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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-208064(P2015-208064A)
(43)【公開日】2015年11月19日
(54)【発明の名称】電力変換装置の信号変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20151023BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20151023BHJP
【FI】
   H02P7/63 302D
   H02M7/48 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-85709(P2014-85709)
(22)【出願日】2014年4月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100134980
【弁理士】
【氏名又は名称】千原 清誠
(74)【代理人】
【識別番号】100187986
【弁理士】
【氏名又は名称】淡路 俊作
(74)【代理人】
【識別番号】100093469
【弁理士】
【氏名又は名称】杉岡 幹二
(72)【発明者】
【氏名】小林 正
【テーマコード(参考)】
5H007
5H505
【Fターム(参考)】
5H007AA05
5H007BB06
5H007DB02
5H007DB13
5H007DC07
5H505BB07
5H505DD05
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ16
5H505LL01
(57)【要約】
【課題】電力変換装置における信号変換を行う信号変換装置において、ステップ状に変化する信号を読み込む際に、原信号との誤差ができるだけ小さくなるような構成を得る。
【解決手段】信号変換装置(22)は、立ち下がりを有する原信号から得られたステップ状に変化する信号において、該信号の立ち下がりを検出する立ち下がり検出部(31)と、原信号の信号変化に合わせるように時間とともに増大する出力信号を演算する回転角度算出部(42)と、回転角度算出部(42)によって演算された出力信号が所定値に達する前に立ち下がり検出部(31)によって前記立ち下がりを検出した場合に、回転角度算出部(42)の演算をリセットするリセット部(34)とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換装置に入力される電気信号を変換する電力変換装置の信号変換装置であって、
立ち下がりを有する原信号から得られたステップ状に変化する信号において、該信号の立ち下がりを検出する立ち下がり検出部と、
前記原信号の信号変化に合わせるように時間とともに増大する出力信号を演算する信号演算部と、
前記信号演算部によって演算された出力信号が所定値に達する前に前記立ち下がり検出部によって前記立ち下がりを検出した場合に、前記信号演算部の演算をリセットするリセット部とを備える、電力変換装置の信号変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置の信号変換装置において、
前記原信号は、誘導電動機の回転角度に関する信号であり、
前記誘導電動機の回転速度が基準値以上であるかどうかを判定する回転速度判定部と、
前記回転速度判定部によって、前記誘導電動機の回転速度が前記基準値未満であると判定された場合には、前記信号演算部及び前記リセット部の動作を禁止して、前記ステップ状に変化する信号を読み込んで出力する信号出力部とをさらに備える、電力変換装置の信号変換装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電力変換装置の信号変換装置において、
供試インバータの負荷としての誘導電動機を模擬するように構成された電力変換装置の信号変換に用いられる、電力変換装置の信号変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置において信号変換を行う信号変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電力変換装置においてアナログ信号をデジタル信号に変換する信号変換装置が知られている。このような電力変換装置の信号変換装置では、例えば特許文献1に開示されるように、電力変換装置で検出されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。特許文献1に開示される構成では、電力変換装置でアナログ信号から変換されたデジタル信号は、制御装置に入力される。
【0003】
なお、電力変換装置の一例として、例えば特許文献2に開示されるように、供試インバータに対して電気的に接続され、該供試インバータを試験する際に電動機を模擬するインバータ負荷装置が知られている。このインバータ負荷装置は、供試インバータが電動機を駆動している場合と同様の動作を行うように、該電動機を模擬する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−33997号公報
【特許文献2】特開2011−101548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のようなインバータ負荷装置では、該インバータ負荷装置が供試インバータに対して電動機として動作するように、該供試インバータとの間で信号の送受信を行う。特に、インバータ負荷装置が誘導電動機を模擬する場合には、誘導電動機の回転角度と供試インバータの出力の位相とが同期していないため、供試インバータからインバータ負荷装置に対して角度信号を送信する必要がある。
【0006】
上述のような角度信号として、供試インバータ内の所定の角度信号のゼロクロスを検出して信号化したZ相パルスを用いる方法が考えられる。しかしながら、Z相パルスは、電動機が回転していない状態では出力されないため、インバータ負荷装置が電動機の停止状態を模擬している場合には、供試インバータの駆動とインバータ負荷装置の駆動とを同期させることができない。
【0007】
これに対し、供試インバータとインバータ負荷装置との間の通信をアナログ信号によって行うことが考えられる。
【0008】
しかしながら、近年の機器では、内部の信号処理にデジタル信号を用いた構成が一般的であるため、上述のように機器間で信号を授受する際にアナログ信号を用いた場合、該アナログ信号がステップ状に変化する。そのため、受信側の機器で、ステップ状に変化するアナログ信号からデジタル信号を読み込むと、元の信号に対して読み込んだ信号の誤差が大きくなる可能性がある。
【0009】
すなわち、送信側では、デジタル信号をアナログ信号に変換した際に、ステップ状に変化するアナログ信号が生成される。受信側ではそのアナログ信号を所定のサンプリング周期でデジタル信号に変換する。そうすると、ステップ状に変化するアナログ信号をデジタル信号に変換した際に、サンプリング周期によっては元の信号との誤差が大きくなる場合がある。
【0010】
このような誤差は、例えば、インバータ負荷装置が高速状態の誘導電動機を模擬している場合において、供試インバータからインバータ負荷装置にアナログ信号を送信して、該インバータ負荷装置でアナログ信号をデジタル信号に変換する際などに、特に大きくなる可能性がある。
【0011】
本発明の目的は、電力変換装置における信号変換を行う信号変換装置において、ステップ状に変化し且つ立ち下がりを有する信号を読み込む際に、原信号との誤差ができるだけ小さくなるような構成を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態に係る信号変換装置は、電力変換装置に入力される電気信号を変換する電力変換装置の信号変換装置である。立ち下がりを有する原信号から得られたステップ状に変化する信号において、該信号の立ち下がりを検出する立ち下がり検出部と、前記原信号の信号変化に合わせるように時間とともに増大する出力信号を演算する信号演算部と、前記信号演算部によって演算された出力信号が所定値に達する前に前記立ち下がり検出部によって前記立ち下がりを検出した場合に、前記信号演算部の演算をリセットするリセット部とを備える(第1の構成)。
【0013】
以上の構成により、ステップ状に変化する信号の立ち下がりを用いて、信号演算部によって原信号に近い波形を有する信号を演算することができる。すなわち、信号演算部によって演算された信号が所定値に達する前に、立ち上がり検出部によってステップ状に変化する信号の立ち下がりが検出された場合に、信号演算部の演算をリセットすることにより、原信号の立ち下がりと信号演算部によって演算された信号の立ち下がりとを同期させることができる。これにより、原信号に対して誤差の小さい信号を得ることができる。
【0014】
ここで、原信号とは、所定のサンプリング周期で信号を取得する際の元の信号を意味し、検出器等によってアナログ信号として検出された信号であってもよいし、信号取得前の特性値そのものであってもよい。
【0015】
前記第1の構成において、前記ステップ状に変化する信号は、前記原信号から得られたデジタル信号が、アナログ変換によって、ステップ状に変化する信号波形に変換されたアナログ信号である(第2の構成)。
【0016】
このように、ステップ状に変化する信号が、原信号からサンプリングによって得たデジタル信号がアナログ信号に変換された信号であっても、上述の第1の構成によって、原信号により近い波形の信号として読み込むことが可能になる。
【0017】
前記第1または第2の構成において、前記原信号は、鋸波状の信号であり、前記信号演算部は、前記原信号に応じた所定の傾きを用いて前記出力信号を求める(第3の構成)。
【0018】
このように原信号が鋸歯状の信号の場合、原信号に応じた傾きを用いて、原信号の波形を有する信号を算出することができる。したがって、原信号の波形に近い信号を容易に得ることができる。
【0019】
前記第3の構成において、前記原信号は、回転体の回転角度に関する信号である(第4の構成)。このように、原信号が回転体の回転角度に関する信号の場合には、原信号は、360度ごとに0度に戻る鋸歯状の波形を有する信号である。このような原信号から得られるステップ状の信号を読み込む場合にも、上述の第1の構成によって、該原信号により近い波形の信号を得ることができる。
【0020】
前記第4の構成において、信号変換装置は、前記誘導電動機の回転速度が基準値以上であるかどうかを判定する回転速度判定部と、前記回転速度判定部によって、前記誘導電動機の回転速度が前記基準値未満であると判定された場合には、前記信号演算部及び前記リセット部の動作を禁止して、前記ステップ状に変化する信号を読み込んで出力する信号出力部とをさらに備える(第5の構成)。
【0021】
誘導電動機の回転速度が基準値未満の場合には、ステップ状に変化する信号から読み込んでも、原信号との誤差はあまり大きくない。そのため、信号演算部及びリセット部の動作を禁止する。そして、ステップ状に変化する信号を読み込んで、信号出力部によって出力する。これにより、信号を読み込む際に原信号に対して誤差の少ない領域では演算を行う必要がないので、信号変換装置の演算の負荷を軽減することができる。
【0022】
前記第1から第5の構成において、供試インバータの負荷としての誘導電動機を模擬するように構成された電力変換装置の信号変換に用いられる(第6の構成)。このように、供試インバータの負荷としての誘導電動機を電力変換装置によって模擬する場合、誘導電動機(電力変換装置)から出力される回転角度と供試インバータにおいて二相変換に用いる角度とが同期していない。そのため、誘導電動機を模擬する電力変換装置と供試インバータとを同期させる場合には、該供試インバータから電力変換装置に対して角度信号を出力する必要がある。
【0023】
ところで、供試インバータ及び電力変換装置は、内部ではデジタル信号によって処理を行う一方、誘導電動機が回転していない状態でも上述の角度信号を出力するためには、供試インバータと電力変換装置との間でアナログ信号の授受を行うのが好ましい。このような構成では、デジタル処理後のアナログ変換によって得られるステップ状のアナログ信号からデジタル信号を読み込むことになるため、読み込んだデジタル信号と実際の角度信号との差が大きくなる。このような構成において、上述の第1から第5の構成を適用することにより、実際の角度信号に対して誤差が極力小さいデジタル信号を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一実施形態に係る電力変換装置の信号変換装置によれば、演算された出力信号が所定値に達する前に、原信号から得られたステップ状の信号の立ち下がりを検出した場合には、信号の演算をリセットする。これにより、ステップ状に変化する信号を読み込む際に、原信号との誤差をできるだけ小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る評価試験装置の全体構成を示すブロック図である。
図2図2は、信号変換装置の概略構成を示すブロック図である。
図3図3は、信号変換装置によって実行される信号出力のフローを示す図である。
図4図4は、信号変換装置に入力されるアナログ信号Vinの波形、及び該信号変換装置から出力されるデジタル信号Voutの波形をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0027】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る評価試験装置1の概略構成を示す図である。この評価試験装置1は、供試インバータ2(図1において供試INV)の駆動を評価するための装置である。詳しくは、評価試験装置1は、供試インバータ2によって駆動制御される電動機及びその負荷を模擬しており、供試インバータ2の出力が電動機の駆動時と同等になるように構成されている。このような評価試験装置1を用いることにより、供試インバータ2に電動機の実機を接続して試験を行うことなく、評価試験装置1によって供試インバータ2の駆動を試験することができる。
【0028】
供試インバータ2には、図示しない制御装置からトルク指令が入力される。供試インバータ2は、入力されたトルク指令に応じて、評価試験装置1に出力する電流を制御する。
【0029】
評価試験装置1は、供試インバータ2に対して誘導電動機と同様の負荷を与えるインバータ負荷装置11(電力変換装置、図1においてINV負荷装置)と、供試インバータ2とインバータ負荷装置11とを繋ぐ電気経路上に位置するリアクトル12とを備える。インバータ負荷装置11には、図示しない制御装置から回転数指令が入力される。インバータ負荷装置11は、入力された回転数指令と入力された電流の値とから電動機の電圧方程式により電圧指令値を計算し、供試体インバータ2の出力電圧が前記電圧指令値になるように出力の制御を行う。
【0030】
インバータ負荷装置11は、供試インバータ2によって実機の誘導電動機を駆動した場合を模擬するように、供試インバータ2に対し、モータ電圧を出力するとともに、入力された回転数指令に応じて回転角度の信号を出力する。
【0031】
なお、本実施形態のインバータ負荷装置11は、供試インバータ2によって駆動される誘導電動機(IM)を模擬可能なように構成されている。誘導電動機の場合、同期電動機とは異なり、誘導電動機から出力される回転角度とインバータにおいて二相変換に用いる回転角度(以下、主回路電気角度という)とが同期していない。そのため、インバータ負荷装置11は、誘導電動機を正確に模擬した回転角度の信号を出力するために、供試インバータ2から主回路電気角度の信号を受信する必要がある。
【0032】
ところで、供試インバータ2からインバータ負荷装置11に主回路電気角度の信号(原信号)を送信する場合、信号のゼロクロスを検出することにより得られるZ相パルスを用いる方法が考えられる。しかしながら、このZ相パルスは、誘導電動機が回転している場合にのみ出力されるため、インバータ負荷装置11が停止状態の誘導電動機を模擬している場合には、供試インバータの駆動とインバータ負荷装置の駆動とを同期させることができない。これに対して、供試インバータ2からインバータ負荷装置11に主回路電気角度の信号をアナログ信号によって送信することが考えられる。
【0033】
本実施形態では、供試インバータ2の内部ではデジタル信号によって信号処理が行われる一方、供試インバータ2がインバータ負荷装置11に信号を出力する際には、デジタル信号をアナログ変換した後、アナログ信号を出力する。そのため、供試インバータ2からインバータ負荷装置11に出力されるアナログ信号は、時間とともにステップ状に変化する信号となる。
【0034】
このようなステップ状に変化するアナログ信号が、主回路電気角度の信号として、供試インバータ2からインバータ負荷装置11に出力されると、インバータ負荷装置11では、アナログ信号から信号を読み取るタイミングによって、信号の誤差が大きくなる場合がある。すなわち、上述のような構成では、供試インバータ2とインバータ負荷装置11との間で信号を授受する際の誤差が大きくなり、供試インバータ2及びインバータ負荷装置11の同期がずれる可能性がある。
【0035】
これに対し、本実施形態では、インバータ負荷装置11は、演算によって回転角度を求めるとともに、演算による回転角度が360度を超える前にステップ状に変化するアナログ信号の立ち下がりが検出された場合には演算した回転角度をリセットする。これにより、演算する回転角度を、原信号の立ち下がりのタイミングでリセットすることができるため、原信号により近い波形の信号を得ることができる。
【0036】
具体的には、インバータ負荷装置11は、制御部21と、信号変換装置22とを有する。制御部21は、供試インバータ2に接続された誘導電動機を模擬するように、該供試インバータ2の出力電圧に対して所定の出力信号を生成する。信号変換装置22は、供試インバータ2から出力された主回路電気角度のアナログ信号を所定のデジタル信号に変換する。
【0037】
信号変換装置22は、供試インバータ2から出力されたステップ状に変化するアナログ信号から、実際の主回路電気角度により近いデジタル信号を求める。上述のように、インバータ負荷装置11が誘導電動機の停止状態を模擬している場合でも供試インバータ2とインバータ負荷装置11とを同期させるためには、該供試インバータ2とインバータ負荷装置11との間でアナログ信号を授受するのが好ましい。この場合には、供試インバータ2からインバータ負荷装置11に出力される主回路電気角度の信号はステップ状に変化するアナログ信号となる。信号変換装置22は、このアナログ信号から、元の主回路電気角度(原信号)に近い信号を精度良く求めることができる。
【0038】
信号変換装置22は、インバータ負荷装置11が模擬する誘導電動機の速度領域に応じて、供試インバータ2から入力されるアナログ信号を用いたデジタル信号の変換処理を切り替える。
【0039】
すなわち、インバータ負荷装置11が誘導電動機の低速領域を模擬している場合には、信号変換装置22は、入力されるステップ状のアナログ信号を所定のサンプリング周期でデジタル信号に変換して出力する。誘導電動機の低速領域では、元の主回路電気角度と読み込むデジタル信号との誤差が小さいため、ステップ状に変化するアナログ信号をそのままデジタル信号として読み込む。
【0040】
一方、インバータ負荷装置11が誘導電動機の高速領域を模擬している場合には、信号変換装置22は、回転角度を演算によって求めるとともに、該回転角度が360度に達する前に、ステップ状のアナログ信号の立ち下がりが検出された際に、演算をリセットする。誘導電動機の回転速度が高速領域の場合には、演算によって得られる回転角度を、元の主回路電気角度の立ち下がりのタイミングでリセットすることにより、該主回路電気角度に近い波形を有する回転角度の信号を求めることができる。
【0041】
ここで、低速領域とは、ステップ状のアナログ信号をデジタル信号として読み込んだ場合でも、原信号との誤差が供試インバータ2及びインバータ負荷装置11の同期を乱さないような規定値以下の回転数領域である。また、高速領域とは、ステップ状のアナログ信号をデジタル信号として読み込んだ場合に、原信号との誤差が前記規定値よりも大きくなるような回転数領域である。本実施形態では、インバータ負荷装置11が模擬する誘導電動機の回転速度が基準値以下であれば、低速領域とし、該回転速度が基準値よりも大きければ、高速領域とする。
【0042】
図2に示すように、信号変換装置22は、立ち下がり検出部31と、信号読込部32と、演算部33と、リセット部34とを備える。立ち下がり検出部31は、入力されるステップ状のアナログ信号の立ち下がりを検出する。立ち下がり検出部31は、演算部33によって回転角度が360度まで演算された後、最初のアナログ信号の立ち下がりは、信号の立ち下がりとして検出しない。
【0043】
立ち下がり検出部31は、例えば、アナログ信号と基準電圧(例えば回転角度が180度のときの電圧)とを比較器によって比較することにより、信号の立ち下がりを検出するように構成されている。なお、立ち下がり検出部31は、信号の立ち下がりを検出可能な構成であれば、他の構成であってもよい。
【0044】
信号読込部32は、アナログ信号Vinからデジタル信号を所定のタイミングで読み込む。信号読込部32は、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータによって構成されている。このA/Dコンバータの構成は、従来と同様の構成なので、詳しい説明を省略する。
【0045】
演算部33は、インバータ負荷装置22が高速領域で回転する誘導電動機を模擬している場合に、回転角速度を用いて回転角度を算出する。また、演算部33は、インバータ負荷装置22が低速領域で回転する誘導電動機を模擬している場合には、信号読込部32によってアナログ信号Vinから読み込んだデジタル信号をそのまま出力する。
【0046】
具体的には、演算部33は、回転速度判定部41と、回転角度算出部42(信号演算部)と、角速度記憶部43と、回転角度出力部44(信号出力部)とを備える。回転速度判定部41は、インバータ負荷装置11に入力される回転数指令に基づいて、該インバータ負荷装置11が模擬する誘導電動機が高速領域または低速領域のいずれであるのかを判定する。この回転速度判定部41の判定結果に応じて、演算部33は、回転速度算出部42の演算結果、または、信号読込部32が読み込んだデジタル信号を出力する。
【0047】
回転角度算出部42は、回転速度判定部41によって、インバータ負荷装置11が模擬する誘導電動機が高速領域であると判定された場合に、角速度記憶部43に記憶されている角速度を用いて回転角度を算出する。回転角度は、時間とともに鋸歯状に変化するため、角速度に時間を乗算することにより、得られる。詳しくは、回転角度算出部42では、インバータ負荷装置11に入力される回転数指令に応じて角速度記憶部43から得られる角速度に、時間を乗算することにより、回転角度を算出する。なお、回転角度算出部42は、0度から360度の回転角度を繰り返し演算し続ける。また、回転角度算出部42は、後述するリセット部34からリセット信号が入力された場合に、演算をリセットして、0度から回転角度を演算する。
【0048】
本実施形態では、回転角度算出部42は、インバータ負荷装置11が模擬する誘導電動機が定速で回転している状態を検出し、定速状態を検出したときに回転角度を算出する。このようにインバータ負荷装置11が定速状態の誘導電動機を模擬している場合には、ステップ状に変化するアナログ信号は、立ち下がりのタイミングが原信号の立ち下がりのタイミングに対して遅くなる。したがって、後述するように、演算による回転角度が360度に達する前にアナログ信号の立ち下がりを検出した場合にのみ演算をリセットすることで、原信号により近い波形の信号が得られる。
【0049】
角速度記憶部43には、回転数指令に応じた角速度の値が複数、記憶されている。角速度記憶部43に記憶されている複数の角速度は、テーブルとして記憶されていてもよいし、計算式から算出してもよい。なお、角速度の演算は、例えば、回転角度の演算値が360度に達する前にアナログ信号の立ち下がりが検出された場合のリセットのタイミングから、次のリセットのタイミングまでの時間を用いて行われる。すなわち、このリセットのタイミングで角速度の演算値は更新される。
【0050】
回転角度出力部44は、回転速度判定部41によって、インバータ負荷装置11が模擬する誘導電動機が低速領域であると判定された場合に、信号読込部32によってアナログ信号から読み込んだデジタル信号をそのまま出力する。また、回転角度出力部44は、回転速度判定部41によって、インバータ負荷装置11が模擬する誘導電動機が高速領域であると判定された場合に、回転速度算出部42によって算出された回転角度を出力する。
【0051】
リセット部34は、演算部33の回転角度算出部42による演算をリセットするようにリセット信号を出力する。すなわち、リセット部34は、立ち下がり検出部31によって信号の立ち下がりが検出された場合に、演算部33に対してリセット信号を出力する。このリセット信号によって、演算部33の回転角度算出部42は、演算をリセットして、回転角度の演算を0度から行う。
【0052】
図3に、信号変換装置22によって実行されるフローを示す。図3に示すフローでは、演算部33から出力される信号を、インバータ負荷装置11が模擬する誘導電動機の回転速度及び該インバータ負荷装置11に入力されるアナログ信号の立ち下がりに応じて、変更する。
【0053】
図3に示すフローがスタートすると(スタート)、ステップS1で演算部33の回転速度判定部41が、インバータ負荷装置11に入力された回転数指令に基づいて、該インバータ負荷装置11が模擬する誘導電動機の回転速度が基準値以上かどうかを判定する。ステップS1において、インバータ負荷装置11が模擬する誘導電動機の回転速度が基準値以上と判定された場合(YESの場合)には、ステップS2に進んで、演算部33の回転角度算出部42が、回転角度を算出する。この際、回転角度算出部42は、角速度記憶部43に記憶されている角速度を用いて回転角度を算出する。
【0054】
一方、ステップS1において、インバータ負荷装置11が模擬する誘導電動機の回転速度が基準値よりも小さいと判定された場合(NOの場合)、ステップS5に進んで、回転角度出力部44は、信号読込部32がアナログ信号Vinから読み込んだデジタル信号をそのまま出力する。その後、このフローを終了する(エンド)。
【0055】
このように、インバータ負荷装置11が模擬する誘導電動機の回転速度が基準値よりも小さい場合に、アナログ信号Vinから読み込んだデジタル信号をそのまま出力することにより、信号の読み取り誤差が小さい範囲において無駄な演算を行うのを防止できる。これにより、演算部33の演算の負荷を軽減することができる。
【0056】
上述のようなステップS2における回転角度の演算後、ステップS3に進んで、回転角度算出部42が算出した回転角度(演算値)が360度に達したかどうかを判定する。ステップS3において、回転角度算出部42の演算値が360度に達したと判定された場合(YESの場合)には、ステップS4に進んで、回転角度算出部42による演算値を、回転角度出力部44によって出力する。
【0057】
一方、ステップS3において、回転角度算出部42の演算値が360度に達していないと判定された場合(NOの場合)には、ステップS6以降に進んで、アナログ信号Vinの立ち下がりに応じて、回転角度算出部42の演算をリセットする。
【0058】
具体的には、ステップS6では、立ち下がり検出部31によってアナログ信号Vinの立ち下がりが検出されたかどうかを判定する。なお、ステップS6において、立ち下がり検出部31は、演算値が360度に達した後のアナログ信号Vinの最初の立ち下がりは検出しない。したがって、演算値が360度に達した後、アナログ信号Vinの最初の立ち下がりが生じても、ステップS6では、アナログ信号Vinの立ち下がりが検出されたとは判定されない。
【0059】
ステップS6において、アナログ信号Vinの立ち下がりが検出されたと判定された場合(YESの場合)には、ステップS7に進んで、リセット部34によって、回転角度算出部42の演算をリセットする。すなわち、回転角度算出部42の演算値が360度に達する前で且つアナログ信号Vinの立ち下がりが検出された場合に、回転角度算出部42による演算をリセットする。
【0060】
一方、ステップS6において、アナログ信号Vinの立ち下がりが検出されていないと判定された場合(NOの場合)には、上述のステップS4に進んで、回転角度算出部42による演算値を、回転角度出力部44によって出力する。
【0061】
上述のように、ステップS7において、回転角度算出部42の演算をリセットした後は、上述のステップS4に進んで、回転角度算出部42による演算値を、回転角度出力部44によって出力する。その後、このフローを終了する(エンド)。
【0062】
図4に、本実施形態の信号変換装置22によって、ステップ状のアナログ信号Vinが入力された際の信号出力Voutの波形を示す。なお、図4に示す信号出力Voutは、インバータ負荷装置11が高速領域の誘導電動機を模擬している場合の信号波形である。
【0063】
図4に示すように、回転角度算出部42によって算出される回転角度が360度に達する前に、アナログ信号Vinの立ち下がりが検出された場合、回転角度算出部42による演算がリセットされて回転角度は0度になる。一方、回転角度算出部42によって演算された回転角度が360度に達する前にアナログ信号Vinの立ち下がりが検出されなかった場合、回転角度が360度に達した後、回転角度算出部42は0度から計算を継続する。
【0064】
これにより、アナログ信号Vinの立ち下がりに合わせて信号をリセットすることができるとともに、頻繁に演算結果がリセットさせるのを防止できる。したがって、原信号(図4に示すVinにおける一点鎖線)に近い波形のデジタル信号を得ることができる。
【0065】
以上の構成により、信号変換装置22は、入力されるアナログ信号Vinの立ち下がりを用いて、供試インバータ2内の主回路電気角度を精度良く求めることができる。すなわち、信号変換装置22によって、インバータ負荷装置11に供試インバータ2の主回路電気角度を精度良く読み込むことができる。したがって、本実施形態の信号変換装置22を用いることにより、供試インバータ2とインバータ負荷装置11とを精度良く同期させることができる。
【0066】
しかも、供試インバータ2とインバータ負荷装置11との間ではアナログ信号を用いて信号の授受を行うため、インバータ負荷装置11が誘導電動機の停止状態を模擬している場合でも、供試インバータ2とインバータ負荷装置11とを同期させることが可能になる。
【0067】
したがって、上述のような構成を有する信号変換装置22を用いることにより、インバータ負荷装置1が誘導電動機を模擬する場合でも、該インバータ負荷装置1と供試インバータ2とを精度良く同期させることができる。
【0068】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0069】
前記実施形態では、信号変換装置22を供試インバータ2の評価試を行うための評価試験装置1に適用している。しかしながら、アナログ信号で信号の授受を行うとともに、機器内部ではデジタル信号で処理を行う装置に、信号変換装置22を設けてもよい。すなわち、ステップ状のアナログ信号をデジタル信号に変換する場合に、本実施形態のような信号変換装置22を用いるのが好ましい。
【0070】
前記実施形態では、ステップ状に変化し且つ立ち下がりを有する信号の一例として、主回路電気角度をアナログ信号に変換した信号を挙げている。しかしながら、ステップ状に変化し且つ立ち下がりを有する信号であれば、他の信号であってもよい。
【0071】
前記実施形態では、供試インバータ2を試験するインバータ負荷装置11に信号変換装置22が設けられている。しかしながら、機器同士でステップ状のアナログ信号を授受し且つ受信側でデジタル信号として読み込む構成であれば、どのような構成に信号変換装置を設けても良い。
【0072】
前記実施形態では、インバータ負荷装置11が模擬する誘導電動機の回転速度が基準値よりも大きい場合には、回転角度を演算し、回転角度が360度に達する前にステップ状のアナログ信号の立ち下がりが検出された場合に、回転角度の演算をリセットする。一方、インバータ負荷装置11が模擬する誘導電動機の回転速度が基準値以下であれば、ステップ状のアナログ信号をデジタル信号として読み込む。しかしながら、この限りではなく、インバータ負荷装置11が模擬する誘導電動機の回転速度に関係なく、回転角度を演算し、回転角度が360度に達する前にステップ状のアナログ信号の立ち下がりが検出された場合に、演算をリセットしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、ステップ状に変化するアナログ信号からデジタル信号を取得する場合の信号変換装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
2 供試インバータ
11 インバータ負荷装置(電力変換装置)
12 リアクトル
21 制御部
22 信号変換装置
31 立ち下がり検出部
32 信号読込部
33 演算部
34 リセット部
41 回転速度判定部
42 回転角度算出部(信号演算部)
44 回転角度出力部(信号出力部)
図1
図2
図3
図4