【解決手段】測定電路21が挿通される磁気コア2に巻回されたコイル5と、コイル5の一端5aとグランドGとの間に接続された抵抗6aおよびコンデンサ6bの第1直列回路6と、一端5aとグランドGとの間に接続されたインダクタ素子7aおよびコンデンサ7bの第2直列回路7と、コイル5の他端5bとグランドGとの間に配設されて測定電路21に流れる被測定電流I1に応じてコイル5に流れる電流I2(I3)を検出電圧V2に変換する終端抵抗9とを備え、抵抗6aはコイル5と終端抵抗9とを整合させる抵抗値に設定されている。
前記インダクタ素子は、前記コイルの寄生容量および当該インダクタ素子で主として構成される共振回路の共振周波数を、当該インダクタ素子が接続されていない状態での前記検出電圧の周波数特性におけるカットオフ周波数以上の周波数に規定するインダクタンス値に設定されている請求項1記載の電流センサ。
請求項1から3のいずれかに記載の電流センサと、当該電流センサによって変換された前記検出電圧に基づいて前記被測定電流の前記電流値を測定する測定部とを備えている測定装置。
【背景技術】
【0002】
この種の電流センサとして、下記特許文献1に開示されている電流センサが知られている。この電流センサは、ゼロフラックス法を採用した電流センサであって、測定対象(被測定線路)が挿通される磁気コア、磁気コアに配設されたホール素子などの磁電変換出力部、磁気コアに巻回されたコイル(帰還コイル)、電圧−電流変換増幅器および電圧検出抵抗を備えている。
【0003】
この電流センサでは、直流を含む低周波数領域では、磁電変換出力部が、測定対象に流れる電流によって磁気コア内に誘起された磁束を電圧として取り出し、電圧−電流変換増幅器が、この電圧を予め規定された利得で増幅すると共に電流に変換してコイルの一端側に供給する。この場合、コイルは、電圧−電流変換増幅器から供給される電流によって磁気コア内に逆極性の磁束を発生させて、測定対象に流れる電流による磁束を打ち消してゼロにする。電圧検出抵抗は、コイルの他端側に接続されて、コイルに流される電流(帰還電流)を電圧に変換して、測定対象に流れている電流を示す電圧信号として出力する。
【0004】
また、この電流センサでは、下記特許文献1には記載されてはいないが、上記の低周波数領域における上限側の周波数領域に下限側の周波数領域が重なる高周波数領域(磁電変換出力部および電圧−電流変換増幅器の動作周波数領域における上限側の周波数領域を下限側に含む周波数領域)では、コイルが単体でCT(カレントトランス)として機能して、測定対象に流れる電流を検出して、この電流の振幅に応じて振幅が変化する電流信号を出力する。これにより、電圧検出抵抗は、この電流信号を電圧信号に変換して、測定対象に流れている電流を示す電圧信号として出力する。
【0005】
また、この電流センサでは、検出周波数特性の高周波数領域での特性を改善するために、電圧−電流変換増幅器の出力端子とコイルとを接続している接続ラインに容量性の負荷を接続している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記の電流センサには、以下のような改善すべき課題が存在している。すなわち、この電流センサでは、上記したような容量性の負荷の接続により、検出周波数特性の高周波数領域での特性を改善してはいるものの、電流センサのさらなる高周波化(広帯域化)が望まれている。このさらなる高周波化は、高周波数領域においてCTとして機能するコイルのターン数を減らす構成を採用することで、実現できることが知られている。しかしながら、この構成では、測定対象に流れている電流の電流値が同じであっても、コイルに流れる電流が増加するため、コイルに使用する線材を線径のより太い線材に変更したり、電圧検出抵抗に使用する抵抗をワット数のより大きな抵抗に変更したりするなどの種々の変更が必要になる。
【0008】
本発明は、かかる課題を改善すべくなされたものであり、少ない変更で検出周波数特性の高周波化を容易に実現し得る電流センサおよび測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく請求項1記載の電流センサは、内部に測定対象が挿通される磁気コアと、前記磁気コアに巻回されたコイルと、前記コイルの一端と基準電位との間に接続された抵抗と、前記コイルの前記一端と前記基準電位との間に接続されたインダクタ素子と、前記コイルの他端と前記基準電位との間に配設されると共に前記測定対象に流れる被測定電流の電流値に応じた電流値で前記コイルに流れる検出電流を検出電圧に変換する電流電圧変換部とを備え、前記抵抗は、前記コイルの出力インピーダンスを前記電流電圧変換部の入力インピーダンスに整合させる抵抗値に設定されている。
【0010】
また、請求項2記載の電流センサは、請求項1記載の電流センサにおいて、前記インダクタ素子は、前記コイルの寄生容量および当該インダクタ素子で主として構成される共振回路の共振周波数を、当該インダクタ素子が接続されていない状態での前記検出電圧の周波数特性におけるカットオフ周波数以上の周波数に規定するインダクタンス値に設定されている。
【0011】
また、請求項3記載の電流センサは、請求項1または2記載の電流センサにおいて、前記抵抗に直列接続されて前記コイルの前記一端と前記基準電位との間に接続された第1コンデンサと、前記インダクタ素子に直列接続されて前記コイルの前記一端と前記基準電位との間に接続された第2コンデンサとを備え、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサは、前記寄生容量の容量値の約100倍以上の容量値に設定されている。
【0012】
また、請求項4記載の測定装置は、請求項1から3のいずれかに記載の電流センサと、当該電流センサによって変換された前記検出電圧に基づいて前記被測定電流の前記電流値を測定する測定部とを備えている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の電流センサおよび請求項4記載の測定装置では、コイルの一端と基準電位との間に接続された抵抗およびインダクタ素子を備えている。
【0014】
したがって、この電流センサおよびこの電流センサを備えた測定装置によれば、コイルがCTとして機能する高周波数領域において、抵抗によってコイルの出力インピーダンスを電流電圧変換部の入力インピーダンスに整合させつつ、コイルの寄生容量とインダクタ素子の共振により、このインダクタ素子が接続されていない状態での電流センサよりも、検出電圧についての振幅−周波数特性の高周波数領域での上限周波数を、より高周波側に伸ばすことができるため、少ない変更で検出周波数特性の高周波化を容易に実現することができる。
【0015】
請求項2記載の電流センサおよび請求項4記載の測定装置によれば、インダクタ素子が、コイルの寄生容量およびこのインダクタ素子で主として構成される共振回路の共振周波数を、このインダクタ素子が接続されていない状態での検出電圧の周波数特性におけるカットオフ周波数以上の周波数に規定するインダクタンス値に設定されているため、このインダクタンス値に設定されていない状態での電流センサよりも、検出電圧についての振幅−周波数特性の高周波数領域での上限周波数を、より高周波側に確実に伸ばすことができる。
【0016】
請求項3記載の電流センサおよび請求項4記載の測定装置では、寄生容量に対して十分に大きな容量値の第1コンデンサが抵抗に直列に接続されると共に、寄生容量に対して十分に大きな容量値の第2コンデンサがインダクタ素子に直列に接続されている。
【0017】
したがって、この電流センサおよびこの電流センサを備えた測定装置によれば、この電流センサをゼロフラックス法を採用した電流センサ(コイルに配設されたホール素子などの磁電変換出力部、および磁電変換出力部から出力される電圧を電流に変換してコイルに供給する電圧−電流変換増幅器を設けた電流センサ)として構成したとしても、電流センサがゼロフラックス法のセンサとして機能せずに、コイルがCTとして機能する高周波数領域においては上記したように抵抗によって整合を図りつつ、インダクタ素子によって検出周波数特性の高周波化を図ることができる。また、電流センサがゼロフラックス法のセンサとして機能する直流を含む低周波数領域では、第1コンデンサおよび第2コンデンサによって抵抗およびインダクタ素子を基準電位から等価的に切り離すことができ、これによって電圧−電流変換増幅器から出力される電流の殆どをコイルに供給させることができるため、効率のよい測定を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、電流センサ1および測定装置MDの実施の形態について説明する。
【0020】
まず、電流センサ1の構成について、
図1を参照して説明する。
【0021】
電流センサ1は、
図1に示すように、一例として、磁気コア2、磁電変換出力部3、電圧電流変換増幅部4、コイル5、第1直列回路6、第2直列回路7および電流電圧変換部IVCを備え、ゼロフラックス方式の電流センサとして動作可能に構成されて、直流を含む低周波数領域では、ゼロフラックス方式の電流センサとして動作し、高周波数領域では、コイル5がCTとして動作することにより、磁気コア2に挿通された測定対象としての測定電路21に流れる被測定電流I1を広帯域に亘って検出する。
【0022】
磁気コア2は、一例として、全体形状が環状であって、基端部(
図1中の下端部)を中心として開閉可能な分割型で形成されて、活線状態の測定電路21をクランプ可能(内部に測定電路21を挿通可能)に構成されている。なお、磁気コア2については、分割型に限定されず、貫通型(非分割型)とすることもできる。
【0023】
磁電変換出力部3は、本例では一例としてホール素子(以下、「ホール素子3」ともいう)で構成されて、磁気コア2に形成されているギャップ内に配設されている。ホール素子3は、作動状態において、磁気コア2の内部に発生する磁束を検出して、磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電圧値の出力電圧V1を出力する。この場合、磁気コア2の内部に発生する磁束とは、磁気コア2に挿通された測定電路21に被測定電流I1が流れることによって発生する磁束φ1と、コイル5に後述する負帰還電流I2が流れることによって発生する磁束φ2との差分(φ1−φ2)の磁束である。なお、磁電変換出力部3には、ホール素子以外に、フラックスゲート型磁気検出素子などを使用することができる。
【0024】
電圧電流変換増幅部4は、ホール素子3から出力電圧V1を入力すると共に、この出力電圧V1に基づいて検出電流としての負帰還電流I2を生成して、コイル5の一端5aに供給する。この場合、電圧電流変換増幅部4は、出力電圧V1がゼロボルトになるように、つまり、ホール素子3において検出される磁気コア2の内部に発生している磁束(φ1−φ2)の磁束密度がゼロになるように(言い換えれば、磁束φ2で磁束φ1を相殺するように)、負帰還電流I2の電流値を制御する。
【0025】
コイル5は、磁気コア2に線材が巻回されることによって形成されている。また、コイル5の一端5aは、基準電位(グランドG)側に接続されている。本例では一例として、コイル5の一端5aは、容量性負荷としての第1直列回路6を介して基準電位(グランドG)に接続されている。
【0026】
第1直列回路6は、抵抗6a(一例として、電流電圧変換部IVCを構成する後述する伝送路8の特性インピーダンス(電流電圧変換部IVCの入力インピーダンス)に合わせた50Ω)および第1コンデンサ6b(以下では、コンデンサ6bともいう。コイル5の後述する寄生容量5dよりも十分に大きな容量値のコンデンサ)の直列回路で構成されて、コイル5の一端5aとグランドGとの間に接続されている。この場合、第1コンデンサ6bの容量値は、寄生容量5dの約100倍以上の容量値に設定するのが好ましい。具体的には、コイル5の寄生容量5dは、通常、数pF〜数十pF程度なので、第1コンデンサ6bの容量値は数nF以上に設定するのが好ましい。本例では、コイル5の寄生容量5dが後述するように10pFなので、第1コンデンサ6bの容量値は1nF以上に設定するのが好ましい。
【0027】
また、第1直列回路6は、コイル5に流れる電流(負帰還電流I2または後述する電流I3)の周波数がクロスオーバー周波数(負帰還電流I2の周波数特性と電流I3の周波数特性とが交差する周波数)以上のときのコイル5の一端5aの電位をほぼグランドGの電位に規定すると共に、抵抗6aによってコイル5の出力インピーダンスを電流電圧変換部IVCの入力インピーダンスに整合させる。なお、第1直列回路6を構成する抵抗6aとコンデンサ6bについては、
図1に示すようにコンデンサ6bをグランドG側に配置する構成に代えて、抵抗6aをグランドG側に配置することもできる。
【0028】
第2直列回路7は、インダクタ素子7a(例えば、インダクタンス値が数nH〜数百nHのインダクタ素子)および第2コンデンサ7b(以下では、コンデンサ7bともいう。後述する寄生容量5dよりも十分に大きな容量値、具体的には、コンデンサ6bと同等の容量値のコンデンサ)の直列回路で構成されて、コイル5の一端5aとグランドGとの間に接続されている。
【0029】
また、インダクタ素子7aは、寄生容量5dと共振(並列共振)することにより、コイル5がCTとして動作する高周波数領域の周波数帯域をより高域側に伸ばす機能を備えている。この場合、インダクタ素子7aのインダクタンス値は、電流センサの構成によって好ましい値は様々であるが、「電流センサ」の一例である本例の電流センサ1では、インダクタ素子7aのインダクタンス値が1000nH以上の大きな値になると、高周波数領域(インダクタ素子7aを接続しない構成の電流センサについてのカットオフ周波数近傍(例えば、100MHz))でのインピーダンス値が抵抗6aの抵抗値よりも十分に大きくなり、インダクタ素子7aを接続しない状態に極めて近い状態になる。一方、インダクタンス値を1nH未満にすると、コイル5の一端5a側に接続されている配線自体のインダクタンス値との区別が困難になる。このため、インダクタ素子7aのインダクタンス値は、上記したように数nH〜数百nHの範囲内に規定するのが好ましく、さらには、1nH〜100nHの範囲内に規定するのがより好ましい。
【0030】
具体的には、インダクタ素子7aのインダクタンス値をLとし、寄生容量5dの容量値をCとしたときに、これらの共振周波数fは、1/2π√(L×C)で表され、この共振周波数fが上記のカットオフ周波数以上となるように、このインダクタンス値Lおよびこの容量値Cを設定する。上記したようにインダクタ素子7aを接続しない構成の電流センサについてのカットオフ周波数を100MHzとし、寄生容量5dを10pFとしたときには、インダクタ素子7aのインダクタンス値Lは、254nHに設定する。なお、第2直列回路7を構成するインダクタ素子7aとコンデンサ7bについては、
図1に示すようにコンデンサ7bをグランドG側に配置する構成に代えて、インダクタ素子7aをグランドG側に配置することもできる。
【0031】
電流電圧変換部IVCは、本例では一例として、伝送路8および終端抵抗9を備えている。この場合、伝送路8は、特性インピーダンスが予め規定された値に規定されて、一端8aがコイル5の他端5bに接続されている。本例では一例として、伝送路8は、同軸ケーブルで構成されることにより、特性インピーダンスが50Ωまたは75Ω(本例では50Ω)に規定されている。なお、伝送路8は、同軸ケーブルに限定されるものではなく、特性インピーダンスが予め決められた一定の値の特性インピーダンスに規定されるものであれば、例えばツイストペアケーブルなどの種々の伝送路で構成することもできるのは勿論である。
【0032】
終端抵抗9は、本例では一例として、伝送路8の他端8bとグランドGとの間に接続された抵抗素子で構成されている。なお、終端抵抗9は、オシロスコープなどの測定器の入力抵抗で構成されることもある。この構成により、終端抵抗9は、コイル5に流れる電流(負帰還電流I2または後述する電流I3)を検出電圧V2に変換して出力する。
【0033】
次に、この電流センサ1を備えた測定装置MDの構成について、
図1を参照して説明する。測定装置MDは、電流センサ1、測定部10および出力部11を備え、電流センサ1によって変換された検出電圧V2に基づいて、磁気コア2に挿通された測定対象としての測定電路21に流れる被測定電流I1を測定可能に構成されている。
【0034】
測定部10は、一例として、A/D変換部およびCPUを備え、A/D変換部が電流センサ1によって変換された検出電圧V2をデジタル値に変換し、CPUがこのデジタル値に基づいて被測定電流I1の電流値I1aを測定(算出)する。また、測定部10は、測定した電流値I1aを出力部11に出力する。
【0035】
出力部11は、一例としてLCDなどの表示装置で構成されて、測定部10から出力される電流値I1aを画面上に表示する。なお、出力部11は、表示装置に限定されず、例えば外部インターフェース回路で構成することもできる。この場合には、測定装置MDは、外部インターフェース回路に伝送路(有線伝送路や無線伝送路)を介して接続された他の外部装置に電流値I1aを出力したり、外部インターフェース回路に接続された外部記憶装置に電流値I1aを記憶したりすることが可能になる。
【0036】
続いて、電流センサ1の動作と併せて測定装置MDの動作について図面を参照して説明する。
【0037】
まず、測定電路21に流れる被測定電流I1が直流を含む低周波数領域内の周波数の信号のときには、ホール素子3および電圧電流変換増幅部4が作動する周波数領域であるため、ホール素子3が、磁気コア2の内部に発生する磁束(上記の差分(φ1−φ2)の磁束)を検出して、出力電圧V1を出力する。次いで、電圧電流変換増幅部4は、ホール素子3から出力電圧V1を入力すると共に、この出力電圧V1に基づいて負帰還電流I2を生成して、出力端子からコイル5の一端5aに供給する。この場合、電圧電流変換増幅部4の出力端子(コイル5の一端5a)とグランドGとの間には、第1直列回路6および第2直列回路7が接続されているが、低周波数領域内の周波数では、第1直列回路6のコンデンサ6bのインピーダンスおよび第2直列回路7のコンデンサ7bのインピーダンスは共に十分に大きい。これにより、電圧電流変換増幅部4の出力端子から出力された負帰還電流I2が直流のとき(つまり、被測定電流I1が直流のとき)、および負帰還電流I2が低周波数領域内の交流のとき(つまり、被測定電流I1が低周波数領域内の交流のとき)には、負帰還電流I2は、第1直列回路6および第2直列回路7を経由してグランドGに流れることなく、その殆どがコイル5の一端5aに供給される。
【0038】
また、電圧電流変換増幅部4は、出力電圧V1がゼロボルトになるように、つまり、ホール素子3において検出される磁気コア2の内部に発生している磁束(φ1−φ2)の磁束密度がゼロになるように(言い換えれば、磁束φ2で磁束φ1を相殺するように)、負帰還電流I2の電流値を制御する。これにより、負帰還電流I2の電流値は、コイル5のターン数をnとしたときに、おおよそ被測定電流I1の電流値をターン数nで除算した値になる。
【0039】
このようにして一端5a側からコイル5に供給された負帰還電流I2は、コイル5および伝送路8を介して終端抵抗9に流れる。このため、終端抵抗9は、この負帰還電流I2を検出電圧V2に変換する。この低周波数領域では、電流センサ1は、ホール素子3および電圧電流変換増幅部4の周波数特性で測定電路21に流れる被測定電流I1を検出して、検出電圧V2を出力する。
【0040】
次いで、測定電路21に流れる被測定電流I1がホール素子3および電圧電流変換増幅部4の動作周波数領域における上限側の周波数領域(上記の低周波数領域における上限側の周波数領域)を下限側に含む高周波数領域内の周波数の信号のときには、コイル5が単体でCTとして機能して、測定電路21に流れる被測定電流I1を検出して、この被測定電流I1の振幅(電流値)に応じて振幅(電流値)が変化する検出電流としての電流I3を出力する。
【0041】
この場合、高周波数領域内のすべての周波数において、寄生容量5dよりも容量値が十分に大きな第1直列回路6のコンデンサ6bおよび第2直列回路7のコンデンサ7bの各インピーダンスが十分に小さい値になる。これにより、第1直列回路6の抵抗6aおよび第2直列回路7のインダクタ素子7aは、等価的にグランドGに直接接続された状態になる。このため、測定電路21に流れる被測定電流I1がこの高周波数領域内の信号のときには、CTとして機能するコイル5から出力される電流I3は、グランドG、第1直列回路6、コイル5の一端5a、コイル5、コイル5の他端5b、伝送路8および終端抵抗9を経由してグランドGに至る電流経路に流れる電流に、グランドG、第2直列回路7、コイル5の一端5a、コイル5、コイル5の他端5b、伝送路8および終端抵抗9を経由してグランドGに至る電流経路に流れる電流が加算された電流になる。終端抵抗9は、この電流I3を検出電圧V2に変換して出力する。
【0042】
また、このようにして、コイル5がCTとして機能する高周波数領域では、コイル5は、
図2に示すように、等価的に、上記したように電流I3を出力する電流源5cと、コイル5を形成する線材間に存在している寄生容量5d(本例では一例として、10pF程度)との並列回路とみなすことができる。この場合、コイル5を形成する線材の抵抗値は、使用する線材の太さや長さによって変わるが、通常は数Ω未満であるため、コイル5の出力インピーダンスは等価的に抵抗6aの抵抗値に設定される。したがって、本例では、この抵抗6aの抵抗値が伝送路8の特性インピーダンスと同じ抵抗値(本例では50Ω)に規定されていることから、抵抗6aにより、コイル5の出力インピーダンスと電流電圧変換部IVCの入力インピーダンスとの整合が図られている。
【0043】
また、この高周波数領域では、第2直列回路7のインダクタ素子7aは、コイル5の寄生容量5dと並列共振回路を構成する。なお、実際の電流センサ1には、線材や配線パターンなどに含まれるインダクタンス成分などのインダクタ素子7a以外のインダクタンス成分や、浮遊容量などのコイル5の寄生容量5d以外の容量成分が存在しているが、発明の理解を容易にするため、これらのインダクタンス成分および容量成分は十分に小さく、無視できるものとする。したがって、上記の並列共振回路は、インダクタ素子7aおよび寄生容量5dで構成される共振回路とみなすことができる。
【0044】
電流センサ1では、上記したような値(数nH〜数百nHの範囲内の値)に、具体的には、コイル5の寄生容量5dとの共振回路の共振周波数が、インダクタ素子7aを接続しない構成のときの検出電圧V2についての振幅−周波数特性の高周波数領域のカットオフ周波数fc(100MHz)以上の周波数になるような値に、インダクタ素子7aのインダクタンス値が規定されている。このため、
図2に示す等価回路で行ったシミュレーションにおいて、
図3,4に示すように、検出電圧V2についての振幅−周波数特性の高周波数領域のカットオフ周波数fc(振幅が−3[dB]となる周波数)が、インダクタ素子7aを接続しないときのカットオフ周波数fcよりも、より高周波側に伸びることが確認された。
【0045】
なお、このシミュレーションでは、一例として、電流源5cは20mAの電流I3を供給する定電流源であり、寄生容量5dは10pFであり、抵抗6aおよび終端抵抗9は50Ωであるものとした。
【0046】
測定装置MDでは、測定部10が、上記のように電流センサ1から出力される検出電圧V2に基づいて、被測定電流I1の電流値I1aを測定して出力部11に出力し、出力部11が、この電流値I1aを画面上に表示する。
【0047】
このように、この電流センサ1および測定装置MDでは、コイル5の一端5aとグランドGとの間に、第1直列回路6(抵抗6aおよびコンデンサ6bの直列回路)および第2直列回路7(インダクタ素子7aおよびコンデンサ7bの直列回路)が接続されている。
【0048】
したがって、この電流センサ1および測定装置MDによれば、第1直列回路6および第2直列回路7をコイル5の一端5aとグランドGとの間に接続すると共に、第1直列回路6の抵抗6aの抵抗値を電流電圧変換部IVCの入力インピーダンスに合わせるという簡易な構成により、コイル5の出力インピーダンスを電流電圧変換部IVCの入力インピーダンスに整合させつつ、第2直列回路7のインダクタ素子7aが寄生容量5dと共振(並列共振)することにより、コイル5がCTとして動作する高周波数領域の周波数帯域をより高域側に容易に伸ばすことができる。これにより、この電流センサ1および測定装置MDによれば、少ない変更で検出周波数特性の高周波化を容易に実現することができる。
【0049】
また、この電流センサ1および測定装置MDによれば、インダクタ素子7aのインダクタンス値Lを数nH〜数百nHの範囲内の値に規定することにより、このインダクタンス値に設定されていない状態での電流センサ1よりも、検出電圧V2についての振幅−周波数特性(検出周波数特性)の高周波数領域での上限周波数を、より高周波側に確実に伸ばすことができる。
【0050】
また、この電流センサ1および測定装置MDによれば、寄生容量5dに対して十分に大きな容量値のコンデンサ6bが抵抗6aに直列に接続されると共に、寄生容量5dに対して十分に大きな容量値のコンデンサ7bがインダクタ素子7aに直列に接続されているため、電流センサ1がゼロフラックス法を採用した電流センサとして機能する低周波数領域では、各コンデンサ6b,7bによって抵抗6aおよびインダクタ素子7aをグランドGから等価的に切り離すことができ、これによって電圧電流変換増幅部4から出力される電流の殆どをコイル5に供給させることができるため、効率のよい測定を実現することができる。
【0051】
なお、ゼロフラックス法を採用した電流センサ1を例に挙げて説明したが、
図1における磁気コア2、コイル5、抵抗6a、インダクタ素子7aおよび終端抵抗9を備え、抵抗6aおよびインダクタ素子7aにおけるコイル5の一端5aに接続されている端部とは逆側の端部をグランドGに直接接続して構成される電流センサ(
図5に示す電流センサ1Aのように、CTで構成される電流センサ)においても、抵抗6aの抵抗値を電流電圧変換部IVCの入力インピーダンスに合わせるという簡易な構成により、コイル5の出力インピーダンスを電流電圧変換部IVCの入力インピーダンスに整合させつつ、インダクタ素子7aが寄生容量5dと共振(並列共振)することにより、コイル5がCTとして動作する高周波数領域の周波数帯域をより高域側に容易に伸ばすことができる。これにより、この電流センサ1Aおよびこの電流センサ1Aを備えた測定装置MDによれば、少ない変更で検出周波数特性の高周波化を容易に実現することができる。
【0052】
また、この電流センサ1Aおよび測定装置MDによれば、インダクタ素子7aのインダクタンス値を数nH〜数百nHの範囲内の値に規定することにより、このインダクタンス値に設定されていない状態での電流センサよりも、検出電圧V2についての振幅−周波数特性(検出周波数特性)の高周波数領域での上限周波数を、より高周波側に確実に伸ばすことができる。なお、電流センサ1と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略した。
【0053】
また、上記の電流センサ1,1Aでは、コイル5の他端5bと終端抵抗9とを接続する伝送路8を含んで電流電圧変換部IVCを構成しているが、電流電圧変換部IVCが伝送路8を含まない構成、つまり、コイル5の他端5bと終端抵抗9とを特定のインピーダンスに規定された電路を介さずに、直接接続したり、通常の電線や配線パターンを介して接続したりする構成を採用することもできる。また、
図1,5に示す構成において、コイル5の一端5a側および第2直列回路7の接続点Aと、電圧電流変換増幅部4の出力端子および第1直列回路6の接続点Bとの間を、伝送路8と同様の伝送路(図示せず)で接続する構成を採用することもできる。