【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために本発明の請求項1のフィルタ取付構造にあっては、中空部に弁が内蔵されたスリーブの周面に並設された周面溝の各々に帯状フィルタを装着して前記各周面溝内に開設されたポートを覆うフィルタ取付構造において、前記各周面溝の一部分において、前記軸方向に溝幅が拡張された拡張部を設け、他方、前記帯状フィルタの一端側において、幅が拡張された幅広部を設け、前記幅広部を前記拡張部に係合して前記帯状フィルタを前記周面溝に沿って巻き付けた状態で、少なくとも当該帯状フィルタの先端側と後端側が重なり合う重合部を成し、前記重合部にて前記帯状フィルタの先端側と後端側とを固着した。
【0016】
すなわち、スリーブに並設された周面溝に帯状フィルタを装着する際には、前記帯状フィルタの幅広部を、対応する周面溝の拡張部に係合する。そして、前記スリーブと前記帯状フィルタとを相対的に回転させ、前記帯状フィルタを対応する周面溝に沿って巻き付ける。このとき、前記帯状フィルタは、その幅広部が前記周面溝の前記拡張部に係合しており、当該帯状フィルタの空回りが防止される。
【0017】
そして、少なくとも当該帯状フィルタの先端側と後端側が重なり合う重合部を形成し、この重合部にて前記帯状フィルタの先端側と後端側とを例えば接着や溶着により固着する。
【0018】
これにより、前記各周面溝には、前記各帯状フィルタが空回りすること無く装着固定される。
【0019】
また、請求項2のフィルタ取付構造においては、前記拡張部と前記幅広部とを略同一形状であって、前記幅広部が前記拡張部に対し小さく形成されている。
【0020】
すなわち、前記拡張部と前記幅広部とは略同一形状であって、前記幅広部が前記拡張部に対し小さく形成されている。このため、前記拡張部への前記幅広部の誤装着を防止できる。また、前記幅広部の前記拡張部への取り付け位置を正しく認識出来る。
【0021】
さらに、請求項3のフィルタ取付構造では、前記周面溝を、隣接して配置された第一周面溝と第二周面溝とで構成するとともに、前記第一周面溝に形成された拡張部と前記第二周面溝に形成された拡張部とを、軸方向で互いに離れる方向へ向けて拡張形成した。
【0022】
すなわち、隣接して配置された第一周面溝の拡張部と前記第二周面溝の拡張部とは、互いに離れる方向へ向けて形成されている。
【0023】
このため、前記第一周面溝の拡張部と前記第二周面溝の拡張部とが、隣接する方向に形成された場合と比較して、両周面溝の近接配置が可能とされる。
【0024】
また、並設された同じ間隔の溝の場合、前記拡張部を内側に拡張させると、隣の周面溝とのリークが発生し、問題となるが、この問題を解決することができる。
【0025】
加えて、請求項4のフィルタ取付構造にあっては、前記拡張部を形成する周方向側の壁面における前記周面側の端が中心軸側の端よりもオーバーハングしている。
【0026】
すなわち、前記拡張部を形成する周方向側の壁面は、前記周面側の端が中心軸側の端よりもオーバーハングするように傾斜している。
【0027】
このため、前記帯状フィルタを巻き付けるために前記スリーブと前記帯状フィルタとを相対的に回転させた際には、前記帯状フィルタの前記幅広部の側面が前記拡張部のオーバーハングした壁面に当接するので、前記幅広部には前記壁面によって中心軸方向へ向けた分力が生ずる。
【0028】
これにより、前記帯状フィルタの前記幅広部は、前記周面溝の前記拡張部に引っ掛けた状態で、外れにくくすることができ、不用意な外れが防止される。
【0029】
また、請求項5のフィルタ取付構造においては、前記各周面溝に形成された拡張部を、前記スリーブの周方向において略同位置に設定した。
【0030】
すなわち、前記各周面溝に形成された拡張部は、前記スリーブの周方向において略同位置に設定されており、前記各帯状フィルタの前記幅広部の係合作業や、前記重合部での固着作業が容易に行われる。
【0031】
さらに、請求項6のフィルタ取付構造では、前記重合部を、スポット溶接で固着した。
【0032】
すなわち、前記重合部は、スポット溶接で固着される。これにより、量産性が高められる。また、固定部分での信頼性が高められる。
【0033】
加えて、請求項7のフィルタ取付構造にあっては、前記拡張部及び前記幅広部を、軸方向で前記周面溝から離れる方向に従って先細りとなる三角形状に形成した。
【0034】
このような形状でも前記拡張部及び前記幅広部を構成できる。
【0035】
また、請求項8のフィルタ取付構造においては、前記拡張部及び前記係止部を、前記周面溝から離れる方向へ向けて突出した略半円形状に形成した。
【0036】
このような形状でも前記拡張部及び前記幅広部を構成できる。
【0037】
そして、本発明の請求項9のフィルタ取付方法にあっては、スリーブの周面に並設された各周面溝の軸方向片側のみに当該スリーブの軸方向に広がる拡張部が形成される一方、前記周面溝に装着して当該周面溝に開設されたポートを覆う帯状フィルタの一端側に前記拡張部と係合する幅広部が形成された構造において、前記各帯状フィルタの前記幅広部を対応する周面溝の前記拡張部に係合する第一行程と、前記スリーブを軸中心に回転して前記各帯状フィルタを対応する周面溝に巻き付ける第二工程と、前記各帯状フィルタの先端側に当該帯状フィルタの後端側が重なって重合部が形成された時点で前記スリーブの回転を停止し、前記先端側と前記後端側とを前記重合部にて固着して固着部を形成する第三工程と、を備えている。
【0038】
すなわち、スリーブに並設された周面溝に帯状フィルタを装着する際には、前記各帯状フィルタの前記幅広部を対応する周面溝の拡張部に係合する。
【0039】
この状態で、前記スリーブを軸中心に回転して前記各帯状フィルタを対応する周面溝に巻き付ける。このとき、前記各帯状フィルタは、前記幅広部が対応する周面溝の拡張部に係合されている。このため、巻き付け時での不用意な空回りが防止される。
【0040】
そして、前記各帯状フィルタの先端側に当該帯状フィルタの後端側が重なって重合部が形成された時点で前記スリーブの回転を停止し、前記先端側と前記後端側とを前記重合部にて接着や溶着などにより固着して固着部を形成する。
【0041】
これにより、前記各周面溝には、前記各帯状フィルタが一度の行程により装着される。
【0042】
また、本発明の請求項10のフィルタ取付方法においては、スリーブの周面に並設された各周面溝の軸方向片側のみに当該スリーブの軸方向に広がる拡張部が形成される一方、前記周面溝に装着して当該周面溝に開設されたポートを覆う帯状フィルタの一端側に前記拡張部と係合する幅広部が形成された構造において、前記各帯状フィルタの前記幅広部を対応する周面溝の前記拡張部に係合する第一行程と、前記各帯状フィルタを、前記スリーブの軸中心に回転して前記各帯状フィルタを対応する周面溝に巻き付ける第二工程と、前記各帯状フィルタの先端側に当該帯状フィルタの後端側が重なって重合部が形成された時点で前記各帯状フィルタの回転を停止し、前記先端側と前記後端側とを前記重合部にて固着して固着部を形成する第三工程と、を備えている。
【0043】
すなわち、スリーブに並設された周面溝に帯状フィルタを装着する際には、前記各帯状フィルタの前記幅広部を対応する周面溝の拡張部に係合する。
【0044】
この状態で、前記各帯状フィルタを、前記スリーブの軸中心に回転して前記各帯状フィルタを対応する周面溝に巻き付ける。このとき、前記各帯状フィルタは、前記幅広部が対応する周面溝の拡張部に係合されている。このため、巻き付け時での不用意な空回りが防止される。
【0045】
そして、前記各帯状フィルタの先端側に当該帯状フィルタの後端側が重なって重合部が形成された時点で前記各帯状フィルタの回転を停止し、前記先端側と前記後端側とを前記重合部にて固着して固着部を形成する。
【0046】
これにより、前記各周面溝には、前記各帯状フィルタが一度の行程により装着される。
【0047】
さらに、請求項11のフィルタ取付方法では、前記第三の行程は、前記先端側と前記後端側とを前記重合部にて固着して前記固着部を形成した後、当該帯状フィルタの前記固着部より後端側をカットする行程を有する。
【0048】
すなわち、前記先端側と前記後端側とを前記重合部にて固着して前記固着部を形成した際には、当該帯状フィルタの前記固着部より後端側がカットされる。
【0049】
また、前記帯状フィルタの後端側を後でカットするので、あらかじめカットされているものを巻く作業と比較して、帯状フィルタの部材が長手方向に長くなり、前記周面溝に巻きやすくなる。あるいは、前記帯状フィルタがチャックしやすく自動化に適している。
【発明の効果】
【0050】
以上説明したように本発明の請求項1のフィルタ取付構造にあっては、帯状フィルタの幅広部を、対応する周面溝の拡張部に係合することによって、帯状フィルタ巻き付け時での空回りや、フィルタ装着後の位置ずれを防止することができる。これにより、作業性の向上や巻き付け後の位置ずれを防止できる。
【0051】
そして、前記帯状フィルタの先端側と後端側が重なり合う重合部において、前記帯状フィルタの先端側と後端側とを例えば接着や溶着により固着することより、容易に前記帯状フィルタを周面溝に固着出来るとともに、装着後も周面溝に沿った回転ずれをも防止出来る。なお、前記各周面溝に前記各帯状フィルタを一度の行程により装着することも可能となる。
【0052】
このため、帯状フィルタの端部に複雑な固定構造を形成したり、帯状フィルタをスナップリングで固定する従来と比較して、組み立て作業効率性を高めることができる。
【0053】
したがって、複雑な構造を用いずに、帯状フィルタの巻き付け作業性を向上し、量産に対応することができる。
【0054】
また、請求項2のフィルタ取付構造においては、前記拡張部と前記幅広部とは略同一形状であって、前記幅広部が前記拡張部に対し小さく形成されている。
【0055】
このため、前記拡張部への前記幅広部の誤装着を防止できる。また、前記幅広部の前記拡張部への取り付け位置を正しく認識出来る。
【0056】
さらに、請求項3のフィルタ取付構造では、隣接して配置された第一周面溝の拡張部と前記第二周面溝の拡張部とは、軸方向で互いに離れる方向へ向けて拡張形成されている。
【0057】
このため、前記第一周面溝の拡張部と前記第二周面溝の拡張部とが、隣接する方向に形成された場合と比較して、両周面溝の近接配置が可能となる。
【0058】
また、並設された同じ間隔の溝の場合、前記第一周面溝の拡張部と前記第二周面溝の拡張部とを隣接する内側に拡張させると、隣の周面溝とのリークが発生し、問題となることが考えられる。しかし、第一周面溝の拡張部と前記第二周面溝の拡張部とを軸方向で互いに離れる方向へ向けて拡張形成することで、この問題の発生を解決することができる。
【0059】
加えて、請求項4のフィルタ取付構造にあっては、前記拡張部を形成する周方向側の壁面は、前記周面側の端が中心軸側の端よりもオーバーハングするように傾斜している。
【0060】
このため、前記帯状フィルタを巻き付けるために前記スリーブと前記帯状フィルタとを相対的に回転させた際には、前記帯状フィルタの前記幅広部の側面が前記拡張部のオーバーハングした壁面に当接することで、前記幅広部に中心軸方向へ向けた分力を生じさせることができる。
【0061】
これにより、前記帯状フィルタの前記幅広部を、前記周面溝の前記拡張部に引っ掛けた状態で、外れにくくすることができ、不用意な外れを防止することができる。
【0062】
また、請求項5のフィルタ取付構造においては、前記各周面溝に形成された拡張部は、前記スリーブの周方向において略同位置に設定されており、前記各帯状フィルタの前記幅広部の係合作業や、前記重合部での固着作業を容易に行うことができる。
【0063】
そして、スリーブの回転作業も少なくて済む。
【0064】
さらに、請求項6のフィルタ取付構造では、前記重合部は、スポット溶接で固着される。
【0065】
これにより、量産性を高めることができる。また、固定部分での信頼性を高めることができる。
【0066】
加えて、請求項7のフィルタ取付構造にあっては、前記拡張部及び前記幅広部を軸方向で前記周面溝から離れる方向に従って先細りとなる三角形状に形成した。
【0067】
このような形状でも前記拡張部及び前記幅広部を構成することができる。
【0068】
また、請求項8のフィルタ取付構造においては、前記拡張部及び前記係止部を、前記周面溝から離れる方向へ向けて突出した略半円形状に形成した。
【0069】
このような形状でも前記拡張部及び前記幅広部を構成することができる。
【0070】
また、本発明の請求項9のフィルタ取付方法にあっては、帯状フィルタの幅広部を、対応する周面溝の拡張部に係合することによって、帯状フィルタ巻き付け時での空回りや、フィルタ装着後の位置ずれを防止することができる。これにより、作業性の向上や巻き付け後の位置ずれを防止できる。
【0071】
そして、前記各帯状フィルタの先端側に当該帯状フィルタの後端側が重なって重合部が形成された時点で前記スリーブの回転を停止し、前記先端側と前記後端側とを前記重合部にて接着や溶着などにより固着して固着部を形成する。これにより、容易に前記帯状フィルタを周面溝に固着出来るとともに、装着後も周面溝に沿った回転ずれをも防止出来る。なお、前記各周面溝に前記各帯状フィルタを一度の行程により装着することも可能となる。
【0072】
このため、帯状フィルタの端部に複雑な固定構造を形成したり、帯状フィルタをスナップリングで固定する従来と比較して、組み立て作業効率性を高めることができる。
【0073】
したがって、複雑な構造を用いずに、帯状フィルタの巻き付け作業性を向上し、量産に対応することができる。
【0074】
また、本発明の請求項10のフィルタ取付方法においては、前記各帯状フィルタを、前記スリーブの軸中心に回転して対応する周面溝に巻き付ける場合であっても、前述と同様の作用効果を得ることができる。
【0075】
さらに、請求項11のフィルタ取付方法では、前記先端側と前記後端側とを前記重合部にて固着して前記固着部を形成した後に、当該帯状フィルタの前記固着部より後端側をカットすることができる。
【0076】
このとき、前記帯状フィルタの後端側を後でカットするので、あらかじめカットされているものを巻く作業と比較して、帯状フィルタの部材が長手方向に長くなり、前記周面溝に巻きやすくなる。あるいは、前記帯状フィルタがチャックしやすく自動化に適している。