【解決手段】内部に中空を有する立体構造のペットフードであって、ペットフード1個当たりの外体積換算密度(中空部分が中実であるとして計算した立体構造の体積あたりの質量)が0.10〜0.60g/cm
内部に中空を有する立体構造のペットフードであって、ペットフード1個当たりの外体積換算密度(中空部分が中実であるとして計算した立体構造の体積あたりの質量)が0.10〜0.60g/cm3の範囲にあるペットフード。
ペットフード中の油脂の脂肪酸組成のn−6系脂肪酸/n−3系脂肪酸の脂肪酸組成比(質量比)が、10:1〜1:1であり、且つ、飽和脂肪酸が35質量%以下である、請求項6に記載のペットフード。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のとおり、高タンパク質ペットフードのような高栄養価の飼料や、嗜好性が高いペットフードは、ペットの肥満を引き起こしやすいという問題がある。また、高タンパク質あるいは高栄養価のペットフードは、密度が高くなりやすいため、通常のペットフードと比べて平均粒子密度(1つの粒子の外周を体積とした場合の密度)あるいは嵩密度(一定容積の容器に複数の粒子を充填した場合のその容積に対する密度)が高く、規定量(基準の給餌容量)が通常のペットフードより少なくなることがあるが、飼い主は規定量よりも増量して給餌しがちであり、これも肥満を引き起こす原因である。
また、一般のペットフードであっても、飼い主が規定量よりも過剰にペットフードを与えることによりペットフードの摂取量は増加して、これが肥満につながる場合もある。
従って、本発明の課題は、過剰給餌を防ぎ、それによりペットの肥満を防止するのに有効なペットフードを提供することである。
さらに、高タンパク質のペットフードを従来の中実の俵型あるいは円柱状の形状で製造すると硬度が高くなり、歯が弱い高齢期のペットや、噛む力の弱い幼齢期のペットには食べにくいという問題がある。したがって、本発明の他の課題は、高タンパク質であっても高齢期あるいは幼齢期のペットに食べやすいペットフードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、従来技術のように、素材の選択あるいは組合せにより高タンパク質でかつ低カロリーのペットフードを提供するのではなく、高タンパク質でありながら、ペットフード一粒あたりの平均粒子密度あるいは嵩密度を低減することにより、飼い主によるペットフードの過剰給餌を防止して、ペットの肥満を防止することができるペットフードを提供する。
すなわち、内部に中空を有する立体構造のペットフードであって、ペットフード1個当たりの外体積換算密度(中空部分が中実であるとして計算した立体構造の体積あたりの質量)が0.10〜0.60g/cm
3の範囲にあるペットフードとすることにより、給餌の際の見かけ容量が増加するため、飼い主によるペットフードの過剰給餌を防止することができる。また、本発明のペットフードは、内部に中空を有する構造のため、比較的高密度で硬くなりやすい高タンパク質フードにも関わらず、ペットが容易にかみ砕くことができ食べやすいという特性を示す。さらに、本発明のペットフードは、内部に中空を有する構造のため、比較的高密度で吸水しにくい高タンパク質フードにも関わらず、素早い吸水性を示す。
【0006】
本発明は以下を提供する。
(1) 内部に中空を有する立体構造のペットフードであって、ペットフード1個当たりの外体積換算密度(中空部分が中実であるとして計算した立体構造の体積あたりの質量)が0.10〜0.60g/cm
3の範囲にあるペットフード。
(2) 内部に中空を有する立体構造が、内部に中空を有する筒状構造である(1)記載のペットフード。
(3) 筒状構造の中心軸方向に対し垂直な断面において、断面面積に対する空隙面積の割合が5%以上90%以下であることを特徴とする、(2)記載のペットフード。
(4) ペットフード中のタンパク質含有量が、25質量%以上である、(1)〜(3)のいずれか一に記載のペットフード。
(5) 中空の筒状構造が、円筒状または角筒状である、(2)または(3)のいずれか一に記載のペットフード。
(6) ペットフード中の油脂含有量が、5〜15質量%である、(1)〜(5)のいずれか一に記載のペットフード。
(7) ペットフード中の油脂の脂肪酸組成のn−6系脂肪酸/n−3系脂肪酸の脂肪酸組成比(質量比)が、10:1〜1:1であり、且つ、飽和脂肪酸が35質量%以下である、(6)に記載のペットフード。
(8) 少なくとも一種の不飽和脂肪酸塩と、抗酸化性を有するカラメルとを含むことを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか一に記載のペットフード。
(9) 少なくとも一種の不飽和脂肪酸塩が、不飽和脂肪酸のカルシウム塩であることを特徴とする(8)記載のペットフード。
【発明の効果】
【0007】
本発明のペットフードは動物の健康的な体作りに欠かせないタンパク質や必須脂肪酸を豊富に含むため、栄養機能に優れている。一方で、内部に十分な大きさの中空を有する筒状構造を有していることから、平均粒子密度あるいは嵩密度が小さく、飼い主による過剰給餌による肥満を防止することができる。つまり、給餌の際の見かけ容量が増加するため、飼い主によるペットフードの過剰給餌を防止することができる。
また、内部に中空を有する筒状構造の為、適度な力で粉砕しやすく、小型種や高齢期のペットでも食べやすく、嗜好性に優れる。
また、本発明のペットフードは内部に中空を有するため表面積が大きく、歯が弱い高齢期のペットや、噛む力の弱い幼齢期のペットにおいて、水などを加えて膨潤させてペットフードを与える際、すばやく給水して適度な硬さとなり食べやすくなる。
更に、表面積が大きいため、ドライフードの場合、製造工程中の乾燥時間を短縮し製造効率をあげることができる。乾燥効率が高いため、高度不飽和脂肪酸などの酸化劣化する有用成分を乾燥工程において劣化させないで製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)構造
本発明のペットフードは、内部に中空を有する立体構造である点に1つの特徴がある。
「内部に中空を有する」とは、内部に一定の空間を有する立体形状を意味する。内部に中空を有する立体構造の例としては、内部に中空を有する円錐、角錐(三角錐、四角錐等)、球、樽型構造、筒状(あるいは柱状)(円筒状、角筒状、円柱、角柱等)、円錐台、角錐台等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、本発明のペットフードでは、内部に中空を有し、かつ特定の外体積換算密度を満たすものであれば良く、例えば円錐の底面部分、円柱の上面及び底面部分が閉じた形でも、あるいは開口している形でもよい。
【0010】
本発明のペットフードは、ペットフード1個(1粒)の外周から計算される体積(中空が無く、中実であるとした場合の体積)あたりの質量を意味する「外体積換算密度(g/cm
3)」が、0.10〜0.60g/cm
3の範囲にある。より好ましくは、0.20〜0.55g/cm
3、更に好ましくは0.30〜0.50g/cm
3程度である。
【0011】
本発明のペットフードの構造としては、均一な形状を容易に製造しうるという観点、食べやすさの観点などから、特に内部に中空を有する筒状構造であることが好ましい。
「筒状構造」とは、両端が開口した軸方向に沿って延びた形状であって、軸方向の任意の位置の垂直断面が、どの位置の断面もほぼ一定の大きさとほぼ一定の形状を有する構造を意味する。より具体的には、例えば円筒状あるいは角筒状であるが、これらに限定されない。
【0012】
本発明のペットフードの内部に中空を有する筒状構造において、筒状構造の中心軸方向に対する垂直な断面の断面面積に対する空隙面積の割合は、5%以上90%以下であることが好ましい。前記範囲にあることにより、嵩密度が低くなり、給餌の際の見かけ容量が増加するため、飼い主によるペットフードの過剰給餌を防止することができる。また、高いタンパク質含量にも関わらずペットフードが硬くなりすぎず、また、脆すぎず商品価値を保持できる。断面面積に対する空隙面積の割合は、より好ましくは10%以上70%以下であることが好ましく、20%以上50%以下であることがより好ましい。
断面における空隙の形状は、円形、楕円形、四角形、長方形、星型など、前述した所定の空隙面積の割合を与えることができる形状であればいずれの形状でもよい。また、断面において、複数(2またはそれ以上)の独立した空隙を与える形状であってもよい。
【0013】
本発明の筒状構造を有するペットフードの大きさは、対象のペットの種類、大きさ、年齢により適宜変わるものであるが、例えば、軸に沿った長手方向の長さは、2.5〜20mm程度である。
また、中心軸方向に垂直な断面形状が略円形の場合には、外径aが5〜15mm、内径bが4.6〜14.6mm程度であることが好ましい。
本発明の筒状構造を有するペットフードは、「薄い部材」からなる筒状構造であることが好ましい。すなわち、本発明のペットフードを構成する部材が、薄い部材からなっていることを意味する。「薄い」とは、例えば、0.2〜4.0mm程度、より好ましくは1.0〜2.5mm程度の厚さである。
【0014】
(2)密度
本発明のペットフードの嵩密度は、0.1〜0.4g/cm
3の範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.15〜0.35g/cm
3、更に好ましくは0.20〜0.30g/m
3程度である。このような範囲において特に本発明の効果が顕著となる。
本発明において、「嵩密度」とは、300ml程度のカップに天面まで試料を入れ、飼料の質量を測定し、用いたカップの体積で除して計算することができる。
【0015】
(3)ペットフード形成材料
本発明のペットフードを形成する材料は特に限定されない。
しかし、高密度なペットフードや、あげ過ぎによる肥満を招きやすい高タンパク質あるいは高栄養価のペットフードにおいて特に本発明は効果を奏するということができる。
ペットフード中のタンパク質含有量は25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。更に好ましくは35質量%以上である。
また、本発明のペットフード形成材料の密度は0.1〜2.0g/cm
3の範囲であることが好ましく、0.25〜1.0g/cm
3の範囲であることがより好ましい。
【0016】
ペットフードの基本配合は、従来公知の様々なものを使用することができる。
例えば、穀類(とうもろこし、マイロ、小麦、大麦、玄米、エン麦、小麦粉等)、でん粉類(コーンスターチ、ポテトスターチ、タピオカスターチ、サツマイモ、馬鈴薯、こんにゃく等)、糟糠類(米糠、小麦ふすま、小麦胚芽、大麦糠、グルテンフィード等)、糖類(砂糖、ぶどう糖、果糖、異性化糖、オリゴ糖類、水飴、シロップ、糖蜜、蜂蜜等)、種実類(アーモンド、栗、ゴマ、落花生等)、豆類(大豆、脱脂大豆、大豆ミール、きなこ、大豆粉、おから、そら豆、小豆等)、魚介類(まぐろ、かつお、あじ、いわし等の魚類、えび、かに、たこ、いか等の甲殻類及び軟体動物、ほたて、さざえ等の貝類、フィッシュミール(魚粉)及びフィッシュエキス等)、肉類(牛(ビーフ)、豚(ポーク)、羊(マトン又はラム)、うさぎなどの畜肉及び獣肉、並びにその副生物および加工品、鶏(チキン)、七面鳥(ターキー)、うずらなどの鳥肉並びにその副生物および加工品、ミートミール、ミートボーンミール、チキンミール等の上記原料のレンダリング物等)、卵類(鶏卵(全卵、乾燥全卵、卵黄・卵白)、あひる卵、うずら卵等)、乳類(全脂乳、脱脂乳及び全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエー、チーズ、バター、クリーム等)、野菜類(にんじん、きゃべつ、グリーンピース、かぼちゃ等)、植物たん白(大豆たん白、小麦たん白、グルテンミール等)、果実類(アボカド、りんご、バナナ、パイナップル、パッションフルーツ等)、きのこ類(マッシュルール、えのき、しいたけ、しめじ等)、藻類(のり、こんぶ、わかめ、ひじき、クロレラ、スピルリナ、寒天、カラギーナン等)、その他(酵母、牧草、セルロース類、酸類等)を使用することができる。
【0017】
本発明のペットフード中の油脂含有量は、5〜15質量%であることが好ましい。
本発明のペットフードに含まれる、基本配合の油脂の脂肪酸全質量に対し、多価不飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上であることが、栄養価の観点から好ましい。また、本発明のペットフードに含まれる、基本配合及び本発明のペットフード用添加剤由来の油脂のω−脂肪酸のn−6/n−3の質量比は、10:1〜1:1であることが好ましい
【0018】
本発明のペットフードは、ドライタイプであってもよく、またセミモイストタイプ、あるいはウェットタイプと称されるものでもよい。水分量はドライタイプ10%以下、セミモイスト25〜35%、ウェットタイプ75%以上である。
【0019】
(製造方法)
本発明のペットフードは、例えば、基本配合に任意に添加剤を添加して、混合し、エクストルーダーなどにより押出成形して製造することもできる。
例えば、内部が中空の円筒状のペットフードを製造するには、一軸押出成形もしくは二軸押出成形により製造することができる。
また、押出成型以外にも、オーブン等のクッカーにより製造してもよい。
【0020】
本発明においてペットフードとは、犬や猫などのペット動物用飼料である。本発明のペットフードの対象のペットの種類は、好ましくは犬または猫である。
【0021】
(硬度)
本発明のペットフードは、部材が薄く立体的な形状の為、適度な力で粉砕しやすく、小型種や高齢期のペットでも食べやすく、嗜好性に優れる。
本発明のペットフードの硬度は、ペットフードの筒状構造の側面に垂直な方向に力を加えて測定した場合、500〜2000gf程度であることが好ましく、800〜1500gf程度であることが更に好ましい。
なお、本明細書において、試料1ケを直径18mmの平板ブランジャーで垂直になるように30mm/分の速度で上から下降させ、サンプルの高さの1/2以上下がった際の最大応力を硬度とした。
【0022】
(吸水性)
本発明のペットフードの表面積が大きいため、歯が弱い高齢期のペットや、噛む力の弱い幼齢期のペットに水などを加えて与える際、すばやく給水し適度な硬さとなり食べやすくなる。
シャーレに試料5gを入れ、20℃の蒸留水を10g加え、時間ごとの状態を観察した場合、3分以上で全体が均一に柔らかく、しかも形状が保たれた状態となる。
【0023】
(添加剤)
本発明のペットフードは、少なくとも一種の不飽和脂肪酸塩と、抗酸化性を有するカラメルとを添加剤として含むことが好ましい。ペット動物の健康的な体作りに欠かせない多価不飽和脂肪酸を多く含んでいながら高い酸化安定性を示し、ペット動物に対する良好な嗜好性を示すからである。
【0024】
本発明において少なくとも一種の不飽和脂肪酸塩とは、少なくとも一種の不飽和脂肪酸の、カルシウム塩、マグネシウム塩等の塩化合物である。塩としては、犬・猫の栄養基準の観点から、カルシウム塩が特に好ましい。
少なくとも一種の不飽和脂肪酸は、炭素数16以上、更に好ましくは炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸であることが好ましい。また、不飽和結合の数は2以上であることが好ましい。より好ましくは、不飽和結合の数は3以上である。最も好ましくはn−3系脂肪酸である。具体的なn−3系脂肪酸の例としては、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等が挙げられる。
本発明の少なくとも一種の不飽和脂肪酸として、構成脂肪酸として上述した不飽和脂肪酸を含む油脂をケン化して得たものを使用することができる。
【0025】
構成脂肪酸として上述した不飽和脂肪酸含む油脂としては、亜麻仁油、エゴマ油、魚油油、チアシード油、グリーンナッツ油等が挙げられる。これらの油脂は、少なくとも一種の不飽和脂肪酸が脂肪酸組成(質量)中に1〜95質量%、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは20〜85質量%含まれるように配合することが好ましい。また、ペットフードに配合される原料由来脂質の脂肪酸組成も加味した上で、ペットフードに含まれるペットの成長及び健康に特に有用であり必須脂肪酸であるn−3系脂肪酸の適正な量を確保するために必要なn−6/n−3系脂肪酸の脂肪酸組成比となるように配合することが好ましい。
【0026】
本発明において少なくとも一種の不飽和脂肪酸塩は、ペットフード用添加剤の全質量に対し、0.1〜80質量%であることが好ましく、1〜70質量%であることがより好ましく、2〜65質量%の範囲で含まれることが更に好ましい。
【0027】
本発明において抗酸化性を有するカラメルとは、糖類を加熱処理することにより得られる抗酸化性を有するカラメルであり、特開平8−312224号に記載されるカラメルを代表的なものとして挙げることができる。
抗酸化性カラメルは、ペットフード用添加剤の全質量に対し、0.1〜30質量%の範囲で含まれることが好ましい。0.5〜10質量%の範囲で含まれることが特に好ましい。
本発明のペットフードは、上記不飽和脂肪酸塩及び抗酸化性カラメルの他に、飽和脂肪酸塩あるいは塩を形成していない不飽和または飽和の脂肪酸を含んでいてもよい。
【0028】
本発明において抗酸化性を有するカラメルは、単糖類の水溶液を、塩基性化合物の存在下、所定の条件下で加熱することにより得ることができる。
上記製造方法に使用される単糖類としては、ペントース及びヘキソースからなる群から選ばれる単糖類が挙げられる。ペントース及びヘキソースからなる群から選ばれる単糖の代表的な例としては、グルコース、ガラクトース、キシロース、及びフラクトースが挙げられるが、安価で入手が容易であることから、グルコースが最も好ましい。
上記製造方法に使用される塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、酢酸やクエン酸等の有機酸のアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)またはアンモニウム塩、及び水酸化アンモニウムが挙げられる。
【0029】
抗酸化性を有するカラメルを製造する方法のより好ましい実施態様は、単糖50〜99質量部、塩基性化合物1〜10質量部を水0〜50質量部に溶解し、120〜150℃、好ましくは125〜135℃で1〜10時間、好ましくは3〜4時間加熱処理する方法である。この際、加熱処理前の水溶液のpHは、好ましくは7以上、さらに好ましくは8以上、最も好ましくは9以上である。反応温度(加熱処理温度)が120℃より低いと反応が充分に進行しない。また150℃より高いと反応系が固化・炭化するおそれが大きくなるだけでなく、得られたカラメルの抗酸化性が低くなるので好ましくない。好ましい反応温度は125〜135℃であり、最も好ましい反応温度は130℃前後である。また、塩基性化合物の量が1質量部より少ないと反応が充分に進行しない。すなわち、抗酸化性を有するカラメルが得られない。また10質量部より多いと、反応が激しく進行し、気泡が多量にしかも短時間に発生し、反応容器からふきこぼれる恐れがあるなど危険性が生じる。反応時間が1時間未満では反応が充分に進行しない。また反応時間が長くなるにつれて、反応が進行して徐々に粘性が増加する。
【0030】
本発明のペットフードに添加する上記少なくとも一種の不飽和脂肪酸塩とカラメルの混合物の製造方法としては、不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として有する油脂を含む原料油脂のケン化物と抗酸化性を有するカラメルとを混合する方法か、不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として有する油脂を含む原料油脂に抗酸化性を有するカラメルとを混合して、その後前記油脂をケン化する方法が挙げられる。
抗酸化性を有するカラメルを混合してからケン化することにより、ケン化による不飽和脂肪酸の酸化劣化を防ぐことができ、特に好ましい。
【0031】
原料油脂としては、上述した不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として有する油脂を含むものであれば良い。例えば、原料油脂は、不飽和脂肪酸を20〜95質量%含むもの、好ましくは50〜95質量%含むものを用いることができる。また好ましい例として、n−3系脂肪酸を好ましくは1〜70質量%、より好ましくは5〜70質量%、更に好ましくは10〜70質量%、最も好ましくは50〜70質量%含むものが挙げられる。
また、原料油脂の脂肪酸組成中のn−6/n−3質量比が30以下、好ましくは10以下、更に好ましくは5以下である。
原料油脂には更に飽和脂肪酸を含んでいてもよい。飽和脂肪酸量は特に限定されないが、5〜80質量%、好ましくは5〜50質量%の範囲程度が好ましい。
原料油脂として、動物、植物、または他の起源の油脂を含んでいてもよい。例えば、ラード、獣脂、キャノーラ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、綿実油、キャノーラ油、オリーブ油、コーン油などの植物油が挙げられる。
【0032】
原料油脂に抗酸化性を有するカラメルを添加し、混合物を作成し、その後ケン化を行う製造方法について以下説明する。
ケン化工程は、バッチまたは連続プロセスが用いられる。標準的なプロセスにおいて、原料油脂を製造容器に入れ、ケン化するためのアルカリ剤を添加し、混合する。アルカリ剤としては、水酸化カルシウムなどが挙げられる。
アルカリ剤の添加量は、油脂質量に対して少なくとも7質量%であることが好ましく、12〜30質量%であることが更に好ましい。
前記混合物に、少なくとも1質量%、望ましくは3質量%以上の水および、油脂100g当り少なくとも1000U、望ましくは3000〜15,000Uリパーゼ、抗酸化性を有するカラメルを30質量%以下、望ましくは0.5〜10質量%添加し、混合、攪拌してケン化反応させる。
ケン化工程は、常温で液状の場合は、常温で、また常温で固体の油脂の場合は、出来る限り低い温度で加温して溶融しながら均一に混合、攪拌して反応させる。反応終了後室温に放置し、適宜の大きさに常法で破砕し、ペットフード用添加剤を得る。反応時間は、使用する油脂の種類、使用するリパーゼの力価・添加量あるいは、水の添加量などにより適宜決定される。
【実施例】
【0033】
以下の実施例において「%」は特に示さない限り、「質量%」を意味する。
[製造例1]ペットフード添加剤の製造
グルコース64質量部、塩基性化合物としてクエン酸ナトリウムを4質量部及び水32質量部を混合し、130℃で3時間反応させ、抗酸化性を有するカラメルを得た。
表2に示す組成の油脂1を78質量部に対し、上述のとおり製造した抗酸化性を有するカラメル4質量部を添加し、水酸化カルシウム(消石灰粉末)10.598質量部を添加して、均一に混合した。その後リパーゼAK「アマノ」(天野エンザイム社製)0.015質量部と水7.396質量部を添加し、約30分間室温で混合攪拌した。その後約30時間静置し、得られた固形物を粉砕して、ペットフード添加剤を得た。
【0034】
表1 (単位:質量部)
(単位:質量部)
【0035】
表2
*n−3系脂肪酸とn−6系脂肪酸の量(%)は、多価不飽和脂肪酸合計65%の内訳を示す。
【0036】
[実施例1,実施例2及び市販品との比較]
ペットフードを以下の配合により製造した。
表3:配合(単位:質量部)
【0037】
表3の配合のペットフードを以下の条件で製造した。
表4:製造条件
【0038】
実施例1において得られたペットフードの構造は、約2mmの薄い部材からなる内部が中空の円筒状であった(
図1参照)。最も長い辺部分の長さは10mm程度であった。部材の密度は0.62g/cm
3程度であった。粗タンパク質含有量は、39質量%であった。
実施例2において得られたペットフードの構造は、約1.5mmの薄い部材からなる内部が中空の円筒状であった(
図1参照)。最も長い辺部分の長さは8mm程度であった。部材の密度は0.76g/cm
3程度であった。粗タンパク質含有量は、39質量%であった。
【0039】
以下の方法により、各項目を試験した。
(1)嵩密度:292mlのカップに天面まで試料を入れ、質量を測定し、質量を体積で除して計算した(測定重量(g)/292cm
3=g/cm
3)。
嵩密度は以下のように評価される。
0.1以下:嵩密度が低すぎる
0.1〜0.2:十分に嵩密度が低い
0.2〜0.4:やや嵩密度が低い
0.4〜0.6:やや嵩密度が高い
0.6以上:嵩密度が高すぎる
【0040】
(2)硬度:試料1ケを直径18mmの平板ブランジャーで垂直になるように30mm/分の速度で上から下降させ、サンプルの高さの1/2以上下がった際の最大応力を硬度とした。n=5としてメジアン値を記載した。
硬度は以下のように評価される。
1500gf以下:非常に良好な硬度
1500〜2000gf以下:良好な硬度
2000〜3000gf以下:やや硬い
3000gf以上:硬すぎる
【0041】
(3)吸水試験:シャーレに試料5gを入れ、20℃の蒸留水を10g加え、時間ごとの状態を観察した。
◎:全体が均一に柔らかいが、形状が保たれている。
○:全体に柔らかいが、形状が保たれている。
△:表面は柔らかいが、一部もしくは中心部が硬い。
×:全体的に硬く、柔らかくなっていない。
【0042】
市販品A〜Dについても実施例1と同様に評価を行った。各評価結果を表5及び6に示す。
表5において、「外径a」、「内径b」、「断面面積S1」、および「空隙面積S2」とは、それぞれ、筒状構造の軸方向に対して垂直な断面(実施例、市販品においてほぼ円型)の「最も外側(筒状構造の外周に相当する部分)部分の直径」、「筒状構造の中空に相当する部分(空隙)の直径」、「断面における外周に相当する部分により決定される面積(断面面積)」および「断面における空隙部分の面積」を意味する(
図2参照)。
なお、実施例1及び市販品はいずれも円筒状あるいは円柱状であるが、各形状にはばらつきがあるため、n=5としてメジアン値を記載した。また、断面面積および空隙部分の面積は、外径a及び内径bを用いて面形状が真円であるとして計算した。外体積換算密度も、断面面積が真円である円柱として計算した。
また、表5において、「外体積換算密度(g/cm
3)」とは、ペットフード1個の外周から計算される体積(中空が無いとした場合の円柱体積)あたりの質量を意味する。
【0043】
表5
【0044】
表6
*1粗タンパク質、動物性タンパク質、粗脂肪の各量(%)は、ペットフード質量に対する質量%を表す。
*2飽和酸、一価不飽和酸、多価不飽和酸の各量(%)は、脂肪酸合計質量に対する質量%を表す。
*3 n−3系脂肪酸とn−6系脂肪酸の量(%)は、多価不飽和脂肪酸合計質量の内訳を示す。
【0045】
表5及び表6から明らかなとおり、本発明のペットフードは,内部に十分な中空を有しているため、高タンパク質ペットフードであるにもかかわらず、嵩密度が十分に低く、硬度が適度であり、吸水性も非常に良い。
ペットフード中の油脂の脂肪酸組成のn−6系脂肪酸/n−3系脂肪酸の脂肪酸組成比(質量比)が、10:1〜1:1であり、且つ、飽和脂肪酸が35質量%以下である、請求項5に記載のペットフード。