【実施例】
【0075】
次に、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、文中「部」または「%」とあるのは質量基準である。
【0076】
[合成例1:A−Bブロックコポリマーの合成]
まず、撹拌機、逆流コンデンサー、温度計及び窒素導入管を取り付けた2リッターのセパラブルフラスコの反応装置に下記のものを仕込み、下記のようにしてAのポリマーブロックを構成するポリマーを合成した。具体的には、上記反応装置に、有機溶剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテル(以下、BDGと略記)を631.1部、重合開始化合物としてのヨウ素化合物を得るため、ヨウ素を2.0部と、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、V−70と略記)を7.4部、触媒としてジフェニルメタン(以下、DPMと略記)を0.3部、更に、モノマーとして、メタクリル酸ベンジル(以下、BzMAと略記)を112.8部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下、HEMAと略記)を10.4部、仕込んで撹拌し、45℃に加温した。2時間後、ヨウ素の褐色が消え、この間に、重合開始剤であるV−70がヨウ素と反応してヨウ素化合物である重合開始化合物となったことが確認できた。更に、上記の温度を維持して3時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ16.1%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。以下の重合率も、上記と同様の方法で算出した。また、テトラヒドロフラン(以下、THFと略記)を展開溶媒とするGPCにて分子量を測定したところ、数平均分子量(Mn)が6100、分子量分布(PDI)が1.15であった。数平均分子量は、前記したように、THF溶媒を展開溶媒とするGPCの示差屈折率検出器の測定値である。得られたポリマーの組成は、BzMA/HEMA=約91.6/8.4である。以上のようにして、Aのポリマーブロックを構成するポリマー溶液を得た。また、サンプリング物を水に添加したところ、樹脂が析出し、水と分離した。この結果、Aのポリマーブロック(A鎖)は水に不溶であることが確認された。
【0077】
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液を40℃に降温した後、BzMAを123.3部、メタクリル酸(以下、MAAと略記)を30.1部、V−70を4.6部添加して、更に40℃で4時間重合し、Bのポリマーブロック(B鎖)を形成した。これを一部サンプリングし、固形分を測定したところ、30.3%であり、重合率はほぼ100%であった。また、サンプリング物について、トルエン/イソプロパノール=1/1を溶媒として、0.1N水酸化カリウムエタノール溶液を滴定液、フェノールフタレインを指示薬として、酸価を測定したところ、71.2mgKOH/gであった。また、B鎖中の酸価を計算により求めると127.8mgKOH/gであった。ここで、B鎖中の酸価は、以下のように算出した。
まず、B鎖組成1部あたりのMAA量を求める。
30.1/(123.3+30.1)=0.1962部
次いで、MAAの分子量を86.1、KOHの分子量を56.1として用いると、B鎖の酸価は、
(0.1962/86.1)×56.1×1000=127.8mgKOH/gと算出される。
以下に示したB鎖の酸価も同様に、この方法にて算出した値である。
【0078】
上記で得られたポリマーのMnは10100、PDIは1.43であった。Aのポリマーブロックを形成した際よりも分子量が高分子量側にずれていることが確認されたことより、A−Bブロックコポリマーが形成されたと考えられる。Bのポリマーブロックの数平均分子量は、A−Bブロックコポリマーの分子量からAのポリマーブロックを引いた値として算出することができ、4000と算出された。以下に示したBのポリマーブロックの分子量同様に、この方法にて算出した値である。
【0079】
次いで、200mlビーカーに28%アンモニア水を23.4部、イオン交換水を142.3部加えて、混合液を調製した。そして得られた混合液を、上記で得たA−Bブロックコポリマー溶液に撹拌しながら添加し、A−Bブロックコポリマーのアンモニア水溶液を得た。このA−Bブロックコポリマーのアンモニア水溶液を5Lビーカーに移した後、イオン交換水1680部を添加し、ディゾルバーを用いてよく撹拌し、固形分約10%の樹脂溶液を調製した。この溶液中にpHメーターの電極を入れ、撹拌しながらpHを測定したところpH9.6であった。
【0080】
次いで、この水溶液に10%塩酸水溶液を徐々に加えていったところ、樹脂が中和されて析出していることを確認した。更に10%塩酸水溶液を加えていき、pHが3.0以下となるところまで加えた。析出した樹脂をろ過、洗浄して、A−Bブロックコポリマーの水ペーストを得た。固形分は、55.3%、Mnは10100、PDIは1.43であった。また、滴定にて測定したA−Bブロックコポリマーの樹脂酸価は71.2mgKOH/gであり、ほぼ理論値どおりであった。なお、以下に示した酸価は、いずれも上記と同様の方法で測定した値である。上記で得られたA−Bブロックコポリマーの水ペーストを、BCP−1と称す。A−Bブロックコポリマーの水ペーストの固形分は、本発明で規定するポリマーIIに該当する。よって、表中にBCP−1をポリマーIIとして示す場合がある。後述するように、実施例では、BCP−1を分散安定剤(保護剤)として使用して、特定のビニル系モノマーを重合してポリマーIである架橋ポリマーを合成して、本発明の架橋微粒子を調製する。
【0081】
[比較合成例1:ランダムコポリマーの合成]
合成例1と同様の反応装置を使用し、有機溶剤としてBDGを645.4部投入し、70℃に加温した。そして、予め別容器に調製しておいたモノマー溶液を、反応装置の2Lセパラブルフラスコ中に1.5時間かけて滴下した。予め別容器に調製したモノマー溶液は、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10部を溶解させ、更に、BzMA236.1部、HEMA10.4部、MAA30.1部を加えて調製した。滴下終了後、更に同温度で5時間重合させて、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の固形分は30.4%であった。ポリマーのMnは9600、PDIは1.98、酸価は71.2mgKOH/gであった。
【0082】
次いで、300mlビーカーに28%アンモニア水を23.4部、イオン交換水を151部の混合液を調製した。これを、得られたランダムコポリマー溶液に撹拌しながら添加し、ランダムコポリマーのアンモニア水溶液を得た。得られたランダムコポリマーのアンモニア水溶液を5Lビーカーに移した後、イオン交換水1670部を添加し、ディゾルバーを用いてよく撹拌し、固形分約10%の樹脂溶液を調製した。この溶液中にpHメーターの電極を入れ、撹拌しながらpHを測定したところ、pH9.5であった。
【0083】
次いで、この水溶液に10%塩酸水溶液を徐々に加えていったところ、樹脂が中和されて析出していることを確認した。更に10%塩酸水溶液を加えていき、pHが3.0以下となるところまで加えた。析出した樹脂を、ろ過、洗浄してランダムコポリマーの水ペーストを得た。固形分は、50.8%、Mnは、9600、PDIが1.98であった。また、A−Bブロックコポリマーの樹脂酸価は71.2mgKOH/gであり、ほぼ理論値どおりであった。得られたポリマーをRCP−1と称す。このランダムコポリマーの水ペーストは、本発明で規定するポリマーIIに替えて使用して微粒子を調製するものであるので、表中で、これをポリマーIIIとして示す場合がある。
【0084】
合成例1で得られた本発明の実施例に使用するA−Bブロックコポリマーの物性を表1に、比較例に用いる比較合成例1で得られたランダムコポリマーの物性を表2に、それぞれ示した。
【0085】
【0086】
【0087】
[実施例1:架橋微粒子の水溶液PM−1の合成]
撹拌機、逆流コンデンサー、温度計、滴下装置及び窒素導入管を取り付けた1リッターのセパラブルフラスコの反応装置に、窒素気流下、合成例1で得たポリマーIIに該当するA−Bブロックコポリマーの水ペースト(BCP−1)を126.6部(ポリマー純分70部)、イオン交換水を231.7部、28%アンモニア水10.8部を加え、75℃に加温し、A−Bブロックコポリマーを溶解させた。若干青味のあるほとんど透明の水溶液となった。該溶液を、その後に、下記のビニルモノマーを重合する際の分散安定剤(保護剤)として用いた。別容器に、スチレン(以下、Stと略記)27部、ジビニルベンゼン(以下、DVBと略記)3部を量りとり、均一に混合してビニルモノマー混合液を調製した。該モノマー混合溶液は、次に説明するようにしてポリマーIの部分を形成させることで、実施例の架橋微粒子を作製するためのものである。
【0088】
溶解したA−Bブロックコポリマーが入っている上記の反応装置のセパラブルフラスコに、過硫酸カリウム(以下、KPSと略記)を0.3部添加し、上記で調製したビニルモノマー混合液を、その滴下装置に仕込み、2時間かけて滴下し、ビニルモノマーを重合させた。その後3時間熟成し、冷却して取り出したところ、白色のポリマーエマルジョン水溶液(架橋微粒子の水溶液)を得た。このポリマーエマルジョン水溶液の固形分は、25.0%、平均粒子径26.2nmであった。この平均粒子径の測定には、動的光散乱式粒子径分布測定装置である「SZ−100」(堀場製作所製)を用いた。以下、同様に、この装置を用いてポリマーエマルジョン水溶液(架橋微粒子の水溶液)の平均粒子径の測定を行った。上記で得られた架橋微粒子の水溶液をPM−1と称す。PM−1の固形分は、ビニルモノマーが重合してなるポリマーIと、ポリマーIIのA−Bブロックコポリマーからなる架橋微粒子である。
【0089】
[実施例2〜5:架橋微粒子の水溶液PM−2〜5の合成、比較例1、2:架橋微粒子の水溶液HPM−1、2の合成]
実施例1と同様の反応装置を用い、同様の方法で、合成例1で得たポリマーII(BCP−1)或いは比較合成例1で得たポリマーIII(RCP−1)を用いて、表3、表4に示した配合で架橋微粒子の水溶液をそれぞれ調製した。水溶液中のポリマー分が25%になるように、水の量は適宜調整した。
【0090】
【0091】
【0092】
上記した実施例1〜5、及び、比較例1、2で合成した各架橋微粒子の水溶液の物性を、表5にまとめて示した。
【0093】
実施例の架橋微粒子の水溶液は、いずれも、ビニルモノマーを重合させて、ポリマーIIとポリマーIとを合一にして複合化するビニルモノマーの重合途中に粒子の凝集がほとんど観察されずに安定であり、また重合を完結させることができた。この結果、本発明で規定する方法は、非常に優れた方法であることが確認された。また、表5に示されているように、ポリマーIの形成材料であるビニルモノマーを重合させる際に分散安定剤(保護剤)として用いたポリマーIIのA−Bブロックコポリマーの割合が小さくなるにつれて、得られるポリマーエマルジョン(架橋微粒子の水溶液)の平均粒子径が大きくなることが分かった。このことから、ポリマーIの重合に使用するビニルモノマーに対し、A−Bブロックコポリマー(ポリマーII)の量を変化させることにより任意のポリマー微粒子が得られることが分かった。
【0094】
一方、比較例1の架橋微粒子の水溶液HPM−1は、ポリマーIを形成するビニルモノマーの重合中から粒子の凝集が観察され、また、析出物がみられる結果であった。粗大粒子が多く生成し、平均粒子径が実施例の架橋微粒子よりも非常に大きくなった。更に、比較例2では、ポリマーIII(RCP−1)/ポリマーI=30/70の比率となるようにビニルモノマーの重合を行ったが、途中で粒子凝集が激しく起こり、撹拌も困難で、析出物が多く重合を完結させることができなかった。
【0095】
以上のことから、ポリマーIIである特定のA−Bブロックコポリマーを使用し、ビニルモノマーを重合させる簡便な方法で、ポリマーIとポリマーIIが合一して複合化した本発明の架橋微粒子を安定的に得ることができることが確認された。さらに、本発明の架橋微粒子の製造方法は、ポリマーIを形成するビニルモノマーの量に対し、ポリマーIIのA−Bブロックコポリマーの量を変化させることで、得られる架橋微粒子の平均粒子径を、20〜200nmという極微細な領域で適宜にコントロールすることができる、従来にない非常に優れた方法であることが確認された。
【0096】
[比較例3]
合成例1と同様の装置を使用し、窒素気流下、水116.7部を仕込んで75℃に撹拌した。また、別容器に、5%ポリビニルアルコール(ケン化度87〜89mol%、20℃にて4%水溶液粘度20.5〜24.5cps、以下、PVAと略記。)水溶液を200部量りとった。このPVA水溶液200部に、Stを90部、DVBを10部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1部を添加し、ホモジナイザーにて8000回転、10分撹拌して、モノマー懸濁液を作成した。得られたモノマー懸濁液を、上記の水を仕込んで加温した反応装置に仕込んで、撹拌しながら75〜80℃で4時間重合した。この一部をサンプリングし、固形分を測定したところ、23.8%であり、ほとんど重合が完結していた。平均粒子径を測定したところ、5.4μmの平均粒子径であり、大きい粒子径の架橋微粒子であった。以上のようにしてPVAを保護コロイドとして得られた比較の架橋微粒子を、HPM−3とする。
【0097】
[比較例4]
合成例1と同様の反応装置に滴下装置を装着し、水300部を仕込んで、窒素気流下、65℃に加温した。また、別容器に、Stを90部、DVBを10部、反応性活性剤としてラテムルPD−420(花王社製)を3部仕込んで均一溶液とし、モノマー混合液を調製した。次いで、KPSを0.5部仕込み、滴下装置に、上記で調製したモノマー混合液を仕込んで2時間かけて滴下した。重合が進行し、青白色から白色の乳化液を得た。この一部をサンプリングし、固形分を測定したところ、25.2%であり、ほとんど重合が完結していた。また、平均粒子径を測定したところ、146nmであった。以上のようにして得られた比較の架橋微粒子を、HPM−4とする。
【0098】
[実施例6:架橋微粒子−1の調製]
実施例1で得られた架橋微粒子の水溶液であるPM−1中の架橋微粒子は、ナノサイズであり、そのままではろ過ができないため、以下の方法で析出させ、架橋微粒子を得た。具体的には、実施例1で得られた水溶液のPM−1の100部を、固形分5%なるように水400部で希釈した。次いで、pHメーターを装着し、0.1N塩酸を徐々に添加し、pH3になるまで添加した。その間、系がいったん増粘して本発明の架橋微粒子が析出した。これは、PM−1に含まれるA−BブロックコポリマーのBのポリマーブロックの中和されているカルボキシ基が、カルボキシ基となって水に不溶となったことにより析出したものである。これをろ過するために、4Aろ紙を装着した150mmヌッチェに移し、減圧ろ過した。ろ液の流出が速く、5分間もかからずにろ過が終了した。次いで、イオン交換水500部で3回洗浄した。この洗浄も非常に速いものであった。得られたペーストを80℃、24時間乾燥し、粉砕した。これを架橋微粒子−1とする。
【0099】
[実施例7〜10:架橋微粒子−2〜5の調製]
実施例6と同様にして、実施例2〜5で得られたPM−2〜5についても同様の処理を行い、架橋微粒子を析出させた。すべて、実施例6と同様に、ろ過性が非常によいものであった。実施例2〜5で、析出、ろ過、水洗して得られた架橋微粒子を、それぞれ、架橋微粒子−2〜5とする。
【0100】
次いで、実施例6〜10で得られた架橋微粒子−1〜5について、電子顕微鏡観察を行った。この写真を
図2〜6に示した。これらの図から分かるように、本発明の架橋微粒子を構成するポリマーIである架橋ポリマーが粒子を形成し、ポリマーIIであるA−Bブロックポリマーがその粒子を覆うようなまたは膜となっていた。
【0101】
[比較例5:比較架橋微粒子−1の調製]
比較例3で得られたPVAを保護コロイドとするHPM−3を105部、水395部で希釈して固形分5%とした。この溶液を実施例6と同様にしてろ過を試みた。しかし、非常にろ過が遅く、1日たってもほとんどろ過できていなかった。これは水溶解性のPVAというポリマー成分が存在することで、粘度が出てしまう上に、ろ紙との親和性も生じることによって、ろ過が遅くなったと考えられる。そこで、別容器に移し替え、0.5%過ヨウ素酸ナトリウム水溶液を5部添加して、撹拌してPVAを分解させた。保護コロイドであるPVAが分解されたことにより、ポリマーが不安定となって凝集が見られた。次いで、これを実施例6と同様にろ過したところ、PVAを分解しなかった場合よりはろ過が速くなったが、完全にろ別するまでに12時間を要した。更に、洗浄も合成例6と同様に行ったが、ろ過が遅い結果であった。これを乾燥して粉砕し、比較架橋微粒子−1とした。
【0102】
[比較例6:比較架橋微粒子−2の調製]
比較例4の、反応性活性剤を使用して得たHPM−4は、本発明と同様にナノサイズであるため、そのままではろ過ができない。そこで、HPM−4を99.2部用い、固形分が5%になるように25℃で飽和食塩水400.8部に添加して従来公知の方法である塩析をした。その後、実施例6と同様にしてろ過を行った。しかし、この場合は、塩析させて凝集させても、微粒子であり、ろ過が遅く、ろ別するのに12時間かかってしまった。また、塩を大量に含むので、その除去に大量の水が必要であり、また、塩が除去されていくので、凝集が解かれるためか、更に遅いろ過性であった。また、一部はろ液となって流れてしまう結果であった。これを乾燥粉砕し、比較架橋微粒子−2とした。
【0103】
上記した実施例6、比較例5及び6の結果から、本発明の架橋微粒子は、架橋体でありながら、他の方法で得られる他の構成の架橋微粒子と異なり、ろ過性が良好であることが確認された。
【0104】
[応用例]
実施例6〜10、比較例5、6でそれぞれに得た架橋微粒子及び比較架橋微粒子を各10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート90部をそれぞれサンプルガラス瓶に仕込んで、スターラーピースを入れ、マグネチックスターラーにて、70℃の湯浴にて2時間撹拌した。その結果、本発明で規定する実施例6〜10の架橋微粒子−1〜5は、いずれも分散した。粒子径が最も細かい架橋微粒子−1は、ほとんど透明であり、架橋微粒子−2〜5を用いた系では、粒子径が大きくなるにつれ、白濁度が増すという分散液を得ることができた。
【0105】
これに対し、比較例5の比較架橋微粒子−1を用いた系では、真っ白い分散液となったが、ところどころ分散しきれていない凝集体が見られた。これは、本発明の実施例の架橋微粒子とは違い、粒子径が大きい架橋微粒子の分散体であることによる。また、比較例6の架橋微粒子−2を用いた系では、一部分散しているが、ほとんどが分散していないぶつぶつの凝集物がそのまま存在するものであった。微粒子体の凝集物なので、簡単な撹拌だけで分散することはなかった。これらの結果から、本発明の実施例の架橋微粒子を用いることで、その架橋微粒子の構成成分である、A−BブロックコポリマーのBのポリマーブロックが溶媒に溶解することで、微粒子状に分散することが達成できたと考えられる。上記したように、本発明の実施例の架橋微粒子を用いることで、架橋されたナノ粒子の微粒子の有機溶剤分散液を高濃度で得ることができることを確認した。
【0106】
以上の実施例及び応用例より、本発明で規定する架橋微粒子は、簡便な方法で、安定に重合して得ることができ、更に、A−Bブロックコポリマーの量を変化させることで、微細な粒子径を適宜にコントロールでき、また、その後の処理方法のろ過性も良好であり、分散性も良好であることが見出された。以下、本発明で規定する架橋微粒子を、様々な組成で作製して、上記の効果を確認した。
【0107】
<Bのポリマーブロックの酸価の検討>
[合成例2:A−Bブロックコポリマー−2の合成]
合成例1と同様の装置を使用し、有機溶剤としてBDGを596.1部、ヨウ素を2.0部、V−70を7.4部、触媒としてDPMを0.3部、更に、モノマーとして、BzMAを112.8部、HEMAを10.4部、仕込んで撹拌し、45℃に加温した。上記の温度を維持して5時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ16.9%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。GPCにて分子量を測定したところMnが6000、PDIが1.19であった。このポリマーはBzMA/HEMA=約91.6/8.4である。以上のようにして、Aのポリマーブロック溶液を得た。
【0108】
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液を40℃に降温した後、BzMAを93.4部、MAAを44.8部、V−70を4.1部添加して、更に40℃で4時間重合し、Bのポリマーブロックを形成した。形成したB鎖中の酸価を計算により求めると、211.3mgKOH/gである。このコポリマー溶液は固形分30.2%であり、ほぼ100%の重合率であることが確認できた。得られたA−Bブロックコポリマーの酸価を測定したところ、111.2mg/KOHであった。また、Mnは9200、PDIは1.46であった。これより、Bのポリマーブロックの分子量は、3200と算出された。
【0109】
次いで、合成例1と同様にして、200mlビーカーに28%アンモニア水を34.8部、イオン交換水を139.5部加えて混合液を調製し、これを得られたA−Bブロックコポリマー溶液に撹拌しながら添加し、A−Bブロックコポリマーのアンモニア水溶液を得た。得られたA−Bブロックコポリマーのアンモニア水溶液を5Lビーカーに移した後、イオン交換水を1570部添加し、ディゾルバーを用いてよく撹拌し、固形分約10%の樹脂溶液を調製した。この溶液中にpHメーターを装着し、撹拌しながらpHを測定したところpH9.7であった。
【0110】
次いで、この水溶液に10%塩酸水溶液を徐々に加えていったところ、樹脂が中和されて析出していることを確認した。更に10%塩酸水溶液を、pHが3.0以下となるところまで加えた。析出した樹脂を、ろ過、洗浄して、A−Bブロックコポリマーの水ペーストを得た。得られた水ペーストの固形分は、54.5%、Mnは9300、PDIが1.45であった。また、A−Bブロックコポリマーの樹脂酸価は111.2mgKOH/gであり、ほぼ理論値どおりであった。このA−Bブロックコポリマーの水ペーストをBCP−2と称す。
【0111】
[合成例3:A−Bブロックコポリマー−3の合成]
合成例1と同様の装置を使用し、有機溶剤としてBDGを659部、ヨウ素を2.0部、V−70を7.4部、触媒としてDPMを0.3部、更に、モノマーとして、BzMAを112.8部、HEMAを10.4部、仕込んで撹拌し、45℃に加温した。上記の温度を維持して5時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ15.5%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。GPCにて分子量を測定したところ、Mnが6000、PDIが1.20であった。このポリマーはBzMA/HEMA=約91.6/8.4である。以上のようにして、Aのポリマーブロック溶液を得た。
【0112】
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液を40℃に降温した後、BzMAを142.7部、MAAを20.7部、V−70を2.5部添加して、更に40℃で4時間重合し、Bのポリマーブロックを形成した。形成したB鎖中の酸価を計算により求めると82.6mgKOH/gである。このコポリマー溶液は固形分30.0%であり、ほぼ100%の重合率であることが確認できた。得られたA−Bブロックコポリマーの酸価を測定したところ、47.1mg/KOHであった。またMnは12000、PDIは1.44であった。これより、Bのポリマーブロックの分子量は、6000と算出された。
【0113】
次いで、200mlビーカーに28%アンモニア水を16.1部、イオン交換水を172.5部加えて混合液を調製し、これを得られたA−Bブロックコポリマー溶液に撹拌しながら添加し、A−Bブロックコポリマーのアンモニア水溶液を得た。得られたA−Bブロックコポリマーのアンモニア中和物を5Lビーカーに移したのち、イオン交換水を1730部添加し、ディゾルバーを用いてよく撹拌し、固形分約10%の樹脂溶液を調製した。この溶液中にpHメーターを装着し、撹拌しながらpHを測定したところpH9.4であった。
【0114】
次いで、この水溶液に10%塩酸水溶液を徐々に加えていったところ、樹脂が中和されて析出していることを確認した。更に10%塩酸水溶液を、pHが3.0以下となるところまで加えた。析出した樹脂を、ろ過、洗浄してA−Bブロックコポリマーの水ペーストを得た。得られた水ペーストの固形分は、57.5%、Mnは12300、PDIが1.43であった。また、A−Bブロックコポリマーの樹脂酸価は47.1mgKOH/gであり、ほぼ理論値どおりであった。これをBCP−3と称す。
【0115】
<Aのポリマーブロックの分子量の検討>
[合成例4:A−Bブロックコポリマー−4の合成]
合成例1と同様の装置を使用し、有機溶剤としてBDGを738.9部、ヨウ素を3.0部、V−70を11.2部、触媒としてDPMを0.5部、更に、モノマーとして、BzMAを84.6部、HEMAを7.8部、仕込んで撹拌し、45℃に加温した。上記の温度を維持して5時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ10.5%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。GPCにて分子量を測定したところMnが3100、PDIが1.13であった。このポリマーはBzMA/HEMA=約91.6/8.4である。以上のようにして、Aのポリマーブロック溶液を得た。
【0116】
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液を40℃に降温した後、BzMAを185.0部、MAAを45.2部、V−70を6.9部添加して、更に40℃で4時間重合し、Bのポリマーブロックを形成した。形成したB鎖中の酸価を計算により求めると127.9mgKOH/gである。このポリマー溶液は固形分30.2%であり、ほぼ100%の重合率であることが確認できた。得られたA−Bブロックコポリマーの酸価を測定したところ、91.4mg/KOHであった。またMnは7100、PDIは1.41であった。これよりBのポリマーブロックの分子量は、4100と算出された。
【0117】
次いで、300mlビーカーに28%アンモニア水を35.1部、イオン交換水を172.2部加えて混合液を調製し、これを得られたA−Bブロックコポリマー溶液に撹拌しながら添加し、A−Bブロックコポリマーのアンモニア水溶液を得た。得られたA−Bブロックコポリマーのアンモニア水溶液を5Lビーカーに移した後、イオン交換水1900部を添加し、ディゾルバーを用いてよく撹拌し、固形分約10%の樹脂溶液を調製した。この溶液中にpHメーターの電極を入れ、撹拌しながらpHを測定したところpH9.7であった。
【0118】
次いで、この水溶液に10%塩酸水溶液を徐々に加えていったところ、樹脂が中和されて析出していることを確認した。更に10%塩酸水溶液を、pHが3.0以下となるところまで加えた。析出した樹脂を、ろ過、洗浄してA−Bブロックコポリマーの水ペーストを得た。得られた水ペーストの固形分は、51.3%、Mnは、7300、PDIが1.41であった。また、A−Bブロックコポリマーの樹脂酸価は91.4mgKOH/gであり、ほぼ理論値どおりであった。これをBCP−4と称す。
【0119】
[合成例5;A−Bブロックコポリマー−5の合成]
合成例1と同様の装置を使用し、有機溶剤としてBDGを774.5部、ヨウ素を2.0部、V−70を7.4部、触媒としてDPMを0.3部、更に、BzMAを169.2部、HEMAを15.6部、仕込んで撹拌し、45℃に加温した。上記の温度を維持して5時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ19.0%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。GPCにて分子量を測定したところMnが7700、PDIが1.20であった。このポリマーはBzMA/HEMA=約91.6/8.4である。以上のようにして、Aのポリマーブロック溶液を得た。
【0120】
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液を40℃に降温した後、BzMAを123.3部、MAAを30.1部、V−70を4.6部添加して、更に40℃で4時間重合し、Bのポリマーブロックを形成した。形成したB鎖中の酸価を計算により求めると127.9mgKOH/gである。このポリマー溶液は固形分30.3%であり、ほぼ100%の重合率であることが確認できた。得られたA−Bブロックコポリマーの酸価を測定したところ、58.1mg/KOHであった。またMnは12100、PDIは1.49、ピークトップ分子量は18100であった。これよりBのポリマーブロックの分子量は、4400と算出された。
【0121】
次いで、300mlビーカーに28%アンモニア水を23.4部、イオン交換水を202.4部加えて混合液を調製し、これを得られたA−Bブロックコポリマー溶液に撹拌しながら添加し、A−Bブロックコポリマーのアンモニア水溶液を得た。得られたA−Bブロックコポリマーのアンモニア水溶液を5Lビーカーに移した後、イオン交換水を2000部添加し、ディゾルバーを用いてよく撹拌し、固形分約10%の樹脂溶液を調製した。この溶液中にpHメーターを装着し、撹拌しながらpHを測定したところpH9.7であった。
【0122】
次いで、この水溶液に10%塩酸水溶液を徐々に加えていったところ、樹脂が中和されて析出していることを確認した。更に10%塩酸水溶液を、pHが3.0以下となるところまで加えた。析出した樹脂を、ろ過、洗浄してA−Bブロックコポリマーの水ペーストを得た。得られた水ペーストの固形分は、52.7%、Mnは、12200、PDIが1.48であった。また、A−Bブロックコポリマーの樹脂酸価は58.1mgKOH/gであり、ほぼ理論値どおりであった。これをBCP−5と称す。
【0123】
合成例2〜5で得られたA−Bブロックコポリマーの組成及び物性を表6にまとめて示した。
【0124】
[実施例11〜16:架橋微粒子の水溶液PM−6〜11の合成]
上記の合成例1〜5で得たポリマーIIに該当するA−Bブロックコポリマーの水ペーストをそれぞれ分散安定剤(保護剤)に用い、実施例1と同様にして、表7でまとめた配合にて、本発明の実施例の架橋微粒子の水溶液を合成した。その際、A−Bブロックコポリマーの量はすべて60部、使用するビニルモノマーの量はすべて40部となるようにした。
【0125】
【0126】
実施例11〜16で合成した各架橋微粒子の水溶液の物性を表8にまとめて示した。
【0127】
実施例11〜16では、各架橋微粒子の水溶液を、析出もなく安定に重合できることが確認された。また、実施例6と同様にして酸で析出させて、本発明の実施例の架橋微粒子を得ることができた。ろ過性も良好であることを確認した。また応用例と同様にして分散したところ、いずれの架橋微粒子も容易に分散することを確認した。これらの実施例から、ポリマーIIのA−Bブロックコポリマーの酸価や分子量、或いは、架橋ポリマー(ポリマーI)の組成などによって、合成される架橋微粒子の平均粒子径が変化することが分かった。このことは、これらの設計によっても、合成する架橋微粒子の平均粒子径をコントロールすることが可能であることを意味しており、本発明で規定する架橋微粒子は、製造の際に多様な設計が可能であることが分かった。
【0128】
[合成例6:(MMA/EHMA)−b−(MMA/MAA)の合成]
合成例1と同様の装置を使用し、有機溶剤としてBDGを407.3部、ヨウ素を2.0部、V−70を7.4部、触媒としてDPMを0.3部、更に、モノマーとして、MMAを64.1部、メタクリル酸2−エチルヘキシル(以下、EHMAと略記)を15.8部、仕込んで撹拌し、45℃に加温した。上記の温度を維持して5時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ16.0%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。また、GPCにて分子量を測定したところ、Mnが4200、PDIが1.22であった。このポリマーはMMA/EHMA=約80.2/19.8である。以上のようにして、Aのポリマーブロック溶液を得た。
【0129】
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液を40℃に降温した後、MMAを70.0部、MAAを30.1部、V−70を3.0部添加して、更に40℃で4時間重合し、Bのポリマーブロックを形成した。形成されたB鎖中の酸価を計算により求めると195.9mgKOH/gであった。このポリマー溶液は固形分29.9%であり、ほぼ100%の重合率であることが確認できた。
また、得られたA−Bブロックコポリマーの酸価を測定したところ、108.7mg/KOHであった。またMnは7200、PDIは1.41であった。これより、Bのポリマーブロックの分子量は、3000と算出された。
【0130】
次いで、合成例1と同様にして、200mlビーカーに28%アンモニア水を23.4部、イオン交換水を96.6部加えて、混合液を調製した。そして、この混合液を得られたA−Bブロックコポリマー溶液に撹拌しながら添加し、A−Bブロックコポリマーのアンモニア水溶液を得た。得られたA−Bブロックコポリマーのアンモニア水溶液を5Lビーカーに移した後、イオン交換水を1080部添加し、ディゾルバーを用いてよく撹拌し、固形分約10%の樹脂溶液を調製した。この溶液中にpHメーターを装着し、撹拌しながらpHを測定したところpH9.6であった。
【0131】
次いで、この水溶液に10%塩酸水溶液を徐々に加えていったところ、樹脂が中和されて析出していることを確認した。更に10%塩酸水溶液を、pHが3.0以下となるところまで加えた。析出した樹脂を、ろ過、洗浄してA−Bブロックコポリマーの水ペーストを得た。得られた水ペーストの固形分は、53.3%、Mnは、7300、PDIが1.40であった。また、A−Bブロックコポリマーの樹脂酸価は108.7mgKOH/gであり、ほぼ理論値どおりであった。これをBCP−6と称す。
【0132】
[合成例7:(CHMA/BMA)−b−(CHMA/MAA)の合成]
合成例1と同様の装置を使用し、有機溶剤としてBDGを608.9部、ヨウ素を2.0部、V−70を7.4部、触媒としてDPMを0.3部、更に、モノマーとして、CHMAを107.7部、メタクリル酸ブチル(以下、BMAと略記)を11.4部、仕込んで撹拌し、45℃に加温した。上記の温度を維持して5時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ16.2%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。GPCにて分子量を測定したところ、Mnが5900、PDIが1.19であった。このポリマーはCHMA/BMA=約90.4/9.6である。以上のようにして、Aのポリマーブロック溶液を得た。
【0133】
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液を40℃に降温した後、CHMAを117.8部、MAAを30.1部、V−70を4.4部添加して、更に40℃で4時間重合し、Bのポリマーブロックを形成した。形成したB鎖中の酸価を計算により求めると132.6mgKOH/gである。このポリマー溶液は固形分30.1%であり、ほぼ100%の重合率であることが確認できた。また、得られたA−Bブロックコポリマーの酸価を測定したところ、73.5mg/KOHであった。また、Mnは10000、PDIは1.43であった。これより、Bのポリマーブロックの分子量は、4100と算出された。
【0134】
次いで、合成例1と同様にして、200mlビーカーに28%アンモニア水を23.4部、イオン交換水を154.6部加えて混合液を調製し、これを得られたA−Bブロックコポリマー溶液に撹拌しながら添加し、A−Bブロックコポリマーのアンモニア水溶液を得た。得られたA−Bブロックコポリマーのアンモニア水溶液を5Lビーカーに移した後、イオン交換水を1602部添加し、ディゾルバーを用いてよく撹拌し、固形分約10%の樹脂溶液を調製した。この溶液中にpHメーターを装着し、撹拌しながらpHを測定したところpH9.5であった。
【0135】
次いで、この水溶液に10%塩酸水溶液を徐々に加えていったところ、樹脂が中和されて析出していることを確認した。更に10%塩酸水溶液を、pHが3.0以下となるところまで加えた。析出した樹脂を、ろ過、洗浄してA−Bブロックコポリマーの水ペーストを得た。固形分は、56.9%、Mnは、10100、PDIが1.42であった。また、A−Bブロックコポリマーの樹脂酸価は73.4mgKOH/gであり、ほぼ理論値どおりであった。これをBCP−7と称す。
【0136】
[合成例8:(CHMA/BMA)−b−(MMA/MAA)の合成]
合成例1と同様の装置を使用し、有機溶剤としてBDGを497.4部、ヨウ素を2.0部、V−70を7.4部、触媒としてDPMを0.3部、更に、モノマーとして、CHMAを107.7部、メタクリル酸ブチル(以下、BMAと略記)を11.4部、仕込んで撹拌し、45℃に加温した。上記の温度を維持して5時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ19.0%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。GPCにて分子量を測定したところMnが5800、PDIが1.20であった。このポリマーはCHMA/BMA=約90.4/9.6である。以上のようにして、Aのポリマーブロック溶液を得た。
【0137】
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液を40℃に降温した後、MMAを70.0部、MAAを30.1部、V−70を4.4部添加して、更に40℃で4時間重合し、Bのポリマーブロックを形成した。形成したB鎖中の酸価を計算により求めると195.9mgKOH/gである。このポリマー溶液は固形分29.8%であり、ほぼ100%の重合率であることが確認できた。得られたA−Bブロックコポリマーの酸価を測定したところ、89.3mg/KOHであった。また、Mnは9000、PDIは1.45であった。これより、Bのポリマーブロックの分子量は、3200と算出された。
【0138】
次いで、合成例1と同様にして、200mlビーカーに28%アンモニア水を23.4部、イオン交換水を122.7部加えて、混合液を調製し、これを得られたA−Bブロックコポリマー溶液に撹拌しながら添加し、A−Bブロックコポリマーのアンモニア水溶液を得た。得られたA−Bブロックコポリマーのアンモニア水溶液を5Lビーカーに移した後、イオン交換水を1315部添加し、ディゾルバーを用いてよく撹拌し、固形分約10%の樹脂溶液を調製した。この溶液中にpHメーターを装着し、撹拌しながらpHを測定したところpH9.7であった。
【0139】
次いで、この水溶液に10%塩酸水溶液を徐々に加えていったところ、樹脂が中和されて析出していることを確認した。更に10%塩酸水溶液を、pHが3.0以下となるところまで加えた。析出した樹脂を、ろ過、洗浄してA−Bブロックコポリマーの水ペーストを得た。得られた水ペーストの固形分は、56.3%、Mnは、9100、PDIが1.45であった。また、A−Bブロックコポリマーの樹脂酸価は89.3mgKOH/gであり、ほぼ理論値どおりであった。これをBCP−8と称す。
【0140】
合成例6〜8で得られたA−Bブロックコポリマーの組成及び物性を表9にまとめて示した。
【0141】
[実施例17〜19:架橋微粒子の水溶液PM−12〜19の合成]
上記の合成例6〜8で得たポリマーIIに該当するA−Bブロックコポリマーの水ペーストをそれぞれ分散安定剤(保護剤)に用い、実施例1と同様にして、表10でまとめた配合にて、本発明の架橋微粒子の水溶液を合成した。その際、A−Bブロックコポリマーの量はすべて60部、使用するビニルモノマーの量はすべて40部となるようにした。
【0142】
【0143】
実施例17〜19で合成した各架橋微粒子の水溶液の物性を表11にまとめて示した。
【0144】
実施例17〜19では、各架橋微粒子の水溶液は、析出もなく安定に重合できることが確認された。また、実施例6と同様にして酸で析出させて、本発明の実施例の架橋微粒子を得ることができた。ろ過性も良好であることを確認した。また応用例と同様にして分散したところ、いずれの架橋微粒子も容易に分散することを確認した。これらの実施例から、分散安定剤に用いたポリマーIIのA−Bブロックコポリマーのモノマー組成を様々に変え、更に、ポリマーIの形成に、様々な単官能モノマー、架橋モノマーを用いても架橋微粒子を製造できることを確認した。