【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の硬化性組成物は、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基を有するポリオキシアルキレン重合体(A)と、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径(D50)が1.5μm以下であり且つ表面処理されていない充填剤(B)と、シラノール縮合触媒(C)とを含有することを特徴とする。
【0010】
[ポリオキシアルキレン重合体(A)]
ポリオキシアルキレン重合体(A)は、架橋性シリル基として(メトキシメチル)ジメトキシシリル基を有している。このようなポリオキシアルキレン重合体(A)によれば、硬化性組成物の深部硬化性を向上させることができる。このような硬化性組成物は表面から内部まで迅速に硬化することができる。
【0011】
ポリオキシアルキレン重合体(A)は、主鎖又は側鎖の末端に(メトキシメチル)ジメトキシシリル基を有していることが好ましい。これにより硬化性組成物が、機械的強度により優れている硬化物を形成することができる。
【0012】
ポリオキシアルキレン重合体(A)は、1分子中に平均で、好ましくは1.5個以上、より好ましくは2個以上、特に好ましくは2〜2.5個の(メトキシメチル)ジメトキシシリル基を有している。(メトキシメチル)ジメトキシシリル基の平均個数が1.5個以上であるポリオキシアルキレン重合体(A)によれば、ゴム弾性に優れている硬化物を形成することが可能な硬化性組成物を提供することができる。
【0013】
ポリオキシアルキレン重合体(A)における、1分子中における(メトキシメチル)ジメトキシシリル基の平均個数は、
1H−NMRにより求められるポリオキシアルキレン重合体(A)中の(メトキシメチル)ジメトキシシリル基の濃度、及びGPC法により求められるポリオキシアルキレン重合体(A)の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0014】
ポリオキシアルキレン重合体(A)の主鎖は、一般式:-(R-O)
n-(式中、Rは炭素数が1〜14のアルキレン基を表し、nは繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体を含んでいることが好ましい。ポリオキシアルキレン重合体の主鎖は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0015】
ポリオキシアルキレン重合体(A)の主鎖としては、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレン共重合体等が挙げられる。なかでも、ポリオキシプロピレンが好ましい。ポリオキシプロピレンによれば、高い接着力及びゴム硬度を有している硬化物を形成可能な硬化性組成物を提供することができる。
【0016】
ポリオキシアルキレン重合体(A)の数平均分子量は、7,000〜30,000が好ましく、9,000〜27,000がより好ましい。数平均分子量が7,000以上であるポリオキシアルキレン重合体(A)によれば、硬化性組成物が硬くて脆い硬化物を形成し難くすることができる。硬くて脆い硬化物は接着力が低い。数平均分子量が30,000以下であるポリオキシアルキレン重合体(A)によれば、適度な粘度を有し、塗工性に優れている硬化性組成物を提供することができる。
【0017】
なお、本発明において、ポリオキシアルキレン重合体(A)の数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて、ポリスチレンにより換算された値である。例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
【0018】
<測定装置>
Wateres社製 製品名「Waters 2690」
<測定条件>
カラム :Shodex GPC KF800D(4.6mm ID×250mm)×2本
カラム温度 :40℃
移動相 :テトラヒドロフラン(0.3mL/分)
サンプル濃度:0.2重量%
検出器 :RI WATERS社製 製品名「2414」
【0019】
ポリオキシアルキレン重合体(A)として、市販されている製品を用いることができる。例えば、主鎖の末端に架橋性シリル基として(メトキシメチル)ジメトキシシリル基を有するポリオキシアルキレン重合体(A)としては、株式会社カネカ社製 製品名「FCS−1」、及び「FCS−3」等が挙げられる。
【0020】
[充填剤(B)]
本発明の硬化性組成物は、充填剤(B)を含んでいる。充填剤(B)によれば、硬化初期から高い引張強度及びゴム硬度を発揮する硬化物を形成することが可能な硬化性組成物を提供することができる。
【0021】
充填剤(B)としては、無機系充填剤が好ましく挙げられる。無機系充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化二鉄、酸化カリウム、石英、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウムなどが挙げられる。なかでも、炭酸カルシウムが好ましい。充填剤(B)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0022】
充填剤(B)の粒度分布における累積質量が50%となる粒子径(D50)は、1.5μm以下であるが、0.1〜1.5μmがより好ましい。粒子径(D50)を1.5μm以下とすることにより、硬化初期から高い引張強度を発揮する硬化物を形成することが可能な硬化性組成物を提供することができる。
【0023】
なお、本発明において、充填剤(B)の粒子径(D50)とは、遠心沈降法により測定された粒度分布において累積質量が50%となる粒子径を意味する。充填剤(B)の粒子径(D50)の測定は、ディスク遠心沈降式粒度分布測定装置(例えば、CPS社製 製品名「DC−24000型」など)を用いて行うことができる。例えば、次の通りにして、充填剤(B)の粒子径(D50)を測定することができる。
【0024】
充填剤をその濃度が1重量%となるように水中に投入した後、超音波分散機(例えば、BRANSON社製 製品名「Sonifier Model 250」)を用いて150Wの出力で超音波を5分間照射して懸濁液を得る。この懸濁液について、ディスク遠心沈降式粒度分布測定装置(例えば、CPS社製 製品名「DC−24000型」など)を用いて、下記測定条件にて、累積質量粒度分布曲線を測定する。この累積質量粒度分布曲線では、横軸に沈降粒子の粒子径(μm)を示し、縦軸に全粒子の総質量に対する沈降粒子の累積質量の百分率(%)を示す。そして、累積質量粒度分布曲線から、全粒子の総質量に対して沈降粒子の累積質量の百分率が50質量%になった時の粒子径を求め、この粒子径を充填剤(B)の粒子径(D50)とする。
[測定条件]
回転数:24000rpm
密度勾配溶液:16重量%ショ糖溶液
粒子密度:2.1g/ml
測定範囲:0.01〜10μm
【0025】
充填剤(B)は、表面処理されていない。したがって、充填剤(B)は、表面処理剤によって表面が被覆されていない。このような充填剤(B)によれば、高い引張強度及びゴム硬度を有する硬化物を形成することが可能な硬化性組成物を提供することができる。表面処理剤としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、ロジン酸、及び樹脂酸等が挙げられる。
【0026】
充填剤(B)の表面を被覆している表面処理剤の量(以下、単に「表面処理量」とも記載する)は、充填剤(B)100重量部に対して、1重量部以下が好ましく、0重量部がより好ましい。
【0027】
硬化性組成物中における充填剤(B)の含有量は、ポリオキシアルキレン重合体(A)100重量部に対して、50〜300重量部が好ましく、80〜200重量部がより好ましく、120〜180重量部が特に好ましい。充填剤(B)の含有量が上記範囲内であれば、高い引張強度及びゴム硬度を有する硬化物を形成することが可能な硬化性組成物を提供することができる。
【0028】
充填剤(B)としては、市販されている製品を用いることができる。例えば、白石カルシウム社製 製品名「Brilliant−15」、「ソフトン3200」;日東粉化社製 製品名「NITOREX#23P」、「NITOREX#30P」;丸尾カルシウム社製 製品名「ナノックス#25」、「スーパー#2300」、「ナノックス#30」等が挙げられる。
【0029】
[シラノール縮合触媒(C)]
本発明の硬化性組成物は、シラノール縮合触媒(C)を含んでいる。シラノール縮合触媒(C)とは、シラノール基同士の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。なお、シラノール基とは、ケイ素原子に直接結合しているヒドロキシ基(≡Si−OH)を意味する。シラノール基は、加水分解性シリル基が加水分解することにより形成される。
【0030】
シラノール縮合触媒(C)としては、有機錫系化合物、有機塩基系化合物、及び有機チタン系化合物などが挙げられる。これらのシラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0031】
有機錫系化合物としては、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ビス(ノニルフェノキサイド)、ジブチル錫アセテート、ジブチル錫フタレート、ジブチル錫(2−エチルヘキサノエート)、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(エチルアセトアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、ジブチル錫オクトレート、ジブチル錫ジラウレート、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、及びジブチル錫オキシビスエトキシシリケート、ジブチル錫オキシビスエトキシシリケート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫オキサイド、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ビス(エチルマレート)等が挙げられる。
【0032】
有機塩基系化合物とは、分子中に金属原子を含有せず、一分子中に1個以上の第二級アミン又は第三級アミンを含み、且つ25℃における酸解離定数(pKa)が10以上である化合物を意味する。
【0033】
このような有機塩基系化合物としては、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(pKa:11.9)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(pKa:12.5)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(pKa:12.7)、1−フェニルグアニジン(pKa:13.4)、1,3−ジフェニルグアニジン(pKa:14.5)、及びこれらと酸との塩などが挙げられる。
【0034】
有機塩基系化合物の25℃における酸解離定数(pKa)の測定は、次の通りにして行うことができる。先ず、有機塩基系化合物を水に溶解させて水溶液とする。次に、水溶液中、25℃で、pH測定装置にて測定される解離段1におけるpHを測定し、このpHと有機塩基系化合物の濃度より酸解離定数(pKa)を算出することができる。
【0035】
なかでも、シラノール縮合触媒(C)としては、有機錫系化合物及び有機塩基系化合物が好ましく、有機錫系化合物又は25℃における酸解離定数(pKa)が11以上の有機塩基系化合物がより好ましく、ジブチル錫ジアセチルアセトナートが特に好ましい。
【0036】
硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒(C)の含有量は、ポリオキシアルキレン重合体(A)100重量部に対して、0.05〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。シラノール縮合触媒(C)の含有量を上記範囲内とすることによって、硬化性組成物の深部硬化性を高めることができる。
【0037】
[シランカップリング剤]
本発明の硬化性組成物は、シランカップリング剤をさらに含んでいることが好ましい。シランカップリング剤を上述したポリオキシアルキレン重合体(A)と組み合わせて用いることにより、硬化性組成物の接着性をより向上させることができる。
【0038】
シランカップリング剤としては、アミノシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、イソシアネートシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤、カルボキシシランカップリング剤、ハロゲンシランカップリング剤、カルバメートシランカップリング剤、アルコキシシランカップリング剤、及び酸無水物シランカップリング剤等が挙げられる。なかでも、ポリオキシアルキレン重合体(A)との相乗効果が得られやすいことから、アミノシランカップリング剤が好ましい。これらのアミノシランカップリング剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0039】
アミノシランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリエトキシリル)プロピル]ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0040】
なかでも、アミノシランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−(2−アミノエチル)−3−プロピルトリエトキシシランが好ましく挙げられ、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランがより好ましく挙げられる。
【0041】
硬化性組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、ポリオキシアルキレン重合体(A)100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましく、1〜5重量部がより好ましい。シランカップリング剤の含有量を0.5重量部以上とすることによって、硬化性組成物の接着性を向上させることができる。また、シランカップリング剤の含有量を10重量部以下とすることによって、硬化性組成物の貯蔵安定性や取扱性の低下を抑制することができる。
【0042】
[可塑剤]
本発明の硬化性組成物は、可塑剤をさらに含んでいることが好ましい。可塑剤を用いることによって硬化性組成物の深部硬化性を向上させることができる。また、本発明の硬化性組成物では、充填剤(B)を用いることによって、硬化初期から高い引張強度及びゴム硬度を発揮する硬化物を形成することができる。したがって、可塑剤による硬化物の引張強度やゴム硬度の低下を高く低減することができる。
【0043】
可塑剤として、具体的には、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレンオキサイド類等が挙げられる。これらの可塑剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0044】
硬化性組成物中における可塑剤の含有量は、ポリオキシアルキレン重合体(A)100重量部に対して、100重量部以下が好ましく、70重量部以下がより好ましく、1〜70重量部が特に好ましい。硬化性組成物中における可塑剤の含有量が多すぎると、可塑剤がブリードを起こす恐れがある。
【0045】
[脱水剤]
本発明の硬化性組成物は、脱水剤をさらに含んでいることが好ましい。脱水剤によれば、硬化性組成物を保存している際に、空気中に含まれている水分によって硬化性組成物が硬化することを抑制することができる。
【0046】
脱水剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシラン等のシラン化合物;並びにオルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、及びオルト酢酸エチル等のエステル化合物等を挙げることができる。これらの脱水剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、脱水剤としてはビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0047】
硬化性組成物中における脱水剤の含有量は、ポリオキシアルキレン重合体(A)100重量部に対して、0.5〜30重量部が好ましく、1〜25重量部がより好ましい。
【0048】
[他の添加剤]
本発明の硬化性組成物は、チキソ性付与剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料、染料、沈降防止剤、溶媒等の他の添加剤を含んでいても良い。
【0049】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ビスヒンダードフェノール系酸化防止剤、レスヒンダードフェノール系酸化防止剤及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及びビスヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく挙げられる。硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、ポリオキシアルキレン重合体(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.3〜10重量部がより好ましい。
【0050】
光安定剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びヒンダードアミン系光安定剤が好ましく挙げられる。硬化性組成物中における光安定剤の含有量は、ポリオキシアルキレン重合体(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。
【0051】
本発明の硬化性組成物は、空気中の湿気や、被着体に含まれている湿気によって、表面から内部まで迅速に硬化することができる。また、このような硬化性組成物は、硬化初期から高い引張強度及びゴム硬度を発揮する硬化物を形成する。
【0052】
このような硬化性組成物は、土木用、建築用、車両用、電気製品用、電子部品用、雑貨用の接着剤、シーリング剤、コーティング剤、シーラント及び目止め剤や、土木用又は建築用基材の被覆剤及びプライマー剤などとして、様々な用途に用いることができる。