特開2015-206494(P2015-206494A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三浦工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2015206494-蒸気発生装置 図000003
  • 特開2015206494-蒸気発生装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-206494(P2015-206494A)
(43)【公開日】2015年11月19日
(54)【発明の名称】蒸気発生装置
(51)【国際特許分類】
   F22B 27/16 20060101AFI20151023BHJP
   F22B 37/38 20060101ALI20151023BHJP
   F22D 1/18 20060101ALI20151023BHJP
【FI】
   F22B27/16
   F22B37/38 C
   F22D1/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-85786(P2014-85786)
(22)【出願日】2014年4月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】田中 直樹
(57)【要約】
【課題】出力値が一定になる故障が蒸気圧測定部に生じても、その故障を適切に検出することができる蒸気発生装置を提供すること。
【解決手段】蒸気発生装置1が備える制御部30は、温度センサ40により測定される温水の温度が第1温度以上であることが測定され、かつ、噴霧水圧センサ45により測定される噴霧水の圧力が第1圧力以上であることが測定された時点において蒸気圧センサ21により測定される蒸気の圧力を取得する第1圧力取得部31と、第1圧力取得部31により蒸気の圧力が取得されてから第1時間経過後に蒸気圧センサ21により測定される蒸気の圧力を取得する第2圧力取得部32と、第2圧力取得部32により取得された蒸気の圧力と第1圧力取得部31により取得された蒸気の圧力との差が設定された基準値以下であった場合に蒸気圧センサ21の不動作を判定する不動作判定部33と、を含んで構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部において蒸気が生成される蒸発タンク、及び該蒸発タンクの下方に設けられ、前記蒸発タンクの内部において蒸発しなかった水が貯留される水ヘッダを有するタンク部と、
前記蒸発タンクの内部に水平方向に延びて配置され、内部に熱源となる熱源流体が流通するチューブと、
前記チューブに供給される熱源流体の温度を測定する温度測定部と、
前記蒸発タンクの内部における前記チューブよりも上方に配置され、該チューブに水を噴霧する噴霧ノズルと、
前記水ヘッダの内部に貯留された水を噴霧水として前記噴霧ノズルに供給する噴霧水供給ラインと、
前記噴霧水供給ラインを流通する噴霧水の圧力を測定する噴霧水圧測定部と、
前記タンク部の内部の蒸気の圧力を測定する蒸気圧測定部と、を備える蒸気発生装置であって、
前記蒸気圧測定部の動作を判定する動作判定部を更に備え、
前記動作判定部は、
前記温度測定部により測定される熱源流体の温度が第1温度以上であることが測定され、かつ、前記噴霧水圧測定部により測定される噴霧水の圧力が第1圧力以上であることが測定された時点において前記蒸気圧測定部により測定される蒸気の圧力を取得する第1圧力取得部と、
前記第1圧力取得部により蒸気の圧力が取得されてから第1時間経過後に前記蒸気圧測定部により測定される蒸気の圧力を取得する第2圧力取得部と、
前記第2圧力取得部により取得された蒸気の圧力と前記第1圧力取得部により取得された蒸気の圧力との差が設定された基準値以下であった場合に前記蒸気圧測定部の不動作を判定する不動作判定部と、を備える蒸気発生装置。
【請求項2】
前記チューブに供給される熱源流体の流量を調整する流量調整弁を更に備え、
前記動作判定部は、前記流量調整弁の開度を取得する開度取得部を更に備え、
前記第1圧力取得部は、前記流量調整弁の開度が前記チューブに熱源流体が供給される開度であった場合に前記蒸気圧測定部により測定される蒸気の圧力を取得する請求項1に記載の蒸気発生装置。
【請求項3】
前記噴霧水供給ラインに設けられる噴霧水ポンプを更に備え、
前記第1圧力取得部は、前記噴霧水ポンプが運転されていた場合に前記蒸気圧測定部により測定される蒸気の圧力を取得する請求項1又は2に記載の蒸気発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸気発生装置としては、燃料を燃焼させて水を沸騰させるボイラが広く用いられている。一方、工場等で発生する排熱のエネルギーを効率よく回収することを可能にするために、燃料を用いずに蒸気を発生させることができるエネルギー効率の高い蒸気発生装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された蒸気発生装置によれば、約90℃と、比較的低い温度の温水から蒸気を取り出すことができる。
【0003】
このような、比較的低い温度の温水から蒸気を取り出すことができる蒸気発生装置としては、タンクとこのタンクの内部を貫通するように配置されるチューブとを備えるシェルアンドチューブ型の熱交換器を用いた蒸気発生装置も知られている。シェルアンドチューブ型の熱交換器を用いれば、例えば、ガスエンジンのジャケット冷却水(約90℃)を熱源としてチューブに流通させると共に、タンクの内部において、約80℃の温水をチューブに噴霧することによって、ガスエンジンによって発電機を駆動させるのと同時に蒸気を発生させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−164223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蒸気発生装置では、蒸気圧を発生させるタンク内部の圧力を蒸気圧センサ(蒸気圧測定部)によって検出することによってタンク内部の圧力異常を検出している。この蒸気圧センサが故障した場合、タンク内部の状況を正確に把握できなくなるため、その故障はできるだけ早く検出する必要がある。しかし、蒸気圧センサの出力値が異常な値を示す場合は、その異常値に基づいて故障を検出できるものの、蒸気圧センサの出力値が、タンク内部の状況に関係なく、一定の値を出力し続ける故障の場合、出力値は通常の範囲にあるため、蒸気圧センサの故障を検出することができずに、蒸気発生装置がそのまま稼動し続けることがある。この状況では、タンク内部の圧力を適切に把握できないので、不要に蒸気が生成されたり、圧力が上昇し続けてタンクに設けられた安全弁が頻繁に作動してしまったりするおそれがある。この点、従来の技術には、蒸気圧センサの出力値が一定となる故障が生じた場合における蒸気発生装置のより適切な運転制御という観点から改善の余地があった。
【0006】
本発明は、出力値が一定になる故障が蒸気圧測定部に生じても、その故障を適切に検出することができる蒸気発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内部において蒸気が生成される蒸発タンク、及び該蒸発タンクの下方に設けられ、前記蒸発タンクの内部において蒸発しなかった水が貯留される水ヘッダを有するタンク部と、前記蒸発タンクの内部に水平方向に延びて配置され、内部に熱源となる熱源流体が流通するチューブと、前記チューブに供給される熱源流体の温度を測定する温度測定部と、前記蒸発タンクの内部における前記チューブよりも上方に配置され、該チューブに水を噴霧する噴霧ノズルと、前記水ヘッダの内部に貯留された水を噴霧水として前記噴霧ノズルに供給する噴霧水供給ラインと、前記噴霧水供給ラインを流通する噴霧水の圧力を測定する噴霧水圧測定部と、前記タンク部の内部の蒸気の圧力を測定する蒸気圧測定部と、を備える蒸気発生装置であって、前記蒸気圧測定部の動作を判定する動作判定部を更に備え、前記動作判定部は、前記温度測定部により測定される熱源流体の温度が第1温度以上であることが測定され、かつ、前記噴霧水圧測定部により測定される噴霧水の圧力が第1圧力以上であることが測定された時点において前記蒸気圧測定部により測定される蒸気の圧力を取得する第1圧力取得部と、前記第1圧力取得部により蒸気の圧力が取得されてから第1時間経過後に前記蒸気圧測定部により測定される蒸気の圧力を取得する第2圧力取得部と、前記第2圧力取得部により取得された蒸気の圧力と前記第1圧力取得部により取得された蒸気の圧力との差が設定された基準値以下であった場合に前記蒸気圧測定部の不動作を判定する不動作判定部と、を備える蒸気発生装置に関する。
【0008】
また、蒸気発生装置は、前記チューブに供給される熱源流体の流量を調整する流量調整弁を更に備え、前記動作判定部は、前記流量調整弁の開度を取得する開度取得部を更に備え、前記第1圧力取得部は、前記流量調整弁の開度が前記チューブに熱源流体が供給される開度であった場合に前記蒸気圧測定部により測定される蒸気の圧力を取得することが好ましい。
【0009】
また、蒸気発生装置は、前記噴霧水供給ラインに設けられる噴霧水ポンプを更に備え、前記第1圧力取得部は、前記噴霧水ポンプが運転されていた場合に前記蒸気圧測定部により測定される蒸気の圧力を取得することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の蒸気発生装置によれば、出力値が一定になる故障が蒸気圧測定部に生じても、その故障を適切に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る蒸気発生装置の構成を示す図である。
図2】制御部の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の蒸気発生装置の好ましい一実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
本実施形態の蒸気発生装置1は、図1に示すように、ガスエンジン200のジャケット冷却水の排熱等の比較的低温の熱源流体を利用して蒸気を発生させる。この蒸気発生装置1は、タンク部11と、タンク部11の内部に配置されるチューブ12及び噴霧ノズル13と、熱源流体供給ラインとしての温水供給ライン14と、熱源流体排出ラインとしての温水排出ライン15と、噴霧水供給ライン16と、補給水ライン17と、バイパスライン18と、流量調整弁としての三方弁19と、蒸気供給ライン20と、動作判定部としての制御部30と、を備える。「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0013】
タンク部11は、蒸気発生装置1における本体部分を構成する。このタンク部11は、蒸発タンク111と、水ヘッダ112と、を備える。蒸発タンク111は、蒸気を発生させる。水ヘッダ112は、蒸発タンク111の下方に配置される。水ヘッダ112は、蒸発タンク111の内部で蒸気にならなかった水を貯留する。
タンク部11の内部は負圧もしくは低圧(例えば、−0.05MPaG〜0.1MPaG程度)に維持され、蒸発タンク111の内部において蒸気が生成される。蒸発タンク111の上部には、後述の蒸気供給ライン20の基端部が接続される。
また、蒸発タンク111には、安全弁113が設けられる。安全弁113は、タンク部11の内部の圧力が所定の圧力を超えた場合に、蒸気を外部に放出してタンク部11の内部の圧力を低下させる。
蒸発タンク111の内部には、蒸気圧測定部としての蒸気圧センサ21が配置される。蒸気圧センサ21は、蒸発タンク111の内部における蒸気の圧力を測定する。
以上の蒸発タンク111と水ヘッダ112とは、配管114を介して接続される。より具体的には、配管114の上端部は、蒸発タンク111の下面に接続される。また、配管114の下端部は、水ヘッダ112の上部に接続される。
【0014】
チューブ12は、蒸発タンク111の内部に水平方向に延びて配置される。より具体的には、チューブ12は、蒸発タンク111の内部において、水平方向に所定間隔をあけて複数本配置されると共に、高さ方向にも所定間隔をあけて複数本配置される。このチューブ12の内部には、熱源流体としての温水が流通する。
【0015】
噴霧ノズル13は、蒸発タンク111の内部におけるチューブ12よりも上方に配置される。この噴霧ノズル13は、チューブ12に向けて水を噴霧する。
温水供給ライン14は、チューブ12に熱源となる温水を供給する。温水供給ライン14の上流側は、熱源となる温水を供給するガスエンジン200等に接続される。温水供給ライン14の下流側は、チューブ12の一端部に接続される。
【0016】
温水供給ライン14には、温度測定部としての温度センサ40が配置される。温度センサ40は、チューブ12に供給される熱源流体としての温水の温度を測定するためのものであり、温水供給ライン14の内部の温水の温度を測定する。本実施形態では、温度センサ40は、後述する三方弁19の下流側に配置される。
【0017】
温水排出ライン15は、チューブ12の内部を流通し、熱源として利用された温水を外部に排出する。温水排出ライン15の上流側は、チューブ12の他端部に接続される。温水排出ライン15の下流側は、ガスエンジン200等に接続される。
噴霧水供給ライン16は、水ヘッダ112と噴霧ノズル13とを接続し、水ヘッダ112の下部に貯留された水を、噴霧水として噴霧ノズル13に供給する。噴霧水供給ライン16には、噴霧水ポンプ161と、噴霧水圧センサ45と、が配置されている。
噴霧水ポンプ161は、水ヘッダ112に貯留された水を噴霧ノズル13まで汲み上げる。
噴霧水圧センサ45は、噴霧水供給ライン16を流通する噴霧水の圧力を測定する。
【0018】
補給水ライン17は、水ヘッダ112と水を貯留している貯留槽等(図示せず)とを接続する。補給水ライン17は、水ヘッダ112に補給水を供給する。この補給水ライン17には、補給水ポンプ171が配置される。
補給水ポンプ171は、貯留槽等から供給された水を昇圧して水ヘッダ112の内部に供給する。
【0019】
バイパスライン18は、温水供給ライン14と温水排出ライン15とを接続する。
三方弁19は、温水供給ライン14とチューブ12との接続部分の近傍に配置され、温水供給ライン14、チューブ12及びバイパスライン18を接続する。三方弁19は、温水供給ライン14からチューブ12側に流れる温水の量及びバイパスライン18側に流れる温水の流量を調整する。即ち、三方弁19により温水供給ライン14からバイパスライン18への流路を閉止した状態(全開状態)では、温水供給ライン14を流通する温水は、全量チューブ12側に流れる。この状態からバイパスライン18への流路を開くように三方弁19の開度を調整すると、温水供給ライン14を流通する温水の一部は、バイパスライン18側に流れる。また、三方弁19により温水供給ライン14からチューブ12への流路を閉止した状態(全閉状態)では、温水供給ライン14を流通する温水は、全量バイパスライン18側に流れる。このように、三方弁19の開度を調整することで、チューブ12側に流れる温水の流量を調整できる。
【0020】
蒸気供給ライン20は、蒸発タンク111の内部において発生した蒸気を導出する。蒸気供給ライン20の下流側は、エゼクタや蒸気圧縮機等(図示せず)に接続される。
【0021】
以上の蒸気発生装置1によれば、三方弁19により温水供給ライン14からバイパスライン18への流路を閉止した状態では、まず、ガスエンジン200等から熱源となる温水(例えば、約90℃)が、温水供給ライン14を通じてチューブ12に供給される。チューブ12に供給された温水は、蒸発タンク111の内部に配置されたチューブ12に導入される。
一方、蒸発タンク111の内部においては、噴霧ノズル13からチューブ12に向けて、噴霧水が噴霧される。また、タンク部11の内部は、負圧もしくは低圧(例えば、−0.05MPaG〜0.1MPaG程度)に維持されている。これにより、チューブ12を流通する温水は、噴霧水によって熱を奪われて85℃程度まで降温し、温水排出ライン15を通じて排出される。
【0022】
また、温水が流通するチューブ12には、噴霧ノズル13から80℃程度の水が噴霧されることで、表面に薄い液膜が形成される。このように、タンク部11の内部が負圧に維持された状態において、チューブ12の表面に薄い液膜が形成されることによって、チューブ12の内部を流通する温水と、噴霧ノズル13によって噴霧される水との温度差が比較的小さい場合(例えば、約10℃)であっても効率的に蒸気を生成することが可能になる。
【0023】
蒸発タンク111の内部で発生した蒸気は、蒸気供給ライン20を通って導出される。
蒸発タンク111の内部で蒸気にならなかった水は、蒸発タンク111の下方に配置された水ヘッダ112に貯留される。水ヘッダ112に貯留された水は、噴霧水供給ライン16を通じて、噴霧水ポンプ161によって噴霧ノズル13まで汲み上げられ、再びチューブ12に噴霧される。
水ヘッダ112に貯留される水が少なくなった場合には、補給水ライン17から水ヘッダ112に補給水が補給される。
【0024】
制御部30は、上述の各種ポンプの動作や弁の開閉を制御することで蒸気発生装置1の動作を制御する。制御部30は、三方弁19、噴霧水ポンプ161及び補給水ポンプ171に電気的に接続されており、接続される各構成を制御可能になっている。また、制御部30には、蒸気圧センサ21、温度センサ40及び噴霧水圧センサ45が電気的に接続されており、各センサの出力値が取得可能になっている。また、制御部30は、蒸気圧センサ21により測定される圧力が予め設定された異常判定圧力を超えた場合、蒸気発生装置1を緊急停止させる。
【0025】
ところで、例えば、蒸気供給ライン20の下流側において蒸気が使用されない場合、蒸気発生装置1による蒸気の生成が継続されると、蒸気供給ライン20を流通する蒸気の圧力は上昇していく。このような場合において、蒸気圧センサ21が一定の出力値を示し続けた場合、その蒸気圧センサ21に故障が発生していると考えられる。即ち、現実の蒸気圧の状態を反映することなく、制御部30に送られる出力値が一定になってしまう故障が蒸気圧センサ21に発生していると考えられるのである。この状況では、安全弁113によってタンク部11の内部の圧力が下げられるまで圧力が上昇し続けてしまい、そのまま異常判定圧力が検出されなければ、安全弁113が作動し続けるおそれもある。
【0026】
そこで、本実施形態では、制御部30が、蒸気圧センサ21が正常に動作しているか否かを判定する制御を行う構成とした。次に、制御部30による蒸気圧センサ21の不動作の判定の詳細について説明する。図2は、動作判定部としての制御部30の構成を示す機能ブロック図である。
【0027】
図2に示すように、制御部30は、第1圧力取得部31と、第2圧力取得部32と、不動作判定部33と、開度取得部34と、含んで構成される。
【0028】
第1圧力取得部31は、蒸気圧センサ21の故障判定を行う場合に、蒸気圧センサ21の出力値を取得するものである。第2圧力取得部32は、第1圧力取得部31の出力値と比較するために、第1圧力取得部31が出力値を取得した一定時間後に、蒸気圧センサ21の出力値を取得するものである。不動作判定部33は、第1圧力取得部31の出力値と、第2圧力取得部32の出力値と、に基づいて蒸気圧センサ21が正常に動作しているか否を判定するものである。開度取得部34は、三方弁19の開度(開閉状況)を取得するものであり、この開度は第1圧力取得部31が蒸気圧センサ21の出力値を取得する条件の1つとなっている。
【0029】
次に、制御部30による蒸気圧センサ21の不動作判定の流れについて説明する。この不動作判定は、例えば、蒸気発生装置1の起動時に行われる。第1圧力取得部31は、温度センサ40により測定される温水供給ライン14を流れる温水の温度を監視すると共に、噴霧水圧センサ45により測定される噴霧水供給ライン16を流れる噴霧水の水圧を監視する。また、第1圧力取得部31は、開度取得部34が取得する開度を監視すると共に、噴霧水ポンプ161の動作状況を監視する。
【0030】
第1圧力取得部31は、上記の各センサの出力値、開度及び噴霧水ポンプ161の動作状況を監視しつつ、所定の条件を満たしたときの蒸気圧センサ21の出力値を取得する。本実施形態の第1圧力取得部31は、以下の4つの条件を満たしたときに蒸気圧センサ21の出力値を取得する。
【0031】
第1の条件は、チューブ12に供給される温水の温度が、予め設定された第1温度以上であることである。チューブ12に供給される温水の温度が所定温度以上であることが蒸気発生装置1による蒸気生成の条件の1つである。第1温度は、蒸気発生装置1が蒸気を生成するために必要な温水の温度に基づいて設定される。
【0032】
第2の条件は、噴霧水供給ライン16を流れる噴霧水の水圧が、予め設定された第1圧力以上であることである。本実施形態の蒸気発生装置1では、蒸気生成のためには噴霧水が蒸発タンク111の内部で適切に噴霧されている必要がある。第1圧力は、蒸気生成のために噴霧水が適切に噴霧される水圧の値に基づいて設定される。
【0033】
第3の条件は、三方弁19の開度が予め設定されている値を超えていることである。蒸気発生装置1によって蒸気を生成するためには、適切な温度の温水がチューブ12に必要量供給されている必要がある。本実施形態では、蒸気生成する条件が整ったか否かをより適切に判断するために、蒸気圧を取得する条件の1つとして三方弁19の開度を設定し、これにより、チューブ12に温水が適切に供給されているか否かを判断している。
【0034】
第4の条件は、噴霧水ポンプ161が稼動していることである。噴霧水ポンプ161が稼動していなければ、噴霧水が噴霧ノズル13に供給されなくなり、蒸気生成が行われなくなる。本実施形態では、蒸気生成する条件が整ったか否かをより適切に判断するために、蒸気圧を取得する条件の1つとして噴霧水ポンプ161の稼動状況を設定している。
【0035】
第1圧力取得部31は、温度センサ40の出力値に基づいて第1の条件である温水の温度が第1温度以上であるか否かを判定し、噴霧水圧センサ45の出力値に基づいて第2の条件である噴霧水の水圧が第1圧力以上であるか否かを判定する。また、第1圧力取得部31は、開度取得部34が取得する三方弁19の開度に基づいて第3の条件を判定し、噴霧水ポンプ161の稼動状況に基づいて第4の条件を判定する。そして、第1圧力取得部31は、以上の4条件を満たしたときの蒸気圧センサ21の出力値を取得する。即ち、蒸気発生装置1が蒸気生成する条件が整った時点における蒸気圧センサ21の出力値を取得する。
【0036】
第2圧力取得部32は、第1圧力取得部31が蒸気圧センサ21の出力値を取得してから所定時間(第1時間)後の蒸気圧センサ21の出力値を取得する。この所定時間は、装置構成等によって設定されており、本実施形態では3秒程度に設定される。
【0037】
不動作判定部33は、第1圧力取得部31が取得した出力値と、第2圧力取得部32が取得した出力値と、に基づいて蒸気圧センサ21が動作しているか否かの不動作判定を行う。より具体的には、不動作判定部33は、第1圧力取得部31が取得した出力値と、第2圧力取得部32が取得した出力値と、の差が設定された基準値以下である場合に、蒸気圧センサ21が正常に動作していないと判定する。以上の構成により、出力値が固定されてしまう蒸気圧センサ21の故障を検出することが可能になっている。
【0038】
本実施形態の制御部30は、蒸気圧センサ21が正常に動作していないと判定した場合は、噴霧水ポンプ161を停止させると共に、チューブ12に温水が供給されないように三方弁19を制御する。
ここで、蒸気発生装置1は、蒸発に用いられなかった水が貯留される水ヘッダ112をチューブ12が配置される蒸発タンク111の下方に配置しているので、チューブ12への水の噴霧を停止させ、チューブ12の内部への温水の供給を停止させることで、蒸気の生成を速やかに停止させられる。
【0039】
このように、本実施形態では、蒸気圧センサ21の出力値が一定になる故障が生じても、その故障を検出し、より安全に制御できる蒸気発生装置1が実現されている。特に、低圧蒸気を用いる蒸気発生装置1においては、高圧蒸気を用いる蒸気発生装置に比べ、タンク部11の内部の正常な圧力範囲が狭く設定されているため、圧力が上昇する異常が発生した場合に、安全弁113が作動するまでの時間が短い。この点、本実施形態の蒸気発生装置1によれば、低圧蒸気を用いる場合でも、安全弁113が作動する前に、蒸気圧センサ21の故障を適切かつ迅速に検出することができるので、より好適な蒸気発生装置1の運転が実現されているのである。
【0040】
以上説明した本実施形態の蒸気発生装置1によれば、以下のような効果を奏する。
【0041】
(1)内部において蒸気が生成される蒸発タンク111、及び該蒸発タンク111の下方に設けられ、蒸発タンク111の内部において蒸発しなかった水が貯留される水ヘッダ112を有するタンク部11と、蒸発タンク111の内部に水平方向に延びて配置され、内部に熱源となる温水(熱源流体)が流通するチューブ12と、チューブ12に供給される温水の温度を測定する温度センサ40と、蒸発タンク111の内部におけるチューブ12よりも上方に配置され、該チューブ12に水を噴霧する噴霧ノズル13と、水ヘッダ112の内部に貯留された水を噴霧水として噴霧ノズル13に供給する噴霧水供給ライン16と、噴霧水供給ライン16を流通する噴霧水の圧力を測定する噴霧水圧センサ45と、タンク部11の内部の蒸気の圧力を測定する蒸気圧センサ21と、を含んで構成した蒸気発生装置1であって、蒸気圧センサ21の動作を判定する制御部30を更に備え、制御部30は、温度センサ40により測定される温水の温度が第1温度以上であることが測定され、かつ、噴霧水圧センサ45により測定される噴霧水の圧力が第1圧力以上であることが測定された時点において蒸気圧センサ21により測定される蒸気の圧力を取得する第1圧力取得部31と、第1圧力取得部31により蒸気の圧力が取得されてから第1時間経過後に蒸気圧センサ21により測定される蒸気の圧力を取得する第2圧力取得部32と、第2圧力取得部32により取得された蒸気の圧力と第1圧力取得部31により取得された蒸気の圧力との差が設定された基準値以下であった場合に蒸気圧センサ21の不動作を判定する不動作判定部33と、を含んで構成した。
【0042】
これにより、蒸気圧センサ21の出力値が固定される故障を検出することができる。従って、蒸気圧が上昇する状況において、その蒸気圧の上昇を検出することができないために、蒸気圧が上昇し続ける事態を効果的に防止でき、蒸気発生装置1の適切な運転制御が実現される。
【0043】
(2)また、蒸気発生装置1は、チューブ12に供給される温水の流量を調整する三方弁19を更に備え、制御部30は、三方弁19の開度を取得する開度取得部34を更に備え、第1圧力取得部31は、三方弁19の開度がチューブ12に温水が供給される開度であった場合に蒸気圧センサ21により測定される蒸気の圧力を取得する。
【0044】
これにより、蒸気発生装置1が三方弁19を備える構成において、蒸気圧が変動する条件の1つである蒸発タンク111内部に導入される温水の状況をより適切に反映して蒸気圧センサ21の故障をより正確に検出することができる。
【0045】
(3)また、蒸気発生装置1は、噴霧水供給ライン16に設けられる噴霧水ポンプ161を更に備え、第1圧力取得部31は、噴霧水ポンプ161が運転されていた場合に蒸気圧センサ21により測定される蒸気の圧力を取得する。
【0046】
これにより、蒸気発生装置1が噴霧水ポンプ161を備える構成において、蒸気圧が変動する条件の1つである蒸発タンク111内部に導入される噴霧水の状況をより適切に反映して蒸気圧センサ21の故障をより正確に検出することができる。
【0047】
以上、本発明の蒸気発生装置1の好ましい一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態では、タンク部11を、一つの蒸発タンク111及び一つの水ヘッダ112により構成したが、これに限らない。即ち、タンク部を、複数の蒸発タンクと、1つの水ヘッダとを含んで構成し、水ヘッダに、複数の蒸発タンクで蒸発しなかった水を貯留させてもよい。これにより、一つの水ヘッダに貯留された水の量を監視することで、蒸気発生装置における水の供給等を制御できる。よって、複数の蒸発タンクにより蒸気発生装置を構成した場合であっても、蒸気発生装置の管理を容易に行える。
【0048】
また、本実施形態では、蒸発タンク111と水ヘッダ112とを異なる容器により構成し、これらを配管114により接続したが、これに限らない。即ち、タンク部を一つの容器により構成し、水に浸からない上部にチューブを配置してこの上部を蒸発タンクとし、下部を水ヘッダとして構成してもよい。
【0049】
また、本実施形態では、熱源流体として温水を用いたが、これに限らない。即ち、熱源流体として、排ガスや空気等の他の流体を用いてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、流量調整弁を三方弁19により構成したが、これに限らない。即ち、流量調整弁を、複数の弁を組み合わせて構成してもよい。また、三方弁19及びバイパスライン18を省略する構成とすることもできる。
【0051】
また、本実施形態では、温度センサ40を三方弁19の下流側に配置したが、三方弁19の上流側に配置する等、その配置場所は適宜変更することができる。
【0052】
また、本実施形態では、第1圧力取得部31が蒸気圧センサ21の出力値を取得する条件を4つの条件としたが、この条件は変更することができる。例えば、第1圧力取得部31は、温水の温度が予め設定された第1温度以上であり、噴霧水の水圧が設定された第1圧力以上である場合に、蒸気圧センサ21の出力値を取得することもできる。また、第1圧力取得部31は、温水の温度が予め設定された第1温度以上であり、噴霧水の水圧が設定された第1圧力以上であり、更に、三方弁19の開度が予め設定されている値を超えている場合に、蒸気圧センサ21の出力値を取得することもできる。また、第1圧力取得部31は、温水の温度が予め設定された第1温度以上であり、噴霧水の水圧が設定された第1圧力以上であり、更に、噴霧水ポンプ161が稼動している場合に、蒸気圧センサ21の出力値を取得することもできる。
【0053】
また、本実施形態では、第3の条件は、三方弁19の開度が予め設定されている値を超えていることとしたが、三方弁19がチューブ12側に閉じていないことを条件としてもよい。同様に、第4の条件は、噴霧水ポンプ161が稼動していることであるが、噴霧水ポンプ161が所定以上の速度で噴霧水を噴霧ノズル13に送りこんでいることを条件とすることもできる。
【0054】
また、本実施形態では、第1圧力取得部31は、蒸気圧センサ21の出力値を取得する条件が予め設定されている値(温度、圧力及び開度等)に基づいて決められているが、制御部が運転状況に応じてその設定値を変更及び生成する構成とすることもできる。
【0055】
このように、第1圧力取得部31が蒸気圧センサ21の出力値を取得する条件は、事情に応じて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 蒸気発生装置
11 タンク部
12 チューブ
13 噴霧ノズル
16 噴霧水供給ライン
19 三方弁(流量調整弁)
21 蒸気圧センサ(蒸気圧測定部)
30 制御部(動作判定部)
31 第1圧力取得部
32 第2圧力取得部
33 不動作判定部
34 開度取得部
40 温度センサ(温度測定部)
45 噴霧水圧センサ(噴霧水圧測定部)
111 蒸発タンク
112 水ヘッダ
161 噴霧水ポンプ
図1
図2