【解決手段】錠剤印刷装置1は、錠剤2の表面を印刷する表面印刷部3と裏面を印刷する裏面印刷部4を上下に配置し、搬送ベルト5によって錠剤2を下から上に運び、錠剤2の両面印刷を行う。搬送ベルト5は錠剤2を吸着搬送し、表面印刷部3にて印刷を行った錠剤2の表裏を反転させて裏面印刷部4に搬送する。各印刷部3,4には、印刷ヘッド21,31と共に、搬送ベルト5上の錠剤2を検知する錠剤検知センサ28,29,36,37や、照明装置25〜27,34,35、錠剤2の状態や印刷状況を確認するためのカメラ22〜24,32,33が設けられている。印刷ヘッド21,31には、ビジー状態による印刷不可時間を回避すべく2個のノズルカートリッジ18a,18bが配されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、インクジェット方式による錠剤印刷装置には、大きく分けて、コンティニュアス型とDOD(ドロップ・オン・デマンド)型の二つの形態が存在する。コンティニュアス型の装置は、印刷用のインクを継続的に循環供給しつつ、必要に応じてインク流から錠剤に液滴を噴射し、所望の印刷処理を行う。これに対し、DOD型の装置は、通常のインクジェットプリンタと同様に、印刷処理時のみノズルからインクを噴射し、所望の印刷処理を行う。
【0005】
この場合、コンティニュアス型の装置は、常時インクを供給するためノズル詰まりが生じにくく、長時間の安定稼働が可能であり、印刷ヘッドの汚れも少なく、インクの無駄も少ないという利点がある。しかしながら、インク循環用のシステムが必要となるため、装置が大型化する傾向がある。これに対し、DOD型の装置は、コンティニュアス型よりも高精細な図形を印刷できる特徴があり、また、個々の錠剤ごとにインクの吐出を行う構成のため、大掛かりなインク循環システムは不要であり、装置自体も比較的小型になる。
【0006】
ところが、DOD型の装置は、錠剤の流れを検知して印刷ヘッドを作動させる構成となるため、検知→インク噴射の間にデータ処理のための時間が必要となり、錠剤が絶え間なく連続的に流れる状態となると、コントローラがビジー状態となり、データ処理が間に合わなくなる場合がある。データ処理が間に合わない場合、錠剤の存在を検知してもヘッドが作動せず、印刷処理が行われずにそのまま錠剤が流れて行ってしまい、未印刷の状態の製品ができてしまうという問題があった。
【0007】
また、DOD型のインクジェット装置の場合、下方から上方に向かってインクを噴射すると、重力の影響により印刷精度が低下するおそれがあり、通常、錠剤の上面側への印刷しか行われない。すなわち、DOD型の装置は錠剤両面に印刷処理を行いにくく、装置小型化のメリットがあるにも関わらず、DOD型は専ら片面印刷の装置に採用されるに留まっていた。
【0008】
本発明の目的は、DOD型を採用するインクジェット式の錠剤印刷装置において、ビジー状態による未印刷品の発生を抑えることにある。また、本発明の他の目的は、DOD型の装置において、装置の小型化を享受しつつ、錠剤の両面印刷を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の錠剤印刷装置は、錠剤を搬送する搬送手段と、前記搬送手段上を移動する前記錠剤の第1面側に印刷処理を行う第1印刷部と、前記第1印刷部の上方に配置され、前記搬送手段上を移動する前記錠剤の前記第1面とは反対側の第2面側に印刷処理を行う第2印刷部と、を有し、前記搬送手段は、前記第1印刷部にて印刷処理を行った前記錠剤を、表裏を反転させて前記第2印刷部に搬送し、前記第1及び前記第2印刷部により、錠剤の両面に印刷処理を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明にあっては、第1面側に印刷処理を行う第1印刷部と、第2面側に印刷処理を行う第2印刷部を上下に配置し、搬送手段によって錠剤を下から上に運び、錠剤の両面に印刷処理を行う。これにより、DOD型のインクジェット式錠剤印刷装置でありながら、錠剤の両面印刷が可能となり、しかも、装置の設置面積も小さく抑えられる。
【0011】
前記錠剤印刷装置において、前記搬送手段に、前記第1面側を上面にして前記錠剤を水平方向に搬送する第1横行部と、前記第1横行部の後段に配置され、前記錠剤の上面側が下面側となるように前記第1横行部から前記錠剤を受け取り、前記第2面側を上面にして前記錠剤を垂直方向に搬送する上行部と、前記上行部の後段に配置され、前記第2面側を上面にして前記錠剤を水平方向に搬送する第2横行部と、を設けても良い。
【0012】
また、前記搬送手段に、前記錠剤の搬送方向に沿って配置された2本の搬送ベルトと、前記搬送ベルトの間に配置され、2本の前記搬送ベルトの上に乗った前記錠剤を下面側から吸引する吸引手段と、を設け、前記錠剤を、前記搬送ベルトの上に吸着した状態で前記搬送ベルトと共に移動させるようにしても良い。
【0013】
さらに、前記第1及び第2印刷部に、インク吐出ノズルを備えた交換可能なカートリッジを配しても良く、前記第1及び第2印刷部に、前記錠剤に対しインクを噴射する印刷ヘッドを設け、該印刷ヘッドに、前記カートリッジを複数個配置しても良い。これにより、一方のカートリッジがビジー状態(処理中)のときは、他のカートリッジが対応する。従って、ビジー状態による印刷不可時間を少なくすることができ、未印刷品の発生が抑えられると共に、錠剤搬送量や搬送速度を上げることができ、印刷速度の向上を図ることが可能となる。
【0014】
加えて、前記第1及び第2印刷部に、前記搬送手段上の前記錠剤を検知する第1及び第2錠剤検知センサと、前記第1錠剤検知センサの後段に配置され、該第1錠剤検知センサにて検知された前記錠剤の状態を撮影する錠剤状態撮影手段と、前記第2錠剤検知センサの後段に配置され、該第2錠剤検知センサにて検知された前記錠剤に対しインクを噴射する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドの後段に配置され、該印刷ヘッドによって印刷処理が為された前記錠剤の印刷後の状態を撮影する印刷状態撮影手段と、を設けても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明の錠剤印刷装置によれば、錠剤の第1面側に印刷処理を行う第1印刷部と、第1印刷部の上方に配置され、第1面とは反対側の第2面側に印刷処理を行う第2印刷部と、を設け、第1印刷部にて印刷処理を行った錠剤を、表裏を反転させて第2印刷部に搬送し、第1印刷部と第2印刷部によって錠剤の両面に印刷処理を行うようにしたので、DOD型のインクジェット式錠剤印刷装置においても、錠剤の両面印刷が可能となる。また、第1印刷部と第2印刷部が上下に配置されていることから、装置の小型化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態である錠剤印刷装置1の全体構成を示す説明図である。
図1の錠剤印刷装置1は、DOD型のインクジェット式錠剤印刷装置であり、円盤形やレンズ形の円形錠剤2の表面に品番や製品名等を非接触状態にて印刷する。
図1に示すように、錠剤印刷装置1は、表面印刷部(第1印刷部)3と裏面印刷部(第2印刷部)4を有している。表面印刷部3は、錠剤2の片側の面(第1面)2aに対して印刷処理を行う。裏面印刷部4は、錠剤2の反対側の面(第2面)2bに対して印刷処理を行う。表面印刷部3と裏面印刷部4は上下方向に並設されており、錠剤2は、搬送ベルト(搬送手段)5によって搬送されながら、表面及び裏面印刷部3,4にて両面印刷が施される。錠剤印刷装置1はコントローラ6によって制御され、コントローラ6は、表面印刷部3や裏面印刷部4、搬送ベルト5等を適宜制御することにより、錠剤2の印刷処理を実行する
【0018】
錠剤2は、図示しないフィーダーから、搬送コンベア7によって錠剤印刷装置1に運ばれ、錠剤供給部8に供給される。錠剤2は、錠剤供給部8から、搬送ベルト5によって表面印刷部3→裏面印刷部4へと搬送される。
図2は、搬送ベルト5の構成を示す説明図である。
図2に示すように、搬送ベルト5は、移動する2本のベルト9a,9bを備えている。ベルト9a,9bの間には吸引口10が設けられており、錠剤2は、吸引口10の負圧によりベルト9a,9bの間に吸着され、搬送ベルト5と共に移動する。吸引口10はガイドケース11の上面に開口形成されており、ガイドケース11は吸引ポンプ12と接続されている。ガイドケース11の内部は吸引ポンプ12により負圧になっており、該負圧により、錠剤2はベルト9a,9b上に保持され搬送される。なお、搬送ベルトとしては、
図2に示したような2本ベルト構成(9a,9b)のみならず、1本のベルト中央部に、錠剤2を吸着可能な孔を所定間隔で設けたものを用いても良い。このような吸着搬送構造を採用することにより、当該装置では、円形錠剤のみならず、オブロング錠やカプセルなども印刷処理することが可能となっている。
【0019】
搬送ベルト5は、下横行部(第1横行部)5a、上行部5b、上横行部(第2横行部)5cからなり、下横行部5aと上行部5bの間は受継部13となっている。下横行部5aは、駆動プーリ14a,14bによって駆動される。上行部5bと上横行部5cは、駆動プーリ15a〜15cによって駆動される。駆動プーリ14a,14b,15a〜15cは、図示しないサーボモータによって駆動される。錠剤2は、下横行部5aによって水平方向に搬送されながら表面印刷部3によって表面(第1面)側が印刷される。表面側が印刷された後、錠剤2は、受継部13にて、下横行部5aから上行部5bに受け渡される。錠剤2は、上行部5bにて垂直方向に,上横行部5cにて再び水平方向に搬送され、上横行部5cに搬送されながら裏面印刷部4によって裏面(第2面)側が印刷される。両面の印刷処理が終了した錠剤2は、錠剤排出部16から装置外へと排出され、搬送容器17内に収容される。
【0020】
表面印刷部3と裏面印刷部4にはそれぞれ印刷ヘッド21,31が配置されている。印刷ヘッド21,31は、サーマル方式のインクジェット式印刷ヘッドであり、各印刷ヘッド21,31には、同性能のヘッドカートリッジが複数個(ここでは2個)配置されている(カートリッジ18a,18b)。カートリッジ18a,18bは多数のインク吐出ノズルを備えており、搬送ベルト5の進行方向に沿って並んで配置されている。カートリッジ式を採用することにより、インク切れとなった時、カートリッジを交換するだけで簡単にインクの補充を行うことができる。また、別種のインクに変更する場合も、カートリッジの交換だけでインクの種類を容易に変更できる。カートリッジ18a,18bは、何れか一方のカートリッジが錠剤2に対し印刷処理を行う。
【0021】
前述のように、DOD型の装置では、錠剤が連続して流れると、データ処理が間に合わず印刷不可時間が発生し、未印刷の状態の製品ができてしまうおそれがある。これに対し、本発明による錠剤印刷装置1では、印刷ヘッド21,31に複数個のカートリッジを配置し、一方のカートリッジがビジー状態のときは、他のカートリッジが対応する。従って、ビジー状態による印刷不可時間を少なくすることができ、未印刷品の発生が抑えられると共に、錠剤搬送量や搬送速度を上げることができ、印刷速度の向上を図ることが可能となる。
【0022】
表面印刷部3には、印刷ヘッド21と共に、錠剤の映像を撮影するカメラ22〜24(側面検査用カメラ22、表面検査用カメラ23、表面印刷検査用カメラ24)が設けられている。各カメラ22〜24の撮影範囲にはそれぞれ照明装置25〜27が配置されている。側面検査用カメラ22と表面検査用カメラ23は印刷ヘッド21の前段に、表面印刷検査用カメラ24は印刷ヘッド21の後段にそれぞれ配置されている。また、側面検査用カメラ22の前と、印刷ヘッド21の前にはそれぞれ、錠剤検知センサ28,29が設置されている。カメラ22,23は、搬送ベルト5(下横行部5a)上の錠剤2の状態(表面の割れ、欠けの有無)や割線位置を確認するため、カメラ24は、印刷ヘッド21による印刷結果を確認するために設けられている。
【0023】
また、裏面印刷部4も、ほぼ表面印刷部3と同様の構成となっており、印刷ヘッド31と共に、錠剤の映像を撮影する撮影手段として、カメラ32,33(裏面検査用カメラ32、裏面印刷検査用カメラ33)が設けられている。各カメラ32,33の撮影範囲にはそれぞれ照明装置34,35が配置されている。裏面検査用カメラ32は印刷ヘッド31の前段に、裏面印刷検査用カメラ33は印刷ヘッド31の後段にそれぞれ配置されている。また、裏面検査用カメラ32の前と、印刷ヘッド31の前にはそれぞれ、錠剤検知センサ36,37が設置されている。カメラ32は、搬送ベルト5(上横行部5c)上の錠剤2の状態(表面の割れ、欠けの有無)や割線位置を確認するため、カメラ33は、印刷ヘッド31による印刷結果を確認するために設けられている。なお、錠剤2の側面の様子は既に表面印刷部3にて検査済みのため、裏面印刷部4には、表面検査用カメラとその照明装置は設けられていない。
【0024】
表面印刷部3に設けられている側面検査用カメラ22は、搬送ベルト5上を移動する錠剤2の側面を撮影するカメラであり、錠剤検知センサ28にて錠剤2を検知すると撮影を開始する。側面検査用カメラ22の撮影範囲には、ライト25aとプリズム25bを備えた照明装置25が設けられている。プリズム25bは錠剤側面と対向するよう配置されており、側面検査用カメラ22は、ライト25aによって照らされた錠剤側面の様子をプリズム25bを介して撮影する。カメラ22による撮影データはコントローラ6に送出され、錠剤2の良・不良判定に使用される。
【0025】
また、表面印刷部3の表面検査用カメラ23,裏面印刷部4の裏面検査用カメラ32は、錠剤2の表面・裏面を撮影するカメラであり、照明装置26,34によって照らされた錠剤上面の様子を撮影する。表面検査用カメラ23は、錠剤検知センサ28にて錠剤2を検知し、側面検査用カメラ22による撮影が行われた後、当該錠剤2を撮影する。裏面検査用カメラ32は、錠剤検知センサ36にて錠剤2を検知した後、当該錠剤2を撮影する。カメラ22,23,32は、印刷処理実行の適否を判断すべく、印刷前の錠剤2の姿を撮影する。カメラ23,32による撮影データもコントローラ6に送出され、錠剤2の良・不良判定に使用される。
【0026】
表面印刷検査用カメラ24,裏面印刷検査用カメラ33は、錠剤2の印刷状態を確認するためのカメラであり、印刷処理後の錠剤2の姿を撮影する。カメラ24,33は、照明装置27,35によって照らされた錠剤上面の印字等を撮影する。表面印刷検査用カメラ24,裏面印刷検査用カメラ33は、錠剤上面の印字等を確認する用途であるため、照明装置25,26,34よりも照度が小さい光源でも実用上問題なく、例えば、LED照明を使用することも可能である。カメラ24,33による撮影データもまたコントローラ6に送出され、印刷状態の良・不良判定に使用される。
【0027】
図3は、コントローラ6の機能ブロック図である。
図3に示すように、コントローラ6は、データの保存を行うRAM41、制御プログラムや良・不良判定データが格納されたROM42、タイマ43,装置の駆動系の制御を行う駆動系制御部44、及び、錠剤2の印刷処理を実施する印刷処理系制御部45とを有する。駆動系制御部44は、吸引ポンプ12や駆動プーリ14a,14b、15a〜15c(サーボモータ)の駆動制御を行う。印刷処理系制御部45は、カメラ22〜24,32,33、照明装置25〜27,34,35等の動作制御を行うと共に、カメラ22〜24からの撮影データに基づいて錠剤2の割れ・欠けや割線位置、印刷状況等の確認を行う。
【0028】
印刷処理系制御部45には、錠剤検知センサ28,29,36,37からの信号を受信するセンサ信号受信部51が設けられている。また、センサ信号受信部51の後段には、錠剤検知センサ28,36からの信号を受けてカメラ22,23,32を、錠剤検知センサ29,37からの信号を受けてカメラ24,33をそれぞれ作動させるカメラ制御部52と、錠剤検知センサ29,37からの信号を受けて、所定のタイミングにて印刷ヘッド21,31を作動させる印刷ヘッド制御部53が設けられている。さらに、印刷処理系制御部45には、カメラ22〜24,32,33からの撮影データを受信する撮影データ受信部54と、撮影データ受信部54にて取得したカメラ22,23,32からのデータにより、錠剤2の割れ・欠けや割線位置を判定する錠剤状態判定部55、カメラ24,33からのデータにより、錠剤2の印刷状態を判定する印刷状態判定部56がそれぞれ設けられている。
【0029】
このような錠剤印刷装置1では、つぎのようにして錠剤2の印刷処理が行われる。まず、図示しない錠剤フィーダーから、錠剤2が搬送コンベア7によって錠剤印刷装置1に供給される。錠剤印刷装置1に供給された錠剤2は、錠剤供給部8から、搬送ベルト5の下横行部5aによって表面印刷部3に搬送される。表面印刷部3では、錠剤検知センサ28によって錠剤2が検知されると、検知信号がコントローラ6のセンサ信号受信部51に送られる。この検知信号に基づいて、カメラ制御部52は、側面検査用カメラ22と表面検査用カメラ23を照明装置25,26と共に作動させる。カメラ22,23の撮影データは、撮影データ受信部54に送られる。錠剤状態判定部55はそのデータとROM42に格納された正常な錠剤2の形状データとを比較し、錠剤2の割れ・欠けの有無を確認し、割線の位置を把握する。この際、錠剤2に割れ・欠けを発見した場合には、当該錠剤2は不良品と判断され、以後の印刷処理は行わず、NG品の発生をランプやブザー等により、作業者に通知する。
【0030】
割れ・欠けのない錠剤2の場合には、割線の位置を把握し、割線位置データをRAM41に格納する。錠剤2がさらに搬送され、錠剤検知センサ29にて錠剤2が検知されると、その検知信号がコントローラ6のセンサ信号受信部51に送られる。印刷ヘッド制御部53は、この信号受け、錠剤検知センサ29と印刷ヘッド21の間の距離を勘案し、タイマ43の計時に基づき、所定のタイミングにて印刷ヘッド21を作動させる。これにより、錠剤2の表面に所望の文字や図形等が印刷される。この際、印刷ヘッド制御部53は、RAM41から割線位置データを読み込み、割線位置に基づいて、印刷される文字・図形等の位置を調整し、印刷ヘッド21の動作を制御する。これにより、錠剤2上には、割線位置を基準として常に所定の位置に文字や図形が印刷される。
【0031】
前述のように、錠剤印刷装置1では、印刷ヘッド21に2つのヘッドカートリッジ18a,18bが配置されており、印刷処理の際はこれらを適宜選択して使用する(原則として交互に使用するが、メインとサブという使用方法も可)。錠剤検知センサ29による錠剤検知から、錠剤2を撮影して割線位置を確認し、そのデータに基づき印刷ヘッド21を作動させる、という一連のデータ処理と動作には、高速のCPUを用いてもある程度の処理時間は必要となる。これに対し、ヘッドカートリッジを2つ持つ当該装置では、一連の処理により一方のカートリッジがビジー状態となっても、他方のカートリッジによる印刷処理が可能であり、印刷速度の向上が図られる。
【0032】
また、錠剤印刷装置1では、錠剤検知センサ29と印刷ヘッド21が近接して設けられているため、それらの間で錠剤2の搬送速度が変化することは極めて稀である。従って、両者間の距離と搬送ベルト5の移動速度に基づいた所定タイミングにて印刷ヘッド21を作動させれば、錠剤2に対し所望の印刷処理を行うことができる。このため、搬送ベルト5の速度を検知する特別なセンサや、検知した速度によるフィードバック制御は特に行う必要がなく、部品点数の削減やコントローラ6の負荷軽減が図られ、処理の高速化や製品コストを低減することが可能となる。
【0033】
印刷ヘッド21による印刷処理が完了すると、表面印刷検査用カメラ24にて印刷状態が確認される。表面印刷検査用カメラ24と照明装置27は、錠剤検知センサ29にて錠剤2が検知されたとき、印刷ヘッド21と共に作動し、印刷処理が行われた錠剤2の上面を撮影する。カメラ24の撮影データは、撮影データ受信部54に送られる。印刷状態判定部56はそのデータとROM42に格納された正常印刷データとを比較し、錠剤2に対して行われた印刷処理の適否を判定する。この際、印刷状態が良くない場合は、当該錠剤2は印刷不良と判断され、以後の印刷処理は行わず、NG品の発生をランプやブザー等により、作業者に通知する。なお、カメラ24の撮影データに基づき、印字の濃さやインクの噴射タイミングなどをフィードバック制御しても良い。
【0034】
印刷状態に問題がない場合は、当該錠剤2はそのまま搬送ベルト5にて搬送され、受継部13にて上行部5bに受け渡される。錠剤2は、上行部5bに受け渡されると、表裏が反転し、表面印刷部3にて印刷処理が行われた面(表面:第1面)が下面となり、未印刷の面(裏面:第2面)が上面となる。錠剤2は、裏面側を上面として、ベルト9a,9b上に吸着された状態で上方へと運ばれる。搬送ベルト5上の錠剤2は、上行部5bからそのまま上横行部5cに移り、裏面印刷部4による印刷処理が実行される。
【0035】
裏面印刷部4においても、表面印刷部3と同様の処理が行われ、錠剤検知センサ36によって錠剤2が検知されると、裏面検査用カメラ32と照明装置34が作動し、錠剤2の割れ・欠けの有無を確認し、割線の位置が把握される。錠剤2に割れ・欠けがない場合は、錠剤検知センサ37にて錠剤2が検知されると、所定のタイミングにて印刷ヘッド31が作動し、錠剤2の裏面側に印刷処理が行われる。印刷ヘッド31による印刷処理が完了すると、照明装置35と裏面印刷検査用カメラ33を用いて印刷状態が確認される。印刷状態に問題がない場合は、当該錠剤2はそのまま搬送ベルト5にて搬送され、錠剤排出部16から排出される。なお、錠剤2に割れ・欠けがあったり、印刷状態に問題があった場合は、前述同様、不良品と判断され、所定の通知等が行われる。
【0036】
このように、本発明による錠剤印刷装置1は、表面印刷部3と裏面印刷部4を上下に配置し、吸着搬送構造の搬送ベルト5によって錠剤2を下から上に運ぶようにしたので、DOD型のインクジェット式錠剤印刷装置でありながら、錠剤の両面印刷が可能であり、しかも、装置の設置面積を小さく抑えること可能となる。また、印刷ヘッド21,31に2つのヘッドカートリッジ18a,18bを配置したので、一方のカートリッジがビジー状態となっても、他方のカートリッジによる印刷処理が可能となる。従って、ビジー状態による未印刷品の発生を抑えることができ、印刷速度の向上も図られる。
【0037】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施形態では、印刷対象を円形の錠剤としたが、本発明による印刷装置は、円形錠剤以外にも、オブロング錠やキャブレット錠、竿形錠剤、多角形錠剤など種々の錠剤に対応可能である。また、錠剤のみならず、カプセル(ハード、ソフト)に対する印刷処理も可能である。従って、本発明における錠剤は、所謂円形の錠剤のみならず、各種形状の錠剤やカプセルなどを含む概念である。