特開2015-205177(P2015-205177A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-205177(P2015-205177A)
(43)【公開日】2015年11月19日
(54)【発明の名称】カーテンおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47H 23/00 20060101AFI20151023BHJP
   D06M 10/00 20060101ALI20151023BHJP
   D06M 11/48 20060101ALI20151023BHJP
   D06J 1/00 20060101ALI20151023BHJP
【FI】
   A47H23/00 Z
   D06M10/00 K
   D06M11/48
   D06J1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-76372(P2015-76372)
(22)【出願日】2015年4月2日
(31)【優先権主張番号】特願2014-79457(P2014-79457)
(32)【優先日】2014年4月8日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】595145441
【氏名又は名称】有限会社インテリアナガオカ
(74)【代理人】
【識別番号】100113664
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 正往
(74)【代理人】
【識別番号】110001324
【氏名又は名称】特許業務法人SANSUI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細田 弘
【テーマコード(参考)】
2E182
3B154
4L031
【Fターム(参考)】
2E182AA01
2E182AB16
2E182AC01
2E182FF02
3B154AB19
3B154AB31
3B154BA36
3B154BB02
3B154BB12
3B154DA18
4L031AB31
4L031BA09
4L031CA08
4L031CB09
4L031DA12
(57)【要約】
【課題】本発明は、安心、安全または快適な住環境等の実現に役立つ真に清潔なカーテンを提供できるカーテンの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のカーテンの製造方法は、縫製されたカーテンに付着している害虫、細菌類(ウイルスを含む)、塵埃または有機化合物質を除く清浄化工程(滅菌加工工程)と、清浄化工程後のカーテンを清浄な状態のまま梱包する梱包工程と、を備えることを特徴とする。清浄化工程は、例えば、紫外線照射、加熱またはエアーブロー等である。さらに梱包工程前に、カーテンに対して抗菌作用または有機化合物質の分解作用を発揮する薬剤を付与させる薬剤付与工程を備えるとよい。薬剤は、光触媒、特に室内光でも機能する酸化タングステンを含むと好ましい。カーテンに噴霧した薬剤を乾燥させるために行う加熱工程は、カーテンを加熱しつつ波形状に成形する加熱成形工程で兼用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫製されたカーテンに付着している害虫、細菌類(ウイルスを含む)、塵埃または有機化合物質を除く清浄化工程と、
該清浄化工程後のカーテンを清浄な状態のまま梱包する梱包工程と、
を備えることを特徴とするカーテンの製造方法。
【請求項2】
前記清浄化工程は、紫外線照射、加熱またはエアーブローのいずれかを前記カーテンに施すことによりなされる請求項1に記載のカーテンの製造方法。
【請求項3】
さらに、前記梱包工程前に、前記カーテンに対して抗菌作用または有機化合物質の分解作用を発揮する薬剤を付与させる薬剤付与工程を備える請求項1または2に記載のカーテンの製造方法。
【請求項4】
薬剤付与工程は、前記薬剤を前記カーテンに噴霧する薬剤噴霧工程と、
該薬剤噴霧工程後のカーテンを加熱して該薬剤を該カーテンに定着させる加熱工程と、
からなる請求項3に記載のカーテンの製造方法。
【請求項5】
前記薬剤は、光触媒からなる請求項3または4に記載のカーテンの製造方法。
【請求項6】
前記光触媒は、酸化タングステンからなる請求項5に記載のカーテンの製造方法。
【請求項7】
前記加熱工程は、前記カーテンを加熱しつつ波形状に成形する加熱成形工程を兼ねる請求項4に記載のカーテンの製造方法。
【請求項8】
少なくとも前記清浄化工程から前記梱包工程に至る各工程は、防塵壁または防塵シートで囲繞された防塵環境でなされる請求項1〜7のいずれかに記載のカーテンの製造方法。
【請求項9】
さらに、前記清浄化工程前に、前記縫製後のカーテンをレールに吊下する吊下工程を備え、
該カーテンは、該レールに沿って各工程に移動する請求項1〜8のいずれかに記載のカーテンの製造方法。
【請求項10】
前記加熱成形工程は、互い違いに対向配置された成形管列によって前記カーテンを挟持しつつ加熱および冷却することにより行う工程である請求項7に記載のカーテンの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法により得られることを特徴とするカーテン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安心、安全または快適な住環境等の実現に役立つ真に清潔なカーテンと、そのようなカーテンを提供できるカーテンの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
カーテンは、通常、下着等の衣類と同様に、原反から切り出した布地等からなる生地をそのまま縫製して製造される。このようなカーテンの製造現場は、他の衣類等の製造現場と同様に、多くの塵埃等が浮遊、飛散した状態であることが多い。また、カーテンに使用される生地は、通常は、除菌等がなされずに納入され、害虫(ダニ等)、細菌類(ウイルスを含む。)、各種の有害な有機化合物質等が付着したまま、裁断、縫製等されている。そして完成したカーテンは、何ら除菌等されずに、そのまま段ボール箱等に梱包されて出荷されているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−299568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
下着等の衣類であれば、その購入者(ユーザー)によって、着用前に予め洗濯等されることが多い。これに対してカーテンは、その使用前に予め洗濯やクリーニングがされることが殆どない。
【0005】
その一方で最近では、安心、安全または快適な住環境等の提供が強く要求されている。特に、病院、介護施設、乳幼児や高齢者などの抵抗力の弱い家族がいる家庭等では、清潔な製品の提供がより強く求められている。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、安心、安全または快適な住環境等の実現に役立つ清潔なカーテンと、そのようなカーテンを提供できるカーテンの製造方法とを提供することを目的とする。
【0007】
ちなみに、吊り下げたカーテンに過熱蒸気を噴射して、カーテンを波形状に成形するプリーツ加工(ひだ加工)に関する記載が特許文献1にある。もっとも特許文献1は、単にプリーツ加工方法(装置)を提供するのみであり、カーテン全体を除菌したり、除菌等したカーテンを清浄な状態のまま密閉梱包することなどは、当然ながら全く想定されていない。仮に、過熱蒸気の噴霧によってカーテンが一時的に除菌または殺菌等されることがあるとしても、その後の乾燥等が塵埃、害虫、細菌類等の浮遊、飛散等する雰囲気でなされ、乾燥したカーテンは露出したままの状態で梱包して出荷される。このため特許文献1の場合でも、結局、清浄なカーテンが消費者に供給されることはあり得ない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、滅菌、殺菌、除菌等をした清浄な状態のままでカーテンを樹脂袋等に密閉梱包して出荷することを着想した。この着想を具体化すると共に発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
【0009】
《カーテンの製造方法》
(1)本発明のカーテンの製造方法は、縫製されたカーテンに付着している害虫、細菌類(ウイルスを含む)、塵埃または有機化合物質を除く清浄化工程と、該清浄化工程後のカーテンを清浄な状態のまま梱包する梱包工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
(2)本発明のカーテンの製造方法によれば、滅菌、殺菌、除菌等されて清浄な状態のまま梱包されたカーテンが得られ、安心で安全なカーテンをユーザーに提供することが可能となる。そしてユーザーは、これまで着目すらしていなかったカーテンを通じて、真に快適な住環境等を実現することが可能となる。
【0011】
《その他》
(1)本発明は上述の製造方法としてのみならず、その製造方法により得られたカーテンとしても把握できる。
【0012】
(2)本発明は、さらに、上述した製造方法を実現するための製造装置(例えば、ひだ加工装置)としても把握できる。この際、本発明の製造方法に係る構成要素である「〜工程」を、「〜手段」と読み替えることにより、製造装置に係る構成要素とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一実施例に係るカーテンのひだ加工装置の概略を示す模式図である。
図2】カーテンを挟み込んだ状態を示す説明図である。
図3】第二実施例に係るカーテンのひだ加工装置の概略を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、本発明の製造方法のみならず、製造装置(または加工装置)やそれらにより得られたカーテンにも適宜該当し、方法的な構成要素であっても物に関する構成要素ともなり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
【0015】
《清浄化工程》
本発明に係る清浄化工程は、縫製されたカーテンに付着している害虫(ダニ等)、細菌類(ウイルスを含む)、塵埃または有機化合物質を、駆除または除去する工程である。より具体的にいうと、清浄化工程は、滅菌(加工)工程、殺菌(加工)工程または除菌(加工)工程と換言できる。例えば、清浄化工程は、例えば、紫外線照射、加熱またはエアーブロー(エアシャワー)のいずれかをカーテンに施すことにより行える。より具体的にいうと、例えば、清浄化工程前に予め縫製したカーテンをレール等に吊下しておき(吊下工程)、その吊下したカーテンの上方から下方にかけて紫外線照射したり、圧縮空気を噴出させて吹きかけるとよい。また、吊下されたカーテンの下方(底部)には、振り落とされた塵埃等を外部へ排出する排気ダクトが配設されていると好ましい。なお、当然であるが、紫外線照射、エアーブロー、加熱等を複数組合わせて行うと好ましい。また、エアーブローは清浄な空気をカーテンに吹きつけるだけでもよいが、例えば、乾燥熱風等をカーテンに吹きつけると、より好ましい。
【0016】
《梱包工程》
本発明に係る梱包工程は、清浄化工程で滅菌、殺菌、除菌等されたカーテンを、清浄な状態のまま梱包する工程である。例えば、ビニール、ポリエチレン等からなる樹脂袋に、清浄な状態のままのカーテンを密閉梱包すると好ましい。清浄化工程から梱包工程が完了するまでは、カーテンに細菌類や塵埃等が再付着してカーテンが再汚染されることがないように、例えば、機械による自動化がされていると好ましい。少なくとも、清浄化工程後のカーテンに作業者が素手で触ることがないようにすることが好ましい。なお、樹脂袋に密閉梱包等された後のカーテンは、もはや再汚染されることがなく、清浄な状態のままで取扱い可能であり(つまり取扱性に優れ)、作業者が通常通り箱詰め等できる。
【0017】
《薬剤付与工程》
清浄なカーテンがユーザーに提供されても、密閉梱包が開封されて使用されると、室内に浮遊等している細菌類や有害な有機化合物質がカーテンに付着し得る。そこで本発明の製造方法は、梱包工程前に、さらに、カーテンに対して抗菌作用または有機化合物質の分解作用を発揮する薬剤を付着させる薬剤付与工程を備えると好適である。具体的にいうと、薬剤付与工程は、例えば、薬剤をカーテンに噴霧する薬剤噴霧工程と、薬剤噴霧工程後のカーテンを加熱して薬剤をカーテンに定着(または薬剤を乾燥)させる加熱工程と、からなると好ましい。なお、当然であるが、薬剤噴霧工程を行う場合、薬剤は噴霧に適した状態、具体的には、主成分が溶媒または分散媒と混合された液状となっていると好ましい。
【0018】
このような薬剤は、種々考えられるが、例えば、安全で耐久性に優れる光触媒が好ましい。光触媒には、酸化チタン、酸化タングステンなどがある。いずれでもよいが、室内光レベルでも十分に作用する酸化タングステンがカーテンにはより好ましい。
【0019】
《成形工程》
カーテンは、通常、波形状に成形(ひだ加工またはプリーツ加工)されることが多い。また、この成形加工は、縫製後の生地を加熱して型付けされることが多い。そこで、上述した加熱工程をそのような加熱成形工程で兼用すると効率的である。つまり、上述した加熱工程は、カーテンを加熱して波形状に成形する加熱成形工程であると好ましい。
【0020】
加熱成形工程は、例えば、互い違いに対向配置された成形管列(伝熱管列)によってカーテンを挟持しつつ加熱および冷却することにより行うことができる。各成形管による加熱は、その内部に高温な熱媒(蒸気を含む高温ガス等)を供給することにより行える。また、各成形管による冷却は、その内部に低温な熱媒(冷却水等)を供給することにより行える。
【0021】
《防塵環境》
本発明に係る清浄化工程等を行うスペースは、カーテンの縫製工場内に併設されることが多い。このような場合、カーテンを清浄な状態に維持したまま梱包するためには、少なくとも清浄化工程から梱包工程に至る各工程が清浄な環境(クリーンルーム等の空間)でなされることが望まれる。このような環境は、例えば、防塵壁または防塵シートで、各工程を行う空間を囲繞することにより形成可能である。具体的にいうと、縫製後のカーテンをレールに吊下する吊下工程を清浄化工程前に行った後、防塵壁または防塵シートで形成した一連の防塵環境空間、または防塵壁または防塵シートで区画分割された防塵環境ステーションで、各工程が行われると好ましい。なお、吊下工程を設けることにより、各工程間(各ステーション間)のカーテンの移動は、レールに沿って容易に効率的に行える。
【0022】
なお、防塵壁または防塵シートの一部は、吊下工程後のカーテンを防塵環境空間へ搬入するときまたは梱包工程後のカーテンを防塵環境空間から搬出するときに、開閉する開閉扉となっていると好ましい。
【0023】
《ひだ加工装置》
上述した加熱成形工程は、例えば、次のようなひだ加工装置により行うことができる。すなわち、断面外形の一部又は全部が略楕円状(円状を含む。以下同様)でカーテンの丈方向(または鉛直方向)に沿って配置された複数の第一伝熱管が相互に所定の間隙を保持しつつ軸線に対して直交する方向に整列して配設された第一伝熱管列と、断面外形の一部又は全部を略楕円状でカーテンの丈方向に沿って配置された複数の第二伝熱管が相互に第一伝熱管列と同じ間隙を保持しつつ軸線に対して直交する方向に整列して配設された第二伝熱管列と、
第一伝熱管列または第二伝熱管列の少なくとも一方を相対的に近接移動させて、隣接する第一伝熱管の間隙に第二伝熱管を部分的に侵入させてカーテンを第一伝熱管と第二伝熱管で挟持する伝熱管列移動手段と、第一伝熱管列および第二伝熱管の内部に加熱媒体を流入させる加熱媒体流入手段と、第一伝熱管列および第二伝熱管の内部に冷却媒体を流入させる冷却媒体流入手段と、を備えることを特徴とするカーテンのひだ加工装置を用いて、カーテンにひだを付けることができる。
【0024】
この際、第一伝熱管と第二伝熱管とは同形であり、楕円状の断面外形の短辺部をそれぞれ対向させて配設されていると好ましい。そして、第一伝熱管列の隣接間隔または第二伝熱管列の隣接間隔(幅)は、その伝熱管の短辺部の長さに相当して、調整可能となっていると好ましい。
【0025】
本発明のカーテンの製造方法を実施するために、ひだ加工装置は、密閉包装手段、エアシャワー等の塵埃除去手段、抗菌剤、防ダニ剤等の薬剤を噴霧する薬剤噴霧手段等を備えると好ましい。
【実施例】
【0026】
本発明のカーテンの製造方法を実施できるカーテンのひだ加工装置に係る実施例を以下に図面を用いて説明する。
【0027】
《第一実施例》
(1)ひだ加工装置
第一実施例であるカーテンのひだ加工装置1について、図1および図2を参照して説明する。ひだ加工装置1は、図1に示すように、主に第一伝熱管列10と、第二伝熱管列20と、伝熱管列移動手段30と、加熱媒体流入手段40と、冷却媒体流入手段50とで構成される。
【0028】
第一伝熱管列10は、軸線を鉛直方向とする第一伝熱管11(以下、単に「伝熱管11」と称する。)が所定の間隙を保持しつつ配設されている。便宜上、図1には伝熱管11を5本配置した場合を描いたが、カーテンの幅に応じて本数は適宜調整される。各伝熱管11は、パイプからなり、その中空内部を蒸気や冷水などの気体または液体が流通する。各伝熱管11への気体または液体の供給は、各伝熱管11に接続された配管12、13の分岐管を通じてなされる。なお、伝熱管11の上下両端部は遮蔽されている。
【0029】
具体的にいうと、各伝熱管11の下端側には配管12が接続され、それらの上端側には配管13が接続されている。なお、配管12、13は、それぞれ図示していない第一本体フレームに固定されている。また第一伝熱管列10も、配管12、13を介し、その第一本体フレームに固定されている。但し、第一伝熱管列10を第一本体フレームで直接支持して、第一伝熱管列10と配管12、13の分岐管との接続をフレキシブルチューブで行うことにより、各伝熱管11の隣接間隙の調整を容易に行えるようになる。
【0030】
第二伝熱管列20は、第一伝熱管列10とほぼ同様であり、第一伝熱管11と同構成の第二伝熱管11(以下、単に「伝熱管11」と称する。なお、第一伝熱管11と第二伝熱管11は、同様の構成である。)が所定の間隙で配設されてなる。但し、第一伝熱管列10と第二伝熱管列20は、1/2ピッチ(隣接間隔)分だけシフトして各伝熱管11が互い違いに対向して配置されている。これにより、これは、後述するように、カーテンを挟み込む際に対向する各伝熱管11が相互に間隙部分に侵入して、第一伝熱管列10と第二伝熱管列20とにより、カーテンが挟み込まれて、ひだ形成がなされる。第二伝熱管列20を構成する各伝熱管11にも、上述した配管12、13が接続されている。また、第二伝熱管列20および配管12、13は、第二本体フレーム14(図1には第二本体フレームの一部のみを示した。)に固定されており、レール(図略)に沿って第二伝熱管列20は、第一伝熱管列10の方向に移動できるようになっている。
【0031】
伝熱管列移動手段30は、第二本体フレーム14に連結された電動式または油圧式のリニアアクチュエータからなる。これにより、図2に示すようにカーテンWを挟み込むように、第一伝熱管列10に第二伝熱管列20を接近させることができる。なお、伝熱管列移動手段30は、他のアクチュエータでもよく、また、第一伝熱管列10を第二伝熱管列20に接近させるか、またはそれら両方を移動させる構成としてもよい。
【0032】
加熱媒体流入手段40は、加圧された過熱蒸気(加熱媒体)を、配管12を通じて第一伝熱管列10および第二伝熱管列20の各伝熱管11の内部へ流入させるボイラーからなる。本実施例では、高温の過熱蒸気を各伝熱管11内で効率的に流通させるため、その下方にある配管12より供給して、その上方にある配管13から排出させたが、過熱蒸気の流通方向は逆でもよい。
【0033】
冷却媒体流入手段50は、タンク(図略)に貯留した冷水(冷却媒体)を、配管12を通じて第一伝熱管列10および第二伝熱管列20の各伝熱管11の内部へ流入させるポンプからなる。本実施例では、低温の冷水を各伝熱管11内で効率的に流通させるため、その上方にある配管13より供給して、その下方にある配管12から排出させてもよい。なお、十分な水圧の水道水等を各伝熱管11に供給する場合は、ポンプを省略できる。この場合の冷却媒体流入手段50は水道等となる。
【0034】
加熱媒体流入手段40または冷却媒体流入手段50と配管12または伝熱管11との間には、3方弁からなる流路切替機15が設置されている。流路切替機15により、過熱蒸気の配管12への供給、冷水の配管12への供給または配管12への流通遮断のいずれかを行うことができる。流路切替機15は、電磁バルブ等からなり、自動または作業者により制御可能なものであると好ましい。
【0035】
伝熱管11は、長尺で両端が閉じた管状部材で、内部の熱を外表面に伝えることができるようになっている。図2に示すように、伝熱管11の断面外形は、全体的に楕円形状となっている。各伝熱管11は、楕円の短辺部を相互に対向させるように配列させて、第一伝熱管列10または第二伝熱管列20を構成している(図2(a)参照)。このように各伝熱管11を配列することにより、楕円の長辺部に相当する伝熱管11の周側面とカーテンWとがより広い面積で接触するようになる。なお、伝熱管11は、熱伝導率の高い銅製としてもよいし、内部を流通する過熱蒸気や水に対する防錆性の高いステンレス製としてもよい。
【0036】
(2)ひだ加工
ひだ加工装置1を用いてカーテンWにひだ加工(プリーツ加工、加熱成形工程)をする様子を説明する。
【0037】
先ず、図2(a)に示すように、レールに吊下されたカーテンWを第一伝熱管列10と第二伝熱管列20との間に誘導する。
【0038】
次に、図2(b)に示すように、第二伝熱管列20を第一伝熱管列10の方向に移動させて、各伝熱管11でカーテンWを挟持する。第二伝熱管列20の移動量により、カーテンWに形成するひだ幅の調整が可能となる。なお、カーテンWの丈が不揃いであれば、裾を下を引っ張ったり、上に押し上げたりして調整する。この状態で、カーテンWを加熱および冷却してひだ加工すると、その丈も修正されて、全体的に均一的な丈となる。
【0039】
第一伝熱管列10と第二伝熱管列20により挟持されたカーテンWの加熱または冷却は、流路切替機15を操作して行える。すなわち、流路切替機15を操作して過熱蒸気を各伝熱管11に流入させて、カーテンWが十分に加熱されたところで、流路切替機15を切替えて、冷水を伝熱管11に流入させる。カーテンWが冷えたら、第二伝熱管列20を元の位置まで復帰させて、カーテンWを次の工程へ送る。こうしてカーテンWのひだ加工が完了する。
【0040】
本実施例のひだ加工装置1によれば、従来のように過熱蒸気を噴射して加熱する方式でないため、カーテンWを乾燥させる必要もなく、次の清浄化工程や梱包工程へ移ることができる。また、本実施例のひだ加工は、カーテンWを加熱してなされるため、害虫の駆除や滅菌、殺菌、除菌等の効果も有する。また、そのひだ加工前に、カーテンWに薬剤等を噴霧しておくと、ひだ加工時の加熱(加熱成形工程)によりカーテンWの乾燥(加熱工程)を併せて行える。従って、カーテンWに薬剤を噴霧等する場合でも、乾燥工程を特別に行うまでもなく、カーテンWを直ぐに梱包等することも可能となる。
【0041】
《第二実施例》
第二実施例であるカーテンのひだ加工装置2の構成について、図3を参照して説明する。ひだ加工装置2は、ひだ加工装置1の構成に加え、薬剤噴霧手段80と、塵埃除去手段70と、密閉包装手段60とを備える。なお、第一実施例と同じ部材等には、同符号を付して、その説明を省略する。
【0042】
薬剤噴霧手段80は、酸化タングステン等からなる光触媒、各種の抗菌剤または防虫剤等を含む液体(分散液または溶液)を、吊下したカーテンWの表裏両面に噴霧する噴霧ガンからなる。噴霧ガンも、カーテンWの上方から下方へ移動させて行うと好ましい。この薬剤噴霧手段80により、本発明に係る薬剤噴霧工程を行うことができる。
【0043】
塵埃除去手段70は、エアコンプレッサーとエアガンにより圧縮空気をカーテンWに対して噴出するエアシャワー等からなる。エアガンは、カーテンWの表裏両面に圧縮空気を噴射しながら上方から下方へ移動させると好ましい。この他、塵埃除去手段70は、例えば、塵埃を振動等により払い落す方式でもよいし、紫外線照射をそれらと併せて行うとより好ましい。この塵埃除去手段70により、本発明に係る清浄化工程を行うことができる。
【0044】
密閉包装手段60は、薬剤噴霧工程、加熱成形工程(ひだ加工工程)、清浄化工程等を経たカーテンWを入れた合成樹脂袋の開口を閉塞する熱シーラー等からなる。密閉包装手段60は、袋内の空気を排気して密閉する真空パック装置でもよいし、袋内に窒素等の不活性ガスを充填するパック装置でもよい。真空パック装置を用いると、カーテンWをひだ加工された状態で維持し易い。密閉包装手段60により本発明に係る梱包工程を行うことができる。
【符号の説明】
【0045】
1 カーテンのひだ加工装置(第一実施例)
2 カーテンのひだ加工装置(第二実施例)
10 第一伝熱管列
20 第二伝熱管列
30 伝熱管移動手段
40 加熱媒体流入手段
50 冷却媒体流入手段
60 密閉包装手段
70 塵埃除去手段
80 薬剤噴霧手段
図1
図3
図2