特開2015-205791(P2015-205791A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-205791水素生成剤、水素生成器、及び水素含有液の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-205791(P2015-205791A)
(43)【公開日】2015年11月19日
(54)【発明の名称】水素生成剤、水素生成器、及び水素含有液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/08 20060101AFI20151023BHJP
   C02F 1/68 20060101ALI20151023BHJP
   B01F 1/00 20060101ALI20151023BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20151023BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20151023BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20151023BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20151023BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20151023BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20151023BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20151023BHJP
   A61K 33/06 20060101ALI20151023BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20151023BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20151023BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20151023BHJP
   A61K 31/194 20060101ALI20151023BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20151023BHJP
【FI】
   C01B3/08 B
   C02F1/68 510B
   C02F1/68 510Z
   C02F1/68 520B
   C02F1/68 520G
   C02F1/68 530G
   B01F1/00 A
   A61K8/19
   A61K8/36
   A61K8/362
   A61K8/365
   A61Q19/10
   A61Q19/08
   A61K33/00
   A61K33/06
   A61P25/28
   A61P35/00
   A61P43/00
   A61K31/194
   A23L2/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-86702(P2014-86702)
(22)【出願日】2014年4月18日
(71)【出願人】
【識別番号】592227977
【氏名又は名称】ニッコ−化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中仙道 将人
(72)【発明者】
【氏名】小林 茂樹
【テーマコード(参考)】
4B017
4C083
4C086
4C206
4G035
【Fターム(参考)】
4B017LC03
4B017LK01
4B017LK08
4C083AB191
4C083AB192
4C083AB501
4C083AB502
4C083AC231
4C083AC271
4C083AC291
4C083AC301
4C083AC302
4C083AD282
4C083CC22
4C083DD17
4C083DD23
4C083EE12
4C083FF04
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA01
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA43
4C086NA14
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZB26
4C086ZC52
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA34
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA63
4C206NA14
4C206ZA15
4C206ZA16
4C206ZB26
4C206ZC52
4G035AA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、簡便且つ冷温又は常温で高濃度の水素分子を発生させることができる粉末状水素生成剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、簡便且つ冷温又は常温で高濃度の水素分子を発生することができる、金属マグネシウム粉末、有機酸の粉末、及びバインダーを含む粉末状水素生成剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属マグネシウム粉末、有機酸の粉末、及びバインダーを含む粉末状水素生成剤。
【請求項2】
前記粉末状水素生成剤の平均粒子径は500μm以下である、請求項1に記載の粉末状水素生成剤。
【請求項3】
前記金属マグネシウム粉末と、前記有機酸の粉末との重量比は、1:5〜1:10の範囲にある、請求項1又は2に記載の粉末状水素生成剤。
【請求項4】
前記金属マグネシウム粉末と前記有機酸の粉末の重量の合計と、前記バインダーの重量との比は、100:0.1〜100:5の範囲にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉末状水素生成剤。
【請求項5】
前記有機酸は、クエン酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ピルビン酸、アコニット酸、ヒドロキシコハク酸、又はα-ヒドロキシプロパン酸からなる群より選択される1種又は2種類以上の有機酸である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉末状水素生成剤。
【請求項6】
前記有機酸の0.1mol/L水溶液は、比較電極としてAg/AgClを用いた場合に+10〜+140mVの平衡電位を持つ、請求項5に記載の粉末状水素生成剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の粉末状水素生成剤が、不織布からなる袋体に収納された水素生成器。
【請求項8】
前記袋体に、さらに錘を備えた、請求項7に記載の水素生成器。
【請求項9】
金属マグネシウム粉末、有機酸の粉末、及びバインダーを混合する工程と、
前記混合物を粉末にする工程と、を含む粉末状水素生成剤の製造方法。
【請求項10】
前記混合物を粉末にする工程を2回以上行う、請求項9に記載の粉末状水素生成剤の製造方法。
【請求項11】
前記粉末状水素生成剤の平均粒子径は500μm以下である、請求項9又は10に記載の粉末状水素生成剤の製造方法。
【請求項12】
前記金属マグネシウム粉末と、前記有機酸の粉末との重量比は、1:5〜1:10の範囲にある、請求項9〜11のいずれか1項に記載の粉末状水素生成剤の製造方法。
【請求項13】
前記金属マグネシウム粉末と前記有機酸の粉末の重量の合計と、前記バインダーの重量との比は、100:0.1〜100:5の範囲にある、請求項9〜12のいずれか1項
に記載の粉末状水素生成剤の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の粉末状水素生成剤、又は請求項7又は8に記載の水素生成器を、液体と接触させて液体中に水素を溶解させる水素含有液の製造方法。
【請求項15】
前記水素含有液が飲料、化粧品、医薬、又は洗浄剤である、請求項14に記載の水素含有液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素生成剤、水素生成剤を収納した水素生成器、及び水素含有液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、活性酸素分子種を消去する水素分子の抗酸化作用に注目が集まっている。現代日本人の欧米化による食生活習慣の変化や社会的生活におけるストレスなどにより、人は活性酸素分子種を高濃度に体に蓄積している。特に脳においては酸素が高度に消費されるため活性酸素が過剰に産生される可能性がある。水素分子は過剰な活性酸素分子種を消去し、活性酸素による酸化ストレスから人々を解放することが期待されている。
特に、水素分子は小さいために体内に吸収されると組織に広く深く拡散し、能動的に体の細胞や組織に吸収される。脳の血液脳関門は低分子しか通過することができないため、脳内における活性酸素分子種の消去にも水素分子が効果を発揮することが考えられる。
【0003】
水素分子への期待は老化や癌、さらには成人病の予防にまで広まっている。そのほか、アルツハイマー病などの認知症の予防にもつながると考えられている。そのため水素分子を含む水素水飲料や水素生成器など数多くの商品が市販され、開発され、予防医学や予防薬学への簡便で安価な応用が検討されている。
水素分子の摂取はジョギングやエアロビクスなどスポーツをする者への利用も勧められている。スポーツは酸素を必要以上に体に取り込むことになり、活性酸素の生成が非常に多くなるからである。
【0004】
水素分子を得る方法として、水の電気分解による方法が知られている(特許文献1)。しかし、設備が大きくなり電気を必要とするため、設置場所や利便性に欠ける難点があった。
【0005】
また、水素分子を得る方法として、金属マグネシウムと水とを接触させる方法が複数知られている。これらの方法は高価な設備を必要とせず、利便性がよい。
例として、内部に液体が滲入可能なセラミックスを構成物質とするケースに収納した金属マグネシウムと飲料水とを容器内で反応させる方法が知られている(特許文献2)。この方法では、生成する水素分子濃度が低い。またセラミックスを用いるので、生成する過酸化水素水が体内での還元によって毒性の強いヒドロキシラジカルを作り、安全性に不安を残す。
さらに、金属マグネシウムとトルマリン鉱石が入っている、内部に水が滲入可能な容器を水中に入れることにより反応させる方法が知られているが、この方法は水素発生効率が良くない(特許文献3)。
【0006】
この他に水素水飲料を得る方法として、高圧で水素分子ガスを飲料に溶解させ容器に封入する方法が知られているが、分子量が小さいために水素分子が容器から揮散してしまうこと、また飲料自体が比較的高価であることなどの問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4069470号公報
【特許文献2】特許第4252434号公報
【特許文献3】特許第4165634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、簡便に且つ低温で高濃度の水素分子を効率よく発生させることができる粉末状水素生成剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決すべく検討を重ねた結果、本発明者らは、金属マグネシウム粉末、有機酸の粉末、及びバインダーを含む粉末状の水素生成剤により、簡便に且つ冷温又は常温で高濃度の水素分子が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
〔1〕金属マグネシウム粉末、有機酸の粉末、及びバインダーを含む粉末状水素生成剤;
〔2〕前記粉末状水素生成剤の平均粒子径は500μm以下である、上記〔1〕に記載の粉末状水素生成剤;
〔3〕前記金属マグネシウム粉末と、前記有機酸の粉末との重量比は、1:5〜1:10の範囲にある、上記〔1〕又は〔2〕に記載の粉末状水素生成剤;
〔4〕前記金属マグネシウム粉末と前記有機酸の粉末の重量の合計と、前記バインダーの重量との比は、100:0.1〜100:5の範囲にある、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の粉末状水素生成剤;
〔5〕前記有機酸は、クエン酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ピルビン酸、アコニット酸、ヒドロキシコハク酸、又はα-ヒドロキシプロパン酸からなる群より選択される1種又は2種類以上の有機酸である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の粉末状水素生成剤;
〔6〕前記有機酸の0.1mol/L水溶液は、比較電極としてAg/AgClを用いた場合に+10〜+140mVの平衡電位を持つ、上記〔5〕に記載の粉末状水素生成剤;
〔7〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の粉末状水素生成剤が、不織布からなる袋体に収納された水素生成器;
〔8〕前記袋体に、さらに錘を備えた、上記〔7〕に記載の水素生成器;
〔9〕金属マグネシウム粉末、有機酸の粉末、及びバインダーを混合する工程と、
前記工程で得られた混合物を粉末にする工程と、を含む粉末状水素生成剤の製造方法;
〔10〕前記混合物を粉末にする工程を2回以上行う、上記〔9〕に記載の粉末状水素生成剤の製造方法;
〔11〕前記粉末状水素生成剤の平均粒子径は500μm以下である、上記〔9〕又は〔10〕に記載の粉末状水素生成剤の製造方法;
〔12〕前記金属マグネシウム粉末と、前記有機酸の粉末との重量比は、1:5〜1:10の範囲にある、上記〔9〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の粉末状水素生成剤の製造方法;
〔13〕前記金属マグネシウム粉末と前記有機酸の粉末の重量の合計と、前記バインダーの重量との比は、100:0.1〜100:5の範囲にある、上記〔9〕〜〔12〕のいずれか1項に記載の粉末状水素生成剤の製造方法;
〔14〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の粉末状水素生成剤、又は上記〔7〕又は〔8〕に記載の水素生成器を、液体と接触させて液体中に水素を溶解させる水素含有液の製造方法;及び
〔15〕前記水素含有液が飲料、化粧品、医薬、又は洗浄剤である、上記〔14〕に記載の水素含有液の製造方法
に、関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粉末状水素生成剤は、液体と接触する表面積が大きいために水素分子発生反応が極めて速く進む。短時間で水素分子発生反応が終わるために、液体中の水素分子が高濃度であるうちに水素含有液を利用することができ、経時的に水素分子が容器から揮散してしまう心配がない。
本発明の水素含有液の製造方法は、大きな設備は必要とせず、設置場所を問わないため、必要なときにその場で簡便に高濃度の水素含有液を製造することができる。常温以下で水素分子を発生させることができるため、安全性にも優れている。
本発明の粉末状水素生成剤は、金属マグネシウム粉末と有機酸の粉末を材料とする粉末であるため、反応がよく進み、未反応の金属マグネシウムと有機酸は残りにくい。
本発明の水素生成器によれば、生成するクエン酸マグネシウムや未反応のマグネシウムを水素含有液から隔絶することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の粉末状水素生成剤が収納された水素生成器を示す。
図2図2は、本発明の粉末状水素生成剤を水に加え、水素を生成させた後に残る固形物をEI+−質量スペクトル(EI+−MS)で分析した結果を示す。
図3図3は、金属マグネシウム粉末8mgと、0.1Mの酸、塩基、又は緩衝液等を混合して発生した水素分子の生成量のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る粉末状水素生成剤は、金属マグネシウム粉末、有機酸の粉末、及びバインダーを含む。
【0014】
本明細書において金属マグネシウム粉末は、金属マグネシウムからなる粉末を意味し、その粒子径は特に問わない。金属マグネシウム粉末は、市販のものを用いることができる。
【0015】
本明細書において有機酸の粉末は、有機酸からなる粉末を意味し、その粒子径は特に問わない。有機酸の粉末は、市販のものを用いることができる。
【0016】
本明細書においてバインダーは、金属マグネシウム粉末と、有機酸の粉末とを結合して粉末を形成することができ、水に溶けやすい性質を持つ限り特に限定されるものではなく、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ワックス、ショ糖、乳糖、ブドウ糖、ソルビトール、マルチトール、デキストリン、又はこれらの組み合わせ等を選択することができる。
【0017】
本発明に係る粉末状水素生成剤の平均粒子径も特に限定されないが、例えば、100μm以下、150μm以下、200μm以下、250μm以下、300μm以下、350μm以下、400μm以下、450μm以下、又は500μm以下であってもよい。
本発明に係る粉末状水素生成剤の形状は、顆粒状であってもよい。
【0018】
従来の方法では、マグネシウムと水を反応させて水素分子を生成させる場合、高温にする必要があった。しかし、本発明に係る粉末状水素生成剤は、水と接触する表面積が大きく水素発生反応が促進されるため、常温以下の液体との反応でも高濃度水素分子を発生させることができる。
【0019】
より具体的には、本発明はマグネシウムと水との水素分子生成反応において、遷移状態を経る反応速度論に基づく新規な粉末状水素生成剤である。本発明の粉末状水素生成剤は、有機酸の作用により活性化エネルギーを下げることで水素分子生成速度を大きくし、水素分子生成量を格段に増加させる。
従来知られている
Mg+H2O→Mg(OH)2+H2
の反応式は、マグネシウムを冷水に加えてもほとんど水素分子が生成しないことを説明していない。マグネシウムと水との反応による水素分子生成機構は、遷移状態により解析した結果、
Mg+2H2O→[Mg(OH)2]+H2*→Mg(OH)2+H2
のような、これまでに知られていない反応機構によるものだと考えられる。
そして、酸触媒による水素分子の迅速な生成速度の増加は活性化エネルギーの低下によるものであると予測され、
Mg+2H2O・・・H−OH→ [Mg(H2O)2(H2O)]*→Mg(OH)2+H2O+H2
の式により、本発明に係る粉末状水素生成剤の反応を説明することができる。ここで、「*」はその分子が遷移状態にあること、「・・・」はMg+2H2O系とH−OH系が相互作用をしていることを示している。
このことは、水中でマグネシウムと酸を極めて近く共存させることが可能な本発明の粉末状水素生成剤が、効率よく高濃度の水素を発生させられることを説明する。
【0020】
本発明に係る粉末状水素生成剤においては、金属マグネシウム粉末と、有機酸の粉末との重量比は特に限定されないが、例えば約1:5〜1:10の範囲とすることができる。約1:5以上、約1:6以上、又は約1:7以上であってもよく、約1:8以下、約1:9以下、又は約1:10以下であってもよい。
【0021】
本発明に係る粉末状水素生成剤においては、金属マグネシウム粉末と有機酸の粉末の重量の合計と、バインダーの重量との比も特に限定されないが、例えば、約100:0.1〜約100:5の範囲とすることができる。約100:0.5、約100:1、約100:2、約100:3、約100:4、又は約100:5であってもよい。
【0022】
本明細書において有機酸とは、クエン酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸(ヒドロキシコハク酸)、コハク酸、イソクエン酸、ピルビン酸、又はアコニット酸等の有機酸を1種類又は2種類以上を選択することができる。発生する水素分子を飲料として使用する場合は、飲用可能である有機酸を用いてもよい。
ATP生成におけるクエン酸回路では、ピルビン酸を経てクエン酸からリンゴ酸、及びコハク酸などの中間体が生成する。このため水素生成剤に上述のような有機酸を用いることで、クエン酸同様に、水素分子を高濃度に生成することに加え、エネルギー代謝を促進することも期待される。なお、クエン酸回路では酸素を過剰に使い活性酸素種であるスーパーオキシドやヒドロキシラジカルが過剰に生成するが、本発明に係る水素生成剤によれば、生成した水素分子がそれを除去することも期待される。
【0023】
本発明に係る粉末状水素生成剤に用いる有機酸は、0.1mol/L水溶液にしたときに、脱気蒸留水の平衡電位を0mVとし、比較電極としてAg/AgClを用いた場合に、平衡電位+10mV以上、+20mV以上、+30mV以上、+40mV以上、+50mV以上、+60mV以上、+70mVであり、+80mV以下、+90mV以下、+100mV以下、+110mV以下、+120mV以下、+130mV以下、+140mV以下となるものを用いてもよい(ただし、脱気精製水の平衡電位を0mVとする)。このような有機酸は効率よく水素分子を生成する。
【0024】
本発明に係る粉末状水素生成剤は、一種以上の賦形剤、充填剤、希釈剤、崩壊剤、着色剤、緩衝剤、コーティング、界面活性剤、湿潤剤、滑剤、流動促進剤をさらに含んでもよい。
【0025】
本明細書において水素生成器とは、本発明に係る粉末状水素生成剤を不織布等からなる袋体に収納したものをいう。
【0026】
本明細書における不織布はどのようなものであってもよいが、人体に影響を及ぼすものでないこと、発生した水素分子を袋体の外に放出することができること、袋体の外に漏出することが望ましくない物質、例えば粉末状水素生成剤や水素分子発生反応により生成する難溶性の水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)や主成分のクエン酸マグネシウム((C657)2・Mg3)を袋体の中に留めておくことができること、粉末状水素生成剤による摩擦等に耐えられること、などの条件を満たすものを選択することができる。
【0027】
本明細書における不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、又は綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。セルロースを80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、又は100%含むキュプラ繊維からなる不織布を用いてもよい。
【0028】
本明細書における不織布の空孔径は、水素生成器を液体に入れたときに、水素分子を袋体の外に放出することができ、且つ、袋体の外に漏出することが望ましくない水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)やクエン酸マグネシウム((C657)2・Mg3)を袋体の中に留めておくことができるメッシュサイズを選択することができる。例えば袋体の空孔径は、60以上、65以上、80以上、100以上、115以上、150以上、170以上、200以上、250以上、270以上、325以上、400以上、500以上、又は635以上のメッシュサイズであってもよい。
【0029】
本明細書における袋体は、水素含有飲料として用いる場合には、例えば飲料の風味等を損なうことがない不織布が望ましい。例えば香料が含まれた水素含有液を生成する場合には、香気等を損なうことがない不織布が望ましい。
【0030】
本明細書における袋体のサイズ、形状は適宜選択することができる。ティーバッグ状にタグをつけてもよい。市販のティーバッグ等を適宜利用してもよい。
【0031】
本明細書の水素生成器は、水素分子生成による浮き上がりを防止するために袋体に錘を備えていてもよい。錘は袋体の外側又は内側に配置することができ、袋体の外側に錘をつけてもよく、袋体の中に錘入れてもよい。錘の素材は人体に影響を及ぼさない限り特に限定されず、例えばプラスチックとすることができる。例えば、袋体の底に円筒形のプラスチックの錘を付随していてもよい。
【0032】
本発明に係る粉末状水素生成剤の製造方法は、金属マグネシウム粉末、有機酸の粉末、及びバインダーを混合する工程と、前記工程で得られた混合物を粉末にする工程と、を含む。
金属マグネシウム粉末、有機酸の粉末、及びバインダーを混合する工程と、混合物を粉末にする工程は、順次行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0033】
本発明に係る粉末状水素生成剤の製造方法は、混合物を粉末にする工程を2回以上行ってもよい。
この場合、金属マグネシウム粉末、有機酸の粉末、及びバインダーを混合した後、混合物を粉末にする工程を2回以上行ってもよく、金属マグネシウム粉末、有機酸の粉末、及びバインダーを混合しながら同時に粉末にする工程を2回以上行ってもよい。
金属マグネシウム粉末、有機酸の粉末、及びバインダーを混合する工程は、均一に混合することができるミキサーを用いることができるが、均一に混合される限りどのような方法であってもよい。例えば工業用ミキサーや家庭用ミキサーなどを使って混合する等の、当業者に公知の方法で行うことができる。
混合物を粉末にする工程は、混合物を粉末状に粉砕することができる粉砕機及び微粉砕機(例えばミル、ビーズミル、及びボールミル)を用いることができるが、混合物が粉末状に粉砕される限りどのような方法で行ってもよい。
ミキサーやミルを使い、金属マグネシウム粉末、有機酸の粉末、及びバインダーを混合する工程と混合物を粉末にする工程を同時に行うこともできる。
混合物を粉末にする工程を2回行う場合、1回目の工程である程度の粒子径になるように混合物を粉末にし、その粉末を2回目の工程で所望の粒子径になるように粉末状に粉砕することができる。この工程において、1回目の工程と2回目の工程は、同一の装置を用いて行ってもよいし、異なる装置を用いて行ってもよい。
【0034】
粉末状水素生成剤の平均粒子径、金属マグネシウム粉末と有機酸の粉末との重量比、及び、金属マグネシウム粉末と有機酸の粉末の重量の合計と、バインダーとの重量比は、上述のとおりである。
【0035】
本明細書における水素含有液の製造方法は、本発明に係る粉末状水素生成剤又は水素生成器と液体とを接触させることによって液体中に水素分子を溶解させる工程を含む。液体は、飲料用途、化粧用途、医薬用途、洗浄用途、その他の各種用途に使用できる液体であってもよい。
【0036】
本明細書における飲料用途の液体は、水道水、天然水、炭酸水、茶、清涼飲料、果実飲料、乳酸飲料、アルコール飲料、その他の飲料であってもよい。また、常温以下であってもよい。
【0037】
例えば常温の水道水が入っているコップに、本発明に係る粉末状水素生成剤、又は水素生成器を入れて水素分子を発生させることにより、コップ中で水素含有水飲料を製造することができる。また、例えば冷温の緑茶が入っているペットボトルに、本発明に係る粉末状水素生成剤、又は水素生成器を入れて水素分子を発生させて、コップ中で水素含有茶飲料を製造することができる。
【0038】
本明細書における冷温とは、冷却装置などにより冷却された環境下での温度をいう。常温とは、冷却装置などによる冷却がなされていなく、且つ加熱装置などによる加熱もなされない環境下での温度をいい、例えば、室温、10℃〜35℃、15℃〜25℃と考えることができるがこれらに限定されない。
【0039】
本明細書における水素生成器は小型で携帯可能であるため、時や場所を制限されることなく、水素含有液の使用時にその場で簡便に水素含有液を生成することができ、保存劣化の心配はない。
【0040】
一実施形態では、本発明の粉末状水素生成剤が約200mg入った水素生成器を、冷水又は常温水約150mLに浸漬させると、15〜20分以内に約51〜60ppmの水素分子を含む水素水を得ることができる。
【0041】
本明細書において引用されるすべての特許文献及び非特許文献の開示は、全体として本明細書に参照により組み込まれる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。当業者は、本発明の意義を逸脱することなく様々な態様に本発明を変更することができ、かかる変更も本発明の範囲に含まれる。
【0043】
実施例1 粉末状水素生成剤の調製
金属マグネシウム粉末、クエン酸粉末、及びヒドロキシプロピルセルロースをミル(ラボネクスト株式会社、HS−20)で均一に撹拌しながら細粒化した。次に、ビーズミル(アシザワ・ファインテック株式会社)で攪拌してさらに細かい粉末とし、粉末状水素生成剤を得た。混合した金属マグネシウム粉末、クエン酸粉末、ヒドロキシプロピルセルロースの重量比は、1:7:0.08である。
得られた粉末状水素生成剤の粒子径を標準ふるいを用いて測定した。粉末状水素生成剤の85%が200メッシュ(目開き75μm)、15%が150メッシュ(目開き106μm)のふるいを通過した。
【0044】
実施例2 水素生成器の製造
実施例1で得られた粉末状水素生成剤200mgをキュプラ繊維からなる不織布に封入し、水素生成器を得た(図1)。
【0045】
実施例3 水素水の生成
実施例1で得られた粉末状水素分子生成剤18mgに、24℃の水を6mL加え、撹拌下に水素分子指示薬を滴下した。溶液の色が持続的に青く呈色したときを終点とし、粉末水素生成剤に水を加えてから終点までに発生した水素分子の量を測定した。水素分子は約20分以内に約5.1ppm生成した。
【0046】
実験例1 沈殿物の分析
実施例1で得られた粉末状水素生成剤300mgを常温水10mLに添加すると、水素分子が生成し、さらに白色沈殿物が目に見えるように生成した。粉末状水素生成剤が完全に反応してから約1〜2時間後の反応混合物50mLをプラスチック遠沈管に加え、氷冷下でエタノール20mLを加え、混合物を沈殿させた。4℃、2000rpmの条件で遠心処理し、上清を除いた後、残渣を減圧乾燥し、90mgの固体を得た。この個体をEI+−質量スペクトル(EI+−MS)により、イオン化電圧50eVで分析した。標品(東京化成工業株式会社)との比較からこの沈殿物はC1210Mg314・9H2O(クエン酸マグネシウム)であることがわかった(図2)。フラグメントイオンピークm/z427は分子イオンピークC1210Mg314のm/z451からMgが脱離したピーク(−m/zMg)に相当することから明らかである。
【0047】
予備実験例 水素分子生成量の測定
金属マグネシウム粉末8mgを、それぞれ0.1mol/Lの酸、塩基、又は緩衝液等に加え、生成する水素分子量を測定した。有機酸水溶液又は緩衝液等としてTEA(テトラエチルアミン)、水、クエン酸、酢酸緩衝液(pH=5.0)、リン酸緩衝液(pH=6.9)、酢酸、酒石酸、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、及び酢酸ナトリウムを用いた(図3)。
【符号の説明】
【0048】
1 糸
2 不織布
3 錘
4 粉末状水素生成剤
図1
図2
図3