや編みによって布状とすることも可能でありそれによりハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状のトランスデューサーを実現することが可能であり、それらを用いた布帛状のセンサーや発電素子を提供することができる。
具体的な例としては、帽子や手袋、靴下などを含む着衣、サポーター、ハンカチ状などの形状をした、タッチパネル、人や動物の表面感圧センサー、関節部の曲げ、捩じり、伸縮を感知するセンサーが挙げられる。例えば人に用いる場合には、接触や動きを検出し、医療用途などの関節などの動きの情報収集、アミューズメント用途、失われた組織やロボットを動かすためのインターフェースとして用いることができる。他には、動物や人型を模したぬいぐるみやロボットの表面感圧センサー、関節部の曲げ、捩じり、伸縮を感知するセンサーとして用いることができる。他には、シーツや枕などの寝具、靴底、手袋、椅子、敷物、袋、旗などの表面感圧センサーや形状変化センサーとして用いることができる。
さらには、本発明のセンサーは布帛状であるため、伸縮性と柔軟性があるので、あらゆる構造物の全体あるいは一部の表面に貼付あるいは被覆することにより表面感圧センサー、形状変化センサーとして用いることができる。
なお、本発明のトランスデューサーは電気信号を出力として取り出すことができるため、この電気信号を他のデバイスを動かすための電力源あるいは蓄電するなど、発電素子として用いることもできる。具体的には、人、動物、ロボット、機械など自発的に動くものの可動部に用いることによる発電、靴底、敷物、外部から圧力を受ける構造物の表面での発電、流体中での形状変化による発電、などが挙げられる。流体中での形状変化により電気信号を発するために、流体中の帯電性物質を吸着させたり付着を抑制させたりすることも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、2本の導電性繊維および1本の圧電性繊維を含み、これらが略同一平面上に、導電性繊維、圧電性繊維、導電性繊維の順序に配置されている圧電単位を含む圧電素子からなる電気信号を出力するトランスデューサーによって達成される。以下に各構成について説明する。
【0010】
(導電性繊維)
導電性繊維の直径は1μm〜10mmであることが好ましく、より好ましくは10μm〜5mm、さらに好ましくは0.1mm〜2mmである。直径が小さいと強度が低下しハンドリングが困難となり、また、直径が大きい場合にはフレキシブル性が犠牲になる。導電性繊維の断面形状としては円または楕円であることが、圧電素子の設計および製造の観点で好ましいが、これに限定されない。
導電性繊維の材料としては、導電性を示すものであればよく、繊維状とする必要があることから、導電性高分子であることが好ましい。導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、炭素繊維などを用いることができる。また、高分子をマトリックスとして繊維状または粒状の導電性フィラーを入れたものでも良い。さらには、繊維の表面に導電性を有する層を形成したものであってもよい。導電性を有する層としては、公知の導電性高分子や繊維状または粒状の導電性フィラーをコーティングするなどできる。フレキシブルかつ長尺の電気特性の安定性の観点からより好ましくは炭素繊維である。圧電性高分子からの電気出力を効率よく取り出すため、電気抵抗は低いことが好ましく、体積抵抗率としては10
−1Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは10
−2Ω・cm以下、さらに好ましくは10
−3Ω・cm以下である。
一般の炭素繊維はフィラメントがいくつか集まった束となったマルチフィラメントが普通であるが、これを用いてもよく、また、一本からなるモノフィラメントだけを用いるのでも良い。マルチフィラメントを利用した方が電気特性の長尺安定性の観点で好ましい。モノフィラメントの径としては1μm〜5000μmであり、好ましくは2μm〜100μmである。さらに好ましくは3μm〜10μmである。フィラメント数としては、10本〜100000本が好ましく、より好ましくは100本〜50000本、さらに好ましくは500本〜30000本である。
【0011】
(圧電性繊維)
圧電性繊維は圧電性を有する繊維である。圧電性繊維は圧電性高分子からなることが好ましい。圧電性高分子としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリ乳酸など圧電性を示す高分子であれば利用できるが、主としてポリ乳酸を含むことが好ましい。ポリ乳酸は溶融紡糸後に延伸によって容易に配向して圧電性を示し、ポリフッ化ビニリデンなどで必要となる電界配向処理が不要な点で生産性に優れている。さらに、ポリ乳酸からなる圧電性繊維はその軸方向への引張や圧縮応力では、分極が小さく、圧電素子として機能させることが困難であるが、せん断応力によっては比較的大きな電気出力が得られ、せん断応力を圧電性高分子に付与しやすい構成体を有する本発明の圧電素子においては好ましい。
圧電性高分子は、主としてポリ乳酸を含むことが好ましい。「主として」とは、好ましくは90モル%、より好ましくは95モル%、さらに好ましくは98モル%以上のことを言う。
【0012】
ポリ乳酸としては、その結晶構造によって、L−乳酸、L−ラクチドを重合してなるポリ−L−乳酸、D−乳酸、D−ラクチドを重合してなるポリ−D−乳酸、さらに、それらのハイブリッド構造からなるステレオコンプレックスポリ乳酸などがあるが、圧電性を示すものであればいずれも利用できる。圧電率の高さの観点で好ましくは、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸である。ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸はそれぞれ、同じ応力に対して分極が逆になるために、目的に応じてこれらを組み合わせて使用することも可能である。ポリ乳酸の光学純度は99%以上であることが好ましく、より好ましくは99.3%以上、さらに好ましくは99.5%以上である。光学純度が99%未満であると著しく圧電率が低下する場合があり、圧電素子表面への擦り力によって十分な電気出力を得ることが難しくなる場合がある。圧電性高分子が、主としてポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を含み、これらの光学純度は99%以上であることが好ましい。
圧電性高分子は被覆繊維の繊維軸方向に一軸配向しかつ結晶を含むものであることが好ましく、より好ましくは結晶を有する一軸配向ポリ乳酸である。なぜなら、ポリ乳酸はその結晶状態および一軸配向において大きな圧電性を示すためである。
ポリ乳酸は加水分解が比較的早いポリエステルであるから、耐湿熱性が問題となる場合においては、公知の、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物などの加水分解防止剤を添加してもよい。また、必要に応じてリン酸系化合物などの酸化防止剤、可塑剤、光劣化防止剤などを添加して物性改良してもよい。
【0013】
また、ポリ乳酸は他のポリマーとのアロイとして用いてもよいが、ポリ乳酸を主たる圧電性高分子として用いるならば、アロイの全重量を基準として少なくとも50重量%以上でポリ乳酸を含有していることが好ましく、さらに好ましくは70重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。
アロイとする場合のポリ乳酸以外のポリマーとしては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート共重合体、ポリメタクリレート等が好適な例として挙げられるが、これらに限定されるものではなく、本発明で目的とする圧電性効果を奏する限り、どのようなポリマーを用いてもよい。
圧電性繊維はフィラメントがいくつか集まった束となったマルチフィラメントが普通であるが、これを用いてもよく、また、一本からなるモノフィラメントだけを用いるのでも良い。マルチフィラメントを利用した方が圧電特性の長尺安定性の観点で好ましい。モノフィラメントの径としては1μm〜5000μmであり、好ましくは5μm〜500μmである。さらに好ましくは10μm〜100μmである。フィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは10本〜50000本、さらに好ましくは100本〜10000本である。
このような圧電性高分子を圧電性繊維とするためには、高分子を繊維化するための公知の手法を、本発明の効果を奏する限りいずれも採用することができ、圧電性高分子を押し出し成型して繊維化する手法、圧電性高分子を溶融紡糸して繊維化する手法、圧電性高分子を乾式あるいは湿式紡糸により繊維化する手法、圧電性高分子を静電紡糸により繊維化する手法等を採用することができる。これらの紡糸条件は、採用する圧電性高分子に応じて公知の手法を適用すればよく、通常は工業的に生産の容易な溶融紡糸法を採用すればよい。
なお、上述の通りに、圧電性高分子がポリ乳酸である場合には、一軸延伸配向し、かつ結晶を含むとより大きな圧電性を示すことから、繊維は延伸することが好ましい。
【0014】
(略同一平面上)
本発明の圧電素子は、2本の導電性繊維と1本の圧電性繊維とは、略同一平面上に配置される。ここで略同一平面上とは、3本の繊維の繊維軸が略平面上に配置されることを意味し、「略」とは、繊維同士の交差点で厚みが生じることが含まれることを意味するものである。
例えば、2本の平行な導電性繊維の間に、1本の圧電性繊維が更に平行に引き揃えられた形態は、略同一平面上にある形態である。また、当該1本の圧電性繊維の繊維軸を、当該2本の平行な導電性繊維とは平行でない状態に傾けていても、略同一平面上にある。さらに、1本の導電性繊維と1本の圧電性繊維とを平行に引き揃え、もう1本の導電性繊維を、この引き揃えられた導電性繊維と圧電性繊維とに、交差させたとしても略同一平面上にある。
略平面上に配置されることで、当該圧電単位を組み合わせて、繊維状、布帛状の圧電素子を形成しやすく、繊維状、布帛状の形態の圧電素子を利用すれば、トランスデューサーの形状設計に自由度を増すことができる。
これらの、圧電繊維と導電繊維の関係は検出したい形状変化により適宜選択される。
【0015】
(配置順序)
圧電単位は、導電性繊維、圧電性繊維、導電性繊維が、この順に配置されている。このように配置することで、圧電単位の2本の導電性繊維同士が接触することがなくなり、導電性繊維に他の手段、例えば絶縁性物質を被覆するなどの技術を適用しなくても圧電単位として有効に機能させることができる。
この際、2本の導電性繊維が1本の圧電性繊維と互いに接点を有していることが望ましいが、4mm以内の範囲であれば接点を有していなくてもよく、より好ましくは3mm以下、さらに好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1mm以下、最も好ましくは0.5mm以下である。4mm以上であると圧電性繊維の形状変化に伴う電気出力が小さくなり、トランスデューサーとして用いることが困難となる。
形態としては、導電性繊維、圧電性繊維、導電性繊維が互いに略平行に、この順に配置された形態が挙げられる。また、2本の導電性繊維が平行に配置され、1本の圧電性繊維が、これら2本の導電性繊維に交わるように配置された形態が挙げられる。さらには、2本の導電性繊維を経糸(または緯糸)として配し、1本の圧電性繊維を緯糸(または経糸)として配してもよい。この場合は2本の導電性繊維同士は接触していないことが好ましく、2本の導電性繊維の間には好ましくは絶縁性物質、例えば絶縁性繊維を介在させる形態の他、導電性繊維が接触しやすい表面にのみ絶縁性物質を被覆し、圧電性繊維とは直接導電性繊維が接触するようにする形態も採用することができる。
【0016】
(絶縁性繊維)
本発明の圧電単位は、絶縁性繊維を含み、該絶縁性繊維は、圧電単位中の導電性繊維が、他の導電性繊維並びに圧電性繊維に接しないように導電性繊維と圧電性繊維の間に配されることがある。この際、絶縁性繊維は布帛の柔軟性を向上する目的で伸縮性のある素材、形状を有する繊維を用いることができる。また、圧電単位中の導電性繊維が、他の圧電単位中の導電性繊維並びに圧電性繊維に接しないように配されることもある。本発明での配置順序は通常は、[導電性繊維/圧電性繊維/導電性繊維]であるので、絶縁性繊維は、[絶縁性繊維/導電性繊維/圧電性繊維/導電性繊維]ないし[絶縁性繊維/導電性繊維/圧電性繊維/導電性繊維/絶縁性繊維]として配置される。この際も、絶縁性繊維は布帛の柔軟性を向上する目的で伸縮性のある素材、形状を有する繊維を用いることができる。
圧電単位にこのように絶縁性繊維を配置することで、圧電単位を複数組み合わせた場合でも導電性繊維が接触することがなく、トランスデューサーとしての性能を向上させることが可能である。
このような絶縁性繊維としては、体積抵抗率が10
6Ω・cm以上であれば用いることができ、より好ましくは10
8Ω・cm以上、さらに好ましくは10
10Ω・cm以上がよい。
【0017】
絶縁性繊維として例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の他、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。これらに限定されるものではなく、公知の絶縁性繊維を任意に用いることができる。さらに、これらの絶縁性繊維を組み合わせて用いてもよく、絶縁性を有しない繊維と組み合わせ、全体として絶縁性を有する繊維としてもよい。
また、布帛に柔軟性を持たせる目的で、公知のあらゆる形状の繊維も用いることができる。
【0018】
(圧電単位の組み合わせ形態)
本発明において、複数の並列した圧電単位を含有する織編物であることが好ましい。このような形態であることで、圧電素子として、形状の変形自由度(フレキシブルさ)を向上させることが可能である。
このような織編物形状は複数の圧電単位を含み、圧電素子としての機能を発揮する限り何らの限定は無い。織物形状または編物形状を得るには、通常の織機または編機により製編織すればよい。
織物の織組織としては、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。
編物の種類は、丸編物(緯編物)であってもよいし経編物であってもよい。丸編物(緯編物)の組織としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が好ましく例示される。経編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等が例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。更には、カットパイルおよび/またはループパイルからなる立毛部と地組織部とで構成される立毛織物、立毛編み物であってもよい。
【0019】
なお、圧電単位が織り組織ないし編み組織に組み込まれて存在する場合、圧電性繊維そのものに屈曲部分が存在するが、圧電素子としての圧電性能を効率よく発現させるためには、圧電性繊維の屈曲部分が小さい方が好ましい。従って、織物と編み物とでは織物の方が好ましい。
この場合でも、上述の通り、圧電性繊維の屈曲部分が小さい方が、圧電性能が効率よく発現することから、織組織としては平織よりは綾織りが好ましく、綾織よりもサテン織(朱子織)が好ましい。特にサテン織(朱子織)のなかでも、飛び数が3〜7の範囲にあると、織組織の保持と圧電性性能とを高い水準で発揮することから好ましい。
なお、織組織は、検出したい形状変化により適宜選択される。例えば曲げを検出したい場合には、平織構造、圧電性繊維と導電性繊維が平行関係であることが好ましく、捩じりを検出したい場合には、朱子織構造、圧電性繊維と導電性繊維が直行関係であることが好ましい。
また、圧電性繊維は帯電しやすいため、誤作動しやすくなる場合がある。このような場合には、信号を取り出そうとする圧電繊維を接地(アース)して使用することもできる。接地(アース)する方法としては信号を取り出す導電性繊維とは別に、導電性繊維を配置することが好ましい。この場合、導電性繊維の体積抵抗率としては10
−1Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは10
−2Ω・cm以下、さらに好ましくは10
−3Ω・cm以下である。
【0020】
(複数の圧電素子)
また、圧電素子を複数並べて用いることも可能である。並べ方としても一次元的に一段で並べても、二次元的に重ねて並べても良く、さらには布状に編織して用いたり、組み紐に製紐したりしてもよい。それによって布状、紐状の圧電素子を実現することも可能となる。布状、紐状にするにあたっては、本発明の目的を達成する限り、圧電素子以外の他の繊維と組み合わせて、混繊、交織、交編等を行ってもよく、また、樹脂などに組み込んで使ってもよい。
【0021】
(圧電素子の適用技術)
本発明のトランスデューサーはいずれの様態であっても、表面への接触、圧力、形状変化を電気信号として出力することができる。
具体的な例としては、帽子や手袋、靴下などを含む着衣、サポーター、ハンカチ状などの形状をした、タッチパネル、人や動物の表面感圧センサー、関節部の曲げ、捩じり、伸縮を感知するセンサーが挙げられる。例えば人に用いる場合には、接触や動きを検出し、医療用途などの関節などの動きの情報収集、アミューズメント用途、失われた組織やロボットを動かすためのインターフェースとして用いることができる。他には、動物や人型を模したぬいぐるみやロボットの表面感圧センサー、関節部の曲げ、捩じり、伸縮を感知するセンサーとして用いることができる。他には、シーツや枕などの寝具、靴底、手袋、椅子、敷物、袋、旗などの表面感圧センサーや形状変化センサーとして用いることができる。
さらには、本発明のセンサーは布帛状であるため、伸縮性と柔軟性があるので、あらゆる構造物の全体あるいは一部の表面に貼付あるいは被覆することにより表面感圧センサー、形状変化センサーとして用いることができる。
なお、本発明のトランスデューサーは電気信号を出力として取り出すことができるため、この電気信号を他のデバイスを動かすための電力源あるいは蓄電するなど、発電素子として用いることもできる。具体的には、人、動物、ロボット、機械など自発的に動くものの可動部に用いることによる発電、靴底、敷物、外部から圧力を受ける構造物の表面での発電、流体中での形状変化による発電、などが挙げられる。流体中での形状変化により電気信号を発するために、流体中の帯電性物質を吸着させたり付着を抑制させたりすることも可能である。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に記載するが本発明はこれによって何らの限定を受けるものではない。
【0023】
(ポリ乳酸の製造)
実施例において用いたポリ乳酸は以下の方法で製造した。
L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100重量部に対し、オクチル酸スズを0.005重量部加え、窒素雰囲気下、撹拌翼のついた反応機にて180℃で2時間反応させ、オクチル酸スズに対し1.2倍当量のリン酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを減圧除去し、チップ化し、ポリ−L−乳酸(PLLA1)を得た。得られたPLLA1の重量平均分子量は15.2万、ガラス転移点(Tg)は55℃、融点は175℃であった。
【0024】
(圧電性繊維)
240℃にて溶融させたPLLA1を24ホールのキャップから20g/minで吐出し、887m/minにて引き取った。この未延伸マルチフィラメント糸を80℃、2.3倍に延伸し、100℃で熱固定処理することにより84dTex/24filamentのマルチフィラメント一軸延伸糸1を得た。このマルチフィラメント一軸延伸糸1を8束まとめて、圧電性繊維1とした。
【0025】
(導電性繊維)
東邦テナックス(株)製の炭素繊維マルチフィラメントである品名『HTS40 3K』を導電性繊維1として用いた。当該導電性繊維1は直径7.0μmのフィラメント3000本を1束としたマルチフィラメントであり、体積抵抗率は1.6×10
−3Ω・cmであった。
【0026】
(絶縁性繊維)
280℃にて溶融させたポリエチレンテレフタレートを48ホールのキャップから45g/minで吐出し、800m/minにて引き取った。この未延伸糸を80℃、2.5倍に延伸し、180℃で熱固定処理することによりすることにより167dTex/48フィラメントのマルチフィラメント延伸糸を得た。このマルチフィラメント延伸糸を4束まとめて、絶縁性繊維1とした。
【0027】
[実施例1]
図1に示すように経糸に絶縁性繊維1を配し、緯糸に圧電性繊維1、導電性繊維1を交互に配した平織物1を作製した。
図2に示すように経糸に圧電性繊維1と絶縁性繊維1とを交互に配し、緯糸に導電性繊維1と絶縁性繊維1を交互に配した朱子織物1を作製した。
上記した平織物1および朱子織物1を
図3に示すように袖に縫い付けた。
それぞれの織物中の圧電性繊維を挟む一対の導電性繊維を信号線としてオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に接続した。当該信号線を繋いだ状態で腕を曲げたり捩じったりしたところ、
図4〜7に示すような電圧信号が得られ、曲げと捩じりの方向により、それぞれ独立に逆の信号を得ることができ、非常に柔軟性のある布帛状の関節センサーを得ることができた。