【解決手段】基材11の一方の面11aに粘着剤層12が積層されてなり、基材11は、その粘着剤層12が積層されていない他方の面11bにエンボスを有し、エンボス凸部112にエンボス凹部111とは異なる色の着色層13が積層されている粘着シート1;粘着シート1において、基材11のエンボス凸部112が着色されている側の表面(基材11の他方の面11b)に、さらに印刷層15が積層されてなる印刷ラベル10。
さらに、前記基材を作製する工程を有し、前記基材のエンボスを、エンボスロール及び弾性ロールを用いて形成することを特徴とする請求項3又は4に記載の粘着シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<粘着シート>
本発明に係る粘着シートは、基材の一方の面に粘着剤層が積層されてなり、前記基材は、その前記粘着剤層が積層されていない他方の面にエンボスを有し、エンボス凸部がエンボス凹部とは異なる色で着色されていることを特徴とする。
かかる粘着シートは、基材が単にエンボスを有するだけの従来の粘着シートよりも、顕著に意匠性に優れ、従来よりもさらに意匠性に優れる印刷ラベルの製造に好適なものである。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る粘着シートの第1実施形態を模式的に例示する断面図である。
ここに示す粘着シート1は、基材11の一方の面11a上に、粘着剤層12及び剥離材14がこの順に積層されてなる。
そして、基材11は、その粘着剤層12が積層されていない他方の面11bに、多数の凸部112を有する。基材11は、一方の面11aにもエンボスを有する構造となっており、後述する通常のエンボスの形成方法によれば、基材11はこのように両面にエンボスを有するものとなる。
また、基材11の他方の面11b上の所定の領域には、着色層13が積層されている。
【0013】
なお、本明細書においては、基材11の他方の面11bに存在する、多数の凸部112と、凸部112以外の部位、すなわち凹部111とをあわせて、エンボスという。そして、凸部112をエンボス凸部112、凹部111をエンボス凹部111ということがある。さらに、エンボスを有する基材11の他方の面11bをエンボス面ということがある。これらは、基材11の一方の面11aでも同様である。
【0014】
基材11の材質は、目的に応じて適宜選択でき、各種の紙、樹脂等が例示できるが、紙であることが好ましい。
紙としては、非塗工又は塗工の印刷用紙、情報用紙が例示できる。
印刷用紙のうち、非塗工印刷用紙としては、上質紙、書籍用紙、筆記用紙、図画用紙、コピー用紙等が例示できる。塗工印刷用紙としては、アート紙、上質コート紙、中質コート紙、上質軽量コート紙、中質軽量コート紙、キャストコート紙等が例示できる。また、特殊印刷用紙としては、色上質紙、ファンシーペーパー等が例示できる。
情報用紙としては、PPC用紙、複写原紙、フォーム用紙等が例示できる。
【0015】
基材11の厚さは、特に限定されないが、30〜300μmであることが好ましく、60〜200μmであることがより好ましい。
【0016】
基材11は、他方の面11bが全体として所定の表面粗さ(Ra)を有するように、エンボスを有する構造となっており、他方の面11bの表面粗さ(Ra)は、20〜150μmであることが好ましい。他方の面11bの表面粗さが前記下限値以上であることで、陰影をより効果的に発現でき、より位置選択的に着色部分が得られる。また、他方の面11bの表面粗さが前記上限値以下であることで、種々の印刷方法で、後述する
図5の符号15で示すように、エンボス凹部111にまでより高精度に印刷層が形成された印刷ラベルが得られる。例えば、オフセット印刷法等のような転写方式の印刷方法では、印刷精度が被印刷面における凹凸の度合いの影響を受け易く、他方の面11bの表面粗さが大きい場合には、エンボス凹部111に十分に印刷層を形成できない。すなわち、他方の面11bの表面粗さを所定の値以下とすることで、印刷方法の制約をあまり受けずに、エンボス凹部111にまで十分に印刷層を形成できる。これに対して、インクジェット法等の非転写方式の印刷方法では、印刷精度が被印刷面における凹凸の度合いの影響を受け難く、他方の面11bの表面粗さが大きい場合でも、エンボス凹部111に十分に印刷層を形成できる。すなわち、インクジェット法等を採用すれば、他方の面11bの表面粗さの大きさにあまり影響されることなく、エンボス凹部111にまで十分に印刷層を形成できる。
なお、本明細書において「表面粗さ(Ra)」とは、特に断りのない限り、JIS B 0601:2001(ISO 4287:1997に準拠)に準拠した算術平均粗さ(Ra)を意味する。
【0017】
エンボス凹部111の幅W
111の最大値は、特に限定されないが、0.05〜10mmであることが好ましい。このような条件を満たすことで、エンボス凹部111及びエンボス凸部112の色の違いに基づくコントラストがより明りょうとなり、粘着シートの意匠性がより向上する。
また、エンボス凸部112の幅W
112の最大値は、特に限定されないが、0.05〜10mmであることが好ましい。このような条件を満たすことで、エンボス凹部111及びエンボス凸部112の色の違いに基づくコントラストがより明りょうとなり、粘着シートの意匠性がより向上する。
そして、基材11の他方の面11bにおいては、エンボス凹部111の幅とエンボス凸部112の幅との少なくとも一方が上記の条件を満たすことが好ましく、両方が上記の条件を満たすことがより好ましい。
【0018】
基材11の他方の面11bの上方から基材11を見下ろして平面視したとき、他方の面11bにおいて、エンボス凸部112(エンボス凸部112の上面112a)が占める割合は、20〜80面積%であることが好ましい。このような条件を満たすことで、エンボス凹部111及びエンボス凸部112の色の違いに基づくコントラストがより明りょうとなり、粘着シートの意匠性がより向上する。
【0019】
エンボス凹部111の深さH
111の最大値は、特に限定されないが、20〜200μmであることが好ましい。エンボス凹部111の深さが前記下限値以上であることで、エンボス凹部111及びエンボス凸部112の色の違いに基づくコントラストがより明りょうとなり、粘着シートの意匠性がより向上する。また、エンボス凹部111の深さが前記下限値以上であることで、後述する製造方法におけるエンボス凸部112の着色が容易となる。一方、エンボス凹部111の深さが前記上限値以下であることで、エンボスの形成が容易となる。また、後述する製造方法におけるエンボス凹部111への印刷が容易となる。例えば、エンボス凹部111への印刷時に、過大な印圧をかける必要がなくなり、エンボス凸部112のつぶれが抑制される。
【0020】
エンボス凸部112の上面112aには、その全面に着色層13が積層されている。
着色層13は、エンボス凹部111の底面111aとは異なる色である。なお、ここでは、エンボス凹部111の底面111a上に着色層が積層されていない例を示しており、着色層13の色が底面111a自体の色と異なる例を示している。ただし、本実施形態はこれに限定されない。例えば、エンボス凹部111の底面111aに、着色層(この場合の着色層を「第2着色層」という)が積層され、着色層(この場合の着色層を「第1着色層」という)13の色が前記第2着色層の色と異なっていてもよい。
【0021】
着色層13は、エンボス凹部111の底面111aとは異なる色となるように、着色剤を含有する。
前記着色剤は、染料及び顔料のいずれでもよい。
着色層13は、印刷法により形成されたものが好ましい。
【0022】
着色層13は、基材11の他方の面11bにおいて、すべて同じ色でもよいし、一部が互いに異なる2種以上の色であってもよく、2種以上の色である場合、その色の組み合わせは、目的に応じて任意に調節できる。
【0023】
着色層13の厚さは、特に限定されないが、0.1〜50μmであることが好ましく、0.1〜25μmであることがより好ましい。
【0024】
着色層13の色と、エンボス凹部111の底面111aの色との組み合わせは、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
【0025】
粘着剤層12は、公知のものでよく、これを構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤が例示できる。これら粘着剤は、エマルション型、溶剤型及び無溶剤型のいずれでもよい。
【0026】
粘着剤層12の厚さは、特に限定されないが、5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。
【0027】
剥離材14は、公知のものでよく、紙基材又はフィルム基材の表面に剥離層が設けられたものが例示できる。
前記紙基材としては、ポリエチレンラミネート紙、ポリプロピレンラミネート紙、クレーコート紙、樹脂コート紙、グラシン紙、上質紙等の各種紙材が例示できる。
前記フィルム基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート等の各種樹脂フィルムが例示できる。
【0028】
剥離材14としては、紙基材又はフィルム基材に填料等の充填剤を含有させた合成紙又はフィルムも例示でき、必要に応じて、これら合成紙又はフィルムの表面に剥離層が設けられていてもよい。
【0029】
前記剥離層としては、シリコーン系樹脂、長鎖アルキル系樹脂、フッ素系樹脂等の剥離剤を含有するものが例示できる。
【0030】
剥離材14の厚さは特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0031】
(第2実施形態)
図2は、本発明に係る粘着シートの第2実施形態を模式的に例示する断面図である。なお、
図2に示す構成要素のうち、
図1に示すものと同じものには、
図1の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。これは、
図3以降の図においても同様である。
【0032】
ここに示す粘着シート2は、着色層23がエンボス凸部112の上面112aの全面だけでなく、さらにエンボス凹部111の底面111aの周縁部にまで積層されたものである。粘着シート2は、このように、エンボス凹部111の底面111aの一部と側面111bにも着色層23が積層されている点以外は、
図1に示す粘着シート1と同じものである。すなわち、着色層23は、その形成領域が異なる点以外は、
図1に示す粘着シート1の着色層13と同じものである。したがって、本実施形態においては、例えば、エンボス凹部111の底面111aに着色層(第2着色層、図示略)が積層され、この第2着色層の一部に、着色層(第1着色層)23が積層されており、第1着色層23の色が第2着色層の色と異なっていてもよい。
【0033】
エンボス凹部111の底面111aは、着色層23が積層されていない領域が50面積%以上であることが好ましく、70面積%以上であることがより好ましい。このような範囲であることで、エンボス凹部111及びエンボス凸部112の色の違いに基づくコントラストがより明りょうとなり、粘着シートの意匠性がより向上する。
【0034】
本発明に係る粘着シートは、
図1及び2に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、一部構成が適宜追加、省略又は変更等されたものであってもよい。
例えば、
図1及び2においては、エンボス凹部111の底面111a及び側面111b(エンボス凹部111の側面111bは、ここではエンボス凸部112の側面112bと同じである)、並びにエンボス凸部112の上面112a及び側面112bが、いずれも平面である場合を示しているが、これらの一以上が、曲面、微小な凹凸を有する凹凸面、並びにこれら曲面及び凹凸面が混在した面等の非平面であってもよい。
【0035】
<粘着シートの製造方法>
本発明に係る粘着シートは、例えば、基材の一方の面に、粘着剤層を積層する工程(以下、「粘着剤層積層工程」と略記することがある)と、前記基材の前記粘着剤層を積層しない、エンボスを有する他方の面において、エンボス凸部をエンボス凹部とは異なる色で着色する工程(以下、「着色工程」と略記することがある)と、を有する製造方法により製造できる。
以下、
図3を参照しながら、前記製造方法について詳細に説明する。
図3は、本発明に係る粘着シートの製造方法を模式的に説明するための断面図であり、第1実施形態の粘着シート1を製造する場合について示している。
【0036】
(粘着剤層積層工程)
粘着剤層積層工程においては、
図3(a)に示すように、基材11の一方の面11aに、粘着剤層12を積層する。
エンボスを有する基材11は公知の方法で製造できる。例えば、エンボスロール及び弾性ロールを備えた装置を用い、エンボスロールと弾性ロールとの間において基材を通過させて、エンボスロールを前記基材の表面に押圧することで、前記基材にエンボスを形成する方法により、基材11が得られる。このように、基材に対してエンボスロール及び弾性ロールを用いてエンボスを形成することにより、微細であってもはっきりとした柄が得られる。弾性ロールとしては、ウールンペーパーロール、ゴムロール等が好ましい。
【0037】
粘着剤層12は、基材11の一方の面11aに粘着剤組成物を塗布し、乾燥させることで形成できる。また、剥離材の剥離層表面に前記粘着剤組成物を塗布し、乾燥させることで形成した粘着剤層を、基材11の一方の面11aに貼合することでも粘着剤層12を形成できる。この場合、剥離材として上述の剥離材14を用いた場合には、この剥離材14は取り除く必要はなく、剥離材14以外の剥離材を用いた場合には、この剥離材は取り除く。
【0038】
前記粘着剤組成物としては、粘着剤層12を構成する前記粘着剤、溶媒又は分散媒、及び必要に応じてその他の成分が配合されてなるものが例示できる。
前記溶媒又は分散媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;アルコール;水等が例示できる。
【0039】
粘着剤組成物の基材11又は剥離材への塗布は、公知の方法で行えばよく、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が例示できる。
【0040】
粘着剤組成物の基材11又は剥離材への塗布量は、適宜調節すればよいが、粘着剤の塗布量が5〜100g/m
2となる塗布量であることが好ましい。
【0041】
粘着剤層組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、温度は40〜150℃であることが好ましく、時間は20秒〜5分であることが好ましい。
【0042】
粘着剤層12は、剥離材上に上記の条件で粘着剤層を形成した後、この粘着剤層を基材11に貼合することで形成することが好ましい。
剥離材14の粘着剤層12への貼付は、着色工程の前後いずれで行ってもよい。
【0043】
(着色工程)
前記製造方法では、
図3(b)に示すように、粘着剤層積層工程の終了後に、基材11の他方の面11bにおいて、エンボス凸部112をエンボス凹部111とは異なる色で着色する(エンボス凸部112の上面112aに着色層13を積層する)、着色工程を行うことができる。
【0044】
着色層13は、エンボス凸部112の上面112aに着色剤組成物を塗布し、乾燥させることで形成できる。着色層13は、印刷法で形成することが好ましい。
前記印刷法は、グラビア印刷法、フレキソ印刷法又はオフセット印刷法であることが好ましい。
【0045】
前記着色剤組成物としては、着色層13を構成する前記着色剤、溶媒又は分散媒、及び必要に応じてその他の成分が配合されてなるものが例示でき、前記印刷法では、これらの方法に適した各種インク組成物を使用できる。
前記溶媒又は分散媒としては、前記粘着剤組成物における溶媒又は分散媒と同様のものが例示できるが、これらに限定されない。
【0046】
以上のように、粘着剤層積層工程及び着色工程を行うことにより、第1実施形態の粘着シート1が得られる。
ここでは、粘着剤層積層工程の終了後に着色工程を行う場合(この場合の粘着シートの製造方法を、以下、「製造方法1」と略記する)について説明したが、着色工程は粘着剤層積層工程の前に行ってもよい。このように、着色工程の終了後に粘着剤層積層工程を行う場合(この場合の粘着シートの製造方法を、以下、「製造方法2」と略記する)について、さらに
図4を参照しながら説明する。
図4は、製造方法2を模式的に説明するための断面図である。
【0047】
製造方法2における着色工程では、基材11の他方の面11bに、着色層13を積層する。
製造方法2における着色工程は、粘着剤層12及び剥離材14が積層された基材11に代えて、粘着剤層12及び剥離材14がいずれも積層されていない(前記一方の面11a上及び他方の面11b上にいずれも積層物を有しない)基材11を用いる点以外は、上述の製造方法1における着色工程と同様に行うことができる。
製造方法2の着色工程により、
図4(a)に示すように、基材11のエンボス凸部112の上面112aに着色層13が積層された着色基材1’が得られる。
なお、着色層13の積層位置を調節することで、例えば、
図2に示す粘着シート2における着色層23と同様に、着色層がエンボス凸部112の上面112aの全面だけでなく、さらにエンボス凹部111の底面111aの周縁部にまで積層された着色基材も得られる(図示略)。
【0048】
製造方法2における粘着剤層積層工程では、得られた着色基材1’において、基材11の一方の面11aに、粘着剤層12を積層する。
製造方法2における粘着剤層積層工程は、前記一方の面11aに粘着剤層12及び剥離材14が積層され、前記他方の面11b上に着色層13が積層されていない基材11に代えて、着色基材1’を用いる点以外は、上述の製造方法1の場合と同様の方法で行うことができる。
このように、着色工程及び粘着剤層積層工程を行うことでも、
図4(b)に示すように、第1実施形態の粘着シート1が得られる。
【0049】
ここまでは、第1実施形態の粘着シート1の製造方法について説明したが、第2実施形態の粘着シート2を製造する場合には、粘着シート1の製造方法の着色工程において、着色層13の積層箇所が所定の箇所となるように、着色工程の条件を調節すればよい。
【0050】
<印刷ラベル>
本発明に係る印刷ラベルは、上述の本発明に係る粘着シートにおいて、基材のエンボス凸部が着色されている側の表面に、さらに印刷が施されてなることを特徴とする。
ここで、印刷が施される「基材のエンボス凸部が着色されている側の表面」とは、基材の露出面(例えば、
図1においては、基材11の他方の面11b)だけでなく、基材上に形成された着色層(例えば、
図1においては、着色層13)の表面も包含する。
かかる印刷ラベルは、基材が単にエンボスを有するだけの従来の印刷ラベルよりも、顕著に意匠性に優れる。
【0051】
本発明に係る印刷ラベルにおいて、粘着シート上に新たに施される印刷は、粘着シート上の着色層に影響されるものではなく、形成される印刷層の粘着シート上での配置形態は目的に応じて任意に選択できる。例えば、上述の粘着シート1又は粘着シート2において、印刷層は、エンボス凸部112のみに積層されていてもよいし、エンボス凹部111及びエンボス凸部112の両方に積層されていてもよい。通常は、エンボス凹部111及びエンボス凸部112の両方に印刷層が積層される。また、印刷層は、すべての領域で同じ色であってもよいし、一部の領域が互いに異なる2種以上の色であってもよく、2種以上の色である場合、その色の組み合わせは、目的に応じて任意に調節できる。
【0052】
図5は、本発明に係る印刷ラベルの一実施形態を模式的に例示する断面図である。
ここに示す印刷ラベル10は、粘着シート1において、エンボス凹部111及びエンボス凸部112の両方について、これらの所定の領域に印刷が施されて、印刷層15が形成されたものである。印刷層15は、エンボス凹部111においては、その底面111aに接触して(積層されて)形成されている。
【0053】
図6は、本発明に係る印刷ラベルの他の実施形態を模式的に例示する断面図である。
ここに示す印刷ラベル20は、粘着シート2において、印刷ラベル10と同様に、エンボス凹部111及びエンボス凸部112の両方について、印刷層15が形成されたものである。
【0054】
<印刷ラベルの製造方法>
本発明に係る印刷ラベルは、例えば、上述の本発明に係る粘着シートの、基材のエンボス凸部が着色されている側の表面に、さらに印刷を行って印刷層を積層する(以下、「印刷工程」と略記する)ことにより製造できる。この場合、粘着シートとして、例えば、粘着シート1又は粘着シート2を用いる場合には、基材11の他方の面11bに印刷を行うことにより、印刷ラベル10又は印刷ラベル20が得られる。
【0055】
印刷方法は特に限定されず、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、レタープレス法、凸版印刷法、インクジェット法、電子写真印刷法、オンデマンド印刷法等が例示できる。
【0056】
ここでは、印刷ラベルの製造方法として、上述の本発明に係る粘着シートを用いる場合(この場合の印刷ラベルの製造方法を、以下、「製造方法3」と略記する)について説明したが、本発明に係る印刷ラベルは、前記着色基材を用いて製造することもできる(この場合の印刷ラベルの製造方法を、以下、「製造方法4」と略記する)。製造方法4について、さらに
図7を参照しながら説明する。
図7は、製造方法4を模式的に説明するための断面図である。
【0057】
製造方法4においては、例えば、上述の粘着シートの製造方法2の着色工程で得られた、
図7(a)に示すような、基材11のエンボス凸部112の上面112aに着色層13が積層された着色基材1’を用いる。
そして、
図7(b)に示すように、着色基材1’のエンボス凸部112が着色されている側の表面(すなわち、基材11の他方の面11b)に、さらに印刷を行って印刷層15を積層する。この製造方法4における印刷工程は、粘着シート1又は粘着シート2に代えて、粘着剤層12及び剥離材14がいずれも積層されていない(前記一方の面11a上に積層物を有しない)着色基材1’を用いる点以外は、上述の製造方法3における印刷工程と同様に行うことができる。製造方法4の印刷工程により、基材11の他方の面11bに印刷層15が積層された印刷ラベル用基材10’が得られる。
【0058】
製造方法4においては、印刷工程の終了後に、
図7(c)に示すように、印刷ラベル用基材10’において、基材11の一方の面11aに粘着剤層12及び剥離材14を積層する(粘着剤層積層工程)。
製造方法4における粘着剤層積層工程は、基材11に代えて印刷ラベル用基材10’を用いる点以外は、上述の製造方法1の場合と同様の方法で行うことができる。
このように、印刷工程及び粘着剤層積層工程を行うことでも、印刷ラベル10が得られる。
また、着色層13の積層位置が異なる印刷ラベル用基材10’(図示略)を用いることで、印刷ラベル20が得られる。
【0059】
上述の製造方法2の着色工程で得られ、基材のエンボス凸部がエンボス凹部とは異なる色で着色されている着色基材(
図4及び7における着色基材1’)と、製造方法4の印刷工程で得られ、前記着色基材において、基材のエンボス凸部が着色されている側の表面に、さらに印刷が施されてなる印刷ラベル用基材(
図7における印刷ラベル用基材10’ )とは、いずれも、基材のエンボス凸部がエンボス凹部とは異なる色で着色されている点において、新規の構成を有するものであり、意匠性に優れる印刷ラベルの製造に好適なものである。
【実施例】
【0060】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0061】
[実施例1]
<粘着シートの製造>
図1に示す構成の粘着シートを製造した。
すなわち、エンボスロール及びウールンペーパーロールを用いて、紙基材(リンテック社製「コニーラップ」、色:ホワイト、坪量:100g/m
2、厚さ:140μm)に、表面粗さ(Ra)が42μmとなるようにエンボスを形成した。W
111は0.7mm、W
112は0.3mm、H
111は63μmであった。
次いで、転写塗工により、乾燥後の厚さが25μmとなるように粘着剤層(リンテック社製「PW」)を剥離材(リンテック社製「SP−8K」)上に形成した後、この粘着剤層を、上記で得られたエンボス紙の片面に貼合し、エンボス粘着紙を作製した。
次いで、得られたエンボス粘着紙の粘着剤層及び剥離材が貼合されていない側の面のエンボス凸部に、前記紙基材とは異なる色(銀色)のインクで、乾燥後の厚さが3μmとなるように、グラビア印刷法により着色層を形成し、粘着シートを得た。
得られた粘着シートは、上記のグラビア印刷法により、エンボス凸部のみが着色されていた。
【0062】
<印刷ラベルの製造>
ハイデルベルク社製オフセット印刷機を用いて、得られた粘着シートの印刷面(着色面、エンボス面)に印刷を行い、印刷層を形成して印刷ラベルを得た。
【0063】
[実施例2]
<粘着シートの製造>
図1に示す構成の粘着シートを製造した。
すなわち、エンボスロール及びウールンペーパーロールを用いて、紙基材(リンテック社製「コニーラップ」、色:ホワイト、坪量:100g/m
2、厚さ:140μm)に、表面粗さ(Ra)が73μmとなるようにエンボスを形成した。W
111は0.4mm、W
112は0.6mm、H
111は97μmであった。
次いで、得られたエンボス紙のエンボス凸部に、前記紙基材とは異なる色(銀色)のインクで、乾燥後の厚さが3μmとなるように、グラビア印刷法により着色層を形成し、着色基材を作製した。
次いで、転写塗工により、乾燥後の厚さが25μmとなるように粘着剤層(リンテック社製「PW」)を剥離材(リンテック社製「SP−8K」)上に形成した後、この粘着剤層を、上記で得られた着色基材の非印刷面(非着色面)に貼合し、粘着シートを得た。
得られた粘着シートは、上記のグラビア印刷法により、エンボス凸部のみが着色されていた。
【0064】
<印刷ラベルの製造>
上記で得られた粘着シートを用いた点以外は、実施例1と同じ方法で印刷ラベルを得た。
【0065】
[比較例1]
<粘着シートの製造>
エンボスロール及びウールンペーパーロールを用いて、紙基材(リンテック社製「コニーラップ」、色:ホワイト、坪量:100g/m
2、厚さ:140μm)に、表面粗さ(Ra)が10μmとなるようにエンボスを形成した。W
111は0.7mm、W
112は0.5mm、H
111は18μmであった。
次いで、得られたエンボス紙のエンボス凸部に、前記紙基材とは異なる色(銀色)のインクで、乾燥後の厚さが3μmとなるように、グラビア印刷法により着色層を形成し、着色基材を作製した。
次いで、転写塗工により、乾燥後の厚さが25μmとなるように粘着剤層(リンテック社製「PW」)を剥離材(リンテック社製「SP−8K」)上に形成した後、この粘着剤層を、上記で得られた着色基材の非印刷面(非着色面)に貼合し、粘着シートを得た。
得られた粘着シートは、上記のグラビア印刷法により、エンボス凸部だけでなく、エンボス凹部も着色されてしまっており、以降の印刷ラベルの製造は行わなかった。
【0066】
[参考例1]
<粘着シートの製造>
エンボスロール及びウールンペーパーロールを用いて、紙基材(リンテック社製「コニーラップ」、色:ホワイト、坪量:199g/m
2、厚さ:264μm)に、表面粗さ(Ra)が160μmとなるようにエンボスを形成した。W
111は1.2mm、W
112は1.2mm、H
111は192μmであった。
次いで、得られたエンボス紙のエンボス凸部に、前記紙基材とは異なる色(銀色)のインクを用いて、グラビア印刷法により着色層を形成し、着色基材を作製した。
次いで、転写塗工により、乾燥後の厚さが25μmとなるように粘着剤層(リンテック社製「PW」)を剥離材(リンテック社製「SP−8K」)上に形成した後、この粘着剤層を、上記で得られた着色基材の非印刷面(非着色面)に貼合し、粘着シートを得た。
得られた粘着シートは、上記のグラビア印刷法により、エンボス凸部のみが着色されていた。
【0067】
<印刷ラベルの製造>
上記で得られた粘着シートを用いた点以外は、実施例1と同じ方法で印刷ラベルを得た。
【0068】
<粘着シートの評価>
(意匠性の評価)
上記の各実施例、比較例及び参考例で得られた粘着シートを目視観察し、エンボス凸部の銀色での着色によって、エンボス凸部及びエンボス凹部で異なる色目が表現できているか否かに基づいて、意匠性を下記評価基準に従って評価した。結果を表1に示す。
[評価基準]
○:印刷ラベル用の粘着シートとして、意匠性が極めて高い。
×:印刷ラベル用の粘着シートとして、意匠性に劣り、実用に適さない。
【0069】
<印刷ラベルの評価>
(印刷品質の評価)
上記の各実施例及び参考例で得られた印刷ラベルについて、印刷の状態を目視観察し、印刷品質を下記評価基準に従って評価した。結果を表1に示す。
[評価基準]
○:情報を完全に表記できており、問題なく印刷できている。
×:エンボス凹部にまで十分にインクが届かず、情報を完全に表記できていない。
【0070】
【表1】
【0071】
上記結果から明らかなように、実施例1〜2の粘着シートは意匠性が極めて高かった。また、実施例1〜2の印刷ラベルは、印刷状態に問題がなく、同様に意匠性が極めて高かった。このように実施例1〜2の粘着シートは、意匠性だけでなく、印刷適性にも優れていた。
これに対して、比較例1の粘着シートは、上記のようにグラビア印刷法により、エンボス凸部だけでなく、エンボス凹部も着色されてしまっており、意匠性に劣っていた。これは、基材のエンボス面のRaが小さ過ぎたことが原因であった。
また、参考例1の粘着シートは、意匠性が極めて高かったが、印刷ラベルは情報を完全に表記できておらず、印刷状態に問題があった。これは、オフセット印刷を行うに際して、基材のエンボス面のRaが大き過ぎたことにより、エンボス凹部の内部にまで十分に印刷を行えなかったことが原因であった。なお、参考例1の粘着シートは、先の説明のように、インクジェット法等で印刷を行うことにより、エンボス凹部の内部にまで十分に印刷を行い、印刷状態に問題がなく、意匠性が極めて高い印刷ラベルを得られるものであった。