(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-204711(P2015-204711A)
(43)【公開日】2015年11月16日
(54)【発明の名称】ステッピングモータ駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 8/40 20060101AFI20151020BHJP
H02P 5/00 20060101ALI20151020BHJP
【FI】
H02P8/00 306
H02P7/67 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-83651(P2014-83651)
(22)【出願日】2014年4月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直彦
【テーマコード(参考)】
5H572
5H580
【Fターム(参考)】
5H572BB03
5H572CC01
5H572DD08
5H572EE05
5H572HC01
5H572HC04
5H572HC07
5H580BB01
5H580DD05
5H580FA01
5H580FB03
5H580FB05
(57)【要約】
【課題】優先度の高いステッピングモータを優先的に駆動しつつ、優先度の低いステッピングモータの駆動遅れ時間を短縮する。
【解決手段】駆動可能なステッピングモータの数よりも多い複数のステッピングモータの同時駆動要求がある場合には、時分割制御によって複数のステッピングモータを駆動するようにしたモータ制御手段35を有したステッピングモータ駆動制御装置において、モータ制御手段35は、複数のステッピングモータにそれぞれ優先度を設定し、優先度の高いステッピングモータ5aを含む複数のステッピングモータの同時駆動要求がある場合に、優先度の高いステッピングモータ5aの移動要求量が所定値より大きいときは、時分割制御の割り当て比を、優先度の高いステッピングモータ5aの移動要求量に応じて定めるようにした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数設けられたステッピングモータの個数よりも少ない数だけ前記ステッピングモータを駆動可能とされ、駆動可能なステッピングモータの数よりも多い複数のステッピングモータの同時駆動要求がある場合には、時分割制御によって前記複数のステッピングモータを駆動するようにしたモータ制御手段を有したステッピングモータ駆動制御装置において、前記モータ制御手段は、前記複数のステッピングモータにそれぞれ優先度を設定し、優先度の高いステッピングモータを含む複数のステッピングモータの同時駆動要求がある場合に、前記優先度の高いステッピングモータの移動要求量が所定値より大きいときは、時分割制御の割り当て比を、前記優先度の高いステッピングモータの移動要求量に応じて定めるようにしたことを特徴とするステッピングモータ駆動制御装置。
【請求項2】
前記モータ制御手段は、前記優先度の高いステッピングモータを含む複数のステッピングモータの同時駆動要求がある場合に、前記優先度の高いステッピングモータの移動要求量が所定値より小さいときは、前記割り当て比を、同時駆動要求のあるステッピングモータで均等としたことを特徴とする請求項1記載のステッピングモータ駆動制御装置。
【請求項3】
前記モータ制御手段は、前記優先度の高いステッピングモータを含む複数のステッピングモータの同時駆動要求がある場合に、前記優先度の高いステッピングモータの移動要求量が所定値より大きいときは、前記割り当て比を、同時駆動要求のある各ステッピングモータの優先度と、各ステッピングモータの移動要求量とに応じて定めるようにしたことを特徴とする請求項1または2記載のステッピングモータ駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数設けられたステッピングモータの個数よりも少ない数だけステッピングモータを駆動可能とされ、駆動可能なステッピングモータの数よりも多い複数のステッピングモータの同時駆動要求がある場合には、時分割制御によって複数のステッピングモータを駆動するようにしたステッピングモータ駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のステッピングモータ駆動制御装置においては、特許文献1に開示されている給湯装置のように、ステッピングモータの駆動電源容量を小さくしても問題なく複数のステッピングモータを駆動可能にするために、時分割制御を行っているものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−165495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この従来のものでは、単に同時駆動要求のあるステッピングモータを時分割制御しているだけであるため、一方のステッピングモータを緊急に大きく駆動させたい状況では、緊急に大きく駆動させたいステッピングモータの駆動終了までの時間が長期化し、問題となることが考えられる。
【0005】
給湯装置においては、例えば、給湯温度、給湯設定温度の急変や給湯流量の急変によって、給湯混合弁のステッピングモータを大きく駆動させたい状況が発生したときに、他の弁のステッピングモータの駆動要求が重なっていた場合に、単純に均等分割した時分割制御を行うと給湯混合弁の駆動速度が遅くなり、給湯混合弁の駆動の遅れは給湯温度が目標と大きく乖離した状況を長期化させ、問題となる。
【0006】
ここで、そのような場合に、他の弁のステッピングモータの駆動を止めて優先度の高い給湯混合弁のステッピングモータの駆動のみを行えば、給湯混合弁の駆動遅れという問題は解決するが、他の弁の駆動開始が大きく遅れ、新たな問題が発生することが考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、優先度の高いステッピングモータを優先的に駆動しつつ、優先度の低いステッピングモータの駆動遅れ時間を短縮することができるステッピングモータ駆動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するため、請求項1では、複数設けられたステッピングモータの個数よりも少ない数だけ前記ステッピングモータを駆動可能とされ、駆動可能なステッピングモータの数よりも多い複数のステッピングモータの同時駆動要求がある場合には、時分割制御によって前記複数のステッピングモータを駆動するようにしたステッピングモータ駆動制御装置において、前記複数のステッピングモータにそれぞれ優先度を設定し、優先度の高いステッピングモータを含む複数のステッピングモータの同時駆動要求がある場合に、前記優先度の高いステッピングモータの移動要求量が所定値より大きいときは、時分割制御の割り当て比を、前記優先度の高いステッピングモータの移動要求量に応じて定めるようにした。
【0009】
また、請求項2では、前記優先度の高いステッピングモータを含む複数のステッピングモータの同時駆動要求がある場合に、前記優先度の高いステッピングモータの移動要求量が所定値より小さいときは、前記割り当て比を、同時駆動要求のあるステッピングモータで均等とした。
【0010】
また、請求項3では、前記優先度の高いステッピングモータを含む複数のステッピングモータの同時駆動要求がある場合に、前記優先度の高いステッピングモータの移動要求量が所定値より大きいときは、前記割り当て比を、同時駆動要求のある各ステッピングモータの優先度と、各ステッピングモータの移動要求量とに応じて定めるようにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駆動電源容量を小さくできるため低コスト化できると共に、優先度の高いステッピングモータを優先的に駆動しつつ、優先度の低いステッピングモータも駆動速度を落としながらもほぼ同時に駆動することができ、駆動遅れ時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】同一実施形態のステッピングモータ駆動制御装置の概略構成図
【
図3】同一実施形態の時分割制御の割り当て比の計算例
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の一実施形態のステッピングモータ駆動制御装置を備えた給湯装置を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は給湯装置の概略構成図で、1は湯水を貯湯する貯湯タンク、2は貯湯タンク1底部に給水する給水管、3は貯湯タンク1頂部から出湯する出湯管、4は給水管2から分岐された給水バイパス管、5は出湯管3からの湯と給水バイパス管4からの水とを混合する給湯混合弁、6は給湯混合弁5の出口と給湯栓7とを接続する給湯管、8は給湯管6を流れる湯水の流量を検出する給湯流量センサ、9は給湯管6を流れる湯水の温度を検出する給湯温度センサである。
【0015】
10は出湯管3からの湯と給水バイパス管4からの水とを混合する風呂混合弁、11は風呂混合弁10からの湯水を浴槽12へ湯張りするための湯張り管、13は湯張り管11を流れる湯水の流量を検出する湯張り流量センサ、14は湯張り管11を流れる湯水の温度を検出する湯張り温度センサ、15は湯張り管11の流路を開閉する湯張り電磁弁である。
【0016】
ここで、給湯混合弁5と風呂混合弁10はそれぞれステッピングモータ5a、10aにより駆動されているものである。
【0017】
16は貯湯タンク1内に配置されたステンレス製の蛇管により構成され、浴槽12内の浴槽水を加熱するための風呂熱交換器、17は浴槽12と風呂熱交換器16とを浴槽水が循環可能に接続する風呂循環回路、18は浴槽12内の浴槽水を吸い込んで風呂熱交換器16へ圧送して浴槽水を循環させるための風呂循環ポンプ、19は浴槽水の温度を検出するための風呂温度センサ、20は水圧を検知することにより浴槽12内の水位を検出する水位センサであり、風呂循環回路17途中には湯張り管11が接続されている。
【0018】
21は貯湯タンク1内の湯水を加熱するためのヒートポンプ式の加熱手段、22は貯湯タンク1と加熱手段21とを湯水が循環可能に接続する加熱循環回路である。ここで、ヒートポンプ式の加熱手段21は、圧縮機23、水冷媒熱交換器24、膨張弁25、空気熱交換器26を備えて構成されている。
【0019】
27はリモートコントローラで、給湯装置の作動状態や設定状態を表示する表示部28と、給湯設定温度や風呂設定温度を変更操作するための温度変更スイッチ29と、浴槽12への湯張りを開始させるための風呂スイッチ30と、その他のスイッチとを備えている。
【0020】
31はこの給湯装置の作動を制御する制御手段で、給湯流量センサ8、給湯温度センサ9、湯張り流量センサ13、湯張り温度センサ14、風呂温度センサ19、水位センサ20の検出値が入力され、給湯混合弁5、風呂混合弁10、湯張り電磁弁15、風呂循環ポンプ18、加熱手段21の作動を制御すると共に、リモートコントローラ27と必要な情報を送受信可能に接続されている。ここで、制御手段31は、MPU等の論理回路を有してメモリを参照しつつ予め記憶されているプログラムに従って作動を制御するものである。
【0021】
次に
図2に示すステッピングモータ駆動制御装置について説明すると、給湯混合弁5のステッピングモータ5aおよび風呂混合弁10のステッピングモータ10aは、各ドライバ回路32、33(ここではドライバIC)により正転または逆転させるように駆動されるもので、各ドライバ回路32、33は、商用電源から低圧直流化された電源34より供給される電力により駆動されるものである。
【0022】
ここで、電源34は、ステッピングモータ5a、10aの一方を単独で駆動する際に必要な電力容量よりも大きく、かつステッピングモータ5a、10aを同時に駆動する際に必要な電力容量よりも小さい電力容量しか供給することができないもので、供給電力の低容量化によって電源回路の低コスト化を実現している。
【0023】
35は、制御手段31内に設けられたモータ制御手段で、給湯温度と給湯設定温度との温度差あるいは湯張り温度と風呂設定温度との温度差に応じたモータの移動要求量に応じて駆動パルスをドライバ回路32、33へ随時供給してステッピングモータ5a、10aを駆動するものである。
【0024】
このモータ制御手段35では、予めステッピングモータ5a、10aに優先度を設定しており、ここでは給湯栓7からの湯がそのまま直接肌に触れる可能性の高い給湯混合弁5を駆動するステッピングモータ5aの優先度を風呂混合弁10を駆動するステッピングモータ10aよりも高く設定している。
【0025】
そして、制御手段31は、給湯栓7が開かれて給湯流量センサ8が最低作動流量以上の流量を検出すると、給湯温度センサ9が検出する給湯温度が、リモートコントローラ27で設定された給湯設定温度に一致するようにフィードフォワード制御、フィードバック制御を用いて、給湯混合弁5を駆動するステッピングモータ5aの移動要求量を算出し、モータ制御手段35が移動要求量に応じて駆動パルスをドライバ回路32に随時供給してステッピングモータ5aを駆動制御することで、給湯動作を行う。
【0026】
また、リモートコントローラ27の風呂スイッチ30が操作されると、制御手段31は、湯張り温度センサ14が検出する湯張り温度が、リモートコントローラ27で設定された風呂設定温度に一致するようにフィードフォワード制御、フィードバック制御を用いて、風呂混合弁10を駆動するステッピングモータ10aの移動要求量を算出し、モータ制御手段35が移動要求量に応じて駆動パルスをドライバ回路33に随時供給してステッピングモータ10aを駆動制御することで、湯張り動作を行う。
【0027】
ここで、給湯要求と湯張り要求が重複した場合、モータ制御手段35は、優先度の高い給湯混合弁5の移動要求量を確認し、移動要求量が予め定めた所定値未満であると判定すると、所定の時間毎あるいは所定の駆動量毎に時分割制御して、時分割制御の割り当て比を均等にし、ステッピングモータ5aとステッピングモータ10aを順次駆動駆動するようにしている。
【0028】
このように、優先度の高い給湯混合弁5の移動要求量が小さいときは、給湯温度と給湯設定温度の差が小さく、均等分割した時分割制御を行っても、悪影響が少ないもので、優先度の低い風呂混合弁10で移動要求量が大きかったとしても、風呂混合弁10の温調制御が給湯混合弁5の温調制御とほぼ同時に行われ、温調制御の開始までの待機時間をほぼなくせると共に、優先度の高い給湯混合弁5の移動要求量が小さいために、均等分割した時分割制御を行っていても、給湯混合弁5の移動が短時間で完了し、その後は、優先度の低い風呂混合弁10の温調制御を単独で行うことができる。
【0029】
一方、給湯要求と湯張り要求が重複した場合で、優先度の高い給湯混合弁5の移動要求量が所定以上であったときは、モータ制御手段35は、優先度の高い給湯混合弁5の移動要求量に応じて、時分割制御の割り当て比を定めるようにしている。
【0030】
具体的には、
図3に示す計算表の例のように、予め設定されている優先度に応じた優先度係数(優先度の比率)と、移動要求量に所定の係数(ここでは1/10)を掛けた移動係数とを合算した値を時分割制御の割り当て比として設定し、この例では、4.5:1.3の割り当て比で給湯混合弁5のステッピングモータ5aと風呂混合弁10のステッピングモータ10aとを時分割制御するようにしている。なお、ここでは、優先度の低いステッピングモータ10aの移動要求量も考慮して時分割制御の割り当て比を設定しているが、優先度の高いステッピングモータ5aの移動要求量のみを用いて時分割制御の割り当て比を設定するようにしてもよい。
【0031】
このように、優先度が高い給湯混合弁5の移動要求量が大きいときは、給湯温度と給湯設定温度の差が大きく、単純に均等分割した時分割制御を行うと、給湯温度が目標と大幅に乖離した状態が長く続いて問題となるが、優先度が高い方の移動要求量に応じて時分割制御の割り当て比を定めているので、優先度の高い給湯混合弁5は時分割制御の割り当て比を大きく優先的に温調制御されて、給湯温度を目標に向けて迅速に収束させることができると共に、優先度の低い風呂混合弁10においても同時に温調制御することができるため、湯張り温度が目標と大幅に乖離した状態が長く続くことを回避することができる。
【0032】
なお、給湯装置の給湯混合弁と風呂混合弁とを例示して説明したが、これに限られず、本発明は他の用途の弁やその他の機能部品の駆動動力源のステッピングモータに適用してもよく、また、給湯装置以外の用途の装置に適用することを妨げるものではない。
【0033】
また、上記実施形態では、同時駆動要求の発生し得るステッピングモータの数を2として説明したが、同時駆動要求の発生し得るステッピングモータの数を3以上の数としてもよいもので、その場合、3以上の同時駆動要求が発生した場合に、優先度の高いステッピングモータの移動要求量が小さい場合は、単純に均等分割した時分割制御を行うようにしたり、優先度の一番低いステッピングモータは駆動を待機させるようにしてもよい。
【0034】
さらに、上記実施形態では、同時駆動可能なステッピングモータの数が1の場合について説明したが、2以上の数Nのステッピングモータを同時駆動可能な電源とした場合に、N+1以上の数のステッピングモータが同時駆動要求の発生し得る構成を前提としてもよく、この場合、優先度の高いステッピングモータを含むN+1の数のステッピングモータの同時駆動要求があるとき、優先度の高いステッピングモータを通常駆動し、優先度の高くないステッピングモータを均等分割した時分割制御を行い、優先度の高いステッピングモータを含むN+2の数のステッピングモータの同時駆動要求があり、かつ優先度の高いステッピングモータの移動要求量が所定値より大きいとき、優先度の高いステッピングモータと他の一つのステッピングモータを優先度の高いステッピングモータの移動要求量に応じて時分割制御の割り当て比を設定し、残る2つの優先度の高くないステッピングモータを均等分割した時分割制御を行うようにしてもよいものである。
【符号の説明】
【0035】
5a ステッピングモータ
10a ステッピングモータ
35 モータ制御手段