【解決手段】(A)ジ(メタ)アクリレート、(B)3官能以上の多官能チオール化合物、(C)(メタ)アクリレート(ただし、前記(A)を除く)、(D)光重合開始剤、を含有し、前記(A)は、ポリエーテル鎖を有するウレタン化合物であるポリエーテルウレタンの両末端に(メタ)アクリレート基を有するウレタンジ(メタ)アクリレートであり、そのポリエーテル鎖から分岐するアルキル側鎖を有し、(メタ)アクリロイル基の総数aに対するチオール基の総数bの比(b/a)が3/100〜20/100の範囲内であることを特徴とする光硬化性防水剤。
複数本の絶縁電線の各絶縁電線の被覆材がそれぞれ部分的に除去され、露出された導体部分において複数本の絶縁電線の導体同士が接合されてスプライス部が形成されており、このスプライス部を含む複数本の絶縁電線の露出された導体の束からなる導体露出部とこれに隣接する各絶縁電線の各被覆材端部の外周面とを連続して覆って前記導体露出部を封止する封止部を有し、
前記封止部が、請求項1から3のいずれか1項に記載の光硬化性防水剤の硬化物により形成されていることを特徴とするワイヤーハーネス。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
本発明に係る光硬化性防水剤は、下記の(A)〜(D)を含有する。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタアクリレートのいずれかである。
(A)ジ(メタ)アクリレート
(B)3官能以上の多官能チオール化合物
(C)(メタ)アクリレート(ただし、前記(A)を除く)
(D)光重合開始剤
【0015】
(A)は、ポリエーテル鎖を有するウレタン化合物であるポリエーテルウレタンの両末端に(メタ)アクリレート基を有するウレタンジ(メタ)アクリレートであり、そのポリエーテル鎖から分岐するアルキル側鎖を有する。アルキル側鎖は、(A)の凝集を抑えて−50℃の低温環境下でも伸びやすくする。(A)の凝集を抑える効果から、ポリエーテル鎖から分岐するものであればよく、アルキル側鎖の炭素数は1以上であればよい。また、アルキル側鎖は、芳香環を有しない、脂肪族炭化水素であればよく、鎖状アルキルであってもよいし、環状アルキルであってもよい。鎖状アルキルは、直鎖状アルキルであってもよいし、分岐鎖状アルキルであってもよい。脂肪族炭化水素であるアルキル側鎖は、芳香環スタッキングによる凝集を引き起こさないものである。
【0016】
ポリエーテルウレタンのポリエーテル鎖は、ポリエステル鎖と比べて加水分解が起こりにくい。このため、防水目的で用いられる本発明において好適である。ポリエーテル鎖は炭素数1以上のアルキル直鎖と酸素原子とが交互に結合してなるものである。ポリエーテル鎖のアルキル直鎖の炭素数は特に限定されるものではなく、炭素数1以上であればよい。脂肪族炭化水素であるアルキル直鎖は、芳香環スタッキングによる凝集を引き起こさないものである。
【0017】
ポリエーテルウレタンは、ポリエーテルグリコールとジイソシアネートとを反応させることにより得られる。そして、ポリエーテルウレタンの両末端に(メタ)アクリレート基を有するウレタンジ(メタ)アクリレートは、両末端がNCO末端であるポリエーテルウレタンとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。
【0018】
ポリエーテルグリコールは、ポリエーテル鎖から分岐するアルキル側鎖を有するものであればよく、特に限定されるものではない。ポリエーテル鎖から分岐するアルキル側鎖を有するポリエーテルグリコールは、下記の一般式(1)で示される構造を含むグリコールである。下記の一般式(1)で示される構造の両末端がヒドロキシ基であるものからなるグリコールであってもよいし、下記の一般式(1)で示される構造を一部に含み両末端がヒドロキシ基であるグリコールであってもよい。
【化1】
式(1)において、m、n、oは繰り返し単位の数を示す数字である。m、nは0または1以上の整数であり、oは1以上の整数である。R1はポリエーテル鎖から分岐するアルキル側鎖であり、鎖状または環状の脂肪族アルキル基である。R2は水素基またはポリエーテル鎖から分岐するアルキル側鎖であり、アルキル側鎖である場合には、鎖状または環状の脂肪族アルキル基である。アルキル側鎖の炭素数は、上述するように1以上であればよい。
【0019】
式(1)において、m、n、oの値は特に限定されるものではないが、m、nは、柔軟性、結晶性の観点などの理由から、0または1〜20の整数であることが好ましい。nが0のときには、柔軟性などの理由から、mは2〜5の整数であることが好ましく、mが0のときには、柔軟性などの理由から、nは2〜5の整数であることが好ましい。
【0020】
ジイソシアネートは、両末端にイソシアネート基を有する化合物である。ジイソシアネートは、芳香環を有する芳香族ジイソシアネートであってもよいが、芳香環スタッキングによる凝集を引き起こさないなどの観点から、芳香環を有していない、脂肪族ジイソシアネートあるいは脂環族ジイソシアネートが好ましい。ジイソシアネートが芳香環を有していないと、(A)が分子内に芳香環を有していないウレタンジ(メタ)アクリレートとなる。この場合には、芳香環スタッキングにより硬くなるのが抑えられ、これによる伸びの低下が抑えられる。
【0021】
脂肪族ジイソシアネートとしては、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート(LDI)、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネートなどが挙げられる。脂環族ジイソシアネートとしては、水素添加4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、水素添加2,4−トリレンジイソシアネート(水添TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)などが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、1,4−ジフェニルジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(粗製MDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
(C)(メタ)アクリレート(ただし、前記(A)を除く)は、粘度、接着性など組成物の物性を調整する。粘度調整の観点から、(C)は、室温(25℃)において液状の(メタ)アクリレートであることが好ましい。(C)は、単官能の(メタ)アクリレートであってもよいし、2官能以上の多官能の(メタ)アクリレートであってもよい。
【0024】
(C)としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、等のモノ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレンングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンポリオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンポリオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのEO付加物又はPO付加物のポリオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加物トリ(メタ)アクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラフルフリルアルコールオリゴ(メタ)アクリレート、エチルカルビトールオリゴ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンオリゴ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールオリゴ(メタ)アクリレート、(ポリ)ブタジエン(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
(B)3官能以上の多官能チオール化合物は、1分子中に3個以上のメルカプト基(チオール基)を有するチオール化合物である。(メタ)アクリロイル基を有する(A)(C)に対し3官能以上の多官能チオール化合物を組み合わせることで伸びを維持したまま架橋構造が導入されて120℃の高温環境下におけるクリープ特性が向上する。3官能以上としているのは、2官能あるいは1官能のチオール化合物では、所定の配合においてこれによる架橋点が少なく、伸びを維持したまま120℃の高温環境下におけるクリープ特性が満足しない。120℃の高温環境下におけるクリープ特性を満足するほどに2官能あるいは1官能のチオール化合物を配合するとチオール化合物主体の組成物となり、光硬化性が不十分で、材料物性を満足しなくなる。
【0026】
(B)は、第1級チオール化合物であってもよいが、第2級チオール化合物であると、臭気が低減され使用し易い。更に(メタ)アクリロイル基との反応性が適度に抑えられ、本発明に係る光硬化性防水剤が保存安定性に優れるものとなる。
【0027】
(B)の第1級チオールの市販品としては、例えば、TMMP(トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート))、TEMPIC(トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート)、PEMP(ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート))、DPMP(ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート))(以上、SC有機化学株式会社)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2以上を組み合わせて用いてもよい。なお、第2級チオールの市販品としては、例えば、カレンズMT NR−1(1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン)、PE−1(ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート))、TPMB(トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート))、TEMB(トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート))(以上、昭和電工株式会社)などが挙げられる。
【0028】
(メタ)アクリロイル基の総数aに対するチオール基の総数bの比(b/a)は3/100〜20/100の範囲内とする。b/aが3/100未満である、すなわちチオール基の総数bが少なすぎると、(B)による架橋点が少なすぎて、硬化物は伸びを維持したまま120℃の高温環境下におけるクリープ特性を満足することができない。b/aが20/100超である、すなわちチオール基の総数bが多すぎると、(B)による架橋点が多すぎて、硬化物は−50℃の低温環境下における伸びを満足することができない。
【0029】
また、−50℃の低温環境下における伸びと120℃の高温環境下におけるクリープ特性のバランスにより優れるなどの観点から、b/aはより好ましくは4/100〜15/100の範囲内、さらに好ましくは5/100〜10/100の範囲内である。
【0030】
(A)および(B)の比率は、特に限定されるものではないが、(A)/(B)比(質量比)で40/60〜60/40の範囲内が好ましい。(A)が多くなると、架橋点が多くなり、120℃の高温環境下におけるクリープ特性が向上する。一方、(B)が多くなると、架橋点が少なくなり、−50℃の低温環境下における伸びが向上する。
【0031】
(D)光重合開始剤は、紫外線などの光を吸収してラジカル重合を開始させる化合物であれば特に制限されることなく、従来から公知のものを用いることができる。(D)光重合開始剤としては、具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、エチルアントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
本発明に係る光硬化性防水剤においては、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、各種の添加剤を含有することができる。上記添加剤としては、例えば、安定化剤、可塑剤、軟化剤、顔料、染料、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、増感剤、分散剤、溶剤、抗菌抗カビ剤が挙げられる。
【0033】
本発明に係る光硬化性防水剤は、−50℃の低温環境下および120℃の高温環境下でも高いシール性能を維持する硬化物を形成できるものであり、このような低温環境下および高温環境下に曝される可能性のあるところにおける防水剤として好適に用いられる。例えば自動車等の車両に配策されるワイヤーハーネスにおける防水剤として好適に用いられる。
【0034】
次に、本発明に係るワイヤーハーネスについて図面を用いて詳細に説明する。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態に係るワイヤーハーネスの模式図であり、
図2は、
図1におけるA−A線断面図である。
図1,2に示すように、本発明の一実施形態に係るワイヤーハーネス10は、複数本(3本)の絶縁電線1〜3が束ねられてなる電線束から構成されている。
【0036】
絶縁電線1は、本線となる絶縁電線であり、絶縁電線2,3は、この本線となる絶縁電線1にスプライス部4において接続される枝線となる絶縁電線である。スプライス部4は、本線となる絶縁電線1の中間部分におけるスプライス部であり、ワイヤーハーネス10は、中間スプライス部4を有する。
【0037】
各絶縁電線1〜3は、それぞれ芯線からなる導体5の外周が絶縁体からなる被覆材6により被覆されてなる。本線となる絶縁電線1では、長さ方向の中間部分で被覆材6が部分的に除去されて内部の導体5の一部が露出されている。枝線となる絶縁電線2,3では、長さ方向の末端部分で被覆材6が部分的に除去されて内部の導体5の一部が露出されている。ワイヤーハーネス10の中間スプライス部4は、各絶縁電線1〜3の被覆材6がそれぞれ部分的に除去され、露出された導体部分において複数本の絶縁電線1〜3の導体5同士が接合されることにより構成されている。導体5同士の接合は、溶接、圧着端子を用いた圧着、その他、公知の接合方法により行うものでよい。
【0038】
ワイヤーハーネス10は、この中間スプライス部4を含む複数本の絶縁電線1〜3の露出された導体の束からなる導体露出部7とこれに隣接する各絶縁電線1〜3の各被覆材端部1a〜3a、1bの外周面とを連続して覆って導体露出部7を封止する封止部8を有する。導体露出部7が封止部8で覆われて封止されることにより、外から導体露出部7に水が浸入するのを防止し、防水効果が得られる。封止部8は、本発明に係る光硬化性防水剤の硬化物により形成される。このため、−50℃の低温環境下および120℃の高温環境下で高いシール性能を維持し、−50℃の低温環境下から120℃の高温環境下で優れた防水性能を発揮する。
【0039】
図1および
図2に示すように、封止部8の外側には、封止部8よりも広い範囲で封止部8の外側を覆うように樹脂フィルム9が配置されている。封止部8を構成する光硬化性防水剤は、導体露出部7の素線間や導体露出部7における導体5と被覆材6の間などに光硬化性防水剤が浸透しやすくするため、塗布時には、流動性に優れる、低粘度の液状にされていることが好ましい。樹脂フィルム9は、硬化前の低粘度の状態にある光硬化性防水剤が導体露出部7の周囲から流動しないよう、光硬化性防水剤を導体露出部7の周囲に保持するものとなる。樹脂フィルム9は、封止部8の外側表面に接着されていてもよいし、接着されていなくてもよい。
【0040】
樹脂フィルム9は、導体露出部7の周囲に配置された光硬化性防水剤が光硬化可能となるよう、光透過性を有するものである。つまり、光硬化性防水剤を光硬化させるための照射光を光硬化可能な程度に透過するものである。樹脂フィルム9は、光透過性に優れる観点から、紫外線透過率が50%以上であることが好ましい。より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。また、樹脂フィルム9は、光硬化性防水剤の変形に追従して変形可能となる柔軟性を有する。光透過性、柔軟性などの観点から、樹脂フィルム9の厚みは、100μm以下が好ましい。より好ましくは5〜50μmの範囲である。
【0041】
樹脂フィルム9としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂や、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンや、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルや、ナイロンなどのポリアミドといった樹脂のラップシートが挙げられる。これらのうちでは、自己密着(粘着)がよく、導体露出部7の周囲を覆う光硬化性防水剤の周囲に巻き付けやすいなどの観点から、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂のラップシートが好適である。
【0042】
絶縁電線1〜3の導体5は、複数本の素線が撚り合わされた撚線で構成されているが、単線であってもよい。導体5は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などの導電性に優れる金属により構成されていればよい。その金属表面には、さらにニッケルなどの金属めっきが施されていてもよい。被覆材3は、樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴムなどを用いて形成されていればよい。材料としては、ポリオレフィン、PVCなどが挙げられる。
【0043】
ワイヤーハーネス10は、次のようにして製造することができる。
図3には、ワイヤーハーネスの製造方法を説明する工程を示す。
【0044】
図3(a)に示すように、各絶縁電線1〜3の被覆材6をそれぞれ部分的に除去し、露出された導体部分において複数本の絶縁電線1〜3の導体5同士を接合することにより中間スプライス部4を形成する。そして、中間スプライス部4を含む導体露出部7よりも広い範囲で導体露出部7を覆う大きさの樹脂フィルム9を準備して、中間スプライス部4を含む導体露出部7を広げられた樹脂フィルム9の上に載置する。次いで、中間スプライス部4を含む導体露出部7の上に、導体露出部7を十分に覆う量の、封止部8を構成する光硬化性防水剤8aを吐出装置のノズル10から供給する。吐出時における光硬化性防水剤8aは、常温のままでも加温されていてもよく、液状にされていればよい。
【0045】
次いで、
図3(b)に示すように、中間スプライス部4を含む導体露出部7および供給された光硬化性防水剤8aの上を覆うように樹脂フィルム9を折り返す。中間スプライス部4を含む導体露出部7の幅方向外では折り返された樹脂フィルム9の端部同士が重ね合わされる。重ね合わされた樹脂フィルム9の端部同士は、その自己密着性によって軽く貼り合わされる。この状態で、重ね合わされた端部の上にロール11を載置し、中間スプライス部4を含む導体露出部7に向けて移動させ、重ね合わされた端部をロール11でしごくことにより、樹脂フィルム9で包まれる内部空間を狭めて中間スプライス部4を含む導体露出部7に光硬化性防水剤を押し込むと同時に樹脂フィルム9の内側面を、中間スプライス部4を含む導体露出部7およびこれに隣接する被覆材6のそれぞれの端部と光硬化性防水剤8aに密着させる。
【0046】
次いで、
図3(c)に示すように、樹脂フィルム9の重ね合わされた端部を、中間スプライス部4を含む導体露出部7および光硬化性防水剤8aの周囲に巻き付ける。この端部を引っ張りながら巻き付けることにより、樹脂フィルム9の外側から光硬化性防水剤8aに圧力がかかり、光硬化性防水剤8aが中間スプライス部4を含む導体露出部7に浸透するのを促す。これにより、光硬化性防水剤8aは、中間スプライス部4を含む導体露出部7とこれに隣接する被覆材6のそれぞれの端部に十分に行き渡る。樹脂フィルム9の自己密着性により、樹脂フィルム9を巻き付けた状態が維持される。この状態で、光(紫外線)照射装置12から、導体露出部7を覆う光硬化性防水剤8aに樹脂フィルム9を通して光(紫外線)を照射する。光硬化性防水剤8aは光硬化し、硬化物となって封止部8が形成される。以上により、ワイヤーハーネス10が製造される。
【0047】
ワイヤーハーネス10は、所定の範囲に光硬化性防水剤8aの塗布を行いやすいことから、樹脂フィルム9を用いているが、他の方法で所定の範囲に光硬化性防水剤8aの塗布を行うことができれば、樹脂フィルム9を用いなくてもよい。また、光硬化性防水剤8aの硬化物との密着性が低ければ、硬化後に樹脂フィルム9をはがすなどして、樹脂フィルム9のないワイヤーハーネスとすることもできる。
図4には、樹脂フィルム9のないワイヤーハーネス20を示している。ワイヤーハーネス20は、樹脂フィルム9がない以外はワイヤーハーネス10と同様の構成であり、その他の説明を省略する。
【0048】
図5には、さらに他の実施形態に係るワイヤーハーネスを示す。ワイヤーハーネス30は、複数本(4本)の絶縁電線31〜34が束ねられてなる電線束から構成されている。
【0049】
各絶縁電線31〜34は、それぞれ芯線からなる導体5の外周が絶縁体からなる被覆材6により被覆されてなる。各絶縁電線31〜34は、それぞれ長さ方向の末端部分で被覆材6が部分的に除去されて内部の導体5の一部が露出されている。露出された導体部分において複数本の絶縁電線31〜34の導体5同士が接合されることによりワイヤーハーネス30のスプライス部35が構成されている。導体5同士の接合は、溶接、圧着端子を用いた圧着、その他、公知の接合方法により行うものでよい。スプライス部35は、複数本の絶縁電線31〜34のすべての絶縁電線の末端部分におけるスプライス部であり、ワイヤーハーネス30は、末端スプライス部35を有する。
【0050】
ワイヤーハーネス30は、この末端スプライス部35を含む複数本の絶縁電線31〜34の露出された導体の束からなる導体露出部36とこれに隣接する各絶縁電線31〜34の各被覆材端部31a〜34aの外周面とを連続して覆って導体露出部36を封止する封止部37を有する。導体露出部36が封止部37で覆われて封止されることにより、外から導体露出部36に水が浸入するのを防止し、防水効果が得られる。封止部37は、封止部8と同様、本発明に係る光硬化性防水剤の硬化物により形成される。
【0051】
ワイヤーハーネス30は、例えば、光硬化性防水剤を光硬化させるための照射光を光硬化可能な程度に透過する光透過性を有するキャップ状の透明容器38内に光硬化性防水剤を充填し、電線束の末端スプライス部35を含む導体露出部36とこれに隣接する各絶縁電線31〜34の各被覆材端部31a〜34aとを透明容器38内に充填された光硬化性防水剤に浸漬し、この状態で光照射を行って光硬化性防水剤を光硬化させることにより、製造することができる。封止部37はキャップ状の透明容器38から取り出してもよい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は、実施例により限定されるものではない。
【0053】
<ウレタンジ(メタ)アクリレートの合成>
(UA−1)
テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフランの共重合ポリエーテルグリコールである、変性テトラメチレンエーテルグリコール1(保土ヶ谷化学製「PTG−L」)とイソホロンジイソシアネートからなるウレタンプレポリマーのNCO末端とヒドロキシプロピルアクリレートのエステル化反応により合成した。
【0054】
具体的には、攪拌機を備えた反応容器に、数平均分子量が1020の変性テトラメチレンエーテルグリコール1を213g(208mmol)、イソホロンジイソシアネートを52g(234mmol)、ジブチルすずジラウレート0.05gを仕込み、攪拌しながら液温度を室温から50℃まで1時間かけて上げた。その後少量をサンプリングしFT−IRを測定して2300cm
−1付近のイソシアネート基の吸収を確認しながら、50℃にて攪拌を続けた。FT−IRの吸収面積から残留イソシアネート基の含有量を計算し、反応前と比較して約15%まで減少して変化が無くなった時を反応終了とし、無色透明粘調性液体を得た。
次いで、ヒドロキシプロピルアクリレート6.8g(52mmol)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]0.02gを仕込み、攪拌しながら液温度を室温から50℃まで1時間かけて上げた。その後少量をサンプリングしFT−IRを測定して2300cm
−1付近のイソシアネートの吸収を確認しながら、50℃にて攪拌を続けた。FT−IRの吸収面積から残留イソシアネート基の含有量を見積り、その吸収が消失した時を反応終了とし、無色透明粘調性液体を得た。これをUP−1とした。UP−1は数分子量約10,000、両末端がアクリレート基のウレタンジアクリレートである。
【0055】
(UA−2)
ネオペンチレンオキサイドとテトラメチレンオキサイドの共重合ポリエーテルグリコールである、変性テトラメチレンエーテルグリコール2(旭化成製「PTG−X」)とイソホロンジイソシアネートからなるウレタンプレポリマーのNCO末端とヒドロキシプロピルアクリレートのエステル化反応により合成した。
【0056】
具体的には、攪拌機を備えた反応容器に、数平均分子量が1800の変性テトラメチレンエーテルグリコール2を374g(208mmol)、イソホロンジイソシアネートを52g(234mmol)、ジブチルすずジラウレート0.05gを仕込み、攪拌しながら液温度を室温から50℃まで1時間かけて上げた。その後少量をサンプリングしFT−IRを測定して2300cm
−1付近のイソシアネート基の吸収を確認しながら、50℃にて攪拌を続けた。FT−IRの吸収面積から残留イソシアネート基の含有量を計算し、反応前と比較して約15%まで減少して変化が無くなった時を反応終了とし、無色透明粘調性液体を得た。
次いで、ヒドロキシプロピルアクリレート6.8g(52mmol)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]0.02gを仕込み、攪拌しながら液温度を室温から50℃まで1時間かけて上げた。その後少量をサンプリングしFT−IRを測定して2300cm
−1付近のイソシアネートの吸収を確認しながら、50℃にて攪拌を続けた。FT−IRの吸収面積から残留イソシアネート基の含有量を見積り、その吸収が消失した時を反応終了とし、無色透明粘調性液体を得た。これをUP−2とした。UP−2は数分子量約16,000、両末端がアクリレート基のウレタンジアクリレートである。
【0057】
(UA−3)
テトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)とイソホロンジイソシアネートからなるウレタンプレポリマーのNCO末端とヒドロキシプロピルアクリレートのエステル化反応により合成した。
【0058】
具体的には、攪拌機を備えた反応容器に、数平均分子量が1000のポリテトラメチレンエーテルグリコールを208g(208mmol)、イソホロンジイソシアネートを52g(234mmol)、ジブチルすずジラウレート0.05gを仕込み、攪拌しながら液温度を室温から50℃まで1時間かけて上げた。その後少量をサンプリングしFT−IRを測定して2300cm
−1付近のイソシアネート基の吸収を確認しながら、50℃にて攪拌を続けた。FT−IRの吸収面積から残留イソシアネート基の含有量を計算し、反応前と比較して約15%まで減少して変化が無くなった時を反応終了とし、無色透明粘調性液体を得た。
次いで、ヒドロキシプロピルアクリレート6.8g(52mmol)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]0.02gを仕込み、攪拌しながら液温度を室温から50℃まで1時間かけて上げた。その後少量をサンプリングしFT−IRを測定して2300cm
−1付近のイソシアネートの吸収を確認しながら、50℃にて攪拌を続けた。FT−IRの吸収面積から残留イソシアネート基の含有量を見積り、その吸収が消失した時を反応終了とし、無色透明粘調性液体を得た。これをUP−3とした。UP−3は数分子量約10,000、両末端がアクリレート基のウレタンジアクリレートである。
【0059】
<チオール化合物>
・2官能チオール(第2級チオール):1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(昭和電工製)
・3官能チオール(第1級チオール):トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(SC有機化学製)
・4官能チオール(第2級チオール):ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(昭和電工製)
<(C)(メタ)アクリレート>
・IBA:イソボルニルアクリレート
・HPA:ヒドロキシプロピルアクリレート
<(D)光重合開始剤>
・光重合開始剤<1>:BASF製「DAROCUR1173」(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)
・光重合開始剤<2>:BASF製「IRGACURE184」(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)
【0060】
<光硬化性防水剤の調製>
表1に記載の配合組成となるように各成分を混合することにより、光硬化性防水剤を調製した。
【0061】
得られた各光硬化性防水剤の材料物性を評価した。具体的には、下記の評価方法にしたがって引張特性およびクリープ特性を評価した。また、得られた光硬化性防水剤を用いて防水評価サンプルを作製し、防水評価を行った。光硬化性防水剤の組成とともに各評価結果を表1に示す。なお、表1における(メタ)アクリロイル基の総数aに対するチオール基の総数bの比(b/a)は、配合割合から計算により算出した。
【0062】
<引張特性>
得られた光硬化性防水剤の硬化物について、JIS K7161に準拠して低温(−50℃)における伸びを測定した。標点間距離25mm、引張速度50mm/分とした。試験片の形状は3号ダンベル(厚さ1mm)とし、UVランプ(SEN特殊光源社製、100mW/cm
2)で25秒間紫外線照射することにより光硬化性防水剤を硬化させた。この際、伸びが100%以上であった場合を良好「○」とし、100%未満であった場合を不良「×」とした。
【0063】
<クリープ特性>
得られた光硬化性防水剤の硬化物について、JIS K6859(接着剤のクリープ破壊試験)に準じてクリープ特性を評価した。試験片の形状は、金属、プラスチック及び強化プラスチック用引張せん断クリープ試験片の形状とした。被着材として銅板およびPMMA板(ポリメタクリル酸メチル板)を用いた。
具体的には、銅板の上に光硬化性防水剤を塗布し、その上にPMMA板を置き、PMMA板側からUV照射器(LED385nm、マクロスクェア製)を用いて2J/cm
2の光量の光を照射した。PMMA板は、LED385nm透過率85%のものを用いた。光硬化性防水剤の硬化物の厚さは50μmとした。
引張せん断クリープ試験片に一定応力(0.5MPa)を負荷した状態で120℃×500時間放置した。この際、光硬化性防水剤の硬化物が破壊するか、光硬化性防水剤の硬化物と銅板との界面で剥離が生じた場合には、不良「×」とし、いずれも生じていない場合を良好「○」とした。
【0064】
<防水評価サンプルの作製>
φ4.4mmのポリ塩化ビニル(PVC)被覆電線を本線とし、φ4.4mmのPVC被覆電線1本とφ3.6mmのPVC被覆電線2本を枝線とする中間スプライスワークを作製した。
次いで、
図3(a)に示すように、紫外線透過率94%の透明なPVC製のラップフィルムを用い、該ラップフィルム上の中央に調製した光硬化性防水剤を1.5g塗布し、この上に作製した中間スプライスワークの中間スプライス部を載せた後、
図3(b)に示すように、ラップフィルムを貼り合わせて絞り込み、
図3(c)に示すように、貼り合わせたラップフィルムを巻き込んで、中間スプライス部と被覆材表面の約16mm長を覆う形に光硬化性防水剤を成形した。
次いで、中心波長が385nmのLED照射機(LED−UVランプ)を用い、ラップフィルムで巻き込んだ光硬化性防水剤に紫外線を照射して硬化させた。
【0065】
<防水評価>
防水評価サンプルの耐圧試験から防水性能を評価した。耐圧試験は、防水評価サンプルの中間スプライス部全体を水中に浸漬した状態で、防水評価サンプルの両端の絶縁電線全てからエアー圧100kPaの圧力を1分間加え、エアリークの有無を観察した。エアリークがなかった場合を良好(○)とし、エアー圧100kPaを1分間加圧する途中でエアリークが確認された場合を不良(×)とした。耐圧試験は、中間スプライス部全体を−50℃の恒温槽に240時間投入した後の防水評価サンプルと、中間スプライス部全体を120℃の恒温槽に240時間投入した後の防水評価サンプルの両方について行い、それぞれ低温評価、高温評価として示した。
【0066】
【表1】
【0067】
比較例3から、ポリエーテル鎖を有するウレタン化合物であるポリエーテルウレタンの両末端に(メタ)アクリレート基を有するウレタンジ(メタ)アクリレートであっても、そのポリエーテル鎖から分岐するアルキル側鎖を有していないと、−50℃における引張特性(伸び)を満足せず、−50℃における防水評価(低温評価)が満足しないことがわかる。また、比較例4から、(メタ)アクリロイル基を有する(A)(C)に対しチオール化合物を組み合わせても、3官能以上の多官能チオール化合物でないと、120℃におけるクリープ特性を満足せず、120℃における防水評価(高温評価)が満足しないことがわかる。
【0068】
そして、比較例1から、(メタ)アクリロイル基を有する(A)(C)に対し3官能以上の多官能チオール化合物を組み合わせても、3官能以上の多官能チオール化合物の配合量が多く、(メタ)アクリロイル基の総数aに対するチオール基の総数bの比(b/a)が特定範囲の上限よりも大きいと、−50℃における引張特性(伸び)を満足せず、−50℃における防水評価(低温評価)が満足しないことがわかる。また、比較例2から、3官能以上の多官能チオール化合物の配合量が少なく、b/aが特定範囲の下限よりも小さいと、120℃におけるクリープ特性を満足せず、120℃における防水評価(高温評価)が満足しないことがわかる。
【0069】
これに対し、実施例1〜4から、本願発明の範囲であれば、−50℃における引張特性(伸び)と120℃におけるクリープ特性の両方を満足し、−50℃における防水評価(低温評価)および120℃における防水評価(高温評価)の両方を満足することがわかる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。