特開2015-207739(P2015-207739A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-207739(P2015-207739A)
(43)【公開日】2015年11月19日
(54)【発明の名称】スナバ回路内蔵モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20151023BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20151023BHJP
   H03K 17/16 20060101ALI20151023BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20151023BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20151023BHJP
   H02M 7/48 20070101ALN20151023BHJP
【FI】
   H01L25/04 C
   H03K17/16 M
   H01L23/46 Z
   H02M3/00 R
   H02M3/00 Y
   H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-89225(P2014-89225)
(22)【出願日】2014年4月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢次 健一
(72)【発明者】
【氏名】臼井 正則
(72)【発明者】
【氏名】堀本 修平
【テーマコード(参考)】
5F136
5H007
5H730
5J055
【Fターム(参考)】
5F136CB06
5F136DA01
5F136DA27
5F136DA41
5F136EA13
5H007AA06
5H007CA02
5H007CB12
5H007HA03
5H007HA04
5H007HA05
5H730DD04
5H730DD41
5H730EE13
5H730ZZ05
5H730ZZ07
5H730ZZ11
5H730ZZ12
5J055AX45
5J055BX16
5J055DX13
5J055EX07
5J055EY10
5J055EY13
5J055GX01
5J055GX07
5J055GX08
5J055GX09
(57)【要約】
【課題】電流をスイッチングすることで生じるリンギングを抑えるコンデンサと、電流をスイッチングする半導体素子を一体化すると、半導体素子が発熱し、コンデンサが加熱され、コンデンサ容量がスナバ回路に適当な容量からずれてしまう。
【解決手段】コンデンサ60をグラファイトシート50,70の間に挟んで半導体素子40とモジュール化する。グラファイトシート50,70が断熱材となってコンデンサ60の温度変化幅を小さく抑える。同時に、グラファイトシート50,70は適当な電気抵抗を持つのでスナバ回路に適当な抵抗値に調整できる。グラファイトシート50,70が断熱材と導電体を兼用し、特性のよいモジュールを最少部品数で製造できる。寄生インダクタンスが小さくなり、リンギング自体が抑えられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流をスイッチングする半導体素子と、電流のスイッチングに伴って生じるリンギングを抑えるスナバ回路と、を備えているモジュールであり、
前記スナバ回路を構成する「グラファイトシートとコンデンサとグラファイトシート」の積層体と、前記半導体素子とが、上面側配線層と下面側配線層の間に並列に接続された状態で、共通の樹脂形成体内に封止されているモジュール。
【請求項2】
上面側配線層の上側に上面側冷却器が付加されており、
下面側配線層の下側に下面側冷却器が付加されていることを特徴とする請求項1に記載のモジュール。
【請求項3】
前記積層体が複数個のコンデンサを備えていることを特徴とする請求項1または2のモジュール。
【請求項4】
前記複数個のコンデンサが前記半導体素子の周囲に配置されていることを特徴とする請求項3のモジュール。
【請求項5】
前記積層体が複数個のツェナーダイオードを備えており、
個々のツェナーダイオードが対応するコンデンサに通電するか否かを切換えることを特徴とする請求項3のモジュール。
【請求項6】
前記積層体が複数個のトランジスタを備えており、
個々のトランジスタが対応するコンデンサに通電するか否かを切換えることを特徴とする請求項3のモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、電流をスイッチングする半導体素子と、電流をスイッチングすることで生じるリンギングを抑えるスナバ回路とが、一体化されたモジュールを開示する。
【背景技術】
【0002】
電流をスイッチングするとリンギングが発生することから、リンギングを抑えるスナバ回路が開発されており、その一例が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−224177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
部品点数を少なくするために、電流をスイッチングする半導体素子と、スナバ回路とを一体化してモジュール化したいという要望がある。しかしながら、実際には難しい。
電流をスイッチングする半導体素子は動作すると発熱する。特に、SiCを母材とする半導体素子は損失が少ない一方において、動作温度が高いという特徴を備えている。またスナバ回路はコンデンサを必要とする。多くのコンデンサの場合、その容量は温度によって変化する。そのために半導体素子とスナバ回路を一体化してモジュール化すると、半導体素子の発熱によってコンデンサが加熱され、コンデンサが昇温してコンデンサの容量が適値からずれてしまう現象が生じる。コンデンサの容量が適値からずれてしまうと、リンギングを抑えることができず、無駄な損失が増大してしまう。
本明細書では、コンデンサが加熱されてコンデンサ容量が適値からずれてしまう現象の発生を避けながら、半導体素子とスナバ回路を一体化してモジュール化する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示するモジュールは、電流をスイッチングする半導体素子と、リンギングを抑えるスナバ回路を備えている。スナバ回路は、スナバ容量とスナバ抵抗を直列に接続することで得られる。本明細書で開示する技術では、グラファイトシートとコンデンサとグラファイトシートの積層体でスナバ回路を構成する。グラファイトシートがスナバ抵抗を提供し、コンデンサがスナバ容量を提供する。
本明細書で開示するモジュールでは、上面側配線層と下面側配線層の間に、電流をスイッチングする半導体素子と、スナバ回路を構成する積層体が並列に接続されている。半導体素子と積層体は、共通の樹脂形成体内に封止されている。
上面側配線層と下面側配線層は、それ自体が形状を維持する金属部材等であってもよいが、絶縁板上に形成されているものでもよい。後者の場合は、上面側絶縁板の下面に上面側配線層を形成し、下面側絶縁板の上面に下面側配線層を形成する。
【0006】
グラファイトシートは、シート面に沿った方向の熱伝導率が高くて電気抵抗が低いという特性と、シート面に直交する方向の熱伝導率が低くて電気抵抗が高いという特性を備えている。
グラファイトシートとコンデンサとグラファイトシートの順で積層すると、中間にあるコンデンサは熱伝導率が低い(その意味では断熱性の)シートで挟まれた状態となり、周囲から断熱される。半導体素子が昇温しても、コンデンサは断熱され、コンデンサの昇温幅が低く抑えられる。共通の樹脂形成体内に半導体素子とコンデンサを封止しても、コンデンサに生じる温度変化幅を抑えることができる。
上面側配線層とコンデンサの間に上面側グラファイトシートが介在し、下面側配線層とコンデンサの間に下面側グラファイトシートが介在していると、上面側配線層と下面側配線層の間に、上面側グラファイトシートとコンデンサと下面側グラファイトシートを直列に接続した回路が提供される。上面側グラファイトシートと下面側グラファイトシートのシート面に直交する方向の電気抵抗が高いので、上面側グラファイトシートと下面側グラファイトシートがスナバ抵抗として動作する。
上記の技術によると、動作すると発熱する半導体素子と、熱変化に抗してスナバ容量とスナバ抵抗を適値に維持する必要があるスナバ回路を一体化してモジュール化することができる。
【0007】
半導体素子を冷却するために、上面側配線層の上側に上面側冷却器が付加されており、下面側配線層の下側に下面側冷却器が付加されている場合がある。本明細書で開示する技術は、冷却器が付加されている場合に特に効果的である。冷却器で半導体素子を冷却することと、グラファイトシートでコンデンサを断熱することが相まって、コンデンサの温度変化幅が非常に小さく抑えられる。
なお冷却器を用いる場合は、上面側絶縁板の下面に上面側配線層を形成することで上面側冷却器と上面側配線層を絶縁することが多い。同様に、下面側絶縁板の上面に下面側配線層を形成することで下面側冷却器と下面側配線層を絶縁することが多い。配線層と絶縁板は分離可能なものであってもよいし、配線層が絶縁板上に形成されていてもよい。絶縁方法はこれに限られない。冷却器側に絶縁層を形成してもよいし、冷却器自体を絶縁材料で形成してもよい。
【0008】
スナバ容量を提供するコンデンサは1個であってもよいが、複数個のコンデンサで形成してもよい。
発熱量は微小であるもののコンデンサも動作すると発熱する。コンデンサの発熱が問題となる場合は、複数個のコンデンサに分割し、その複数個のコンデンサを半導体素子の周囲に配置するのが有利である。コンデンサを冷却する効率が増大する。
【0009】
コンデンサ容量はコンデンサ温度によって変動する。スナバ容量には適値であることが求められ、スナバ容量が適値から外れると電力損失が増大する。本明細書で開示する技術ではグラファイトシートを利用してコンデンサの温度変化を抑制するが、それでもコンデンサの温度変化に伴うコンデンサの容量変化が問題となる場合があり得る。複数個のコンデンサに分割すれば、全部のコンデンサを活用してスナバ容量を提供する状態と、一部のコンデンサを活用してスナバ容量を提供する状態を切換えることができ、コンデンサの温度変化に抗してスナバ容量を適値に維持することが可能となる。
コンデンサを複数個に分割してスナバ容量を適値に維持するためには、モジュール内に複数個のツェナーダイオードを付加し、個々のツェナーダイオードが対応するコンデンサに通電するか否かを切換えるようにすることが好ましい。ツェナーダイオードの降伏電圧は温度によって変化する。その特性を利用することで、コンデンサごとに、温度によって導通させるか否かを切換えることができる。
ツェナーダイオードに代えて、トランジスタを用いてもよい。温度によってトランジスタのオン・オフを制御すれば、コンデンサごとに、温度によって導通させるか否かを切換えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本明細書に記載に技術では、グラファイトシートに断熱材と電気抵抗を兼用させる。そのために、半導体素子とスナバ回路を共通のモールド内に封止できる。半導体素子とスナバ回路を一体化して部品点数を減少させることができる。

【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施例のモジュールの分解斜視図を示す。
図2】第1実施例のモジュールの断面を示す。
図3】第1実施例のモジュールの回路を示す。
図4】第2実施例のモジュールの断面を示す。
図5】第3実施例のモジュールにおける半導体素子とコンデンサの配置を示す。
図6】第4実施例のモジュールの回路を示す。
図7】第5実施例のモジュールの回路を示す。
図8】第5実施例のモジュールのスイッチとスナバ容量の関係を示す。
図9】第6実施例のモジュールの回路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本明細書で開示する技術の特徴を整理する。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。
(第1特徴)半導体素子は、上面側電極と下面側電極を備えている。
(第2特徴)半導体素子の上面に、上面側電極と制御電極が形成されている。
(第3特徴)上面側電極は金属ブロックを介して上面側配線層に接続され、制御電極の上方は金属ブロックで覆われない。
(第4特徴)制御電極の上方にある、金属ブロックで覆われない空間を、制御電極に対する導電路が伸びている。
【実施例】
【0013】
図1は、第1実施例のモジュール10の分解斜視図を示しており、上面側冷却器20、上面側配線板30、下面側配線板80、下面側冷却器90等を備えている。
上面側配線板30は、上面側絶縁板32と、その下面に形成されている第1上面側配線層34と、第2上面側配線層36を備えている。下面側配線板80は、下面側絶縁板82と、その上面に形成されている下面側配線層84を備えている。上面側配線層34,36と下面側配線層84の間に、半導体素子40が挟まれている。半導体素子40の上面には、制御電極42と、第1上面側電極44と、第2上面側電極46が形成されており、半導体素子40の下面には、図示しない下面側電極が形成されている。半導体素子40の第1上面側電極44は第1上面側配線層34に導通し、半導体素子40の第2上面側電極46は第2上面側配線層36に導通し、半導体素子40の下面側電極は下面側配線層84に導通する。制御電極42には、図示しない導電体が接続される。
本明細書でいう半導体素子は、半導体装置または半導体部品と区別されるものでなく、半導体装置または半導体部品と称されることがある。
【0014】
第1上面側配線層34と下面側配線層84の間には、上面側グラファイトシート50と、コンデンサ60と、下面側グラファイトシート70も挟まれている。上面側グラファイトシート50と、コンデンサ60と、下面側グラファイトシート70は、z方向に直列に接続される。図3はモジュール10の回路を示し、第1上面側配線層34と下面側配線層84の間に、半導体素子40と、上面側グラファイトシート50とコンデンサ60と下面側グラファイトシート70の直列回路100が、並列に接続される。
【0015】
半導体素子40内では、一対のスイッチが直列に接続されており、各スイッチに並列にダイオードが挿入されている。第2上面側配線層36は、一対のスイッチの中点に接続される。
モジュール10の第2上面側配線層36は直流電源の正極に接続され、第1上面側配線層34は電気機器に接続され、下面側配線層84は接地されて用いられる。モジュール10は、コンバータ回路として機能する。上面側グラファイトシート50とコンデンサ60と下面側グラファイトシート70の直列回路100は、電流のスイッチングに伴って生じるリンギングを抑えるスナバ回路である。
【0016】
上面側グラファイトシート50と下面側グラファイトシート70は、亀の子構造がxy面内を延びる方向に配置されており、z方向の熱伝導率は低い。コンデンサ60のz方向の両側は、断熱材となる上面側グラファイトシート50と下面側グラファイトシート70によって挟まれている。また上面側グラファイトシート50と下面側グラファイトシート70のz方向の電気抵抗率は、スナバ抵抗を提供するのに適している。本実施例では、上面側グラファイトシート50と下面側グラファイトシート70の面積は4mmであり、z方向の合計厚みが2mmである。その結果、上面側グラファイトシート50と下面側グラファイトシート70のz方向の合計抵抗は3Ωとなり、スナバ抵抗の適値となっている。
【0017】
図2は、モジュール10の断面図を示している。参照符号bは、図1では図示が省略されているはんだ層を示している。図示の明瞭化のために、はんだ層bではハッチングを省略している。参照番号110は、樹脂成型体(樹脂モールド)を示している。半導体素子40と、スナバ回路100の周囲は、共通の樹脂成型体110内に封止されている。なお上面側絶縁板32の上面は、樹脂成型体110から露出しており、樹脂成型体110を介することなく、上面側冷却器20に接触する。同様に、下面側絶縁板82の下面は、樹脂成型体110から露出しており、樹脂成型体110を介することなく、下面側冷却器90に接触する。
【0018】
図1〜3に示したモジュール10は、半導体素子40が動作することでコンバータ回路となる。半導体素子40は動作すると発熱するが、冷却器20,90で冷却されるので、過熱することはない。モジュール10は、スナバ回路100を内蔵しており、リンギングを抑える。スナバ容量を提供するコンデンサ60は、グラファイトシート50,70で断熱されており、その温度変化幅は小さい。コンデンサ60の容量の変化幅が小さく抑えられ、適値に維持することができる。モジュール10では、半導体素子40とスナバ回路100が一体化されており、部品点数が減少する。
【0019】
半導体素子とスナバ回路を接続する配線は、寄生インダクタンスをもたらす。配線が長いほど、寄生インダクタンスが大きくなる。スナバ回路の寄生インダクタンスが大きくなると、スナバ回路のインピーダンスが高くなる。スナバ回路のインピーダンスが高くなると、スナバ回路に電流が流れにくくなり、スナバ回路のリギング抑制効果が小さくなる。
モジュール10では、半導体素子40とスナバ回路100が極めて近接した位置におかれている。そのために寄生インダクタンスが小さい。モジュール10によると、寄生インダクタンスが小さくてスナバ回路に電流が流れやすいことから、リンギング抑制効果が高い。
【0020】
(第2実施例)
図4に示すように、第2実施例のモジュール10bでは、半導体素子40aのz方向の厚みが薄いために、半導体素子40aと上面側配線層34の間に金属ブロック48が挿入されている。適当な厚みの金属ブロック48を選択することで、半導体素子40aと金属ブロック48の合計高さをスナバ回路100の高さに揃えることができる。また、金属ブロック48を利用すると、制御電極42に対する導電路の配置スペースを確保することができる。
【0021】
(第3実施例)
図5に示すように、第3実施例のモジュール10cでは、コンデンサ60が複数個(この場合は8個)に分割され、半導体素子40の周囲に配置されている。この場合、グラファイトシート50cについては、全部のコンデンサ60a〜60hに共通に接し、かつ半導体素子40とは干渉しない形状とする。
第3実施例のモジュール10cによると、小型コンデンサの夫々が、樹脂モールド110と活発に熱交換するために、コンデンサが動作すると発熱するような場合にも対応することができる。
【0022】
(第4実施例)
図6に示すように、本実施例では、コンデンサが3個に分割され、それぞれにツェナーダイオードが接続されている。コンデンサは温度が上昇すると、容量が低下する。本実施例では、上記の容量低下を補償するために、温度がT1以下だとツェナーダイオードZD1がオンしてツェナーダイオードZD2,ZD3がオフする。温度がT1〜T2だとツェナーダイオードZD1,ZD2がオンしてツェナーダイオードZD3がオフする。温度がT2以上だとツェナーダイオードZD1,ZD2,ZD3の全部がオンする。T1<T2である。上記の関係が得られると、コンデンサの温度上昇によって容量が低下することが補償され、スナバ容量が適値に維持される。グラファイトシート50,70の断熱性によってコンデンサの温度変化幅を小さく抑え、それにかかわらず生じる温度変化を上記のようにして補償する技術によると、スナバ回路によるリンギング抑制効果を十分に得ながら、スナバ回路による損失を最小限に抑えることが可能となる。図示はしないが、この実施例のモジュールでは、コンデンサとツェナーダイオードの組を樹脂モールド110内に封止する。
【0023】
(第5実施例)
図7に示すように、本実施例では、ツェナーダイオードに代えてトランジスタTR1〜TR3を用い、温度によってトランジスタTR1〜TR3のオン・オフを制御する。図8は、温度によってトランジスタTR1〜TR3をオン・オフする関係を示し、低温であればトランジスタTR1のみをオンしてコンデンサC1のみを利用する。高温になればトランジスタTR1,TR2,TR3の全部をオンしてコンデンサC1,C2,C3の全部を利用する。上記によって、コンデンサ温度が上昇するとコンデンサ容量が低下する現象が補償され、温度によらないでスナバ容量を適値に維持することが可能となる。
【0024】
(第6実施例)
図9に示すように、半導体素子40が一個のスイッチと一個のダイオードの並列回路を備えており、その半導体素子40と並列にスナバ回路100を接続することがある。この場合は、第1の半導体素子40aと第1のスナバ回路100aで第1のモジュールを構成し、第2の半導体素子40bと第2のスナバ回路100bで第2のモジュールを構成することができる。2つのモジュールを用いて、図9のコンバータ回路を実現することができる。これに代えて、第1半導体素子40aと第1スナバ回路100aと第2半導体素子40bと第2スナバ回路100bの全部を、1個のモジュールに組み込むこともできる。
【0025】
上記ではコンバータ回路にスナバ回路を挿入する例を示しているが、スナバ回路を必要とする回路はコンバータ回路に限られない。例えばインバータ回路にスナバ回路を挿入する場合にも本技術を適用することができる。
【0026】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0027】
10:モジュール
20:上面側冷却器
30:上面側配線板
32:上面側絶縁板
34:第1上面側配線層
36:第2上面側配線層
40:半導体素子
42:制御電極
44:第1上面側電極
46:第2上面側電極
48:金属ブロック
50:上面側グラファイトシート
60:コンデンサ
70:下面側グラファイトシート
80:下面側配線板
82:下面側絶縁板
84:下面側配線層
90:下面側冷却器
110:樹脂成形体(樹脂モールド)
ZD:ツェナーダイオード
TR:トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9