(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-207784(P2015-207784A)
(43)【公開日】2015年11月19日
(54)【発明の名称】電力半導体素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20151023BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20151023BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20151023BHJP
【FI】
H01L29/78 652J
H01L29/78 653A
H01L29/78 655A
H01L29/78 658C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-126067(P2015-126067)
(22)【出願日】2015年6月23日
(62)【分割の表示】特願2012-259801(P2012-259801)の分割
【原出願日】2012年11月28日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0095649
(32)【優先日】2012年8月30日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】ソン,イン ヒュック
(72)【発明者】
【氏名】パク,ゼ フン
(72)【発明者】
【氏名】ショ,ドン ス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電力半導体素子の導通損失を低減し、IGBT素子等の電力半導体素子において、動作時のしきい値電圧変化幅を低減する、素子及び製造方法を提供する。
【解決手段】電力半導体素子100は、一面及び他面を有し第1導電型のドリフト層120で形成されたベース基板と、他面に形成された第2導電型の半導体基板110と、一面に形成されドリフト層より高濃度の第1導電型の拡散層140と、拡散層上に形成された第2導電型のウェル層170と、ウェル層を含んでベース基板の一面からウェル層170及び拡散層140を厚さ方向に貫通するように形成された複数個のトレンチと、トレンチの内壁を含んでベース基板の一面に形成された第1絶縁膜と、トレンチ内に形成された第1電極165とを含む。拡散層140の不純物ドーピングプロファイルのピーク地点は、ウェル層170以下の領域とトレンチの下部面との間の領域に位置する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面及び他面を有し、第1導電型のドリフト(Drift)層で形成されたベース基板を準備する段階と、
前記ベース基板の一面にトレンチ形成用開口部を有するエッチングレジストを形成する段階と、
前記ベース基板の一面から厚さ方向に、前記開口部に対応する1次トレンチを形成する段階と、
前記1次トレンチにイオン注入及び熱拡散処理を施すことにより、第1導電型のドリフト層より高濃度の第1導電型の拡散層を形成する段階と、
前記1次トレンチの下部面から厚さ方向に延長されて形成され、且つ前記第1導電型の拡散層を貫通するように、2次トレンチを形成する段階と、
前記1次及び2次トレンチの内壁を含んで前記ベース基板の一面に第1絶縁膜を形成する段階と、を含み、
前記イオン注入による前記第1導電型の拡散層の不純物ドーピングプロファイルのピーク地点は、前記ベース基板の一面と前記2次トレンチの下部面との間の領域に位置する電力半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記第1導電型の拡散層は、前記1次及び2次トレンチを基準として両側にそれぞれ半円状に形成される請求項1に記載の電力半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記2次トレンチを形成する段階の後に、前記エッチングレジストを除去する段階をさらに含む請求項1に記載の電力半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記第1絶縁膜を形成する段階の後に、
前記1次及び2次トレンチ内に第1電極を形成する段階と、
前記第1導電型の拡散層上に第2導電型のウェル(Well)層を形成する段階と、をさらに含む請求項3に記載の電力半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記第1導電型はN型であり、前記第2導電型はP型である請求項4に記載の電力半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記エッチングレジストを除去する段階の後、前記第1絶縁膜を形成する段階の前に、
前記1次及び2次トレンチの内壁を含んで前記ベース基板上に第2絶縁膜を形成する段階と、
前記第2絶縁膜を除去する段階と、をさらに含む請求項1に記載の電力半導体素子の製造方法。
【請求項7】
前記第1絶縁膜はゲート酸化膜であり、前記第2絶縁膜は犠牲酸化膜である請求項6に記載の電力半導体素子の製造方法。
【請求項8】
前記1次及び2次トレンチは複数個であり、
前記第2導電型のウェル層を形成する段階の後に、
前記第2導電型のウェル層の上部に、且つ前記複数個の1次及び2次トレンチの両側の外壁それぞれに、第2電極領域を形成する段階と、
前記第2導電型のウェル層の上部に、且つ前記第2電極領域の間に、前記第2導電型のウェル層より高濃度の第2導電型のボディ領域を形成する段階と、
前記ベース基板の一面のうち前記1次トレンチ上に形成され、且つ前記第1絶縁膜及び第1電極に接触されるように、第3絶縁膜を形成する段階と、
前記第3絶縁膜を含んで前記ベース基板の一面に第2電極を形成する段階と、をさらに含む請求項4に記載の電力半導体素子の製造方法。
【請求項9】
前記第2電極を形成する段階の後に、
前記ベース基板の厚さ方向を基準として前記第1導電型のドリフト層の下部面に第2導電型の半導体基板を形成する段階をさらに含む請求項8に記載の電力半導体素子の製造方法。
【請求項10】
前記第2電極領域は、第1導電型のエミッタ(Emitter)領域であり、前記第2電極はエミッタ(Emitter)電極である請求項8に記載の電力半導体素子の製造方法。
【請求項11】
前記イオン注入による前記第1導電型の拡散層の不純物ドーピングプロファイルのピーク地点は、素子の厚さ方向を基準として前記第2導電型のウェル(Well)層以下の領域と前記2次トレンチの下部面との間の領域に位置する請求項4に記載の電力半導体素子の製造方法。
【請求項12】
前記エッチングレジストを形成する段階で、前記エッチングレジストは、酸化(Oxide)材質からなる請求項1に記載の電力半導体素子の製造方法。
【請求項13】
一面及び他面を有し、第1導電型のドリフト(Drift)層で形成されたベース基板と、
前記ベース基板の他面に形成された第2導電型の半導体基板と、
前記ベース基板の一面に形成され、前記第1導電型のドリフト層より高濃度の第1導電型の拡散層と、
前記第1導電型の拡散層上に形成された第2導電型のウェル(Well)層と、
前記第2導電型のウェル層を含んで前記ベース基板の一面から前記第2導電型のウェル層及び前記第1導電型の拡散層を厚さ方向に貫通するように形成された複数個のトレンチと、
前記トレンチの内壁を含んで前記ベース基板の一面に形成された第1絶縁膜と、
前記トレンチ内に形成された第1電極と、を含み、
前記第1導電型の拡散層の不純物ドーピングプロファイルのピーク地点は、前記第2導電型のウェル層以下の領域と前記トレンチの下部面との間の領域に位置する電力半導体素子。
【請求項14】
前記第1導電型はN型であり、第2導電型はP型である請求項13に記載の電力半導体素子。
【請求項15】
前記第1導電型の拡散層は、トレンチを基準として両側にそれぞれ半円状に形成される請求項13に記載の電力半導体素子。
【請求項16】
前記第1絶縁膜は、ゲート酸化膜である請求項13に記載の電力半導体素子。
【請求項17】
前記第2導電型のウェル層の上部に、且つ前記複数個のトレンチの両側の外壁にそれぞれ形成された第2電極領域と、
前記第2導電型のウェル層の上部に、且つ第2電極領域の間に形成された、前記第2導電型のウェル層より高濃度の第2導電型のボディ領域と、
前記ベース基板の一面のうち前記トレンチ上に形成され、且つ前記第1絶縁膜及び第1電極に接触されるように形成された第3絶縁膜と、
前記第3絶縁膜を含んで前記ベース基板の一面に形成された第2電極と、をさらに含み、
前記トレンチは複数個である請求項13に記載の電力半導体素子。
【請求項18】
前記第2電極領域は第1導電型のエミッタ(Emitter)領域であり、前記第2電極はエミッタ(Emitter)電極である請求項17に記載の電力半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力半導体素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、特許文献1を初めとする様々な形態のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子が著しく発展しており、これに伴い、アプリケーションが家電用だけでなく大容量の産業用及び電気自動車まで非常に幅広く利用されている。
【0003】
IGBT素子の最大の長所は、MOSFET(MOS Field−Effect Transistor)と異なってバイポーラ(Bipolar)動作するということであり、これは伝導度変調(Conductivity Modulation)現象を起こして、オン動作時にウェーハの原材料によって左右される直列(Series)抵抗を減らすことにより、特に高耐圧及び高電流製品に対してMOSFETより遥かに低い導通損失をもたらして、電力損失(Power Loss)を減らすことができる。
【0004】
従って、最近のIGBT技術開発の傾向は、伝導度変調現象を最大化する方向に進んでおり、そのために最も多く適用される技術がホールキャリア(Hole Carrier)の蓄積技術である。ホールキャリアは、P−コレクタ層から注入されたホールによって発生し、このキャリアは、エミッタ(Emitter)層に近づくほど次第に消滅するため、エミッタ層に近づくほど導通損失の比重が増加することになる。
【0005】
このような問題を解決するために、ホールキャリアの最終移動通路となるトレンチツートレンチ(Trench to Trench)(MESA)領域の幅を減らしてホールキャリアの移動を制限する技術を適用している状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0180813号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一側面は、伝導度変調現象を最大化することができる電力半導体素子及びその製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施例による電力半導体素子の製造方法は、一面及び他面を有し、第1導電型のドリフト(Drift)層で形成されたベース基板を準備する段階と、前記ベース基板の一面にトレンチ形成用開口部を有するエッチングレジストを形成する段階と、前記ベース基板の一面から厚さ方向に、前記開口部に対応する1次トレンチを形成する段階と、前記1次トレンチにイオン注入及び熱拡散処理を施すことにより、第1導電型のドリフト層より高濃度の第1導電型の拡散層を形成する段階と、前記1次トレンチの下部面から厚さ方向に延長されて形成され、且つ前記第1導電型の拡散層を貫通するように、2次トレンチを形成する段階と、を含み、前記イオン注入による前記第1導電型の拡散層の不純物ドーピングプロファイルのピーク地点は、前記ベース基板の一面と前記2次トレンチの下部面との間の領域に位置するものである。
【0009】
本発明の実施例による電力半導体素子の製造方法において、第1導電型の拡散層は、前記1次及び2次トレンチを基準として両側にそれぞれ半円状に形成されることが好ましい。
【0010】
本発明の実施例による電力半導体素子の製造方法は、2次トレンチを形成する段階の後に、前記エッチングレジストを除去する段階をさらに含むことが好ましい。
【0011】
本発明の実施例による電力半導体素子の製造方法は、エッチングレジストを除去する段階の後に、前記1次及び2次トレンチの内壁を含んで前記ベース基板の一面に第1絶縁膜を形成する段階と、前記1次及び2次トレンチ内に第1電極を形成する段階と、前記第1導電型の拡散層上に第2導電型のウェル(Well)層を形成する段階と、をさらに含むことが好ましい。
【0012】
本発明の実施例による電力半導体素子の製造方法において、第1導電型はN型であり、第2導電型はP型であることが好ましい。
【0013】
本発明の実施例による電力半導体素子の製造方法は、エッチングレジストを除去する段階の後、前記第1絶縁膜を形成する段階の前に、前記1次及び2次トレンチの内壁を含んで前記ベース基板上に第2絶縁膜を形成する段階と、前記第2絶縁膜を除去する段階と、をさらに含むことが好ましい。
【0014】
本発明の実施例による電力半導体素子の製造方法において、第1絶縁膜はゲート酸化膜であり、第2絶縁膜は犠牲酸化膜であることが好ましい。
【0015】
本発明の実施例による電力半導体素子の製造方法は、前記第2導電型のウェル層を形成する段階の後に、前記第2導電型のウェル層の上部に、且つ前記複数個の1次及び2次トレンチの両側の外壁それぞれに、第2電極領域を形成する段階と、前記第2導電型のウェル層の上部に、且つ前記第2電極領域の間に、前記第2導電型のウェル層より高濃度の第2導電型のボディ領域を形成する段階と、前記ベース基板の一面のうち前記1次トレンチ上に形成され、且つ前記第1絶縁膜及び第1電極に接触されるように、第3絶縁膜を形成する段階と、前記第3絶縁膜を含んで前記ベース基板の一面に第2電極を形成する段階と、をさらに含み、前記1次及び2次トレンチは複数個であることが好ましい。
【0016】
本発明の実施例による電力半導体素子の製造方法は、第2電極を形成する段階の後に、前記ベース基板の厚さ方向を基準として前記第1導電型のドリフト層の下部面に第2導電型の半導体基板を形成する段階をさらに含むことが好ましい。
【0017】
本発明の実施例による電力半導体素子の製造方法において、第2電極領域は第1導電型のエミッタ(Emitter)領域であり、第2電極はエミッタ(Emitter)電極であることが好ましい。
【0018】
本発明の実施例による電力半導体素子の製造方法において、イオン注入による前記第1導電型の拡散層の不純物ドーピングプロファイルのピーク地点は、素子の厚さ方向を基準として前記第2導電型のウェル(Well)層以下の領域と前記2次トレンチの下部面との間の領域に位置することが好ましい。
【0019】
本発明の実施例による電力半導体素子の製造方法は、エッチングレジストを形成する段階で、前記エッチングレジストは、酸化(Oxide)材質からなることが好ましい。
【0020】
本発明の他の実施例による電力半導体素子は、一面及び他面を有し、第1導電型のドリフト(Drift)層で形成されたベース基板と、前記ベース基板の他面に形成された第2導電型の半導体基板と、前記ベース基板の一面に形成され、前記第1導電型のドリフト層より高濃度の第1導電型の拡散層と、前記第1導電型の拡散層上に形成された第2導電型のウェル(Well)層と、前記第2導電型のウェル層を含んで前記ベース基板の一面から前記第2導電型のウェル層及び前記第1導電型の拡散層を厚さ方向に貫通するように形成されたトレンチと、前記トレンチの内壁を含んで前記ベース基板の一面に形成された第1絶縁膜と、前記トレンチ内に形成された第1電極と、を含み、前記第1導電型の拡散層の不純物ドーピングプロファイルのピーク地点は、前記第2導電型のウェル層以下の領域と前記トレンチの下部面との間の領域に位置するものである。
【0021】
本発明の他の実施例による電力半導体素子において、第1導電型はN型であり、第2導電型はP型であることが好ましい。
【0022】
本発明の他の実施例による電力半導体素子において、第1導電型の拡散層は、トレンチを基準として両側にそれぞれ半円状に形成されることが好ましい。
【0023】
本発明の他の実施例による電力半導体素子において、第1絶縁膜は、ゲート酸化膜であることが好ましい。
【0024】
本発明の他の実施例による電力半導体素子は、前記第2導電型のウェル層の上部に、且つ前記複数個のトレンチの両側の外壁にそれぞれ形成された第2電極領域と、前記第2導電型のウェル層の上部に、且つ第2電極領域の間に形成された、前記第2導電型のウェル層より高濃度の第2導電型のボディ領域と、前記ベース基板の一面のうち前記トレンチ上に形成され、且つ前記第1絶縁膜及び第1電極に接触されるように形成された第3絶縁膜と、前記第3絶縁膜を含んで前記ベース基板の一面に形成された第2電極と、をさらに含み、前記トレンチは複数個であることが好ましい。
【0025】
本発明の他の実施例による電力半導体素子において、第2電極領域は第1導電型のエミッタ(Emitter)領域であり、前記第2電極はエミッタ(Emitter)電極であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の電力半導体素子及びその製造方法によると、第1導電型のドリフト層より高濃度の第1導電型の拡散層を第1導電型のドリフト層と第2導電型のウェル層との間に形成するため、ホールキャリア(Hole Carrier)の移動を制限することにより、電力半導体素子の導通損失を減らすことができるという効果がある。
【0027】
また、本発明の実施例によると、2次トレンチ加工を適用することにより、第1導電型の拡散層の不純物ドーピング濃度のピーク地点が第2導電型のウェル層と離隔されて形成されるため、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子を初めとする電力半導体素子の動作時におけるしきい値電圧の変化幅を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施例による電力半導体素子の製造方法を説明するための工程断面 図である。
【
図2】本発明の実施例による電力半導体素子の製造方法を説明するための工程断面 図である。
【
図3】本発明の実施例による電力半導体素子の製造方法を説明するための工程断面 図である。
【
図4】本発明の実施例による電力半導体素子の製造方法を説明するための工程断面 図である。
【
図5】本発明の実施例による電力半導体素子の製造方法を説明するための工程断面 図である。
【
図6】本発明の実施例による電力半導体素子の製造方法を説明するための工程断面 図である。
【
図7】
図6の半導体素子のA−A´を基準とした領域毎のドーピングプロファイル を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の目的、特定の長所及び新規の特徴は、添付図面に係る以下の詳細な説明及び好ましい実施例によってさらに明らかになるであろう。本明細書において、各図面の構成要素に参照番号を付け加えるに際し、同一の構成要素に限っては、たとえ異なる図面に示されても、できるだけ同一の番号を付けるようにしていることに留意しなければならない。また、「一面」、「他面」、「第1」、「第2」などの用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別するために用いられるものであり、構成要素が前記用語によって限定されるものではない。以下、本発明を説明するにあたり、本発明の要旨を不明瞭にする可能性がある係る公知技術についての詳細な説明は省略する。
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【0031】
本発明の実施例において開示される電力半導体素子は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子を意味するが、これに限定されない。
【0032】
(電力半導体素子の製造方法)
図1から
図6は、本発明の実施例による電力半導体素子の製造方法を説明するための工程断面図であり、
図7は、
図6の半導体素子のA−A´を基準とした領域毎のドーピングプロファイルを示すグラフである。
【0033】
まず、
図1を参照すると、一面及び他面を有し、第1導電型のドリフト(Drift)層120で形成されたベース基板を準備することができる。
【0034】
この際、第1導電型は、N型であり、第1導電型のドリフト層120は、N−ドリフト層(N−Drift Layer)であることが好ましいが、これに限定されない。
【0035】
次に、
図1を参照すると、ベース基板の一面に、トレンチ形成用開口部を有するエッチングレジスト10を形成することができる。
【0036】
前記エッチングレジスト10は、酸化(Oxide)材質からなることができる。
【0037】
エッチングレジスト10が酸化材質からなるため、以後にイオン注入及び熱拡散工程を行うことができる。
【0038】
また、エッチングレジスト10が酸化材質からなるため、一つのエッチングレジスト10を用いて1次及び2次トレンチ130a、130bをともに加工することができるという効果を期待することができる。
【0039】
次に、
図1を参照すると、ベース基板の一面から厚さ方向に、開口部に対応する1次トレンチ130aを形成することができる。
【0040】
次に、
図2及び
図3を参照すると、1次トレンチ130aにイオン注入及び熱拡散処理を施すことにより、第1導電型のドリフト層120より高濃度の第1導電型の拡散層140を形成することができる。
【0041】
この際、第1導電型の拡散層140は、第1導電型のドリフト層120のN−より高濃度であるNO型であることができるが、これに限定されない。
【0042】
次に、
図3を参照すると、1次トレンチ130aの下部面から厚さ方向に延長されて形成され、且つ第1導電型の拡散層140を貫通するように、2次トレンチ130bを形成することができる。
【0043】
即ち、
図3に図示するように、トレンチ130は、2回のトレンチ加工により形成することができる。
【0044】
また、上述のイオン注入による第1導電型の拡散層140の不純物ドーピングプロファイルのピーク地点は、ベース基板の一面と2次トレンチ130bの下部面との間の領域に位置することができる。
【0045】
より詳細に説明すると、上述のイオン注入による第1導電型の拡散層140の不純物ドーピングプロファイルのピーク地点(
図3〜
図5の第1導電型の拡散層140の領域のうち最も濃くドーピング濃度が図示された領域、
図7のI(Peak BHA(Buried Hole Accumulation)Concentration))は、素子の厚さ方向を基準として第2導電型のウェル(Well)層(
図6の170)以下の領域と2次トレンチ130bの下部面との間の領域に位置することができる。
【0046】
図7は、
図6の電力半導体素子のA−A´を基準として領域毎の不純物ドーピング濃度のプロファイルを示すグラフであり、領域毎のN型のドーピング濃度、領域毎のP型のドーピング濃度、領域毎のネットドーピング(Net Doping)を図示している。
【0047】
この際、第1導電型の拡散層140の不純物ドーピング濃度のピーク地点は、I領域であり、電力半導体素子の厚さ方向を基準として第2導電型のウェル層170から一定距離離隔された地点に形成されるため、本発明による電力半導体素子(特に、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor))は、動作時のVce(sat)の減少にも、しきい値電圧(Threshold Voltage、Vth)の変化幅が小さいという効果がある。
【0048】
この際、Vce(sat)の減少は、第1導電型の拡散層140の濃度増加を意味することができる。
【0049】
即ち、本発明による電力半導体素子100は、第1導電型の不純物を注入する時に従来より高濃度の不純物を注入することができ、高濃度の不純物によってホールキャリア(Hole Carrier)の移動を制限することにより、電力半導体素子のスイッチング速度を速くする利点を始め、素子の全体的な動作を向上させることができる。
【0050】
これと係って、第1導電型の拡散層140を形成する工程で、イオンの注入時に不純物
ドーピング濃度のピーク地点が第2導電型のウェル層(
図6の170)以下に形成され、
2次トレンチ130bの下部面を外れないように考慮しなければならない。
【0051】
図3に図示するように、第1導電型の拡散層140は、1次及び2次トレンチ130a、130b(以下、130)を基準として両側にそれぞれ半円状に形成させることができる。
【0052】
より詳細に説明すると、
図2にように、1次トレンチ130aの下部面を中心として円形または楕円形(1次トレンチの領域を除く)などに形成された第1導電型の拡散層140が、2次トレンチ130bの加工によりそれぞれ半円状に形成させることができる。
【0053】
次に、
図4に図示するように、エッチングレジスト10を除去することができる。
【0054】
次に、
図5に図示するように、1次及び2次トレンチ130の内壁を含んでベース基板の一面に第1絶縁膜160を形成することができる。
【0055】
この際、第1絶縁膜160は、ゲート酸化膜(Gate Oxide)であることができるが、これに限定されない。
【0056】
次に、
図6に図示するように、1次及び2次トレンチ130内に第1電極165を形成し、第1導電型の拡散層140上に第2導電型のウェル層170を形成することができる。
【0057】
この際、第1導電型はN型であり、第2導電型はP型であることができるが、これに限定されない。
【0058】
図6を参照すると、第2導電型のウェル層170は、P型ウェル(P Well)層であることができる。
【0059】
また、第1電極165は、ゲート電極であることができるが、これに限定されない。
【0060】
一方、
図3及び
図4に図示するように、エッチングレジスト10を除去する段階の後、第1絶縁膜160を形成する段階の前に、1次及び2次トレンチ130の内壁を含んでベース基板上に第2絶縁膜150を形成し、第2絶縁膜150を除去することができる。
【0061】
この際、第2絶縁膜150は、犠牲酸化膜であることができる。
【0062】
前記犠牲酸化膜の生成及び除去工程は、1次及び2次トレンチ130の領域を滑らかに研磨する工程であり、トレンチの加工時に発生するクラックなどの損傷を滑らかに加工して、以後に発生する不良を最小化するための工程である。
【0063】
図6に図示するように、1次及び2次トレンチ130は、複数個であることができる。
【0064】
図6を参照すると、電力半導体素子の製造方法は、第2導電型のウェル層170を形成する段階の後に、第2導電型のウェル層170の上部に、且つ複数個の1次及び2次トレンチ130の両側の外壁それぞれに、第2電極領域190を形成する段階と、第2導電型のウェル層170の上部に、且つ第2電極領域190の間に、第2導電型のウェル層170より高濃度の第2導電型のボディ領域180を形成する段階と、ベース基板の一面のうち1次トレンチ130a上に形成され、且つ第1絶縁膜160及び第1電極165に接触されるように、第3絶縁膜191を形成する段階と、第3絶縁膜191を含んでベース基板の一面に第2電極193を形成する段階と、を含むものである。
【0065】
上述の第2電極領域190は、第1導電型のエミッタ(Emitter)領域であり、第2電極193は、エミッタ(Emitter)電極であることができるが、これに限定されない。
【0066】
また、第2電極領域190は、第1導電型の拡散層140のNO型より高濃度のN+型であることができ、第2導電型のボディ領域180は、第2導電型のウェル層170のP型より高濃度のP+型であることができるが、これに限定されない。
【0067】
前記第2電極領域190は、
図6のように複数個であり、それぞれが互いに離隔された形態に形成することができる。
【0068】
次に、
図6に図示するように、ベース基板の厚さ方向を基準として第1導電型のドリフト層120の下部面に、第2導電型の半導体基板110を形成することができる。
【0069】
前記第2導電型の半導体基板110は、シリコンウェーハ(Silicon Wafer)からなることができるが、これに限定されない。
【0070】
(電力半導体素子)
図6は、本発明の実施例による電力半導体素子の構成を示す図面である。
【0071】
この際、本発明の実施例による電力半導体素子の製造方法を説明するための工程断面図である
図1から
図5と、
図6の半導体素子のA−A´を基準とした領域毎のドーピングプロファイルを示すグラフである
図7を参照して説明する。
【0072】
図6に図示するように、電力半導体素子100は、一面及び他面を有し、第1導電型のドリフト(Drift)層120で形成されたベース基板と、ベース基板の他面に形成された第2導電型の半導体基板110と、ベース基板の一面に形成され、第1導電型のドリフト層120より高濃度の第1導電型の拡散層140と、第1導電型の拡散層140上に形成された第2導電型のウェル(Well)層170と、第2導電型のウェル層170を含んでベース基板の一面から第2導電型のウェル層170及び第1導電型の拡散層140を厚さ方向に貫通するように形成されたトレンチ(
図3の130)と、トレンチ130の内壁を含んでベース基板の一面に形成された第1絶縁膜(
図5の160)と、トレンチ130内に形成された第1電極165と、を含むものである。
【0073】
この際、第1導電型の拡散層140の不純物ドーピングプロファイルのピーク地点(
図7のI)は、第2導電型のウェル層170の以下の領域とトレンチ130の下部面との間の領域に位置することができる。
【0074】
また、第1導電型はN型であり、第2導電型はP型であることができるが、これに限定されない。
【0075】
また、
図3から
図6に図示するように、第1導電型の拡散層140は、トレンチ130を基準として両側にそれぞれ半円状に形成させることができる。
【0076】
また、第1絶縁膜160は、ゲート酸化膜(Gate Oxide)であることができる。
【0077】
一方、
図6に図示するように、トレンチ(
図3の130)は複数個であることができる。
【0078】
電力半導体素子100は、第2導電型のウェル層170の上部に、且つ複数個のトレンチ130の両側の外壁にそれぞれ形成された第2電極領域190と、第2導電型のウェル層170の上部に、且つ第2電極領域190の間に形成された第2導電型のウェル層170より高濃度の第2導電型のボディ領域180と、ベース基板の一面のうちトレンチ130上に形成され、且つ第1絶縁膜160及び第1電極165に接触されるように形成された第3絶縁膜191と、第3絶縁膜191を含んでベース基板の一面に形成された第2電極193と、をさらに含むものである。
【0079】
前記第2電極領域190は、第1導電型のエミッタ(Emitter)領域であり、第2電極193は、エミッタ(Emitter)電極であることができる。
【0080】
図示していないが、電力半導体素子100における第2導電型の半導体基板110の下部面に第3電極(不図示)を形成することができる。前記第3電極は、コレクタ(Collector)電極であることができ、第2導電型の半導体基板110は、コレクタ領域として動作させることができる。
【0081】
本発明の実施例による電力半導体素子100は、第1導電型のドリフト層120より高濃度の第1導電型の拡散層140を含み、第1導電型の拡散層140の不純物ドーピングプロファイルのピーク地点が、第2導電型のウェル層170以下とトレンチ130の下部面との間の領域に位置する構造であるため、同一の第1導電型の不純物ドーピング濃度を適用しても、従来の電力半導体素子に比べ低いVce(sat)電圧を有することができる。
【0082】
上述の構造により、本発明の実施例による電力半導体素子100は、第1導電型の拡散層140の不純物ドーピングプロファイルのピーク地点が第2導電型のウェル層170から離隔されて形成されるため、従来に比べ同一の不純物ドーピング濃度でもホール(Hole)の蓄積が多く発生して、優れた特性が具現されることができる。
【0083】
また、本発明の電力半導体素子100は、第1導電型の不純物ドーピング濃度の増加によるしきい値電圧の変化幅が小さいため、電力半導体素子100を形成するにおいて、デザイン設計自由度を向上させることができる。
【0084】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明はこれに限定されず、該当分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内にての変形や改良が可能であることは明白であろう。
【0085】
本発明の単純な変形乃至変更はいずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲により明確になるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、電力半導体素子及びその製造方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0087】
10 エッチングレジスト
100 電力半導体素子
110 第2導電型の半導体基板
120 第1導電型のドリフト層
130 トレンチ
130a 1次トレンチ
130b 2次トレンチ
140 第1導電型の拡散層
150 第2絶縁膜
160 第1絶縁膜
165 第1電極
170 第2導電型のウェル層
180 第2導電型のボディ領域
190 第2電極領域
191 第3絶縁膜
193 第2電極