【実施例】
【0013】
図1は、第1実施例のモジュール10の分解斜視図を示しており、上面側冷却器20、上面側配線板30、下面側配線板80、下面側冷却器90等を備えている。
上面側配線板30は、上面側絶縁板32と、その下面に形成されている第1上面側配線層34と、第2上面側配線層36を備えている。下面側配線板80は、下面側絶縁板82と、その上面に形成されている下面側配線層84を備えている。上面側配線層34,36と下面側配線層84の間に、半導体素子40が挟まれている。半導体素子40の上面には、制御電極42と、第1上面側電極44と、第2上面側電極46が形成されており、半導体素子40の下面には、図示しない下面側電極が形成されている。半導体素子40の第1上面側電極44は第1上面側配線層34に導通し、半導体素子40の第2上面側電極46は第2上面側配線層36に導通し、半導体素子40の下面側電極は下面側配線層84に導通する。制御電極42には、図示しない導電体が接続される。
本明細書でいう半導体素子は、半導体装置または半導体部品と区別されるものでなく、半導体装置または半導体部品と称されることがある。
【0014】
第1上面側配線層34と下面側配線層84の間には、上面側グラファイトシート50と、コンデンサ60と、下面側グラファイトシート70も挟まれている。上面側グラファイトシート50と、コンデンサ60と、下面側グラファイトシート70は、z方向に直列に接続される。
図3はモジュール10の回路を示し、第1上面側配線層34と下面側配線層84の間に、半導体素子40と、上面側グラファイトシート50とコンデンサ60と下面側グラファイトシート70の直列回路100が、並列に接続される。
【0015】
半導体素子40内では、一対のスイッチが直列に接続されており、各スイッチに並列にダイオードが挿入されている。第2上面側配線層36は、一対のスイッチの中点に接続される。
モジュール10の第2上面側配線層36は直流電源の正極に接続され、第1上面側配線層34は電気機器に接続され、下面側配線層84は接地されて用いられる。モジュール10は、コンバータ回路として機能する。上面側グラファイトシート50とコンデンサ60と下面側グラファイトシート70の直列回路100は、電流のスイッチングに伴って生じるリンギングを抑えるスナバ回路である。
【0016】
上面側グラファイトシート50と下面側グラファイトシート70は、亀の子構造がxy面内を延びる方向に配置されており、z方向の熱伝導率は低い。コンデンサ60のz方向の両側は、断熱材となる上面側グラファイトシート50と下面側グラファイトシート70によって挟まれている。また上面側グラファイトシート50と下面側グラファイトシート70のz方向の電気抵抗率は、スナバ抵抗を提供するのに適している。本実施例では、上面側グラファイトシート50と下面側グラファイトシート70の面積は4mm
2であり、z方向の合計厚みが2mmである。その結果、上面側グラファイトシート50と下面側グラファイトシート70のz方向の合計抵抗は3Ωとなり、スナバ抵抗の適値となっている。
【0017】
図2は、モジュール10の断面図を示している。参照符号bは、
図1では図示が省略されているはんだ層を示している。図示の明瞭化のために、はんだ層bではハッチングを省略している。参照番号110は、樹脂成型体(樹脂モールド)を示している。半導体素子40と、スナバ回路100の周囲は、共通の樹脂成型体110内に封止されている。なお上面側絶縁板32の上面は、樹脂成型体110から露出しており、樹脂成型体110を介することなく、上面側冷却器20に接触する。同様に、下面側絶縁板82の下面は、樹脂成型体110から露出しており、樹脂成型体110を介することなく、下面側冷却器90に接触する。
【0018】
図1〜3に示したモジュール10は、半導体素子40が動作することでコンバータ回路となる。半導体素子40は動作すると発熱するが、冷却器20,90で冷却されるので、過熱することはない。モジュール10は、スナバ回路100を内蔵しており、リンギングを抑える。スナバ容量を提供するコンデンサ60は、グラファイトシート50,70で断熱されており、その温度変化幅は小さい。コンデンサ60の容量の変化幅が小さく抑えられ、適値に維持することができる。モジュール10では、半導体素子40とスナバ回路100が一体化されており、部品点数が減少する。
【0019】
半導体素子とスナバ回路を接続する配線は、寄生インダクタンスをもたらす。配線が長いほど、寄生インダクタンスが大きくなる。スナバ回路の寄生インダクタンスが大きくなると、スナバ回路のインピーダンスが高くなる。スナバ回路のインピーダンスが高くなると、スナバ回路に電流が流れにくくなり、スナバ回路のリギング抑制効果が小さくなる。
モジュール10では、半導体素子40とスナバ回路100が極めて近接した位置におかれている。そのために寄生インダクタンスが小さい。モジュール10によると、寄生インダクタンスが小さくてスナバ回路に電流が流れやすいことから、リンギング抑制効果が高い。
【0020】
(第2実施例)
図4に示すように、第2実施例のモジュール10bでは、半導体素子40aのz方向の厚みが薄いために、半導体素子40aと上面側配線層34の間に金属ブロック48が挿入されている。適当な厚みの金属ブロック48を選択することで、半導体素子40aと金属ブロック48の合計高さをスナバ回路100の高さに揃えることができる。また、金属ブロック48を利用すると、制御電極42に対する導電路の配置スペースを確保することができる。
【0021】
(第3実施例)
図5に示すように、第3実施例のモジュール10cでは、コンデンサ60が複数個(この場合は8個)に分割され、半導体素子40の周囲に配置されている。この場合、グラファイトシート50cについては、全部のコンデンサ60a〜60hに共通に接し、かつ半導体素子40とは干渉しない形状とする。
第3実施例のモジュール10cによると、小型コンデンサの夫々が、樹脂モールド110と活発に熱交換するために、コンデンサが動作すると発熱するような場合にも対応することができる。
【0022】
(第4実施例)
図6に示すように、本実施例では、コンデンサが3個に分割され、それぞれにツェナーダイオードが接続されている。コンデンサは温度が上昇すると、容量が低下する。本実施例では、上記の容量低下を補償するために、温度がT1以下だとツェナーダイオードZD1がオンしてツェナーダイオードZD2,ZD3がオフする。温度がT1〜T2だとツェナーダイオードZD1,ZD2がオンしてツェナーダイオードZD3がオフする。温度がT2以上だとツェナーダイオードZD1,ZD2,ZD3の全部がオンする。T1<T2である。上記の関係が得られると、コンデンサの温度上昇によって容量が低下することが補償され、スナバ容量が適値に維持される。グラファイトシート50,70の断熱性によってコンデンサの温度変化幅を小さく抑え、それにかかわらず生じる温度変化を上記のようにして補償する技術によると、スナバ回路によるリンギング抑制効果を十分に得ながら、スナバ回路による損失を最小限に抑えることが可能となる。図示はしないが、この実施例のモジュールでは、コンデンサとツェナーダイオードの組を樹脂モールド110内に封止する。
【0023】
(第5実施例)
図7に示すように、本実施例では、ツェナーダイオードに代えてトランジスタTR1〜TR3を用い、温度によってトランジスタTR1〜TR3のオン・オフを制御する。
図8は、温度によってトランジスタTR1〜TR3をオン・オフする関係を示し、低温であればトランジスタTR1のみをオンしてコンデンサC1のみを利用する。高温になればトランジスタTR1,TR2,TR3の全部をオンしてコンデンサC1,C2,C3の全部を利用する。上記によって、コンデンサ温度が上昇するとコンデンサ容量が低下する現象が補償され、温度によらないでスナバ容量を適値に維持することが可能となる。
【0024】
(第6実施例)
図9に示すように、半導体素子40が一個のスイッチと一個のダイオードの並列回路を備えており、その半導体素子40と並列にスナバ回路100を接続することがある。この場合は、第1の半導体素子40aと第1のスナバ回路100aで第1のモジュールを構成し、第2の半導体素子40bと第2のスナバ回路100bで第2のモジュールを構成することができる。2つのモジュールを用いて、
図9のコンバータ回路を実現することができる。これに代えて、第1半導体素子40aと第1スナバ回路100aと第2半導体素子40bと第2スナバ回路100bの全部を、1個のモジュールに組み込むこともできる。
【0025】
上記ではコンバータ回路にスナバ回路を挿入する例を示しているが、スナバ回路を必要とする回路はコンバータ回路に限られない。例えばインバータ回路にスナバ回路を挿入する場合にも本技術を適用することができる。
【0026】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。