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特開2015-205952インクセット及びそれを用いた印刷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-205952(P2015-205952A)
(43)【公開日】2015年11月19日
(54)【発明の名称】インクセット及びそれを用いた印刷方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20151023BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20151023BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20151023BHJP
【FI】
   C09D11/322
   B41M5/00 E
   B41J2/01 501
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-85426(P2014-85426)
(22)【出願日】2014年4月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130029
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道雄
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(72)【発明者】
【氏名】福本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】城座 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀江 正一
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC02
2H186AB05
2H186AB11
2H186AB12
2H186AB23
2H186BA08
2H186DA18
2H186FA09
2H186FA13
2H186FB04
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB48
2H186FB56
4J039AA02
4J039BA25
4J039BA31
4J039BA32
4J039BA36
4J039BA38
4J039BE01
4J039EA03
4J039EA44
4J039FA04
4J039FA06
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】インク組成物の保存安定性を向上でき、且つ、無機質基材の熱膨張係数及び焼成温度に適合した印刷が容易に可能となるインクセット、並びにそれを用いた印刷方法を提供する。
【解決手段】無機顔料を含む第1のインク組成物と熱溶融性フリットを含む第2のインク組成物とを備えることを特徴とするインクセットである。また、かかるインクセットを用いたインクジェットプリンターによって無機質基材上に印刷を行う方法であって、前記第1のインク組成物と前記第2のインク組成物とをインクジェットプリンターから同時に吐出させて、該第1のインク組成物と該第2のインク組成物とからなる印刷層を無機質基材上に形成させる工程を含むことを特徴とする印刷方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機顔料を含む第1のインク組成物と熱溶融性フリットを含む第2のインク組成物とを備えることを特徴とするインクセット。
【請求項2】
前記無機顔料がセラミック用無機顔料であることを特徴とする請求項1に記載のインクセット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインクセットを用いたインクジェットプリンターによって無機質基材上に印刷を行う方法であって、前記第1のインク組成物と前記第2のインク組成物とをインクジェットプリンターから同時に吐出させて、該第1のインク組成物と該第2のインク組成物とからなる印刷層を無機質基材上に形成させる工程を含むことを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクセット及び該インクセットを用いた印刷方法に関し、特には、インク組成物の保存安定性を向上でき、且つ、無機質基材の熱膨張係数及び焼成温度に適合した印刷が容易に可能となるインクセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高温焼成により製造されるタイルや陶磁器等の無機質製品においては、多彩な模様を形成する代表的な方法として次の2つの手法が知られている。第1の方法は、無機質基材上に未焼成熱溶融性受理層を設け、次いで非溶融性の無機顔料インク層を設けて模様を形成し、場合により未焼成透明熱溶融性層を設け、所定の熱溶融温度で焼成する。そして、第2の方法は、熱溶融性無機フリット及び非溶融性無機顔料を含むインクを用いて、無機質基材上に模様を印刷し、所定の溶融温度で焼成する。なお、第2の方法でも、熱溶融性受理層を設けてもよく、印刷前の無機質基材上に熱溶融性受理層を形成したり、印刷後の模様の上に熱溶融性受理層を形成したりする場合がある。
【0003】
特開2004−99432号公報(特許文献1)は、無機質基材上に未焼成ガラスフリットを含むインク受容層を設け、無機顔料及び分散用媒体を含むインクを用いたインクジェットプリンターにより画像を形成し、焼成を行う方法を記載しており、上記インクにはガラスフリットが含まれている例も報告されている。
【0004】
特開2003−12972号公報(特許文献2)は、顔料及び熱可塑性メジウムを含有する熱可塑性カラーペーストを用いたインクジェットプリンターにより、ガラス、磁気、セラミック材料等の固体材料表面に絵を描く方法を記載しており、上記熱可塑性カラーペーストには無機顔料及びガラスフリットが含まれている例も報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−99432号公報
【特許文献2】特開2003−12972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の第1の方法では、インク層を設ける前に熱溶融性受理層を設ける必要があり、生産性に問題がある。これに対して、前述の第2の方法では、インク中に熱溶融性フリットが含まれるため、熱溶融性受理層を設ける必要がない。しかしながら、高温焼成により成形体を製造する場合には、無機質基材と印刷層の熱膨張係数を合わせることが要求され、更には熱溶融性フリットの溶融温度を所定の焼成温度に適合することも要求される。このため、第2の方法では、無機質基材の品種ごとに適合するフリットを使用したインクを作り直す作業が必要であることが大きな課題となる。更に、第2の方法は、インクの保存安定性が損なわれるという大きな課題も抱えている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、インク組成物の保存安定性を向上でき、且つ、無機質基材の熱膨張係数及び焼成温度に適合した印刷が容易に可能となるインクセットを提供することにある。また、本発明の他の目的は、無機質基材の熱膨張係数及び焼成温度に適合した印刷が容易に可能となる印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、熱溶融性フリットが溶媒(特に水)中に粉砕分散した後、該熱溶融性フリットに含まれるアルカリ成分等が徐々に溶媒中に溶出して、無機顔料の分散安定性を低下させ、インク組成物の保存安定性が低下することが分かった。そこで、本発明者は、無機顔料と熱溶融性フリットを別々のインク組成物に配合することにより、無機顔料の分散安定性の低下を抑え、インク組成物の保存安定性を長期に確保できることを見出し、本発明を完成させるに至った。また、無機顔料と熱溶融性フリットを別々のインク組成物に配合した場合、熱溶融性フリットを含むインク組成物のみを変更するだけで、無機質基材の熱膨張係数及び焼成温度に適合した印刷が可能となる。
【0009】
即ち、本発明のインクセットは、無機顔料を含む第1のインク組成物と熱溶融性フリットを含む第2のインク組成物とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のインクセットの好適例においては、前記無機顔料がセラミック用無機顔料である。
【0011】
また、本発明の印刷方法は、上記のインクセットを用いたインクジェットプリンターによって無機質基材上に印刷を行う方法であって、前記第1のインク組成物と前記第2のインク組成物とをインクジェットプリンターから同時に吐出させて、該第1のインク組成物と該第2のインク組成物とからなる印刷層を無機質基材上に形成させる工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のインクセットによれば、インク組成物の保存安定性を向上でき、且つ、無機質基材の熱膨張係数及び焼成温度に適合した印刷が容易に可能となるインクセットを提供することができる。
【0013】
本発明の印刷方法によれば、無機質基材の熱膨張係数及び焼成温度に適合した印刷が容易に可能となる印刷方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明のインクセットを詳細に説明する。本発明のインクセットは、無機顔料を含む第1のインク組成物と熱溶融性フリットを含む第2のインク組成物とを備えることを特徴とする。本発明のインクセットによれば、無機顔料と熱溶融性フリットを別々のインク組成物に配合することによって、熱溶融性フリットから溶出するアルカリ成分が原因で起こる無機顔料の分散安定性の低下を抑え、インク組成物の保存安定性を長期に確保することができる。また、熱溶融性フリットの熱膨張係数及び熱溶融温度を調整することで、無機質基材の熱膨張係数及び焼成温度に適合した印刷を行うことができるため、無機顔料を含むインク組成物を作り直す必要がない。
【0015】
本発明のインクセットは、無機顔料を含む第1のインク組成物(以下、無機顔料インクともいう)と熱溶融性フリットを含む第2のインク組成物(以下、熱溶融性フリットインクともいう)とを組み合わせてなる。上記無機顔料インクは、単独で使用されてもよいが、複数を組み合わせることもできる。複数の無機顔料インクを組み合わせる場合、それぞれのインクに含まれる無機顔料の種類を変えることで、シアン、マゼンタ、イエロー等の有彩色や白や黒の無彩色といった様々な色を表現することができる。同様に、上記熱溶融性フリットインクも、単独で使用されてもよいし、複数を組み合わせることもできる。複数の熱溶融性フリットインクを組み合わせる場合、それぞれのインクに含まれる熱溶融性フリットの熱溶融温度及び熱膨張係数を変えることで、印刷層中に含まれるフリット混合物の熱溶融温度を調整したり、印刷層の熱膨張係数を調整したりすることができる。
【0016】
また本発明のインクセットを構成する第1のインク組成物及び第2のインク組成物は、溶媒の種類に応じて様々な形態をとることが可能であり、水系インク、有機溶剤系インク及び活性エネルギー線硬化系インクのいずれであってもよい。
本発明のインクセットを構成する第1のインク組成物及び第2のインク組成物は、同一インクジェットプリンターにて吐出印字されるため、インクの性質は同じものであることを必要とする。そのためにまず第1のインク組成物が水系であれば第2のインク組成物も水系であること(水系インクセット)、第1のインク組成物が有機溶剤系であれば第2のインク組成物も有機溶剤系であること(有機溶剤系インクセット)、第1のインク組成物が活性エネルギー線硬化系であれば第2のインク組成物も活性エネルギー線硬化系であること(活性エネルギー線硬化インクセット)が必要である。
更に同一インクジェットプリンターを使用して第1のインク組成物と第2のインク組成物が同時に吐出され、はじいたりしない鮮明な画像を形成する為には、インクの性状値を同一レベルにしておく必要がある、すなわち第1のインク組成物と第2のインク組成物の粒子径分布、粘度、表面張力等の性状を同一レベルに設計することが重要である。
【0017】
本発明のインクセットにおいて、上記第1のインク組成物は、無機顔料を含むことを要し、無機顔料が溶媒中に分散している。また、熱溶融性フリットを含まないことも特徴とする。
【0018】
上記第1のインク組成物に用いる顔料は、無機顔料であれば特に限定されるものではないが、セラミック用無機顔料が好ましい。セラミック用無機顔料は、陶磁器を含むセラミックの分野において着色剤として通常使用されている無機顔料であり、耐熱性と釉薬に対する安定性が高い。このような無機顔料には、酸化物、複合酸化物及び珪酸塩と称される顔料が含まれ、例えば、ブラック顔料としてCo-Cr-Fe、Co-Cr-Ni、Co-Ni-Cr-Fe、Co-Mn-Fe、Cu-Cr-Mn、Ti-Sb-Ni系顔料等、マゼンタ顔料としてZn-Cr-Fe、Zn-Al-Cr-Fe、Zn-Ca-Si-Cr、Fe-Cr-Zn-Mn、Ti-Cr-W、Zr-Si-Fe、Zr-Fe、Cr-Sn、Ca-Sn-Si-Cr系顔料等、イエロー顔料としてSn-V、Sn-Ti-V、Zr-V、Zr-V-In、Zr-Si-Pr、Ti-Cr-Sb、Ti-Cr-W、Zr-Y-V系顔料等、グリーン顔料としてCr-Si、Cr-AL、Co-Cr系顔料等、シアン顔料としてCo-Si、Co-AL、Co-Zn-AL、Co-Zn-AL-Si、Co-Zn-Si、Co-AL、Co-Cr-AL、Zr-Si-V系顔料等、ホワイト顔料としてCe系、珪酸ジルコニウム系顔料等を挙げることができる。なお、これら顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
また、本発明のインクセットにおいて、上記第2のインク組成物は、熱溶融性フリットを含むことを要し、熱溶融性フリットが溶媒中に分散しており、且つ無機顔料を含まないことも特徴とする。
【0020】
本発明において、熱溶融性フリットとは、釉薬成分又はガラス成分からなる粉末である。無機質基材上で熱溶融してガラス質の皮膜を形成し、無機質基材に付着すると供に、無機質基材の耐久性を向上させ、印刷層の光沢を増加させる。熱溶融性フリットは、例えば、上記成分原料を熱溶融混合した後、冷却して粉砕することで製造できる。また、無機質基材の熱膨張係数及び焼成温度に適合した印刷を行うため、無機質基材に応じて熱溶融性フリットの熱膨張係数及び熱溶融温度を調整することが必要であるが、熱溶融性フリットの熱膨張係数及び熱溶融温度は、上記成分原料の種類や組成によって調整できる。熱膨張係数はJIS R 3102に基づいた測定方法によって測定することができ、熱溶融温度はDSC(示差走査熱量分析法)を用いて測定することができる。
【0021】
上記第1のインク組成物(無機顔料インク)において無機顔料の含有量は、使用する無機顔料の種類等により任意に決定できるが、インク中3〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。また、第2のインク組成物(熱溶融性フリットインク)において熱溶融性フリットの含有量も、使用する熱溶融性フリットの種類等により任意に決定できるが、インク中3〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
【0022】
上記第1のインク組成物(無機顔料インク)及び第2のインク組成物(熱溶融性フリットインク)において、インクに用いる溶媒は、特に限定されず、インク業界において通常使用されている溶媒を用いることができる。
【0023】
水系インクの場合は、主たる溶媒が水であり、水溶性の溶剤(メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、イソアミルアルコール、t−アミルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のカルビトール類等)を併用することができる。
【0024】
有機溶剤系インクの場合は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、イソアミルアルコール、t−アミルアルコール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のカルビトール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等の脂肪族エステル等の有機溶剤が挙げられる。
【0025】
活性エネルギー線硬化系インクの場合は、インク業界において通常使用されているモノマーを単独で又は2種以上を混合して使用できる。具体的には、活性エネルギー線照射時に反応性を示す官能基の数が1である単官能モノマー、該官能基数が2である2官能モノマー、該官能基数が3以上である多官能モノマー等が挙げられる。
【0026】
単官能モノマーの具体例としては、例えば、ステアリルアクリレート、アクリロイルモルホリン、トリデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミドデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、イソオクチルアクリレート、オクチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、イソアミルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、及び2−(2’−ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等が挙げられ、これらをエチレングリコール鎖、プロピレングリコール鎖等のアルキレングリコール鎖により変性したものも使用できる。
【0027】
2官能モノマーの具体例としては、例えば、1,10−デカンジオールジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,8−オクタンジオールジアクリレート、1、7−ヘプタンジオールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、及びジプロピレングリコールジアクリレート等が挙げられ、これらをエチレングリコール鎖、プロピレングリコール鎖等のアルキレングリコール鎖により変性したものも使用できる。
【0028】
多官能モノマーの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、グリセリントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジグリセリンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられ、これらをエチレングリコール鎖、プロピレングリコール鎖等のアルキレングリコール鎖により変性したものも使用できる。
【0029】
なお、これら溶媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記第1のインク組成物(無機顔料インク)及び第2のインク組成物(熱溶融性フリットインク)において、溶媒の含有量は、使用するインクの形態や溶媒の種類等により任意に決定できるが、インク中40〜96質量%であることが好ましく、60〜90質量%であることがさらに好ましい。
【0030】
上記第1のインク組成物(無機顔料インク)及び第2のインク組成物(熱溶融性フリットインク)は、更に分散剤を含むことができる。上記分散剤は、無機顔料又は熱溶融性フリットを溶媒中でより良好に分散させるために使用される。例えば、通常のインク組成物に用いられている湿潤剤、一般には、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤又はノニオン系界面活性剤を使用できる。具体的には、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アシルメチルタウリン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸塩、アルキル硫酸エステル塩、硫酸化オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、モノグリセライトリン酸エステル塩、酸基を含む共重合物等のアニオン性界面活性剤、アルキルピリジウム塩、アルキルアミノ酸塩、アルキルジメチルベタイン等の両性界面活性剤、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、グリセリンアルキルエステル、ステアリルアミンアセテート、ソルビタンアルキルエステル等のノニオン性界面活性剤等が挙げられる。なお、これら分散剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記第1のインク組成物(無機顔料インク)及び第2のインク組成物(熱溶融性フリットインク)中において、分散剤の含有量は、使用する分散剤の種類等により任意に決定できるが、インク中0.2〜10質量%であることが好ましい。
【0031】
上記第1のインク組成物(無機顔料インク)及び第2のインク組成物(熱溶融性フリットインク)には、更に必要に応じて、表面調整剤、消泡剤、保湿剤、防腐剤・防かび剤、pH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤等の添加剤、および各種樹脂を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。
【0032】
また、上記第1のインク組成物(無機顔料インク)及び第2のインク組成物(熱溶融性フリットインク)が活性エネルギー線硬化系である場合には、活性エネルギー線硬化系塗料やインクに通常使用される、例えば2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等の光重合開始剤、フェノチアジン等の重合禁止剤等を必要に応じて配合できる。
【0033】
上記第1のインク組成物(無機顔料インク)及び第2のインク組成物(熱溶融性フリットインク)は、例えば、無機顔料又は熱溶融性フリット及び溶媒と、必要に応じて適宜選択される各種添加剤とを混合し、通常のインク製造設備(ビーズミル等)により無機顔料又は熱溶融性フリット粒子が所定の粒子径分布になるまで粉砕分散を行い、調製できる。
【0034】
上記第1のインク組成物(無機顔料インク)及び第2のインク組成物(熱溶融性フリットインク)において、溶媒中に分散された無機顔料又は熱溶融性フリットの粒子径は、インクジェットプリンターのノズルから吐出可能な大きさであれば特に限定されるものではないが、粒子径が大き過ぎると沈殿が起こり易くなり、粒径が小さ過ぎると色が出ない、アルカリ成分が溶出し易くなる等の不具合が生ずる。このため、無機顔料及び熱溶融性フリットの粒子径分布は、例えば、100〜900nmの範囲内であることが好ましい。なお、ここで粒子径分布とは、レーザー光散乱法粒度分布測定装置(例えば島津製作所製SALD−2300)で測定した、重量平均粒子径分布である。
【0035】
次に、本発明の印刷方法を詳細に説明する。本発明の印刷方法は、上述のインクセットを用いたインクジェットプリンターによって無機質基材上に印刷を行う方法であって、前記第1のインク組成物と前記第2のインク組成物とをインクジェットプリンターから同時に吐出させて、該第1のインク組成物と該第2のインク組成物とからなる印刷層を無機質基材上に形成させる工程を含むことを特徴とする。本発明によれば、熱溶融性フリットの熱膨張係数及び熱溶融温度を調整することで、無機質基材の熱膨張係数及び焼成温度に適合した印刷を行うことができるため、無機顔料を含むインク組成物を作り直す必要がない。
【0036】
本発明の印刷方法は、インクジェットプリンターによる印刷の際に、無機顔料インクと熱溶融性フリットインクとを同時に吐出させるため、印刷層は、無機顔料インクと熱溶融性フリットインクとが混合して形成される。よって、本発明の印刷方法によって形成される印刷層は、熱溶融性フリットが含まれるため、無機質基材上に熱溶融性受理層を設ける必要がない。
【0037】
上記印刷層を構成する無機顔料(a)と熱溶融性フリット(b)の質量比(a/b)は、目的に応じて適宜調整することが可能であり、例えば10/90〜90/10である。無機顔料と熱溶融性フリットの合計に占める無機顔料の割合が10質量%未満では、明瞭な画像が得られなくなる場合があり、一方、無機顔料と熱溶融性フリットの合計に占める熱溶融性フリットの割合が10質量%未満では、印刷層が基板に固着しにくくなり、印刷層の耐久性も低下する場合がある。
【0038】
また、本発明の印刷方法によれば、インクセットを構成する熱溶融性フリットインク中に含まれる熱溶融性フリットの熱溶融温度及び熱膨張係数を無機質基材に適合させるように調整してもよいし、複数の熱溶融性フリットインクを用いて印刷層中に含まれるフリット混合物の熱溶融温度及び熱膨張係数を調整してもよい。
【0039】
熱溶融性フリットの熱膨張係数が無機質基材の熱膨張係数と大きく異なる場合には、焼成過程で熱溶融した際に画像の鮮明度が低下し、焼成後冷却した際に印刷層が剥離したり、クラックが発生し、さらに印刷層の耐久性に問題が生ずる。
また使用した熱溶融性フリットの熱溶融温度が焼成する温度より高い場合には、熱溶融した印刷層が形成されず、一方焼成温度が熱溶融性フリットの熱溶融温度より大幅に高い場合には熱溶融して流れる為に画像がぼける問題が発生する。
よって、印刷層中に含まれる熱溶融性フリットの熱溶融温度は、焼成温度より10℃〜200℃低く設定することが好ましく、50℃〜150℃低く設定することがより好ましい。また、印刷層中に含まれる熱溶融性フリットの熱膨張係数を無機質基材の熱膨張係数に一致させるか又は無機質基材の熱膨張係数の80〜120%の値に設定することが好ましく、90〜110%の値に設定することが特に好ましい。
【0040】
本発明の印刷方法には、種々のインクジェットプリンターを使用することができる。インクジェットプリンターとしては、例えば、荷電制御方式又はピエゾ方式によりインク組成物を吐出させるインクジェットプリンターを挙げることができる。
【0041】
水系インクセット又は有機溶剤系インクセットの吐出においては、水系又は有機溶剤系に適合するヘッドを搭載したインクジェットプリンターを使用し、印刷後の描画模様を滲まないように基板に定着させるために、基板を40℃〜80℃に予め加温しておくのが好ましい。活性エネルギー線硬化系インクセットの吐出においては活性エネルギー線硬化系に適合するヘッドを搭載したインクジェットプリンターを使用し、インクの粘度を下げるために40〜45℃程度にヒーター付きヘッドによりインクを加温して吐出することが好ましく、更に印刷後の描画模様を滲まないように基板に定着させるために、描画後にできるだけ速くエネルギー線照射を行うことが好ましい。エネルギー線照射ランプとしては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ等を挙げることができる。
【0042】
本発明の印刷方法において、無機質基材は、特に制限されるものではないが、例えば、陶磁器、タイル、琺瑯、ガラス等が挙げられる。なお、無機質基材は、生産性の観点から施釉等の表面処理が施されていないものが好ましいが、熱溶融性フリットを含む熱溶融性受理層が無機質基材の表面に設けられていてもよい。
【0043】
本発明の印刷方法により得られる印刷層付きの無機質基材は、通常、焼成により焼き固められる。なお、無機質基材を焼成するには、特に制限されず、既知の方法を利用することができる。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
1.インクの調製
表1、表2、表3及び表4に示す配合処方に従い、原料を混合し、得られた混合物をビーズミルにて6時間練合し、インクを調製した。
無機顔料インクに使用した各色顔料は構造組成にて各表に示した。
熱溶融性フリットインクに使用した熱溶融性フリットは、各表に示す熱膨張係数及び熱溶融温度の異なる4種のフリット使用をした。
【0046】
1.1インクの性状確認
1.1.1粘度の測定
レオメーター(AntonpaarPysica社製MCR301)を使用して、25℃で、ずり速度100S−1にて測定した。
1.1.2粒子径の測定
レーザー光散乱法粒度分布測定装置(島津製作所製SALD−2300)を使用して、25℃で重量平均粒子径及び粒子径分布を測定した。
【0047】
1.2保存安定性の評価
加速試験により評価を実施した。詳細には、60℃恒温槽にインクを静置させ、4週間保管した後、1.1.1及び1.1.2に従い粘度及び粒子径を測定し、下記式により粘度変化率及び粒子径変化率を求め、下記評価基準により評価した。
【数1】
評価A :粘度変化率、粒子径変化率の両方が10%未満である。
評価B :粘度変化率、粒子径変化率どちらかが10%以上である。
評価C :粘度変化率、粒子径変化率の両方が10%以上である。
評価D :粘度変化率、粒子径変化率の両方が20%以上である。
【0048】
1.3インクの保存安定性の評価結果
表1、表2、表3及び表4に各インクの保存安定性評価結果を示す。
表1〜3に示される水系インク、有機溶剤系インク、活性エネルギー線硬化系インクのいずれにおいても、加速試験後の粘度変化及び粒子径変化はなく評価Aであり、保存安定性は良好であった。
他方、表4に示すインク比較例においては、無機顔料と熱溶融性フリットが共存するために、加速試験後の性状変化率は大きく、保存安定性は不良であった。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
2.インクセットの設定
表1に示される5色の無機顔料インクからなるインクセットを水系インクセット1とし、表2に示される5色の無機顔料インクからなるインクセットを有機溶剤系インクセット2とし、表3に示される5色の無機顔料インクからなるインクセットを活性エネルギー線硬化系インクセット3とした。
【0054】
3.印刷物の作製
工程1<印刷層の形成>
ピエゾ方式のインクジェットヘッドを搭載したインクジェットプリンターに、各インクセットと熱溶融性フリットインクを装填し、タイル、ガラス等の無機質平板基材に無機顔料インクと熱溶融性フリットインクを同時に吐出し、所定の模様を描画した。
【0055】
3.1印刷条件
3.1.1
水系インクセット1の吐出においては、水系インク用ヘッドを搭載したインクジェットプリンターを使用し、予め基板を50℃以上に加温して印刷実施した。
3.1.2
有機溶剤系インクセット2の吐出においては、溶剤系インク用ヘッドを搭載したインクジェットプリンターを使用し、予め基板を50℃以上に加温して印刷実施した。
3.1.3
活性エネルギー線硬化系インクセット3の吐出においてはUVインク用ヒーター付きヘッドを搭載したインクジェットプリンターを使用し、インクを45℃に加温して吐出し、3秒後にメタルハライドランプを照射した。
3.2使用する熱溶融性フリットインク
使用する無機質基材の熱膨張係数、及び下記工程2で説明する印刷層形成の後に実施する工程2(焼成工程)の実施温度、に対応して選択した熱溶融性フリットインクを1種類、又は2種類、を使用した。また無機顔料インクと熱溶融性フリットインクの吐出比率は重量比で90/10〜10/90の範囲内に成るよう設定した。
【0056】
工程2<焼成>
工程1によって作製したタイル又はガラス板を電気炉内に水平におき、所定温度まで1〜2時間かけて昇温し、所定温度到達後すぐに4〜6時間かけて室温まで冷却した。
【0057】
3.3印刷、焼成品の仕上がり評価
下記評価基準に基づき評価実施した。
外観評価1:画像鮮明度
評価A:焼成前画像と大きく変化なく鮮明な画像を得た。
評価B:焼成前画像より若干のゆがみ、にじみ、ボケ、曇り等が生じ、不鮮明である。
評価C:焼成前画像よりゆがみ、にじみ、ボケ、曇り等が著しく、画像確認が出来ない。
外観評価2:印刷層の状態
評価A:ガラス質感(光沢感)があり、平滑である。
評価B:ガラス質感(光沢感)があるが、クラック発生
評価C:ガラス質感(光沢感)が無い。白濁。
評価D:印刷層が浮いている、指でこすると印刷層が脱落する。
【0058】
以下表5に基づいて実施例を説明する。
【0059】
(実施例1)
工程1:熱膨張係数7×10−6/Kを有する8mm厚のタイル1を50℃に加温し、インクセット1と熱溶融フリットインク1−A(熱膨張係数7×10−6/K、熱溶融温度1150℃)とを質量比(a)/(b)=90/10になるように水系用インクジェットプリンターにて同時に吐出し、大理石調の画像を印刷した。
工程2:1250℃で焼成し、印刷タイルを作製した。
仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0060】
(実施例2)
工程1において質量比(a)/(b)=50/50で同時に吐出する以外は実施例1と同様の基材種、工程1,2にて印刷タイルを作製した、仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0061】
(実施例3)
工程1において質量比(a)/(b)=10/90で同時に吐出する以外は実施例1と同様の基材種、工程1,2にて印刷タイルを作製した、仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0062】
(実施例4)
工程1:熱膨張係数8×10−6/Kを有する10mm厚のタイル2を50℃に加温し、インクセット1と熱溶融フリットインク(1−Aと1−Bを1/1(質量比)で使用:2種併用時の熱膨張係数8×10−6/K、熱溶融温度1150℃)とを質量比(a)/(b)=50/50になるようにインクジェットプリンターにて同時に吐出し、大理石調の画像を印刷した。
工程2:1250℃で焼成し、印刷タイルを作製した。
仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0063】
(実施例5)
工程1:熱膨張係数7×10−6/Kを有する8mm厚のタイル1を50℃に加温し、有機溶剤系インクセット2と熱溶融フリットインク(2−Aと2−Cを7/3(質量比)で使用:2種併用時の熱膨張係数7×10−6/K、熱溶融温度985℃)とを質量比(a)/(b)=50/50になるように有機溶剤系用インクジェットプリンターにて同時に吐出し、大理石調の画像を印刷した。
工程2:1100℃で焼成し、印刷タイルを作製した。
仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0064】
(実施例6)
工程1:熱膨張係数8×10−6/Kを有する6mm厚のタイル3を50℃に加温し、有機溶剤系インクセット2と熱溶融フリットインク(2−Bと2−Cを1/1(質量比)で使用:2種併用時の熱膨張係数8×10−6/K、熱溶融温度875℃)とを質量比(a)/(b)=50/50になるように有機溶剤系用インクジェットプリンターにて同時に吐出し、大理石調の画像を印刷した。
工程2:1000℃で焼成し、印刷タイルを作製した。
仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0065】
(実施例7)
工程1:熱膨張係数7×10−6/Kを有する8mm厚のタイル1に、活性エネルギー線硬化系インクセット3と熱溶融フリットインク(3−Aと3−Cを8/2(質量比)で使用:2種併用時の熱膨張係数7×10−6/K、熱溶融温度1040℃)とを質量比(a)/(b)=50/50になるようにUVインク用インクジェットプリンターにてインクを45℃により加温して同時に吐出し、3秒後にメタルハライドランプを照射して、大理石調の画像を印刷した。
工程2:1100℃で焼成し、印刷タイルを作製した。
仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0066】
(実施例8)
工程1:熱膨張係数9×10−6/Kを有する5mm厚のガラス板を70℃に加温し、水系インクセット1と熱溶融フリットインク1−D(熱膨張係数9×10−6/K、熱溶融温度600℃)とを質量比(a)/(b)=50/50になるように水系用インクジェットプリンターにて同時に吐出し、ステンドグラス調の画像を印刷した。
工程2:700℃で焼成し、印刷ガラスを作製した。
仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0067】
(実施例9)
工程1:熱膨張係数9×10−6/Kを有する5mm厚のガラス板を50℃に加温し、有機溶剤系インクセット2と熱溶融フリットインク2−D(熱膨張係数9×10−6/K、熱溶融温度600℃)とを質量比(a)/(b)=50/50になるように有機溶剤系用インクジェットプリンターにて同時に吐出し、ステンドグラス調の画像を印刷した。
工程2:700℃で焼成し、印刷ガラスを作製した。
仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0068】
(実施例10)
工程1:熱膨張係数9×10−6/Kを有する5mm厚のガラス板に、活性エネルギー線硬化系インクセット3と熱溶融フリットインク3−D(熱膨張係数9×10−6/K、熱溶融温度600℃)とを質量比(a)/(b)=50/50になるようにUVインク用インクジェットプリンターにてインクを45℃により加温して同時に吐出し、3秒後にメタルハライドランプを照射して、ステンドグラス調の画像を印刷した。
工程2:700℃で焼成し、印刷ガラスを作製した。
仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0069】
(実施例11)
工程1:9×10−6/Kを有する5mm厚のガラス板に、活性エネルギー線硬化系インクセット3と熱溶融フリットインク3−D(熱膨張係数9×10−6/K、熱溶融温度600℃)とを質量比(a)/(b)=20/80になるようにUVインク用インクジェットプリンターにてインクを45℃により加温して同時に吐出し、3秒後にメタルハライドランプを照射して、ステンドグラス調の画像を印刷した。
工程2:700℃で焼成し、印刷ガラスを作製した。
仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0070】
以下表6に基づいて比較例を説明する。
【0071】
(比較例1)
工程1において質量比(a)/(b)=100/0で吐出する以外は実施例1と同様の基材種、工程1,2にて印刷タイルを作製した。
仕上がり外観は不良であった。
外観評価1:C(画像部分欠落)、外観評価2:D(印刷層が浮いて部分欠落、指で取れる)
熱溶融性インクを同時吐出していないため、無機顔料がタイル基板に固定されず、印刷層が脱落した。
【0072】
(参考例2)
実施例2の工程に準じて行うが、熱溶融フリットインクを1−B(熱膨張係数9×10−6/K、熱溶融温度1150℃)に変えて印刷タイルを作製した。
仕上がり外観は不良であった。
外観評価1:B(画像不鮮明)、外観評価2:B(印刷層にクラック発生)
無機質基材の熱膨張係数と使用する熱溶融性フリットの熱膨張係数に隔たりが有るため、焼成後の印刷層は満足のいくものとならなかった。
【0073】
(参考例3)
実施例5の工程に準じて行うが、熱溶融フリットインクを2−A(熱膨張係数7×10−6/K、熱溶融温度1150℃)に変更し、焼成温度を1000℃に変更して、印刷タイルを作製した。
仕上がり外観は不良であった。
外観評価1:C(印刷層曇り不鮮明)、外観評価2:C(光沢感無く、白濁)
焼成温度1000℃であるが、使用したる熱溶融性フリットの熱溶融温度1150℃であり、適合していないため、満足のいく仕上がりを得ることはできなかった。
【0074】
(比較例4)
工程1において質量比(a)/(b)=100/0で吐出する以外は実施例8と同様の基材種、工程1,2にて印刷ガラスを作製した。
仕上がり外観は不良であった。
外観評価1:C(画像部分欠落)、外観評価2:D(印刷層が浮いて部分欠落、指で取れる)
熱溶融性インクを同時吐出していないため、無機顔料がタイル基板に固定されず、印刷層が脱落した。
【0075】
(比較例5)
工程1において質量比(a)/(b)=100/0で吐出する以外は実施例9と同様の基材種、工程1,2にて印刷ガラスを作製した。
仕上がり外観は不良であった。
外観評価1:C(画像部分欠落)、外観評価2:D(印刷層が浮いて部分欠落、指で取れる)
熱溶融性インクを同時吐出していないため、無機顔料がタイル基板に固定されず、印刷層が脱落した。
【0076】
(比較例6)
工程1において質量比(a)/(b)=100/0で吐出する以外は実施例10と同様の基材種、工程1,2にて印刷ガラスを作製した。
仕上がり外観は不良であった。
外観評価1:C(画像部分欠落)、外観評価2:D(印刷層が浮いて部分欠落、指で取れる)
熱溶融性インクを同時吐出していないため、無機顔料がタイル基板に固定されず、印刷層が脱落した。
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】