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特開2015-207449電線モジュール及び電線モジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-207449(P2015-207449A)
(43)【公開日】2015年11月19日
(54)【発明の名称】電線モジュール及び電線モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20151023BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20151023BHJP
【FI】
   H01R13/52 301H
   H01R43/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-87227(P2014-87227)
(22)【出願日】2014年4月21日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】芦田 大地
(72)【発明者】
【氏名】坂本 幸康
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴章
(72)【発明者】
【氏名】寺内 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】西村 直也
(72)【発明者】
【氏名】蓮井 宏介
【テーマコード(参考)】
5E051
5E087
【Fターム(参考)】
5E051BA04
5E051BA06
5E051BB02
5E051BB05
5E087EE02
5E087EE14
5E087FF03
5E087FF06
5E087FF13
5E087HH04
5E087KK01
5E087KK02
5E087LL04
5E087LL12
5E087MM05
5E087RR12
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】防沫加工をより容易に施せるとともに、2つのコネクタハウジングが嵌り合う際にロック部付近の隙間からの水等の浸入を抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】電線モジュール10は、少なくとも1本の端子付電線12と、ロック部30と本体部22とを含むコネクタハウジング20と、吸水部材40と、テープ50と、を備える。前記吸水部材40は、少なくとも、前記ロック部30と前記本体部22との間に生じる隙間のうち前記コネクタハウジング20が相手方コネクタハウジング80に嵌った状態で外部に露出する部分の一部を塞ぐように設けられている。テープ50は、前記コネクタハウジング20のうち前記吸水部材40が設けられている部分から前記端子付電線12にかけて巻回されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の端子付電線と、
前記端子付電線の端子部分を収容可能なキャビティが複数形成される本体部と、前記本体部の外周面上において前記キャビティの挿入口とは反対側の開口側から前記挿入口側に向かって延びる支持部と前記支持部に連なる操作部と前記支持部に形成される係止部とを有する弾性変形可能なロック部と、を含むコネクタハウジングと、
少なくとも、前記ロック部と前記本体部との間に生じる隙間のうち前記コネクタハウジングが相手方コネクタハウジングに嵌った状態で外部に露出する部分の一部を塞ぐように設けられている吸水部材と、
前記コネクタハウジングのうち前記吸水部材が設けられている部分から前記端子付電線にかけて巻回されたテープと、
を備える、電線モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電線モジュールであって、
前記吸水部材の一部が前記テープの端部から前記相手方コネクタハウジング側にはみ出ている、電線モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の電線モジュールであって、
前記吸水部材のうち前記テープの端部からはみ出している部分が、前記相手方コネクタハウジングと接している、電線モジュール。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電線モジュールであって、
前記吸水部材が前記コネクタハウジングの周方向全体を覆っている、電線モジュール。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電線モジュールであって、
前記吸水部材が、前記キャビティの挿入口周りの少なくとも一部を覆うように形成されている、電線モジュール。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電線モジュールであって、
前記吸水部材は、発泡樹脂又は不織布を材料として形成されている、電線モジュール。
【請求項7】
(a)コネクタハウジングのロック部と本体部との間に生じる隙間のうち、相手方コネクタハウジングから露出する部分の一部を吸水部材で塞ぐ工程と、
(b)前記吸水部材と、前記コネクタハウジングのキャビティに挿入された端子付電線とをテープで巻回する工程と、
を備える、電線モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクタハウジングのキャビティに挿入された端子付電線を防沫する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に配設される電線として、軽量化等を目的に、銅電線に替わりアルミニウム電線が採用されつつある。この際に、電線の端部に設けられる端子が銅を材料にして形成されていると、アルミニウム電線と銅端子との間の腐食が問題になる。
【0003】
この問題を解決する技術が、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の端子付電線は、端子に接続している芯線の周りを防食材及び熱収縮チューブで覆うものである。
【0004】
また、特許文献2には、防塵及び防水機能を有するコネクタ付電線が開示されている。特許文献2に記載のコネクタ付電線は、コネクタと電線との周囲に紫外線硬化樹脂からなる基体を含むテープが巻き付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−256464号公報
【特許文献2】特開2013−187004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の端子付電線だと、端子付電線1本1本に対して、防食加工を施す必要があるため、工数及びコストがかかる。
【0007】
また、特許文献2に記載のコネクタ付電線だと、電線が挿入されるコネクタハウジングが、別のコネクタハウジングの凹部に嵌合するタイプであり、且つ、弾性変形可能なロック部付のコネクタハウジングである場合、当該コネクタハウジングと相手方コネクタハウジングとの間の隙間(特にロック部付近の隙間)から水等の浸入が問題になる場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、防沫加工をより容易に施せるとともに、2つのコネクタハウジングが嵌り合う際にロック部付近の隙間からの水等の浸入を抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る電線モジュールは、少なくとも1本の端子付電線と、前記端子付電線の端子部分を収容可能なキャビティが複数形成される本体部と、前記本体部の外周面上において前記キャビティの挿入口とは反対側の開口側から前記挿入口側に向かって延びる支持部と前記支持部に連なる操作部と前記支持部に形成される係止部とを有する弾性変形可能なロック部と、を含むコネクタハウジングと、少なくとも、前記ロック部と前記本体部との間に生じる隙間のうち前記コネクタハウジングが相手方コネクタハウジングに嵌った状態で外部に露出する部分の一部を塞ぐように設けられている吸水部材と、前記コネクタハウジングのうち前記吸水部材が設けられている部分から前記端子付電線にかけて巻回されたテープと、を備える。
【0010】
第2の態様に係る電線モジュールは、第1の態様に係る電線モジュールであって、前記吸水部材の一部が前記テープの端部から前記相手方コネクタハウジング側にはみ出ている。
【0011】
第3の態様に係る電線モジュールは、第2の態様に係る電線モジュールであって、前記吸水部材のうち前記テープの端部からはみ出している部分が、前記相手方コネクタハウジングと接している。
【0012】
第4の態様に係る電線モジュールは、第1〜第3のいずれか1つの態様に係る電線モジュールであって、前記吸水部材が前記コネクタハウジングの周方向全体を覆っている。
【0013】
第5の態様に係る電線モジュールは、第1〜第4のいずれか1つの態様に係る電線モジュールであって、前記吸水部材が、前記キャビティの挿入口周りの少なくとも一部を覆うように形成されている。
【0014】
第6の態様に係る電線モジュールは、第1〜第5のいずれか1つの態様に係る電線モジュールであって、前記吸水部材は、発泡樹脂又は不織布を材料として形成されている。
【0015】
第7の態様に係る電線モジュールの製造方法は、(a)コネクタハウジングのロック部と本体部との間に生じる隙間のうち、相手方コネクタハウジングから露出する部分の一部を吸水部材で塞ぐ工程と、(b)前記吸水部材と、前記コネクタハウジングのキャビティに挿入された端子付電線とをテープで巻回する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
第1〜第6の態様に係る電線モジュールによると、少なくとも、ロック部と本体部との間に生じる隙間のうちコネクタハウジングが相手方コネクタハウジングに嵌った状態で外部に露出する部分の一部を塞ぐように設けられている吸水部材を備えるため、ロック部付近の隙間から水等が浸入しようとした場合に、吸水部材が水等を吸うことにより、その浸入を抑制することができる。また、コネクタハウジングのうち吸水部材が設けられている部分から端子付電線にかけて巻回されたテープを備えるため、コネクタ単位で一括して防沫加工を施すことができる。これにより、防沫加工をより容易に施すことができる。
【0017】
特に、第2の態様に係る電線モジュールによると、吸水部材の一部がテープの端部から相手方コネクタハウジング側にはみ出ているため、水等がより確実に吸水部材に吸収される。
【0018】
特に、第3の態様に係る電線モジュールによると、吸水部材のうちテープの端部からはみ出している部分が、相手方コネクタハウジングと接しているため、コネクタハウジングと、相手方コネクタハウジングとの間の隙間からの水等の浸入をより確実に抑制することができる。
【0019】
特に、第4の態様に係る電線モジュールによると、吸水部材がコネクタハウジングの周方向全体を覆っているため、ロック部以外のコネクタハウジングと相手方コネクタハウジングとの間の隙間からの水等の浸入をより確実に抑制することができる。
【0020】
特に、第5の態様に係る電線モジュールによると、吸水部材がキャビティの挿入口周りの少なくとも一部を覆うように形成されているため、キャビティの内周面と端子付電線との隙間からの水等の浸入を抑制することができる。
【0021】
特に、第6の態様に係る電線モジュールによると、吸水部材は、発泡樹脂又は不織布を材料として形成されているため、容易に且つ安価に吸水部材を形成することができる。
【0022】
特に、第7の態様に係る電線モジュールの製造方法によると、コネクタハウジングのロック部と本体部との間に生じる隙間のうち、相手方コネクタハウジングから露出する部分の一部を吸水部材で塞ぐ工程を備えるため、ロック部付近の隙間から水等が浸入しようとした場合に、吸水部材が水等を吸うことにより、その浸入を抑制することができる。また、吸水部材と、コネクタハウジングのキャビティに挿入された端子付電線とをテープで巻回する工程を備えるため、コネクタ単位で一括して防沫加工を施すことができる。これにより、防沫加工をより容易に施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係る電線モジュールを示す概略斜視図である。
図2】第1実施形態に係る電線モジュールを示す側面図である。
図3図2のIII−III線に沿って切断した概略断面図である。
図4図3のIV−IV線に沿って切断した概略断面図である。
図5図4の部分拡大図である。
図6】第2実施形態に係る電線モジュールを示す概略断面図である。
図7】第2実施形態に係る電線モジュールを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係る電線モジュール10について説明する。図1は、第1実施形態に係る電線モジュール10を示す概略斜視図である。図2は、第1実施形態に係る電線モジュール10を示す側面図である。図3は、図2のIII−III線に沿って切断した概略断面図である。図4は、図3のIV−IV線に沿って切断した概略断面図である。図5は、図4の部分拡大図である。
【0025】
第1実施形態に係る電線モジュール10は、端子付電線12と、コネクタハウジング20と、吸水部材40と、テープ50とを備える。ここでは、電線モジュール10は、車両において、比較的水かかりの恐れが少なく、また、その量の少ない場所、例えば、濡れた人員の乗り込み、濡れた物の持ち込み、又は、飲料のこぼれ等による水かかりが発生する車室内に配設されることが想定されている。このため、電線モジュール10は、それほど高い防水性は必要ではなく、水かかりを抑制できる程度の防水性、いわゆる防沫性程度の防水性を有していればよい。
【0026】
端子付電線12は、少なくとも1本含まれていればよい。端子付電線12は、電線13と端子16とを含む。
【0027】
電線13は、芯線の外周に樹脂が押出被覆等されることで被覆部が形成された構成とされている。電線13は、車両等の配設対象箇所に配設された状態で、車両等に搭載された各種電気機器同士を電気的に接続するものとして用いられる。
【0028】
ここでは、電線13は、その芯線がアルミニウム又はアルミニウム合金を材料として形成されている。もっとも、電線13の芯線は、銅又は銅合金等他の金属を材料として形成されていてもよい。
【0029】
端子16は、電線13の端部に設けられている。端子16は、相手方コネクタハウジング80に保持された相手方端子付電線90の相手方端子92と電気的に接続される。ここでは、端子16は、電線固定部と接続部とを含む。電線固定部は、電線13のうち被覆部に圧着される被覆圧着部と、芯線に圧着される芯線圧着部とで構成されている。接続部は、相手方の端子と電気的に接続される部分である。ここでは、端子16は、銅及び錫等を主な材料として形成されている。もっとも、端子16は、アルミニウム等、他の金属を材料として形成されていてもよい。
【0030】
コネクタハウジング20は、本体部22とロック部30とを含む。コネクタハウジング20は、樹脂等の絶縁材料で一体成型されている。
【0031】
本体部22には、端子付電線12の端子16部分を収容可能なキャビティ24が少なくとも1つ形成されている。ここでは、キャビティ24は、複数形成されている。
【0032】
具体的には、本体部22は正面視凹型に形成されている。キャビティ24は、本体部22の1つの面から反対側の面にかけて貫通する孔状に形成されている。ここでは、キャビティ24の2つの開口のうち、端子付電線12を挿入する方の開口を挿入口26と称する。
【0033】
もっとも、キャビティ24の形状、数、配置、及び、本体部22の形状等は、これに限定されるものではない。例えば、本体部22が正面視扁平状に形成され、キャビティ24が本体部22に1段のみ形成されていることもあり得る。
【0034】
キャビティ24は、端子付電線12の端子16の部分を完全に収容できるように形成されていることが好ましい。つまり、挿入口26に対して、端子16の電線13側の縁部がキャビティ24内に収まっていることが好ましい。
【0035】
ロック部30は、本体部22の外周面上に形成されている。ここでは、ロック部30は本体部22の凹んでいる部分に形成されている。ロック部30は、相手方コネクタハウジング80と嵌合可能に設けられている。また、ロック部30は、弾性変形可能に形成されている。ロック部30は、支持部32と、操作部36と、係止部34と、を有する。
【0036】
支持部32は、キャビティ24の挿入口26とは反対側の開口側から突出すると共に挿入口26側に向かって延びるように形成されている。ここでは、支持部32は、基端部33aと軸方向延在部33bとを有する。
【0037】
基端部33aは、コネクタハウジング20の外向き面から当該外向き面に直交するように突出する。ここでは、挿入口26とは反対側の開口(相手方端子92の先端が挿入される開口)側から突出している。
【0038】
軸方向延在部33bは、基端部33aに連なるとともに、コネクタハウジング20の外向き面に沿って挿入口26側に向かって延びる部分である。
【0039】
操作部36は、支持部32に連なる。より具体的には、操作部36は、軸方向延在部33bの先端に設けられる。操作部36は、コネクタハウジング20が相手方コネクタハウジング80に嵌った際に、外側に露出している部分である。また、操作部36は、本体部22側に向かって押し込むことができるように、本体部22と間隔をあけて位置しており、本体部22の外側に出ている部分である。これにより、本体部22とロック部30の操作部との間には、隙間が生じている。
【0040】
係止部34は、支持部32に形成される。より具体的には、係止部34は、軸方向延在部33bの長手方向中間位置に、外側に向かって突出する突起状に設けられている。ここでは、係止部34は、斜面35aと垂直面35bとを有する断面視三角形状に形成されている。係止部34の垂直面35bは、キャビティ24の挿入口26側を向いている。また、係止部34の斜面35aは、キャビティ24の挿入口26とは反対側の開口側を向いている。
【0041】
ここで、便宜上、相手方コネクタハウジング80についても説明しておく。
【0042】
相手方コネクタハウジング80には、コネクタハウジング20を挿し込むことができる凹部82が形成されている。具体的には、凹部82は、相手方コネクタハウジング80の一方側の面から他方側の面に向かって凹むように形成されている。また、凹部82の内周面は、コネクタハウジング20の外周面に沿った形状に形成されている。
【0043】
また、凹部82の内周面には、コネクタハウジング20の係止部34と係止可能な被係止部84が形成されている。被係止部84は、コネクタハウジング20が凹部82の底に接している状態、又は、その状態からわずかに抜かれる方向に移動した状態で、係止部34と係止可能に形成されている。
【0044】
具体的には、ここでは、被係止部84として、凹部82の内周面から外周面にかけて貫通する貫通孔85が形成され、当該貫通孔85に係止部34が嵌るように形成されている。この際に、当該貫通孔85の内周面のうち、少なくとも凹部82の開口側に位置する内周面が、係止部の垂直面35bと係合可能に形成されている。
【0045】
つまり、貫通孔85は、コネクタハウジング20が凹部82の底に接している状態、又は、その状態からわずかに抜かれる方向に移動した状態で、係止部34の垂直面35bと貫通孔85の凹部82側の内周面とが接するような位置に形成されている。
【0046】
もっとも、被係止部84の形状は、上記したものに限られない。例えば、被係止部84は貫通孔85ではなく、貫通していない窪みであってもよい。また、例えば、被係止部84も係止部34と同様に斜面と垂直面とを有する断面視三角形状の突起状に形成されていてもよい。この場合、被係止部84の斜面は、凹部82の開口側を向き、被係止部84の垂直面は、凹部82の底部側を向くように形成されているとよい。
【0047】
また、相手方コネクタハウジング80には、相手方端子付電線90の相手方端子92部分を収容可能なキャビティ86が形成されている。キャビティ86は、相手方コネクタハウジング80の他方側の面から凹部82にかけて貫通する孔状に形成されている。
【0048】
このキャビティ86には、先端がピン状に形成されている相手方端子92が位置する。そして、この相手方端子92が、凹部82に挿し込まれたコネクタハウジング20の他方側の開口からコネクタハウジング20のキャビティ24に入り、キャビティ24内に位置する端子付電線12の端子16と接続される。
【0049】
次に、コネクタハウジング20と相手方コネクタハウジング80とを嵌合させる動作、及び、嵌合状態から解消させる動作について説明する。
【0050】
コネクタハウジング20が相手方コネクタハウジング80の凹部82に挿入されると、やがて凹部82の底に引っ掛かりそれ以上挿入できなくなる。また挿入の際に、コネクタハウジング20の係止部34の斜面35aが相手方コネクタハウジング80の凹部82の内周面に接触し、軸方向延在部33b及び操作部36がコネクタハウジング20側に回動するように弾性変形し、係止部34が貫通孔85の位置まで移動可能となる。係止部34が貫通孔85の位置まで来ると、弾性変形していたものが元に戻り、係止部34の先端が貫通孔85に嵌る。これにより、コネクタハウジング20を相手方コネクタハウジング80から抜こうとしても、係止部34の垂直面35bと貫通孔85の凹部82側の内周面とが接し、抜止状態となる。
【0051】
この状態で、操作部36に対してコネクタハウジング20側に力を加えることによって、操作部36及び軸方向延在部33bが、軸方向延在部33bと基端部33aとの連結部分を中心にコネクタハウジング20側に回動するように弾性変形する。これにより、係止部34の位置がコネクタハウジング20側にずれ、係止部34が貫通孔85から外れる。この状態でコネクタハウジング20を抜く方向に力を加えることで、コネクタハウジング20を相手方コネクタハウジング80から抜くことができ、相手方コネクタハウジング80との嵌合状態が解消される。
【0052】
なお、コネクタハウジング20を相手方コネクタハウジング80に挿入する際にも、操作部36を押し込むことによって係止部34をコネクタハウジング20側にずらした状態で、挿入してもよい。これにより、挿入方向に要する力を抑えることができる。
【0053】
吸水部材40は、少なくとも、ロック部30と本体部22との間に生じる隙間のうちコネクタハウジング20が相手方コネクタハウジング80に嵌った状態で外部に露出する部分の一部を塞ぐように設けられている。具体的には、吸水部材40は、コネクタハウジング20の幅方向(図3の横方向)において、操作部36と本体部22との間の隙間をふくむ部分を覆うように操作部36の外側に設けられている。これにより、ロック部30付近の隙間から水等が浸入しようとした場合に、吸水部材40が水等を吸うことにより、その浸入を抑制することができる。
【0054】
吸水部材40は、水等を吸収可能な材料で形成されていればよく、好ましくは、吸収した水等が蒸発するまで保持可能な材料で形成されているとよい。ここでは、吸水部材40は、連続発泡の発泡樹脂で形成されているが、吸水部材40は、その他の発泡樹脂又は不織布を材料として形成されていてもよい。より詳細には、ここでは、吸水部材40は、連続発泡の発泡ウレタンによって、いわゆるスポンジ状に形成されている。これにより、容易に且つ安価に吸水部材40を形成することができる。
【0055】
ここでは、吸水部材40がコネクタハウジング20の周方向全体を覆っている。これにより、ロック部30以外のコネクタハウジング20と相手方コネクタハウジング80との間の隙間からの水等の浸入をより確実に抑制することができる。
【0056】
もっとも、吸水部材40がコネクタハウジング20の周方向全体を覆っていることは必須ではない。例えば、ロック部30が形成されている側の面とその面に連なる側面のみを吸水部材40が覆っていてもよい。周方向において、吸水部材40がコネクタハウジング20を覆う部分が多くなるほど水等の浸入をより確実に抑制することができる。
【0057】
また、ここでは、吸水部材40の一部が後述するテープ50の端部から相手方コネクタハウジング80側にはみ出ている。さらにここでは、吸水部材40のうちテープ50の端部からはみ出している部分が、相手方コネクタハウジング80と接している。そして、接する部分の一部がコネクタハウジング20と相手方コネクタハウジング80との隙間(相手方コネクタハウジング80の凹部82)にくい込んでいる。
【0058】
もっとも、吸水部材40の一部がテープ50の端部から相手方コネクタハウジング80側にはみ出ていることは必須ではない。例えば、テープ50の端部と吸水部材40の端部との位置が揃っていてもよいし、テープ50の方が相手方コネクタハウジング80に向かって出っ張っていてもよい。しかしながら、吸水部材40の一部がテープ50の端部から相手方コネクタハウジング80側にはみ出ていることによって、水等がより確実に吸水部材40に吸収される。
【0059】
また、ここでは、コネクタハウジング20の周方向全体で、吸水部材40がテープ50の端部からはみ出しているが、このことは必須ではない。例えば、ロック部30付近のみがはみ出していてもよい。しかしながら、コネクタハウジング20の周方向において、吸水部材40がテープ50からはみ出している部分が多いほど、隙間からの水等の浸入をより確実に抑制することができる。
【0060】
また、吸水部材40のうちテープ50の端部からはみ出している部分が、相手方コネクタハウジング80と接していることも必須ではない。吸水部材40のうちテープ50の端部からはみ出している部分が、相手方コネクタハウジング80と接していなくてもよい。しかしながら、吸水部材40のうちテープ50の端部からはみ出している部分が、相手方コネクタハウジング80と接していることによって、コネクタハウジング20と、相手方コネクタハウジング80との間の隙間からの水等の浸入をより確実に抑制することができる。
【0061】
また、ここでは、コネクタハウジング20の周方向全体で、吸水部材40のうちテープ50の端部からはみ出している部分が、相手方コネクタハウジング80と接しているが、このことは必須ではない。例えば、吸水部材40のうちテープ50の端部からはみ出している部分が、ロック部30付近のみで相手方コネクタハウジング80と接していてもよい。しかしながら、コネクタハウジング20の周方向において、吸水部材40のうちテープ50の端部からはみ出して相手方コネクタハウジング80と接している部分が多いほど、隙間からの水等の浸入をより確実に抑制することができる。
【0062】
テープ50は、コネクタハウジング20のうち吸水部材40が設けられている部分から端子付電線12にかけて巻回されている。ここでは、テープ50は吸水部材40から端子付電線12のうちコネクタハウジング20から露出する電線13にかけてその周囲に順次巻回されている。テープ50として、ここでは、水等を通さないもの、例えば、ビニルテープが用いられている。
【0063】
また、ここでは、テープ50は、テープ50の幅方向においてテープ50同士の間に隙間ができないようにテープ50の幅方向端部を重ねるようにして巻回されている。これにより、コネクタハウジング20のキャビティ24に水等が浸入することを抑えることができる。
【0064】
もっとも、キャビティ24の挿入口26に水等の浸入を防ぐ防沫部材が取り付けられている場合等、テープ50は、少なくとも吸水部材40と電線13とを固定できれば、その幅方向において隙間が生じるように荒く巻かれていてもよい。
【0065】
なお、吸水部材40及びテープ50は、操作部36を操作可能にコネクタハウジング20に取り付けられていることが好ましい。つまり、吸水部材40及びテープ50は、操作部36及び軸方向延在部33bが弾性変形しないか、したとしても僅かにする程度にコネクタハウジング20に取り付けられており、係止部34と被係止部84とを係止状態にする又は両者の係止状態を解消することができることが好ましい。なお、吸水部材40及びテープ50は通常ある程度の弾性を有しているため、操作部36に吸水部材40及びテープ50が取り付けられていても、操作部36を押し込むことは可能である。
【0066】
また、吸水部材40は、テープ50によらずにコネクタハウジング20に直接固定されていてもよいし、テープ50により直接又は間接的にコネクタハウジング20に固定されていてもよい。吸水部材40がテープ50によらずにコネクタハウジング20に直接固定される場合、接着剤、粘着剤、又は、テープ等の各種固定手段を用いることができる。
【0067】
また、テープ50は、コネクタハウジング20に貼り付けられていてもよいし、コネクタハウジング20に貼り付けられていなくてもよい。吸水部材40がコネクタハウジング20に固定されていない場合は、テープ50がコネクタハウジング20に貼り付けられていることが好ましい。これにより、吸水部材40の位置ずれをより確実に抑制することができる。
【0068】
<製造方法>
次に、第1実施形態に係る電線モジュール10の製造方法について説明する。
【0069】
まずは、コネクタハウジング20と、端子付電線12と、吸水部材40と、テープ50とを用意する。
【0070】
次に、コネクタハウジング20のロック部30と本体部22との間に生じる隙間のうち、相手方コネクタハウジング80から露出する部分の一部を吸水部材40で塞ぐ(工程a)。ここでは、コネクタハウジング20の周方向全体を吸水部材40で覆う。これにより、ロック部30付近からの水等の浸入に加えて、コネクタハウジング20と相手方コネクタハウジング80との隙間からの水等の浸入を抑制することができる。さらにここでは、吸水部材40をコネクタハウジング20に固定する。これにより、テープ50を巻く作業中、及び、電線モジュール10が完成した後における吸水部材40の位置ずれを抑制することができる。
【0071】
この際に、ここでは、コネクタハウジング20のうち相手方コネクタハウジング80に嵌った状態で凹部82の縁部に位置する部分まで、吸水部材40を巻く。
【0072】
次に、端子付電線12をコネクタハウジング20のキャビティ24に挿入する。なお、端子付電線12をコネクタハウジング20のキャビティ24に挿入するのは、コネクタハウジング20を吸水部材40で覆う前であってもよい。
【0073】
次に、吸水部材40と、コネクタハウジング20のキャビティ24に挿入された端子付電線12とをテープ50で巻回する(工程b)。ここでは、吸水部材40から端子付電線12のうちコネクタハウジング20から露出する電線13にかけてその周囲にテープ50を順次巻回していく。ここでは、テープ50の幅方向においてテープ50同士の間に隙間ができないようにテープ50の幅方向端部を重ねるようにしてテープ50を巻回する。これにより、ロック部30付近からの水等の浸入に加えて、キャビティ24の挿入口からの水等の浸入を抑制することができる。
【0074】
この際に、ここでは、キャビティ24の軸方向において吸水部材40の端部がテープ50からはみ出すように、テープ50を巻く。換言すると、吸水部材40のうちキャビティ24の軸方向において相手方コネクタハウジング80側の端部には、テープ50を巻かないようにする。これにより、吸水部材40がテープ50からはみ出し、水等がより確実に吸水部材に吸収される。
【0075】
さらに、コネクタハウジング20のうち相手方コネクタハウジング80に嵌った状態で凹部82の縁部に位置する部分まで、吸水部材40が巻かれているので、吸水部材40が相手方コネクタハウジング80と接し、コネクタハウジング20と、相手方コネクタハウジング80との間の隙間からの水等の浸入をより確実に抑制することができる。
【0076】
なお、ここでは、吸水部材40とテープ50とは、別々にコネクタハウジング20に取り付けられているが、このことは必須ではない。例えば、予め吸水部材をテープに取り付けておき、この吸水部材と一体になったテープを用いて、吸水部材とテープとを一括してコネクタハウジング20に取り付けてもよい。
【0077】
{第2実施形態}
次に、第2実施形態に係る電線モジュール10Aについて説明する。図6は、第2実施形態に係る電線モジュール10Aを示す概略断面図である。図7は、第2実施形態に係る電線モジュール10Aを示す概略断面図である。なお、図6は、図3と同様の位置関係から見た図であり、図7は、図5と同様の位置関係から見た図である。また、本実施形態の説明において、第1実施形態で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0078】
第2実施形態に係る電線モジュール10Aは、吸水部材40Aの形状が第1実施形態に係る電線モジュール10の吸水部材40の形状とは異なる。
【0079】
具体的には、吸水部材40Aは、キャビティ24の挿入口26周りの少なくとも一部を覆うように形成されている。ここでは、吸水部材40Aは、2段に形成されているキャビティ24のうちロック部30が形成されている側の段(上側の段)に位置するキャビティ24の挿入口26の上部を覆うように設けられている。
【0080】
もっとも、吸水部材に覆われるキャビティの挿入口の位置、及び、その挿入口における覆われる領域は上記したものに限られない。例えば、下の段に位置するキャビティの挿入口が吸水部材に覆われてもよい。また、例えば、吸水部材によって挿入口のうち下部、側方又は四方を覆われてもよい。
【0081】
第2実施形態に係る電線モジュール10Aによっても、第1実施形態に係る電線モジュール10と同様の効果を得ることができる。
【0082】
また、第2実施形態に係る電線モジュール10Aによると、吸水部材40Aがキャビティ24の挿入口26周りの少なくとも一部を覆うように形成されているため、キャビティ24の内周面と端子付電線12との隙間からの水等の浸入を抑制することができる。
【0083】
なお、上記各実施形態で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【0084】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0085】
10,10A 電線モジュール
12 端子付電線
13 電線
16 端子
20 コネクタハウジング
22 本体部
24 キャビティ
26 挿入口
30 ロック部
32 支持部
34 係止部
36 操作部
40,40A 吸水部材
50 テープ
80 相手方コネクタハウジング
82 凹部
84 被係止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7