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  • 特開2015206491-蒸気システム 図000003
  • 特開2015206491-蒸気システム 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-206491(P2015-206491A)
(43)【公開日】2015年11月19日
(54)【発明の名称】蒸気システム
(51)【国際特許分類】
   F22B 3/04 20060101AFI20151023BHJP
   F22B 35/00 20060101ALI20151023BHJP
   F02G 5/00 20060101ALI20151023BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20151023BHJP
【FI】
   F22B3/04
   F22B35/00 F
   F02G5/00 A
   F01P3/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-85743(P2014-85743)
(22)【出願日】2014年4月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】大下 悟
(72)【発明者】
【氏名】大熊 恭輔
(72)【発明者】
【氏名】刑部 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 恵輔
【テーマコード(参考)】
3L021
【Fターム(参考)】
3L021AA08
3L021BA08
3L021CA10
3L021DA04
3L021FA28
(57)【要約】
【課題】蒸気発生装置の出力と蒸気昇圧装置の負荷率とをより連携させられる蒸気システムを提供すること。
【解決手段】低圧蒸気を生成する蒸気発生装置10と、低圧蒸気を昇圧する蒸気昇圧装置20と、蒸気発生装置10において生成された低圧蒸気を蒸気昇圧装置20に供給する低圧蒸気供給ライン30と、低圧蒸気供給ライン30を流通する低圧蒸気の圧力を測定する低圧蒸気圧測定部31と、を備える蒸気システム1であって、蒸気昇圧装置20は、低圧蒸気を圧縮する圧縮部21と、圧縮部21に導入される低圧蒸気の圧力が設定された第1目標圧力P1になるように負荷率を制御する負荷率制御部22と、を備え、第1目標圧力P1は、蒸気発生装置10が最大出力で運転し、かつ、蒸気昇圧装置20が最大負荷率で運転している状態において低圧蒸気圧測定部31で測定されるバランス圧力PBの30%以上100%以下に設定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源流体を熱源として低圧蒸気を生成する蒸気発生装置と、
前記蒸気発生装置において生成された低圧蒸気を昇圧する蒸気昇圧装置と、
前記蒸気発生装置において生成された低圧蒸気を前記蒸気昇圧装置に供給する低圧蒸気供給ラインと、
前記低圧蒸気供給ラインを流通する低圧蒸気の圧力を測定する低圧蒸気圧測定部と、を備える蒸気システムであって、
前記蒸気昇圧装置は、低圧蒸気を圧縮する圧縮部と、該圧縮部に導入される低圧蒸気の圧力が設定された第1目標圧力になるように該圧縮部の負荷率を制御する負荷率制御部と、を備え、
前記第1目標圧力は、前記蒸気発生装置が最大出力で運転し、かつ、前記蒸気昇圧装置が最大負荷率で運転している状態において前記低圧蒸気圧測定部で測定されるバランス圧力PBの30%以上100%以下に設定される蒸気システム。
【請求項2】
前記蒸気発生装置に供給される熱源流体の流量を調整する流量調整弁と、
前記蒸気昇圧装置から吐出される吐出蒸気が流通する蒸気吐出ラインと、
前記蒸気吐出ラインを流通する吐出蒸気の圧力を測定する吐出蒸気圧測定部と、
前記吐出蒸気圧測定部により測定される吐出蒸気の圧力に基いて前記流量調整弁を制御する弁制御部と、を更に備える請求項1に記載の蒸気システム。
【請求項3】
前記蒸気発生装置に供給される熱源流体の流量を調整する流量調整弁と、
前記低圧蒸気圧測定部により測定される低圧蒸気の圧力に基いて前記流量調整弁を制御する弁制御部と、を更に備える請求項1に記載の蒸気システム。
【請求項4】
前記熱源流体の熱源となる廃熱源と、
前記熱源流体を前記蒸気発生装置に供給する熱源流体供給ラインと、
前記蒸気発生装置から排出された前記熱源流体を前記廃熱源に供給する熱源流体排出ラインと、
前記蒸気発生装置に供給される熱源流体の流量を調整する流量調整弁と、
前記蒸気発生装置において前記熱源流体から除去することが許容される熱量である要求除去熱量を算出する除去熱量算出部と、
前記除去熱量算出部により算出された要求除去熱量に基づいて前記流量調整弁を制御する弁制御部と、を更に備える請求項1に記載の蒸気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気システムに関する。より詳細には、温水等の熱源流体を熱源として蒸気を生成する蒸気発生装置と、この蒸気発生装置で生成された蒸気を昇圧する蒸気昇圧装置と、を備える蒸気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温水等の熱源流体を熱源として低圧蒸気を生成する蒸気発生装置と、この蒸気発生装置で生成された低圧蒸気を吸引して昇圧する蒸気昇圧装置と、を備える蒸気システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような蒸気システムでは、蒸気発生装置により生成された低圧蒸気は、蒸気発生装置と蒸気昇圧装置とを接続する低圧蒸気供給ラインを介して蒸気昇圧装置に供給され、蒸気昇圧装置によって昇圧された後、蒸気使用機器に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−138924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような蒸気システムにおいては、蒸気昇圧装置の駆動状態(負荷率)を、この蒸気昇圧装置に供給される蒸気の圧力に基いて制御することが行われる。より具体的には、蒸気昇圧装置の負荷率は、蒸気昇圧装置に供給される蒸気の圧力が予め設定された所定の目標圧力となるように制御される。
【0005】
即ち、蒸気昇圧装置は、低圧蒸気供給ラインを流通する低圧蒸気の圧力が目標圧力よりも低い場合には、負荷率を落として駆動する。これにより、蒸気昇圧装置に供給される蒸気量(つまり、蒸気昇圧装置が吸引する蒸気量)は減少するため、低圧蒸気供給ラインにおける低圧蒸気の圧力は上昇して目標圧力に近づく。一方、低圧蒸気供給ラインを流通する低圧蒸気の圧力が目標圧力よりも高い場合には、蒸気昇圧装置は、最大負荷率(100%)で駆動する。これにより、蒸気昇圧装置が吸引する蒸気量は最大量となるため、低圧蒸気供給ラインにおける低圧蒸気の圧力は低下して目標圧力に近づく。
このように、低圧蒸気供給ラインを流通する低圧蒸気の圧力が目標圧力となるように蒸気昇圧装置を駆動させることで、蒸気発生装置において安定的に蒸気を生成させられる。
【0006】
しかしながら、蒸気システム全体のエネルギ効率を考えた場合には、蒸気発生装置の出力と蒸気昇圧装置の負荷率とがより連携するように制御されることが好ましい。
【0007】
従って、本発明は、蒸気発生装置の出力と蒸気昇圧装置の負荷率とをより連携させられる蒸気システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、熱源流体を熱源として低圧蒸気を生成する蒸気発生装置と、前記蒸気発生装置において生成された低圧蒸気を昇圧する蒸気昇圧装置と、前記蒸気発生装置において生成された低圧蒸気を前記蒸気昇圧装置に供給する低圧蒸気供給ラインと、前記低圧蒸気供給ラインを流通する低圧蒸気の圧力を測定する低圧蒸気圧測定部と、を備える蒸気システムであって、前記蒸気昇圧装置は、低圧蒸気を圧縮する圧縮部と、該圧縮部に導入される低圧蒸気の圧力が設定された第1目標圧力になるように該圧縮部の負荷率を制御する負荷率制御部と、を備え、前記第1目標圧力は、前記蒸気発生装置が最大出力で運転し、かつ、前記蒸気昇圧装置が最大負荷率で運転している状態において前記低圧蒸気圧測定部で測定されるバランス圧力PBの30%以上100%以下に設定される蒸気システムに関する。
【0009】
また、蒸気システムは、前記蒸気発生装置に供給される熱源流体の流量を調整する流量調整弁と、前記蒸気昇圧装置から吐出される吐出蒸気が流通する蒸気吐出ラインと、前記蒸気吐出ラインを流通する吐出蒸気の圧力を測定する吐出蒸気圧測定部と、前記吐出蒸気圧測定部により測定される吐出蒸気の圧力に基いて前記流量調整弁を制御する弁制御部と、を更に備えることが好ましい。
【0010】
また、蒸気システムは、前記蒸気発生装置に供給される熱源流体の流量を調整する流量調整弁と、前記低圧蒸気圧測定部により測定される低圧蒸気の圧力に基いて前記流量調整弁を制御する弁制御部と、を更に備えることが好ましい。
【0011】
また、蒸気システムは、前記熱源流体の熱源となる廃熱源と、前記熱源流体を前記蒸気発生装置に供給する熱源流体供給ラインと、前記蒸気発生装置から排出された前記熱源流体を前記廃熱源に供給する熱源流体排出ラインと、前記蒸気発生装置に供給される熱源流体の流量を調整する流量調整弁と、前記蒸気発生装置において前記熱源流体から除去することが許容される熱量である要求除去熱量を算出する除去熱量算出部と、前記除去熱量算出部により算出された要求除去熱量に基づいて前記流量調整弁を制御する弁制御部と、を更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の蒸気システムによれば、蒸気発生装置の出力と蒸気昇圧装置の負荷率とをより連携させられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る蒸気システムを示す図である。
図2】本発明の第3実施形態に係る蒸気システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の蒸気システムの好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、第1実施形態に係る蒸気システム1について、図1を参照しながら説明する。
第1実施形態の蒸気システム1は、廃熱源としてのガスエンジン200と、冷却水循環ライン220と、蒸気を生成する蒸気発生装置10と、この蒸気発生装置10において生成された蒸気を昇圧する蒸気昇圧装置20と、蒸気発生装置10と蒸気昇圧装置20とを接続する低圧蒸気供給ライン30と、この低圧蒸気供給ライン30を流通する蒸気の圧力(低圧蒸気圧)を測定する低圧蒸気圧測定部としての低圧蒸気圧力センサ31と、蒸気昇圧装置20から吐出される吐出蒸気が流通する蒸気吐出ライン40と、この蒸気吐出ライン40を流通する吐出蒸気の圧力を測定する吐出蒸気圧測定部としての吐出蒸気圧力センサ41と、蒸気システム1の動作を制御する制御部50と、を備える。尚、「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0015】
ガスエンジン200は、ガスを燃料として駆動し、発電を行う。
冷却水循環ライン220は、ガスエンジン200を冷却する冷却水を循環させる。この冷却水循環ライン220は、ガスエンジン200において熱回収を行った高温の冷却水(温水)を熱源流体として蒸気発生装置10に供給する温水供給ライン(熱源流体供給ライン)14と、蒸気発生装置10から排出された温水をガスエンジン200に供給する温水排出ライン(熱源媒体排出ライン)15と、温水供給ライン14と温水排出ライン15とをバイパスするバイパスライン18と、温水排出ライン15をバイパスする第2バイパスライン155と、を備える。
【0016】
温水供給ライン14とバイパスライン18との接続部分には、流量調整弁としての三方弁19が配置される。この三方弁19は、温水供給ライン14から蒸気発生装置10側に流れる温水の量及びバイパスライン18側に流れる温水の流量を調整する。本実施形態では、三方弁19は、開度調整が可能なモータバルブにより構成される。
【0017】
温水排出ライン15には、冷却器151と、第1温度センサ152と、第2温度センサ153と、流量計154と、が配置される。
冷却器151は、温水排出ライン15を流通する温水から熱回収を行う。
第1温度センサ152は、温水排出ライン15における冷却器151の上流側に配置され、冷却器151に導入される前の温水の温度を測定する。
第2温度センサ153は、温水排出ライン15における冷却器151の下流側に配置され、冷却器151において熱回収された後の温水の温度を測定する。
流量計154は、第2温度センサ153の下流側に配置され、温水排出ライン15を流通する温水の流量を測定する。
【0018】
第2バイパスライン155は、温水排出ライン15における冷却器151の上流側と下流側とをバイパスする。本実施形態では、第2バイパスライン155は、第1温度センサ152の上流側と流量計154の下流側とを接続して、冷却器151をバイパスしている。この第2バイパスライン155の上流側と温水排出ライン15との接続部分には、三方弁156が配置される。三方弁156は、蒸気発生装置10から排出され温水排出ライン15を流通する温水の流路を、冷却器151側又は第2バイパスライン155側に切り替える。
【0019】
蒸気発生装置10は、ガスエンジン200のジャケット冷却水の排熱等の比較的低温の熱源流体を利用して蒸気を発生させる。この蒸気発生装置10は、タンク部11と、タンク部11の内部に配置されるチューブ12及び噴霧ノズル13と、噴霧水供給ライン16と、補給水ライン17と、を備える。
【0020】
タンク部11は、蒸気発生装置10における本体部分を構成する。タンク部11の内部は負圧もしくは低圧(例えば、−0.05MPaG〜0.1MPaG程度)に維持され、このタンク部11の内部において蒸気が生成される。このタンク部11の上部には、後述の低圧蒸気供給ライン30の基端部が接続される。
また、タンク部11には、安全弁32が設けられる。安全弁32は、タンク部11の内部の圧力が所定の圧力(設定圧力)を超えた場合に、蒸気を外部に放出してタンク部11(蒸気発生装置10)の内部の圧力を低下させる。
【0021】
チューブ12は、タンク部11の内部に水平方向に延びて配置される。より具体的には、チューブ12は、タンク部11の内部において、水平方向に所定間隔をあけて複数本配置されると共に、高さ方向にも所定間隔をあけて複数本配置される。このチューブ12の一端側(入口側)には温水供給ライン14の先端側が接続され、他端側(出口側)には、温水排出ライン15の基端側が接続される。これにより、チューブ12内部には、熱源流体としての温水が流通する。
【0022】
噴霧ノズル13は、タンク部11の内部におけるチューブ12よりも上方に配置される。この噴霧ノズル13は、チューブ12に向けて水を噴霧する。
噴霧水供給ライン16は、タンク部11の下部と噴霧ノズル13とを接続し、タンク部11の下部に貯留された水を、噴霧水として噴霧ノズル13に供給する。噴霧水供給ライン16には、噴霧水ポンプ161が配置されている。
噴霧水ポンプ161は、タンク部11に貯留された水を噴霧ノズル13まで汲み上げる。
【0023】
補給水ライン17は、タンク部11と水を貯留している貯留槽等(図示せず)とを接続する。補給水ライン17は、タンク部11に補給水を供給する。この補給水ライン17には、補給水ポンプ171が配置される。
補給水ポンプ171は、貯留槽等から供給された水を昇圧してタンク部11の内部に供給する。
【0024】
以上の蒸気発生装置10によれば、三方弁19により温水供給ライン14からバイパスライン18への流路を閉止した状態では、まず、ガスエンジン200から熱源となる温水(例えば、約90℃)が、温水供給ライン14を通じてチューブ12に供給される。チューブ12に供給された温水は、タンク部11の内部に配置されたチューブ12に導入される。
一方、タンク部11の内部においては、噴霧ノズル13からチューブ12に向けて、噴霧水が噴霧される。また、タンク部11の内部は、負圧もしくは低圧(例えば、−0.05MPaG〜0.1MPaG程度)に維持されている。これにより、チューブ12を流通する温水は、噴霧水によって熱を奪われて85℃程度まで降温し、温水排出ライン15を通じて排出される。
【0025】
また、温水が流通するチューブ12には、噴霧ノズル13から80℃程度の水が噴霧されることで、表面に薄い液膜が形成される。このように、タンク部11の内部が負圧に維持された状態において、チューブ12の表面に薄い液膜が形成されることによって、チューブ12の内部を流通する温水と、噴霧ノズル13によって噴霧される水との温度差が比較的小さい場合(例えば、約10℃)であっても効率的に蒸気を生成することが可能になる。
【0026】
タンク部11の内部で発生した蒸気は、低圧蒸気供給ライン30から導出される。
タンク部11の内部で蒸気にならなかった水は、タンク部11の下部に貯留される。タンク部11の下部に貯留された水は、噴霧水供給ライン16を通じて、噴霧水ポンプ161によって噴霧ノズル13まで汲み上げられ、再びチューブ12に噴霧される。
タンク部11に貯留される水が少なくなった場合には、補給水ライン17からタンク部11に補給水が補給される。
【0027】
また、三方弁19の開度を調整してチューブ12に供給される温水の流量を調整することで、タンク部11の内部で発生する蒸気の量を調整できる。
【0028】
蒸気昇圧装置20は、蒸気発生装置10において生成された低圧蒸気(例えば、−0.05MPaG〜0.1MPaG)を吸引して圧縮し、昇圧する。この蒸気昇圧装置20は、低圧蒸気を圧縮する圧縮部21と、この圧縮部21の動作を制御する負荷率制御部22と、を備える。
【0029】
圧縮部21は、例えば、スクリュー式の蒸気圧縮機により構成され、低圧の蒸気を0.4MpaG〜0.8MPaG程度に昇圧する。
負荷率制御部22は、低圧蒸気供給ライン30を流通する蒸気の圧力(圧縮部21に導入される蒸気の圧力)に基いて、圧縮部21の駆動(負荷率)を制御する。より具体的には、負荷率制御部22は、低圧蒸気供給ライン30を流通する蒸気の圧力が設定された第1目標圧力P1となるように、蒸気昇圧装置20の負荷率を制御する。
【0030】
即ち、低圧蒸気供給ライン30の蒸気圧が第1目標圧力P1よりも高くなっている場合には、負荷率制御部22は、負荷率を最大(負荷率100%)にして蒸気昇圧装置20(圧縮部21)を駆動させる。これにより、蒸気昇圧装置20には、上限量の蒸気が吸引されることになり、低圧蒸気供給ライン30の蒸気圧は低下していく傾向にある。尚、蒸気昇圧装置20が100%の負荷率で駆動した状態においても、低圧蒸気供給ライン30の蒸気圧が第1目標圧力P1を上回っている場合には、蒸気昇圧装置20は100%の負荷率で駆動を続ける。
【0031】
一方、低圧蒸気供給ライン30の蒸気圧が、第1目標圧力P1を下回った場合には、負荷率制御部22は、蒸気昇圧装置20(圧縮部21)の負荷率を低下させる。これにより、蒸気昇圧装置20に吸引される蒸気の量は減少し、低圧蒸気供給ライン30の蒸気圧は上昇する。
このようにして、低圧蒸気供給ライン30の蒸気圧を第1目標圧力P1となるように制御することにより、蒸気発生装置10により蒸気を効率よくかつ安定的に生成させられる。
尚、負荷率制御部22は、蒸気昇圧装置20に設けられた圧力センサ(図示せず)により圧縮部21に導入される低圧蒸気の圧力を検出する。
【0032】
低圧蒸気供給ライン30は、蒸気発生装置10において生成された低圧蒸気を蒸気昇圧装置20に供給する。
低圧蒸気圧力センサ31は、低圧蒸気供給ライン30の内部における蒸気圧(低圧蒸気の圧力)を測定する。
【0033】
蒸気吐出ライン40は、基端側が蒸気昇圧装置20に接続される。この蒸気吐出ライン40は、蒸気昇圧装置20において昇圧された後吐出される吐出蒸気を流通させる。蒸気吐出ライン40の先端側は、蒸気使用機器210に接続される。
吐出蒸気圧力センサ41は、蒸気吐出ライン40の内部における蒸気圧(吐出蒸気の圧力)を測定する。
【0034】
制御部50は、蒸気発生装置10の動作を制御する。本実施形態では、制御部50は、蒸気吐出ライン40を流通する吐出蒸気の圧力に基いて、三方弁19の開度を制御する弁制御部51を含んで構成される。より具体的には、弁制御部51は、例えば、吐出蒸気圧力センサ41により測定された吐出蒸気の圧力が所定の基準圧力を下回った場合には、開度が大きくなるように三方弁19を制御し、基準圧力を上回った場合には、開度が小さくなるように三方弁19を制御する。
尚、ここで、三方弁19の開度を大きくするとは、チューブ12側に流通する温水の量が増加するように三方弁19の開度を調整することをいう。また、三方弁19の開度を小さくするとは、チューブ12側に流通する温水の量が減少するように三方弁19の開度を調整することをいう。
【0035】
以上の蒸気システム1によれば、蒸気発生装置10により生成された低圧蒸気は、低圧蒸気供給ライン30を介して蒸気昇圧装置に供給される。蒸気昇圧装置20は、圧縮部21に導入される低圧蒸気の圧力(つまり、低圧蒸気供給ライン30を流通する低圧蒸気の圧力)が第1目標圧力P1となるように圧縮部21の負荷率を制御しながら低圧蒸気を昇圧する。蒸気昇圧装置20において昇圧された蒸気は、蒸気吐出ライン40に導出され、蒸気使用機器210に供給される。
【0036】
ここで、本実施形態では、蒸気昇圧装置20における第1目標圧力P1は、低圧蒸気供給ライン30における低圧蒸気のバランス圧力PBの30%以上100%以下に設定される。
ここで、低圧蒸気のバランス圧力PBとは、蒸気発生装置10を最大出力で運転させ、かつ、蒸気昇圧装置20を最大負荷率で運転させた場合に、低圧蒸気供給ライン30を流通する低圧蒸気の圧力が安定した状態で低圧蒸気圧力センサ31により測定される低圧蒸気の圧力を示す。
【0037】
このように、第1目標圧力P1をバランス圧力PBの30%以上100%以下に設定することで、蒸気発生装置10と蒸気昇圧装置20とを好適に連携させられる。
即ち、バランス圧力PBとは、上述のように、蒸気システム1において、蒸気発生装置を最大出力で運転させかつ蒸気昇圧装置を最大負荷率で運転させた場合、つまり蒸気システム1を最大出力で運転させた場合に、低圧蒸気供給ライン30を流通する低圧蒸気がバランスする圧力である。
【0038】
そのため、第1目標圧力P1をバランス圧力PBの30%未満の値(例えば、20%)に設定した場合、低圧蒸気供給ライン30を流通する低圧蒸気の圧力がバランス圧力PBの20%に低下するまで、蒸気昇圧装置20は最大負荷率で運転することとなる。つまり、この場合、蒸気システム1に要求される蒸気量が減少すると、蒸気システム1は、低圧蒸気圧力センサ31で測定される低圧蒸気の圧力がバランス圧力PBの20%に低下するまで三方弁19の開度を小さくして出力を低下させる。そして、低圧蒸気の圧力がバランス圧力PBの20%を下回った後に、ようやく蒸気昇圧装置20が負荷率を低下させ始め、更に出力を低下させる。
【0039】
一方、第1目標圧力P1をバランス圧力PBに近い値(例えば、70%)に設定した場合、低圧蒸気供給ライン30を流通する低圧蒸気の圧力がバランス圧力PBの70%未満に低下すると、蒸気昇圧装置20の負荷率は低下し始める。つまり、この場合、蒸気システム1に要求される蒸気量が減少すると、蒸気システム1は、低圧蒸気圧力センサ31で測定される低圧蒸気の圧力がバランス圧力PBの70%に低下するまで三方弁19の開度を小さくして出力を低下させる。そして、低圧蒸気の圧力がバランス圧力PBの70%を下回った後には、蒸気昇圧装置20が負荷率を低下させ、更に出力を低下させる。
【0040】
以上のように、第1目標圧力P1をバランス圧力PBの30%以上100%以下に設定することで、蒸気システム1の出力を変化させる場合に、蒸気発生装置10と蒸気昇圧装置20とを好適に連携させられる。これにより、蒸気システム1の出力の変化に対し、主として蒸気発生装置10による蒸気の生成量の増減で対応する場合に比して、蒸気システム1のエネルギ効率を向上させられる。
【0041】
蒸気発生装置10の出力の変化に対する蒸気昇圧装置20の負荷率変化の連動性をより高める観点からは、第1目標圧力P1は、バランス圧力PBに近い値で設定されることが好ましい。具体的には、第1目標圧力P1は、バランス圧力PBの50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
【0042】
以上説明した第1実施形態の蒸気システム1によれば、以下のような効果を奏する。
【0043】
(1)蒸気昇圧装置20における第1目標圧力P1を低圧蒸気供給ライン30における低圧蒸気のバランス圧力PBの30%以上100%以下に設定した。これにより、蒸気システム1の出力を変化させる場合に、蒸気発生装置10と蒸気昇圧装置20とを好適に連携させられる。よって、蒸気システム1の出力の変化に対し、主として蒸気発生装置10による蒸気の生成量の増減で対応する場合に比して、蒸気システム1のエネルギ効率を向上させられる。
【0044】
(2)蒸気システム1を、蒸気発生装置10に供給される温水の流量を調整する三方弁19と、蒸気昇圧装置20から吐出される吐出蒸気の圧力に基いて三方弁19を制御する弁制御部51と、を含んで構成した。これにより、蒸気昇圧装置20から吐出される吐出蒸気の圧力が高い場合には、三方弁19の開度を小さくすることで、蒸気発生装置10に供給される温水の流量を少なくでき、蒸気発生装置10で生成される蒸気の量を低減できる。また、蒸気発生装置10に供給される温水の流量が少なくされた状態で蒸気昇圧装置20から吐出される吐出蒸気の圧力が低くなった場合には、三方弁19の開度を大きくすることで、蒸気発生装置10に供給される温水の流量を多くでき、蒸気発生装置10で生成される蒸気の量を増加させられる。その結果、蒸気システム1において、より安定的に蒸気を供給できる。
【0045】
次に、本発明の第2実施形態に係る蒸気システムにつき説明する。尚、第2実施形態以降の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0046】
第2実施形態の蒸気システム1は、低圧蒸気圧力センサ31により測定される低圧蒸気の圧力に基いて三方弁19を制御する点で、第1実施形態と異なる。
第2実施形態では、制御部50は、所定の第2目標圧力P2を設定値として記憶部(図示せず)に記憶している。そして、弁制御部51は、低圧蒸気供給ライン30を流通する蒸気の圧力(低圧蒸気圧力センサ31により測定される低圧蒸気の圧力)が第2目標圧力P2となるように三方弁19の開度を制御する。即ち、弁制御部51は、例えば、低圧蒸気圧力センサ31により測定される低圧蒸気の圧力が第2目標圧力P2を下回った場合には、開度が大きくなるように三方弁19を制御し、第2目標圧力P2を上回った場合には、開度が小さくなるように三方弁19を制御する。
【0047】
第2実施形態の蒸気システム1によれば、上記の(1)の効果を奏する他、以下のような効果を奏する。
【0048】
(3)蒸気システム1を、蒸気発生装置10に供給される温水の流量を調整する三方弁19と、低圧蒸気圧力センサ31により測定される低圧蒸気の圧力に基いて三方弁19を制御する弁制御部51と、を含んで構成した。これにより、低圧蒸気供給ライン30を流通する低圧蒸気の圧力が高い場合には、三方弁19の開度を小さくすることで、蒸気発生装置10に供給される温水の流量を少なくでき、蒸気発生装置10で生成される蒸気の量を低減できる。また、蒸気発生装置10に供給される温水の流量が少なくされた状態で低圧蒸気供給ライン30を流通する低圧蒸気の圧力が低くなった場合には、三方弁19の開度を大きくすることで、蒸気発生装置10に供給される温水の流量を多くでき、蒸気発生装置10で生成される蒸気の量を増加させられる。その結果、蒸気システム1において、より安定的に蒸気を供給できる。
【0049】
次に、本発明の第3実施形態に係る蒸気システム1につき、図2を参照しながら説明する。第3実施形態の蒸気システム1は、蒸気発生装置10において冷却水から除去することが許容される熱量である要求除去熱量に基いて三方弁19を制御する点で、第1実施形態及び第2実施形態と異なる。
【0050】
第3実施形態では、制御部50は、要求除去熱量を算出する除去熱量算出部52を備える。
除去熱量算出部52は、蒸気発生装置10において冷却水から除去することが許容される熱量である要求除去熱量を算出する。本実施形態では、除去熱量算出部52は、温水排出ライン15に配置された第1温度センサ152により測定された温水の温度、第2温度センサ153により測定された温水の温度、及び流量計154により測定された温水の流量に基いて要求除去熱量を算出する。即ち、第1温度センサ152及び第2温度センサ153により測定された温水の温度と予め設定された基準温度との差が大きい場合には、上流側(蒸気発生装置10)においてより多くの熱量を除去することが要求される(要求除去熱量は大きくなる)。また、第1温度センサ152及び第2温度センサ153により測定される温水の温度と基準温度との差が小さい場合には、上流側において除去することが要求される熱量は少なくなる(要求除去熱量は小さくなる)。
【0051】
弁制御部51は、除去熱量算出部52により算出された要求除去熱量に基づいて三方弁19の開度を算出する。例えば、制御部50は、要求除去熱量の下限値(例えば、50kW)を設定値として記憶部に記憶している。そして、弁制御部51は、要求除去熱量がこの設定値を下回らないように三方弁19を制御する。
【0052】
第3実施形態の蒸気システム1によれば、上記の(1)の効果を奏する他、以下のような効果を奏する。
【0053】
(4)蒸気システム1を、蒸気発生装置10に供給される温水の流量を調整する三方弁19と、要求除去熱量に基いて三方弁19を制御する弁制御部51と、を含んで構成した。これにより、ガスエンジン200の負荷の減少等により、除去熱量算出部52において算出される要求除去熱量が設定された下限値を下回った場合、蒸気発生装置10に供給される冷却水(温水)の量が減少するように三方弁19を制御できるので、蒸気発生装置10における熱回収量を減少させて要求除去熱量の更なる低下を防げる。よって、冷却水から過剰に熱回収することに伴ってガスエンジン200の運転に悪影響を与えることを防げるので、蒸気システム1を、より好適な状態で運転をさせられる。
【0054】
以上、本発明の蒸気システム1の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0055】
例えば、第1実施形態〜第3実施形態では、それぞれ、三方弁19を、吐出蒸気の圧力、低圧蒸気の圧力、又は要求除去熱量に基づいて制御したが、これに限らない。即ち、制御部に、吐出蒸気の圧力に基づく三方弁の開度、低圧蒸気の圧力に基づく三方弁の開度、及び要求除去熱量に基づく三方弁の開度を算出させ、これら算出された開度のうちのいずれかの開度(例えば、最も小さい開度)に基いて三方弁を制御させてもよい。
【0056】
また、第1実施形態〜第3実施形態では、流量調整弁を三方弁19により構成したが、これに限らない。即ち、流量調整弁を、複数の弁を組み合わせて構成してもよい。
【0057】
また、第1実施形態〜第3実施形態では、廃熱源としてガスエンジン200を用いたが、これに限らない。即ち、廃熱源としてディーゼルエンジンやガソリンエンジンを用いてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 蒸気システム
10 蒸気発生装置
19 三方弁(流量調整弁)
20 蒸気昇圧装置
50 制御部
51 弁制御部
52 除去熱量算出部
200 ガスエンジン(廃熱源)
220 冷却水循環ライン
図1
図2