【実施例】
【0044】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
1.インクの調製
表1、表2、表3及び表4に示す配合処方に従い、原料を混合し、得られた混合物をビーズミルにて6時間練合し、インクを調製した。
無機顔料インクに使用した各色顔料は構造組成にて各表に示した。
熱溶融性フリットインクに使用した熱溶融性フリットは、各表に示す熱膨張係数及び熱溶融温度の異なる4種のフリット使用をした。
【0046】
1.1インクの性状確認
1.1.1粘度の測定
レオメーター(AntonpaarPysica社製MCR301)を使用して、25℃で、ずり速度100S
−1にて測定した。
1.1.2粒子径の測定
レーザー光散乱法粒度分布測定装置(島津製作所製SALD−2300)を使用して、25℃で重量平均粒子径及び粒子径分布を測定した。
【0047】
1.2保存安定性の評価
加速試験により評価を実施した。詳細には、60℃恒温槽にインクを静置させ、4週間保管した後、1.1.1及び1.1.2に従い粘度及び粒子径を測定し、下記式により粘度変化率及び粒子径変化率を求め、下記評価基準により評価した。
【数1】
評価A :粘度変化率、粒子径変化率の両方が10%未満である。
評価B :粘度変化率、粒子径変化率どちらかが10%以上である。
評価C :粘度変化率、粒子径変化率の両方が10%以上である。
評価D :粘度変化率、粒子径変化率の両方が20%以上である。
【0048】
1.3インクの保存安定性の評価結果
表1、表2、表3及び表4に各インクの保存安定性評価結果を示す。
表1〜3に示される水系インク、有機溶剤系インク、活性エネルギー線硬化系インクのいずれにおいても、加速試験後の粘度変化及び粒子径変化はなく評価Aであり、保存安定性は良好であった。
他方、表4に示すインク比較例においては、無機顔料と熱溶融性フリットが共存するために、加速試験後の性状変化率は大きく、保存安定性は不良であった。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
2.インクセットの設定
表1に示される5色の無機顔料インクからなるインクセットを水系インクセット1とし、表2に示される5色の無機顔料インクからなるインクセットを有機溶剤系インクセット2とし、表3に示される5色の無機顔料インクからなるインクセットを活性エネルギー線硬化系インクセット3とした。
【0054】
3.印刷物の作製
工程1<印刷層の形成>
ピエゾ方式のインクジェットヘッドを搭載したインクジェットプリンターに、各インクセットと熱溶融性フリットインクを装填し、タイル、ガラス等の無機質平板基材に無機顔料インクと熱溶融性フリットインクを同時に吐出し、所定の模様を描画した。
【0055】
3.1印刷条件
3.1.1
水系インクセット1の吐出においては、水系インク用ヘッドを搭載したインクジェットプリンターを使用し、予め基板を50℃以上に加温して印刷実施した。
3.1.2
有機溶剤系インクセット2の吐出においては、溶剤系インク用ヘッドを搭載したインクジェットプリンターを使用し、予め基板を50℃以上に加温して印刷実施した。
3.1.3
活性エネルギー線硬化系インクセット3の吐出においてはUVインク用ヒーター付きヘッドを搭載したインクジェットプリンターを使用し、インクを45℃に加温して吐出し、3秒後にメタルハライドランプを照射した。
3.2使用する熱溶融性フリットインク
使用する無機質基材の熱膨張係数、及び下記工程2で説明する印刷層形成の後に実施する工程2(焼成工程)の実施温度、に対応して選択した熱溶融性フリットインクを1種類、又は2種類、を使用した。また無機顔料インクと熱溶融性フリットインクの吐出比率は重量比で90/10〜10/90の範囲内に成るよう設定した。
【0056】
工程2<焼成>
工程1によって作製したタイル又はガラス板を電気炉内に水平におき、所定温度まで1〜2時間かけて昇温し、所定温度到達後すぐに4〜6時間かけて室温まで冷却した。
【0057】
3.3印刷、焼成品の仕上がり評価
下記評価基準に基づき評価実施した。
外観評価1:画像鮮明度
評価A:焼成前画像と大きく変化なく鮮明な画像を得た。
評価B:焼成前画像より若干のゆがみ、にじみ、ボケ、曇り等が生じ、不鮮明である。
評価C:焼成前画像よりゆがみ、にじみ、ボケ、曇り等が著しく、画像確認が出来ない。
外観評価2:印刷層の状態
評価A:ガラス質感(光沢感)があり、平滑である。
評価B:ガラス質感(光沢感)があるが、クラック発生
評価C:ガラス質感(光沢感)が無い。白濁。
評価D:印刷層が浮いている、指でこすると印刷層が脱落する。
【0058】
以下表5に基づいて実施例を説明する。
【0059】
(実施例1)
工程1:熱膨張係数7×10
−6/Kを有する8mm厚のタイル1を50℃に加温し、インクセット1と熱溶融フリットインク1−A(熱膨張係数7×10
−6/K、熱溶融温度1150℃)とを質量比(a)/(b)=90/10になるように水系用インクジェットプリンターにて同時に吐出し、大理石調の画像を印刷した。
工程2:1250℃で焼成し、印刷タイルを作製した。
仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0060】
(実施例2)
工程1において質量比(a)/(b)=50/50で同時に吐出する以外は実施例1と同様の基材種、工程1,2にて印刷タイルを作製した、仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0061】
(実施例3)
工程1において質量比(a)/(b)=10/90で同時に吐出する以外は実施例1と同様の基材種、工程1,2にて印刷タイルを作製した、仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0062】
(実施例4)
工程1:熱膨張係数8×10
−6/Kを有する10mm厚のタイル2を50℃に加温し、インクセット1と熱溶融フリットインク(1−Aと1−Bを1/1(質量比)で使用:2種併用時の熱膨張係数8×10
−6/K、熱溶融温度1150℃)とを質量比(a)/(b)=50/50になるようにインクジェットプリンターにて同時に吐出し、大理石調の画像を印刷した。
工程2:1250℃で焼成し、印刷タイルを作製した。
仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0063】
(実施例5)
工程1:熱膨張係数7×10
−6/Kを有する8mm厚のタイル1を50℃に加温し、有機溶剤系インクセット2と熱溶融フリットインク(2−Aと2−Cを7/3(質量比)で使用:2種併用時の熱膨張係数7×10
−6/K、熱溶融温度985℃)とを質量比(a)/(b)=50/50になるように有機溶剤系用インクジェットプリンターにて同時に吐出し、大理石調の画像を印刷した。
工程2:1100℃で焼成し、印刷タイルを作製した。
仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0064】
(実施例6)
工程1:熱膨張係数8×10
−6/Kを有する6mm厚のタイル3を50℃に加温し、有機溶剤系インクセット2と熱溶融フリットインク(2−Bと2−Cを1/1(質量比)で使用:2種併用時の熱膨張係数8×10
−6/K、熱溶融温度875℃)とを質量比(a)/(b)=50/50になるように有機溶剤系用インクジェットプリンターにて同時に吐出し、大理石調の画像を印刷した。
工程2:1000℃で焼成し、印刷タイルを作製した。
仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0065】
(実施例7)
工程1:熱膨張係数7×10
−6/Kを有する8mm厚のタイル1に、活性エネルギー線硬化系インクセット3と熱溶融フリットインク(3−Aと3−Cを8/2(質量比)で使用:2種併用時の熱膨張係数7×10
−6/K、熱溶融温度1040℃)とを質量比(a)/(b)=50/50になるようにUVインク用インクジェットプリンターにてインクを45℃により加温して同時に吐出し、3秒後にメタルハライドランプを照射して、大理石調の画像を印刷した。
工程2:1100℃で焼成し、印刷タイルを作製した。
仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0066】
(実施例8)
工程1:熱膨張係数9×10
−6/Kを有する5mm厚のガラス板を70℃に加温し、水系インクセット1と熱溶融フリットインク1−D(熱膨張係数9×10
−6/K、熱溶融温度600℃)とを質量比(a)/(b)=50/50になるように水系用インクジェットプリンターにて同時に吐出し、ステンドグラス調の画像を印刷した。
工程2:700℃で焼成し、印刷ガラスを作製した。
仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0067】
(実施例9)
工程1:熱膨張係数9×10
−6/Kを有する5mm厚のガラス板を50℃に加温し、有機溶剤系インクセット2と熱溶融フリットインク2−D(熱膨張係数9×10
−6/K、熱溶融温度600℃)とを質量比(a)/(b)=50/50になるように有機溶剤系用インクジェットプリンターにて同時に吐出し、ステンドグラス調の画像を印刷した。
工程2:700℃で焼成し、印刷ガラスを作製した。
仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0068】
(実施例10)
工程1:熱膨張係数9×10
−6/Kを有する5mm厚のガラス板に、活性エネルギー線硬化系インクセット3と熱溶融フリットインク3−D(熱膨張係数9×10
−6/K、熱溶融温度600℃)とを質量比(a)/(b)=50/50になるようにUVインク用インクジェットプリンターにてインクを45℃により加温して同時に吐出し、3秒後にメタルハライドランプを照射して、ステンドグラス調の画像を印刷した。
工程2:700℃で焼成し、印刷ガラスを作製した。
仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0069】
(実施例11)
工程1:9×10
−6/Kを有する5mm厚のガラス板に、活性エネルギー線硬化系インクセット3と熱溶融フリットインク3−D(熱膨張係数9×10
−6/K、熱溶融温度600℃)とを質量比(a)/(b)=20/80になるようにUVインク用インクジェットプリンターにてインクを45℃により加温して同時に吐出し、3秒後にメタルハライドランプを照射して、ステンドグラス調の画像を印刷した。
工程2:700℃で焼成し、印刷ガラスを作製した。
仕上がり外観は良好であった。
外観評価1:A(鮮明な印刷画像を得た)、外観評価2:A(光沢感のある平滑面を得た)
【0070】
以下表6に基づいて比較例を説明する。
【0071】
(比較例1)
工程1において質量比(a)/(b)=100/0で吐出する以外は実施例1と同様の基材種、工程1,2にて印刷タイルを作製した。
仕上がり外観は不良であった。
外観評価1:C(画像部分欠落)、外観評価2:D(印刷層が浮いて部分欠落、指で取れる)
熱溶融性インクを同時吐出していないため、無機顔料がタイル基板に固定されず、印刷層が脱落した。
【0072】
(参考例2)
実施例2の工程に準じて行うが、熱溶融フリットインクを1−B(熱膨張係数9×10
−6/K、熱溶融温度1150℃)に変えて印刷タイルを作製した。
仕上がり外観は不良であった。
外観評価1:B(画像不鮮明)、外観評価2:B(印刷層にクラック発生)
無機質基材の熱膨張係数と使用する熱溶融性フリットの熱膨張係数に隔たりが有るため、焼成後の印刷層は満足のいくものとならなかった。
【0073】
(参考例3)
実施例5の工程に準じて行うが、熱溶融フリットインクを2−A(熱膨張係数7×10
−6/K、熱溶融温度1150℃)に変更し、焼成温度を1000℃に変更して、印刷タイルを作製した。
仕上がり外観は不良であった。
外観評価1:C(印刷層曇り不鮮明)、外観評価2:C(光沢感無く、白濁)
焼成温度1000℃であるが、使用したる熱溶融性フリットの熱溶融温度1150℃であり、適合していないため、満足のいく仕上がりを得ることはできなかった。
【0074】
(比較例4)
工程1において質量比(a)/(b)=100/0で吐出する以外は実施例8と同様の基材種、工程1,2にて印刷ガラスを作製した。
仕上がり外観は不良であった。
外観評価1:C(画像部分欠落)、外観評価2:D(印刷層が浮いて部分欠落、指で取れる)
熱溶融性インクを同時吐出していないため、無機顔料がタイル基板に固定されず、印刷層が脱落した。
【0075】
(比較例5)
工程1において質量比(a)/(b)=100/0で吐出する以外は実施例9と同様の基材種、工程1,2にて印刷ガラスを作製した。
仕上がり外観は不良であった。
外観評価1:C(画像部分欠落)、外観評価2:D(印刷層が浮いて部分欠落、指で取れる)
熱溶融性インクを同時吐出していないため、無機顔料がタイル基板に固定されず、印刷層が脱落した。
【0076】
(比較例6)
工程1において質量比(a)/(b)=100/0で吐出する以外は実施例10と同様の基材種、工程1,2にて印刷ガラスを作製した。
仕上がり外観は不良であった。
外観評価1:C(画像部分欠落)、外観評価2:D(印刷層が浮いて部分欠落、指で取れる)
熱溶融性インクを同時吐出していないため、無機顔料がタイル基板に固定されず、印刷層が脱落した。
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】